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特許7428009放送再送信システム、局側装置、宅側装置および放送再送信方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】放送再送信システム、局側装置、宅側装置および放送再送信方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 21/2381 20110101AFI20240130BHJP
   H04N 21/242 20110101ALI20240130BHJP
   H04N 21/43 20110101ALI20240130BHJP
   H04H 20/08 20080101ALI20240130BHJP
【FI】
H04N21/2381
H04N21/242
H04N21/43
H04H20/08
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020032740
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021136627
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】浅井 真二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 富博
(72)【発明者】
【氏名】村角 賢三
(72)【発明者】
【氏名】山田 正寿
【審査官】川中 龍太
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-244704(JP,A)
【文献】特開2013-141205(JP,A)
【文献】特開2011-114469(JP,A)
【文献】特開2013-201702(JP,A)
【文献】特開2006-186580(JP,A)
【文献】特開2009-147855(JP,A)
【文献】特開2019-009756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 21/00 - 21/858
H04H 20/00 - 20/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
番組の情報を含む放送波を受信し、前記番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを生成して送信する局側装置と、
前記局側装置から送信される前記IPパケットを受信して前記IPパケットの受信レートを測定し、測定した前記受信レートに基づいて自己のクロックを調整することにより前記基準クロックを再生し、再生した前記基準クロックである再生クロックを用いて前記番組の情報を含む放送波を出力する宅側装置とを備え、
前記局側装置は、地上デジタル放送のチャネルごとに前記IPパケットを生成し、生成した複数の前記チャネルの前記IPパケットを多重化して送信し、
前記宅側装置は、複数の前記チャネルのうちのいずれか1つの前記チャネルを選択し、選択した前記チャネルの前記受信レートを測定する、放送再送信システム。
【請求項2】
前記局側装置は、前記番組の情報が分割されて格納された複数のTS(Transport Stream)パケットである番組パケットを生成し、ヌルパケットを前記番組パケット間に挿入することにより伝送レートを調整し、調整後の前記番組パケットおよび前記ヌルパケットを前記IPパケットに格納して送信し、
前記宅側装置は、受信した前記IPパケットに格納された前記番組パケットおよび前記ヌルパケットをバッファに格納し、前記バッファの蓄積量を監視し、前記蓄積量に基づいて自己のクロックの周波数を調整する、請求項1に記載の放送再送信システム。
【請求項3】
前記局側装置は、前記番組の情報が分割されて格納された複数のTTS(Timestamped Transport Stream)パケットを生成し、生成した前記TTSパケットを前記IPパケットに格納して送信し、
前記宅側装置は、受信した前記IPパケットに格納された前記TTSパケットにおけるタイムスタンプに基づいて、自己のクロックの周波数を調整する、請求項1に記載の放送再送信システム。
【請求項4】
番組の情報を含む放送波を受信し、前記番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを生成して送信する局側装置と、
前記局側装置から送信された前記IPパケットである放送IPパケット、およびネットワークから受信した他のIPパケットを多重化して送信する多重化装置と、
前記多重化装置から送信された前記IPパケットを受信して前記放送IPパケットおよび前記他のIPパケットに分けて出力する逆多重化装置と、
前記逆多重化装置から出力される前記放送IPパケットを受信して前記放送IPパケットの受信レートを測定し、測定した前記受信レートに基づいて自己のクロックを調整することにより前記基準クロックを再生し、再生した前記基準クロックである再生クロックを用いて前記番組の情報を含む放送波を出力する宅側装置とを備える、放送再送信システム。
【請求項5】
宅側装置であって、
放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを局側装置から受信する受信部と、
前記受信部によって受信された、前記局側装置における前記IPパケットの伝送処理において与えられた情報を用いて、前記基準クロックを再生する再生部と、
前記再生部によって再生された前記基準クロックである再生クロックを用いて前記番組の情報を含む放送波を出力する送信部とを備え、
前記局側装置は、地上デジタル放送のチャネルごとに前記IPパケットを生成し、生成した複数の前記チャネルの前記IPパケットを多重化して送信し、
前記宅側装置は、複数の前記チャネルのうちのいずれか1つの前記チャネルを選択し、選択した前記チャネルの前記IPパケットの受信レートを測定し、測定した前記受信レートに基づいて自己のクロックを調整することにより前記基準クロックを再生する、宅側装置。
【請求項6】
放送再送信システムにおける放送再送信方法であって、
局側装置が、受信した放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを生成して送信するステップと、
宅側装置が、前記局側装置から送信される前記IPパケットの受信レートを測定し、測定した前記受信レートに基づいて自己のクロックを調整することにより前記基準クロックを再生するステップと、
前記宅側装置が、再生した前記基準クロックである再生クロックを用いて前記番組の情報を含む放送波を出力するステップとを含み、
前記IPパケットを生成して送信するステップにおいては、前記局側装置が、地上デジタル放送のチャネルごとに前記IPパケットを生成し、生成した複数の前記チャネルの前記IPパケットを多重化して送信し、
前記基準クロックを再生するステップにおいては、前記宅側装置が、複数の前記チャネルのうちのいずれか1つの前記チャネルを選択し、選択した前記チャネルの前記受信レートを測定する、放送再送信方法。
【請求項7】
放送再送信システムにおける放送再送信方法であって、
局側装置が、受信した放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを生成して送信するステップと、
多重化装置が、前記局側装置から送信された前記IPパケットである放送IPパケット、およびネットワークから受信した他のIPパケットを多重化して送信するステップと、
逆多重化装置が、前記多重化装置から送信された前記IPパケットを受信して前記放送IPパケットおよび前記他のIPパケットに分けて出力するステップと、
宅側装置が、前記逆多重化装置から出力される前記放送IPパケットを受信して前記放送IPパケットの受信レートを測定し、測定した前記受信レートに基づいて自己のクロックを調整することにより前記基準クロックを再生するステップと、
前記宅側装置が、再生した前記基準クロックである再生クロックを用いて前記番組の情報を含む放送波を出力するステップとを含む、放送再送信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放送再送信システム、局側装置、宅側装置および放送再送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、MMTP(MPEG Media Transport Protocol)パケットを用いてコンテンツを伝送する技術が開発されている。
【0003】
