(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】乗用草刈機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/68 20060101AFI20240130BHJP
A01D 34/64 20060101ALI20240130BHJP
A01D 34/81 20060101ALI20240130BHJP
B60K 13/04 20060101ALI20240130BHJP
F02B 77/11 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A01D34/68 L
A01D34/64 H
A01D34/81
A01D34/68 Z
B60K13/04 B
F02B77/11 D
F02B77/11 E
(21)【出願番号】P 2020089557
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2022-12-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【氏名又は名称】亀井 岳行
(72)【発明者】
【氏名】増田 龍太郎
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-033431(JP,A)
【文献】特開2014-185572(JP,A)
【文献】特開2016-104601(JP,A)
【文献】特開2015-085861(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0291524(US,A1)
【文献】特開2017-071262(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/00 - 34/90
A01D 42/00 - 43/077
B60K 13/04
F02B 77/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体(10)と、
前記車体(10)の前部に配置される運転席(2)と、
前記車体(10)の後部
でかつ前記運転席(2)の後方になる位置に配置されるエンジン(3)と、
前記車体(10)に取り付けられる草刈り装置(5)と、
前記エンジン(3)の上方に配置され、前記草刈り装置(5)で刈り取られた刈草を収容する集草容器(56)と、
前記運転席(2)
の後方でかつ前記エンジン(3)
の前方になる位置に配置される排気ガス浄化装置(6)と、
前記排気ガス浄化装置(6)に接近して通過するよう配策されるホース(8)と、
を備え、
前記運転席(2)と前記排気ガス浄化装置(6)との間に遮熱板(7)を設けて
おり、
前記遮熱板(7)は、前記ホース(8)と前記排気ガス浄化装置(6)との間に存在する追加部分(73)を有していることを特徴とする乗用草刈機。
【請求項2】
前記遮熱板(7)は、前記運転席(2)と前記排気ガス浄化装置(6)との間で上下の方向に延びて前記排気ガス浄化装置(6)の少なくとも上部と向き合う状態で配置される対向部分(71)と、前記排気ガス浄化装置(6)の上部の少なくとも一部を上方から覆う状態で配置される覆い部分(72)とを有していることを特徴とする請求項1に記載の乗用草刈機。
【請求項3】
前記ホース(8)は、燃料ホース(81)と油圧ホース(82)の一方又は双方であることを特徴とする請求項
1に記載の乗用草刈機。
【請求項4】
前記エンジン(3)の左右の方向の一方になる側方に、ラジエータ(38)と冷却ファン(39)を設け、
前記エンジン(3)から延びて前記排気ガス浄化装置(6)の一端部に接続される排気パイプ(36a)を、前記エンジン(3)と前記冷却ファン(39)の間を通過するように設け、
前記排気パイプ(36a)に接近して配置される第3のホース(8C)を設け、
前記排気パイプ(36a)と前記第3のホース(8C)の間に第2の遮熱板(90)を設けたことを特徴する請求項
1に記載の乗用草刈機。
【請求項5】
