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特許7428029土壌排水装置および土壌排水装置の施工方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】土壌排水装置および土壌排水装置の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/10 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
E02D3/10 102
E02D3/10 103
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020047319
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021147828
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梅原 由貴
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真一
(72)【発明者】
【氏名】杉江 茂彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 彰
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 徹
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-001910(JP,A)
【文献】実開平05-067626(JP,U)
【文献】特開2010-242452(JP,A)
【文献】特開2017-100074(JP,A)
【文献】特開2000-140786(JP,A)
【文献】実開平02-081679(JP,U)
【文献】特開2001-182046(JP,A)
【文献】特開2001-279657(JP,A)
【文献】特開昭61-001716(JP,A)
【文献】特開昭49-065010(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象土の間隙水を集水する集水設備と、
集水設備を介して前記処理対象土に負圧を作用させる負圧作用設備と、
を備える土壌排水装置であって、
前記集水設備は、
地盤上に投下された前記処理対象土内で、高さ方向に間隔を設けて敷設される複数の集水層を備え、
前記負圧作用設備は、
前記集水設備の中ほどに立設され、複数の前記集水層各々と対向する高さ位置に設けられた複数の貫通孔を備える貯水槽と、
該貯水槽に流入した前記間隙水を排水する排水装置と、
前記貯水槽内を減圧する減圧装置と、を備え、
前記処理対象土に負圧を作用させる前記集水層を少なくとも1つ選択する負圧作用層選択機構が、前記負圧作用設備に備えられていることを特徴とする土壌排水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の土壌排水装置において、
前記負圧作用層選択機構が、
複数の前記貫通孔各々を開閉する開閉装置を備えることを特徴とする土壌排水装置。
【請求項3】
請求項2に記載の土壌排水装置において、
前記負圧作用層選択機構が、
前記開閉装置に接続されるとともに、前記集水層に埋設される排水部材を備えることを特徴とする土壌排水装置。
【請求項4】
請求項1に記載の土壌排水装置において、
前記負圧作用層選択機構が、
前記貯水槽内を分割する仕切り部材を備え、
該仕切り部材で分割された空間に、前記集水層に負圧を作用させる減圧空間が設けられることを特徴とする土壌排水装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の土壌排水装置の施工方法であって、
地盤上で、前記貯水槽を埋設しつつ前記集水層と前記処理対象土とを交互に敷設し、前記集水設備を構築する工程と、
前記負圧作用設備により、前記集水層を介して前記処理対象土に負圧を作用させる工程と、を備えることを特徴とする土壌排水装置の施工方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の土壌排水装置の施工方法であって、
地盤上で、前記貯水槽を埋設しつつ前記集水層と前記処理対象土とを交互に敷設し、前記集水設備を構築する工程と、
前記負圧作用設備により、前記負圧作用層選択機構で選択した前記集水層を介して前記処理対象土に負圧を作用させる工程と、
を並行して行うことを特徴とする土壌排水装置の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象土から間隙水を強制的に排出するための土壌排水装置、及び土壌排水装置の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、浚渫土砂、建設発生土や山から切り崩した土砂を用いて土地の埋立てや水域の埋立て工事を行うに際し、埋立材料が粘性土等の含水比が高く軟弱な土壌である場合には一般に、埋立領域に埋立材を堆積させて埋立地盤を形成する工程と、この埋立地盤に脱水処理等の地盤改良を行って、埋立地盤の強度増加を図る工程とを実施する。
【0003】
例えば、特許文献1では、ドレーン材が水平に埋設された複数の砂層とウェルポイントとを備える堰堤を、埋立地の周囲に築造したうえで、埋立地にドレーン材を水平に配置して堰堤内のドレーン材と接続したのち、浚渫土を所定の層厚まで埋立てる。そして、ウェルポイントを稼働させつつ上記の工程を繰り返し、浚渫土から強制的に排出を行っている。
