(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】住宅
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
E04H1/02
(21)【出願番号】P 2020013356
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】中原 潤平
(72)【発明者】
【氏名】藤田 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 充伸
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-077529(JP,A)
【文献】特開2001-032539(JP,A)
【文献】特開2007-092422(JP,A)
【文献】特開2019-199786(JP,A)
【文献】意匠登録第1513749(JP,S)
【文献】意匠登録第1607066(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁に隣接して屋外に形成され、上空に向けて吹き抜ける吹き抜けコート部と、
前記吹き抜けコート部に隣接して配置されて、前記外壁から突出しており、その上部全体を覆う第一の軒屋根部が形成される第一バルコニーと、
前記第一バルコニーと反対側で、前記吹き抜けコート部に隣接して配置されて、前記外壁から突出しており、少なくとも一部に軒のない露天部が設けられる第二バルコニーと、
前記第一バルコニーの外側を覆うように形成される第一壁体と、
前記吹き抜けコート部の外側を覆うように形成される第二壁体と、
前記第二壁体から面一に連続して形成され、前記第二バルコニーの
一方向を覆うように形成される第三壁体と、
を備え、
前記第一壁体、前記第二壁体、及び前記第三壁体は連続して形成されており、
前記第二壁体の上端は、前記第一バルコニー及び前記第二バルコニーの高さと略等しい高さであり、
前記第一壁体の上端は、前記第一バルコニーの上部を覆う前記第一の軒屋根部の高さであり、
前記第一壁体の上端と前記第一の軒屋根部の先端とが接合され、
第二バルコニーは、前記吹き抜けコート部に隣接する側に軒のない露天部が形成され、前記吹き抜けコート部から離れた部分の上方に第二の軒屋根部が形成されており、
前記第三壁体は、上端の高さが前記第二の軒屋根部の高さと同じであり、前記第三壁体の上端と第二の軒屋根部の先端とが接合していることを特徴とする住宅。
【請求項2】
前記第一壁体は、内部にブレースが設けられた耐力壁であり、前記第一の軒屋根部はブレースが設けられて、住宅の水平せん断力を前記第一壁体に伝達するものであり、
前記第三壁体は、内部にブレースが設けられた耐力壁であり、前記第二の軒屋根部はブレースが設けられて、住宅の水平せん断力を前記第三壁体に伝達するものであることを特徴とする請求項1に記載の住宅。
【請求項3】
前記第二壁体は前記第一壁体よりも上端の高さが低いことを特徴とする請求項2に記載の住宅。
【請求項4】
前記第一バルコニー、前記吹き抜けコート部、及び前記第二バルコニーは、南側の外壁に沿って形成されることを特徴とする請求項3に記載の住宅。
【請求項5】
前記吹き抜けコート部は南北方向よりも東西方向に長い平面視矩形に形成されることを特徴とする請求項4に記載の住宅。
【請求項6】
前記第二壁体と前記外壁との間に水平梁が架設されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の住宅。
【請求項7】
前記第一バルコニーはその下方に屋内空間が形成されるルーフバルコニーであり、
前記第一バルコニーの下方の屋内空間と、前記吹き抜けコート部とを隔てる外壁に開口部が形成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の住宅。
【請求項8】
3階建の住宅であって、
前記吹き抜けコート部に隣接して屋内側に1階から2階まで吹き抜ける屋内吹き抜け部を有
し、