たとえば、一般社団法人 電波産業会、”デジタル放送におけるMMTによるメディアトランスポート方式 ARIB STD-B60 1.9版”、平成29年3月24日(非特許文献1)には、MMT方式を用いる放送システムが開示されている。
【0004】
この放送システムでは、音声情報および映像情報等の番組の情報を含むMMTパケットは、IPパケットのペイロードに格納される。IPパケットは、TLV(Type Length Value)パケットのペイロードに格納される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】一般社団法人 電波産業会、”デジタル放送におけるMMTによるメディアトランスポート方式 ARIB STD-B60 1.9版”、平成29年3月24日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
たとえば、受信した放送波を、IP(Internet Protocol)網を介して宅側へ送信するIP再送信サービスを行う場合、放送波に含まれるパケットをIPパケットに格納して各宅側へ再送信する構成が考えられる。このような再送信を行うための優れた技術が望まれる。
【0007】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、放送波をネットワーク経由で宅側へ再送信する優れたシステムを構築することが可能な放送再送信システム、局側装置、宅側装置および放送再送信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本開示の放送再送信システムは、番組の情報を含む放送波を受信し、前記番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを生成して送信する局側装置と、前記局側装置から送信される前記IPパケットを受信して前記IPパケットの受信レートを測定し、測定した前記受信レートに基づいて自己のクロックを調整することにより前記基準クロックを再生し、再生した前記基準クロックである再生クロックを用いて前記番組の情報を含む放送波を出力する宅側装置とを備える。
【0009】
(7)本開示の局側装置は、番組の情報を含む放送波を受信する受信部と、前記受信部によって受信された前記放送波に含まれる前記番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを生成して送信する伝送処理を行う送信部とを備え、前記送信部は、前記伝送処理において、前記IPパケットの送信先の宅側装置において前記基準クロックを認識可能な前記IPパケットを生成する。
【0010】
(8)本開示の宅側装置は、放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを局側装置から受信する受信部と、前記受信部によって受信された、前記局側装置における前記IPパケットの伝送処理において与えられた情報を用いて、前記基準クロックを再生する再生部と、前記再生部によって再生された前記基準クロックである再生クロックを用いて前記番組の情報を含む放送波を出力する送信部とを備える。
【0011】
(9)本開示の放送再送信方法は、放送再送信システムにおける放送再送信方法であって、局側装置が、受信した放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを生成して送信するステップと、宅側装置が、前記局側装置から送信される前記IPパケットの受信レートを測定し、測定した前記受信レートに基づいて自己のクロックを調整することにより前記基準クロックを再生するステップと、前記宅側装置が、再生した前記基準クロックである再生クロックを用いて前記番組の情報を含む放送波を出力するステップとを含む。
【0012】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える放送再送信システムとして実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理のステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、放送再送信システムの一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【0013】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える局側装置として実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする方法として実現され得たり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、局側装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【0014】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える宅側装置として実現され得るだけでなく、かかる特徴的な処理をステップとする方法として実現され得たり、かかるステップをコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現され得る。また、本開示の一態様は、宅側装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得る。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、放送波をネットワーク経由で宅側へ再送信する優れたシステムを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本開示の第1の実施の形態に係る放送再送信システムの構成を示す図である。
図2図2は、本開示の第1の実施の形態に係る放送再送信システムにおける局側装置の構成を示す図である。
図3図3は、本開示の第1の実施の形態に係る放送再送信システムにおける宅側装置の構成を示す図である。
図4図4は、本開示の第1の実施の形態に係る局側装置における伝送レートの調整を含む処理の流れの一例を示す図である。
図5図5は、本開示の第1の実施の形態に係る宅側装置における伝送レートの調整を含む処理の流れの一例を示す図である。
図6図6は、本開示の第1の実施の形態に係る局側装置における伝送レートの調整を含む処理の流れの一例を示す図である。
図7図7は、本開示の第1の実施の形態に係る宅側装置における伝送レートの調整を含む処理の流れの一例を示す図である。
図8図8は、本開示の第1の実施の形態に係る宅側装置における伝送レートの調整を含む処理の流れの一例を示す図である。
図9図9は、本開示の第2の実施の形態に係る放送再送信システムの構成を示す図である。
図10図10は、本開示の第2の実施の形態に係る放送再送信システムにおける局側装置の構成を示す図である。
図11図11は、本開示の第2の実施の形態に係る放送再送信システムにおける宅側装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0018】
(1)本開示の実施の形態に係る放送再送信システムは、番組の情報を含む放送波を受信し、前記番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを生成して送信する局側装置と、前記局側装置から送信される前記IPパケットを受信して前記IPパケットの受信レートを測定し、測定した前記受信レートに基づいて自己のクロックを調整することにより前記基準クロックを再生し、再生した前記基準クロックである再生クロックを用いて前記番組の情報を含む放送波を出力する宅側装置とを備える。
【0019】
このような構成により、たとえば放送波を放送以外のサービスに係るIPパケットと同じ伝送路を介して宅側へ伝送することができるため、局側および宅側間のネットワーク構成を簡易化することができる。たとえば、局側および宅側間を光ファイバを用いて接続する場合、光信号の増幅等を行う設備の増加を抑制することができ、また、波長多重を行う構成と比べて、伝送品質を確保しながら伝送距離を伸ばすことができる。したがって、放送波をネットワーク経由で宅側へ再送信する優れたシステムを構築することができる。
【0020】
(2)好ましくは、前記局側装置は、地上デジタル放送のチャネルごとに前記IPパケットを生成し、生成した複数の前記チャネルの前記IPパケットを多重化して送信し、
前記宅側装置は、複数の前記チャネルのうちのいずれか1つの前記チャネルを選択し、選択した前記チャネルの前記受信レートを測定する。
【0021】
このような構成により、地上デジタル放送の番組を配信するための局側および宅側間のネットワーク構成を簡易化するとともに、宅側装置において簡易な処理でクロック再生を行うことができる。