【0004】
また、特許文献2では、護岸壁で囲まれた埋立領域に設けたサンドマット上に埋立地盤を構築し、この埋立地盤に対して下端がサンドマットと接続するようにして鉛直ドレーン材を打設する。また、鉛直ドレーン材を含む埋立地盤の上面に不透水層を形成するとともに、埋立地盤中に吸気管及び吸気ポンプを配備した集水井戸を、サンドマットと連通するように複数配置する。こののち、集水井戸を利用してサンドマット及び鉛直ドレーン材を介して埋立地盤に真空圧を作用させ、埋立地盤の水分を集水井戸に集水している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-182046号公報
【文献】特開2001-279657号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、埋立地盤の強度増加を図る手段として間隙水を強制的に排出する方法を採用すると、地盤全体に均等な圧密沈下を生じさせて地盤強度を確実に増加させることができる。
【0007】
特許文献1は、浚渫土を埋立てる作業と埋立てた浚渫土から間隙水を強制的に排出する作業を並行して行うことができるが、ドレーン材が水平に埋設された複数の砂層を、堰堤に設ける作業は煩雑である。さらに、堰堤に設けたドレーン材及び砂層が、埋立領域の外側領域と連通するよう構築されているため、海水を引き込みやすく、浚渫土の間隙水を効率よく吸引し排出することができない。
【0008】
また、特許文献2は、埋立地盤を構築したのち、その上面に不透水層を形成したうえで真空圧を作用させる方法であるから、埋立地盤を構築する作業と埋立地盤に真空圧を作用させる作業とを並行して行うことができず、施工期間が長期化しやすい。
【0009】
本発明は、かかる課題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、簡略な構成で効率よく、処理対象土の間隙水を排出することの可能な、土壌排水装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するため、本発明の土壌排水装置は、処理対象土の間隙水を集水する集水設備と、集水設備を介して前記処理対象土に負圧を作用させる負圧作用設備と、を備える土壌排水装置であって、前記集水設備は、地盤上に投下された前記処理対象土内で、高さ方向に間隔を設けて敷設される複数の集水層を備え、前記負圧作用設備は、前記集水設備の中ほどに立設され、複数の前記集水層各々と対向する高さ位置に設けられた複数の貫通孔を備える貯水槽と、該貯水槽に流入した前記間隙水を排水する排水装置と、前記貯水槽内を減圧する減圧装置と、を備え、前記処理対象土に負圧を作用させる前記集水層を少なくとも1つ選択する負圧作用層選択機構が、前記負圧作用設備に備えられていることを特徴とする。
【0011】
本発明の土壌排水装置によれば、集水設備に、処理対象土内で高さ方向に間隔を設けて敷設される複数の集水層が備えられるととともに、この集水設備の中ほどに、集水層と対向する高さ位置に貫通孔が設けられた貯水槽が立設される。これにより、貯水槽を中心として処理対象土中の平面方向及び深さ方向の広い範囲にわたって、効率よく負圧を作用させ間隙水を強制的に排出することが可能となる。
【0012】
特に、海域などの水域で行う埋立て工事では、周囲の海水等を引き込むことなく効率よく浚渫土の広い範囲に負圧を作用させることができ、埋立工事の工期短縮及工費削減に寄与することが可能となる。
【0014】
本発明の土壌排水装置は、前記負圧作用層選択機構が、複数の前記貫通孔各々を開閉する開閉装置を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の土壌排水装置は、前記負圧作用層選択機構が、前記開閉装置に接続されるとともに、前記集水層に埋設される排水部材を備えることを特徴とする。
【0016】
本発明の土壌排水装置は、前記負圧作用層選択機構が、前記貯水槽内を分割する仕切り部材を備え、該仕切り部材で分割された空間に、前記集水層に負圧を作用させる減圧空間が設けられることを特徴とする。
【0017】
本発明の土壌排水装置によれば、負圧作用設備に、前記処理対象土に負圧を作用させる前記集水層を少なくとも1つ選択する負圧作用層選択機構を備えることから、集水設備を施工しつつ、浚渫土で表面全面及び周縁部が被覆された集水層のみを利用して、投下した浚渫土に効率よく負圧を作用させることが可能となる。
【0018】
本発明の土壌排水装置の施工方法は、本願発明の土壌排水装置の施工方法であって、地盤上で、前記貯水槽を埋設しつつ前記集水層と前記処理対象土とを交互に敷設し、前記集水設備を構築する工程と、前記負圧作用設備により、前記集水層を介して前記処理対象土に負圧を作用させる工程と、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の土壌排水装置の施工方法は、本願発明の土壌排水装置の施工方法であって、地盤上で、前記貯水槽を埋設しつつ前記集水層と前記処理対象土とを交互に敷設し、前記集水設備を構築する工程と、前記負圧作用設備により、前記負圧作用層選択機構で選択した前記集水層を介して前記処理対象土に負圧を作用させる工程と、を並行して行うことを特徴とする。
【0020】
