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特許7428015プラガブル光モジュール、プラガブル光モジュールの保守方法およびプラガブル光モジュールの保守装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】プラガブル光モジュール、プラガブル光モジュールの保守方法およびプラガブル光モジュールの保守装置
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20240130BHJP
   H04L 41/00 20220101ALI20240130BHJP
   H04B 10/272 20130101ALN20240130BHJP
【FI】
H04L12/44 200
H04L41/00
H04B10/272
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020036692
(22)【出願日】2020-03-04
(65)【公開番号】P2021141403
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池野田 和行
(72)【発明者】
【氏名】吉房 宏之
【審査官】羽岡 さやか
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-004238(JP,A)
【文献】特表2009-522866(JP,A)
【文献】特開2009-200585(JP,A)
【文献】特開2019-031191(JP,A)
【文献】特開2020-017059(JP,A)
【文献】特開2010-181922(JP,A)
【文献】特開2013-258493(JP,A)
【文献】特開2018-026748(JP,A)
【文献】特開2011-199520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/44
H04L 41/00
H04B 10/272
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラガブル光モジュールであって、
光コネクタと、
電気コネクタと、
ファームウエアを記憶した書換可能なメモリとを備え、
前記電気コネクタは、通常モードにおいて出力端子となる設定端子を有しており、
前記プラガブル光モジュールの起動時において、前記設定端子は入力端子となり、前記プラガブル光モジュールは、外部から前記設定端子に所定の信号を入力することによって保守モードに設定され、前記保守モードにおいて前記ファームウエアの更新が可能になる、プラガブル光モジュール。
【請求項2】
プラガブル光モジュールであって、
光コネクタと、
MSA規格に準拠する電気コネクタと、
ファームウエアを記憶した書換可能なメモリとを備え、
前記プラガブル光モジュールは、シリアルインターフェイスを有さず、前記電気コネクタは、前記MSA規格により定義される出力端子のうちの1つを設定端子とし、
前記プラガブル光モジュールの起動時において前記設定端子は入力端子となり、外部から前記設定端子に所定の信号を入力することによって前記プラガブル光モジュールは保守モードに設定され、前記起動時に前記所定の信号の入力がない場合は、前記設定端子は前記出力端子となり、
前記保守モードにおいて、前記設定端子が前記入力端子のまま維持されるとともにIP通信を可能にするホストIP機能がオンとなり、前記保守モードでない場合は、前記ホストIP機能がオフとなり、
前記ホストIP機能がオンである状態において、前記IP通信を介して前記ファームウエアの更新が可能になる、プラガブル光モジュール。
【請求項3】
プラガブル光モジュールの保守方法であって、前記プラガブル光モジュールは、光コネクタと、電気コネクタと、ファームウエアを記憶した書換可能なメモリとを備え、
前記プラガブル光モジュールの前記電気コネクタを、保守装置の電気コネクタに接続するステップと、
前記プラガブル光モジュールの前記電気コネクタのうち、通常モードにおいて出力端子となる設定端子に対して、前記プラガブル光モジュールの起動時に所定の信号を与えることによって、前記プラガブル光モジュールを保守モードに設定するステップと、
前記保守装置を介して前記ファームウエアの点検またはファームウエアのダウンロードを実行するステップと、
前記プラガブル光モジュールを前記保守装置から取り外すステップとを備える、プラガブル光モジュールの保守方法。
【請求項4】
前記所定の信号を与えることは、前記プラガブル光モジュールの電源オン後の所定時間の間にパルス信号を与えることである、請求項3に記載のプラガブル光モジュールの保守方法。
