(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】身体温冷装置
(51)【国際特許分類】
A61F 7/00 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
A61F7/00 310J
(21)【出願番号】P 2020034212
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 龍之介
(72)【発明者】
【氏名】阿部 祐也
(72)【発明者】
【氏名】段 彦昭
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 充央
(72)【発明者】
【氏名】松本 翔吾
(72)【発明者】
【氏名】阿武 広希
【審査官】今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-082427(JP,A)
【文献】特表2015-531293(JP,A)
【文献】米国特許第02562121(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/00-7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者の右側頸部及び左側頸部の各頸動脈に接するように設けられた一対の第1プレートと、
前記一対の第1プレートの各々を冷却または加熱する一対の第1ペルティエ素子と、
前記利用者の右側頸部と後頚部と左側頸部とにわたるU字状に形成され、前記一対の第1プレートが前記利用者の各頸動脈三角の領域に接するように配置された首掛け部材と、を備
え、
前記一対の第1プレートは、前記頸動脈に接する接触領域が、前記頚部の上下方向で対向する上辺及び下辺と、前記頚部の前後方向で対向する前辺及び後辺と、を有し、
前記接触領域は、前記頸動脈に向かって盛り上がる曲面状に形成され、前記上辺及び前記下辺が、当該接触領域の中央部よりも、前記頚部の表面から離されるように形成されている、身体温冷装置。
【請求項2】
前記上辺と前記下辺との幅
は、前記後辺側から前記前辺側に向かって広がっている、
請求項1に記載の身体温冷装置。
【請求項3】
前記一対の第1プレートの前記接触領域は、前記前辺の下側よりも前記前辺の上側が前記利用者の前方側に位置するように前記前辺が傾斜すると共に、前記後辺の下側よりも前記後辺の上側が前記前方側に位置するように前記後辺が傾斜している、
請求項2に記載の身体温冷装置。
【請求項4】
前記首掛け部材は、両端部に前記一対の第1プレートの各々が設けられたU字状の上段部と、前記上段部の下方に配置されたU字状の下段部と、を有し、前記上段部の一端部と前記下段部の一端部とが連結されると共に前記上段部の他端部と前記下段部の他端部とが連結されている、請求項1ないし
3のいずれか1項に記載の身体温冷装置。
【請求項5】
前記首掛け部材は、
前記上段部と前記下段部とを連結して前記利用者の前方側に位置する一対の前端部を有し、
前記一対の第1プレートの各々は、前記一対の前端部に設けられ、
前記前端部における
前記上段部の上縁と下縁との幅が、前記利用者の前方に向かって広がっている、
請求項
4に記載の身体温冷装置。
【請求項6】
前記首掛け部材の前記前端部は、当該前端部の前縁における前記下縁側よりも前記上縁側が前記前方側に位置するように、前記前縁が傾斜している、
請求項5に記載の身体温冷装置。
【請求項7】
前記利用者の後頸部に接するように設けられた第2プレートと、
前記第2プレートを冷却または加熱する第2ペルティエ素子と、を更に備え、
前記第2プレートは、前記上段部に設けられている、
請求項
4ないし6のいずれか1項に記載の身体温冷装置。
【請求項8】
前記第2ペルティエ素子によって吸熱される熱量は、前記第1ペルティエ素子によって吸熱される熱量よりも小さい、
請求項
7に記載の身体温冷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体温冷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ペルティエ素子を用いて利用者の頸動脈を流れる血液を冷却または加熱することにより、利用者の体温を調節する身体温冷装置が知られている。この種の身体温冷装置としては、ペルティエ素子を有する温調部と、熱交換部と、温調部と熱交換部との間でチューブ部材を介して水を循環させるポンプ部と、を備えた装置がある(特許文献1、2)。温調部は、利用者の頸部まわりにわたって頸部に接するU字状のプレートと、プレートを冷却または加熱するペルティエ素子と、を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-83498号公報
【文献】特開2015-100489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した身体温冷装置では、例えば、利用者の頸部を冷却する際、ペルティエ素子によって冷却されるプレートで頸動脈の近傍を覆えるようにしていたが、人体の仕組みに合わせた形状となっていなかったため、適切に冷却することができていなかった。
