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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/40 20060101AFI20240130BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20240130BHJP
   H01G 17/00 20060101ALI20240130BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20240130BHJP
   H01G 2/08 20060101ALI20240130BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240130BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20240130BHJP
   H01F 27/08 20060101ALI20240130BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240130BHJP
   H03H 5/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H01G4/40 321A
H01G4/30 541
H01G4/30 547
H01G17/00
H01G2/10 J
H01G2/08 A
H01F17/00 D
H01F27/00 S
H01F27/08 101
H01F41/04 C
H01F41/04 B
H03H5/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020004870
(22)【出願日】2020-01-16
(65)【公開番号】P2021114486
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115738
【弁理士】
【氏名又は名称】鷲頭 光宏
(74)【代理人】
【識別番号】100121681
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 和文
(72)【発明者】
【氏名】吉川 和弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 健一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 隆史
(72)【発明者】
【氏名】奥山 祐一郎
(72)【発明者】
【氏名】大橋 武
(72)【発明者】
【氏名】桑島 一
【審査官】石坂 博明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2008/018227(WO,A1)
【文献】特開2019-125707(JP,A)
【文献】国際公開第2017/134761(WO,A1)
【文献】特開2021-111701(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0075317(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/40
H01G 4/30
H01G 17/00
H01G 2/10
H01G 2/08
H01F 17/00
H01F 27/00
H01F 27/08
H01F 41/04
H03H 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に交互に積層された複数の導体層及び複数の絶縁層と、を備え、
前記複数の絶縁層のうち所定の絶縁層の側面は、前記基板の側面よりも後退した凹部と、前記凹部から突出する凸部を有し、
前記凹部は無機絶縁材料からなる誘電体膜で覆われていることを特徴とする電子部品。
【請求項2】
前記所定の絶縁層は、前記複数の絶縁層のうち最下層に位置する絶縁層であることを特徴とする請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記最下層に位置する絶縁層のうち前記凹部を構成する部分と前記基板は、前記誘電体膜を介することなく対向していることを特徴とする請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記導体層からなる2つの導体パターンは、前記誘電体膜と同じ無機絶縁材料からなる別の誘電体膜を介して対向することによってキャパシタを構成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記複数の絶縁層は、いずれも側面が前記凹部及び前記凸部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記所定の絶縁層の側面は、全周に亘って前記凹部及び前記凸部を有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載に記載の電子部品。
【請求項7】