本発明の土壌排水装置の施工方法によれば、集水設備を構築しながら、敷設済みもしくは敷設途中の処理対象土に先行して負圧を作用させ間隙水を強制的に排出できるため、土壌排水装置の施工後に引き続き実施する処理対象土から間隙水を強制排出する作業時間を大幅に削減でき、処理対象土の圧密促進に係る工期を大幅に短縮することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、集水設備に処理対象土と交互に積層される複数の集水層を備え、また、集水層と対向する高さ位置に貫通孔を設けた貯水槽を、集水設備の中ほどに立設される簡略な構成でありながら、貯水槽を中心として処理対象土中の平面方向及び深さ方向の広い範囲にわたって、効率よく負圧を作用させ間隙水を強制的に排出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態における土壌排水装置の概略を示す図である。
図2】本発明の土壌排水装置における第1の実施の形態を示す図である(その1)。
図3】本発明の土壌排水装置における第1の実施の形態を示す図である(その2)。
図4】本発明の第1の実施の形態の土壌排水装置の平面を示す図である。
図5】本発明の第1の実施の形態の土壌排水装置の施工手順を示す図である。
図6】本発明の土壌排水装置における第2の実施の形態を示す図である。
図7】本発明の土壌排水装置における第3の実施の形態を示す図である。
図8】本発明の第3の実施の形態の土壌排水装置の施工手順を示す図である。
図9】本発明の土壌排水装置における第4の実施の形態を示す図である。
図10】本発明の第4の実施の形態の土壌排水装置の施工手順を示す図である。
図11】本発明の土壌排水装置における第5の実施の形態を示す図である。
図12】本発明の第5の実施の形態の土壌排水装置の施工手順を示す図である。
図13】本発明の第5の実施の形態の土壌排水装置の他の使用例を示す図である。
図14】本発明の実施の形態における土壌排水装置の他の事例を示す図である(その1)。
図15】本発明の実施の形態における土壌排水装置の他の事例を示す図である(その2)。
図16】本発明の実施の形態における土壌排水装置の他の事例を示す図である(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の土壌排水装置について、海域で行う埋立工事に採用する場合を事例に挙げ、以下にその詳細を、図1~16を参照しつつ説明する。
【0024】
なお、処理対象土は、例えば、浚渫工事に伴い発生する浚渫土砂や地中掘削に伴い発生する土砂といった建設工事に伴って発生した建設発生土、建設汚泥やヘドロなどの泥状物等、土砂が混じった土砂混合物すべてを含むものとする。
【0025】
≪≪土壌排水装置≫≫
図1で示すように、埋立領域10には、処理対象土である浚渫土が投下されることにより堆積し、埋立地盤101が形成されている。この埋立地盤101には、土壌排水装置1が設置されており、土壌排水装置1は、浚渫土層Sの間隙水を集水する集水設備2と、集水設備2を介して浚渫土層Sに負圧を作用させる負圧作用設備3と、を備えている。
【0026】
≪集水設備≫
集水設備2は、図1で示すように、埋立地盤101内で高さ方向に所定の間隔を設けて敷設された3層の集水層21により構成され、最下の集水層21は海底地盤上に敷設されている。なお、集水設備2を構成する集水層21の数量は、3層に限定されるものではない。
【0027】
3層の集水層21はいずれも、良質な砂材、もしくは礫を含む砂材を用いた透水性の高い敷砂であるサンドマットであり、少なくとも層厚方向中間部が上下に位置する浚渫土層Sと交じり合わない程度の層厚を備えている。これら集水層21は、高い透水性能を有し、地盤の上面に対して面状に敷設できるものであればいずれを採用してもよく、水平ドレーン材、立体網状体、グラベルマット、もしくはサンドマットと不織布等の透水シートを組み合わせたもの等であってもよい。
【0028】
なお、集水層21に、浚渫土と比重が概ね等しい材料を採用する、またはサンドマットの下面もしくは上面を透水シートで被覆したものを採用すると、集水層21が浚渫土層Sに貫入する現象を効率よく防止でき、サンドマットのみの場合と比較して、透水機能を維持しつつ層厚を薄くすることができる。
【0029】
また、集水層21に水平ドレーン材を採用する場合には、例えば、帯状のボードドレーンを複数準備し、これらを相互に通水可能な状態となるよう交差させてシート状に構成するとよい。なお、ボードドレーンは、長手方向に複数の溝が形成された長尺な芯材を、高い透水性能を有するものの粒状材料を透過することのない不織布等のフィルター材で被覆したものである。
【0030】
≪負圧作用設備≫
負圧作用設備3は、図1で示すように、集水設備2の中ほどに立設される貯水槽31と、貯水槽31の側壁に設けられる貫通孔32と、貯水槽31内を減圧する減圧装置33と、貯水槽31内に貯留した間隙水を排出する排水装置34とを備えている。
【0031】
貯水槽31は、水密性及び気密性を有する円筒状の容器であり、その周壁に、高さ方向に間隔を有して複数の貫通孔32が設けられている。なお、貯水槽31の形状や構造は、密閉可能に構成されていれば、例えば、上端部に気密性の蓋材が設けられて開閉自在に構成されている等、いずれでもよい。
【0032】
複数の貫通孔32は、複数の集水層21各々と対向する高さ位置に設けられており、貯水槽31の内空部と集水層21とを連通させる機能を有している。また、貫通孔32には、ストレーナー321が設けられており、水分及び空気を透過するものの土砂等の流入を抑制している。なお、貫通孔32の形状はいずれでもよく、また、集水層21ごとに対向する貫通孔32の数量も、何ら限定するものではないが、貯水槽31の周方向に複数設けるとよい。
【0033】