【0005】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、利用者の頸部を適切に冷却または加熱することができる身体温冷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の開示する身体温冷装置の一態様は、利用者の右側頸部及び左側頸部の各頸動脈に接するように設けられた一対の第1プレートと、一対の第1プレートの各々を冷却または加熱する一対の第1ペルティエ素子と、一対の第1ペルティエ素子に熱媒体を送るチューブ部材と、利用者の右側頸部と後頚部と左側頸部とにわたるU字状に形成され、一対の第1プレートが利用者の各頸動脈三角の領域に接するように配置された首掛け部材と、を備える。一対の第1プレートは、頸動脈に接する接触領域が、頚部の上下方向で対向する上辺及び下辺と、頚部の前後方向で対向する前辺及び後辺と、を有する。接触領域は、頸動脈に向かって盛り上がる曲面状に形成され、上辺及び下辺が、接触領域の中央部よりも、頚部の表面から離されるように形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する身体温冷装置の一態様によれば、利用者の頸部を適切に冷却または加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施例の身体温冷装置の首掛け部材を利用者が装着した状態を示す正面図である。
【
図2】
図2は、実施例の身体温冷装置の首掛け部材を利用者が装着した状態を示す側面図である。
【
図3】
図3は、実施例の身体温冷装置の首掛け部材を正面側から示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施例の身体温冷装置の首掛け部材を背面側から示す斜視図である。
【
図5】
図5は、実施例の身体温冷装置の首掛け部材を示す正面図である。
【
図6】
図6は、実施例の身体温冷装置の首掛け部材を示す背面図である。
【
図7】
図7は、実施例の身体温冷装置の首掛け部材を示す側面図である。
【
図8】
図8は、実施例の身体温冷装置の首掛け部材を示す下面図である。
【
図9】
図9は、実施例における首掛け部材及び第1プレートを示す拡大図である。
【
図10】
図10は、実施例における首掛け部材を利用者が装着したときの右側頸部及び左側頸部と第1プレートとの位置関係を説明するための側面図である。
【
図11】
図11は、実施例における頸動脈三角を説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、実施例の身体温冷装置の首掛け部材が有する流路を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、実施例における首掛け部材が有する流路を示す模式図である。
【
図14】
図14は、実施例の身体温冷装置全体を説明するための模式図である。
【
図15】
図15は、変形例における首掛け部材の調節機構を説明するための斜視図である。
【
図16】
図16は、変形例における第2プレートの変形例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本願の開示する身体温冷装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する身体温冷装置が限定されるものではない。
【実施例】
【0010】
図1は、実施例の身体温冷装置の首掛け部材を利用者が装着した状態を示す正面図である。
図2は、実施例の身体温冷装置の首掛け部材を利用者が装着した状態を示す側面図である。
【0011】
図1及び
図2に示すように、実施例の身体温冷装置1は、利用者Uの右側頸部RN及び左側頸部LNから後頸部PNにわたって装着されることで、利用者Uの各頸動脈Aを流れる血液及び後頸部PNを加熱または冷却する。以下、本実施例では、身体温冷装置1を用いて冷却する場合について説明するが、身体温冷装置1を用いて加熱するようにしてもよい。
【0012】
本実施例では、利用者Uの前方を身体温冷装置1(首掛け部材16)の正面側とし、利用者Uの後方を身体温冷装置1(首掛け部材16)の背面側とする。図面では、利用者Uが直立した状態で利用者Uに装着される身体温冷装置1の首掛け部材16について、利用者Uの左右方向をX方向とし、利用者Uの前後方向をY方向とし、利用者Uの高さ方向をZ方向として示す。
【0013】
(身体温冷装置の構成)
図3は、実施例の身体温冷装置1の首掛け部材16を正面側から示す斜視図である。
図4は、実施例の身体温冷装置1の首掛け部材16を背面側から示す斜視図である。
【0014】
実施例の身体温冷装置1は、利用者Uの右側頸部RN及び左側頸部LNの各頸動脈Aに接するように設けられた一対の第1プレート11と、一対の第1プレート11の各々を冷却または加熱する一対の第1ペルティエ素子13と、利用者Uの後頸部PNに接するように設けられた第2プレート12と、第2プレート12を冷却または加熱する第2ペルティエ素子14と、を備える。
【0015】
また、身体温冷装置1は、一対の第1プレート11及び第2プレート12が設けられると共に、一対の第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14が設けられた首掛け部材16を備える。さらに、身体温冷装置1は、後述する他の構成として、熱交換部17、電源部18及び操作部19を備える。
【0016】
図5は、実施例の身体温冷装置1の首掛け部材16を示す正面図である。
図6は、実施例の身体温冷装置1の首掛け部材16を示す背面図である。
図7は、実施例の身体温冷装置1の首掛け部材16を示す側面図である。
図8は、実施例の身体温冷装置1の首掛け部材16を示す下面図である。