【0022】
(3)より好ましくは、前記局側装置は、前記番組の情報が分割されて格納された複数のTSパケットである番組パケットを生成し、ヌルパケットを前記番組パケット間に挿入することにより伝送レートを調整し、調整後の前記番組パケットおよび前記ヌルパケットを前記IPパケットに格納して送信し、前記宅側装置は、受信した前記IPパケットに格納された前記番組パケットおよび前記ヌルパケットをバッファに格納し、前記バッファの蓄積量を監視し、前記蓄積量に基づいて自己のクロックの周波数を調整する。
【0023】
このような構成により、基準クロックを再生する際に用いる情報を宅側装置に与えるための局側装置における処理を簡易化するとともに、複数のチャネルの番組を含む放送法を伝送するシステムにおいて、宅側装置においてたとえば高価な発振器を用いることなく、クロック再生を簡易な処理で行うことができる。
【0024】
(4)より好ましくは、前記局側装置は、前記番組の情報が分割されて格納された複数のTTSパケットを生成し、生成した前記TTSパケットを前記IPパケットに格納して送信し、前記宅側装置は、受信した前記IPパケットに格納された前記TTSパケットにおけるタイムスタンプに基づいて、自己のクロックの周波数を調整する。
【0025】
このような構成により、基準クロックを再生する際に用いる情報を宅側装置に与えながら、ヌルパケットを用いる構成と比べて、局側および宅側間のネットワークにおける伝送量を抑制することができる。また、複数のチャネルの番組を含む放送法を伝送するシステムにおいて、宅側装置においてたとえば高価な発振器を用いることなく、クロック再生を簡易な処理で行うことができる。
【0026】
(5)好ましくは、前記宅側装置は、前記基準クロックを基準とした前記再生クロックの精度が±0.3ppmに漸近するように自己のクロックを調整する。
【0027】
このような構成により、たとえば宅側装置がIPパケットに含まれる番組の情報を格納したフレームを変調して放送波として出力するシステムにおいて、宅側装置においてたとえば高価な発振器を用いることなく、変調に必要なクロック精度を得ることができる。
【0028】
(6)好ましくは、前記放送再送信システムは、さらに、前記局側装置から送信された前記IPパケットである放送IPパケット、およびネットワークから受信した他のIPパケットを多重化して送信する多重化装置と、前記多重化装置から送信された前記IPパケットを受信して前記放送IPパケットおよび前記他のIPパケットに分けて出力する逆多重化装置とを備える。
【0029】
このような構成により、局側および宅側間のネットワーク構成を簡易化した、放送以外のサービスに係るIPパケットと同じ伝送路を介して放送波を宅側へ伝送するシステムを実現することができる。
【0030】
(7)本開示の実施の形態に係る局側装置は、本開示の局側装置は、番組の情報を含む放送波を受信する受信部と、前記受信部によって受信された前記放送波に含まれる前記番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを生成して送信する伝送処理を行う送信部とを備え、前記送信部は、前記伝送処理において、前記IPパケットの送信先の宅側装置において前記基準クロックを認識可能な前記IPパケットを生成する。
【0031】
このような構成により、たとえば放送波を放送以外のサービスに係るIPパケットと同じ伝送路を介して宅側へ伝送することができるため、局側および宅側間のネットワーク構成を簡易化することができる。たとえば、局側および宅側間を光ファイバを用いて接続する場合、光信号の増幅等を行う設備の増加を抑制することができ、また、波長多重を行う構成と比べて、伝送品質を確保しながら伝送距離を伸ばすことができる。したがって、放送波をネットワーク経由で宅側へ再送信する優れたシステムを構築することができる。
【0032】
(8)本開示の実施の形態に係る宅側装置は、本開示の宅側装置は、放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを局側装置から受信する受信部と、前記受信部によって受信された、前記局側装置における前記IPパケットの伝送処理において与えられた情報を用いて、前記基準クロックを再生する再生部と、前記再生部によって再生された前記基準クロックである再生クロックを用いて前記番組の情報を含む放送波を出力する送信部とを備える。
【0033】
このような構成により、たとえば放送波を放送以外のサービスに係るIPパケットと同じ伝送路を介して宅側へ伝送することができるため、局側および宅側間のネットワーク構成を簡易化することができる。たとえば、局側および宅側間を光ファイバを用いて接続する場合、光信号の増幅等を行う設備の増加を抑制することができ、また、波長多重を行う構成と比べて、伝送品質を確保しながら伝送距離を伸ばすことができる。したがって、放送波をネットワーク経由で宅側へ再送信する優れたシステムを構築することができる。
【0034】
(9)本開示の実施の形態に係る放送再送信方法は、放送再送信システムにおける放送再送信方法であって、局側装置が、受信した放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを生成して送信するステップと、宅側装置が、前記局側装置から送信される前記IPパケットの受信レートを測定し、測定した前記受信レートに基づいて自己のクロックを調整することにより前記基準クロックを再生するステップと、前記宅側装置が、再生した前記基準クロックである再生クロックを用いて前記番組の情報を含む放送波を出力するステップとを含む。
【0035】
このような構成により、たとえば放送波を放送以外のサービスに係るIPパケットと同じ伝送路を介して宅側へ伝送することができるため、局側および宅側間のネットワーク構成を簡易化することができる。たとえば、局側および宅側間を光ファイバを用いて接続する場合、光信号の増幅等を行う設備の増加を抑制することができ、また、波長多重を行う構成と比べて、伝送品質を確保しながら伝送距離を伸ばすことができる。したがって、放送波をネットワーク経由で宅側へ再送信する優れたシステムを構築することができる。
【0036】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0037】
<第1の実施の形態>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る放送再送信システムの構成を示す図である。
【0038】
図1を参照して、放送再送信システム301は、局側装置101と、OLT(Optical Line Terminal)151と、D-ONU(Data-Optical Network Unit)152と、VDSL(Very high bit rate Digital Subscriber Line)装置153と、宅側装置202とを備える。
【0039】
局側装置101およびOLT151は、たとえば、ケーブルテレビ放送を提供する事業者の局舎に設けられる。D-ONU152、VDSL装置153および宅側装置202は、たとえば集合住宅に設けられる。
【0040】
局側装置101には、たとえば外部アンテナ95が接続されている。局側装置101は、たとえばストリームを含む放送波を受信する。放送波は、一例として、地上デジタル放送の放送波である。
【0041】
ストリームは、番組の情報等を含む。番組の情報は、たとえば、音声情報、映像情報、EPG(Electronic Program Guide)情報、SI情報(Service Information)および字幕情報等を含む。
【0042】
音声情報および映像情報は、たとえば、所定の方式に従って、圧縮および暗号化が施されている。
【0043】
局側装置101は、地上デジタル放送のチャネルごとにIPパケットを生成し、生成した複数のチャネルのIPパケットを多重化して送信する。
【0044】
より詳細には、局側装置101は、4つの放送波IP伝送装置161を含む。放送波IP伝送装置161は、放送波から番組の情報を取得し、取得した番組の情報を含むIPパケット(以下、放送IPパケットとも称する。)を生成してOLT151へ送信する。なお、局側装置101は、1つ、2つ、3つまたは5つ以上の放送波IP伝送装置161を備える構成であってもよい。
【0045】
OLT151は、多重化装置の一例であり、局側装置101から受信した放送IPパケット、およびインターネット等の上位ネットワークから受信した他のIPパケットを受信し、受信した放送IPパケットおよび他のIPパケットを多重化して送信する。より詳細には、OLT151は、各IPパケットを含む光信号を生成し、光ファイバ251を含む光ネットワークを介して1または複数のD-ONU152へ送信する。