前記屋内吹き抜け部と前記吹き抜けコート部との間の2階に大開口窓が形成され、
前記屋内吹き抜け部の1階に土間スペースが形成されるとともに、前記吹き抜けコート部は、前記土間スペースと面一なテラス床を有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライバシー性、採光性、及び通風性に配慮した住宅に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅の設計において採光に配慮することは当然であり、例えば、住宅をコの字型に形成して、コの字の内側に中庭を設け、中庭を挟んだ北側にリビング・ダイニングルームのリビングコーナーを配置することで、リビングコーナーが北側にありつつも太陽光の入射を受けることができる住宅が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、一辺側が屋外に向かって開かれた矩形の中庭であり、開かれた側の隣地境界にフェンスを設けて、隣地からの視線を遮ってプライバシーに配慮した住宅が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-138683号公報
【文献】特開2014-181553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような住宅はコの字型の内側に中庭を設けることで、住宅の屋内にある程度は日光を取り入れることができるものの、太陽が低い位置にある場合には、日光を十分に取り込むことが難しい。また、隣地境界に設けられたフェンスでは、住宅の2階以上の階にもうけられたバルコニー等のプライバシーを確保することや、隣地建物の2階以上の階からの視線を遮ることは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、プライバシーを確保しつつ、採光に配慮することができる住宅を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の住宅は、外壁に隣接して屋外に形成され、上空に向けて吹き抜ける吹き抜けコート部と、前記吹き抜けコート部に隣接して配置されて、前記外壁から突出しており、その上部全体を覆う第一の軒屋根部が形成される第一バルコニーと、前記第一バルコニーと反対側で、前記吹き抜けコート部に隣接して配置されて、前記外壁から突出しており、少なくとも一部に軒のない露天部が設けられる第二バルコニーと、前記第一バルコニーの外側を覆うように形成される第一壁体と、前記吹き抜けコート部の外側を覆うように形成される第二壁体と、前記第二壁体から面一に連続して形成され、前記第二バルコニーの一方向を覆うように形成される第三壁体と、を備え、前記第一壁体、前記第二壁体、及び前記第三壁体は連続して形成されており、前記第二壁体の上端は、前記第一バルコニー及び前記第二バルコニーの高さと略等しい高さであり、前記第一壁体の上端は、前記第一バルコニーの上部を覆う前記第一の軒屋根部の高さであり、前記第一壁体の上端と前記第一の軒屋根部の先端とが接合され、第二バルコニーは、前記吹き抜けコート部に隣接する側に軒のない露天部が形成され、前記吹き抜けコート部から離れた部分の上方に第二の軒屋根部が形成されており、前記第三壁体は、上端の高さが前記第二の軒屋根部の高さと同じであり、前記第三壁体の上端と第二の軒屋根部の先端とが接合していることを特徴としている。
【0008】
本発明の住宅は、前記第一壁体は、内部にブレースが設けられた耐力壁であり、前記第一の軒屋根部はブレースが設けられて、住宅の水平せん断力を前記第一壁体に伝達するものであり、前記第三壁体は、内部にブレースが設けられた耐力壁であり、前記第二の軒屋根部はブレースが設けられて、住宅の水平せん断力を前記第三壁体に伝達するものであることを特徴としている。
【0009】
本発明の住宅は、前記第二壁体は前記第一壁体よりも上端の高さが低いことを特徴としている。
【0010】
本発明の住宅は、前記第一バルコニー、前記吹き抜けコート部、及び前記第二バルコニーは、南側の外壁に沿って形成されることを特徴としている。
