(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】樹脂組成物、及び構造体
(51)【国際特許分類】
C08G 59/50 20060101AFI20240130BHJP
C08G 59/62 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C08G59/50
C08G59/62
(21)【出願番号】P 2020019892
(22)【出願日】2020-02-07
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】中木 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】大橋 誠司
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-273147(JP,A)
【文献】特開2005-232377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 59/00- 59/72
CAplus/Registry(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂およびフェノール樹脂
を含み、
潜在性架橋剤
を含み、前記潜在性架橋剤が、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物と、有機塩基と、を含
み、
前記有機塩基が、アミン系硬化促進剤及びリン系硬化促進剤の少なくとも一方を含み、
前記アミノホスフィン化合物が、以下の一般式(I)の構造を有する化合物を含む、
樹脂組成物。
(R
a)
m-P-(NR
bR
c)
n ・・一般式(I)
(上記一般式(I)中、R
a、R
b、及びR
cは、それぞれ独立に、同一または異なってもよく、水素原子、置換又は無置換の脂肪族基、置換又は無置換の芳香族基、及び置換又は無置換の複素環を含む基のいずれかであり、R
a、R
b、及びR
cのいずれかの二つ以上の基は互いに結合して環状構造を形成していてもよく、R
b及びR
cは窒素元素を含んでもよく、nは
2であり、mは
1の整数であり、m及びnの総和は3である。)
【請求項2】
エポキシ樹脂およびフェノール樹脂を含み、
潜在性架橋剤を含み、前記潜在性架橋剤が、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物と、有機塩基と、を含み、
前記有機塩基が、アミン系硬化促進剤及びリン系硬化促進剤の少なくとも一方を含み、
前記アミノホスフィン化合物が、以下の一般式(I)の構造を有する化合物を含む、
樹脂組成物。
(R
a)
m-P-(NR
bR
c)
n ・・一般式(I)
(上記一般式(I)中、R
a
がフェニル基であり、R
b、及びR
cは、それぞれ独立に、同一または異なってもよく、水素原子、置換又は無置換の脂肪族基、置換又は無置換の芳香族基、及び置換又は無置換の複素環を含む基のいずれかであり、R
a、R
b、及びR
cのいずれかの二つ以上の基は互いに結合して環状構造を形成していてもよく、R
b及びR
cは窒素元素を含んでもよく、nは
2であり、mは
1の整数であり、m及びnの総和は3である。)
【請求項3】
請求項1
または2に記載の樹脂組成物であって、
前記アミノホスフィン化合物が、前記フェノール樹脂の重合体の架橋構造の一部を構成するものである、樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の樹脂組成物であって、
前記アミノホスフィン化合物は、25℃で液体、及び25℃で固体の少なくとも一方を含む、樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか一項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、及び構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで樹脂組成物について様々な開発がなされてきた。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、エポキシ樹脂組成物において、イミダゾール型潜在性硬化剤を使用することが記載されている(特許文献1の請求項1、5等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物において、低温環境下での反応性及び速硬化性の点で改善の余地があることが判明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記事情を踏まえて鋭意検討した結果、潜在性架橋剤として、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物と、有機塩基とを併用することによって、これをエポキシ樹脂やフェノール樹脂を含む樹脂組成物において、低温環境下での反応性および速硬化性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によれば、
エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の少なくとも一方と、
潜在性架橋剤と、を含み、
前記潜在性架橋剤が、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物と、有機塩基と、を含む、
樹脂組成物が提供される。
【0007】
また本発明によれば、
上記の樹脂組成物の硬化物を含む、構造体が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低温環境下での反応性及び速硬化性に優れた樹脂組成物、及びそれを用いた構造体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る電子装置の構成の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0011】
本実施形態の樹脂組成物を概説する。
【0012】
樹脂組成物は、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の少なくとも一方と、潜在性架橋剤と、を含む。
樹脂組成物中の潜在性架橋剤は、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物と、有機塩基と、を含む。このアミノホスフィン化合物は、エポキシ樹脂または/およびフェノール樹脂を重合させるために用いる潜在性架橋剤となる。
【0013】
本発明者の知見によれば、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物(以下、単にN-P結合を有するアミノホスフィン化合物と呼称することもある。)は、エポキシ樹脂やフェノール樹脂の重合反応における潜在性架橋剤として機能し、これをエポキシ樹脂やフェノール樹脂を含む樹脂組成物に添加することによって、重合反応の開始温度を低減できるため、有機塩基単独の場合と比較して、低温環境下での反応性に優れた樹脂組成物を実現できることが見出された。
そして、このアミノホスフィン化合物と有機塩基とを併用することによって、アミノホスフィン化合物単独や有機塩基単独の場合と比較して、樹脂組成物の速硬化性を高められることが見出された。
【0014】
詳細なメカニズムは定かでないが、N-P結合を有するアミノホスフィン化合物が低温環境下で反応し、重合体の架橋構造中に含まれるためであると考えられる。
【0015】
本実施形態によれば、潜在性架橋剤を用いることによって、低温環境下での反応性や低温硬化性、速硬化性に優れた樹脂組成物を実現できる。
【0016】
樹脂組成物は、例えば、電気・電子機器の、放熱材料、絶縁材料、半導体封止材料として用いることが可能である。
電気・電子機器は、たとえば、通常の半導体装置(電子部品として半導体素子を備える電子装置)やパワーモジュール(電子部品としてパワー半導体素子を備える電子装置)等を用いることができる。パワー半導体素子の具体例としては、たとえば、整流ダイオード、パワートランジスタ、パワーMOSFET、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、サイリスタ、ゲートターンオフサイリスタ(GTO)、トライアック等が挙げられる。
【0017】
また、樹脂組成物は、半導体チップなどの電子部品等の部材を封止する封止材料や、電子機器、自動車などの車両、医療器具、または日用品等を構成する部材を形成するための成形材料や、そのほか、エポキシ樹脂やフェノール樹脂が用いられる各種の用途に適用できる。
【0018】
以下、本実施形態の樹脂組成物について詳述する。
【0019】
樹脂組成物は、エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の少なくとも一方と、潜在性架橋剤と、を含む。
【0020】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂は、1分子内に2以上のエポキシ基を有する化合物であり、モノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
エポキシ樹脂としては、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールM型エポキシ樹脂(4,4’-(1,3-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールP型エポキシ樹脂(4,4’-(1,4-フェニレンジイソプリジエン)ビスフェノール型エポキシ樹脂)、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂(4,4’-シクロヘキシジエンビスフェノール型エポキシ樹脂)等のビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、トリスフェノール基メタン型ノボラック型エポキシ樹脂、テトラフェノール基エタン型ノボラック型エポキシ樹脂,縮合環芳