【0046】
D-ONU152は、逆多重化装置の一例であり、OLT151から受信した光信号に含まれるIPパケットを取得し、取得したIPパケットの宛先IPアドレスまたはポート番号等に基づいて、取得した各IPパケットを放送IPパケットおよび他のIPパケットに分けて出力する。D-ONU152は、放送IPパケットを宅側装置202へ送信し、他のIPパケットをVDSL装置153へ送信する。
【0047】
宅側装置202は、D-ONU152から受信した放送IPパケットから番組の情報を取得し、取得した番組の情報を含む放送波を生成し、アンテナ線を介してたとえば集合住宅における各TVモニタ91へ出力する。これにより、光ファイバが敷設されていない各宅に放送番組を提供することができる。また、各宅においてIPパケットを処理可能なSTB(Set Top Box)等を設けることなく、既設のアンテナ線を介して放送番組を提供することができる。
【0048】
TVモニタ91は、宅側装置202から受信した放送波に含まれる音声情報および映像情報に基づいて番組を再生する。
【0049】
VDSL装置153は、D-ONU152から受信した他のIPパケットを含む通信信号を生成し、電話線経由でパーソナルコンピュータ等の宅内装置92へ送信する。
【0050】
なお、放送再送信システム301は、集合住宅に限らず、たとえば難視聴対策のために複数の戸建て住宅へ放送波を送信し、かつ他のIPパケットを送信する構成であってもよい。
【0051】
図2は、本開示の第1の実施の形態に係る放送再送信システムにおける局側装置の構成を示す図である。
【0052】
図2を参照して、局側装置101における放送波IP伝送装置161は、放送波から複数チャネル分たとえば4つのチャネルの番組の情報を取得し、取得した番組の情報を格納した放送IPパケットをそれぞれ生成してOLT151へ送信する。
【0053】
各放送波IP伝送装置161には、共通の局側クロックが供給される。なお、いずれか1つの放送波IP伝送装置161が、局側クロックを生成して他の各放送波IP伝送装置161に供給する構成であってもよい。局側クロックの周波数は、たとえば10MHzである。
【0054】
放送波IP伝送装置161は、受信部の一例であるチューナ1と、送信部12とを含む。送信部12は、PID(Packet Identifier)フィルタ2と、多重化部3と、IP送信部4とを含む。放送波IP伝送装置161は、4チャネル分としてチューナ1、PIDフィルタ2、および多重化部3の組を4つ含む。なお、放送波IP伝送装置161は、1チャネル分として1つの当該組を含む構成であってもよい。
【0055】
チューナ1は、放送波を受けて復調し、当該放送波に含まれる自己のチャネルの放送TSフレームの一部または全部を出力する。
【0056】
たとえば、チューナ1は、番組の情報等を含む放送波を外部アンテナ95経由で受信し、受信した放送波に含まれるストリームを取得する。
【0057】
より詳細には、チューナ1は、受信した放送波を復調してデジタル信号に変換する。そして、チューナ1は、当該デジタル信号に基づいて、番組の情報が分割されて格納された複数のTSパケット(以下、番組パケットとも称する。)、およびヌルデータが格納されたTSパケット(以下、ヌルパケットとも称する。)等をPIDフィルタ2へ出力する。番組パケットおよびヌルパケットによってストリームが構成される。
【0058】
PIDフィルタ2は、チューナ1から受けた各TSパケットのPIDを参照することにより、ヌルパケットを削除し、番組パケットを多重化部3へ出力する。
【0059】
多重化部3は、クロックジェネレータ5から受けた基準クロックのタイミングに従って動作し、自己のチャネルにおけるストリームの伝送レートを調整する処理を行う。
【0060】
クロックジェネレータ5は、受けた局側クロックをたとえば分周または逓倍した基準クロックを生成して多重化部3等の各回路へ出力する。
【0061】
局側装置101は、番組の情報を格納した、基準クロックに同期した放送IPパケットを生成して送信する。
【0062】
より詳細には、送信部12は、チューナ1によって受信された放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期した放送IPパケットを生成して送信する伝送処理を行う。送信部12は、当該伝送処理において、放送IPパケットの送信先の宅側装置202において基準クロックを認識可能な放送IPパケットを生成する。すなわち、送信部12は、当該伝送処理において、放送IPパケットの送信先の宅側装置202において基準クロックを再生する際に用いる情報を宅側装置202に与える処理を行う。言い換えれば、送信部12は、基準クロックを表現できる形で、つまり再現可能なように放送IPパケットを送信する。
【0063】
IP送信部4は、各多重化部3から受けた複数のTSパケットがペイロードに格納された放送IPパケットをチャネルごとに生成し、OLT151へ送信する。放送IPパケットには、たとえば7つのTSパケットが格納される。
【0064】
OLT151は、各放送波IP伝送装置161から受信した各チャネルのストリームすなわち各放送IPパケットを多重化し、多重化後の各放送IPパケット、および上位ネットワークから受信した他のIPパケットを光信号に変換して送信する。
【0065】
図3は、本開示の第1の実施の形態に係る放送再送信システムにおける宅側装置の構成を示す図である。
【0066】
図3を参照して、宅側装置202は、IP受信部31と、送信部32と、再生部33とを備える。送信部32は、混合回路25を含み、また、複数チャネル分たとえば13チャネル分として、パケットフィルタ21と、バッファ22と、放送TS多重部23と、OFDM変調部24との組を13個含む。なお、送信部32は、1チャネル分として1つの当該組を含む構成であってもよい。再生部33は、選択部41と、バッファ量監視部42と、バッファ量増減時間計測部43と、ローカルクロックずれ量算出部44と、ローカルクロック制御部45と、ローカルクロック生成部46とを含む。
【0067】
宅側装置202は、局側装置101から送信される放送IPパケットを受信して放送IPパケットの受信レートを測定し、測定した受信レートに基づいて自己のクロックを調整することにより基準クロックを再生する。そして、宅側装置202は、再生した基準クロックである再生クロックを用いて当該番組の情報を含む放送波を出力する。
【0068】
より詳細には、宅側装置202は、再生クロックを用いて、チャネルごとに、放送IPパケットに含まれる番組の情報を格納した放送TSフレームを生成し、生成した複数のチャネルの放送TSフレームを多重化して変調した変調信号を放送波として出力する。
【0069】
宅側装置202において、IP受信部31は、放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期した放送IPパケットを局側装置101から受信する。
【0070】
送信部32は、再生部33によって再生された基準クロックである再生クロックを用いて上記番組の情報を含む放送波を出力する。
【0071】
より詳細には、IP受信部31は、D-ONU152から受信した放送IPパケットを各パケットフィルタ21へ出力する。
【0072】
パケットフィルタ21は、放送IPパケットの宛先IPアドレスまたはポート番号等を参照することにより、IP受信部31から受けた放送IPパケットのうち、自己のチャネルに対応する放送IPパケットを選択し、選択した放送IPパケットに格納された各TSパケットをバッファ22に蓄積する。
【0073】
なお、パケットフィルタ21は、選択した放送IPパケットをバッファ22に蓄積する構成であってもよい。
【0074】
放送TS多重部23は、再生部33から受けた再生クロックのタイミングに従い、バッファ22からTSパケットを取り出し、取り出した各TSパケットのうち、後述する例1および例2ではヌルパケットを削除し、後述する例3ではタイムスタンプを削除し、番組パケットを放送TSフレームに再多重する。放送TS多重部23は、ストリームの伝送レートが所定の設定ビットレートになるように、放送TSフレームにおいてヌルパケットを番組パケット間に挿入する。放送TS多重部23は、生成した放送TSフレームをOFDM変調部24へ出力する。
【0075】
OFDM変調部24は、再生部33から受けた再生クロックのタイミングに従い、放送TS多重部23から受けた放送TSフレームに対してOFDM変調等を行った変調信号であって自己のチャネルに対応した周波数の変調信号を生成し、生成した変調信号を混合回路25へ出力する。
【0076】
