(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】A/D変換器
(51)【国際特許分類】
H03M 1/14 20060101AFI20240130BHJP
H03M 1/40 20060101ALI20240130BHJP
H03M 3/04 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H03M1/14 A
H03M1/40
H03M3/04
(21)【出願番号】P 2020016232
(22)【出願日】2020-02-03
【審査請求日】2021-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】藤本 悠
(72)【発明者】
【氏名】根塚 智裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 邦彦
【審査官】及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-039490(JP,A)
【文献】特開2017-216561(JP,A)
【文献】特開2019-122013(JP,A)
【文献】特開2018-133702(JP,A)
【文献】特開2015-133626(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0033613(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/00-1/88
H03M 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アナログ入力信号を2ビット以上の分解能を持つA/D変換器をΔΣ型動作させることでデジタル信号に変換するメインA/D変換器(110、1、21、31)と、
前記メインA/D変換器の量子化誤差のアナログ出力を増幅して出力する増幅回路(120)と、
前記メインA/D変換器の動作後に前記増幅回路により増幅された量子化誤差のアナログ出力をデジタル信号に変換して出力するサブA/D変換器(130、2、21、50、60)と、
を備え、
前記メインA/D変換器は、1ビットまたは1.5ビットの分解能のA/D変換器を複数回実行して2ビット以上の分解能を得るA/D変換器をΔΣ型動作させる構成とし、
前記サブA/D変換器は、巡回型のA/D変換器であり、
前記サブA/D変換器の1フェーズは、前記メインA/D変換器の1フェーズより短くなっており、
前記増幅回路は、前記メインA/D変換器(1、21、31)の構成を利用して一体に構成されており、
前記メインA/D変換器は、アナログ入力信号を2ビット以上の分解能を持つA/D変換器をΔΣ型動作させることでデジタル信号に変換する
変換動作を実施するとともに、量子化誤差のアナログ出力を増幅して出力する増幅動作を実施し、
前記サブA/D変換器(2、21、50、60)は、前記メインA/D変換器の動作後の量子化誤差のアナログ出力をデジタル信号に変換して出力し、
前記メインA/D変換器は、前記増幅動作を1回の前記変換動作よりも長い時間で実施
し、
前記巡回型のA/D変換器は、サンプラおよびD/A変換器を備え、積分回路を含んだ他の回路構成を前記メインA/D変換器の構成を共用する構成とされ、前記変換動作および前記増幅動作の終了後に、A/D変換処理を実施するように構成されるA/D変換器。
【請求項2】
前記メインA/D変換器は、2ビット以上の分解能のA/D変換器を複数回実行してより高ビットを得るA/D変換器をΔΣ型動作させる構成とした請求項1に記載のA/D変換器。
【請求項3】
前記巡回型のA/D変換器は、第1A/D変換器および第2A/D変換器を備え、複数サイクルに渡るA/D変換処理を前記第1A/D変換器および前記第2A/D変換器を交互に実行するように構成された請求項1
または2に記載のA/D変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、A/D変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
ΔΣ型A/D変換器を高速化するものとして、例えば、非特許文献1に示されるようなマルチビットΔΣ型A/D変換器と巡回型ΔΣ型A/D変換器を組み合わせた構成のハイブリッド型のものがある。これはマルチビットΔΣによりΔΣA/D変換の速度を向上させるとともに、巡回型とのハイブリッドとすることでさらなる高速化を実現する技術であるが、マルチビットDACの分割レベルが増えるほど巡回型ADCのコンパレータや基準電圧の精度の要求が高くなるというトレードオフが生じている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】T.Katayama, et al.,「A 1.25MS/s Two-Step Incremental ADC with 100dB DR and 110dB SFDR」、2018 VLSI、 2018、C19-4
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-103856号公報