香族炭化水素構造を有するノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアリールアルキレン型エポキシ樹脂;ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、2官能ないし4官能エポキシ型ナフタレン樹脂、ビナフチル型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン型エポキシ樹脂;アントラセン型エポキシ樹脂;フェノキシ型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;ノルボルネン型エポキシ樹脂;アダマンタン型エポキシ樹脂;フルオレン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
エポキシ樹脂の含有量は、用途に応じて適切に選択可能である。
【0023】
樹脂組成物は、エポキシ樹脂の他に、他の熱硬化性樹脂を含んでもよいが、含まなくてもよい。
他の熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリイミド樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、ビスマレイミド樹脂、アクリル樹脂、またフェノール誘導体これらの誘導体等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、1分子内に反応性官能基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
(硬化剤)
上記樹脂組成物は、必要に応じて、エポキシ樹脂の硬化剤を含むことができる。
上記硬化剤としては、熱硬化性樹脂の種類に応じて選択され、これと反応するものであれば特に限定されない。硬化剤としては、具体的には、重付加型の硬化剤、触媒型の硬化剤、および縮合型の硬化剤などが挙げられる。
【0025】
上記重付加型の硬化剤としては、具体的には、ジエチレントリアミン(DETA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、メタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン;ジアミノジフェニルメタン(DDM)、m-フェニレンジアミン(MPDA)、ジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミン;ジシアンジアミド(DICY)、有機酸ジヒドララジドなどのポリアミン化合物;ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)、メチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)などの脂環族酸無水物;無水トリメリット酸(TMA)、無水ピロメリット酸(PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)などの芳香族酸無水物などの酸無水物;ノボラック型フェノール樹脂、ポリビニルフェノール、アラルキル型フェノール樹脂などのフェノール樹脂系硬化剤;ポリサルファイド、チオエステル、チオエーテルなどのポリメルカプタン化合物;イソシアネートプレポリマー、ブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物;カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。重付加型の硬化剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
上記触媒型の硬化剤としては、具体的には、ベンジルジメチルアミン(BDMA)、2,4,6-トリスジメチルアミノメチルフェノール(DMP-30)などの3級アミン化合物;2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(EMI24)などのイミダゾール化合物;BF3錯体などのルイス酸などが挙げられる。触媒型の硬化剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
上記縮合型の硬化剤としては、具体的には、レゾール型フェノール樹脂;メチロール基含有尿素樹脂などの尿素樹脂;メチロール基含有メラミン樹脂などのメラミン樹脂などが挙げられる。縮合型の硬化剤としては、上記具体例のうち、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
硬化剤としては、上記具体例のうち、フェノール樹脂系硬化剤を含んでもよい。