前記第3のホース(8C)は、油圧ホース(82C)とラジエータホース(85)との一方又は双方であることを特徴とする請求項4に記載の乗用草刈機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用して芝等の草刈り作業を行う乗用草刈機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ディーゼルエンジンを搭載した草刈機として、運転座席の後方にエンジンを備え、エンジンの上方にエアークリーナを設けるとともにエンジンの後方に排出ガス浄化装置を設けたうえで、運転座席とエアークリーナの間の領域をエアークリーナよりも上方に突き出すように延びるラジエータを設けた草刈機が知られている(特許文献1)。
この草刈機では、ラジエータを通り抜けた冷却風がエンジンルーム内に入り込んだ後にエンジンの上方を通過してエンジンルームの後方に流れ、これにより、エンジンの上方の熱気を押し流してエンジンルーム内の温度を下げることや高温になる排出ガス浄化装置の周辺の熱気を排出させることができる冷却風の経路が作りだされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の草刈機にあっては、エンジンの上方にエアークリーナや排気ガス浄化装置やラジエータの一部が存在するよう配置されているので重心が高くなり、しかも、それらの上方に例えば刈り取った草を収容する集草容器を配置しようとした場合にはさらに重心が高くなってしまい、走行が不安定になるおそれがある。
【0005】
そこで、本出願人は、エアークリーナとラジエータをエンジンの側方に配置し、排気ガス浄化装置をエンジンの前方に配置するレイアウトを採用して、重心を低くすることが可能な草刈機を開発している。
この開発中の草刈機によれば、そのレイアウトの採用によりコンパクトに重心を低くする構成を実現することが可能になるが、その一方で、排気ガス浄化装置から発生する熱の影響を、部品間の距離が縮まることも相俟って受けやすくなる傾向にある。
【0006】
本発明は、エンジンの上方に集草容器を配置するとともにエンジンの前方に排気ガス浄化装置を配置する場合であっても、その排気ガス浄化装置から発生する熱の影響を受けることを軽減できる乗用草刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記課題は、以下の手段により解決される。
【0008】
すなわち、請求項1に係る発明は、
車体(10)と、
前記車体(10)の前部に配置される運転席(2)と、
前記車体(10)の後部でかつ前記運転席(2)の後方になる位置に配置されるエンジン(3)と、
前記車体(10)に取り付けられる草刈り装置(5)と、
前記エンジン(3)の上方に配置され、前記草刈り装置(5)で刈り取られた刈草を収容する集草容器(56)と、
前記運転席(2)の後方でかつ前記エンジン(3)の前方になる位置に配置される排気ガス浄化装置(6)と、
前記排気ガス浄化装置(6)に接近して通過するよう配策されるホース(8)と、
を備え、
前記運転席(2)と前記排気ガス浄化装置(6)との間に遮熱板(7)を設けており、
前記遮熱板(7)は、前記ホース(8)と前記排気ガス浄化装置(6)との間に存在する追加部分(73)を有していることを特徴とする乗用草刈機である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の乗用草刈機において、前記遮熱板(7)は、前記運転席(2)と前記排気ガス浄化装置(6)との間で上下の方向に延びて前記排気ガス浄化装置(6)の少なくとも上部と向き合う状態で配置される対向部分(71)と、前記排気ガス浄化装置(6)の上部の少なくとも一部を上方から覆う状態で配置される覆い部分(72)とを有していることを特徴とする乗用草刈機である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の乗用草刈機において、前記ホース(8)は、燃料ホース(81)と油圧ホース(82)の一方又は双方であることを特徴とする乗用草刈機である。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の乗用草刈機において、前記エンジン(3)の左右の方向の一方になる側方に、ラジエータ(38)と冷却ファン(39)を設け、
前記エンジン(3)から延びて前記排気ガス浄化装置(6)の一端部に接続される排気パイプ(36a)を、前記エンジン(3)と前記冷却ファン(39)の間を通過するように設け、