【文献】特許第6124016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、その目的は、メインA/D変換器で上位ビットを生成し、アナログ出力となる量子化誤差をサブA/D変換器によって下位ビットを生成するものにおいて、後段のサブA/D変換器を高性能なものを用いずにA/D変換機能を高めることができるA/D変換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載のA/D変換器は、アナログ入力信号を2ビット以上の分解能を持つA/D変換器をΔΣ型動作させることでデジタル信号に変換するメインA/D変換器(110、1、21、31)と、前記メインA/D変換器の量子化誤差のアナログ出力を増幅して出力する増幅回路(120)と、前記メインA/D変換器の動作後に前記増幅回路により増幅された量子化誤差のアナログ出力をデジタル信号に変換して出力するサブA/D変換器(130、2、21、50、60)とを備える。前記メインA/D変換器は、1ビットまたは1.5ビットの分解能のA/D変換器を複数回実行して2ビット以上の分解能を得るA/D変換器をΔΣ型動作させる構成とし、前記サブA/D変換器は、巡回型のA/D変換器である。
【0007】
上記構成を採用することにより、入力されるアナログ電圧Vinに対して、2ビット以上の分解能のメインA/D変換器においてΔΣ型動作を実行してデジタルデータ変換し、量子化誤差のアナログ出力を増幅回路に出力する。増幅回路は、量子化誤差のアナログ出力を増幅してサブA/D変換器に出力する。サブA/D変換器は増幅回路により増幅されたアナログ出力をデジタルデータに変換するので、後段のサブA/D変換器を高性能なものを用いずにA/D変換機能を高めることができる。
【0008】
請求項1に記載のA/D変換器において、前記増幅回路は、前記メインA/D変換器(1、21、31)の構成を利用して一体に構成されている。前記メインA/D変換器は、アナログ入力信号を2ビット以上の分解能を持つA/D変換器をΔΣ型動作させることでデジタル信号に変換する変換動作を実施するとともに、量子化誤差のアナログ出力を増幅して出力する増幅動作を実施する。前記サブA/D変換器(2、21、50、60)は、前記メインA/D変換器の動作後の量子化誤差のアナログ出力をデジタル信号に変換して出力する。前記メインA/D変換器は、前記増幅動作を1回の前記変換動作よりも長い時間で実施する。前記巡回型のA/D変換器は、サンプラおよびD/A変換器を備え、積分回路を含んだ他の回路構成を前記メインA/D変換器の構成を共用する構成とされ、前記変換動作および前記増幅動作の終了後に、A/D変換処理を実施するように構成される。
【0009】
上記構成を採用することにより、入力されるアナログ電圧Vinに対して、2ビット以上の分解能を持つメインA/D変換器をΔΣ型変調動作させることでデジタル信号に変換し、この後、量子化誤差のアナログ出力を増幅して出力する。サブA/D変換器はメインA/D変換器からの増幅されたアナログ出力をデジタルデータに変換するので、後段のサブA/D変換器を高性能なものを用いずにA/D変換機能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
(基本実施形態)
以下、基本実施形態について、
図1を参照して説明する。
図1は、基本的な構成を示すもので、A/D変換器100は、マルチビットΔΣ変調型のメインA/D変換器110、増幅器120、サブA/D変換器130、制御回路140および加算器150を備えるハイブリッド型のA/D変換器を構成している。
【0012】
上記構成において、制御回路140は、メインA/D変換器110、増幅器120およびサブA/D変換器130に対して、クロックに基づいて内部のスイッチの切換動作を制御している。
【0013】
メインA/D変換器110は、入力端子100aから入力されるアナログ電圧Vinを取り込み、マルチビットΔΣ変調処理を実行することにより上位ビットのデジタル変換出力を出力信号MSBとして生成して加算器150に出力する。このとき、メインA/D変換器110は、下位ビットのデータに対応する量子化誤差のアナログ出力(Residual)を増幅器120に出力する。増幅器120は、入力された量子化誤差のアナログ出力を増幅してサブA/D変換器130に出力する。
【0014】
サブA/D変換器130は、メインA/D変換器110から出力される上位ビットの出力信号MSBとサブA/D変換器130から出力される下位ビットの出力信号LSBとを加算して、入力信号Vinに対応するデジタル変換値を生成し、デジタル出力Doutとして出力端子100bから出力する。
【0015】
このような基本実施形態によれば、メインA/D変換器110により、入力電圧Vinに対して上位ビットのA/D変換を行い、変換後の量子化誤差のアナログ出力を増幅器120において増幅してサブA/D変換器130に出力する構成としているので、サブA/D変換器130による下位ビットのA/D変換処理において要求される演算性能を緩和することができるようになる。換言すれば、サブA/D変換器130を、増幅器120を設けない構成で用いる従来相当の構成に比べて変換精度を高めることができる。
【0016】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態について、
図2~
図6を参照して説明する。この実施形態では、A/D変換器10として、上記した基本実施形態の構成中、増幅器120をメイン増幅器110の構成を利用して一体に構成している。
図2において、A/D変換器10は、ΔΣ変調型のメインA/D変換器1と例えば巡回型のサブA/D変換器2を備えるハイブリッド型のA/D変換器を構成している。サブA/D変換器2は巡回型のものに限らず、種々のタイプのものを用いることができる。A/D変換器10は、加算器8を備えるとともに、アナログ入力電圧Vinの入力端子10aおよびデジタル信号出力Doutの出力端子10bを備えている。メインA/D変換器1は、サンプラ3、積分回路4、量子化器5、ロジック回路6、D/A変換器7などを備えている。
【0017】
