(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】配線部材
(51)【国際特許分類】
H01B 7/40 20060101AFI20240130BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240130BHJP
H01B 7/08 20060101ALI20240130BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20240130BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
H01B7/40 307Z
H02G3/04
H01B7/08
H01B7/00 301
B60R16/02 620Z
(21)【出願番号】P 2020073371
(22)【出願日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100103229
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】黄 強翔
(72)【発明者】
【氏名】水野 芳正
(72)【発明者】
【氏名】荒巻 心優
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-308740(JP,A)
【文献】実開平05-046608(JP,U)
【文献】特許第6579227(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/40
H02G 3/04
H01B 7/08
H01B 7/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートと、
前記シートに固定された保持部材と、
前記保持部材に保持された第1線状伝送部材と、
を備え、
前記保持部材は溝と前記溝の開口部の幅寸法を狭める突起とが形成された保持部を含み、
前記溝に前記第1線状伝送部材が収められて
おり、
前記シートは、前記第1線状伝送部材の曲げに追従可能な可撓性を有し、
前記保持部材は可撓性を有しない、配線部材。
【請求項2】
請求項1に記載の配線部材であって、
前記シートに融着された第2線状伝送部材をさらに備える、配線部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の配線部材であって、
前記保持部材は前記シートに融着されている、配線部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記第1線状伝送部材は、被覆層が第1の樹脂材料によって構成された線状伝送部材を含み、
前記シートのうち前記第1線状伝送部材が配置される面は前記第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料によって構成されている、配線部材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記保持部材が前記シートの幅方向に複数設けられている、配線部材。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記溝の側壁部の先端部が熱変形されて前記突起が形成されている、配線部材。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の配線部材であって、
前記第1線状伝送部材の長手方向に沿って間隔をあけた複数箇所に前記保持部材が設けられ、前記複数箇所の前記保持部材が1つの前記シートに固定されている、配線部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、シート状に形成された機能性外装部材に電線が溶着されたワイヤーハーネスを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の種類の電線がシート状の機能性外装部材に簡易に固定されることが望まれている。
【0005】
そこで、線状伝送部材の種類を問わず線状伝送部材がシートに簡易に固定されることを可能にする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の配線部材は、シートと、前記シートに固定された保持部材と、前記保持部材に保持された第1線状伝送部材と、を備え、前記保持部材は溝と前記溝の開口部の幅寸法を狭める突起とが形成された保持部を含み、前記溝に前記第1線状伝送部材が収められている、配線部材である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、線状伝送部材の種類を問わず線状伝送部材がシートに簡易に固定されることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は実施形態1にかかる配線部材を示す概略平面図である。