前記排気パイプ(36a)に接近して配置される第3のホース(8C)を設け、
前記排気パイプ(36a)と前記第3のホース(8C)の間に第2の遮熱板(90)を設けたことを特徴する乗用草刈機である。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の乗用草刈機において、前記第3のホース(8C)は、油圧ホース(82C)とラジエータホース(85)との一方又は双方であることを特徴とする乗用草刈機である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明では、エンジン(3)の上方に集草容器(56)を配置するとともにエンジン(3)の前方に排気ガス浄化装置(6)を配置する乗用草刈機であっても、エンジン(3)と運転席(2)との間に遮熱板(7)が設けられているので、排気ガス浄化装置(6)から発生する熱が運転席(2)の方に移動することが遮熱板(7)によって遮られる。
したがって、この発明によれば、排気ガス浄化装置(6)から発生する熱の影響を少なくとも運転席(2)が受けることを、遮熱板(7)がない場合に比べると軽減することができる。
また、請求項1に記載の発明では、遮熱板(7)が追加部分(73)を有しているので、排気ガス浄化装置(6)に接近して通過するよう配策されるホース(8)が、排気ガス浄化装置(6)から発生する熱の影響を受けることが軽減されて保護される。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、遮熱板(7)が対向部分(71)と覆い部分(72)とを有しているので、排気ガス浄化装置(6)から発生する熱が運転席(2)の側に直接移動することや上方に立ち上がってから移動することが遮られ、その熱の影響を運転席(2)やその運転席(2)に座る運転者等が受けることを適切に軽減することができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、排気ガス浄化装置(6)に接近して通過するよう配策される燃料ホース(81)と油圧ホース(82)の一方又はその双方が、排気ガス浄化装置(6)から発生する熱の影響を受けることを軽減することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、排気ガス浄化装置(6)の一端部に接続される排気パイプ(36a)に接近して配置される第3のホース(8C)が、排気ガス浄化装置(6)から発生する熱の影響を受けることが軽減されて保護される。
請求項5に記載の発明によれば、油圧ホース(82C)とラジエータホース(85)との一方又は双方が、排気ガス浄化装置(6)から発生する熱の影響を受けることが軽減されて保護される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る乗用草刈機の左側面図である。
【
図2】
図1の乗用草刈機の一部を右斜め上の後方から見た状態で示す斜視図である。
【
図3】
図1の乗用草刈機の後部の一部を左側から見た状態で示す斜視図である。
【
図4】
図1の乗用草刈機の後部の一部を左斜め上の後方から見た状態で示す斜視図である。
【
図5】
図1の乗用草刈機の内部の一部を左側から見た状態で示す概要図である。
【
図6】
図1の乗用草刈機の内部の一部を上方から見た状態で示す斜視図である。
【
図7】
図1の乗用草刈機の内部の一部を左後方から見た状態で示す斜視図である。
【
図8】
図7の乗用草刈機の一部を一部切断して左斜め上の後方から見た状態で示す斜視図である。
【
図9】
図1の乗用草刈機の内部の一部を左斜め上の前方から見た状態で示す斜視図である。
【
図10】
図1の乗用草刈機の内部の一部を一部切断して左斜め上の後方から見た状態で示す斜視図である。
【
図11】
図10の乗用草刈機の内部の一部を一部切断して後方から見た状態で示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1から
図4には、本発明の実施形態に係る乗用草刈機1の全体又は一部が示されている。
乗用草刈機1は、前後の方向に走行可能な車体10を備えており、その車体10の前部および後部に前輪11,11と後輪12,12がそれぞれ設けられている。また、乗用草刈機1は、車体10の前部に運転席2が配置され、車体10の後部にエンジン3が配置されている。