【請求項5】
ファームウエアを記憶したメモリと、光コネクタと、電気コネクタとを備えたプラガブル光モジュールの保守装置であって、前記プラガブル光モジュールは、通常モードと、前記プラガブル光モジュールの外部からのアクセスを可能にする保守モードを有し、前記電気コネクタは、前記通常モードにおいて出力端子となる設定端子を有し、前記保守装置は、
前記プラガブル光モジュールの前記電気コネクタに接続するための電気コネクタと、
前記プラガブル光モジュールの前記設定端子に、前記保守モードの設定のための所定の信号を与えるための回路とを備える、プラガブル光モジュールの保守装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラガブル光モジュール、プラガブル光モジュールの保守方法およびプラガブル光モジュールの保守装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FTTH(Fiber To The Home)、CATV等の光ネットワークでは、一般に、PON(Passive Optical Network)型の光伝送システムが採用されている。PONは、通信事業者側に設けられた光回線終端装置であるOLT(Optical Line Terminal)と、加入者側に設けられた光回線終端装置であるONU(Optical Network Unit)とにより構成される。
【0003】
ONUの構成の一例がたとえば特開2009-159199号公報(特許文献1)に開示される。特許文献1によれば、ONUは、電気/光変換部と、光回線終端装置機能部と、シリアル/パラレル変換部と、インタフェースモジュールとを備える。インタフェースモジュールは、所定のシリアル信号を入出力するためのシリアルIF(インターフェイス)部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-159199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ONUは、光トランシーバとホストデバイスとが一体化された構成を有していた。光トランシーバとホストデバイスとが一体化されたONUの場合、本体に種々のインターフェイスを実装することが可能である。しかしながら、近年では、光トランシーバおよびコントローラを内蔵した光モジュールが提案されている。この光モジュールは、スイッチ等のホスト装置に挿抜可能(すなわちプラガブル)に構成されている。プラガブルONUの場合、サイズの理由によって、実装されるインタフェースモジュールが制約される。
【0006】
光トランシーバとホストデバイスとが一体化されたONUの中には、ONUの外部からONUの内部のCPUにアクセスするためのシリアルインターフェイスを有しているものもある。一方、プラガブル光モジュールは、一般に、そのようなシリアルインターフェイスを有していない。
【0007】
ONUの保守のために、CPUに外部からアクセスし、必要な情報を取得したり、ファームウエアの更新をしたりすることが必要な場合が起こりえる。たとえば、OLTから遠隔でのファームウエアの更新時の不具合によって、ONUが通常モードで起動できないことが考えられる。光トランシーバとホストデバイスとが一体化された従来型のONUの場合、シリアルインターフェイスに設備操作端末(たとえばパーソナルコンピュータ)を接続することによって、設備操作端末からONUのCPUにアクセスすることができる。しかし、プラガブル光モジュールは、シリアルインターフェイスを有していないため、従来型のONUと同じ方法では、プラガブル光モジュールの内部のCPUに外部からアクセスすることができない。このためファームウエアが記憶されたメモリ(Flash ROMなど)を交換するといった作業が必要となる。このような作業は、手間、時間およびコストを要する。
【0008】
本開示の目的は、保守が容易なプラガブル光モジュール、ならびにプラガブル光モジュールの保守方法および保守装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のプラガブル光モジュールは、光コネクタと、電気コネクタと、ファームウエアを記憶した書換可能なメモリとを備え、電気コネクタに所定の信号を入力することによって保守モードに設定され、保守モードにおいてファームウエアの更新が可能になる。
【0010】
本開示のプラガブル光モジュールの保守方法は、光コネクタと、電気コネクタと、ファームウエアを記憶した書換可能なメモリとを備えたプラガブル光モジュールの保守方法であって、プラガブル光モジュールの電気コネクタを、保守装置の電気コネクタに接続するステップと、保守装置を介してファームウエアの点検またはファームウエアのダウンロードを実行するステップと、プラガブル光モジュールを保守装置から取り外すステップとを備える。