【
図2】
図2は
図1のII-II線に沿って切断された断面図である。
【
図3】
図3は実施形態1にかかる配線部材を示す分解平面図である。
【
図4】
図4は突起が形成される様子を示す説明図である。
【
図5】
図5は実施形態2にかかる配線部材を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示の配線部材は、次の通りである。
【0011】
(1)シートと、前記シートに固定された保持部材と、前記保持部材に保持された第1線状伝送部材と、を備え、前記保持部材は溝と前記溝の開口部の幅寸法を狭める突起とが形成された保持部を含み、前記溝に前記第1線状伝送部材が収められている、配線部材である。第1線状伝送部材はシートに固定された保持部材に保持されている。保持部に突起が形成されているため、第1線状伝送部材は溝から抜けにくい。これらより、線状伝送部材は種類を問わず、シートに簡易に固定できる。
【0012】
(2)(1)の配線部材において、前記シートに融着された第2線状伝送部材をさらに備えていてもよい。これにより、配線部材において第2線状伝送部材がシートに直接保持される。
【0013】
(3)(1)又は(2)の配線部材において、前記保持部材は前記シートに融着されていてもよい。これにより、配線部材においてシートと保持部材とを固定する部材が省略できる。
【0014】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの配線部材において、前記第1線状伝送部材は、被覆層が第1の樹脂材料によって構成された線状伝送部材を含み、前記シートのうち前記第1線状伝送部材が配置される面は前記第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料によって構成されていてもよい。これにより、シートに融着されにくい第1線状伝送部材が保持部材を介してシートに固定される。
【0015】
(5)(1)から(4)のいずれか1つの配線部材において、前記保持部材が前記シートの幅方向に複数設けられていてもよい。これにより、配線部材が長手方向に沿う軸回りに曲げられた際、シートが保持部材の間で曲がりやすくなり、保持部材の曲げが抑制される。これにより、配線部材が長手方向に沿う軸回りに曲げられた際、保持部材から線状伝送部材が抜けにくくなる。
【0016】
(6)(1)から(5)のいずれか1つの配線部材において、前記溝の側壁部の先端部が熱変形されて前記突起が形成されていてもよい。これにより、突起形成前の保持部材の形状を簡易にできる。
【0017】
(7)(1)から(6)のいずれか1つの配線部材において、前記第1線状伝送部材の長手方向に沿って間隔をあけた複数箇所に前記保持部材が設けられ、前記複数箇所の前記保持部材が1つの前記シートに固定されていてもよい。これにより、シートによって複数の保持部材が位置決めされる。また、第1線状伝送部材の全体にわたって保持部材が設けられる場合と比べて保持部材が設けられる領域を小さくできる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
[実施形態1]
以下、実施形態1にかかる配線部材10について説明する。
図1は実施形態1にかかる配線部材10を示す概略平面図である。
図2は
図1のII-II線に沿って切断された断面図である。
図3は実施形態1にかかる配線部材10を示す分解平面図である。
【0020】
配線部材10はシート20と保持部材30と複数の線状伝送部材40とを備える。
【0021】
シート20は融着層21を含む。ここではシート20は融着層21と付加層22との2層構造を有する。シート20は、1層構造を有していてもよいし、3層以上の構造を有していてもよい。
【0022】
融着層21は樹脂材料、好ましくは熱可塑性樹脂材料を含む。融着層21の樹脂材料が軟化して融着相手に融着される。かかる樹脂材料の種類は特に限定されるものではなく、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等を採用することができる。融着層21の一方の表面がシート20において保持部材30及び一部の線状伝送部材40に接する面とされる。
【0023】
融着層21の構造は特に限定されるものではない。例えば融着層21は一様充実断面を有するシート(非発泡シート又はソリッドシートなどとも呼ばれる)であってもよい。また例えば、融着層21は、発泡シート等であることも考えられる。また例えば、融着層21は、編布、織布又は不織布等の繊維材シートであることも考えられる。
【0024】