【0017】
一対の第1プレート11及び第2プレート12は、例えば、アルミニウム等の金属材料によって形成されている。第1プレート11は、
図3及び
図4、
図6及び
図8に示すように、首掛け部材16の正面側に延びる両端部の各々の内側に設けられている。第2プレート12は、
図3及び
図5、
図7及び
図8に示すように、首掛け部材16の背面側で湾曲した中央部29の内側に設けられている。
【0018】
一対の第1ペルティエ素子13は、
図3に示すように、一対の第1プレート11に接触して設けられており、首掛け部材16の両端部(後述する上段部16Aの前端部28)の内部に配置されている。第2ペルティエ素子14は、第2プレート12に接触して設けられており、首掛け部材16の両端部に連続する中央部29の内部に配置されている。第1プレート11および第2プレート12は、第1ペルティエ素子13あるいは第2ペルティエ素子14と熱的に接続されている。
【0019】
このように、一対の第1プレート11及び第2プレート12は、首掛け部材16における3箇所に分散して配置されることにより、頸動脈Aを流れる血液を冷却することで利用者Uが冷感を効果的に得られる右側頸部RN及び左側頸部LNと、利用者Uが冷感を得やすい後頸部PNとの3箇所に絞って集中的に冷却することができる。
【0020】
このため、実施例の身体温冷装置1によれば、例えば、右側頸部RNと後頸部PNと左側頸部LNとにわたって連続するU字状のプレートを用いて、頸部N(以下、右側頸部RN及び左側頸部LN、後頸部PNを含めて頸部Nと称する。)まわりにわたって冷却する構造と比べて伝熱する面積を小さくできるため、利用者Uの頸部Nを効率的に冷却することができる。その結果、身体温冷装置1の消費電力が抑えられる。バッテリーで駆動する場合には、連続使用時間を延ばすことが可能になる。加えて、第1プレート11及び第2プレート12が、首掛け部材16における3箇所に分散されることにより、上述のようなU字状のプレートのように頸部Nの動きが拘束されることや、利用者Uの圧迫感が抑えられるので、利用者Uの開放感、頸部Nの動きの自由度が高められ、快適な装着感が得られる。
【0021】
後頸部PNは頸動脈Aよりも血液の流量が少ないことから、第2ペルティエ素子14によって吸熱される熱量は、第1ペルティエ素子13によって吸熱される熱量よりも小さい。よって、第2ペルティエ素子14には、第1ペルティエ素子13よりも小さいペルティエ素子が用いられている。これにより、第2ペルティエ素子14によって後頸部PNを冷却する作用は、第1ペルティエ素子13によって頸動脈Aを流れる血液を冷却する作用よりも小さくされている。後頸部PNを冷却する第2ペルティエ素子14の温度が低下し過ぎることを避けて、利用者Uの快適感が高められる。
【0022】
(第1プレートの形状)
図9は、実施例における首掛け部材16及び第1プレート11を示す拡大図である。
図9に示すように、一対の第1プレート11は、頸動脈Aに接する接触領域21を有しており、接触領域21が、対向する上辺21a及び下辺21bと、対向する前辺21c及び後辺21dと、を有する。上辺21aと下辺21bとの幅W1は、後辺21d側から前辺21c側に向かって広がっている。幅W1は、首掛け部材16の後述する上段部16Aが延びる方向に直交する方向の幅を指す。言い換えると、上辺21aが首掛け部材16の前方に向かって上がり勾配を有し、下辺21bが首掛け部材16の前方に向かって下がり勾配を有するように形成されており、前辺21c側の幅W1は、後辺21d側の幅W1よりも大きい。
【0023】
また、一対の第1プレート11の接触領域21は、前辺21cの下側よりも前辺21cの上側が利用者Uの前方側に位置するように前辺21cが傾斜すると共に、後辺21dの下側よりも後辺21dの上側が利用者Uの前方側に位置するように後辺21dが傾斜している。言い換えると、前辺21cは、首掛け部材16の両端部(後述する上段部16Aの前端部28)の先端側に向かって、上がり勾配を有するように形成されている。なお、本実施例における接触領域21の上辺21a及び下辺21b、前辺21c及び後辺21dは、接触領域21の外周縁に沿う各辺であり、この外周縁の曲線部分を含めて指している。
【0024】
このように第1プレート11の接触領域21の面積が、利用者Uの前方側に向かって大きくなるように形成されることで、利用者Uの頸動脈Aが位置する後述の頸動脈三角T(
図10)に対向するように延ばされると共に、頸動脈三角Tに対して接触領域21が占める大きさを適正に確保できる。
【0025】
また、一対の第1プレート11の接触領域21は、頸動脈Aに向かって盛り上がる曲面状に形成されている。例えば、接触領域21の中央は、上辺21a及び下辺21b、前辺21c及び後辺21dから、頸動脈A側に膨らんでいる。これにより、利用者Uの頸部Nの大きさのばらつきにかかわらずに、接触領域21が頸動脈Aと適正に接することが可能になり、第1プレート11と頸動脈Aとの接触状態の安定性が確保される。なお、曲面状の接触領域21は球面で形成されてもよいし、緩やかな複数の曲面の組み合わせで形成されてもよい。
【0026】
第2プレート12は、
図5及び
図6に示すように、楕円状の接触領域22を有しており、利用者Uの後頸部PNの脊椎(図示せず)の両側にわたって接するように配置されている。接触領域22は、Z方向である上下方向における中央が後頸部PN側に向かって膨らんでおり、上下方向における中央が、後頸部PNまわりに沿って接するように形成されている。
【0027】
(首掛け部材の形状)