【0011】
本開示のプラガブル光モジュールの保守装置は、ファームウエアを記憶したメモリと、光コネクタと、電気コネクタとを備えたプラガブル光モジュールの保守装置であって、プラガブル光モジュールは、プラガブル光モジュールの外部からのアクセスを可能にする保守モードを有し、保守装置は、プラガブル光モジュールの電気コネクタに接続するための電気コネクタと、プラガブル光モジュールの電気コネクタに、保守モードの設定のための所定の信号を与えるための回路とを備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、保守が容易なプラガブル光モジュール、ならびにプラガブル光モジュールの保守方法および保守装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本開示の一実施形態に係るPONシステムの概略構成を示した図である。
図2図2は、図1に示したONUの一例の模式図である。
図3図3は、図2に示したONUの内部構成の概略を示したブロック図である。
図4図4は、本開示の一実施形態に係るONU(プラガブル光モジュール)の外観を概略的に示した図である。
図5図5は、本開示の一実施形態に係るONUの内部の構成を概略的に示したブロック図である。
図6図6は、本開示の一実施形態に係る、プラガブル光モジュールの保守のための構成を示したブロック図である。
図7図7は、縮退モードでの起動を説明するための概略的なブロック図である。
図8図8は、MSA規格に従う電気コネクタのピン配置を説明した図である。
図9図9は、MSA規格に従うピンの定義を示した図である。
図10図10は、保守装置の内部ブロック図である。
図11図11は、ONUの起動時の動作の一連の流れを示した図である。
図12図12は、本開示の一実施形態に係る保守方法の処理の流れを示したフローチャートである。
図13図13は、ファームウエアの点検またはダウンロードの処理の流れの例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0015】
(1) 本開示のプラガブル光モジュールは、光コネクタと、電気コネクタと、ファームウエアを記憶した書換可能なメモリとを備え、電気コネクタに所定の信号を入力することによって保守モードに設定され、保守モードにおいてファームウエアの更新が可能になる。
【0016】
上記によれば、保守が容易なプラガブル光モジュールを実現できる。一般に、プラガブル光モジュールは、プラガブル光モジュールの内部にあるCPUにアクセスするためのシリアルインターフェイスを有していない。本開示によれば、電気コネクタを利用してプラガブル光モジュールを保守モードに設定することができる。これにより、プラガブル光モジュールの保守を行うことができる。
【0017】
(2) 好ましくは、プラガブル光モジュールは、光コネクタを通じて更新用のファームウエアをメモリにダウンロード可能なモードをさらに有する。
【0018】
上記によれば、保守モード以外のモード(たとえば通常動作モード)において、プラガブル光モジュールのファームウエアを更新することができる。
【0019】
(3) 本開示のプラガブル光モジュールの保守方法は、光コネクタと、電気コネクタと、ファームウエアを記憶した書換可能なメモリとを備えたプラガブル光モジュールの保守方法であって、プラガブル光モジュールの電気コネクタを、保守装置の電気コネクタに接続するステップと、保守装置を介してファームウエアの点検またはファームウエアのダウンロードを実行するステップと、プラガブル光モジュールを保守装置から取り外すステップとを備える。
【0020】
上記によれば、プラガブル光モジュールの電気コネクタに接続可能な保守装置によって、プラガブル光モジュールの保守を容易にすることができる。
【0021】
(4) 好ましくは、ファームウエアの点検またはファームウエアのダウンロードを実行するステップは、保守装置からプラガブル光モジュールの電気コネクタに所定の信号を与えて、プラガブルモジュールを保守モードに設定するステップと、保守装置からプラガブル光モジュールの電気コネクタを介して指示を与えて、プラガブル光モジュールをリブートするステップとを備える。
【0022】
上記によれば、プラガブル光モジュールのファームウエアの保守を容易に実現できる。
【0023】