減圧装置33は、貯水槽31に一端が挿入された排気管331と、排気管331の他端が接続された真空ポンプ332とを備えている。これらは、真空ポンプ332を稼働させることにより、排気管331を介して貯水槽31内に一次貯留された空気を排気し減圧するものである。
【0034】
排水装置34は、一端が貯水槽31内に挿入された揚水管341と、貯水槽31内で揚水管341に接続された揚水ポンプ342とを備えている。これにより、揚水ポンプ342を稼働させることで、貯水槽31中に一次貯留された貯留水を揚水することができる。
【0035】
このような構成の土壌排水装置1は、真空ポンプ332を稼働して貯水槽31内を減圧すると、貫通孔32からこれらと対向する3層の集水層21各々を介して、その上下に位置する浚渫土層Sに負圧を作用させることができる。これにより、浚渫土層S中の間隙水は強制的に吸引され、集水層21を介して貯水槽31に排水される。
【0036】
したがって、埋立地盤101に地盤改良工法で広く採用されている真空圧密工法と同様の地盤改良効果をもたらすことが可能となる。また、貯水槽31が、集水設備2の中ほどに立設されることから、貯水槽31を中心とした浚渫土層S中の平面方向及び深さ方向の広い範囲にわたって効率よく負圧を作用させ、間隙水を強制的に排出できる。
【0037】
なお、貯水槽31に設けた貫通孔32は、全体が集水層21に埋設されるが、2及び3層目の集水層21には、さらに拡幅部22を設けている。拡幅部22は、貫通孔32にストレーナー321を設けて集水層21と直接対向させる場合に設けることが好ましく、その高さが貫通孔32の上端より十分高くかつ下端より十分低く形成され、貫通孔32の全高より大きく確保されている。
【0038】
これにより、2層及び3層目の集水層21各々とこれに対向する貫通孔32との間で、浚渫土層Sの圧密促進により高さ位置にズレが生じた場合にも、拡幅部22を利用して両者間の連通状態を維持することができる。
【0039】
≪≪負圧作用層選択機構≫≫
上記の構成を有する土壌排水装置1は、負圧作用設備3を構成する貯水槽31もしくは排水装置34に負圧作用層選択機構を設けると、集水設備2に設けた複数の集水層21の中から任意に1層もしくは複数層を選択し、選択した集水層21を介して浚渫土層Sに負圧を作用させることができる。こうすると、埋立領域10で土壌排水装置1を施工しながら、敷設済みもしくは敷設途中の浚渫土層Sに対して負圧を作用させ、間隙水を強制的に排出することも可能である。
【0040】
そこで、貯水槽31に設ける負圧作用層選択機構の事例を、その構造と負圧作用層選択機構を設ける場合の土壌排水装置1の施工方法とを併せて、以下に第1~第5の実施の形態として例示する。
【0041】
≪第1の実施の形態:負圧作用層選択機構100a≫
図2及び図3で示す土壌排水装置1に設けた負圧作用層選択機構100aは、貫通孔32を開閉する開閉装置111と、開閉装置111に接続される排水部材112とを備えている。この場合には、貫通孔32にストレーナー321を設けなくてもよく、また、集水層21に拡幅部22を設けなくてもよい。
【0042】
開閉装置111は、例えば、電磁バルブや手動バルブ等、貫通孔32を開閉できるものであればいずれを採用してもよく、その配置位置は、図2で示すように、排水部材112の基端側であって貯水槽31の内方に設けてもよいし、図3で示すように、排水部材112の先端側に設けてもよい。
【0043】
また、排水部材112は、図2で示すように、開閉装置111を排水部材112の基端側に設ける場合には、水平ドレーン材が好適である。水平ドレーン材としては、一般に広く用いられている帯状のボードドレーンや、多孔質管やストレーナーパイプ等、水分及び空気を透過するものの土砂等の流入を抑制できる長尺部材であれば、いずれを採用してもよい。
【0044】
一方、図3で示すように、開閉装置111を排水部材112の先端側に設ける場合は、排水部材112として、両端部のみに開口を有するいわゆるフレキシブルパイプ等の中空パイプを採用し、基端側の開口を貫通孔32に直接接続するとよい。
【0045】
これら排水部材112は、開閉装置111が基端もくしは先端のいずれに設けられているかに関わらず、図2及び図3で示すように、自身が接続された貫通孔32に対向する集水層21の中ほどに露出することのないよう埋設されている。
【0046】
これにより、開閉装置111を開状態にするとともに、貯水槽31内の空気を減圧装置33で排気すると、排水部材112を介して集水層21の広い範囲に負圧を作用させて、浚渫土層S内の間隙水を効率よく貯水槽31内へ排出させることができる。
【0047】
特に、開閉装置111を排水部材112の基端側(貫通孔32の近傍)に設けるととともに、排水部材112に水平ドレーン材を採用すると、図4で示すように、集水層21を介して貯水槽31を中心とする平面方向のより広い範囲の浚渫土層Sに負圧を作用させて、
【0048】
また、開閉装置111の開閉操作を行うことにより、複数の集水層21のうち1つの層もしくは複数の層を適宜選択し、選択した集水層21にのみ負圧を作用させることができる。
【0049】
≪第1の実施の形態:土壌排水装置の施工手順≫
上記の負圧作用層選択機構100aを備えた土壌排水装置1を施工する手順を、図2で示すように、貫通孔32の近傍に開閉装置111を配置した場合であって、開閉装置111に電磁バルブを採用した場合を事例に挙げ、以下に図5を参照しつつ説明する。
【0050】