【0019】
運転席2は、車体10の前部の上側に形成されるフロア部21の後方に配置されている。フロア部21には、その前部に配置されるステアリングコラム22と、ステアリングコラム22の左右に配置される操縦用の脚踏みペダル23や、ステアリングコラム22の後方に配置される運転席2となる座席24や、座席24の左右に配置される操作部25が設けられている。ステアリングコラム22には操舵用のステアリングホイール(ハンドル)26が設けられており、操作部25には操縦用の手動レバー27、図示しない操作盤等が設けられている。この乗用草刈機1では、ステアリングホイール26の左右への回転操作により後輪12,12が左右に操舵される。
【0020】
エンジン3は、
図4から
図6等に示されるように、車体10の後部のうち前側に存在する状態で配置されている。エンジン3としては、例えば、ディーゼルエンジンが使用される。
エンジン3は、その前方で下方になる位置に、エンジン3の動力を変速および分配して伝達する動力伝達ケース4が連結して配置されている。動力伝達ケース4は、例えばエンジン3の動力の一部を減速させて前輪11,11の駆動輪に伝達し、またその動力の一部を分配して後述する草刈り装置5に伝達するよう構成されている。
【0021】
動力伝達ケース4は、車体10の前後方向のほぼ中央部に配置されているが、実施の形態1における動力伝達ケース4は車体10の一部を構成している。
このため車体10は、動力伝達ケース4の前部に突出して取り付けられる、フロア部21を形成するフロアフレーム13や前輪11,11等を支持する左右の前方サイドフレーム14L,14Rを含めて構成されている。また車体10は、動力伝達ケース4の後部に突出して取り付けられる、エンジン3、後輪12,12を支持する左右の後方サイドフレーム15L,15Rやエンジン3の上方で後述する集草容器56等を支持する平面U字状の上部フレーム16等も含めて構成されている。
【0022】
前方サイドフレーム14L,14Rには、
図4や
図6等に示されるように、運転席2の左右両側に位置して立ち上がるよう配置される左右の枠フレーム17L,17Rや、枠フレーム17L,17Rの上部後端どうしを左右に横断するよう配置して連結する連結フレーム18が設けられている。また、上部フレーム16の前端部には、左右を横断するように配置される横断フレーム19が設けられている。上部フレーム16は、連結フレーム18の一部と後方サイドフレーム15L,15Rの一部に取り付け金具や柱フレーム等を介して下方から支持される状態で設けられている。
【0023】
エンジン3には、エアークリーナ32を通して吸気した空気を送る通常の吸気パイプ33と、排気ガス再循環(EGR)システム34を通して送られる循環吸気パイプ35とが接続されている。また、エンジン3には、排気ガス浄化装置6を通して排気ガスを排出する排気パイプ36が接続されている。さらに、このエンジン3は、吸気パイプ33と排気パイプ36を接近させた接近部に過給器37(
図4参照)が配置されている。
また、エンジン3は、左右の後方サイドフレーム15と上部フレーム16の間にわたって配置されるサイドカバー101で覆われている。またエンジン3は、その上部が、上部フレーム16に開閉可能に配置される上カバー102(
図3参照)で覆われている。さらにエンジン3は、
図1に示されるように、外装カバー105によっても外部から覆い隠されている。
図1における符号106はバッテリーを、
図7における符号322はプレエアークリーナを、符号332はプレエアークリーナ322からエアークリーナ32までを接続するパイプを、それぞれ示している。プレエアークリーナ322は、必須なものではなく、省略することが可能である。
【0024】
排気ガス浄化装置6は、ディーゼルエンジンからなるエンジン3から排気される排気ガスを浄化処理する装置である。実施の形態における排気ガス浄化装置6は、
図4から
図6等に示されるように、運転席2とエンジン3の間に配置されている。また、この排気ガス浄化装置6は、例えば動力伝達ケース4の上に、取り付け器具65を介して取り付けられている。