【0011】
本発明の住宅は、前記吹き抜けコート部は南北方向よりも東西方向に長い平面視矩形に形成されることを特徴としている。
【0012】
本発明の住宅は、前記第二壁体と前記外壁との間に水平梁が架設されることを特徴としている。
【0013】
本発明の住宅は、前記第一バルコニーはその下方に屋内空間が形成されるルーフバルコニーであり、前記第一バルコニーの下方の屋内空間と、前記吹き抜けコート部とを隔てる外壁に開口部が形成されることを特徴としている。
【0014】
本発明の住宅は、3階建の住宅であって、前記吹き抜けコート部に隣接して屋内側に1階から2階まで吹き抜ける屋内吹き抜け部を有し、前記屋内吹き抜け部と前記吹き抜けコート部との間の2階に大開口窓が形成され、前記屋内吹き抜け部の1階に土間スペースが形成されるとともに、前記吹き抜けコート部は、前記土間スペースと面一なテラス床を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明の住宅によると、第一バルコニーは、上部全体を覆う第一の軒屋根部部が形成されるとともに、第一バルコニーの外側を覆うように第一壁体が形成されるので、第一バルコニーは、吹き抜けコート部と隣接する面以外の面は、屋外側に開放されておらず、屋外空間でありながら、外部の視線を気にする必要がないプライバシーを確保できるバルコニーとすることができる。また、第二バルコニーは、少なくとも一部に軒のない露天部が設けられているので、第一バルコニーよりも開放的なバルコニーとすることができる。また、吹き抜けコート部は、第二壁体によって外部からの視線を遮ってプライバシーを確保できるとともに、上空に向けて吹き抜けることで、開放感を得ることができる。そして、吹き抜けコート部が上空に向けて吹き抜けることで、第一バルコニー及び第二バルコニー及び住宅の屋内に自然光を取り入れることができる。
【0016】
また、本発明の住宅によると、第一壁体の上端は、第一バルコニーの上部を覆う第一の軒屋根部の高さであり、第一壁体の上端と第一の軒屋根部の先端とが接合されるので、第一バルコニーは吹き抜けコート部と隣接する面以外の面が完全に閉じられることとなり、外部の視線を気にする必要がない安心感のあるバルコニーとすることができる。また、第一の軒屋根部の先端と第一壁体の上端とが接合されることで、第一壁体に加わる風圧などの外力を第一の軒屋根部を介して住宅で受けることができ、第一壁体の耐風強度を高めることができる。なお、例えば第一の軒屋根部及び第一壁体の内部にブレースなどの耐力部材を設けた場合には、第一壁体に水平耐力を負担させることができ、住宅の外壁に必要な耐力壁量を減らして、吹き抜けコート部に面する外壁に大きな開口部を形成して、住宅屋内への採光性を高めることができる。
【0017】
本発明の住宅によると、第二壁体は第一壁体よりも上端の高さが低いので、第二壁体の上方から吹き抜けコート部に太陽光を入射させやすくなり、吹き抜けコート部を明るくすることができるとともに、吹き抜けコート部を介して住宅の屋内側、第一バルコニー、及び第二バルコニーをより明るくすることができる。
【0018】
本発明の住宅によると、第一バルコニー、吹き抜けコート部、及び第二バルコニーは、南側の外壁に沿って形成されるので、南側から入射する太陽光が上端が下がっている第二外壁の上を通して吹き抜けコート部に入り込みやすくなり、吹き抜けコート部をより明るくすることができる。
【0019】
本発明の住宅によると、吹き抜けコート部は南北方向よりも東西方向に長い平面視矩形に形成されるので、朝夕の東西方向の低い位置から入射する太陽光を吹き抜けコート部に入射させやすくなり、吹き抜けコート部をより明るくすることができ、吹き抜けコート部を介して住宅の屋内もより明るくすることができる。
【0020】
本発明の住宅によると、第二壁体と外壁との間に水平梁が架設されるので、第二壁体に加わる風圧などの外力を水平梁を介して住宅で受けることができ、第二壁体の耐風強度を高めることができる。
【0021】