まず、図5(a)で示すように、埋立領域10の所定位置に負圧作用設備3を設置する。負圧作用設備3の貯水槽31には、すべての貫通孔32に開閉装置111と排水部材112を設置しておく。また、すべての開閉装置111を閉状態とし、貯水槽31を密閉状態にしておく。なお、貯水槽31には、排水装置34と減圧装置33とを設けておく。
【0051】
次に、図5(b)で示すように、貯水槽31に設けた最下の貫通孔32に対応する開閉装置111及び排水部材112を埋設するようにして、1層目の集水層21を敷設する。その手順はいずれでもよいが、例えば、1層目の集水層21を構成する砂材を、予定する層厚の半分程度まで撒きだしたところで、その上面に排水部材112を載置するようにして展開する。そののち、展開した排水部材112全体を埋設するようにして、残りの砂材を撒き出し、所定の層厚を有する集水層21を形成する。
【0052】
1層目の集水層21が敷設されたところで、図5(c)で示すように、大気開放状態にある集水層21の上面に浚渫土層Sを投下し、集水層21の表面全面及び周縁部を被覆する。こののち、1層目の集水層21に対応する開閉装置111を開状態にしたうえで、真空ポンプ332を稼働させて貯水槽31内を排気するとともに、揚水ポンプ342を稼働させる。
【0053】
すると、敷設途中の浚渫土層Sに効率よく負圧が作用するため、間隙水が排水部材112及び貫通孔32を介して貯水槽31に強制的に排出され、揚水ポンプ342で揚水される。こうして、浚渫土層Sを1層目の集水層21上に堆積させる作業と、投下した浚渫土層Sの間隙水を強制的に排出する作業とを、ほぼ同時に開始し、以降、両作業を並行して進行させる。
【0054】
堆積した浚渫土層Sが所定の高さに到達したのち、図5(d)で示すように、浚渫土層Sの上面に2層目の集水層21を敷設する作業を開始する。この作業中も、1層目の集水層21を利用して、敷設済みの浚渫土層Sから間隙水を強制的に排出する作業を継続する。
【0055】
2層目の集水層21が1層目の集水層21と同様の手順で敷設され、その上面に投下された浚渫土層S2で2層目の集水層21全体が被覆されたところで、2層目の集水層21に対応する開閉装置111を開状態とする。これにより、1層目及び2層目の集水層21を介してこれらに隣接する浚渫土層Sに負圧が作用し、間隙水を強制的に排出することができる。
【0056】
上記の作業を、最上段の浚渫土層Sが所定の高さに到達するまで繰り返す。これにより、負圧を作用させる集水層21を1層目から順に選択し、最終的には、集水設備2に設けたすべての集水層21が選択され、浚渫土層S全体に負圧を作用させ、間隙水を排出することができる。
【0057】
なお、例えば、集水層21と浚渫土層Sとを積層する作業中に、1層目及び2層目の集水層21から間隙水の排出が見られなくなった場合には、図2で示すように、1層目及び2層目の集水層21に対応する開閉装置111を閉状態にすればよい。こうすると、3層目の集水層21のみが選択され、これに隣接する浚渫土層Sにのみ効率よく負圧を作用させて、間隙水を早急に排出させることができる。
【0058】
また、上記の実施の形態では、開閉装置111として電磁バルブを採用したが、これに限定されるものではなく、手動バルブを採用してもよい。手動バルブは、図3で示すような、開閉装置111が排水部材112の先端に設けられている場合に特に好適である。開閉装置111に手動バルブを採用する場合には、排水部材112を集水層21に埋設する際にあらかじめ、開閉装置11を開状態にしておけばよい。
【0059】
≪第2の実施の形態:負圧作用層選択機構100b≫
図6で示す土壌排水装置1に設けた負圧作用層選択機構100bは、貯水槽内31の空間を平面視で放射状に分割する仕切り壁122と、この仕切り壁122により形成された放射状の減圧空間121と、貯水槽31の貫通孔32に設けたストレーナー321とを備える。なお、減圧空間121にはそれぞれ、排水装置34と排気管331が設けられている。
【0060】
仕切り壁122は、貯水槽31の内部を平面視で放射状に分割し、集水層21の数量と少なくとも同数の減圧空間121を形成するもので、その高さは貯水槽31の底部から上部の蓋材に至っている。したがって、貯水槽31内で放射状に設けられた減圧空間121は、これら仕切り壁122と貯水槽31の周壁とにより囲まれるとともに、互いに連通することなく独立した状態にある。
【0061】
また、各減圧空間121を形成する貯水槽31の周壁には、複数の集水層21のいずれか1つと対向する高さ位置に貫通孔32が設けられている。これにより、図6の時点で、敷設済みの3層の集水層21のうちのいずれか1つと貯水槽31に設けた4つの減圧空間121のいずれか一つが連通するよう構成されている。したがって、3層の集水層21各々に集水された浚渫土層Sの間隙水は、集水層21ごとで異なる減圧空間121に排水される。
【0062】
これにより、排気管331を介して減圧空間121の排気を行うことにより、複数の集水層21のうち1つの層もしくは複数の層を適宜選択し、選択した集水層21にのみ負圧を作用させることができる。
【0063】
≪第3の実施の形態:負圧作用層選択機構100c≫
図7で示す土壌排水装置1に設けた負圧作用層選択機構100cは、第2の実施の形態で用いた仕切り壁122に代えて、貯水槽内31の空間を高さ方向に分割する仕切り床132を採用したものである。したがって、図7の時点で、3層の集水層21各々に対応する減圧空間131は、高さ方向に独立して設けられている。
【0064】
そして、第2の実施の形態と同様に、貯水槽31のすべての貫通孔32にはストレーナー321が設けられ、高さ方向に仕切られた各減圧空間131にはそれぞれ、排水装置34が設置されているとともに、排気管331が設けられている。