サンプラ3は、サンプリング容量Csおよび4つのスイッチSs1~Ss4を備えている。入力端子10aは、スイッチSs1、サンプリング容量CsおよびスイッチSs3を直列に介して積分回路4に接続される。サンプリング容量Csの入力側はスイッチSs4を介して基準電位であるアナロググランドに接続され、出力側はスイッチSs2を介して同じく基準電位であるアナロググランドに接続される。4つのスイッチSs1~Ss4は、ロジック回路6によりオンオフの動作制御がなされる。なお、アナロググランドは、0Vとは限らず、基準電位として所定の電位が設定されれば良い。
【0018】
ロジック回路6は、サンプラ3のスイッチSs1~Ss4の動作制御を行うことで、サンプル動作およびホールド動作を実施する。ロジック回路6は、サンプラ3によるサンプル動作では、スイッチSs1、Ss2をオン、スイッチSs3、Ss4をオフさせ、ホールド動作では、スイッチSs1、Ss2をオフ、スイッチSs3、Ss4をオンさせる。
【0019】
積分回路4は、アンプ4a、積分容量Cf1、Cf2、スイッチSf11、Sf12、Sf14、Sf21、Sf22、Sf24を備えている。アンプ4aの反転入力端子は、ノードN1を介してサンプラ2のスイッチSs3に接続され、アンプ4aの非反転入力端子はアナロググランドに接続されている。アンプ4aの出力端子はノードN2および量子化器5に接続されている。アンプ4aは、サンプラ3およびD/A変換器7からの転送入力に応じて積分処理を行った結果をアナログ出力Aoutとして出力する。
【0020】
積分容量Cf1は、一端子がノードN1に接続されると共にスイッチSf12を介してアナロググランドに接続され、他端子がスイッチSf11を介してノードN2に接続されると共にスイッチSf14を介してアナロググランドに接続されている。積分容量Cf2は、一端子がノードN1に接続されると共にスイッチSf22を介してアナロググランドに接続され、他端子がスイッチSf21を介してノードN2に接続されると共にスイッチSf24を介してアナロググランドに接続されている。なお、この実施形態では、積分容量Cf1とCf2とは同じ容量値に設定されているが、異なる容量値に設定することも可能である。
【0021】
量子化器5は、マルチビット処理をするもので、
図3に示すように、2個のコンパレータ5a、5bを備えている。コンパレータ5aは、反転入力端子に閾値電圧-Vth2がスイッチSq1を介して入力され、閾値電圧-Vth1がスイッチSq2を介して入力される。コンパレータ5bは、非反転入力端子に閾値電圧+Vth1がスイッチSq3を介して入力され、閾値電圧+Vth2がスイッチSq4を介して入力される。コンパレータ5aの非反転入力端子およびコンパレータ5bの反転入力端子には積分回路4のアナログ出力Aoutが入力される。
【0022】
コンパレータ5aは、アナログ出力Aoutを、スイッチSq1、Sq2の切り替えにより、閾値電圧-Vth1あるいは-Vth2と比較して、大きい場合にハイレベルの出力信号Vout1を出力する。また、コンパレータ5bは、アナログ出力Aoutを、スイッチSq3、Sq4の切り替えにより、閾値電圧+Vth1あるいは+Vth2と比較して、小さい場合にハイレベルの出力信号Vout2を出力する。出力信号Vout1およびVout2を組み合わせた信号が量子化信号Qとして出力される。
【0023】
2つのコンパレータ5a、5bに入力される閾値電圧-Vth2、-Vth1、+Vth1、+Vth2は次の関係で設定されている。すなわち、アナロググランドを基準電位として、+Vth2および+Vth1が正の閾値電圧であり、閾値電圧+Vth2は閾値電圧+Vth1よりも大きい値に設定されている(+Vth2>+Vth1>0)。また、アナロググランドを基準電位として、-Vth1、-Vth2が負の閾値電圧であり、閾値電圧-Vth2は閾値電圧-Vth1よりも小さい値に設定されている(-Vth2<-Vth1<0)。
【0024】
より具体的には、アナロググランドを基準電位として設定される基準電圧Vrefに対して、次式のように設定されている。
-Vth2=-(3/4)Vref
-Vth1=-(1/4)Vref
+Vth1=+(1/4)Vref
+Vth2=+(3/4)Vref
【0025】
量子化器5は、積分回路4からアナログ出力Aoutが入力されると、スイッチの切り替え制御により上記した4つの閾値電圧と比較を行って、比較結果Vout1およびVout2を多ビットの量子化出力Qとしてロジック回路6に出力する。
【0026】
ロジック回路6は、
図4に示すように、内部にシーケンサ6a、デコーダ6b、SW(スイッチ)制御部6c、DAC制御部6dおよびデシメーションフィルタ6eの機能ブロックを備えている。シーケンサ6aは、予め設定された処理手順に従って、デコーダ6b、SW制御部6cおよびDAC制御部6dに制御信号を出力する。
【0027】
量子化結果Qとして入力される出力信号Vout1およびVout2は、デコーダ6bにてデコード処理が行われ、この後、デシメーションフィルタ6eにおいて上位ビットの出力信号MSBが生成された結果が加算器8に出力される。ロジック回路6は、入力される量子化結果Qに対応してDAC制御部6dによりDAC制御信号を生成してD/A変換器7に出力する。さらに、ロジック回路6は、シーケンサ6aからのシーケンス信号に基づいてSW制御部6cによりサンプラ3、積分回路4のスイッチを制御するSW制御信号を出力する。
【0028】
D/A変換器7は、アナログ電位を与えるDAC部7a、DAC容量Cdおよびこれらの制御をするための7個のスイッチSdt2、Sdt1、Sdm、Sdb1、Sdb2、Sd1、Sd3を備える。また、DAC部7aは、参照電位として図示しない電位生成部により5つのアナログ電位Vrefp2、Vrefp1、Vcm、Vrefm1、Vrefm2を設定する。参照電位Vcmは基準電位であるアナロググランドとして設定され、Vrefp1、Vrefp2はアナロググランドよりも高い電位に設定され、Vrefm2、Vrefm1はアナロググランドよりも低い電位に設定される。