本発明の住宅によると、第一バルコニーの下方に形成される屋内空間と、吹き抜けコート部とを隔てる外壁に開口部が形成されるので、吹き抜けコート部を介して外部の自然光を屋内空間に導くことができ、屋内空間を明るい空間とすることができる。
【0022】
本発明の住宅によると、吹き抜けコート部に隣接して屋内側に1階から2階まで吹き抜ける屋内吹き抜け部を有するので、吹き抜けコート部を介して2階の窓に入射した太陽光の一部が1階に照射されることとなり、光の届きにくい1階の屋内側を明るい空間とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図6】第一壁体、第二壁体、及び第三壁体の内側の空間を説明する
図4のI-I線断面図。
【
図7】吹き抜けコート部に入射する太陽光を説明する
図4のII-II線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の住宅1の実施形態について各図を参照しつつ説明する。本実施形態における住宅1は、
図8に示すように、3階建の戸建住宅である。住宅1は、例えば重量鉄骨造であり、夫婦2人及び子供3人の5人家族で、ペットとして犬を飼っている居住者を想定している。なお、住宅1は、戸建住宅に限定されるものではなく、例えば集合住宅であってもよく、また、住宅1は、重量鉄骨造に限定されるものではなく、例えば、SRC、RC、軽量鉄骨造、木造等の様々な構造であってもよい。
【0025】
住宅1は、
図1に示すように、東側が接道する東西方向に長い矩形の敷地に建設されている。住宅1の1階は、南東側にガレージ2が形成されている。また住宅1は、北東側に玄関ポーチ3が形成されており、玄関ポーチ3から玄関ドア4を挟んで西側に玄関土間5が形成されている。玄関土間5は、奥行方向(東西方向)に約4m、幅方向(南北方向)が玄関ドア4に近い位置が約3mで、奥側の幅が約2mに狭まって形成されている。玄関土間5は、一般的な住宅の玄関土間5よりも広く、履物を脱ぐことができるとともに、椅子を設けて簡易的に来客と応対することもできる。玄関土間5の西側には上がり框を挟んで、玄関ホール6が形成されている。玄関ホール6は奥行き方向に長く、その突き当りにリビング7に入室可能な建具が設けられている。
【0026】
玄関ポーチ3の南側の屋内には、シューズクローゼット8が形成されており、玄関土間5から土間通路9を介してアクセス可能となっている。土間通路9には、南側がガレージ2に接続する入口が形成されている。土間通路9の西側はフロア収納部10となっている。玄関土間5及び玄関ホール6の南側には、廻り階段の階段室11が形成されており、階段下収納が設けられている。階段室11の南側から西側に沿って1階廊下15が形成されており、フロア収納部10と玄関ホール6とを接続している。1階廊下15の西側には、トイレ室12及びエレベータ室13が形成されている。
【0027】
玄関ホール6の西側の突き当りに形成されるリビング7は、平面視正方形であり、その南側に土間スペース14が形成されている。土間スペース14は、東西方向に約8mで、南北方向に約2mの長方形であり、ガレージ2の西側であり、且つ、1階廊下15、トイレ室12、及びリビング7の南側に形成されている、土間スペース14は、リビング7と同じ床高さでタイル貼りとなっている。なお、土間スペース14の床高さは、リビング7よりも低く形成されていてもよい。土間スペース14は、間仕切壁によって、1階廊下15及びトイレ室12とは行き来不能であり、リビング7との間には障害物がなく、行き来可能となっている。土間スペース14の南側には吹き抜けコート部16が形成されており、土間スペース14との間にほぼ全幅に亘って引き違いの掃き出し窓17が形成されている。掃き出し窓17を開放することで、土間スペース14から吹き抜けコート部16に出入り可能となっている。土間スペース14は、東西方向の中央で開閉可能な仕切り18が設けられており、仕切り18を閉じると、掃き出し窓17、ガレージ2との境界の外壁、トイレ室12などとの境界となる間仕切壁に囲まれた空間が形成され、犬の寝床用のゲージ空間19とすることができる。なお、土間スペース14の上方には、