付加層22は融着層21とは異なる材料で形成されたり、異なる構造を有したりする。付加層22は融着層21にある機能を高めたり、融着層21にない機能をシート20に追加したりする。付加層22を構成する材料は、上記融着層21で説明された材料のほか、金属等などであってもよい。付加層22の構造は、上記融着層21で説明された構造のいずれかであってもよい。付加層22の一方の表面がシート20において線状伝送部材40とは反対側を向く面とされる。
【0025】
融着層21の他方の表面と付加層22の他方の表面とが接触しつつ、融着層21と付加層22とが固定されている。融着層21と付加層22との固定態様は特に限定されるものではないが、融着又は接着により固定されているとよい。例えば、融着層21及び付加層22の少なくとも一方が、繊維材シート又は発泡シートのように表面に空隙があるシートであると、空隙に樹脂材料又は接着剤が入り込んで固定されることができる。これによりいわゆるアンカー効果が発揮されて、融着層21及び付加層22が強固に固定される。
【0026】
ここでは融着層21が樹脂製のソリッドシートであり、付加層22が繊維材シートであるものとして説明される。ここでは融着層21と付加層22とが融着されているものとして説明される。つまり、融着層21の樹脂が流動性を有する状態で付加層22の繊維の間に入り込んだ後に硬化される。これにより、融着層21の樹脂が付加層22における繊維の間に入り込んだ状態が維持され、融着層21と付加層22とが強固に固定される。
【0027】
融着層21及び付加層22は同じ大きさ(同じ平面形状)に形成されている。融着層21及び付加層22は一方が他方よりも大きく形成されていてもよい。融着層21及び付加層22は接触する領域が全体的に固定されている。融着層21及び付加層22は接触する領域の一部のみが固定されていてもよい。
【0028】
シート20は柔らかい部材であってもよい。例えば、融着層21が軟質PVCなど軟質な樹脂を材料とする一様充実断面を有する樹脂層であり、付加層22がPETを材料とする不織布であるなどして、シート20が柔らかい部材とされる。例えば、シート20は線状伝送部材40の曲げに追従可能な可撓性を有してもよい。配線部材10はシート20が設けられた部分において厚み方向への曲げ(折目がシート20の主面に沿うような曲げ)が可能とされてもよい。もっとも、シート20は厚み方向に湾曲できない部材であってもよい。シート20は厚み方向に曲げられた際、割れずに屈曲することが可能な部材であってもよい。シート20は厚み方向に曲げられた際、割れずに屈曲することが不可能な部材であってもよい。
【0029】
保持部材30は保持部31を含む。保持部31には溝34と突起35とが形成されている。保持部31は底部32と複数の側壁部33とを含む。底部32及び複数の側壁部33は平板状に形成されている。複数の側壁部33は底部32の一方面上に突出するように形成される。複数の側壁部33は互いに平行に延びる。底部32と2つの側壁部33とに囲まれた部分が溝34とされる。突起35は側壁部33の先端部に形成されている。突起35は溝34の開口部の幅寸法を狭める。
【0030】
保持部材30はシート20に固定されている。保持部材30はシート20に融着されている。ここでは底部32の他方面が融着層21と接する。底部32の他方面と融着層21とが融着されている。底部32の他方面が全面的に融着層21に融着されてもよい。底部32の他方面の一部が融着層21に融着されていてもよい。
【0031】
保持部材30は少なくとも1つ設けられている。ここでは、1つのシート20に複数の保持部材30が設けられている。1つの保持部材30はシート20よりも小さく形成されている。保持部材30の幅寸法はシート20の幅寸法よりも小さい。保持部材30の長さ寸法はシート20の長さ寸法よりも小さい。
【0032】
複数の保持部材30はすべて同じ形状に形成されていてもよい。複数の保持部材30のうち一部の保持部材30が他の一部の保持部材30と異なる形状に形成されていてもよい。例えば、複数の保持部材30のうち一部の保持部材30において溝34の数が他の一部の保持部材30の溝34の数と異なっていてもよい。
【0033】
図2に示す例では1つの保持部材30に4つの溝34が設けられている。1つの保持部材30に設けられた溝34の数は如何なる数であってもよく、1つから3つであってもよいし、5つ以上であってもよい。
【0034】
複数の線状伝送部材40は、それぞれ電気又は光等を伝送する線状の部材である。例えば、線状伝送部材40は、芯線と芯線の周囲の被覆とを有する一般電線であってもよいし、シールド線、電気ケーブル、エナメル線、ニクロム線、光ファイバケーブル等であってもよい。各線状伝送部材40は、伝送線本体41と被覆層42とを有する。
【0035】
伝送線本体41は電気又は光を伝送する部分である。伝送線本体41は、電線における導体芯線に相当し、光ファイバケーブルにおけるコア及びクラッドに相当する。各被覆層42は伝送線本体41を覆う。被覆層42は樹脂材料等が伝送線本体41の周囲に押出被覆されるなどして形成される。かかる樹脂材料の種類は特に限定されるものではなく、PVC、PE、PP、PET等を採用することができる。