身体温冷装置1の首掛け部材16は、
図2、
図3及び
図4に示すように、U字状の上段部16Aと、上段部16Aの下方に配置されたU字状の下段部16Bと、を有する。
図3、
図5及び
図8に示すように、上段部16Aには、一対の第1プレート11の各々が両端部に設けられると共に、第2プレート12が両端部に連続する中央部に設けられている。首掛け部材16は、
図3、
図4及び
図7に示すように、上段部16Aが延びる方向における上段部16Aの一端部と、下段部16Bが延びる方向における下段部16Bの一端部とが連結されると共に、上段部16Aの他端部と下段部16Bの他端部とが連結されている。
【0028】
図4、
図5、
図6及び
図7に示すように、下段部16Bは、上段部16Aと比べて細いロッド状に形成されており、利用者Uの頸部Nの付け根、すなわち首元に沿うように湾曲して形成されている。
【0029】
図2及び
図7に示すように、上段部16Aと下段部16Bは、首掛け部材16のZ方向である上下方向に空隙25をあけて配置されている。空隙25は、右側頸部RN及び左側頸部LNから後頸部PNまで連続して形成されている。言い換えると、首掛け部材16は、上段部16Aと下段部16Bとに分割されることにより、上段部16Aと下段部16Bとの間に空隙25を確保することが可能になり、首掛け部材16による頸部Nの拘束が抑えられるので、首掛け部材16による圧迫感が抑えられると共に頸部Nの動きの自由度を高められ、快適な装着感が得られる。
【0030】
また、首掛け部材16において、利用者Uの右側頸部RN及び左側頸部LNにおける上下方向の空隙25Aは、後頸部PNにおける上下方向の空隙25Bよりも大きい。後頸部PNに接する下段部16Bの後方側が、上段部16Aの後方側である上方に向かって湾曲されることで、後頸部PNにおける上下方向の空隙25Bが小さくなっている。このように右側頸部RN及び左側頸部LNにおける上下方向の空隙25Aが大きく確保されることにより、首掛け部材16による右側頸部RN及び左側頸部LNの圧迫感が抑えられ、首掛け部材16の装着状態における頸部Nの開放感が高められ、快適な装着感が得られる。
【0031】
また、
図8に示すように、X-Y平面(以下、水平面とする)上で、利用者Uの頸部Nに対する上段部16Aの外側に下段部16Bが配置されており、上段部16Aの外周側と、下段部16Bの内周側が重なるように配置されることで、首掛け部材16全体はU字状に形成されている。したがって、上段部16Aは、下段部16Bの位置よりも利用者Uの頸部Nに近づけて配置されている。
【0032】
首掛け部材16は、例えば、ポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等の樹脂材料によって形成されている。下段部16Bは、弾性材料の一例としてのポリプロピレン(PP)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)等によってロッド状に形成されている。下段部16Bは、上段部16Aに対して弾性変形する、つまり、柔軟に撓むことにより、下段部16Bと上段部16Aとは相対的に移動可能に接続されている。したがって、上段部16Aは、利用者Uの頸部Nの動きに追従するように柔軟に移動できる。言い換えると、下段部16Bは、利用者Uの肩等の動きに応じて、上段部16Aに対して弾性変形するように形成されている。加えて、上述のように、上段部16Aと下段部16Bとの間に空隙25(25A、25B)が確保されることにより、利用者Uの頸部Nの動きに追従する上段部16A及び下段部16Bの各移動の自由度が高められ、快適な装着感が得られる。
【0033】
したがって、利用者Uの頸部Nや肩等の動きに伴って、上段部16Aに対して頸部Nが押し付けられた場合には、上段部16Aが下段部16B側にスムーズに移動することで、上段部16Aによって利用者Uの頸部Nが圧迫されることが抑えられる。
【0034】
(位置決め部)
図1及び
図2、
図7及び
図9に示すように、首掛け部材16は、一対の第1プレート11が右側頸部RNと左側頸部LNの各頸動脈Aに接する位置に首掛け部材16を位置決めするように利用者Uの身体に載せられる位置決め部27を有する。位置決め部27は、首掛け部材16の下段部16Bにおける前方側の湾曲部分によって形成されており、下段部16Bに一対の位置決め部27が一体的に形成されている。
【0035】
各位置決め部27は、
図1及び
図2、
図9に示すように、利用者Uの鎖骨Bに接する位置に形成されている。したがって、首掛け部材16の下段部16Bの各位置決め部27を鎖骨Bに載せるように首掛け部材16を装着することにより、上段部16Aに設けられた各第1プレート11が、利用者Uの頸部Nの上下方向に対して容易に位置決めされると共に、頸部Nの左右方向に対して容易に位置決めされる。また、一対の位置決め部27は、鎖骨Bを基準として各第1プレート11を位置決めすることで、第1プレート11を容易に位置決めできると共に、第1プレート11の位置決め状態の安定性を高められる。
【0036】
また、位置決め部27を有する下段部16Bは、上述のように弾性材料によって形成されているので、首掛け部材16の装着状態で鎖骨Bや肩等が動いた場合であっても、下段部16Bが撓むことで第1プレート11の位置の変動が抑えられるので、位置決め部27によって第1プレート11が位置決めされた状態の安定性が高められる。したがって、第1プレート11が右側頸部RNあるいは左側頸部LNと接触する面積を維持することができるため、頸動脈Aを効率的に冷却できる。