前記基板の側面と前記凸部の端面が同一平面を構成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品及びその製造方法に関し、特に、基板上に複数の導体層と複数の絶縁層が交互に積層された構造を有する電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板上に複数の導体層と複数の絶縁層が交互に積層された構造を有する電子部品が開示されている。特許文献1に記載された電子部品は、基板上にキャパシタとインダクタが形成されており、これによりLCフィルタとして機能する。通常、このような電子部品は、集合基板を用いて複数個同時に作製され、ダイシングによって個片化することによって多数個取りされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-34626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、集合基板をダイシングすることによって電子部品を個片化すると、電子部品の側面が平坦となるため、側面からの放熱性は必ずしも高くなかった。また、絶縁層の層数や厚みが大きいと、集合基板のダイシングが困難になるという問題もあった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、基板上に複数の導体層と複数の絶縁層が交互に積層された構造を有する電子部品において、側面からの放熱性を高めることである。
【0006】
また、本発明の他の目的は、基板上に複数の導体層と複数の絶縁層が交互に積層された構造を有する電子部品の製造方法において、絶縁層の層数や厚みが大きい場合であってもダイシングを容易化することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による電子部品は、基板と、基板上に交互に積層された複数の導体層及び複数の絶縁層とを備え、複数の絶縁層のうち所定の絶縁層の側面は、基板の側面よりも後退した凹部と、凹部から突出する凸部を有し、凹部は無機絶縁材料からなる誘電体膜で覆われていることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、絶縁層の側面が凹凸形状を有していることから、側面の露出面積が増加する。これにより、側面からの放熱性を高めることが可能となる。しかも、凹部は無機絶縁材料からなる誘電体膜で覆われていることから、剛性が高められるとともに、所定の絶縁層をより効果的に保護することが可能となる。
【0009】
本発明において、所定の絶縁層は、複数の絶縁層のうち最下層に位置する絶縁層であっても構わない。これによれば、電子部品の剛性をより高めることが可能となる。この場合、最下層に位置する絶縁層のうち凹部を構成する部分と基板は、前記誘電体膜を介することなく対向していても構わない。これによれば、誘電体膜による応力を緩和することができる。
【0010】
本発明において、導体層からなる2つの導体パターンは、前記誘電体膜と同じ無機絶縁材料からなる別の誘電体膜を介して対向することによってキャパシタを構成しても構わない。これによれば、キャパシタを構成する誘電体膜を利用して、電子部品の剛性を高めることが可能となる。
【0011】
本発明において、複数の絶縁層は、いずれも側面が凹部及び凸部を有していても構わない。これによれば、側面の露出面積がより増加することから、側面からの放熱性がより高められる。
【0012】
本発明において、所定の絶縁層の側面は、全周に亘って凹部及び凸部を有していても構わない。これによれば、側面の露出面積がより増加することから、側面からの放熱性がより高められる。
【0013】
本発明において、基板の側面と凸部の端面が同一平面を構成しても構わない。これによれば、電子部品の外径サイズが必要以上に大型化することがない。
【0014】
本発明による電子部品の製造方法は、基板上に犠牲パターンを含む複数の導体層と複数の絶縁層を交互に積層することによって複数の電子部品を同時に作製する第1の工程と、犠牲パターンを除去することによって複数の電子部品間に空間を形成する第2の工程と、空間に沿って基板を切断することによって複数の電子部品を個片化する第3の工程とを備え、第1の工程は、複数の導体層のうち所定の導体層を形成した後、複数の絶縁層のうち所定の導体層を埋め込む所定の絶縁層を形成する前に、所定の導体層に含まれる犠牲パターンの上面及び側面を無機絶縁材料からなる誘電体膜で覆う工程と、誘電体膜のうち、所定の導体層に含まれる犠牲パターンの側面を覆う部分が残存するよう、所定の導体層に含まれる犠牲パターンの上面を覆う部分を除去する工程とを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、空間に沿って基板を切断していることから、絶縁層の層数や厚みが大きい場合であってもダイシングを容易に行うことが可能となる。しかも、誘電体膜のうち、犠牲パターンの側面を覆う部分が残存するよう、犠牲パターンの上面を覆う部分を除去していることから、誘電体膜による応力が緩和される。しかも、電子部品の剛性が高められるとともに、所定の絶縁層をより効果的に保護することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