図7に示すように、1階の天井が設けられておらず、2階に吹き抜けて形成された屋内吹き抜け部20が形成されている。
【0028】
リビング7の西側には、北側にリビングクローゼット21が形成されており、南側にキッチン22が形成されている。キッチン22はリビング7及び土間スペース14の西側となるように配置されている。キッチン22の北側にはパントリー23が形成されており、キッチン22の南側には、ダイニング24が形成されている、ダイニング24は吹き抜けコート部16の西側に形成されることとなり、ダイニング24と吹き抜けコート部16との境界となる外壁には、掃き出し窓25が設けられており、吹き抜けコート部16からダイニング24へと光を取り入れることができる。
【0029】
吹き抜けコート部16は、上空に向かって吹き抜けており、例えば、土間スペース14と面一なタイル貼りのテラス床となっている。吹き抜けコート部16は、東西方向に約8mで、南北方向に約3mの長方形に形成されている。なお、吹き抜けコート部16の寸法は、これに限定されるものではなく、採光性を保つためには南北方向に3m以上であることが好ましく、東西方向には例えば20m以下であることが好ましい。なお、吹き抜けコート部16が東西方向に長い場合は、後述のように第二壁体26の耐風性を高めるために少なくとも5.5m以下の間隔で、第二壁体26と外壁とを繋ぐ水平梁を配置することが好ましい。また、吹き抜けコート部16は、その一部が樹木を植える花壇となっている。吹き抜けコート部16は、その東側にガレージ2が形成されており、ガレージ2と吹き抜けコート部16との間に通り抜け可能な扉27が形成されている。扉27は閉じられたときにペットの犬が通り抜けすることができないように隙間が小さく形成されている。
【0030】
このように住宅1の1階は掃き出し窓17を開くことで、吹き抜けコート部16、土間スペース14、リビング7などが一体の空間となるので、例えば犬などのペットを屋外の吹き抜けコート部16で自由に遊ばせることや、土間スペース14で休ませることができ、ペットにとっても居心地のよい空間とすることができる。
【0031】
住宅1の2階は、
図2に示すように、北西側に間仕切家具で2つに区分けした子供部屋28が形成されるとともに、南西側に独立したもう一つの子供部屋29が形成されている。南側の子供部屋29の東には、ピアノ室30が形成されている。ピアノ室30は防音室であることが好ましい。ピアノ室30は、吹き抜けコート部16側に腰窓31が形成されており吹き抜けコート部16から光を採り入れることができる。なお、本発明における「屋内空間」は、本実施形態においては1階のダイニング24及び2階のピアノ室30がこれに相当する。また、本発明における「開口部」は、本実施形態においては、ダイニング24の掃き出し窓25及びピアノ室30の腰窓31がこれに相当する。
【0032】
北側の子供部屋28の東側には、例えば卓球台が設置されたプレイルーム32が形成されている。プレイルーム32は、2つの子供部屋28,29及びピアノ室30への動線となっている。プレイルーム32の南側は1階の土間スペース14から吹き抜けて形成された屋内吹き抜け部20が形成されており、プレイルーム32と屋内吹き抜け部20との境界にカウンタテーブル33が設置されている。屋内吹き抜け部20の2階には吹き抜けコート部16との境界となる外壁にはめ殺しの大開口窓34が形成されている。プレイルーム32は屋外の吹き抜けコート部16、及び屋内吹き抜け部20を介して、太陽光を採り入れることができ、比較的明るい空間とすることができる。
【0033】
