(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】タイル構造物およびタイルユニット
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20240130BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
E04F13/08 102L
E04F13/08 102N
E04F13/08 102K
E04F15/02 D
(21)【出願番号】P 2020025777
(22)【出願日】2020-02-19
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】鳥山 信治
(72)【発明者】
【氏名】日比野 丞時
(72)【発明者】
【氏名】大久保 康次
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-239026(JP,A)
【文献】特開2017-141550(JP,A)
【文献】登録実用新案第3211008(JP,U)
【文献】特開2005-256335(JP,A)
【文献】特開2004-353170(JP,A)
【文献】特開2006-233502(JP,A)
【文献】特開平10-102735(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0075274(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 13/08-13/18
E04F 15/00-15/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のタイルが施工面に固定されたタイル構造物であって、
前記複数のタイルのうち任意の一つを第1のタイルとしたとき、前記第1のタイルを挟んで隣接したタイルを第2のタイルおよび第3のタイルとし、
前記第1のタイルと前記第2のタイルとの間に、前記施工面から表面方向に向かって、第1の方向に通った第1の目地と、
前記第1のタイルと前記第3のタイルとの間に、前記施工面から表面方向に向かって、第2の方向に通った第2の目地とを備え、
前記第1のタイルの側面は、前記第2のタイルの側面と、前記施工面と垂直方向において一部が重なり、
前記第1のタイルの側面は、前記第3のタイルの側面と、前記施工面に対し垂直方向において一部が重なり、
前記第1のタイルの貼り付け面の面積は、前記第1のタイルの表面の面積よりも大である形状を有し、
前記第2のタイルおよび前記第3のタイルは、前記第1のタイルを前記施工面に対して反転させた形状であり、そして
前記第1方向は、前記第2の方向と異なるものとされ
、
前記タイルの施工面への固定が、接着剤によりされたものであることを特徴とする、タイル構造物。
【請求項2】
複数のタイルが施工面に固定されたタイル構造物であって、
前記複数のタイルのうち任意の一つを第1のタイルとしたとき、前記第1のタイルを挟んで隣接したタイルを第2のタイルおよび第3のタイルとし、
前記第1のタイルと前記第2のタイルとの間に、前記施工面から表面方向に向かって、第1の方向に通った第1の目地と、
前記第1のタイルと前記第3のタイルとの間に、前記施工面から表面方向に向かって、第2の方向に通った第2の目地とを備え、
前記第1のタイルの側面は、前記第2のタイルの側面と、前記施工面と垂直方向において一部が重なり、
前記第1のタイルの側面は、前記第3のタイルの側面と、前記施工面に対し垂直方向において一部が重なり、
前記第1のタイルの貼り付け面の面積は、前記第1のタイルの表面の面積よりも大である形状を有し、
前記第2のタイルおよび前記第3のタイルは、前記第1のタイルを前記施工面に対して反転させた形状であり、そして
前記第1方向は、前記第2の方向と異なるものとされ
、
前記タイルの側面が上に凸の曲面である断面形状であることを特徴とする、タイル構造物。
【請求項3】
複数のタイルが施工面に固定されたタイル構造物であって、
前記複数のタイルのうち任意の一つを第1のタイルとしたとき、前記第1のタイルを挟んで隣接したタイルを第2のタイルおよび第3のタイルとし、
前記第1のタイルと前記第2のタイルとの間に、前記施工面から表面方向に向かって、第1の方向に通った第1の目地と、
前記第1のタイルと前記第3のタイルとの間に、前記施工面から表面方向に向かって、第2の方向に通った第2の目地とを備え、
前記第1のタイルの側面は、前記第2のタイルの側面と、前記施工面と垂直方向において一部が重なり、
前記第1のタイルの側面は、前記第3のタイルの側面と、前記施工面に対し垂直方向において一部が重なり、