【0037】
(首掛け部材の前端部の形状)
図9に示すように、首掛け部材16の上段部16Aの両端部である一対の前端部28は、前端部28における上縁28aと下縁28bとの幅W2が、利用者Uの前方に向かって広がっている。幅W2は、首掛け部材16の上段部16Aが延びる方向に直交する方向の幅を指す。また、前端部28の上縁28aは、利用者Uの前方に向かって下り勾配を有するように形成されている。上縁28aと同様に、前端部28の下縁28bは、利用者Uの前方に向かって下り勾配を有するように形成されている。また、
図2、
図7及び
図9に示すように、前端部28において、上段部16Aの下縁28bと上縁28aは、前側の幅が広く後ろ側の幅が狭くなるように形成されている。
【0038】
首掛け部材16の前端部28は、前端部28の前縁28cにおける下縁28b側よりも上縁28a側が利用者Uの前方側に位置するように、前縁28cが傾斜している。なお、実施例における一対の前端部28は、
図5及び
図8に示すように、上段部16Aが延びる方向の先端同士が近づくように湾曲されている。このため、上述した前縁28cの傾斜形状を言い換えると、前端部28の前縁28cは、前端部28の前縁28cにおける下縁28b側よりも上縁28a側が、上段部16Aが延びる方向の先端側に位置するように傾斜している。
【0039】
このように前端部28のZ方向の幅が、上段部16Aの後ろ側よりも大きく形成されることにより、利用者Uの頸動脈Aが位置する後述の頸動脈三角T(
図10)に対向するように第1プレート11を配置できると共に、頸動脈三角Tに対して第1プレート11の大きさを適正に確保することができる。このため、前端部28に配置される第1プレート11の接触領域21の大きさを拡大することが可能になり、頸動脈三角Tに対して占める第1プレート11の接触領域21の大きさを適正に確保されている。加えて、上述のような形状に前端部28が形成されることで、利用者Uの前頸部AN(
図2)の喉元の周囲に空間が確保されており、利用者Uの圧迫感が抑えられ、首掛け部材16の装着状態における頸部Nの開放感が高められ、快適な装着感が得られる。
【0040】
(第1プレートと頸部との位置関係)
図10は、実施例における首掛け部材16を利用者Uが装着したときの右側頸部RN及び左側頸部LNと第1プレート11との位置関係を説明するための側面図である。
図10において、頸動脈三角Tの領域を斜線で示す。
図10に示すように、利用者Uが首掛け部材16を装着したとき、一対の第1プレート11は、利用者Uの各頸動脈三角Tの領域に接するように、上段部16Aの前端部28に配置されている。つまり、第1プレート11は、頸動脈三角Tの位置を基準として配置されており、第1プレート11の接触領域21と、頸動脈三角Tの領域とが重なる範囲が適正に確保されている。これにより、第1プレート11の接触領域21は、頸動脈三角Tに位置する頸動脈Aと容易かつスムーズに接することが可能になり、頸動脈Aを流れる血液を適正に冷却することができる。
【0041】
(頸動脈三角)
図11は、実施例における頸動脈三角を説明するための模式図である。
図11に示すように、頸動脈三角Tは、頸動脈Aが位置する領域であり、右側頸部RNに位置する右頸動脈三角と、左側頸部LNに位置する左頸動脈三角と、を含む。詳細には、頸動脈三角Tは、甲状腺部101、喉頭部102、舌骨下部103、舌骨部104が位置する前縁T1と、顎下三角105が位置する上縁T2と、胸鎖乳突筋部106が位置する後縁T3と、で囲まれた三角形の領域を指す。
【0042】
このような頸動脈三角Tに対応するように、首掛け部材16の前端部28の形状、第1プレート11の接触領域21の形状が設定されることで、第1プレート11によって頸動脈Aを流れる血液を冷却できる。なお、第1プレート11の接触領域21は、頸部Nまわりに対する大きさが、平均的な頸動脈三角Tの領域の大きさよりも大きく形成されており、利用者Uの頸部Nの大きさのばらつきにかかわらずに頸動脈三角Tの領域に適正に接するように設定されている。
【0043】
(首掛け部材の流路)
図12は、実施例の身体温冷装置1の首掛け部材16が有する流路を示す斜視図である。
図13は、実施例における首掛け部材16が有する流路を示す模式図である。
【0044】
図12に示すように、首掛け部材16は、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14に熱媒体としての冷却水を送る流路32を形成するチューブ部材31を有する。チューブ部材31は、首掛け部材16の上段部16Aと下段部16Bの内部に設けられており、上段部16A及び下段部16Bがそれぞれ延びる方向に沿って配置されている。なお、熱媒体は、冷却水に限定されず、冷却オイル等の他の温調液が用いられてもよい。
【0045】
図12及び
図13に示すように、チューブ部材31の流路32は、第2ペルティエ素子14から一対の第1ペルティエ素子13の一方の第1ペルティエ素子13まで延びる第1流路32Aと、一方の第1ペルティエ素子13から他方の第1ペルティエ素子13まで延びる第2流路32Bと、他方の第1ペルティエ素子13から第2ペルティエ素子14まで延びる第3流路32Cと、を含む。
【0046】
首掛け部材16の内部において、首掛け部材16の後方側の外部から供給された冷却水は、第1流路32A、第2流路32B、第3流路32Cの順に流れて、首掛け部材16の後方側から外部へ送られる。流路32は、