プレイルーム32の東側には、2階階段ホール35が設けられており、エレベータ室13、及びトイレ室36が2階階段ホール35にアクセス可能に設けられている。2階階段ホール35の東側には、サニタリールーム37、及び階段室11が形成されており、サニタリールーム37を通過して東側に、洗濯家事室38及びバスルーム39が形成されている。階段室11の南側には2階廊下40が2階階段ホール35からバスルーム39の西側の間仕切壁に突き当たるように形成されている。なお、2階廊下40の上方は3階に吹き抜けて形成されている。2階廊下40の南側で、且つ、屋内吹き抜け部20及び吹き抜けコート部16の東側には、ウォークインクローゼット41を備えた主寝室42が形成されている。主寝室42の東側には、2階バルコニー43が形成されており、主寝室42と2階バルコニー43との間には掃き出し窓44が設けられて、出入り自在となっている。また主寝室42と吹き抜けコート部16との間の外壁には引き違いの腰窓45が設けられており、吹き抜けコート部16からの採光及び通風を確保している。
【0034】
このように住宅1の2階は、子供が遊ぶことや学習することができる大きなプレイルーム32を有しているので子育てに適した空間とすることができ、プレイルーム32は屋内吹き抜け部20を介して1階のリビング7・ダイニング24・キッチン22との繋がった居住者同士が適度な距離感で互いを感じることができる空間とすることができる。
【0035】
住宅1の3階は、北側の外壁が1階及び2階よりもセットバックして形成されている。3階の北西角には、サニタリールーム46が形成されており、サニタリールーム46の南側には、当該サニタリールーム46から出入り可能なバスルーム47が形成されている。この3階のサニタリールーム46及びバスルーム47はゲスト用に設けられるものであり、サニタリールーム46及びバスルーム47の東側にゲストルーム48が形成されている。ゲストルーム48の南側の外壁には第一バルコニー49に出入り可能な掃き出し窓50と、吹き抜けコート部16から光を採り入れるはめ殺しの大開口窓51とが形成されている。ゲストルーム48の東側には、エレベータ室13、トイレ室52が形成され、その東側に形成された3階階段ホール53から出入り可能に構成されている。3階階段ホール53の東側には階段室11及び2階からつながる吹き抜け54が形成されている。階段室11及び吹き抜け54の東側には和室55が形成されており、吹き抜け54の南側は、ゲストルーム48と和室55とを繋ぐ3階廊下56が形成されている。3階廊下56は2mの幅を有しており、ベンチを設置して寛ぐなどの多用途に利用できるスペースである。
【0036】
このように住宅1の3階は、主にゲストが寝泊まりして寛ぐことができる空間となっているので、例えば、親類や友人が泊まることもでき、又は、ホームステイの留学生の受け入れや、民泊などに利用することができる。
【0037】
住宅1の3階の南西には第一バルコニー49が形成されている。第一バルコニー49は、2階の南側の子供部屋29及びピアノ室30の上に形成されるルーフバルコニーである。第一バルコニー49にはゲストルーム48との境界に設けられた掃き出し窓50を介して、ゲストルーム48から出入り可能に形成されている。第一バルコニー49の外側には第一壁体57が設けられる。なお、「第一バルコニーの外側」とは、第一バルコニー49が敷地の外側に向かい合う側をいい、住宅1の外壁及び吹き抜けコート部16に隣接していない側をいう。具体的には、第一バルコニー49の西側及び南側であり、第一壁体57は、第一バルコニー49の西側及び南側を覆うように設けられている。第一壁体57は、2階の南側の子供部屋29及びピアノ室30の外壁と面一に形成されている。
【0038】
また、第一バルコニー49の上方には、当該第一バルコニー49の全面を覆う第一の軒屋根部58が形成されている。第一の軒屋根部58は住宅1の屋根高さと同じ高さであり、住宅1の屋根から連続して形成されている。第一壁体57の上端は第一の軒屋根部58の軒高さと同じ高さであり、第一壁体57の上端と第一の軒屋根部58の先端とは、第一壁体57及び住宅1に加わる外力を伝達可能に接合されている。これによって、例えば風圧などの外力によって、第一壁体57に倒れる方向の力が加わった場合であっても、第一壁体57に加わった力を第一の軒屋根部58を介して、住宅1の構造躯体全体で受けることができ、第一壁体57の耐風性を高めることができる。また、第一バルコニー49は、第一の軒屋根部58が第一バルコニー49の上部の全面を覆っており、第一壁体57が第一バルコニー49の西側及び南側を覆っているので、吹き抜けコート部16と対向する面以外の面は、屋外側に開放されておらず、屋外の空間でありながら、外部の視線を気にする必要がないプライバシーを確保できるバルコニーとすることができる。