前記第1のタイルの貼り付け面の面積は、前記第1のタイルの表面の面積よりも大である形状を有し、
前記第2のタイルおよび前記第3のタイルは、前記第1のタイルを前記施工面に対して反転させた形状であり、そして
前記第1方向は、前記第2の方向と異なるものとされ
、
前記タイルの側面が上に凸の曲面である断面形状を有しており、
前記第1の目地および第2の目地の途中における幅が、前記施工面および前記表面における目地の幅より狭いものとされたことを特徴とする、タイル構造物。
【請求項4】
前記施工面が外装壁、内装壁、または床面である、請求項1~3のいずれか一項に記載のタイル構造物。
【請求項5】
前記複数のタイルが、連結されてなるタイルユニットである、請求項1~4のいずれか一項に記載のタイル構造物。
【請求項6】
前記タイルの断面形状が台形である、請求項1~5のいずれか一項に記載のタイル構造物。
【請求項7】
前記タイルの角部が面取りされてなる、請求項1~6のいずれか一項に記載のタイル構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のタイルが壁面などの施工面に固定されたタイル構造物に関し、さらに詳しくは複数のタイルからなるタイル構造物であって目地が外部から視認され難い構造のタイル構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
壁面などにタイルを接着剤で貼り付ける工法では、特に目地材などを充填しなければ、目地部において貼り付けのための接着剤が露出する。また、タイルの裏を連結材で結合し、タイルユニットを構成することも行われているが、この場合も特に処理をしなければ、施工後に目地部において連結材料が見える。このような接着剤、連結部材が目地部から見えることは、時に意匠性において不利となることがある。
【0003】
また、目地部に露出している接着剤は、太陽光や雨水に直接曝されることになり、耐久性の観点からは不利である。
【0004】
目地部に目地材などを充填せずに、接着剤や連結部材を隠す構成が、特開2002-89011号公報に開示されている。ここでは、タイルの上端面と下端面に凹凸の段差を設け、壁面にタイルを張り付けた際に、上部タイルの凹部と下部のタイルの凸部とが係合し、目地部が視認されない構造が提案されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、複数のタイルからなるタイル構造物において目地部を隠す新たな構成を提案する。本発明によれば、目地部が外部から視認され難いものとなり、目地部がタイル構造物の意匠性を損なわず、また耐久性においても有利なものとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるタイル構造物は、複数のタイルが施工面に固定されたタイル構造物であって、前記複数のタイルのうち任意の一つを第1のタイルとしたとき、前記第1のタイルを挟んで隣接したタイルを第2のタイルおよび第3のタイルとし、
前記第1のタイルと前記第2のタイルとの間に、前記施工面から表面方向に向かって、第1の方向に通った第1の目地と、
前記第1のタイルと前記第3のタイルとの間に、前記施工面から表面方向に向かって、第2の方向に通った第2の目地とを備え、
前記第1のタイルの側面は、前記第2のタイルの側面と、前記施工面と垂直方向において一部が重なり、
前記第1のタイルの側面は、前記第3のタイルの側面と、前記施工面に対し垂直方向において一部が重なり、
前記第1のタイルの貼り付け面の面積は、前記第1のタイルの表面の面積よりも大である形状を有し、
前記第2のタイルおよび前記第3のタイルは、前記第1のタイルを前記施工面に対して反転させた形状であり、そして
前記第1方向は、前記第2の方向と異なるものとされたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のタイル構造物の正面模式図であり、9枚のタイルから構成されるタイル構造物1が、施工面10に固定されている状態を示す。
【
図3】複数のタイルを連結材40で連結してタイルユニット1とし、それを施工面10に固定した態様の模式図である。
【
図5】複数のタイルをシート41で連結してタイルユニット1とし、それを施工面10に固定した態様の模式図である。
【
図7】複数のタイルをシート42で連結してタイルユニット1とし、それを施工面10に固定した態様の模式図である。
【
図8】タイルの側面が曲線とされ、その断面形状が上に凸の曲面である形状とされたタイル構造物の断面図である。
【