【0036】
電気を伝送する線状伝送部材40としては、各種信号線、各種電力線であってもよい。電気を伝送する線状伝送部材40の一部等は、信号又は電力を空間に対して送る又は空間から受けるアンテナ、コイル等として用いられてもよい。また、線状伝送部材40は、単一の線状物であってもよいし、複数の線状物の複合物(ツイスト線、複数の線状物を集合させてこれをシースで覆ったケーブル等)であってもよい。線状伝送部材40がケーブルの場合、シースも被覆層42に含まれる。
【0037】
複数の線状伝送部材40は、車両における部品同士を接続する部材であることが想定される。線状伝送部材40の端部はシート20から延出して、シート20の外方に位置する。線状伝送部材40において端部を除く中間部がシート20上に配置されている。線状伝送部材40の端部には、例えばコネクタCが設けられる。このコネクタCが相手側部品に設けられたコネクタと接続されることで、線状伝送部材40が相手側部品に接続される。つまり、本配線部材10は、車両等において各種部品同士を電気的に(或は光通信可能に)接続する配線部材10として用いられる。線状伝送部材40の端部が、シート20上に位置していてもよい。コネクタCのコネクタハウジングが、シート20に固定されていてもよい。
【0038】
複数の線状伝送部材40は第1線状伝送部材40A及び第2線状伝送部材40Bを含む。第1線状伝送部材40Aと第2線状伝送部材40Bとはシート20に対する固定態様が異なる。具体的には第1線状伝送部材40Aは保持部材30に保持されている。溝34に第1線状伝送部材40Aが収められている。第1線状伝送部材40Aは溝34に対して突起35よりも底部32側に収められている。これにより、溝34から第1線状伝送部材40Aが外れることが突起35によって抑制される。第2線状伝送部材40Bはシート20に融着されている。融着層21は第2線状伝送部材40Bに接する。融着層21は第2線状伝送部材40Bにおける最も外側の被覆層42に融着される。
【0039】
第1線状伝送部材40Aの被覆層42は第1の樹脂材料によって構成されている。シート20の融着層21は第1の樹脂材料とは異なる第2の樹脂材料によって構成されている。ここでは第2線状伝送部材40Bの被覆層42も融着層21と同じ第2の樹脂材料によって構成されている。ここでは保持部材30も融着層21と同じ第2の樹脂材料によって構成されている。第1の樹脂材料と第2の樹脂材料との組み合わせは異なる樹脂材料の組み合わせであれば如何なる組み合わせであってもよい。例えば、第1の樹脂材料がPVCであり、第2の樹脂材料がPEなどであってもよい。また例えば、第1の樹脂材料がPEであり、第2の樹脂材料がPVCなどであってもよい。
【0040】
保持部材30は可撓性を有しない部材であってもよい。保持部材30は底部32が湾曲するような弾性変形が不可能な剛性を有していてもよい。例えばシート20及び被覆層42が可撓性を有する柔らかい部材であり、保持部材30はシート20及び被覆層42よりも硬い部材であってもよい。保持部材30と、保持部材30とは硬さの異なる及び融着層21及び被覆層42が同じ種類の樹脂材料によって形成される場合、例えば以下のように形成される。すなわち、樹脂材料の硬さを変える手法として、樹脂材料の種類に応じて周知の手法を含む手法が採用可能である。具体的には、例えば、PVCの場合、添加される可塑剤の量などを変えることによって軟質PVCと硬質PVCとが得られることが知られている。硬質PVCは軟質PVCよりも硬い。融着層21及び被覆層42に軟質PVCが用いられ、保持部材30に硬質PVCが用いられることによって、保持部材30がシート20及び被覆層42よりも硬くなる。また例えば、樹脂材料がPEの場合、低密度PEは高密度PEよりも柔らかいことが知られている。融着層21及び被覆層42に低密度PEが用いられ、保持部材30に高密度PEが用いられることによって、保持部材30がシート20及び被覆層42よりも硬くなる。
【0041】
各図においてシート20と第2線状伝送部材40Bとが融着された部分が融着部WPとして示されている。同様に、シート20と保持部材30とが固定された部分が固定部FPとして示されている。ここではシート20と保持部材30とが融着されている。このため固定部FPも融着部である。
【0042】
かかる融着状態を形成する手段は特に限定されるものではなく、超音波融着、加熱加圧融着、熱風融着、高周波融着など種々の融着手段を採用することができる。またこれらの手段によって融着の状態が形成されると、融着部WPはその手段による融着固定の状態とされる。具体的には、例えば、超音波融着によって融着部WPが形成されている場合、融着部WPは、超音波融着部となる。
【0043】