【0029】
なお、Vrefp1とVrefm1は、参照電位Vcmが0Vの場合には、互いに絶対値が同一で正負が逆の関係にあり、Vrefp1=-Vrem1を満たすように設定される。同様に、Vrefp2とVrefm2は、参照電位Vcmが0Vの場合には、互いに絶対値が同一で正負が逆の関係にあり、Vrefp2=-Vrem2を満たすように設定される。
【0030】
スイッチSdt2、Sdt1、Sdm、Sdb1、Sdb2は選択スイッチとして機能するもので、それぞれVrefp2、Vrefp1、Vcm、Vrefm1、Vrefm2をDAC容量Cdの入力側に接続する。DAC容量Cdの出力側は、スイッチSd2を介してアナロググランドに接続されると共に、スイッチSd3を介して積分回路4のアンプ4aの反転入力端子に接続される。5個のスイッチSdt2、Sdt1、Sdm、Sdb1、Sdb2は、ロジック回路6によりDAC制御信号が与えられてオンオフの動作制御がなされる。
【0031】
この場合、ロジック回路6は、量子化器5から出力される量子化結果Qに対応した制御信号に基づいて、サンプル動作およびホールド動作を実施する。ロジック回路6は、サンプル動作では、スイッチSd2をオンさせると共に選択スイッチSdt2、Sdt1、Sdm、Sdb1、Sdb2のうちのいずれかをオンさせる。また、ロジック回路6は、ホールド動作では、スイッチSd2をオフさせてスイッチSd3をオンさせると共に選択スイッチSdt2、Sdt1、Sdm、Sdb1、Sdb2のうちのいずれかをオンさせる。
【0032】
D/A変換器7により設定されるアナログ電位Vrefp2、Vrefp1、Vcm、Vrefm1、Vrefm2は、基準電圧Vrefに対して、例えば次のように設定されている。
Vrefp2=+Vref
Vrefp1=+(1/2)Vref
Vcm=0
Vrefm1=-(1/2)Vref
Vrefm2=-Vref
【0033】
サブA/D変換器2は、メインA/D変換器1により処理されたノードN2に現れるアナログ出力Aoutを入力し、デジタル値に変換して出力する。サブA/D変換器2は、メインA/D変換器1による変換処理が終了した時点で、積分回路4により増幅されたアナログ出力AoutからA/D変換処理を実行して下位ビットの出力信号LSBを生成して加算器8に出力する。
【0034】
加算器8は、メインA/D変換器1から出力される上位ビットの出力信号MSBとサブA/D変換器2から出力される下位ビットの出力信号LSBとを加算して、入力信号Vinに対応するデジタル変換値を生成し、デジタル出力Doutとして出力端子10bから出力する。
【0035】
次に、上記構成の作用について、
図5および
図6も参照して説明する。なお、
図5に示すタイミングチャートでは、各スイッチの動作状態を、オン状態をハイレベル「H」で示し、オフ状態をローレベル「L」で示している。また、クロックのサイクルを0、1、・・、2m-1、2mなどとし、クロックの変化タイミングを時刻t0、t1、・・、t(2m)、t(2m+1)などとする。
【0036】
また、
図5に示すタイミングチャートでは、サンプル動作は「Sample」、ホールド動作は「Hold」、リセット動作は「Reset」、待機状態は「Wait」として示している。
【0037】
メインA/D変換器1およびサブA/D変換器2は、それぞれ、2サイクルで1フェーズつまり一回のΔΣ変調動作を行うように構成されている。メインA/D変換器1は、フェーズΔΣ1のサイクル1からフェーズΔΣmのサイクル2mまでのmフェーズのΔΣ変調処理期間として実行する。また、サブA/D変換器2は、メインA/D変換器1によるフェーズΔΣmのサイクル2mまでのmフェーズのΔΣ変調処理期間、およびフェーズΔΣ(m+1)のサイクル2m+1および2m+2までの増幅処理期間中は、待機状態となっており、任意の期間で下位ビットのA/D変換処理を実行する。
【0038】
まず、動作開始時のリセットサイクル0の期間では、メインA/D変換器1は、積分回路4のスイッチSf11、Sf21をオフ、スイッチSf12、Sf14、Sf22、Sf24をオンにして積分容量Cf1およびCf2の電荷を放電するリセット動作を行う。また、サンプラ3においては、サイクル0および1の期間で、スイッチSs1、Ss2をオン、スイッチSs3、Ss4をオフにして入力端子10aをサンプリング容量Csに接続して入力信号Vinのサンプル動作を行う。
【0039】
次のフェーズΔΣ1のサイクル1および2は、メインA/D変換器1においては、ΔΣ変調動作となり、サイクル1では前述のとおりサンプラ3によるサンプル動作が継続される。そして、後半のサイクル2では、サンプラ3のスイッチSs1、Ss2をオフ、スイッチSs3、Ss4をオンさせることでサンプリング容量Csの電荷をノードN1から積分回路4側に転送する。これにより、積分回路4は、アナログ出力Aoutが入力電圧Vinに相当する出力となり、量子化器5において1回目の量子化処理が行われる。
【0040】
このとき、量子化器5においては、4つの閾値電圧+Vth2、+Vth1、-Vth1、-Vth2によって、スイッチSq1、Sq2、Sq3、Sq4を切り替え制御することで、アナログ出力Aoutを5段階の区分で判定し、判定結果Vout1およびVout2を量子化信号Qとしてロジック回路6に出力する。
【0041】
ロジック回路6においては、量子化器5からのVout1およびVout2の量子化信号Qに基づいて、デコード処理を行い、この結果に応じてDAC制御信号をD/A変換器7に出力してスイッチの切り替え制御を行い、SW制御信号をサンプラ3および積分回路4に出力してスイッチの切り替え制御を行う。
【0042】