図9】角部分において面取りされたタイルから構成されたタイル構造物の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明によるタイル構造物は、建物の内装または外装において、その表面に仕上げ材として貼り付け・固定されて、その外観の意匠性を確保しまたは高めるために用いられる。したがって、本明細書において施工面とは、例えば、外装壁、内装壁、または床面などを意味する。また、その固定方法は特に限定されないが、例えば接着剤による貼付が挙げられる。
【0010】
本発明によるタイル構造物を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明のタイル構造物の正面模式図である。
図1は、本発明によるタイル構造物1が、施工面10に固定されている状態を示し、ここでタイル構造物1は、丸で囲んだ数字の1から9番まで番号が振られた9枚のタイルから構成されている。
【0011】
本発明にあっては、まず、複数のタイルのうち任意の一つを第1のタイルとしたとき、第1のタイルを挟んで隣接しているタイルを第2のタイルおよび第3のタイルとする。
図1にあてはめると、1番のタイルを第1のタイルとすると、この1番のタイルを挟む2番および3番のタイルが、それぞれ第2のタイルおよび第3のタイルとなる。また、1番のタイルを挟むのは4番および7番のタイルも同様であり、これら三つのタイルについても、1番のタイルが第1のタイルとなり、4番および7番のタイルが第2及び第3のタイルとなる。
【0012】
さらに、第1乃至第3のタイルの関係は相対的なものであるから、例えば、4番のタイルを第1のタイルとすると、この4番のタイルを挟む5番および6番のタイルが、それぞれ第2のタイルおよび第3のタイルとなる。
【0013】
図2は、
図1の中央点線の位置の断面図である。
図2にあっては、1番のタイルを11、2番のタイルを21、そして3番のタイルを31として示す。第1のタイル11の形状は、
図2に示されるように、施工面10に固定される面12の面積が、第1のタイルの表面13の面積よりも大である形状を有する。さらに、第1のタイル11と、第2および第3のタイル21および31は、好ましくは同じ形状のタイルであり、但し、第2および第3のタイル21および31は、第1のタイル11を施工面10に対して反転させて固定される。つまり、第1のタイルの面13に対応する第2のタイルおよび第3のタイルの表面23および表面33が、施工面10に固定される。この図の態様において、タイルは断面形状が台形であり、すなわち側面14が実質的に直線で構成されている。
【0014】
さらに、第1のタイル11の側面14は、第2のタイルの側面24と、施工面10に対し垂直方向において一部が重なる。その結果、
図2に示されるように、第1のタイル11の表面12の端部から施工面10に対し垂直方向に引いた点線と、第2のタイルの表面22の端部から施工面10に垂直に下した点線との間に間隔が生じる。また、同様に、第1のタイル11の表面12のもう一方の側面15は、第3のタイル31の側面34と、施工面10対し垂直方向において一部が重なる。
図2に示されるように、第1のタイル11の表面12の端部から施工面10に対し垂直方向に引いた点線と、第3のタイルの表面32の端部から施工面10に垂直に下した点線との間に間隔が生じる。
【0015】
本発明によるタイル構造物は、さらに次の構造を備える。まず、図において、第1のタイル11と第2のタイル21との間には、施工面10から表面方向に向かって、第1の目地2が形成され、この目地2が開いた方向である図中の矢印の方向を、第1の目地の第1の方向と呼ぶ。また、第1のタイル11と第3のタイル31との間にも、施工面10から表面方向に向かって、第2の目地3が形成され、この目地3が開いた方向である図中の矢印の方向を第2の目地の第2の方向と呼ぶ。そして、本発明によるタイル構造物にあっては、第1の目地の第1方向は、第2の目地の第2の方向と異なるものとされる。つまり、第1の目地と第2の目地の向きは非平行とされる。
【0016】
本発明によるタイル構造物にあって、第1のタイル11の側面15と、第2のタイルの側面24とが一部が重なり、また、第1のタイル11のもう一方の側面15と、第3のタイル31の側面34とが重なることで、目地部の露出が限定される。その結果、外観意匠面で有利であるとともに、タイルの固定が接着剤により行われた場合、目地部の接着剤部分がタイルにより隠され、外部から視認され難いため、意匠性を損なわず有利である。また、目地部への紫外線の到達が制限されることから、接着剤の劣化を抑制するとの効果が得られる。
【0017】
さらに、本発明の一つの態様によれば、本発明によるタイル構造物が外壁として用いられる場合、