排気ガス浄化装置6は、円筒状の収容体61の内部に、酸化触媒(DOC)とディーゼル微粒子フィルター(DPF)を直列に連結させた状態で組み込むように配置して排気ガスを通過させる構造を有している。DOCは、排気ガス中の有害物質を酸化して無害化させる処理を行う。DPFは、排気ガスに含まれる粒状物質を捕集する処理を行う。また、排気ガス浄化装置6は、その一端部(右側端部)61bにエンジン3から延びる上流側の排気パイプ36aが接続され、その他端部(左側端部)61cに下流側の排気パイプ36bが接続されている。
【0025】
さらに、エンジン3は、その右の側方に、ラジエータ38と冷却ファン39が配置されている。冷却ファン39は、ラジエータ38のエンジン3と向き合う側に配置されており、ラジエータ38を通過させて外気を取り入れた後に冷却風としてエンジン3の側面部に吹き付けるようになっている。ラジエータ38と冷却ファン39は、左右の後方サイドフレーム15と上部フレーム16に図示しないブラッケット等の取付け具を介して取り付けられている。
【0026】
また、乗用草刈機1は、
図1に示されるように、車体10の前部の下方でかつ前輪11,11の前方に草刈り装置5が取り付けられており、車体10の後部でかつエンジン3の上方に集草容器56が配置されている。
この乗用草刈機1では、エンジン3の上方に集草容器56が配置されるが、特に排気ガス浄化装置6をエンジン3の上方でなくエンジン3の前方であって運転席2とエンジン3との間に配置しているとともにラジエータ38をエンジン3の側方の位置に配置しているので、重心を比較的低くすることを可能にしている。
【0027】
草刈り装置5は、下面が解放されたカバー51の内部で刈刃を回転させて芝草等の草刈り作業を行う装置であって、例えばロータリ形式のモーアと称されるものである。この草刈り装置5は、そのカバー51が支持アーム52を介して車体10における左右の前方サイドフレーム14L,14Rに回動可能に取り付けられて上下移動するようになっている。また、草刈り装置5は、その刈刃が動力伝達ケース4から伝達される動力により回転するようになっている。
【0028】
集草容器56は、草刈り装置5で刈り取られた刈草を収容する容器であって、いわゆるコレクタと称されるものである。集草容器56は、例えば立法体のような箱形状からなる構造物であり、その後方側面部に収容した刈草を排出するための開閉可能なドア56bが設けられている。
集草容器56は、座席24や操作部25の後方において動力伝達ケース4の上方に立ち上がるよう設けられる左右の支柱フレーム57に、昇降およびダンプ機構58を介して取り付けられている。昇降およびダンプ機構58は、集草容器56に収容した刈草を排出させる際に集草容器56を所定の位置および状態に動かすよう機能するものであり、支持フレーム、リンク機構、油圧シリンダ等で構成されている。左右の支柱フレーム57の上端には、互いを接続するような形状の安全バー59が設けられている。
【0029】
さらに、乗用草刈機1は、
図5に示されるように、前輪11,11の間であって草刈り装置5の後方で動力伝達ケースに、刈り取った刈草を吸引により収集して集草容器56内に収容する刈草収集部53が設けられている。刈草収集部53は、吸引部となるブロワー53aや、ブロワー53aと集草容器56との間を接続してブロワー53aで収集した刈草を集草容器56にむけて通過させる搬送部となるシュータ(ダクト)53b等で構成されている。
【0030】
そして、この乗用草刈機1においては、
図4から
図6等に示されるように、運転席2と排気ガス浄化装置6の間に遮熱板7が設けられている。
【0031】
遮熱板7は、排気ガス浄化装置6から発生する熱(熱気)が気流(対流)、放射(ふく射)等により運転席2の側に移動することを遮って抑制するものである。遮熱板7は、例えば鉄等の金属材料からなる所要の厚さの板材で構成されている。また、遮熱板7は、排気ガス浄化装置6のうち運転席2と向き合う部分と同じ広さかそれ以上の広さの面積を有する板材で構成されていることが好ましいが、運転席2の側に移動する熱を必要なレベルまで抑制することができれば運転席2と向き合う部分よりも狭い面積からなる板材で構成されていても差し支えない。
【0032】