融着部WPは線状伝送部材40の延在方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。融着部WPは線状伝送部材40の延在方向に沿って連続的に設けられていてもよい。固定部FPは保持部材30の幅方向に沿って全体にわたって設けられている。固定部FPは保持部材30の幅方向に沿って間隔をあけて複数設けられていてもよい。
【0044】
第1線状伝送部材40Aの長手方向に沿って間隔をあけた複数箇所に保持部材30が設けられている。複数箇所の保持部材30が1つのシート20に固定されている。保持部材30は第2線状伝送部材40Bのうち融着部WPの側方の位置に設けられている。保持部材30は第2線状伝送部材40Bのうち融着部WPが設けられない部分の側方に設けられていてもよい。
【0045】
第1線状伝送部材40A及び第2線状伝送部材40Bは1本又は複数本設けられる。第1線状伝送部材40A及び第2線状伝送部材40Bの数は如何なる数であってもよく、ここでは第1線状伝送部材40A及び第2線状伝送部材40Bの両方が複数設けられる。なお、
図1及び
図3において複数の線状伝送部材40を代表して経路の異なる4本の線状伝送部材40が記載されている。
【0046】
シート20及び保持部材30は複数の線状伝送部材40が並んだ状態に保持する。これにより配線部材10は扁平に形成されている。またシート20及び保持部材30は線状伝送部材40が所定の経路に沿って延びた状態に保持する。線状伝送部材40の経路は配線部材10が組付相手(例えば車両など)に組付けられたときに線状伝送部材40が組付相手に対して延びる経路である。これにより配線部材10が車両等に組付けられる際、線状伝送部材40が車両等における所定の経路に沿った状態となりやすい。
【0047】
図1に示すように、ここでは線状伝送部材40の経路は曲がり部43及び分岐部44を含む。曲がり部43は複数の線状伝送部材40が並行したまま曲がる部分である。分岐部44は一部の線状伝送部材40が他の一部の線状伝送部材40と異なる向きに延びるように分岐する部分である。ここでは一部の第1線状伝送部材40A及び第2線状伝送部材40Bが他の一部の第1線状伝送部材40A及び第2線状伝送部材40Bと分岐している。分岐部44において第1線状伝送部材40A及び第2線状伝送部材40Bの一方は分岐せずにまとまって延びていてもよい。第1線状伝送部材40Aと第2線状伝送部材40Bとが分岐していてもよい。分岐部44において第1線状伝送部材40A及び第2線状伝送部材40Bの一方の少なくとも1本が分岐していればよい。
【0048】
ここではシート20の形状は線状伝送部材40の経路に沿った形状に形成される。シート20は線状伝送部材40の曲がる経路に応じて曲がる部分を有する。つまり、曲がり部43においてシート20も曲がっている。シート20は線状伝送部材40の分岐する経路に応じて分岐する部分を有する。つまり、分岐部44においてシート20も分岐している。シート20は1つの大きな方形状などに形成されていてもよい。
【0049】
複数の線状伝送部材40が交差する交差部45、46が設けられている。ここでは交差部45、46は分岐交差部45と配置替え交差部46とを含む。分岐交差部45は一部の線状伝送部材40が他の一部の線状伝送部材40と分岐するために交差する部分である。分岐交差部45は分岐部44に設けられる。配置替え交差部46は並行する線状伝送部材40の並び順を変えるために交差する部分である。配置替え交差部46は並行経路部に設けられる。配置替え交差部46は分岐部44に設けられてもよい。交差部45、46を構成する2本の線状伝送部材40の組み合わせは如何なる組み合わせであってもよい。交差部45、46において第1線状伝送部材40Aと第2線状伝送部材40Bとが交差していてもよい。交差部45、46において第1線状伝送部材40A同士または第2線状伝送部材40B同士が交差していてもよい。
【0050】
曲がり部43の両隣の位置に2つの保持部材30が設けられている。2つの保持部材30の間で複数の線状伝送部材40が曲がっている。分岐部44及び分岐交差部45を挟む位置に3つの保持部材30が設けられている。3つの保持部材30の間で、複数の線状伝送部材40が分岐及び交差している。配置替え交差部46の両隣の位置に2つの保持部材30が設けられている。2つの保持部材30の間で複数の線状伝送部材40が交差している。
【0051】
第1線状伝送部材40A及び第2線状伝送部材40Bはシート20上の少なくとも一部の区間において並行する。
図1に示す例では、第1線状伝送部材40A及び第2線状伝送部材40Bの並行区間はシート20上に配置される区間全体にわたっている。
【0052】
第1線状伝送部材40Aと第2線状伝送部材40Bとが並行している区間において、第1線状伝送部材40Aの数の方が多くてもよいし、第2線状伝送部材40Bの数の方が多くてもよいし、両者の数が同じであってもよい。