【0039】
なお、第一壁体57は、
図8に示すように、内部にブレース59が設けられた耐力壁であってもよい。第一壁体57を耐力壁とする場合は、第一の軒屋根部58にもブレース59を設けることで、住宅1に加わる水平せん断力を第一壁体57に伝達することができ、第一壁体57が当該せん断力を負担することができる。このようにすれば、住宅1の外壁に必要な耐力壁量を減らすことができるので、
図6に示すように、吹き抜けコート部16や第一バルコニー49に面する外壁に大きな窓50,51を形成することができる。
【0040】
第一バルコニー49の西側には吹き抜けコート部16が形成されている。吹き抜けコート部16は1階から上空まで吹き抜けて形成されている。吹き抜けコート部16の外側には第二壁体26が形成される。なお、「吹き抜けコート部の外側」とは、吹き抜けコート部16が敷地の外側の向かい合う側をいい、住宅1の外壁、第一バルコニー49及び第二バルコニー60に隣接していない側をいう。具体的には、吹き抜けコート部16の南側であり、第二壁体26は、吹き抜けコート部16の南側を覆うように設けられている。第二壁体26は、第一壁体57の南側の面と面一で、第一壁体57から連続するように形成されており、地面から3階の床高さとほぼ等しい高さまで立ち上がって形成されている。
【0041】
第一壁体57は、住宅1の屋根高さと同じ高さであり、第二壁体26は、3階の床高さであるので、第二壁体26は第一壁体57よりも上端の高さが低く形成されている。このように、第二壁体26は第一壁体57よりも上端の高さが低いので、
図7に示すように、第二壁体26の上方から吹き抜けコート部16に太陽光を入射させやすくなり、吹き抜けコート部16を明るくすることができるとともに、吹き抜けコート部16を介して住宅1の屋内側、第一バルコニー49、及び第二バルコニー60をより明るくすることができる。
【0042】
吹き抜けコート部16には第一水平梁61及び第二水平梁62が架設されている。第一水平梁61は、吹き抜けコート部16の東西方向の中央に架設して設けられており、住宅1の1階と2階の間の外壁から第二壁体26の中央に南北に伸びている。また、第二水平梁62は、住宅1の2階と3階の間の外壁から第二壁体26の上端に向かって南北に伸びて架設されている。第一水平梁61と第二水平梁62と、は上下に重なるように配置されている。なお、吹き抜けコート部16と第二バルコニー60との境界で、住宅1の2階と3階の間の外壁から第二壁体26及び第三壁体63の境界の上端に向かって第三水平梁64と、が架設されている。このような第一水平梁61、第二水平梁62、及び第三水平梁64が架設されることによって、第二壁体26や第三壁体63は、住宅1の構造躯体と一体となるので、第二壁体26や第三壁体63に風圧などの外力が加わった場合にも第二壁体26及び第三壁体63が倒れる方向への外力を第一水平梁61、第二水平梁62、及び、第三水平梁64が受けることができるので、第二壁体26及び第三壁体63を耐風性の高い壁体とすることができる。
【0043】
吹き抜けコート部16の西側には第二バルコニー60が形成されている。第二バルコニー60は、2階の主寝室42及び2階バルコニー43の上に形成されている。第二バルコニー60は、3階廊下56との間の外壁に掃き出し窓67が形成されており、3階廊下56から第二バルコニー60に出入り可能となっている。第二バルコニー60は、西側部分が軒のない露天部65となっている。また、第二バルコニー60の東側部分は、その上方に第二の軒屋根部66が形成されている。第二の軒屋根部66は住宅1の屋根と同じ高さで住宅1の屋根から連続して形成されている。第二バルコニー60の南側には、第三壁体63が形成される。第三壁体63は、上端の高さが第二の軒屋根部66の高さと同じであり、第三壁体63の上端と第二の軒屋根部66の先端とが接合している。