図13に示すように、一対の第1ペルティエ素子13および第2ペルティエ素子14に冷却水を供給するように引き回されており、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14の各々と冷却水が熱交換を行う。
【0047】
したがって、
図12に示すように、上段部16Aの内部には、上段部16Aの後方から上段部16Aの一方の前端部28に向かって冷却水が流れる第1流路32Aと、上段部16Aの他方の前端部28から上段部16Aの後方に向かって冷却水が流れる第3流路32Cが設けられている。下段部16Bの内部には、下段部16Bの一端側から他端側に向かって冷却水が流れる第2流路32Bが設けられている。
【0048】
つまり、上段部16Aの後方から流路32に入った冷却水は、第1流路32Aに沿って上段部16Aを流れ、第2流路32Bに沿って下段部16Bを流れ、第3流路32Cに沿って上段部16Aを流れる、いわゆる一筆書きのように形成された流路32に沿って首掛け部材16の内部を流れて、上段部16Aの後方から首掛け部材16の外部へ出る。したがって、上段部16Aと下段部16Bのそれぞれを流路として利用することができる。
【0049】
このため、首掛け部材16における冷却水の流路32の経路を簡素化し、首掛け部材16をコンパクトに形成できるので、首掛け部材16を小型、軽量化できる。また、首掛け部材16の内部には、第1流路32A、第2流路32B及び第3流路32Cが互いに離れて配置されることにより、各流路32A、32B、32C同士において熱交換することが避けられるので、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14の冷却能力を高められる。また、首掛け部材16においては、上段部16Aと下段部16Bとが空隙25をあけて配置されるので、第1流路32Aと第2流路32Bとの間、第2流路32Bと第3流路32Cとの間での熱交換を遮断できる。これにより、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14の冷却能力を更に高められる。
【0050】
また、実施例では、上述したように第2ペルティエ素子14の吸熱量が、第1ペルティエ素子13の吸熱量よりも小さい。このため、流路32では、吸熱量が小さい第2ペルティエ素子14を冷却水が最初に通過することで、冷却水の温度が大きく上昇することが抑えられ、第2ペルティエ素子14を通過後の温度が低い冷却水によって、第1ペルティエ素子13を適正に冷却できる。
【0051】
(チューブ部材の引き出し位置)
図2、
図4、
図7及び
図12に示すように、チューブ部材31は、第2ペルティエ素子14が配置された位置における首掛け部材16の中央部29の上側から、首掛け部材16の外側へ引き出されている。詳細には、チューブ部材31は、首掛け部材16の上段部16Aにおける、第2ペルティエ素子14が配置された中央部29の背面から、水平方向に引き出されている。チューブ部材31が首掛け部材16から引き出される上段部16Aの中央部29は、後頸部PNにおける上方に位置しており、チューブ部材32の引き出し位置が、一般的な衣服の襟よりも上方になるように配置されている。また、チューブ部材31が上段部16Aから水平に引き出されていることにより、利用者Uの衣服の襟とチューブ部材31の接触を避けると共に冷却水の流動性を妨げることが抑えられる。
【0052】
これにより、利用者Uの後頸部PNから引き出されるチューブ部材31を、利用者Uの衣服の襟の上方から、襟に引っ掛からないように利用者Uの背中側に容易に引き回すことが可能になる。このため、衣服を着たままで利用者Uが首掛け部材16を容易に装着できるので、首掛け部材16の着脱性が高められる。
【0053】
また、首掛け部材16には、上段部16Aにおける中央部29の背面には、
図4及び
図6に示すように、流路32における冷却水の流入口33a及び流出口33bが並んで設けられている。チューブ部材31は、
図4、
図8及び
図12に示すように、流入口33aに接続される流入側チューブ部材31Aと、流出口33bに接続される流出側チューブ部材31Bと、を含んでいる。
【0054】
なお、チューブ部材31が首掛け部材16から引き出される位置は、上段部16Aにおける中央部29の背面側に限定されず、利用者Uの衣服の襟との接触を避けられる位置であれば、上段部16Aの任意の位置から引き出されてもよい。また、上段部16Aからチューブ部材31が引き出される方向は、水平方向に限定されず、例えば、上段部16Aにおける中央部29の背面から斜め上方に引き出されてもよい。本実施例のように利用者Uの背中側にチューブ部材31を引き回す場合には、実施例のように上段部16Aにおける中央部29の背面からチューブ部材31が引き出される構造が好ましい。
【0055】
(身体温冷装置の他の構成)
図14は、実施例の身体温冷装置1全体を説明するための模式図である。
図14に示すように、身体温冷装置1は、首掛け部材16とチューブ部材31(31A、31B)を介して接続される熱交換部17と、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14、熱交換部17等に電力を供給する電源部18と、熱交換部17を操作するための操作部19と、を備える。
【0056】