【0065】
これにより、第2の実施の形態と同様に、排気管331を介して減圧空間131の排気を行うことにより、複数の集水層21のうち1つの層もしくは複数の層を適宜選択し、選択した集水層21にのみ負圧を作用させることができる。
【0066】
≪第2及び第3の実施の形態:土壌排水装置の施工手順≫
上記の負圧作用層選択機構100b、100cを備えた土壌排水装置1を施工する手順を、図7で示す負圧作用層選択機構100cを事例に挙げ、以下に図8を参照しつつ説明する。
【0067】
まず、図8(a)で示すように、埋立領域10の所定位置に負圧作用設備3を設置する。負圧作用設備3の貯水槽31には、すべての貫通孔32にストレーナー321を設置するとともに、高さ方向に分割された減圧空間131各々に、排水装置34と排気管331を設置しておく。
【0068】
次に、図8(b)で示すように、貯水槽31に設けた最下の貫通孔32を埋設できる高さまで、1層目の集水層21を敷設したのち、大気開放状態にある集水層21上に浚渫土を投下する。集水層21の表面全面及び周縁部を被覆したところで、1層目の集水層21と対向する貫通孔32が設けられた減圧空間131の排気を行うとともに、揚水ポンプ342を稼働させる。
【0069】
これにより第1の実施の形態と同様に、浚渫土層Sを1層目の集水層21上に堆積させる作業と、投下した浚渫土層S中の間隙水を強制的に排出する作業を、ほぼ同時に開始し、以降、両作業を並行して進行させることができる。
【0070】
堆積した浚渫土層Sが所定の高さに到達したのち、図8(c)で示すように、浚渫土層Sの上面に2層目の集水層21を敷設する作業を開始する。なお、浚渫土層Sの上面には、2層目の集水層21と対向する貫通孔32周辺にくぼみ21aを設けておく。また、2層目の集水層21を敷設する際には、この貫通孔32の周囲を高く盛っておく。
【0071】
これにより、2層目の集水層21に対向する貫通孔32の周囲に、拡幅部22を形成することができる。なお、2層目の集水層21を敷設する作業中も、1層目の集水層21を利用して敷設済みの浚渫土層Sの間隙水を強制的に排出する作業を継続する。
【0072】
図8(d)で示すように、2層目の集水層21が敷設され、その上面に投下された浚渫土層S2で集水層21の表面全面及び周縁部が被覆されたところで、2層目の集水層21と対向する貫通孔32が設けられた減圧空間131の排気を行うとともに、揚水ポンプ342を稼働させる。
【0073】
こうして、2層目の集水層21に隣接する浚渫土層Sに負圧が作用し、間隙水は2層目の集水層21に対応した減圧空間131に排出されるとともに、揚水ポンプ342で揚水される。このような作業を、最上段の浚渫土層Sが所定の高さに到達するまで繰り返す。
【0074】
これにより、負圧を作用させる集水層21を1層目から順に選択し、最終的には、集水設備2に設けたすべての集水層21が選択され、浚渫土層S全体に負圧を作用させ、間隙水を排水することができる。
【0075】
また、複数の集水層21のうち、例えば、2層目の集水層21を利用して、間隙水の排水作業を行いたい場合には、図7で示すように、2層目の集水層21と対向する貫通孔32を有する減圧空間131を排気するとともに、揚水ポンプ342を稼働させればよい。こうすると、2層目の集水層21のみが選択され、これに隣接する浚渫土層Sにのみ効率よく負圧を作用させて、間隙水を早急に排出させることができる。
【0076】
≪第4の実施の形態:負圧作用層選択機構100d≫
図9で示す土壌排水装置1に設けた負圧作用層選択機構100dは、第3の実施の形態で用いた仕切り床132に代えて、開閉蓋143を有する蓋付き仕切り床142により貯水槽31内を高さ方向に分割したものである。なお、第2及び第3の実施の形態と同様に、貫通孔32にはストレーナー321が設けられている。
【0077】
蓋付き仕切り床142は、第3の実施の形態とは異なり、開閉蓋143を開状態とすることにより、高さ方向に分割された減圧空間141を連通させることができる。このため、排水装置34の揚水ポンプ342は、貯水槽31内の最下の減圧空間141に設けることとし、揚水管341は、すべての蓋付き仕切り床142を貫通して設けられている。
【0078】
また、減圧装置33の排気管331も、すべての蓋付き仕切り床142を貫通し、開口が最下の減圧空間141内に配置されている。これにより、蓋付き仕切り床142すべての開閉蓋143を閉状態で真空ポンプ332を稼働させると、最下の減圧空間141のみが減圧される。また、最下の蓋付き仕切り床142から順に開閉蓋143を開状態とすることで、各減圧空間141を下方から順次連通させつつ、減圧することができる。
【0079】
≪第4の実施の形態:土壌排水装置の施工手順≫
上記の負圧作用層選択機構100dを備えた土壌排水装置1を施工する手順を、以下に図10を参照しつつ説明する。
【0080】
まず、図10(a)で示すように、埋立領域10の所定位置に負圧作用設備3を設置する。負圧作用設備3の貯水槽31には、貫通孔32にストレーナー321を設置するとともに、最下の減圧空間141に、排水装置34と排気管331を設置する。このとき、すべての蓋付き仕切り床142の開閉蓋143を閉状態にしておく。
【0081】
次に、図10(b)で示すように、貯水槽31に設けた最下の貫通孔32を埋設できる高さまで、1層目の集水層21を敷設する。次に、大気開放状態にある集水層21上に浚渫土を投下する。集水層21の表面全面及び周縁部を被覆したところで、1層目の集水層21と対向する貫通孔32が設けられた減圧空間141の排気を行うとともに、揚水ポンプ342を稼働させる。