(5) 本開示のプラガブル光モジュールの保守装置は、ファームウエアを記憶したメモリと、光コネクタと、電気コネクタとを備えたプラガブル光モジュールの保守装置であって、プラガブル光モジュールは、プラガブル光モジュールの外部からのアクセスを可能にする保守モードを有し、保守装置は、プラガブル光モジュールの電気コネクタに接続するための電気コネクタと、プラガブル光モジュールの電気コネクタに、保守モードの設定のための所定の信号を与えるための回路とを備える。
【0024】
上記によれば、プラガブル光モジュールの電気コネクタに接続可能な保守装置によって、プラガブル光モジュールのモードを容易に保守モードに設定できるので、保守プラガブル光モジュールの保守を容易にすることができる。
【0025】
[本開示の実施形態の詳細]
図1は、本開示の一実施形態に係るPONシステム100の概略構成を示した図である。一般的なPONシステムでは、加入者回線は、OLT側に接続される光伝送路と、各ONUに接続された光伝送路と、OLT側の光伝送路と各ONU側の光伝送路とを接続する光スプリッタ/コンバイナとにより構成される。図1に示すように、本実施の形態では、PONシステム100は、OLT110と、1つ以上のONU120とを含む。ONU120の数は特に限定されるものではない。
【0026】
図2は、図1に示したONUの一例の模式図である。図2に示すように、ONU120Aは、たとえば箱形の筐体を有する。図2には示されていないが、ONU120Aは、光ケーブルを接続するためのコネクタ(「光コネクタ」と称する)および、ネットワーク機器等の間で信号を遣り取りするためのコネクタ(「電気コネクタ」と称する)を有する。
【0027】
図3は、図2に示したONU120Aの内部構成の概略を示したブロック図である。図3に示すように、ONU120Aは、光電変換部(O/E)121と、MAC/CPU122と、ユーザインターフェイス(ユーザI/F)123と、メモリ124と、シリアルインターフェイス(シリアルI/F)125とを備える。
【0028】
光電変換部121は、光信号と電気信号とを相互に変換する。光電変換部121は、OLT110(図1を参照)から送信された光信号を受信して、その光信号を電気信号に変換する。一方、光電変換部121は、MAC/CPU122から送られた電気信号を光信号に変換して、その光信号をOLT110に送信する。光電変換部121は、光ケーブルとの接続のための光コネクタを含む。
【0029】
MAC/CPU122は、ONUに必要とされる各種の機能を実現するためのブロックであり、LSIによって実現される。以下に限定されないが、MAC/CPU122は、たとえばSERDES(シリアル・パラレル変換)機能、PCS(符号化および誤り訂正)機能、DBA(上りデータ送信時の動的帯域割り当て)機能、暗号機能等を実現する。
【0030】
ユーザI/F123は、ユーザ機器10とONU120との間のインターフェイスを担う。ユーザ機器10は、たとえばルータ等のネットワーク機器である。ユーザ機器10は、ケーブルによってユーザI/F123に接続される。
【0031】
メモリ124は、ONU120Aの制御のためのファームウエア126を格納する。メモリ124は、たとえばフラッシュROMであり、情報を不揮発的に記憶する。
【0032】
シリアルI/F125は、ONU120Aの外部の機器からMAC/CPU122にアクセスするためのインターフェイスを提供する。たとえばパーソナルコンピュータ等の設備操作端末20がシリアルI/F125に接続可能である。
【0033】
ONU120Aの通常のモードでは、OLTから遠隔でONU120Aのファームウエアの更新が可能である。しかし、ファームウエアの更新に失敗したり、何らかの原因によってファームウエアが破損したりする場合、通常モードで起動できなくなることがある。この場合、シリアルI/F125を介して設備操作端末20がMAC/CPU122にアクセスすることで、ファームウエアの更新をやり直すことができる。
【0034】
一方で、様々な端末機器に対してプラガブルなONUも提案されている。図4は、本開示の一実施形態に係るONU(プラガブル光モジュール)120の外観を概略的に示した図である。図4(A)は、ONU120の上面図であり、図4(B)は、ONU120の左側面図であり、図4(C)は、ONU120の下面図であり、図4(D)は、ONU120の右側面図である。
【0035】
図4(A)~図4(D)に示されるように、ONU120のフォームファクタとしてはSFP(Small Form Factor Pluggable)を採用することができる。ONU120のフォームファクタがSFPに従う場合には、ONU120のサイズは、長さ57mm×幅14mm×高さ10mmとなる。
【0036】
ONU120は、光ケーブルに接続するための光コネクタ130Aと、ホスト装置に接続するための電気コネクタ130Bとを備える。光コネクタ130Aは、プラガブル光モジュールの筐体の一方端に配置される。一方、電気コネクタ130Bは、プラガブル光モジュールの筐体の他方端に配置される。