これにより、メインA/D変換器1においては、2回目以降のΔΣ変調処理において、量子化器5の量子化信号Qの値に応じて選択されたD/A変換器7から出力されるアナログ電圧がサンプル信号に差分として印加され、積分回路4のアナログ出力Aoutを繰り返し量子化器5により量子化処理を実施する。
【0043】
なお、このときアナログ出力Aoutは、
図6の左側に示すように、入力電圧Vinが4つの閾値電圧により量子化され、-1/4・Vrefから+1/4・Vrefの間に残る量子化誤差について更に次の段のΔΣ変調処置でさらに量子化されていく。なお、
図6の左側に横軸で示す入力電圧Vinは、D/A変換器7がホールド動作を実施する前のAoutを示しており、縦軸で示すAoutはホールド動作を実施した後のAoutを示している。また、
図6の右側に縦軸で示す入力電圧Vinおよび横軸で示す出力Aoutも同様の趣旨のものである。
【0044】
このようにして、サイクル2mまでに、メインA/D変換器1によりフェーズΔΣmまでのΔΣ変調処理が実行されると、ロジック回路6から所定の上位ビットの出力信号MSBが加算器8に出力される。
【0045】
この後メインA/D変換器1においては、フェーズΔΣ(m+1)のサイクル2m+1から2m+2において、D/A変換器7による出力が積分回路4に転送されると、量子化誤差分となるアナログ出力AoutがノードN2に出力される。これにより、次のフェーズΔΣ(m+2)で、積分容量Cf1、Cf2の接続状態を切り替えスイッチSf11がオフ、スイッチSf14がオンされると、アナログ出力Aoutが2倍の出力に増幅される。
【0046】
これにより、
図6の右側に示すように、サブA/D変換器2への入力信号となるm回目のΔΣ変調処理における量子化誤差のアナログ出力Aoutが2倍に増幅された信号となる。この後、サブA/D変換器2においては、入力されるアナログ出力Aoutに基づいて、A/D変換処理を実行して所定の下位ビットの出力LSBを生成し、加算器8に入力する。
【0047】
加算器8においては、メインA/D変換器1のロジック回路6から入力される上位ビットの出力MSBとサブA/D変換器2から入力される下位ビットの出力LSBとを合成して、デジタル変換出力Doutを出力端子10bに出力する。
【0048】
このような第1実施形態によれば、メインA/D変換器1により、入力電圧Vinに対して上位ビットのA/D変換を行い、変換後のアナログ出力Aoutを増幅してサブA/D変換器2に出力する構成としているので、サブA/D変換器2による下位ビットのA/D変換処理において要求される演算性能を緩和することができるようになる。
【0049】
(第2実施形態)
図7から
図10は第2実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。
この実施形態では、
図7に示すように、A/D変換器20において、メインA/D変換器21として、量子化器22は1.5ビットのものを用い、D/A変換器23は3レベルのアナログ電位を与える構成としている。一方、1回のサンプル動作において、量子化器22により複数回行うマルチレート型によってマルチビット出力を得るようにした構成としている。なお、量子化器22は、1ビットのものを用いることもできる。
【0050】
量子化器22は、
図8に示すように、2個のコンパレータ22a、22bを備えている。コンパレータ22aは、反転入力端子に閾値電圧-Vth入力される。コンパレータ22bは、非反転入力端子に閾値電圧+Vth入力される。コンパレータ22aの非反転入力端子およびコンパレータ22bの反転入力端子には積分回路4のアナログ出力Aoutが入力される。
【0051】
コンパレータ22aは、アナログ出力Aoutを、閾値電圧-Vthと比較して、大きい場合にハイレベルの出力信号Vout1を出力する。コンパレータ22bは、アナログ出力Aoutを、閾値電圧+Vthと比較して、小さい場合にハイレベルの出力信号Vout2を出力する。出力信号Vout1およびVout2を組み合わせた信号が量子化信号Qとして出力される。
【0052】
各コンパレータ22a、22bに入力される閾値電圧-Vth、+Vthは、例えばそれぞれが第1実施形態における閾値電圧-Vth1、+Vth1と同じ電圧に設定されている。より具体的には、基準電圧Vrefに対して、次式のように設定されている。
-Vth=-(1/4)Vref
+Vth=+(1/4)Vref
【0053】
量子化器22は、積分回路4からアナログ出力Aoutが入力されると、上記閾値電圧との比較結果Vout1およびVout2を量子化出力Qとしてロジック回路6に出力する。
【0054】
D/A変換器23は、アナログ電位を与えるDAC部23a、DAC容量Cdおよびこれらの制御をするための5個のスイッチSdt、Sdm、Sdb、Sd2、Sd3を備える。また、DAC部23aは、参照電位として図示しない電位生成部により3つのアナログ電位Vrefp、Vcm、Vrefmを設定する。参照電位Vcmは基準電位であるアナロググランドとして設定され、Vrefpはアナロググランドよりも高い電位に設定され、Vrefmはアナロググランドよりも低い電位に設定される。
【0055】
なお、VrefpとVrefmは、参照電位Vcmが0Vの場合には、互いに絶対値が同一で正負が逆の関係にあり、Vrefp=-Vremを満たすように設定される。スイッチSdt、Sdm、Sdbは選択スイッチとして機能するもので、それぞれVrefp、Vcm、VrefmをDAC容量Cdの入力側に接続する。3個のスイッチSdt、Sdm、Sdbは、ロジック回路6によりDAC制御信号が与えられてオンオフの動作制御がなされる。
【0056】
次に、上記構成の作用について、
図9および
図10も参照して説明する。なお、