このように、本発明によれば、基板上に複数の導体層と複数の絶縁層が交互に積層された構造を有する電子部品において、側面からの放熱性を高め、剛性を高め、且つ、絶縁層をより効果的に保護することが可能となる。また、本発明によれば、基板上に複数の導体層と複数の絶縁層が交互に積層された構造を有する電子部品の製造方法において、絶縁層の層数や厚みが大きい場合であってもダイシングを容易に行うことができるとともに、剛性が高く信頼性に優れた電子部品を作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の一実施形態による電子部品1の構造を説明するための断面図である。
図2図2は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図3図3は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図4図4は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図5図5は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図6図6は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図7図7は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図8図8は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図9図9は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図10図10は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図11図11は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図12図12は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図13図13は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図14図14は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図15図15は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図16図16は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図17図17は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図18図18は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図19図19は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図20図20は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図21図21は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図22図22は、電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。
図23図23は、ダイシング幅D1,D2と空間Aの関係を示す部分的な断面図である。
図24図24は、側面の全周に亘って凹凸形状を形成する方法を説明するための模式的な平面図である。
図25図25は、外周の一部にのみ凹凸形状を形成する方法を説明するための模式的な平面図である。
図26図26は、外周の一部にのみ凹凸形状を形成する方法を説明するための模式的な平面図である。
図27図27は、第1の変形例による電子部品1Aの構造を説明するための断面図である。
図28図28は、第2の変形例による電子部品1Bの構造を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態による電子部品1の構造を説明するための断面図である。
【0020】
本実施形態による電子部品1はLCフィルタであり、図1に示すように、基板2と、基板2の上面に交互に積層された導体層M1~M4と絶縁層11~14を備えている。基板2の材料としては、化学的・熱的に安定で応力発生が少なく、表面の平滑性を保つことができる材料であればよく、特に限定されるものではないが、シリコン単結晶、アルミナ、サファイア、窒化アルミ、MgO単結晶、SrTiO3単結晶、表面酸化シリコン、ガラス、石英、フェライトなどを用いることができる。基板2の表面は平坦化層3で覆われている。平坦化層3としては、アルミナや酸化シリコンなどを用いることができる。
【0021】
導体層M1は最下層に位置する導体層であり、導体パターン21,22を含んでいる。導体パターン21,22はいずれも平坦化層3と接する薄いシード層Sと、シード層S上に設けられ、シード層Sよりも膜厚の大きいメッキ層Pによって構成されている。他の導体層に位置する導体パターンについても同様であり、シード層Sとメッキ層Pの積層体によって構成されている。ここで、導体パターン21はキャパシタの下部電極を構成し、その上面及び側面は誘電体膜(容量絶縁膜)4で覆われている。電子部品1の外周部では誘電体膜4が除去されており、これによって応力が緩和されている。
【0022】