上記フェノール樹脂系硬化剤としては、フェノール樹脂を用いることができ、具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、アミノトリアジンノボラック樹脂、ノボラック樹脂、トリスフェニルメタン型のフェノールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂等の変性フェノール樹脂;フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格及び/又はビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール化合物;レゾール型フェノール樹脂等が挙げられる。
これらは1種類を単独で用いても2種類以上を併用してもよい。これらの中でも、ガラス転移温度の向上及び線膨張係数の低減の観点から、ノボラック型フェノール樹脂を用いることができる。
【0029】
硬化剤の含有量は、エポキシ樹脂の含有量に応じて適切に設定できる。
【0030】
(潜在性架橋剤)
組成物中の潜在性架橋剤は、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物、及び有機塩基を含む。
【0031】
アミノホスフィン化合物は、以下の一般式(I)の構造を有する化合物を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
(Ra)m-P-(NRbRc)n ・・一般式(I)
【0033】
上記一般式(I)中、Ra、Rb、及びRcは、それぞれ独立に、同一または異なってもよく、水素原子、置換又は無置換の脂肪族基、置換又は無置換の芳香族基、及び置換又は無置換の複素環を含む基のいずれかの基であり、Rb及びRcは、基中に、環、不飽和結合、窒素元素、及び酸素原子の少なくとも一つを含んでもよく、Ra、Rb、及びRcのいずれかの二つ以上の基は互いに結合して環を形成していてもよく、nは1~3の整数であり、mはそれぞれ独立に0~2の整数であり、m及びnの総和は3である。
【0034】
脂肪族基としては、例えば、炭素数1~20の、直鎖状、分岐鎖状又は環状のいずれかの、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
脂肪族炭化水素基は、基中に窒素原子や酸素原子等のヘテロ原子を含んでもよい。
【0035】
芳香族基(アリール基)としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0036】
置換とは、アルキル基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリール基等の置換基の一または二以上を基中のいずれかの原子に結合させてもよいが、基中の原子の一または二以上を窒素原子や酸素原子等のヘテロ原子に置き換えてもよい。
【0037】
Rb及びRcは、それぞれ、基中に環を有してもよいが、互いに結合して環を形成してもよい。
【0038】
環は、脂環式環、芳香族環、及び複素環の一または二以上を含んでもよい。2以上の環を含む場合、単結合やアルキル基を介して結合してもよいが、互いに縮合して縮合環を形成してもよい。また、環は、無置換でも、置換されてもよい。
脂環式環には、シクロアルカン等の単環、デカヒドロナフタレン等の二環等が挙げられる。
芳香族環には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。
複素環には、飽和、不飽和のいずれでもよく、窒素原子や酸素原子などの1個または2個以上のヘテロ原子を含む三員環、四員環、五員環、六員環などが挙げられる。
【0039】
アミノホスフィン化合物は、上記一般式(I)中、nが2である化合物を含んでもよい。これによって、硬化性高めることができる。
【0040】
アミノホスフィン化合物は、上記一般式(I)中、mが1、かつRaがフェニル基である化合物を含んでもよい。これによって、樹脂組成物中における潜在性架橋剤の分散性を高めることができる。
このとき、Rb及びRcの2基が互いに結合してなる環は、それぞれ、同一でもよく、異なってもよい。環は、硬化性の観点から、内部に2以上の窒素原子を有することが好ましい。
【0041】
アミノホスフィン化合物は、以下の一般式(II)の構造を有する化合物を含んでもよい。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
【0043】
上記一般式(II)中の、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立に、同一または異なってもよく、水素原子、置換又は無置換の脂肪族基、置換又は無置換の芳香族基、及び置換又は無置換の複素環を含む基のいずれかの基である。
R1及びR2、またはR3及びR4のいずれか一方は、2基が互いに結合して環を形成していてもよい。一般式(II)の脂肪族基、芳香族基、環の例示については、一般式(I)と同様のものを用いてもよい。
【0044】
また、上記一般式(II)中の-NR1R2、及び-NR3R4は、それぞれ、同一または異なる官能基で構成されてもよく、互いに一つの官能基を構成してもよい。
【0045】
官能基の一例を以下に示す。
例示中、-NR1R2、及び-NR3R4中のN元素については、結合手に波線を記す。
【0046】