【0082】
これにより第1~第3の実施の形態と同様に、浚渫土層Sを1層目の集水層21上に堆積させる作業と、投下した浚渫土層S中の間隙水を強制的に排出する作業を、ほぼ同時に開始し、以降、両作業を並行して進行させることができる。
【0083】
堆積した浚渫土層Sが所定の高さに到達したのち、図10(c)で示すように、浚渫土層Sの上面に2層目の集水層21を敷設する作業を開始する。なお、2層目の集水層21には、貫通孔32の周囲に拡幅部22形成しておく。また、2層目の集水層21を敷設する作業中も、1層目の集水層21を利用して敷設済みの浚渫土層Sの間隙水を強制的に排出する作業を継続する。
【0084】
2層目の集水層21が敷設され、その上面に投下された浚渫土層S2で集水層21の表面全面及び周縁部が被覆されたところで、図10(d)で示すように、2層目の集水層21と対向する貫通孔32が設けられた減圧空間131の下側に位置する蓋付き仕切り床142の開閉蓋143を開状態にする。
【0085】
これにより、1層目と2層目の集水層21を介してこれらと隣接する浚渫土層Sに負圧が作用し、間隙水は貯水槽31に排水される。間隙水は、最下の減圧空間141まで流下するから、揚水ポンプ342で揚水することができる。
【0086】
上記の作業を、最上段の浚渫土層Sが所定の高さに到達するまで繰り返す。これにより、真空ポンプ332の排気対象となる減圧空間141が順次上方に追加され、最終的には、集水設備2に設けたすべての集水層21が選択され、浚渫土層S全体に負圧を作用させ、間隙水を排水することができる。
【0087】
≪第5の実施の形態:負圧作用層選択機構100e≫
図11(a)で示す土壌排水装置1に設けた負圧作用層選択機構100eは、揚水ポンプ342の上下に設けられて対をなし、貯水槽31を閉塞することの可能な上部パッカー152および下部パッカー153と、これらを利用して形成される減圧空間151とを備えている。なお、第2~第4の実施の形態と同様に、貯水槽31のすべての貫通孔32には、ストレーナー321が設けられている。
【0088】
上部パッカー152は、図11(b)(c)で示すように、略ドーナツ状に膨張する形状を有し、膨張すると内周面で揚水管341を押圧するとともに外周面で貯水槽31の内周面を押圧し、収縮時には揚水管341に沿って上下方向に移動自在に設けられている。
【0089】
下部パッカー153は、図11(c)(d)で示すように、略円盤状に膨張する形状を有しており、膨張すると外周面で貯水槽31の内周面を押圧し、収縮時には揚水ポンプ342の下部から垂下される。
【0090】
なお、上部パッカー152には、排気管331が貫通されており、その先端開口が上部パッカー152と下部パッカー153との間に配置されている。これにより、図11(b)で示すように、上部パッカー152及び下部パッカー153の両者を膨張させると、これらに挟まれた空間に減圧空間151が形成される。
【0091】
また、図11(c)で示すように、下部パッカー153のみを膨張させると、貯水槽31の下部パッカー153で仕切られた上方側に減圧空間151が形成される。そして、図11(d)で示すように、上部パッカー152のみを膨張させると、貯水槽31の上部パッカー152で仕切られた下方側に減圧空間151が形成される。
【0092】
上記のいずれの手段により貯水槽31内に減圧空間151を形成する場合にも、上部パッカー152を揚水管341に沿って上下移動させる、もしくは揚水管341を介して揚水ポンプ342を上下させることにより、減圧空間151の位置や高さ範囲を適宜変更できる。
【0093】
したがって、貯水槽31内で上部パッカー152および下部パッカー153を適宜移動させ、膨張または収縮させることにより、複数の集水層21のうち1つの層もしくは複数の層を適宜選択し、選択した集水層21にのみ負圧を作用させることができる。
【0094】
≪第5の実施の形態:土壌排水装置の施工手順≫
上記の負圧作用層選択機構100eを備えた土壌排水装置1を施工する手順を、以下に図12および図13を参照しつつ説明する。
【0095】
まず、図12(a)で示すように、埋立領域10の所定位置に負圧作用設備3を設置する。負圧作用設備3の貯水槽31には、貫通孔32にストレーナー321を設置するとともに、上部パッカー152及び下部パッカー153を設けた排水装置34と、上部パッカー152を貫通させた排気管331とを設置しておく。
【0096】
このとき、揚水ポンプ342を貯水槽31の底部近傍に配置し、上部パッカー152を、最下の貫通孔32の上方で膨張させる。こうして、貯水槽31には底部と上部パッカー152との間に、1層目の集水層21と対向する貫通孔32を有する減圧空間151を設けておく。
【0097】
次に、図12(b)で示すように、貯水槽31に設けた最下の貫通孔32を埋設できる高さまで、1層目の集水層21を敷設したのち、大気開放状態にある集水層21上に浚渫土を投下する。集水層21の表面全面及び周縁部を被覆したところで、1層目の集水層21と対向する貫通孔32が設けられた減圧空間151の排気を行うとともに、揚水ポンプ342を稼働させる。
【0098】
これにより第1~第4の実施の形態と同様に、浚渫土層Sを1層目の集水層21上に堆積させる作業と、投下した浚渫土層S中の間隙水を強制的に排出する作業を、ほぼ同時に開始し、以降、両作業を並行して進行させることができる。
【0099】