導体パターン21の上面には、誘電体膜4を介して導体パターン23が形成されている。導体パターン23は、導体層M1と導体層M2の間に位置する導体層MMに属し、キャパシタの上部電極を構成する。これにより、導体パターン21を下部電極とし、導体パターン23を上部電極とするキャパシタが形成される。導体層M1及び導体層MMは、絶縁層11によって覆われる。
【0023】
導体層M2は、絶縁層11の表面に設けられた2層目の導体層であり、導体パターン24,25を含んでいる。導体パターン24は、絶縁層11に設けられた開口部を介して導体パターン22,23に接続されている。導体層M2は、絶縁層12によって覆われる。
【0024】
導体層M3は、絶縁層12の表面に設けられた3層目の導体層であり、導体パターン26,27を含んでいる。導体パターン26は、絶縁層12に設けられた開口部を介して導体パターン24に接続されている。導体層M3は、絶縁層13によって覆われる。
【0025】
導体層M4は、絶縁層13の表面に設けられた4層目の導体層であり、導体パターン28,29を含んでいる。導体パターン28は、絶縁層13に設けられた開口部を介して導体パターン26に接続されている。導体層M4は、絶縁層14によって覆われる。
【0026】
絶縁層14の上面には、端子電極E1,E2が設けられている。端子電極E1,E2は、絶縁層14に設けられた開口部を介してそれぞれ導体パターン28,29に接続されている。導体パターン25,27,29は例えばコイルパターンの一部であり、これにより、基板2上にキャパシタとインダクタが集積される。
【0027】
図1に示すように、本実施形態においては、絶縁層11~14の側面11s~14sが平坦ではなく、段差を有している。ここで、「側面」とは、積層方向に対して垂直な平面方向における端面を意味する。そして、絶縁層11の側面11sは、基板2の側面2sよりも内側に後退(セットバック)した凹部11aと、凹部11aから突出する凸部11bを有している。他の絶縁層12~14の側面12s~14sも同様であり、基板2の側面2sよりも内側に後退した凹部12a~14aと、凹部12a~14aから突出する凸部12b~14bを有している。
【0028】
本実施形態による電子部品1は、絶縁層11~14の側面11s~14sが凹凸形状を有していることから、側面11s~14sの露出面積が増加し、これにより側面11s~14sからの放熱性が高められる。しかも、本実施形態による電子部品1を図1に示す向きから上下反転させて回路基板に搭載した場合、端子電極E1,E2を覆うハンダの側面11s~14sへの回り込みも生じにくくなるため、信頼性が高められる。ここで、凸部11b~14bの凹部11a~14aからの突出量Lは、5μm以上、10μm以下であることが好ましい。これは、突出量Lを5μm以上とすることにより放熱性の向上効果を十分に得ることができるとともに、突出量Lを10μm以下とすることにより平面サイズの増大を十分に抑制することができるからである。また、凹部11a~14aの高さHについては、後述する製造プロセス上、同じ導体層に位置する導体パターンの厚みと一致する。
【0029】
さらに、最下層に位置する絶縁層11の側面11sのうち、凹部11aは誘電体膜4で覆われている。これにより、この部分に誘電体膜4が存在しない場合と比べて電子部品1の全体の剛性が高められるとともに、絶縁層11がより効果的に保護される。これに対し、凸部11bや、凹部11aと凸部11bを繋ぐ段差部は、誘電体膜4で覆われておらず、絶縁層11がそのまま露出している。また、絶縁層11のうち凹部11aを構成する部分と基板2は、誘電体膜4を介することなく対向している。つまり、電子部品1の外周部においては誘電体膜4が除去されている。これにより、誘電体膜4の応力が緩和される。
【0030】
次に、本実施形態による電子部品1の製造方法について説明する。
【0031】
図2図22は、本実施形態による電子部品1の製造方法を説明するための工程図である。電子部品1の製造プロセスにおいては、集合基板を用いて複数の電子部品1が多数個取りされるが、以下に説明する製造プロセスは、1個の電子部品1の製造プロセスに着目して説明する。
【0032】
まず、図2に示すように、基板(集合基板)2上にスパッタリング法などを用いて平坦化層3を形成し、その表面を研削或いはCMPなどの鏡面化処理を行なって平滑化する。その後、平坦化層3の表面にスパッタリング法などを用いてシード層Sを形成する。次に、図3に示すように、シード層S上にレジスト層R1をスピンコートした後、導体層M1を形成すべき領域のシード層Sが露出するよう、レジスト層R1をパターニングする。この状態で、シード層Sを給電体とする電解メッキを行うことにより、図4に示すように、シード層S上にメッキ層Pを形成する。シード層Sとメッキ層Pの積層体は、導体層M1を構成する。図4に示す断面においては、導体層M1に導体パターン21,22及び犠牲パターン31,32が含まれている。そして、図5に示すようにレジスト層R1を除去し、図6に示すように表面に露出するシード層Sを除去すれば、導体層M1が完成する。シード層Sの除去は、エッチング又はイオンミリングによって行うことができる。
【0033】