官能基は、R1、R2、R3、及びR4の少なくとも一つは、それぞれの基中に環を有してもよいが有さなくてもよい。環を有するとき、R2及びR4の少なくとも一方は、R1及びR3と同一構造の基を有してもよいが、異なる基を有してもよく、異なる基として、水素原子、メチル基などのアルキル基でもよい。R1、R2、R3、及びR4の基中に含まれる環は、上記一般式(II)中のN原子を含むように構成されてもよく、そのN原子とメチル基やエチル基などのアルキル基等を介して結合するように構成されてもよい。
【0047】
また、官能基は、R
1及びR
2の2基、R
3及びR
4の2基のそれぞれが互いに結合してなる環を有してもよい。
【化2】
【0048】
アミノホスフィン化合物は、フェノール樹脂に反応し、フェノール樹脂の重合体の架橋構造の一部を構成することができる。
【0049】
アミノホスフィン化合物は、25℃で液体、及び25℃で固体の少なくとも一方を含んでもよい。例えば、アミノホスフィン化合物は、25℃で液体である二種以上含んでもよく、25℃で固体である二種以上含んでもよく、液体と固体の両方を含んでもよい。
アミノホスフィン化合物は、融点の下限が、例えば、30℃以上、好ましくは35℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは60℃以上の化合物を含んでもよい。これによって、潜在性架橋剤の取り扱い性が良好となる上、組成物中への均一分散を高められ、反応性を向上できる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
一方、アミノホスフィン化合物は、融点の上限が、例えば、250℃以下の化合物を含んでもよい。これによって、低温硬化に優れた樹脂組成物を提供できる。
この中でも、アミノホスフィン化合物は、融点が35℃以上の固体のものを一または二種以上含んでもよい。
【0050】
有機塩基としては、アミン系硬化促進剤やリン系硬化促進剤を用いてもよい。
有機塩基としては、例えば、窒素原子やリン原子などのヘテロ原子を含む複素環構造を有する化合物や、ヘテロ原子に芳香族基が結合した構造を有する化合物等が使用できる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
有機塩基の一例として、例えば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等が挙げられる。
有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
【0052】
有機塩基の一例として、例えば、イミダゾール類やピリジン、ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7(DBU)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)等の複素環式アミン;その他の1級、2級、3級アミン;等が挙げられる。
イミダゾール類として、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、および2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0053】
また、有機塩基の一例として、例えば、リン/窒素含有のホスファゼン誘導体等が挙げられる。
【0054】
有機塩基は、25℃で液体、及び25℃で固体の少なくとも一方を含んでもよい。例えば、有機塩基は、25℃で液体である二種以上含んでもよく、25℃で固体である二種以上含んでもよく、液体と固体の両方を含んでもよい。
有機塩基は、融点の下限が、例えば、30℃以上、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上の化合物を含んでもよい。これによって、取り扱い性が良好となる上、組成物中への均一分散を高めら、反応性を向上できる。
一方、有機塩基は、融点の上限が、例えば、250℃以下の化合物を含んでもよい。これによって、低温硬化に優れた樹脂組成物を提供できる。
【0055】
樹脂組成物は、充填材を含んでもよい。
充填材として、無機充填材または有機充填材が用いられる。
無機充填材としては、例えば、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶性シリカ、2次凝集シリカ、微粉シリカなどのシリカ;アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化チタン、炭化ケイ素、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタンホワイトなどの金属化合物;タルク;クレー;マイカ;ガラス繊維などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
(その他の成分)
樹脂組成物は、必要に応じて、カップリング剤、流動性付与剤、離型剤、イオン捕捉剤、有機塩基以外の硬化促進剤、低応力剤、着色剤及び難燃剤等の各種添加剤のうち1種または2種以上を、適宜含んでもよい。
【0057】