図9に示すタイミングチャートでは、第1実施形態と異なる部分を抜粋して示している。この実施形態においては、クロックとなるサイクル周波数を第1実施形態で示した周波数の2倍にしてメインA/D変換器21の1フェーズのΔΣ変調処理を4サイクルとし、D/A変換器23を2回の量子化動作とD/A変換動作を実行することでマルチレート処理を実施している。
【0057】
この場合、
図9に示しているように、メインA/D変換器21においては、1フェーズの動作において、サンプラ3の動作としてはサンプル動作を3サイクルで実行し、1サイクルでホールド動作を実行する。この実施形態では2サイクルの時間が第1実施形態における1サイクルの時間に対応しているので、サンプル動作の時間は第1実施形態におけるサンプル動作の時間に対して1.5倍の時間を設定している。
【0058】
メインA/D変換器21は、フェーズΔΣ1からフェーズΔΣnまでn回のフェーズにおいて、各フェーズでD/A変換器23はサンプル動作とホールド動作を2回実行することで、マルチレート動作を行う。1回目のサンプル動作およびホールド動作で
図10の左側に示すように、量子化器22において1回目の量子化出力Q1として3レベルの出力を得る。そして、2回目のサンプル動作およびホールド動作で
図10の右側に示すように、量子化器22において2回目の量子化出力Q2として5レベルの出力を得る。この結果、第1実施形態のマルチビット処理と同様の量子化出力Qを得ることができる。
【0059】
また、メインA/D変換器21の、フェーズΔΣ(n+1)では、量子化誤差に相当するアナログ出力Aoutを2倍の出力に増幅したものをノードN2に出力する。これにより、サブA/D変換器2は、増幅されたアナログ出力Aoutを入力して下位ビットLSBの変換処理を実行して出力する。
【0060】
このような第2実施形態によっても、メインA/D変換器21の量子化器22およびD/A変換器23によりマルチレート処理を実行することで、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、この実施形態においては、メインA/D変換器21において、第1実施形態と同じ時間で実行する1回のΔΣ処理のフェーズで、4サイクル分の動作を割り当て、量子化器22およびD/A変換器23にてサンプル動作およびホールド動作を2回実施するマルチレート処理とした。これにより、メインA/D変換器21のサンプラ3において、サンプル動作を3サイクルで実行することができ、第1実施形態に比べて入力電圧Vinのサンプル時間を実質的に1.5倍で確保することができる。
【0062】
(第3実施形態)
図11は第3実施形態を示すもので、以下、第2実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、
図11の対比図に示しているように、サブA/D変換器2として設けている巡回型A/D変換器の4回分のサイクル動作Cyclic(l)~Cyclic(l+4)を、メインA/D変換器21の2回のフェーズ動作に対応させている。
【0063】
したがって、メインA/D変換器21の1フェーズでサブA/D変換器21は、2フェーズ実行するように構成されている。なお、
図11で示すメインA/D変換器21の実行と巡回ADCで示すサブA/D変換器2の実行は時間配分を示すもので、タイミングを示すものではない。
【0064】
これにより、サブA/D変換器2においては、メインA/D変換器21の1回のフェーズ動作に対応して、サンプル動作およびホールド動作を2回分実施することで処理速度を高めた状態で実施することができる。
【0065】
(第4実施形態)
図12は第4実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、
図12に示しているように、メインA/D変換器1による増幅サイクルを増やして2サイクル分を割り当てている。
【0066】
これにより、メインA/D変換器1のアンプ4aの性能を緩和することができ、高性能なアンプを用いることなく精度を高めた増幅出力を得ることができるようになる。
【0067】
(第5実施形態)
図13および
図14は第5実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、A/D変換器30として、メインA/D変換器31に設ける積分回路32の構成が第1実施形態における積分回路4と異なる構成である。
【0068】
積分回路32は、アンプ32a、積分容量Cf1、Cf2、Cf3、スイッチSf11、Sf12、Sf13、Sf14、Sf21、Sf22、Sf24、Sf31、Sf32、Sf34を備えている。アンプ32aの反転入力端子は、ノードN1を介してサンプラ2のスイッチSs3に接続され、アンプ32aの非反転入力端子はアナロググランドに接続されている。アンプ32aの出力端子はノードN2および量子化器5に接続されている。アンプ32aは、サンプラ3およびD/A変換器7からの転送入力に応じて積分処理を行った結果をアナログ出力Aoutとして出力する。
【0069】
積分容量Cf1は、一端子がスイッチSf13を介してノードN1に接続されると共にスイッチSf12を介してアナロググランドに接続され、他端子がスイッチSf11を介してノードN2に接続されると共にスイッチSf14を介してアナロググランドに接続されている。積分容量Cf2は、一端子がノードN1に接続されると共にスイッチSf22を介してアナロググランドに接続され、他端子がスイッチSf21を介してノードN2に接続されると共にスイッチSf24を介してアナロググランドに接続されている。
【0070】