熱交換部17は、いわゆる空冷型ラジエータが用いられており、図示しないが、冷却液を送るポンプと、冷却液を冷却するための送風ファンと、空気の吸込み口及び吹き出し口と、を有する。電源部18は、例えば、充電型バッテリであり、接続コード18aを介して熱交換部17及び操作部19と接続される。また、電源部18は、一対の第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14と図示しない配線によって電気的に接続されている。操作部19は、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14の温度を調節するためのコントローラであり、図示しないが、ダイヤルつまみを含む複数の操作手段を有する。操作部19を操作することにより、例えば、熱交換部17のポンプの流量、送風ファンの回転数、第1ペルティエ素子13及び第2ペルティエ素子14に供給する電圧等が調節される。
【0057】
(実施例の効果)
上述したように実施例の身体温冷装置1は、利用者Uの右側頸部RN及び左側頸部LNの各頸動脈Aに接するように設けられた一対の第1プレート11と、一対の第1プレート11の各々を冷却または加熱する一対の第1ペルティエ素子13と、一対の第1プレート11が利用者Uの各頸動脈三角Tの領域に接するように配置された首掛け部材16と、を備える。これにより、第1プレート11の接触領域21は、頸動脈三角Tに位置する頸動脈Aと容易かつスムーズに接することが可能になり、頸動脈Aを流れる血液を適正に冷却することができる。したがって、身体温冷装置1は、利用者Uの頸部Nを適切に冷却することができる。
【0058】
また、実施例の身体温冷装置1の一対の第1プレート11は、頸動脈Aに接する接触領域21が、対向する上辺21a及び下辺21bと、対向する前辺21c及び後辺21dと、を有しており、上辺21aと下辺21bとの幅W1が、後辺21d側から前辺21c側に向かって広がっている。これにより、第1プレート11の接触領域21が、利用者Uの頸動脈Aが位置する頸動脈三角Tに対向するように延ばされると共に、頸動脈三角Tに対して接触領域21が占める大きさを適切に確保できる。
【0059】
また、実施例における一対の第1プレート11の接触領域21は、前辺21cの下側よりも前辺21cの上側が利用者Uの前方側に位置するように前辺21cが傾斜すると共に、後辺21dの下側よりも後辺21dの上側が利用者Uの前方側に位置するように後辺21dが傾斜している。これにより、第1プレート11の接触領域21が、利用者Uの頸動脈Aが位置する後述の頸動脈三角Tに対向するように延ばされると共に、頸動脈三角Tに対して接触領域21が占める大きさを適切に確保できる。
【0060】
また、実施例における一対の第1プレート11の接触領域21は、頸動脈Aに向かって盛り上がる球面状に形成されている。これにより、利用者Uの頸部Nの大きさのばらつきにかかわらずに、接触領域21が頸動脈Aと適切に接することが可能になり、第1プレート11と頸動脈Aとの接触状態の安定性を確保できる。
【0061】
また、実施例の身体温冷装置1の首掛け部材16は、一対の第1プレート11の各々が設けられた一対の前端部28を有しており、前端部28における上縁28aと下縁28bとの幅W2が、利用者Uの前方に向かって広がっている。これにより、利用者Uの頸動脈三角Tに対向するように前端部28が延ばされると共に、頸動脈三角Tに対して前端部28が占める大きさを適切に確保できる。このため、前端部28に配置される第1プレート11の接触領域21の大きさを拡大することが可能になり、頸動脈三角Tに対して占める第1プレート11の接触領域21の大きさを適切に確保できる。
【0062】
また、実施例における首掛け部材16の前端部28は、前端部28の前縁28cにおける下縁28b側よりも上縁28a側が利用者Uの前方側に位置するように、前縁28cが傾斜している。これにより、利用者Uの頸動脈三角Tに対向するように前端部28が延ばされると共に、頸動脈三角Tに対して前端部28が占める大きさが適切に確保されるので、頸動脈三角Tに対して占める第1プレート11の接触領域21の大きさを適切に確保できる。加えて、前端部28が上述の形状に形成されることにより、利用者Uの前頸部ANの喉元の周囲に空間が確保されており、利用者Uの圧迫感が抑えられ、首掛け部材16の装着状態における頸部Nの開放感が高められ、快適な装着感が得られる。
【0063】
また、実施例の身体温冷装置1の首掛け部材16は、一対の第1プレート11の各々が両端部である各前端部28に設けられたU字状の上段部16Aと、上段部16Aの下方に配置されたU字状の下段部16Bと、を有しており、上段部16Aの一端部と下段部16Bの一端部とが連結されると共に上段部16Aの他端部と下段部16Bの他端部とが連結されている。このように首掛け部材16は、上段部16Aと下段部16Bとに分割されることにより、上段部16Aと下段部16Bとの間に空隙25を確保することが可能となる。また、第1ペルティエ素子13よりも小型の第2ペルティエ素子14を使用した場合には、空隙25をより大きく確保することが可能となる。このため、首掛け部材16による圧迫感が抑えられると共に頸部Nの動きの自由度を高められ、快適な装着感が得られる。
【0064】
また、実施例の身体温冷装置1は、利用者Uの後頸部PNに接するように設けられた第2プレート12と、第2プレート12を冷却または加熱する第2ペルティエ素子14と、を備えており、第2プレート12が上段部16Aに設けられている。このように一対の第1プレート11及び第2プレート12が首掛け部材16における3箇所に分散して配置されることで、利用者Uが冷感を効果的に得られる右側頸部RN及び左側頸部LNと、利用者Uが冷感を得やすい後頸部PNとの3箇所に絞って集中的に冷却することができる。