カップリング剤としては、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシラン;2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのエポキシシラン;p-スチリルトリメトキシシランなどのスチリルシラン;3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランなどのメタクリルシラン;3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのアクリルシラン;N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン;イソシアヌレートシラン;アルキルシラン;3-ウレイドプロピルトリアルコキシシランなどのウレイドシラン;3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシラン;3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシラン;チタン系化合物;アルミニウムキレート類;アルミニウム/ジルコニウム系化合物などが挙げられる。カップリング剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0058】
流動性付与剤は、リン原子含有硬化促進剤などの潜伏性を有さない硬化促進剤が、樹脂組成物の溶融混練時に反応することを抑制できる。これにより、樹脂組成物の生産性を向上できる。
流動性付与剤としては、具体的には、カテコール、ピロガロール、没食子酸、没食子酸エステル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン及びこれらの誘導体などの芳香環を構成する2個以上の隣接する炭素原子にそれぞれ水酸基が結合した化合物などが挙げられる。
【0059】
離型剤としては、具体的には、カルナバワックスなどの天然ワックス;モンタン酸エステルワックス、酸化ポリエチレンワックスなどの合成ワックス;ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸及びその金属塩;パラフィン;エルカ酸アミドなどのカルボン酸アミドなどが挙げられる。離型剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0060】
上記イオン捕捉剤は、具体的には、ハイドロタルサイト、ハイドロタルサイト状物質などのハイドロタルサイト類;マグネシウム、アルミニウム、ビスマス、チタン、ジルコニウムから選ばれる元素の含水酸化物などが挙げられる。イオン捕捉剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0061】
硬化促進剤は、たとえば、上記の有機塩基以外の他の硬化促進剤を使用してもよい。
【0062】
低応力剤としては、具体的には、シリコーンオイル、シリコーンゴムなどのシリコーン化合物;ポリブタジエン化合物;アクリロニトリル-カルボキシル基末端ブタジエン共重合化合物などのアクリロニトリル-ブタジエン共重合化合物などを挙げることができる。低応力剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0063】
着色剤としては、具体的には、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタンなどを挙げることができる。着色剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0064】
難燃剤としては、具体的には、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼン、カーボンブラックなどを挙げることができる。難燃剤としては、上記具体例のうち1種または2種以上を配合することができる。
【0065】
本実施形態の樹脂組成物の製造方法について説明する。
樹脂組成物の製造方法は、上記の原料成分を混合する混合工程を含む。
【0066】
混合工程は、原料成分を混合し、混合物を作製工程である。混合する方法は限定されず、用いられる成分に応じて、公知の方法を用いることができる。
混合工程としては、具体的には、上述した樹脂組成物が含む原料成分を、ミキサーなどを用いて均一に混合する。次いで、ロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、混合物を作製する。
【0067】
樹脂組成物の製造方法は、得られた混合物を成形する成形工程を含んでもよい。
【0068】
成形する方法としては限定されず、樹脂組成物の形状に応じて、公知の方法を用いることができる。樹脂組成物の形状としては限定されず、例えば、顆粒形状、粉末形状、タブレット形状、シート形状などが挙げられる。半導体封止用の樹脂組成物として、例えば、粉末状、顆粒状、またはタブレット状であってもよい。
【0069】
樹脂組成物の形状は、成形方法に応じて選択できる。