混合回路25は、各チャネルのOFDM変調部24から受けた変調信号を混合して放送波としてアンテナ線へ出力する。これにより、各チャネルのストリームが多重化して出力される。
【0077】
たとえば、宅側装置202は、複数のチャネルのうちのいずれか1つのチャネルを選択し、選択したチャネルの受信レートを測定する。
【0078】
より詳細には、宅側装置202における再生部33は、局側装置101における放送IPパケットの伝送処理において与えられた情報を用いて、基準クロックを再生する。
【0079】
具体的には、選択部41は、各チャネルのバッファ22のうちのいずれか1つを選択し、選択したバッファ22とバッファ量監視部42とを接続する。たとえば、選択部41は、予め設定された特定のチャネルのバッファ22を選択する。
【0080】
あるいは、選択部41は、使用中のチャネルを検出し、検出したいずれか1つのチャネルにおける受信レートを測定する。すなわち、選択部41は、使用チャネルの検出結果に応じてバッファ22を選択する。
【0081】
バッファ量監視部42は、接続されたバッファ22におけるバッファ量すなわちデータの蓄積量を監視し、監視結果をバッファ量増減時間計測部43へ出力する。
【0082】
バッファ量増減時間計測部43は、バッファ量監視部42の監視結果に基づいて、バッファ22における蓄積量の増減時間を計測する。たとえば、バッファ量増減時間計測部43は、バッファ量の基準値より大きい第1閾値および小さい第2閾値を保持しており、バッファ22のバッファ量が第1閾値を超えるまでの時間、または第2閾値未満となるまでの時間を計測し、計測結果をローカルクロックずれ量算出部44へ出力する。
【0083】
ローカルクロックずれ量算出部44は、バッファ量増減時間計測部43から受けた計測結果に基づいてローカルクロックのずれ量を算出し、算出結果をローカルクロック制御部45へ出力する。
【0084】
ローカルクロック制御部45は、ローカルクロックずれ量算出部44から受けた算出結果に応じてローカルクロック生成部46へ制御信号を出力することにより、ローカルクロック生成部46から出力されるローカルクロックの周波数を調整する。これにより、放送TS多重部23によるバッファ22からのTSパケットの取り出し速度が変更される。
【0085】
たとえば、ローカルクロック制御部45は、バッファ22のバッファ量が上記基準値に収束するように、所定の分解能でローカルクロックの周波数を変更する。たとえば、ローカルクロック制御部45は、上記算出結果の示すずれ量に最も近い調整量でローカルクロックの周波数を変更する動作を繰り返す。
【0086】
ローカルクロック生成部46は、ローカルクロック制御部45から受けた制御信号に応じて周波数を設定したローカルクロックを再生クロックとして各チャネルの放送TS多重部23およびOFDM変調部24等へ出力する。これにより、局側装置101における基準クロックに追従した再生クロックを生成することができ、チャネルごとの多数の発振器を設ける必要がなくなる。
【0087】
上記のように、放送再送信システム301では、複数のチャネルのフレームを多重化して変調し、放送波として出力する構成により、宅側装置202からの番組の配信先が複数存在する環境において、配信先ごとにIPパケットに対応したSTB等の受信装置を設けることなく通常の放送波の受信装置を用いて番組を視聴することができ、放送受信設備のコストを低減することができる。
【0088】
また、放送再送信システム301では、局側装置101において基準クロックを用いて各チャネルのストリームを同期して送信する構成により、宅側装置202において各チャネルのうちのいずれか1つのチャネルを監視してローカルクロックの周波数調整を行えばよくなり、また、簡易な構成で、宅側装置202において各チャネルのストリームを互いに同期した状態で多重化して出力することができる。
【0089】
また、放送再送信システム301では、送信側のビットレートを基準に所定の分解能でクロック再生を行う構成により、たとえば、基準クロックに対する再生クロックの精度として、ハードウェア構成の観点から現実的な±0.3ppm(parts per million)を実現することができる。これにより、宅側装置202において高価な高精度の発振器が不要となる。
【0090】
すなわち、宅側装置202は、基準クロックを基準とした再生クロックの精度が±0.3ppmに漸近するように、すなわち近づくように自己のクロックを調整する。
【0091】
[動作の流れ]
放送再送信システム301における各装置は、メモリを含むコンピュータを備え、当該コンピュータにおけるCPU等の演算処理部は、以下の図の各ステップの一部または全部を含むプログラムを当該メモリからそれぞれ読み出して実行する。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、外部からインストールすることができる。これら複数の装置のプログラムは、それぞれ、記録媒体に格納された状態で流通する。
【0092】
局側装置101における送信部12は、基準クロックを再生する際に用いる情報を宅側装置202に与える、すなわち、ストリームの伝送レートが局側装置101および宅側装置202において同じ設定ビットレートになるようにヌルパケットまたはタイムスタンプを用いて放送IPパケットを生成する。また、送信部12は、基準クロックのタイミングに従って、各チャネルのビットレートをヌルパケットによって揃えるか、またはタイムスタンプをTSパケットに付加する。
【0093】
[例1]
図4は、本開示の第1の実施の形態に係る局側装置における伝送レートの調整を含む処理の流れの一例を示す図である。図5は、本開示の第1の実施の形態に係る宅側装置における伝送レートの調整を含む処理の流れの一例を示す図である。図4および図5は、局側装置101および宅側装置202間においてヌル(Null)パケットが伝送される例を示している。
【0094】
局側装置101の送信部12における各多重化部3は、各チャネルにおける伝送レートを揃えるように、IP送信部4へ出力するストリームの伝送レートを調整し、IP送信部4へ出力する。
【0095】
より詳細には、多重化部3は、クロックジェネレータ5から受けた基準クロックのタイミングに従って動作し、自己のチャネルにおけるストリームの伝送レートが所定の設定ビットレートになるように調整する処理を行う。
【0096】
具体的には、図4を参照して、局側装置101は、番組の情報が分割されて格納された複数のTSパケットである番組パケットを生成し、ヌルパケットを番組パケット間に挿入することにより伝送レートを調整し、調整後の番組パケットおよびヌルパケットをIPパケットに格納して送信する。
【0097】
局側装置101において、まず、チューナ1は、放送TSフレームを含む放送波を受信する。放送TSフレームは、ワンセグ用のA階層におけるTSパケットおよびヌルパケットと、ハイビジョン映像用のB階層におけるTSパケットおよびヌルパケットと、無効階層におけるTSパケットおよびヌルパケットとを含む。
【0098】
放送TSフレームにおけるストリームの伝送レートは、たとえば188バイトのTSパケットにおいて29.96Mbpsである。
【0099】
この場合、放送TSフレームのパラメータは、ISDB-T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)モードがモード3であり、ガードインターバルが1/8であり、A階層のセグメント数、変調方式、畳込符号化率および時間インターリーブがそれぞれ1、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)、2/3および4であり、B階層のセグメント数、変調方式、畳込符号化率および時間インターリーブがそれぞれ12、64QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、3/4および2である。
【0100】
また、A階層におけるTSパケットおよびヌルパケットのレートは0.42Mbpsであり、B階層におけるTSパケットおよびヌルパケットのレートは16.85Mbpsであり、無効階層におけるTSパケットおよびヌルパケットのレートは12.69Mbpsである(ステップS1)。
【0101】
次に、PIDフィルタ2は、ヌルパケットを削除するとともに、A階層における各TSパケットを削除する。これにより、B階層の番組パケットが選択的に多重化部3へ出力され、ストリームの伝送レートは、たとえば188バイトのTSパケットにおいて16.85Mbps未満となる(ステップS2)。
【0102】
次に、多重化部3は、ストリームの伝送レートが設定ビットレートたとえば17.00Mbpsになるように、番組パケット間にヌルパケットを挿入するか否かを選択する(ステップS3)。