【0037】
図5は、本開示の一実施形態に係るONU120の内部の構成を概略的に示したブロック図である。図5に示すように、ONU120は、光電変換部(O/E)131と、MAC/CPU132と、ユーザインターフェイス(ユーザI/F)133と、メモリ134とを備える。各ブロックの機能は、図3に示したONU120の対応するブロックの機能と同じである。光電変換部131は、図4に示した光コネクタ130Aを含む。ユーザI/F133は、図4に示した電気コネクタ130Bを含む。
【0038】
ONU120は、スイッチ30にプラガブルである。一方、サイズの制約により、ONU120は、シリアルI/Fを実装することができない。したがってシリアルI/Fに代わる機能を別のブロックが担う必要がある。
【0039】
ONU120の通常モードでは、セキュリティの観点から、MAC/CPU132のホストIP機能はオフにされる。本開示の実施の形態では、ONU120は、MAC/CPU132のホストIP機能をオンにするための機能を有する。MAC/CPU132のホストIP機能をオンにすることにより、ユーザI/FからMAC/CPU132へのアクセスが可能になる。したがって、シリアルI/Fを介した作業(図3を参照)と同等以上の保守作業が可能になる。
【0040】
図6は、本開示の一実施形態に係る、プラガブル光モジュールの保守のための構成を示したブロック図である。図6を参照して、ユーザI/Fに保守装置40が接続される。保守装置40によって、MAC/CPU132のホストIP機能を一時的にオンにする。設備操作端末20(たとえばパーソナルコンピュータ)は、保守装置40に接続される。設備操作端末20は、保守装置40およびユーザI/F133を介してMAC/CPU132にアクセスする。
【0041】
メモリ134は、通常領域136および縮退モード用領域138を有する。通常領域136には通常モード用のファームウエアが書き込まれている。なお、通常モードでは、OLTから遠隔でONU120のファームウエアの更新が可能である。ONU120は、OLTとのハンドシェークにより、ファームウエアを更新するとともに、更新の成否をOLTに通知する。
【0042】
縮退モード用領域138には、縮退モード用のファームウエアが書き込まれている。縮退モード用領域138は書き換え不可の領域である。縮退モード用のファームウエアは、通常モード用のファームウエアの更新にとって最低限必要な機能(ブート、IPホスト)のみをMAC/CPU132に動作させるためのファームウエアである。縮退モードでMAC/CPU132を起動させることによって、外部(ユーザI/F133側)からMAC/CPU132へのアクセスが可能となる。
【0043】
通常モード用のファームウエアの更新に失敗した場合、ONU120は、リブート後に通常モードで起動できない可能性がある。しかし本開示の実施の形態によれば、設備操作端末20によって、MAC/CPU132を縮退モードで起動させることができる。これにより、ONU120の保守作業が可能となる。したがって、通常モード用のファームウエアの更新を継続できる。たとえば設備操作端末20からMAC/CPU132に更新用のファームウエアを送り、MAC/CPU132は、そのファームウエアを通常領域136に書き込んでもよい。すなわち、縮退モードとは、ONU120の保守のための保守モードである。
【0044】
セキュリティの観点から、ホストIP機能は、ONU120の保守の間のみ、有効とされる必要がある。ホストIP機能をオンにするために、通常とは異なる操作が実行される。
【0045】
図7は、縮退モードでの起動を説明するための概略的なブロック図である。図7を参照して、ユーザI/F133は、電気コネクタであり、複数のピンを有する。図7では例示的にピン141~146を示す。
【0046】
ONU120の起動時に、ユーザI/F133の特定のピンに、保守装置40からパルス信号5が入力される。MAC/CPU132は、パルス信号5に応答して、縮退モード用領域138からのファームウエアを読み込む。これによって、ONU120は縮退モードで動作する。なお、ONU120の起動時にパルス信号5が、ユーザI/F133に入力されない場合、ONU120は、通常モードで起動する。この場合には、MAC/CPU132は、メモリ134の通常領域136からファームウエアを読み込む。
【0047】