顆粒形状とした樹脂組成物を作製する成形工程としては、例えば、溶融混練後、冷却した混合物を粉砕する工程が挙げられる。なお、例えば、顆粒形状とした樹脂組成物をふるい分けして、顆粒の大きさを調節してもよい。また、例えば、顆粒形状とした樹脂組成物を、遠心製粉法またはホットカット法などの方法で処理し、分散度または流動性などを調製してもよい。
また、粉末形状とした樹脂組成物を作製する成形工程としては、例えば、混合物を粉砕し顆粒形状の樹脂組成物とした後、該顆粒形状の樹脂組成物をさらに粉砕する工程が挙げられる。
また、タブレット形状とした樹脂組成物を作製する成形工程としては、例えば、混合物を粉砕し顆粒形状の樹脂組成物とした後、該顆粒形状の樹脂組成物を打錠成型する工程が挙げられる。
【0070】
本実施形態の樹脂組成物を用いた構造体について説明する。
【0071】
本実施形態の構造体は、樹脂組成物の硬化物を備える。
構造体の一例として、
図1を用いて、電子装置の例を挙げる。
図1は、電子装置100を示す断面図である。
図1の電子装置100は、基材30と、基材30上に設けられた電子部品20と、電子部品20を封止する封止樹脂層50と、を備える。封止樹脂層50は、上記の樹脂組成物の硬化物により構成される。
電子部品20は、ボンディングワイヤ40によって外部と電気的に接続されてもよい。
【0072】
具体的には、電子部品20は、基材30上にダイアタッチ材10を介して固定されており、電子装置100は、電子部品20上に設けられた図示しない電極パッドからボンディングワイヤ40を介して接続されるアウターリード34を有する。ボンディングワイヤ40は用いられる電子部品20等を勘案しながら設定することができるが、たとえばCuワイヤを用いることができる。
【0073】
封止樹脂層を形成する方法は限定されないが、例えば、トランスファー成形法、圧縮成形法、インジェクション成形などが挙げられる。これらの方法により、樹脂組成物を、成形し、硬化させることにより封止用樹脂層を形成することができる。
【0074】
電子部品としては、限定されるものではないが、半導体素子が好ましい。
半導体素子としては、限定されるものではないが、たとえば、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子が挙げられる。
これらの中でも、本実施形態の樹脂組成物が有用な半導体素子としては、金属部分が露出している半導体素子である。これにより、該金属部分の腐食を抑制できる。このような金属部分が露出している半導体素子としてはトランジスタが挙げられる。トランジスタの中でも、ゲート電極が露出しているMISトランジスタの封止に、本実施形態の樹脂組成物は有効に用いることができる。
【0075】
基材としては、限定されるものではないが、例えば、インターポーザ等の配線基板、リードフレーム等が挙げられる。
【0076】
電子部品と、基材との電気的な接続が必要な場合、適宜接続してもよい。電気的に接続する方法は、限定されるものではないが、例えば、ワイヤボンディング、フリップチップ接続などが挙げられる。これらの中でも、本実施形態の樹脂組成物が有用な半導体素子としては、金属部分が露出している半導体素子である。これにより、該金属部分の腐食を抑制できる。このような金属部分が露出している電気的接続方法としてはワイヤボンディングが挙げられる。
【0077】
樹脂組成物によって電子部品を封止する封止樹脂層を形成することで、電子装置が得られる。電子装置としては、限定されるものではないが、半導体素子をモールドすることにより得られる半導体装置が好ましい。
半導体装置の種類としてしては、具体的には、MAP(Mold Array Package)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)、LF-BGA(Lead Flame BGA)、FCBGA(Flip Chip BGA)、MAPBGA(Molded Array Process BGA)、eWLB(Embedded Wafer-Level BGA)、Fan-In型eWLB、Fan-Out型eWLBなどの種類が挙げられる。
【0078】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、参考形態の例を付記する。
1. エポキシ樹脂およびフェノール樹脂の少なくとも一方と、
潜在性架橋剤と、を含み、
前記潜在性架橋剤が、3価のP元素がN-P結合を有するアミノホスフィン化合物と、有機塩基と、を含む、
樹脂組成物。
2. 1.に記載の樹脂組成物であって、
前記アミノホスフィン化合物が、以下の一般式(I)の構造を有する化合物を含む、樹脂組成物。
(R
a
)
m
-P-(NR
b
R
c
)
n
・・一般式(I)
(上記一般式(I)中、R
a
、R
b
、及びR
c
は、それぞれ独立に、同一または異なってもよく、水素原子、置換又は無置換の脂肪族基、置換又は無置換の芳香族基、及び置換又は無置換の複素環を含む基のいずれかであり、R
a
、R
b
、及びR
c
のいずれかの二つ以上の基は互いに結合して環状構造を形成していてもよく、R
b
及びR
c
は窒素元素を含んでもよく、nは1~3の整数であり、mはそれぞれ独立に0~2の整数であり、m及びnの総和は3である。)