【0103】
次に、IP送信部4は、多重化部3から受けた複数のTSパケットがペイロードに格納された放送IPパケットを生成し、OLT151等を介して宅側装置202へ送信する。
【0104】
図5を参照して、宅側装置202は、受信した放送IPパケットに格納された番組パケットおよびヌルパケットをバッファ22に格納し、バッファ22の蓄積量を監視し、当該蓄積量に基づいて自己のクロックの周波数を調整する。
【0105】
宅側装置202において、まず、IP受信部31は、局側装置101から放送IPパケットを受信する(ステップS5)。
【0106】
次に、パケットフィルタ21は、各チャネルの放送IPパケットが多重化されたストリームから自己のチャネルすなわち対象チャネルの放送IPパケットを抽出する。抽出した各放送IPパケットによるストリームの伝送レートは、たとえば188バイトのTSパケットにおいて17.00Mbpsである。
【0107】
より詳細には、パケットフィルタ21は、放送IPパケットの宛先IPアドレスまたはポート番号等を参照することにより、IP受信部31から受けた放送IPパケットのうち、自己のチャネルに対応する放送IPパケットを選択し、選択した放送IPパケットに格納された各TSパケットをバッファ22に蓄積する。
【0108】
すなわち、パケットフィルタ21は、番組パケットに加えて、局側装置101における多重化部3によって挿入されたヌルパケットもバッファ22に蓄積する。これにより、上述のようなローカルクロックの周波数調整が可能となり、また、各チャネルのうちのどのチャネルについて当該周波数調整を行っても、各チャネルにおいて共通的に周波数調整の効果を得ることができる(ステップS6)。
【0109】
次に、再生クロックのタイミングに従う設定ビットレートでバッファ22からTSパケットが取り出されることにより、バッファ量が変動する。上述のように、再生部33は、バッファ22のバッファ量を監視することにより、ローカルクロックの周波数を調整し、基準クロックを再生する。バッファ22から取り出されるTSパケットによるストリームの伝送レートは、たとえば188バイトのTSパケットにおいて17.00Mbpsである(ステップS7)。
【0110】
次に、放送TS多重部23は、再生クロックのタイミングに従い、取り出した各TSパケットのうち、ヌルパケットを削除し、番組パケットを放送TSフレームに再多重する。
【0111】
当該放送TSフレームでは、A階層がハイビジョン映像用となる。放送TSフレームにおけるストリームの伝送レートは、たとえば188バイトのTSパケットにおいて29.96Mbpsである。
【0112】
この場合、当該放送TSフレームのパラメータは、ISDB-Tモードがモード3であり、ガードインターバルが1/16であり、A階層のセグメント数、変調方式、畳込符号化率および時間インターリーブがそれぞれ13、64QAM、7/8および2である。A階層におけるTSパケットおよびヌルパケットのレートは22.55Mbpsであり、無効階層におけるTSパケットおよびヌルパケットのレートは7.41Mbpsである(ステップS8)。
【0113】
次に、OFDM変調部24は、再生クロックのタイミングに従い、放送TS多重部23によって再多重された放送TSフレームに対してOFDM変調等を行った変調信号を生成し、混合回路25を介して放送波として出力する(ステップS9)。
【0114】
[例2]
図6は、本開示の第1の実施の形態に係る局側装置における伝送レートの調整を含む処理の流れの一例を示す図である。図7は、本開示の第1の実施の形態に係る宅側装置における伝送レートの調整を含む処理の流れの一例を示す図である。図6および図7は、局側装置101および宅側装置202間においてヌルパケットが伝送されず、タイムスタンプが伝送される例を示している。
【0115】
局側装置101は、番組の情報が分割されて格納された複数のTTS(Timestamped Transport Stream)パケットを生成し、生成したTTSパケットをIPパケットに格納して送信する。
【0116】
具体的には、図6を参照して、ステップS11~S13は、図4に示すステップS1~S3とそれぞれ同様である。
【0117】
次に、多重化部3は、ヌルパケットが挿入されたストリームにおいて、番組パケットにタイムスタンプを付加する。当該タイムスタンプは、挿入されたヌルパケットが加味された値となる(ステップS14)。
【0118】
次に、多重化部3は、タイムスタンプが付加されたストリームにおいて、ヌルパケットを削除する(ステップS15)。
【0119】
次に、IP送信部4は、多重化部3によってタイムスタンプが付加された複数の番組パケットがペイロードに格納された放送IPパケットを生成し、OLT151等を介して宅側装置202へ送信する。
【0120】
図7を参照して、宅側装置202は、受信した放送IPパケットに格納されたTTSパケットにおけるタイムスタンプに基づいて、自己のクロックの周波数を調整する。
【0121】
ステップS17およびS18は、図5に示すステップS5およびS6とそれぞれ同様である。
【0122】
次に、パケットフィルタ21は、抽出した各放送IPパケットによるストリームにおいて、タイムスタンプに基づいてヌルパケットを挿入するとともに、タイムスタンプを削除する。
【0123】
より詳細には、パケットフィルタ21は、時間的に連続する番組パケットのタイムスタンプ差に基づいて、放送波IP伝送装置161の多重化部3においてヌルパケットが挿入されていたか否かを判断し、挿入されていたと判断した番組パケット間にヌルパケットを挿入する。ヌルパケットの挿入後のストリームの伝送レートは、たとえば188バイトのTSパケットにおいて17.00Mbpsとなる(ステップS19)。
【0124】
ステップS20~S22は、図5に示すステップS7~S9とそれぞれ同様である。
【0125】
例2においても、タイムスタンプを用いる構成により、例1と同様に、ローカルクロックの周波数調整が可能となり、また、各チャネルのうちのどのチャネルについて当該周波数調整を行っても、各チャネルにおいて共通的に周波数調整の効果を得ることができる。
【0126】
[例3]
図8は、本開示の第1の実施の形態に係る宅側装置における伝送レートの調整を含む処理の流れの一例を示す図である。図8は、局側装置101および宅側装置202間においてヌルパケットが伝送されず、タイムスタンプが伝送される例を示している。例3において、局側装置101における伝送レートの調整を含む処理の流れは、図6と同様である。
【0127】
例3では、再生部33は、図3に示すバッファ量監視部42およびバッファ量増減時間計測部43の代わりに、再生クロックのタイミングに従って動作するタイムスタンプカウンタを有する。
【0128】
図8を参照して、宅側装置202は、受信した放送IPパケットに格納されたTTSパケットにおけるタイムスタンプに基づいて、自己のクロックの周波数を調整する。
【0129】
ステップS37およびS38は、図5に示すステップS5およびS6とそれぞれ同様である。
【0130】
次に、再生クロックのタイミングに従う設定ビットレートで、バッファ22からタイムスタンプが付加された番組パケットが取り出される。再生部33におけるローカルクロックずれ量算出部44は、バッファ量の監視結果に基づいてローカルクロックのずれ量を算出する代わりに、選択部41を介して取得した、バッファ22から取り出される番組パケットのタイムスタンプ値と、タイムスタンプカウンタの値とを比較し、比較結果に基づいてローカルクロックのずれ量を算出する。ここで、ローカルクロックずれ量算出部44は、バッファ22において時間的に連続する番組パケットのタイムスタンプ差に基づいて、放送波IP伝送装置161の多重化部3においてヌルパケットが挿入されていたか否かを判断し、挿入されていたと判断した次の番組パケットのタイムスタンプ値と比較する際、タイムスタンプカウンタの値をヌルパケット分補正し、補正後の値を用いて比較を行う(ステップS39)。
【0131】
次に、放送TS多重部23は、再生クロックのタイミングに従い、取り出した番組パケットに付加されたタイムスタンプを削除し、削除後の番組パケットを放送TSフレームに再多重する(ステップS40)。
【0132】
ステップS41は、図4に示すステップS9と同様である。
【0133】
例3においても、タイムスタンプを用いる構成により、例1および例2と同様に、ローカルクロックの周波数調整が可能となり、また、各チャネルのうちのどのチャネルについて当該周波数調整を行っても、各チャネルにおいて共通的に周波数調整の効果を得ることができる。
【0134】