【0065】
このため、実施例によれば、頸部Nまわりにわたって頸部Nを冷却するU字状のプレートを用いる構造と比べて、頸部Nを効率的に冷却することができる。その結果、身体温冷装置1の消費電力が抑えられ、連続使用時間を延ばすことが可能になる。加えて、第1プレート11及び第2プレート12が、首掛け部材16における3箇所に分散されることにより、利用者Uの圧迫感が抑えられるので、利用者Uの開放感、頸部Nの動きの自由度が高められ、快適な装着感が得られる。
【0066】
また、実施例の身体温冷装置1において、第2ペルティエ素子14によって吸熱される熱量は、第1ペルティエ素子13によって吸熱される熱量よりも小さい。これにより、第2ペルティエ素子14によって後頸部PNを冷却する作用を、第1ペルティエ素子13によって頸動脈Aを流れる血液を冷却する作用よりも小さくすることで、後頸部PNを冷やし過ぎることを避けて、利用者Uの快適感が高められる。さらに、第2ペルティエ素子14の吸熱量を小さくすることで、第1ペルティエ素子13よりも小型の素子を使用できるため、チューブ部材31を接続する流入口33a及び流出口33bを配置する空間を確保することが容易となる。
【0067】
(変形例)
以下、変形例について図面を参照して説明する。変形例において、実施例と同一の構成部材及び構造部分には、実施例と同一の符号を付して説明を省略する。
【0068】
(調節機構)
図15は、変形例における首掛け部材16の調節機構を説明するための斜視図である。
図15に示すように、変形例の身体温冷装置の首掛け部材16は、利用者Uの各頸動脈Aに対する一対の第1プレート11の各々の姿勢を調節する調節機構37を備える。
【0069】
調節機構37は、上段部16Aにおける各前端部28近傍にそれぞれ設けられており、前端部28が延びる方向における前端部28の先端側を、頸動脈三角Tに対して進退する方向に対して前端部28を回動可能に支持する。調節機構37は、前端部28を支持する回動軸37a、37bを有しており、いわゆるクリックヒンジが用いられている。前端部28は上段部16Aから分割されており、前端部28を回動可能に支持する回動軸37aが上段部16Aに設けられている。また、上段部16Aと下段部16Bとの連結部分において、前端部28が下段部16Bから分割されており、前端部28を回動可能に支持する回動軸37bが前端部の下側に設けられている。なお、調節機構37は、回動軸37bを用いる代わりに、下段部16Bが弾性変形することで前端部28が回動されるように設けられてもよい。
【0070】
調節機構37は、前端部28を回動軸37a、37bまわりに回動させて、第1プレート11を所定の姿勢で一時的に固定する。これにより、利用者Uの頸部Nの大きさのばらつきに応じて、調節機構37によって第1プレート11と頸動脈三角Tとの接触状態を適宜調節することで、適正な接触状態を容易に得られる。
【0071】
図示しないが、第2プレート12の姿勢を調節するための調節機構が、上段部16Aの後方に設けられてもよい。この場合、第2プレート12の調節機構は、例えば、第2プレート12を水平軸まわりに回動させるように設けられてもよい。
【0072】
(第2プレートの接触領域)
図16は、変形例における第2プレートの変形例を説明するための模式図である。
図16に示すように、変形例における第2プレート38は、接触領域39が2つに分割されており、後頸部PNの脊椎Sの位置を挟んで配置された一対の接触領域39を有する。第2プレート38の各接触領域39が、脊椎Sの位置を避けるように配置されることで、うなじにおける脊椎Sに対応する突出部分と第2プレート38との接触を避けること可能になる。このため、第2プレート38によって後頸部PNが受ける感触を和らげて、利用者Uの快適感を更に高められる。
【0073】
なお、変形例では、第2プレート38の接触領域39が2つに分割されたが、第2プレート38の接触領域に限定されず、一対の第1プレートの接触領域と第2プレートの接触領域の少なくともいずれか1つは、複数に分割されてもよい。例えば、第1プレートの接触領域は、頸部Nまわりの湾曲形状に応じて、上段部16Aが延びる方向に対して複数に分割されてもよく、頸動脈三角Tとの接触状態の安定性が高められる。
【0074】
(変形例の効果)
上述したように変形例は、頸動脈Aに対する第1プレート11の姿勢を調節する調節機構37を有することにより、利用者Uの頸部Nの大きさにかかわらずに第1プレート11と頸動脈Aとの適正な接触状態を容易に得られる。
【0075】
また、変形例における第2プレート38は、脊椎Sの位置を挟んで2つに分割された各接触領域39を有することにより、第2プレート38が接する後頸部PNの感触を和らげて、利用者Uの快適感を更に高められる。
【符号の説明】
【0076】
1 身体温冷装置
11 第1プレート
12 第2プレート
13 第1ペルティエ素子
14 第2ペルティエ素子
16 首掛け部材
16A 上段部
16B 下段部
21、22 接触領域
21a 上辺
21b 下辺
21c 前辺
21d 後辺
25(25A、25B) 空隙
27 位置決め部
28 前端部
28a 上縁
28b 下縁
28c 前縁
29 中央部
31 チューブ部材
32 流路
32A 第1流路
32B 第2流路
32C 第3流路
37 調節機構
38 第2プレート
39 接触領域
U 利用者
N 頸部
RN 右側頸部
LN 左側頸部
AN 前頸部
PN 後頸部
A 頸動脈
B 鎖骨
T 頸動脈三角
W1、W2 幅