次に、図7に示すように、導体層M1の上面及び側面を含む全面に誘電体膜4を成膜する。誘電体膜4としては、例えば、窒化シリコン(SiNx)や酸化シリコン(SiOx)などの常誘電体材料の他、公知の強誘電体材料などからなる無機絶縁材料を利用することができる。誘電体膜4の成膜方法としては、スパッタリング法、プラズマCVD法、MOCVD法、ゾルゲル法、電子ビーム蒸着法などを用いることができる。
【0034】
次に、図8に示すように、導体層M1の形成方法と同様の方法を用いることによって、導体パターン21の上面に誘電体膜4を介して導体パターン23を形成する。導体パターン23も、シード層Sとメッキ層Pの積層体からなる。これにより、導体層MMが完成し、導体パターン21を下部電極とし、導体パターン23を上部電極とするキャパシタが形成される。特に限定されるものではないが、導体層MMの膜厚を導体層M1の膜厚よりも薄くすることにより導体層MMの加工精度を高め、これによって加工精度に起因するキャパシタンスのばらつきを低減することが好ましい。
【0035】
次に、図9に示すように、犠牲パターン31,32を覆うことなく、導体パターン21,22を覆うレジスト層R2を形成する。レジスト層R2のエッジは、最終的に電子部品1となる部分よりもやや内側に設定する。この状態で誘電体膜4をエッチングすることにより、図10に示すように、最終的に電子部品1の外周部となる部分の誘電体膜4を除去する。誘電体膜4のエッチングは、イオンミリングなどの異方性の高いエッチング方法を用いることが好ましい。これにより、基板2に対して平行な部分、つまり、平坦化層3の表面や、犠牲パターン31,32の上面を覆う誘電体膜4が除去される一方、基板2に対して垂直な部分、つまり、犠牲パターン31,32の側面を覆う誘電体膜4は除去されることなく残存する。
【0036】
次に、図11に示すように導体層M1,MMを覆う絶縁層11を形成した後、絶縁層11をパターニングすることによって、図12に示すように、絶縁層11に開口部41~44を形成する。これにより、導体パターン23,22の上面は、それぞれ開口部41,42を介して露出し、導体パターン31,32の上面を覆う誘電体膜4は、それぞれ開口部43,44を介して露出する。
【0037】
次に、図13に示すように、絶縁層11上にレジスト層R3を形成した後、レジスト層R3に開口部52を形成する。これにより、導体パターン22の上面を覆う誘電体膜4は、開口部52を介して露出する。この状態で、イオンミリングなどを行うことにより、開口部52に露出する誘電体膜4を除去し、導体パターン22の上面を露出させる。
【0038】
そして、レジスト層R3を除去した後、図14に示すように、導体層M1の形成方法と同様の方法によって、絶縁層11上に導体層M2を構成する。図14に示す断面においては、導体層M2に導体パターン24,25及び犠牲パターン33,34が含まれている。導体層M2を構成する各導体パターン及び犠牲パターンも、シード層Sとメッキ層Pの積層体からなる。ここで、導体パターン24は、絶縁層11に設けられた開口部を介して導体パターン22,23に共通に接続され、犠牲パターン33,34は、絶縁層11に設けられた開口部を介して犠牲パターン31,32にそれぞれ接続される。次に、図15に示すように導体層M2を覆う絶縁層12を形成する。
【0039】
その後、同様の工程を繰り返すことにより、図16に示すように導体層M3、絶縁層13、導体層M4及び絶縁層14をこの順に形成する。図16に示す断面においては、導体層M3に導体パターン26,27及び犠牲パターン35,36が含まれ、導体層M4に導体パターン28,29及び犠牲パターン37,38が含まれている。ここで、導体パターン26は、絶縁層12に設けられた開口部を介して導体パターン24に接続され、犠牲パターン35,36は、絶縁層12に設けられた開口部を介してそれぞれ犠牲パターン33,34に接続される。また、導体パターン28は、絶縁層13に設けられた開口部を介して導体パターン26に接続され、犠牲パターン37,38は、絶縁層13に設けられた開口部を介してそれぞれ犠牲パターン35,36に接続される。
【0040】
次に、図17に示すように、絶縁層14をパターニングすることによって、開口部61,62を形成する。これにより、導体パターン28,29の上面はそれぞれ開口部61,62を介して露出する。そして、図18に示すように、絶縁層14上に端子電極E1,E2を形成する。端子電極E1は絶縁層14に設けられた開口部を介して導体パターン28に接続され、端子電極E2は絶縁層14に設けられた開口部を介して導体パターン29に接続される。
【0041】
次に、図19に示すように、絶縁層14をパターニングすることによって、開口部63,64を形成する。これにより、犠牲パターン37,38の上面はそれぞれ開口部63,64を介して露出する。そして、図20に示すように、端子電極E1,E2を含む絶縁層14の全面にレジスト層R4を形成した後、犠牲パターン37,38を露出させる開口部73,74をレジスト層R4に形成する。この状態で、酸などを用いたエッチングを行うことにより、図21に示すように犠牲パターン31~38を除去する。これにより、犠牲パターン31~38が除去された領域に空間Aが形成される。
【0042】
そして、レジスト層R4を除去した後、図22に示すように空間Aに沿って基板2を切断することによって電子部品1を個片化する。これにより、本実施形態による電子部品1が完成する。
【0043】