図2に示す例では、4本の第1線状伝送部材40Aと3本の第2線状伝送部材40Bとが並行している。
【0053】
並行する複数の第2線状伝送部材40B同士は間隔をあけて並行している。第2線状伝送部材40B同士の間隔は第2線状伝送部材40Bの直径よりも小さい。第2線状伝送部材40B同士の間隔は第2線状伝送部材40Bの直径と同じかそれよりも大きくてもよい。
【0054】
突起35は溝34の側壁部33の先端が熱変形されて形成されている。突起35が形成される様子について
図4を交えて説明する。
図4は突起35が形成される様子を示す説明図である。
【0055】
図4において実線によって示される保持部材30は突起35が形成される前の保持部材30である。以下では、突起35が形成される前の保持部材30及び側壁部33は、突起35が形成された後の保持部材30及び側壁部33と区別するため、保持部材30S及び側壁部33Sと称されることがある。
【0056】
保持部材30Sの側壁部33Sには突起35が形成されていない。保持部材30Sにおいて側壁部33Sの高さが保持部材30の側壁部33の高さよりも高い。側壁部33は基端部から先端部に向けて同程度の太さで延びている。側壁部33の先端部の内向き面が溝34に線状伝送部材40を案内するための傾斜面とされていてもよい。側壁部33の先端部における溝34の幅寸法が底部32側における溝34の幅寸法よりも広がっていてもよい。保持部材30Sは樹脂を材料として押出成型又は射出成型等によって形成される。かかる樹脂材料の種類は特に限定されるものではなく、PVC、PE、PP、PET等を採用することができる。保持部材30が融着層21に融着される場合、樹脂材料は融着層21の樹脂材料と同じであることが好ましい。
【0057】
保持部材30Sの溝34に第1線状伝送部材40Aが収容される。この状態で、保持部材30Sの側壁部33Sの先端部が熱変形して
図4において仮想線によって示される突起35が形成されて保持部材30とされる。側壁部33Sの先端部は例えば溶解ヘッド80によって潰される。
【0058】
より詳細には、溶解ヘッド80は、複数の側壁部33Sの先端部に接触可能な先端面を有する。溶解ヘッド80はヒータ等の加熱部によって加熱される装置である。溶解ヘッド80は側壁部33Sを軟化可能な温度に加熱される。加熱された溶解ヘッド80が側壁部33Sの先端部に押し当てられる。すると、溶解ヘッド80によって側壁部33Sの先端部が軟化し、押し潰される。軟化して押潰された側壁部33の先端部は、両側の溝34の開口上方に押し広げられる。これにより、溝34の開口部を狭める突起35が形成される。これにより、第1線状伝送部材40Aが溝34に収容された状態で保持される。
【0059】
図2に示す例では隣り合う側壁部33の突起35同士は接触していない。このため、溝34は突起35の間にわずかに開口している。隣り合う側壁部33の突起35同士が接触していてもよい。溝34の開口部は突起35によって完全に塞がれていてもよい。突起35の突出量は例えば、以下のように設定される。すなわち、突起35の形成後に溝34から線状伝送部材40が外される際、保持部材30が塑性変形するように突起35の突出量が設定されていてもよい。つまり保持部材30の弾性変形の範囲内で溝34から線状伝送部材40が外されることが困難なように突起35の突出量が設定されていてもよい。これにより、溝34から線状伝送部材40が外れにくくなる。
【0060】
なお
図4に示す例では、1つの保持部材30に保持される複数の第1線状伝送部材40Aがすべて溝34に収められた状態で溶解ヘッド80が当てられている。第1線状伝送部材40Aの他端部の導出先が異なっていること等の理由により、複数の第1線状伝送部材40Aが溝34内に同時に配設されることが困難な場合がある。このような場合には、複数の第1線状伝送部材40Aが複数のグループに分割され、グループ別に配設作業が行われてもよい。例えば、
図4に示す4本の線状伝送部材40のうち2本の線状伝送部材40からなる第1グループと他の2本の線状伝送部材40からなる第2グループとが別々の作業タイミングで、溝34に順次配設されてもよい。また、この場合に、グループ別に突起35の形成作業が行われてもよい。さらに、この場合、第1グループの溝34と第2グループの溝34とにおいて突起35の位置が延在方向にずれていてもよい。つまり延在方向に沿った第1の位置において第1グループの線状伝送部材40が収められた側壁部33Sの先端部が熱変形されて第1グループ用の突起35とされる。また延在方向に沿って第1の位置とずれた第2の位置において第2グループの線状伝送部材40が収められた側壁部33Sの先端部が熱変形されて第2グループ用の突起35とされる。
【0061】
なお、シート20と第2線状伝送部材40Bとの融着作業と、シート20と保持部材30との固定作業と、突起35の形成作業とは任意の順番で行われることができる。これら3つの作業のうち、いずれか2つ又は3つの作業は同時に行われてもよい。