【0044】
これによって、例えば風圧などの外力によって、第三壁体63に倒れる方向の力が加わった場合であっても、第三壁体63に加わった力を第二の軒屋根部66を介して、住宅1の構造躯体全体で受けることができ、第三壁体63の耐風性を高めることができる。また、第二バルコニー60は、東側が開かれており、第二バルコニー60の西側には軒のない露天部65が形成されているので、第一バルコニー49に比べて開放感のあるバルコニーとすることができる。また、第二バルコニー60の西側に軒のない露天部65が形成されることで、
図6に示すように、吹き抜けコート部16及び吹き抜けコート部16の西側に設けられた1階のダイニング24や2階のピアノ室30に朝の東側からの太陽光を採り入れやすくすることができる。なお、吹き抜けコート部16は東西方向の長さが8mと長く形成されているので、太陽が低い位置にある場合であっても1階にまで光を採り入れやすい。
【0045】
なお、第三壁体63は、
図8に示すように、内部にブレース59が設けられた耐力壁であってもよい。第三壁体63を耐力壁とする場合は、第二の軒屋根部66にもブレース59を設けることで、住宅1に加わる水平せん断力を第三壁体63に伝達し、第三壁体63が当該せん断力を負担することができる。このようにすれば、住宅1の外壁に必要な耐力壁量を減らすことができるので、
図6に示すように、吹き抜けコート部16や第二バルコニー60に面する外壁に大きな開口の掃き出し窓67を形成することができる。
【0046】
以上のように本実施形態の住宅1によると、隣接する吹き抜けコート部16側のみが開いており、屋外でありながらプライバシーを守ることができる第一バルコニー49と、第一バルコニー49よりも開放感のある第二バルコニー60と、が上空まで吹き抜ける吹き抜けコート部16を挟んで配置されることで、様々なシーンに応じて居住者がプライバシー及び開放感のバランスをとることができ、居心地よく生活することができる。
【0047】
また、
図6に示すように、吹き抜けコート部16が東西方向に長く、吹き抜けコート部16の3階東側に形成された第二バルコニー60の西側が露天部65となっていることで、太陽が東側にある午前中の光を吹き抜けコート部16などに取り入れやすく、採光性の高い住宅1とすることができる。さらに、
図7に示すように、第二壁体26の上端が3階の床高さとほぼ同じ高さであり、第一壁体57や第三壁体63よりも低いので、例えば冬の南側の低い位置の太陽から入射する光であっても吹き抜けコート部16に取り入れやすい。南側から吹き抜けコート部16に入射した太陽光の一部は、外壁に設けられた大開口窓34,51及び掃き出し窓17を通過して住宅1の屋内側に入射するとともに、太陽光の他の部分は、外壁自体、大開口窓34,51、及び掃き出し窓17で反射して第二壁体26の吹き抜けコート部16側の面に照射する。これによって、吹き抜けコート部16がより明るくなるとともに、住宅1の屋内側を明るくすることができる。吹き抜けコート部16に隣接する住宅1の屋内側には、1階の土間スペース14から2階まで吹き抜ける屋内吹き抜け部20が形成されているので、2階の大開口窓34から入射した南側の太陽光が2階のプレイルーム32のみならず、1階のリビング7にも照射されることとなるので、住宅1の採光性を高めることができる。
【0048】
本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る住宅1は、子育て世代の住宅1で、ペットを飼育するとともに、例えばホームステイを受け入れるなどの活動に関心の高い居住者が住まう住宅1として好適である。
【符号の説明】
【0050】
1 住宅
16 吹き抜けコート部
20 屋内吹き抜け部
24 ダイニング(屋内空間)
25 掃き出し窓(開口部)
26 第二壁体
30 ピアノ室(屋内空間)
31 腰窓(開口部)
49 第一バルコニー
57 第一壁体
58 第一の軒屋根部
60 第二バルコニー
61 第一水平梁(水平梁)
62 第二水平梁(水平梁)
65 露天部