ここで、図22に示す符号Dは、ダイシング幅(切り代)である。ダイシング幅Dは空間Aの最大幅よりも狭く、これにより、個片化された電子部品1の側面は、図1に示すような凹凸形状となる。ダイシング幅Dと空間Aの最小幅との関係については特に限定されないが、図23に示すように、ダイシング幅D1が空間Aの最小幅よりも広ければ、絶縁層11~14の凸部11b~14bの先端が除去されるため、基板2の側面2sと凸部11b~14bの端面が同一平面を構成することになる。一方、ダイシング幅D2が空間Aの最小幅よりも狭ければ、基板2の側面2sが凸部11b~14bから突出することになる。電子部品1の外径サイズをできるだけ小さくするためには、前者のようにダイシング幅をD1とすることが好ましい。
【0044】
ここで、電子部品1の側面は、全周に亘って凹凸形状を有していても構わないし、部分的に凹凸形状を有していても構わない。側面の全周に亘って凹凸形状を形成するためには、平面図である図24に示すように、電子部品1の全周に犠牲パターン30を形成すれば良い。一方、側面の一部にのみ凹凸形状を形成するためには、平面図である図25及び図26に示すように、電子部品1の外周の一部に犠牲パターン30を形成すれば良い。図25に示す例では、電子部品1の側面のうち角部を除く直線部に犠牲パターン30を形成している。この場合、犠牲パターン30の存在しない角部には絶縁層11~14が残存することから、個片化する際には角部に位置する絶縁層11~14をダイシングする必要がある。また、図26に示す例では、電子部品1の側面のうち角部に犠牲パターン30を形成している。この場合、犠牲パターン30の存在しない直線部には絶縁層11~14が残存することから、個片化する際には直線部に位置する絶縁層11~14をダイシングする必要がある。
【0045】
以上説明したように、本実施形態による電子部品1は、絶縁層11~14の側面11s~14sが凹凸形状を有していることから、側面11s~14sからの放熱性が高められるとともに、端子電極E1,E2を覆うハンダの側面11s~14sへの回り込みも生じにくくなる。しかも、電子部品1の製造プロセスにおいては、犠牲パターン31~38の除去によって形成された空間Aに沿って基板2がダイシングされることから、ダイシングブレードにかかる負荷が大幅に軽減される。これにより、絶縁層の層数や厚みが大きい場合であっても容易にダイシングを行うことが可能となる。
【0046】
さらに、最下層に位置する絶縁層11の側面11sのうち、凹部11aが誘電体膜4で覆われていることから、電子部品1の全体の剛性が高められるとともに、絶縁層11をより効果的に保護することが可能となる。これに対し、基板2と平行な部分においては、誘電体膜4の一部が除去されていることから、誘電体膜4の応力を緩和することが可能となる。
【0047】
図27は、第1の変形例による電子部品1Aの構造を説明するための断面図である。
【0048】
図27に示す電子部品1Aは、凸部11b~14bの凹部11a~14aからの突出量が一定ではなく、絶縁層11~14ごとに異なっている点において、図1に示した電子部品1と相違している。その他の基本的な構成は図1に示した電子部品1と同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
図27に示す電子部品1Aは、凸部11b~14bの凹部11a~14aからの突出量をそれぞれL1,L2,L3,L4とした場合、L2>L4>L3>L1を満たしている。第1の変形例による電子部品1Aが例示するように、本発明において突出量L1~L4が一定である必要はなく、一部又は全部が異なっていても構わない。突出量L1~L4を互いに異ならせれば、応力の分散効果を得ることが可能となる。
【0050】
図28は、第2の変形例による電子部品1Bの構造を説明するための断面図である。
【0051】
図28に示す電子部品1Bは、突出量L1~L4がL1>L2>L3>L4を満たしている点において、図27に示した電子部品1Aと相違している。その他の基本的な構成は図27に示した電子部品1Aと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。このような構造によれば、剛性の不足しやすい上層の絶縁層の剛性をより高めることが可能となる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0053】
例えば、上記実施形態においては、本発明をLCフィルタに応用した場合を例に説明したが、本発明の対象となる電子部品がLCフィルタに限定されるものではなく、他の種類の電子部品に応用しても構わない。
【0054】
また、上記実施形態においては、最下層に位置する導体層M1をキャパシタの下部電極として用いているが、キャパシタを構成する2つの導体パターンがどの導体層に属していても構わない。
【符号の説明】
【0055】
1,1A,1B 電子部品
2 基板
2s 基板の側面
3 平坦化層
4 誘電体膜
11~14 絶縁層
11a~14a 凹部
11b~14b 凸部
11s~14s 絶縁層の側面
21~29 導体パターン
30~38 犠牲パターン
41~44,52~54,61~64,73,74 開口部
A 空間
D,D1,D2 ダイシング幅
E1,E2 端子電極
L 突出量
M1~M4,MM 導体層
P メッキ層
R1~R4 レジスト層
S シード層
図1
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