図7に示した例では、パルス信号5は、ピン145に入力される。ピン145は、ONU120の通常モードでの動作において信号出力用のピンに設定されている。ONU120の起動時にのみピン145は信号入力用ピンに設定される。ONU120の起動時(電源投入時等)のピン145の電圧値により、ブートのモードを決定することができる。ブートのモードが通常モードである場合、ピン145は出力ピンに設定される。一方、ブートのモードが縮退モードの場合、ピン145は入力ピンのままに設定される。
【0048】
本開示の実施の形態では、ONU120のフォームファクタは、SFPに準拠する。SFPのピン配置は、MSA規格に準拠している。図8は、MSA規格に従う電気コネクタのピン配置を説明した図である。図8に示すように、ユーザI/F133(電気コネクタ)は、基板の一方の面に配置されたピン列140Aと、基板の他方の面に配置されたピン列140Bとを有する。ピン列140Aは、1番から10番までアサインされた10個のピン140を含む。ピン列140Bは、11番から20番までアサインされた10個のピン140を含む。ユーザI/F133をホスト側のコネクタに接続する際、1番~20番までのピンは、接地、電源、信号の順に、ホスト側のコネクタの対応するピンと接触する。
【0049】
図9は、MSA規格に従うピンの定義を示した図である。図9に示した定義は、「SFF-8431 Specifications for Enhanced Small Form Factor Pluggable Module SFP+ Revision 4.1」(2009年7月6日)に記載される。なお、図9において記載されている「Contact」は、本開示の実施の形態の説明における「ピン」に相当する。本開示の実施の形態では、通常モードでは信号の出力に用いられるピンを、パルス信号5の入力のためのピンに割り当てる。図9に示すように、たとえば、2番のピン(Tx_Fault)は、データの送信がエラーになったことを示す信号を出力するためのピンである。Tx_Faultピンを、パルス信号5の入力のためのピンに割り当てる。なお、集積回路のピンを出力にも入力にも機能させて、そのピンを他の回路と接続する設計は、公知の技術で実施できる。
【0050】
図10は、保守装置40の内部ブロック図である。図10に示すように、保守装置40は、コネクタ41と、コネクタ42と、信号発生回路43と、信号発生ボタン44とを備える。コネクタ41は、ONU120(プラガブル光モジュール)の電気コネクタに保守装置40を接続するための電気コネクタである。したがって、コネクタ41はSFP+コネクタである。
【0051】
コネクタ42は、設備操作端末20との接続のための電気コネクタである。コネクタ42の種類は、設備操作端末20の有するコネクタに応じて定めることができる。なお、コネクタ41の少なくとも一部の端子は、コネクタ42の対応する端子に電気的に接続される。これにより、設備操作端末20は保守装置40を介してONU120(プラガブル光モジュール)にアクセスすることができる。
【0052】
信号発生回路43は、信号発生ボタン44の操作によってパルス信号5を発生させる。パルス信号5は、ONU120の電気コネクタに、外部からプラガブル光モジュールへのアクセスを可能にするための信号である。
【0053】
信号発生ボタン44は、保守装置40のユーザによって操作されるボタンである。信号発生ボタン44は、たとえばボタンスイッチであってもよい。
【0054】
設備操作端末20は、ファームウエアを更新するための更新用ファームウエアをONU120に与える。保守装置40は、コネクタ42を介して、設備操作端末20から更新用ファームウエアを受信する。更新用ファームウエアは、コネクタ41を介して保守装置40からONU120に送られる。
【0055】
設備操作端末20は、ONU120に格納されているファームウエアのバージョンを確認することもできる。この場合、設備操作端末20は、ONU120に対して、ファームウエアのバージョン情報を読み出すための処理を実行する。バージョン情報は、ONU120からコネクタ41,42を介して設備操作端末20に送られる。
【0056】
図11は、ONU120の起動時の動作の一連の流れを示した図である。図11を参照して、ONU120の電源がオンになる(時刻t1)。モードを設定するための設定ピン(図7に示すピン145)は、デフォルトの状態、すなわち入力ピンの状態である。
【0057】
ONU120に保守装置40が接続されている場合、保守装置40により、パルス信号5が発生する(時刻t2)。パルス信号の有無に従って、ONU120のモードが決定される(時刻t3)。時刻t2においてパルス信号が発生した場合には、ONU120のモードは縮退モードである。一方、パルス信号が発生しなければ、ONU120のモードは通常モードである。
【0058】