堆積した浚渫土層Sが所定の高さに到達したのち、図12(c)で示すように、浚渫土層Sの上面に2層目の集水層21を敷設する作業を開始する。なお、2層目の集水層21には、貫通孔32の周囲に拡幅部22形成しておく。また、2層目の集水層21を敷設する作業中も、1層目の集水層21を利用して敷設済みの浚渫土層Sの間隙水を強制的に排出する作業を継続する。
【0100】
図12(d)で示すように、2層目の集水層21が敷設され、その上面に投下された浚渫土層S2での集水層21の表面全面及び周縁部が被覆されたところで、真空ポンプ332による排気作業を一旦停止する。そののち、上部パッカー152を揚水管431に沿って、2層目の集水層21に対向する貫通孔32の上方まで移動させる。
【0101】
この位置で、上部パッカー152を膨張させると、上部パッカー152の下方に形成される減圧空間151には、1層目および2層目の集水層21が対向する貫通孔32が配置される。この状態で真空ポンプ332を作動させ減圧空間151を排気する。これにより、1層目及び2層目の集水層21に隣接する浚渫土層Sに負圧が作用し、間隙水が減圧空間151に強制的に排出され、揚水ポンプ342で揚水される。
【0102】
上記の作業を、最上段の浚渫土層Sが所定の高さに到達するまで繰り返す。これにより、貯水槽31内の減圧空間151を順次上方へ延長し、最終的には、集水設備2に設けたすべての集水層21が選択され、浚渫土層S全体に負圧を作用させ、間隙水を排水することができる。
【0103】
なお、例えば、3層目の集水層21と浚渫土層Sとを積層する作業中に、1層目及び2層目の集水層21から間隙水の流入が見られなくなった場合、真空ポンプ332による排気作業を一旦停止する。そして、図13で示すように、上部パッカー152を揚水管431に沿って上昇させ、3層目の集水層21が対向する貫通孔32の上方近傍まで移動させる。
【0104】
また、揚水管341を利用して揚水ポンプ342を上昇させ、下部パッカー153を3層目の集水層21が対向する貫通孔32の下方近傍まで移動させる。この位置で、上部パッカー152と下部パッカー153を膨張させると、両者の間に減圧空間151が形成される。この減圧空間151を排気するとともに、揚水ポンプ342を稼働させると、3層目の集水層21のみが選択され、これに隣接する浚渫土層Sにのみ効率よく負圧を作用させて、間隙水を早急に排出させることができる。
【0105】
上述する土壌排水装置1によれば、作業状況に応じて、浚渫土層S2で表面全面及び周縁部が被覆された集水層21のみを利用して、敷設済みもしくは敷設途中の浚渫土層Sに効率よく負圧を作用させることができる。また、浚渫土層Sごとに、その状態に応じて負圧を作用させる時間を長期化する、もしくは中断する等、圧密促進に係る作業を調整でき、処理対象となる浚渫土全体を均質な改良土とすることが可能となる。
【0106】
さらに、集水設備2を施工しながら、敷設済みもしくは敷設途中の浚渫土層Sに負圧を作用させ間隙水を強制的に排出できるため、土壌排水装置1を施工したのちに引き続き実施する浚渫土層Sから間隙水を強制排出する作業時間を大幅に削減でき、浚渫土の圧密促進に係る工期を大幅に短縮することが可能となる。
【0107】
特に、海域などの水域で行う埋立て工事では、周囲の海水等を引き込むことなく効率よく浚渫土層Sに負圧を作用させることができ、埋立工事の工期短縮及工費削減に寄与することが可能となる。
【0108】
本発明の土壌排水装置1及び土壌排水装置1の施工方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0109】
例えば、本実施の形態では、負圧作用設備3に設ける負圧作用層選択機構の事例を、第1~第5の実施の形態に挙げたが、これに限定するものではない。例えば、図14で示す負圧作用層選択機構100fのように、ストレーナー321が設けられた貫通孔32を閉塞可能な開閉装置162のみを設けた簡素な構成としてもよい。
【0110】
なお、開閉装置162には、図14で示すような、貯水槽31の内周面を上下方向に摺動可能な筒体等を採用するとよい。また、この開閉装置162なす筒体は、周方向に回転することにより、ストレーナー321が設けられた貫通孔32を開閉する構成としてもよい。さらには、図15で示すように、開閉装置162を電磁バルブを設けた筒体とし、電磁バルブによりストレーナー321が設けられた貫通孔32の開閉を行うなどしてもよい。
【0111】
また、負圧作用設備3は、図16で示すように、集水設備2に対して複数個所に設ける構成としてもよい。この場合には、減圧装置33を稼働させて浚渫土層Sに負圧を作用させた際、その範囲が一部重複するようにして設けるとよい。
【符号の説明】
【0112】
1 土壌排水装置
2 集水設備
21 集水層
22 拡幅部
3 負圧作用設備
31 貯水槽
32 貫通孔
321 ストレーナー
33 減圧装置
331 排気管
332 真空ポンプ
34 排水装置
341 揚水管
342 揚水ポンプ

10 埋立領域
101 埋立地盤
S 浚渫土層(処理対象土層)

100a 負圧作用層選択機構
111 開閉装置
112 排水部材
100b 負圧作用層選択機構
121 減圧空間
122 仕切り壁(仕切り部材)
100c 負圧作用層選択機構
131 減圧空間
132 仕切り床(仕切り部材)
100d 負圧作用層選択機構
141 減圧空間
142 蓋付き仕切り床(仕切り部材)
143 開閉蓋
100e 負圧作用層選択機構
151 減圧空間
152 上部パッカー(仕切り部材)
153 下部パッカー(仕切り部材)
100f 負圧作用層選択機構
161 減圧空間
162 開閉装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16