積分容量Cf3は、一端子がノードN1に接続されると共にスイッチSf32を介してアナロググランドに接続され、他端子がスイッチSf31を介してノードN2に接続されると共にスイッチSf34を介してアナロググランドに接続されている。なお、この実施形態では、積分容量Cf1、Cf2およびCf3は同じ容量値に設定されているが、異なる容量値に設定することも可能である。
【0071】
次に、上記構成の作用について
図14を参照して説明する。
この実施形態においては、メインA/D変換器31によるΔΣ変調処理のフェーズにおいては、第1実施形態と同様にして第mフェーズまでの動作が行われる。このとき、積分回路32においては、ΔΣ変調動作中は、スイッチSf11、Sf13、Sf21、Sf31がオン動作され、実質的に第1実施形態と同様の動作を実行する。
【0072】
この後、メインA/D変換器31においては、第(m+1)フェーズにおいて、A/D変換処理における最下位のビットの量子化誤差をアナログ出力Aoutとして出力する。次の第(m+2)フェーズでは、メインA/D変換器31は、積分回路32のスイッチの切り替え制御によって2サイクルに渡って増幅動作を実施する。第(m+2)フェーズのサイクル(2m+4)ではアナログ出力Aoutを3/2倍すなわち1.5倍に増幅するようにスイッチの切り替え制御を実施する。
【0073】
そして、次のサイクル(2m+5)では3/2倍のアナログ出力Aoutをさらに2倍に増幅するようにスイッチの切り替え制御を実施する。これにより、全体として、第(m+1)フェーズでメインA/D変換器32から出力されたアナログ出力Aoutを3倍に増幅したアナログ出力Aoutを、ノードN2を介してサブA/D変換器2に出力する。
サブA/D変換器2においては、ノードN2に増幅して3倍に増幅されたアナログ出力Aoutに基づいて下位ビットLSBのA/D変換処理を実行する。
【0074】
このような第5実施形態によれば、メインA/D変換器32に3個の積分容量Cf1~Cf3を設け、ΔΣ変調処理の終了後に、アナログ出力を複数サイクルに渡って複数段階で増幅するようにした。ここでは、例えば1回目に3/2倍に増幅し、2回目に2倍に増幅することで結果として3倍に増幅する構成としている。これにより、積分回路32のアンプ32aの性能を緩和することができるようになる。
【0075】
(第6実施形態)
図15は第6実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、サブA/D変換器2として用いたものを巡回型A/D変換器40により構成した場合の第1の例を示している。
【0076】
図15において、巡回型A/D変換器40は、積分回路41、サンプラ42、量子化器43およびロジック回路44を備えている。メインA/D変換器1のアナログ出力Aoutは、スイッチSc1を介して内部に取り込まれる構成である。
【0077】
積分回路41は、アンプ41a、積分容量Cc1、スイッチSc2、Sc3、Sc4を備えている。アンプ41aは、反転入力端子がサンプラ42に接続され、非反転入力端子がアナロググランドに接続されている。アンプ41aの出力端子はスイッチSc1に接続されるとともに量子化器43に接続されている。アンプ41aは、サンプラ42からの転送入力に応じて積分処理を行った結果をアナログ出力Aoutとして出力する。
【0078】
積分容量Cc1は、一端子がアンプ41aの反転入力端子に接続されると共にスイッチSc4を介してアナロググランドに接続され、他端子がスイッチSc2を介してアンプ41aの出力端子に接続されると共にスイッチSc3を介してアナロググランドに接続されている。
【0079】
サンプラ42は、DAC42a、サンプリング容量Cc2および3つのスイッチSc5~Sc7を備えている。スイッチSc7の一端子は、スイッチSc1に接続され、他端子はサンプリング容量Cc2およびスイッチSc5を直列に介して積分回路41に接続される。サンプリング容量Cc2の入力側はDAC42aの出力端子に接続され、出力側はスイッチSc6を介して基準電位であるアナロググランドに接続される。
【0080】
上記構成のサブA/D変換器としての巡回型A/D変換器40は、スイッチSc1を介して入力されるアナログ出力Aoutを所定回数巡回処理することで下位ビットの出力LSBを得ることができる。
【0081】
(第7実施形態)
図16は第7実施形態を示すもので、以下、第6実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、サブA/D変換器として用いたものを巡回型A/D変換器50により構成した場合の第2の例を示している。巡回型A/D変換器50においては、サンプラ42に加えてもう一つサンプラ51を設ける構成としたものである。
【0082】
図16において、巡回型A/D変換器50は、サンプラ42を第1サンプラとし、サンプラ51を第2サンプラとして設けた構成である。第2サンプラ51も、第1サンプラ42と同様の構成を備えている。すなわち、第2サンプラ51は、D/A変換器(以下DACと称する)51a、サンプリング容量Cc3および3つのスイッチSc8~Sc10を備えている。
【0083】
ここで、第1サンプラ42のDAC42aは第1DAC42aとして設けられ、第2サンプラ51のDAC51aは第2DAC51aとして設けられる。第1サンプラ42および第2サンプラ51は、ロジック回路44により、サンプル動作およびホールド動作のサイクルを交互に実行するように制御される。
【0084】
上記構成を採用することにより、巡回型A/D変換器を第1および第2サンプラ42および51を設けて交互にサンプル動作を行うので、サンプル時間を確保しながら全体の処理速度を早めることができる。
【0085】
(第8実施形態)
図17および
図18は第8実施形態を示すもので、以下、第1実施形態と異なる部分について説明する。この実施形態では、第1実施形態の構成において、サブA/D変換器2として設けていた構成のうち、内部構成の積分回路をメインA/D変換器の積分回路と共用する構成としている。