次に、ONU120のMAC/CPU132は、メモリ134に格納されたファームウエアを読み込む。縮退モードの場合、MAC/CPU132は、メモリ134の縮退モード用領域138に格納されたファームウエアを読み込む。一方、通常モードの場合、MAC/CPU132は、メモリ134の通常領域136に格納されたファームウエアを読み込む。続いて、MAC/CPU132は、ブート処理を実行する(時刻t5)。
【0059】
次に、時刻t11において、アプリケーションの起動が開始される。アプリケーションの起動中において、設定ピンの状態は入力ピンのままである。
【0060】
時刻t12において、アプリケーションが起動される。時刻t12以後において、設定ピンの状態は、起動モードに応じて異なる。起動モードが通常モードである場合には、設定ピンは、出力ピンとなる。一方、起動モードが縮退モードである場合には、設定ピンは、入力ピンのままである。
【0061】
図12は、本開示の一実施形態に係る保守方法の処理の流れを示したフローチャートである。まず、対象のプラガブル光モジュール(ONU120)を保守装置40に挿入する。これにより、ONU120の電気コネクタが、保守装置40のコネクタ41に接続される(ステップS11)。図11に示す流れに従って、縮退モードでアプリケーションが起動される。
【0062】
ステップS12において、設備操作端末20は、ファームウエアを点検する。たとえば、設備操作端末20は、ファームウエアのバージョンをチェックすることによってファームウエアを点検してもよい。
【0063】
ステップS12において、ONU120は、更新用ファームウエアを設備操作端末20からダウンロードして、その更新用ファームウエアをメモリ134の通常領域136に書き込むのでもよい。
【0064】
ステップS12において、ファームウエアの点検またはダウンロードが実行されると、ステップS13において、対象のプラガブル光モジュール(ONU120)が保守装置40のコネクタ41から取り外される。これによりONU120の保守が終了する。
【0065】
図13は、ファームウエアの点検またはダウンロードの処理の流れの例を示したフローチャートである。図13に示すフローは、ステップS12の処理の詳細な流れに対応する。ステップS21において、保守装置40からプラガブル光モジュール(ONU120)に所定のパルス信号5を与える。ステップS21の処理は図11に示した時刻t2における処理に対応する。
【0066】
ステップS22において、プラガブル光モジュール(ONU120)を縮退モードに移行させる。ステップS22の処理は図11に示した時刻t4,t5における処理に対応する。
【0067】
続いてステップS23において、ファームウエアの点検またはダウンロードが実行される。上述のように、設備操作端末20は、ファームウエアのバージョンをチェックすることによってファームウエアを点検してもよい。あるいは、ONU120は、更新用ファームウエアを設備操作端末20からダウンロードして、その更新用ファームウエアをメモリ134の通常領域136に書き込むのでもよい。
【0068】
ステップS24において、保守装置40は、プラガブル光モジュール(ONU120)をリブートする。プラガブル光モジュールをリブートするための信号は設備操作端末20によって発生させてもよい。保守装置40は、設備操作端末20から信号を受けて、その信号をONU120のMAC/CPU132に与える。これによりプラガブル光モジュールがリブートされる。
【0069】
以上のように、本開示の実施の形態によれば、シリアルI/Fを有さないプラガブル光モジュールにおいて、ファームウエアに関する保守を容易に実行することができる。
【0070】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した実施の形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0071】
5 パルス信号
10 ユーザ機器
20 設備操作端末
30 スイッチ
40 保守装置
41,42 コネクタ
43 信号発生回路
43A 電源
43B,43C 抵抗
44 信号発生ボタン
100 PONシステム
121,131 光電変換部
123,133 ユーザインターフェイス
124,134 メモリ
125 シリアルインターフェイス
126 ファームウエア
130A 光コネクタ
130B 電気コネクタ
136 通常領域
138 縮退モード用領域
139 プルダウン抵抗
140,145 ピン
140A,140B ピン列
S11,S12,S13,S21,S22,S23,S24 ステップ
t1,t2,t3,t4,t5,t11,t12 時刻
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13