図2における第2の方向を、設置に場所における太陽の高度(特に、南中高度)を勘案して、設定することが好ましい。すなわち、第2の方向の水平に対する角度を、太陽の高度が最も低くなる冬至における太陽の南中角度よりも小さくするか、または夏至における太陽の南中角度よりも大としておけば、年中目地部に太陽光が差し込まず有利である。具体的には、垂直面に対して約59度乃至84度程度とする。
【0018】
本発明の一つの態様によれば、本発明によるタイル構造物において、複数のタイルは予め連結され、施工面に固定されることが好ましい。例えば、
図3は、複数のタイルを連結材40で連結してタイルユニット1とし、それを一体として施工面10に固定した態様を、施工面側から見た模式図であり、また
図4は
図3の中央点線部の断面模式図である。連結材40は、例えば樹脂からなる。このようなタイルユニットとすることで施工面への固定作業を効率よく行うことができる。そして、本発明によるタイル構造物にあっては、上記したように目地部の露出が限定されることから、連結材40が外部から視認され難く、連結材40が外観意匠に与える影響を少なくすることができる。さらに連結材40が樹脂からなる場合、樹脂材40の露出が限定されるため、その劣化を進行させる紫外線に曝される機会が減少し、耐久性においても有利となる。
【0019】
さらに、本発明の別の態様によれば、タイルユニットを形成するための連結材は、シート41としてタイルの上表面に貼付される。
図5および6は、この態様の模式図であり、
図5はシート41が、
図1の1番から9番のタイルの上表面に貼付された状態を示し、
図6は、
図5の点線位置での断面図であって、シート41はタイル11、21、および31の上表面に貼付されている。この態様にあっては、タイルユニットが施工面10に接着剤等により固定された後、シート41は剥離される。この態様において、シート41は、例えば、紙または樹脂フィルムにより構成されてよい。
【0020】
また、本発明のさらに別の態様によれば、タイルユニットを形成するための連結材は、シート42としてタイルの施工面10に固定される側に貼付されてもよい。
図7は、この態様の模式図であり、シート42が、タイル11、21、および31の施工面10側の面に貼付されている。この態様にあっては、シート42は、タイルユニットとともに施工面10に接着剤等により固定される。シート42は、好ましくは樹脂等からなるネット状とされるがこれに限定されるものではない。
【0021】
本発明によるタイル構造物を構成するタイルは、上記のとおり、好ましくは同一形状であり、その結果、複数のタイルの製造が容易であり、高い生産性で製造することができる。また、隣り合うタイルを規則的に繰り返し固定することも容易であり、外観意匠が良好なタイル構造物を形成できるとの利点も得られる。
【0022】
図2に示される態様にあっては、タイルは断面形状が台形、すなわち側面14および15が直線で構成されるものとしたが、本発明の別の態様によれば、タイル構造物を構成するタイルは、この側面が曲線とされ、その断面形状が上に凸の曲面である形状とされる。
図8はこの態様のタイル構造物である。タイルの側面が曲線とされ、その断面形状が上に凸の曲面である形状とされた結果、第1のタイル11と、第2のタイル21が形成する第1の目地の形状が、その施工面10近傍において図に示すA1の幅を有し、かつその表面近傍においてB1の幅を有しながら、目地の途中の箇所ではC1の幅を備え、このC1の幅は、A1およびB1のいずれよりも狭い幅となる。同様の構成は、第1のタイル11と、第3のタイル31が形成する第2の目地においても形成される。すなわち、その施工面10近傍におけるA2の幅および表面近傍におけるB2の幅よりも、目地の途中のC2の幅が狭く構成されている。このように目地の途中の幅が狭い態様にあっては、紫外線が施工面10まで届き難く、その結果接着剤等の劣化をより有効に抑制できるとの効果が得られる。
【0023】
また、本発明の別の態様によれば、タイル構造物を構成するタイルは、その角部分において面取りされた面取り部を備える。
図9は、この態様を示す模式図であり、図に示すように、タイルは角部において面取り部16を四隅に備える。この図において、第1のタイル11は面取り部を備えた表面が上面側となって固定され、第2および第3のタイル21および31が面取り部を備えた面が施工面に固定される。このような面取り部があることで、上下左右にタイルにおいて角部が干渉しないとの利点が得られる。
【0024】
本発明においてタイル構造物を構成するタイルの厚さは適宜決定されてよいが、例えば強度面から7mm以上が好ましく、また重量の面から20mm以下が好ましい範囲として例示できる。