【0086】
A/D変換器60は、メインA/D変換器1と同様の構成であるサンプラ3、積分回路4、量子化器5を備えるとともに、ロジック回路61を備えている。また、サブA/D変換器としてサンプラ62を設ける構成としている。サブA/D変換器としては、サンプラ62と積分回路4、量子化器5およびロジック回路61を用いた構成となる。積分回路4、量子化器5およびロジック回路61は、兼用する構成とされている。
【0087】
ロジック回路61は、サンプラ3、積分回路4、D/A変換器7の動作制御に加えて、サブA/D変換器を構成するサンプラ62の動作制御を実施する。ロジック回路61は、
図18に示すように、第1実施形態と同様のシーケンサ61a、デコーダ61b、SW(スイッチ)制御部61c、DAC制御部61dおよびデシメーションフィルタ61eの機能ブロックを備えるとともに、加算器61fを備えている。
【0088】
ロジック回路61においては、メインA/D変換器としてΔΣ変調処理を行った結果、量子化結果Qとして入力される出力信号Vout1およびVout2は、デコーダ61bにてデコード処理が行われ、この後、デシメーションフィルタ61eにおいて上位ビットの出力信号MSBが生成された結果が加算器61fに出力される。
【0089】
一方、サブA/D変換器として巡回型A/D変換処理を行った結果、量子化結果Qとして入力される出力信号Vout1およびVout2は、デコーダ61bにてデコード処理が行われ、この後、得られた下位ビットLSBの出力信号を、デシメーションフィルタ61eを介さずに加算器61fに出力される。
【0090】
また、ロジック回路61は、シーケンサ61aからのシーケンス信号に基づいてSW制御部61cによりサンプラ3、積分回路4に加えてサブA/D変換器を構成するサンプラ62のスイッチを制御するSW制御信号を出力する。
【0091】
サブA/D変換器を構成するサンプラ62は、サンプリング容量Ccおよび4つのスイッチSc1~Sc4を備えている。入力端子となるスイッチSc1の一端子は、積分回路4のノードN2に接続され、スイッチSc1の他端子は、サンプリング容量CcおよびスイッチSc3を直列に介して積分回路4に接続される。サンプリング容量Ccの入力側はスイッチSc4を介して基準電位であるアナロググランドに接続され、出力側はスイッチSc2を介して同じく基準電位であるアナロググランドに接続される。4つのスイッチSc1~Sc4は、ロジック回路61によりオンオフの動作制御がなされる。なお、アナロググランドは、0Vとは限らず、基準電位として所定の電位が設定されれば良い。
【0092】
上記構成を採用することにより、入力端子60aに入力される入力電圧Vinに対して、メインA/D変換器としてのサンプラ3、積分回路4、量子化器5、ロジック回路61およびD/A変換器7によってΔΣ変調処理を繰り返し実行することで上位ビットMSBの出力を得ることができる。
【0093】
そして、この後、メインA/D変換器の処理によって得られた量子化誤差のアナログ出力AoutをサブA/D変換器としてのサンプラ62に取り込み、巡回型A/D変換処理を積分回路4、量子化器5、ロジック回路61とともに実行することで下位ビットLSBの出力を得ることができる。
【0094】
このとき、メインA/D変換器およびサブA/D変換器の両機能の実行においては、積分回路4、量子化器5を同時に使用することなく行えるので、動作に支障をきたすことなく出力信号MSBおよびLSBを得ることができる。そして、最終的に、ロジック回路61において、加算器61fにより出力信号MSBおよびLSBを合成してデジタル出力Doutを得ることができる。
【0095】
このような第8実施形態によれば、サブA/D変換器としての構成のうち積分回路4、量子化器5およびロジック回路61の構成をメインA/D変換器の構成と兼用した構成としたので、全体をコンパクトに構成しながら、ほぼ同じ作用効果を得ることができる。
【0096】
(他の実施形態)
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能であり、例えば、以下のように変形または拡張することができる。
【0097】
上記各実施形態においては、回路構成をシングルエンドタイプのものとして示したが、これに限らず、差動タイプの構成に適用することもできる。
上記各実施形態において、メインA/D変換器によるアナログ出力の増幅は、適宜の増幅度に設定することができる。
【0098】
メインA/D変換器によるマルチビット処理は3ビット以上の複数ビットでも良い。同じく、マルチレート処理においても、1フェーズにおいて3回以上の量子化とD/A変換動作を実行することもできる。
メインA/D変換器による増幅サイクルは、3サイクル以上としても良い。
【0099】
メインA/D変換器による増幅動作は、3段階以上で実施することもできる。
サブA/D変換器は、巡回型A/D変換器以外にも、例えば逐次比較型A/D変換器やフラッシュA/D変換器など種々のものを用いることができる。
【0100】
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0101】
図面中、1、21、31、110はメインA/D変換器、2、21、130はサブA/D変換器、3、62はサンプラ、4、32は積分回路、4a、32aはアンプ、5、22は量子化器、6、61はロジック回路、7、23はD/A変換器、7aはDAC部、8、61f、150は加算器、10、20、30、60、100はA/D変換器、40、50は巡回型A/D変換器(サブA/D変換器)、140は制御回路、Csはサンプリング容量、Cf1、Cf2、Cf3は積分容量である。