【0062】
<実施形態1の効果等>
以上のように構成された配線部材10によると、第1線状伝送部材40Aはシート20に固定された保持部材30に保持されている。保持部31に突起35が形成されているため、第1線状伝送部材40Aは溝34から抜けにくい。これらより、線状伝送部材40は種類を問わず、シート20に簡易に固定できる。また第2線状伝送部材40Bはシート20に融着されている。これにより、シート20に融着可能な線状伝送部材40はシート20に融着され、シート20に融着されにくい線状伝送部材40は保持部材30に保持されることによって、シート20に簡易に保持される。
【0063】
また保持部材30はシート20に融着されている。これにより、配線部材10においてシート20と保持部材30とを固定する部材が省略できる。
【0064】
また第1線状伝送部材40Aは被覆層42の樹脂材料がシート20の樹脂材料とは異なる材料である線状伝送部材40を含む。これにより、シート20に融着されにくい第1線状伝送部材40Aが保持部材30を介してシート20に固定される。
【0065】
また溝34の側壁部33の先端が熱変形されて突起35が形成されている。これにより、突起35が形成される前の保持部材30Sの形状を簡易にできる。また突起35が形成された後に溝34から線状伝送部材40が取り出されない場合、突起35を大きく形成することによって、溝34から線状伝送部材40が外れることが抑制される。
【0066】
また第1線状伝送部材40Aの長手方向に沿って間隔をあけた複数箇所に設けられた保持部材30が1つのシート20に固定されている。これにより、シート20によって複数の保持部材30が位置決めされる。また、第1線状伝送部材40Aの全体にわたって保持部材30が設けられる場合と比べて保持部材30が設けられる領域を小さくできる。
【0067】
[実施形態2]
実施形態2にかかる配線部材について説明する。
図5は実施形態2にかかる配線部材110を示す断面図である。なお、本実施形態の説明において、これまで説明したものと同様構成要素については同一符号を付してその説明を省略する。
【0068】
配線部材110においてシート20に対して保持部材30の設けられる位置が配線部材10とは異なる。具体的には配線部材110において保持部材30がシート20の幅方向に複数設けられている。これにより、
図5に示すように配線部材110が長手方向に沿う軸回りに曲げられた際、シート20が保持部材30の間で曲がりやすくなり、保持部材30の曲げが抑制される。これにより、配線部材110が長手方向に沿う軸回りに曲げられた際、保持部材30から線状伝送部材40が抜けにくくなる。
【0069】
図5に示す例では、シート20の幅方向に2つの保持部材30が設けられている。シート20の幅方向に3つ以上の保持部材30が設けられていてもよい。また
図5に示す例では、2つの保持部材30が同じ形状に形成されている。2つの保持部材30が異なる形状に形成されていてもよい。例えば2つの保持部材30において溝34の数が異なっていてもよい。
【0070】
また
図5に示す例では、2つの保持部材30の間に第2線状伝送部材40Bが位置している。2つの保持部材30の間に第2線状伝送部材40Bが入らないように、2つの保持部材30が隣り合って並んでいてもよい。また
図5に示す例では、保持部材30がシート20の両側縁部に位置している。保持部材30がシート20の一方側の縁部に位置し、第2線状伝送部材40Bが他方側縁部に位置していてもよい。保持部材30がシート20の中間部に位置し、第2線状伝送部材40Bがシート20の両側縁部に位置していてもよい。
【0071】
1つのシート20において、保持部材30が第1線状伝送部材40Aの延在方向に沿って間隔をあけて複数箇所に設けられる場合、複数箇所すべてにおいて幅方向に複数の保持部材30が設けられてもよい。複数箇所のうち一部の箇所において複数の保持部材30が設けられ、他の一部の箇所において幅方向に1つの保持部材30が設けられてもよい。
【0072】
[変形例]
これまで配線部材10、110が第2線状伝送部材40Bを備えるものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。配線部材10、110が第2線状伝送部材40Bを備えていなくてもよい。例えば、配線部材10、110における線状伝送部材40がすべて保持部材30に保持されていてもよい。また例えば、配線部材10、110において保持部材30に保持されない線状伝送部材40が融着以外の固定態様によってシート20に固定されていてもよい。かかる固定態様としては、例えば、シート20と線状伝送部材40との間に、接着剤又は両面粘着テープなどの介在部材を介した接着であってもよい。また例えば、縫い糸、ステープラ、片面粘着テープ又はシート20とは別のシートなどによって線状伝送部材をシート20に向けて押さえるものであってもよい。