3. 2.に記載の樹脂組成物であって、
上記一般式(I)中、nが2である前記化合物を含む、樹脂組成物。
4. 2.に記載の潜在性架橋剤であって、
上記一般式(I)中、mが1、かつR
a
がフェニル基である前記化合物を含む、樹脂組成物。
5. 1.~4.のいずれか一つに記載の樹脂組成物であって、
前記アミノホスフィン化合物が、前記フェノール樹脂の重合体の架橋構造の一部を構成するものである、樹脂組成物。
6. 1.~5.のいずれか一つに記載の樹脂組成物であって、
前記アミノホスフィン化合物は、25℃で液体、及び25℃で固体の少なくとも一方を含む、樹脂組成物。
7. 1.~6.のいずれか一つに記載の潜在性架橋剤であって、
前記有機塩基が、アミン系硬化促進剤及びリン系硬化促進剤の少なくとも一方を含む、構造体。
8. 1.~7.のいずれか一つに記載の樹脂組成物の硬化物を含む、構造体。
【実施例】
【0079】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0080】
以下、表1、2中の原料成分の情報を示す。
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:多環芳香族型エポキシ樹脂(軟化点:54℃)
・エポキシ樹脂2:ビフェニル型エポキシ樹脂(軟化点:105℃)
(硬化剤)
・フェノール樹脂1:多環芳香族型フェノール樹脂(軟化点:74℃)
・フェノール樹脂2:ビフェニル骨格を有するアラルキル型フェノール樹脂(軟化点:67℃)
・フェノール樹脂3:トリフェニルメタン型フェノール樹脂(軟化点:88℃)
【0081】
(潜在性架橋剤)
・有機塩基1:下記に化学式を示す2-メチルイミダゾール(融点:142℃、25℃で固体)
【化3】
【0082】
・有機塩基2:下記に化学式を示す2-フェニルイミダゾール(融点:145℃、25℃で固体)
【化4】
【0083】
・有機塩基3:下記に化学式を示すトリフェニルホスフィン(融点:81℃、25℃で固体)
【化5】
【0084】
・アミノホスフィン化合物1:下記に化学式を示すアミノホスフィン化合物(融点:60℃、25℃で固体)
【化6】
【0085】
・アミノホスフィン化合物2:下記に化学式を示すアミノホスフィン化合物(融点:40℃、25℃で固体)
【化7】
【0086】
<樹脂組成物の調製>
表1に従い配合された各原成分を、乳鉢により常温で混合し、次いで90℃の熱板上で3分間溶融混合した。冷却後、再び乳鉢を用いて常温で粉砕し、粉末状の樹脂組成物を得た。
【0087】
【0088】
得られた樹脂組成物について、下記の評価項目に基づいて評価を行った。
【0089】
<DSC>
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ製 DSC-6100)を用い、窒素気流下で、昇温速度を5℃/minで0℃から250℃の温度範囲条件にて、10mgの上記粉末状の樹脂組成物についてDSC曲線を測定した。
得られたDSC曲線から、発熱開始温度(Onset)、最大発熱ピーク温度(Peak top)、100℃までのピーク面積(Area@100℃)、120℃までのピーク面積(Area@120℃)、を求めた。
【0090】
<キュラスト>
また、得られた樹脂組成物4.3gを25mmφの金型に入れ、5t、1分間打錠し、タブレットを作製した。キュラストメーター((株)エー・アンド・デイ製、キュラストメーターWP型)を用い、金型温度100℃にて、得られたタブレットのキュラストトルクを経時的に測定した。
得られたキュラストトルクのトルク値が飽和したときのものを、飽和トルク値とした。
得られたキュラストトルクから、飽和トルク値の60%時のトルク値になる時間(t(60%):60%トルク到達時間)、飽和トルク値の0.2%時のトルク値になる時間(t(0.2%):0.2%トルク到達時間)、0.2%飽和トルクから60%飽和トルクまでの時間(Δ(t(60%)-t(0.2%)))を求めた。
なお、比較例5、6は、飽和トルク値が高くならず、硬化不良のため、60%トルク到達時間を測定できなかった。
【0091】
実施例1~7の樹脂組成物は、比較例1~4と比べて、実施例8は、比較例6と比べて、実施例9~11は、比較例7,8と比べて、実施例12は、比較例9と比べて、発熱開始温度が低く、100℃までのピーク面積あるいは120℃までのピーク面積が大きいことから、潜伏性を有しつつも、反応性に優れる結果を示した。
実施例1~7の樹脂組成物は、比較例1~5と比べて、実施例8は、比較例6と比べて、実施例9~11は、比較例7,8と比べて、実施例12は、比較例9と比べて、0.2%飽和トルクから60%飽和トルクまでの時間及び60%トルク値到達時間の少なくとも一方が短いことから、速硬化性に優れる結果を示した。
したがって、実施例のアミノホスフィン化合物と有機塩基とを併用することによって、低温環境下での反応性、速硬化に優れた熱硬化性樹脂組成物を実現できる。
【符号の説明】
【0092】
10 ダイアタッチ材
20 電子素子
30 基材
32 ダイパッド
34 アウターリード
40 ボンディングワイヤ
50 封止樹脂層
100 電子装置