例1~例3において説明したように、放送再送信システム301では、局側装置101のPIDフィルタ2においてワンセグ用のA階層における各TSパケットを削除する構成により、ストリームの伝送レートを下げることができるため、各チャネルのうちの最も低い伝送レートのチャネルに合わせることなく、各多重化部3においてヌルパケットを適宜挿入する簡易な処理で、各チャネルにおけるストリームの伝送レートを揃え、また、当該伝送レートの設定の自由度を高めることができる。
【0135】
また、OFDM変調部24において変調処理の対象となる階層を減らすことができるため、回路規模を小さくすることができる。
【0136】
ところで、たとえば、受信した放送波を、IP網を介して宅側へ送信するIP再送信サービスを行う場合、放送波に含まれるパケットをIPパケットに格納して各宅側へ再送信する構成が考えられる。このような再送信を行うための優れた技術が望まれる。
【0137】
本開示の第1の実施の形態に係る放送再送信システムでは、局側装置101は、番組の情報を含む放送波を受信し、当該番組の情報を格納した、基準クロックに同期した放送IPパケットを生成して送信する。宅側装置202は、局側装置101から送信される放送IPパケットを受信して放送IPパケットの受信レートを測定し、測定した受信レートに基づいて自己のクロックを調整することにより基準クロックを再生し、再生した基準クロックである再生クロックを用いて当該番組の情報を含む放送波を出力する。
【0138】
本開示の第1の実施の形態に係る局側装置では、チューナ1は、番組の情報を含む放送波を受信する。送信部12は、チューナ1によって受信された放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを生成して送信する伝送処理を行う。送信部12は、当該伝送処理において、IPパケットの送信先の宅側装置202において基準クロックを認識可能なIPパケットを生成する。
【0139】
本開示の第1の実施の形態に係る宅側装置では、IP受信部31は、放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを局側装置101から受信する。再生部33は、IP受信部31によって受信された、局側装置101におけるIPパケットの伝送処理において与えられた情報を用いて、基準クロックを再生する。送信部32は、再生部33によって再生された基準クロックである再生クロックを用いて上記番組の情報を含む放送波を出力する。
【0140】
本開示の第1の実施の形態に係る放送再送信方法では、まず、局側装置101が、受信した放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを生成して送信する。次に、宅側装置202が、局側装置101から送信されるIPパケットの受信レートを測定し、測定した受信レートに基づいて自己のクロックを調整することにより基準クロックを再生する。次に、宅側装置202が、再生した基準クロックである再生クロックを用いて上記番組の情報を含む放送波を出力する。
【0141】
このような構成により、たとえば放送波を放送以外のサービスに係るIPパケットと同じ伝送路を介して宅側へ伝送することができるため、局側および宅側間のネットワーク構成を簡易化することができる。たとえば、局側および宅側間を光ファイバを用いて接続する場合、光信号の増幅等を行う設備の増加を抑制することができ、また、波長多重を行う構成と比べて、伝送品質を確保しながら伝送距離を伸ばすことができる。
【0142】
したがって、本開示の第1の実施の形態に係る放送再送信システム、局側装置、宅側装置、および放送再送信方法では、放送波をネットワーク経由で宅側へ再送信する優れたシステムを構築することができる。
【0143】
次に、本開示の他の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0144】
<第2の実施の形態>
本実施の形態は、第1の実施の形態に係る放送再送信システムと比べて、放送波をダイレクトに再送信する放送再送信システムに関する。以下で説明する内容以外は第1の実施の形態に係る放送再送信システムと同様である。
【0145】
図9は、本開示の第2の実施の形態に係る放送再送信システムの構成を示す図である。
【0146】
図9を参照して、放送再送信システム302は、複数の局側装置111と、OLT151と、D-ONU152と、VDSL装置153と、宅側装置212とを備える。
【0147】
局側装置111およびOLT151は、たとえば、ケーブルテレビ放送を提供する事業者の局舎に設けられる。D-ONU152、VDSL装置153および宅側装置212は、たとえば集合住宅に設けられる。
【0148】
局側装置111は、たとえばストリームを含む放送波を受信する。放送波は、一例として、地上デジタル放送以外の放送波である。放送波の帯域幅は、たとえば70MHz以上である。また、各局側装置111には、共通の局側クロックが供給される。なお、いずれか1つの局側装置111が、局側クロックを生成して他の各局側装置111に供給する構成であってもよい。局側クロックの周波数は、たとえば10MHzである。
【0149】
局側装置111は、受信した放送波の情報を含む放送IPパケットを生成してOLT151へ送信する。
【0150】
OLT151は、多重化装置の一例であり、各局側装置111から受信した放送IPパケット、およびインターネット等の上位ネットワークから受信した他のIPパケットを受信し、受信した放送IPパケットおよび他のIPパケットを多重化して送信する。より詳細には、OLT151は、各IPパケットを含む光信号を生成し、光ファイバ251を含む光ネットワークを介して1または複数のD-ONU152へ送信する。
【0151】
D-ONU152は、逆多重化装置の一例であり、OLT151から受信した光信号に含まれるIPパケットを取得し、取得したIPパケットの宛先IPアドレスまたはポート番号等に基づいて、取得した各IPパケットを放送IPパケットおよび他のIPパケットに分けて出力する。D-ONU152は、放送IPパケットを宅側装置212へ送信し、他のIPパケットをVDSL装置153へ送信する。
【0152】
宅側装置212は、D-ONU152から受信した放送IPパケットの情報を含む放送波を生成し、アンテナ線を介してたとえば集合住宅における各TVモニタ91へ出力する。宅側装置212は、変調処理を行うことなく放送波を生成し、出力する。
【0153】
TVモニタ91は、宅側装置212から受信した放送波に含まれる音声情報および映像情報に基づいて番組を再生する。
【0154】
VDSL装置153は、D-ONU152から受信した他のIPパケットを含む通信信号を生成し、電話線経由でパーソナルコンピュータ等の宅内装置92へ送信する。
【0155】
なお、放送再送信システム302は、集合住宅に限らず、たとえば難視聴対策のために複数の戸建て住宅へ放送波を送信し、かつ他のIPパケットを送信する構成であってもよい。
【0156】
図10は、本開示の第2の実施の形態に係る放送再送信システムにおける局側装置の構成を示す図である。
【0157】
図10を参照して、局側装置111は、受信部51と、送信部52とを含む。送信部52は、A/Dコンバータ61と、IP送信部62と、クロックジェネレータ63とを含む。
【0158】
局側装置111は、番組の情報を格納した、基準クロックに同期した放送IPパケットを生成して送信する。
【0159】
より詳細には、受信部51は、番組の情報を含む放送波を受信する。受信部51は、たとえば図示しないアンテナから受けた放送波を送信部52におけるA/Dコンバータ61へ出力する。
【0160】
送信部52は、受信部51によって受信された放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期した放送IPパケットを生成して送信する伝送処理を行う。
【0161】
より詳細には、A/Dコンバータ61は、クロックジェネレータ63から受けた基準クロックのタイミングに従って動作し、受信部51から受けたアナログ信号である放送波をデジタル信号に変換してIP送信部62へ出力する。
【0162】
クロックジェネレータ63は、受けた局側クロックをたとえば分周または逓倍した基準クロックを生成してA/Dコンバータ61等の各回路へ出力する。
【0163】
IP送信部62は、A/Dコンバータ61から受けたデジタル信号がペイロードに格納された放送IPパケットを生成し、OLT151へ送信する。
【0164】
ここで、上述のように各局側装置111には共通の局側クロックが供給されることから、各局側装置111は、より正確に、互いに同期した、かつ同じ伝送レートの放送波を出力することができる。
【0165】
図11は、本開示の第2の実施の形態に係る放送再送信システムにおける宅側装置の構成を示す図である。