【0073】
これまで保持部材30がシート20に融着されているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。保持部材30とシート20の固定態様は如何なる固定態様であってもよい。例えば、保持部材30とシート20とは接着剤又は両面粘着テープなどの接着部材を介して接着されていてもよい。また例えば保持部材30とシート20とは、ステープラなどの係止部材を介して固定されていてもよい。この場合、底部32の一部が側方に突出してフランジ部をなし、フランジ部とシート20とを貫通するように係止部材が係止されていてもよい。
【0074】
またこれまで溝34の側壁部33の先端が熱変形されて突起35が形成されているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。突起35は線状伝送部材40の挿入前に予め形成されていてもよい。この場合、溝34の開口部が線状伝送部材40を挿入可能な大きさに広がるように保持部31が弾性変形可能であると良い。また溝34の側壁部33の先端が熱変形されて突起35が形成されるにあたり、突起35が1つの側壁部33の両側に突出するように形成されていたが、このことは必須の構成ではない。突起35が1つの側壁部33の片側に突出するように形成されていてもよい。このような突起35は例えば側壁部33の先端部が加熱されて軟化した状態で一方側の溝34の上方に折り曲げられることによって形成されることができる。
【0075】
またこれまですべての溝34に第1線状伝送部材40Aが収容されているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。一部の溝34に第1線状伝送部材40Aが収容されていなくてもよい。またこれまで溝34に収容されている複数の第1線状伝送部材40Aがすべて同じ構造を有するものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。溝34に収容されている複数の第1線状伝送部材40Aの一部が他の一部とは異なる構造を有していてもよい。例えば、溝34に収容されている複数の第1線状伝送部材40Aは、太さの異なる細径の線状伝送部材と太径の線状伝送部材とを含んでいてもよい。
【0076】
またこれまで1つの溝34に1本の第1線状伝送部材40Aが収容されているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。1つの溝34に複数本の第1線状伝送部材40Aが収容されていてもよい。複数本の第1線状伝送部材40Aが1つの溝34に高さ方向(深さ方向)に並んで収容されていてもよい。複数本の第1線状伝送部材40Aが1つの溝34に幅方向に並んで収容されていてもよい。複数本の第1線状伝送部材40Aが1つの溝34に斜めに並んで収容されていてもよい。複数の溝34において、収容される第1線状伝送部材40Aの数が異なっていてもよい。
【0077】
またこれまですべての第1線状伝送部材40Aの被覆層42が融着層21の樹脂材料とは異なる樹脂材料によって構成されているものとして説明されたが、このことは必須の構成ではない。一部又は全部の第1線状伝送部材40Aの被覆層42が融着層21の樹脂材料と同じ樹脂材料によって構成されていてもよい。例えばツイスト線など融着層21に融着しにくい線状伝送部材40が保持部材30に保持されて第1線状伝送部材40Aとされてもよい。
【0078】
また第1線状伝送部材40Aの経路が分岐部44を有する場合、分岐部44の前後で並行する第1線状伝送部材40Aの数が変わり得る。この際、分岐部44の前後で保持部材30の形状は共通化されてもよい。分岐部44の一方側の経路においてシート20に融着された第2線状伝送部材40Bが、分岐部44の他方側の経路において保持部材30に収められていてもよい。
【0079】
また複数種類の配線部材において線状伝送部材40の数は、車種、グレード、オプション等によって変わり得る。この際、複数種類の配線部材間で保持部材30の形状は共通化されてもよい。配線部材の種類に応じて設けられたり設けられなかったりする線状伝送部材40が共通化された保持部材30に保持されてもよい。
【0080】
なお、上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0081】
10、110 配線部材
20 シート
21 融着層
22 付加層
30、30S 保持部材
31 保持部
32 底部
33、33S 側壁部
34 溝
35 突起
40 線状伝送部材
40A 第1線状伝送部材
40B 第2線状伝送部材
41 伝送線本体
42 被覆層
43 曲がり部
44 分岐部
45、46 交差部
80 溶解ヘッド
C コネクタ
WP 融着部
FP 固定部