【0166】
図11を参照して、宅側装置212は、IP受信部71と、送信部72と、再生部73とを備える。送信部72は、バッファ81と、D/Aコンバータ82とを含む。再生部73は、バッファ量監視部83と、バッファ量増減時間計測部84と、ローカルクロックずれ量算出部85と、ローカルクロック制御部86と、ローカルクロック生成部87とを含む。
【0167】
宅側装置212は、局側装置111から送信される放送IPパケットを受信して放送IPパケットの受信レートを測定し、測定した受信レートに基づいて自己のクロックを調整することにより基準クロックを再生する。そして、宅側装置212は、再生した基準クロックである再生クロックを用いて当該番組の情報を含む放送波を出力する。
【0168】
宅側装置212において、IP受信部71は、放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期した、放送IPパケットを局側装置111から受信する。
【0169】
送信部72は、再生部73によって再生された基準クロックである再生クロックを用いて上記番組の情報を含む放送波を出力する。
【0170】
より詳細には、IP受信部71は、D-ONU152から受信した放送IPパケットをバッファ81に蓄積する。
【0171】
D/Aコンバータ82は、再生部73から受けた再生クロックのタイミングに従い、バッファ81から放送IPパケットを取り出してアナログ信号に変換し、放送波としてアンテナ線へ出力する。
【0172】
再生部73は、局側装置111における放送IPパケットの伝送処理において与えられた情報を用いて、基準クロックを再生する。
【0173】
より詳細には、バッファ量監視部83は、バッファ81におけるバッファ量すなわちデータの蓄積量を監視し、監視結果をバッファ量増減時間計測部84へ出力する。
【0174】
バッファ量増減時間計測部84は、バッファ量監視部83の監視結果に基づいて、バッファ81における蓄積量の増減時間を計測する。たとえば、バッファ量増減時間計測部84は、バッファ量の基準値より大きい第1閾値および小さい第2閾値を保持しており、バッファ81のバッファ量が第1閾値を超えるまでの時間、または第2閾値未満となるまでの時間を計測し、計測結果をローカルクロックずれ量算出部85へ出力する。
【0175】
ローカルクロックずれ量算出部85は、バッファ量増減時間計測部84から受けた計測結果に基づいてローカルクロックのずれ量を算出し、算出結果をローカルクロック制御部86へ出力する。
【0176】
ローカルクロック制御部86は、ローカルクロックずれ量算出部85から受けた算出結果に応じてローカルクロック生成部87へ制御信号を出力することにより、ローカルクロック生成部87から出力されるローカルクロックの周波数を調整する。これにより、D/Aコンバータ82によるバッファ81からの放送IPパケットの取り出し速度が変更される。
【0177】
たとえば、ローカルクロック制御部86は、バッファ81のバッファ量が上記基準値に収束するように、所定の分解能でローカルクロックの周波数を変更する。たとえば、ローカルクロック制御部86は、上記算出結果の示すずれ量に最も近い調整量でローカルクロックの周波数を変更する動作を繰り返す。
【0178】
ローカルクロック生成部87は、ローカルクロック制御部86から受けた制御信号に応じて周波数を設定したローカルクロックを再生クロックとしてD/Aコンバータ82へ出力する。
【0179】
このように、放送再送信システム302では、放送再送信システム301と同様に、送信側のビットレートを基準に所定の分解能でクロック再生を行う構成により、たとえば、基準クロックに対する再生クロックの精度として、ハードウェア構成の観点から現実的な±0.3ppmを実現することができる。これにより、宅側装置212において高価な高精度の発振器が不要となる。
【0180】
その他の構成および動作は第1の実施の形態に係る放送再送信システムと同様であるため、ここでは詳細な説明を繰り返さない。
【0181】
なお、放送再送信システム301および302では、放送波を光信号に変換して伝送する構成であるとしたが、これに限定するものではない。放送再送信システム301および302は、放送波を含むIPパケットを伝送する構成であればよく、光ネットワークとは異なるネットワークを用いる構成であってもよい。
【0182】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0183】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
番組の情報を含む放送波を受信し、前記番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを生成して送信する局側装置と、
前記局側装置から送信される前記IPパケットを受信して前記IPパケットの受信レートを測定し、測定した前記受信レートに基づいて自己のクロックを調整することにより前記基準クロックを再生し、再生した前記基準クロックである再生クロックを用いて前記番組の情報を含む放送波を出力する宅側装置とを備え、
前記宅側装置は、使用中の前記チャネルを検出し、検出したいずれか1つの前記チャネルにおける前記受信レートを測定し、
前記宅側装置は、前記再生クロックを用いて、前記チャネルごとに、前記IPパケットに含まれる前記番組の情報を格納したフレームを生成し、生成した複数の前記チャネルの前記フレームを多重化して変調した変調信号を放送波として出力し、
前記局側装置は、前記番組の情報が分割されて格納された複数の番組パケット間にヌルパケットを挿入するか否かを選択することにより各前記チャネルにおける伝送レートを揃えるように調整し、
前記局側装置は、前記伝送処理において、前記IPパケットの送信先の宅側装置において前記基準クロックを再生する際に用いる情報を前記宅側装置に与える処理を行い、
前記局側装置は、ストリームの伝送レートが前記局側装置および前記宅側装置において同じ設定ビットレートになるようにヌルパケットまたはタイムスタンプを用いてIPパケットを生成する、放送再送信システム。
【0184】
[付記2]
番組の情報を含む放送波を受信する受信部と、
前記受信部によって受信された前記放送波に含まれる前記番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを生成して送信する伝送処理を行う送信部とを備え、
前記送信部は、前記伝送処理において、前記IPパケットの送信先の宅側装置において前記基準クロックを認識可能な前記IPパケットを生成し、
前記送信部は、前記番組の情報が分割されて格納された複数の番組パケット間にヌルパケットを挿入するか否かを選択することにより各前記チャネルにおける伝送レートを揃えるように調整し、
前記送信部は、前記伝送処理において、前記IPパケットの送信先の宅側装置において前記基準クロックを再生する際に用いる情報を前記宅側装置に与える処理を行い、
前記送信部は、ストリームの伝送レートが前記局側装置および前記宅側装置において同じ設定ビットレートになるようにヌルパケットまたはタイムスタンプを用いてIPパケットを生成する、局側装置。
【0185】
[付記3]
放送波に含まれる番組の情報を格納した、基準クロックに同期したIPパケットを局側装置から受信する受信部と、
前記受信部によって受信された、前記局側装置における前記IPパケットの伝送処理において与えられた情報を用いて、前記基準クロックを再生する再生部と、
前記再生部によって再生された前記基準クロックである再生クロックを用いて前記番組の情報を含む放送波を出力する送信部とを備え、
前記再生部は、使用中の前記チャネルを検出し、検出したいずれか1つの前記チャネルにおける前記受信レートを測定し、
前記送信部は、前記再生クロックを用いて、前記チャネルごとに、前記IPパケットに含まれる前記番組の情報を格納したフレームを生成し、生成した複数の前記チャネルの前記フレームを多重化して変調した変調信号を放送波として出力する、宅側装置。
【符号の説明】
【0186】
1 チューナ
2 PIDフィルタ
3 多重化部
4 IP送信部
12 送信部
21 パケットフィルタ
22 バッファ
23 放送TS多重部
24 OFDM変調部
25 混合回路
31 IP受信部
32 送信部
33 再生部
51 受信部
52 送信部
61 A/Dコンバータ
62 IP送信部
63 クロックジェネレータ
101,111 局側装置
151 OLT
152 D-ONU
153 VDSL装置
161 放送波IP伝送装置
202,212 宅側装置
301,302 放送再送信システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11