実施の形態1における遮熱板7は、運転席2と排気ガス浄化装置6との間で上下の方向に延びて排気ガス浄化装置6の少なくとも上部と向き合う状態で配置される対向部分71と、排気ガス浄化装置6の上部の少なくとも一部を上方から覆う状態で配置される覆い部分72とを有する形態の板材として構成されている。対向部分71は、ほぼ垂直の状態で配置される長方形状の平板で構成されている。また覆い部分72は、ほぼ水平の状態で配置される長方形状の平板で構成されている。
【0033】
この対向部分71と覆い部分72は、例えば、1枚の平板を折り曲げ加工することで一体物として製作されるものであるが、別体の対向部分71と覆い部分72であって組み立て時に接合して遮熱板7とする構成のものであってもよい。また、対向部分71と覆い部分72は、
図6に示されるように、その左右の寸法が、排気ガス浄化装置6の左右方向の寸法よりも少し狭い寸法になっているが、排気ガス浄化装置6の左右方向の寸法と同じ寸法か又はそれ以上の広い寸法に設定しても構わない。
【0034】
このような遮熱板7は、例えば、排気ガス浄化装置6の上方において左右方向に延びて存在する連結フレーム18に例えばネジ等の固定手段により固定した状態で取り付けられて配置される(
図9参照)。本実施の形態における遮熱板7は、その覆い部分72の後端部を連結フレーム18に固定して、その対向部分71が覆い部分72の前端部から垂下した状態になるよう取り付けられている。
【0035】
また、本実施の形態における遮熱板7は、
図8等に示されるように、その覆い部分72Aと上部フレーム16の横断フレーム19を挟ん
だ反対側(後方)において、排気ガス浄化装置6の上部の後方側を覆う第2の覆い部分72Bを設けている。
【0036】
第2の覆い部分72Bは、左右方向にほぼ水平に延びる長方形状の水平部分721と、水平部分721の後方端から垂下する長方形状の垂下部分722とを有する形態の板材として構成されている。水平部分721は、排気ガス浄化装置6の左右方向の寸法とほぼ同じ寸法を有している。また、第2の覆い部分72Bは、水平部分721の左右両端部から上部フレーム16に引っ掛けて取り付ける取付け部分723を有している。取付け部分723は、例えば、水平部分721の左右両端部からそれぞれ上方に立ち上がった後に各外側に水平に延びて上部フレーム16上にのせる部分を有する形態になっている(
図7、
図10参照)。
【0037】
さらに、本実施の形態における遮熱板7は、
図8等に示されるように、排気ガス浄化装置6に接近して通過するよう配策される第1のホース8Aと排気ガス浄化装置6との間に存在する追加部分73を有している。
【0038】
第1のホース8Aは、排気ガス浄化装置6の長手方向(左右の方向)において排気ガス浄化装置6に接近して通過するよう配策されるホース類のうち高熱を避けることが望ましいものであり、例えば燃料ホース81や油圧ホース82がある。燃料ホース81は、燃料タンク103(
図7参照)からエンジン3に燃料を送るためのホースである。燃料ホース81は、例えば、左右の前方サイドフレーム14L,14Rの後端側下部を左右の方向に横断して連結する下部フレーム142に設ける図示しないクランプに取り付けながら配策される。
【0039】
追加部分73は、遮熱板7の対向部分71の下端部から下方に延長して配置される長方形状の平板で構成されている。追加部分73は、遮熱板7の対向部分71を延長して形成することで一体化したものであるが、その対向部分71とは別体の平板を結合させるものとしてもよい。
実施の形態における追加部分73は、遮熱板7の対向部分71と燃料ホース81等の第1のホース8Aとの位置関係により、下方にむかうにつれて後方側にずれるよう傾いた斜面の形態になっている。また、追加部分73は、燃料ホース81等の第1のホース8Aと排気ガス浄化装置6の双方に対して接触しない非接触の状態で配置されている。
【0040】
また、本実施の形態における遮熱板7は、
図9に示されるように、排気ガス浄化装置6における左側端部61cに接近して通過するよう配策される第2のホース8Bと排気ガス浄化装置6の端部との間に存在する第2の追加部分74も有している。
【0041】
第2のホース8Bとしては、例えば、排気ガス浄化装置6の左側端部61cに接近して通過するよう配策されるパイプ類のうち高熱を避けることが望ましいものであり、具体的には油圧ホース82Bがある。
【0042】
第2の追加部分74は、油圧ホース82Bが複数本存在する場合、排気ガス浄化装置6の左側端部61cに最も接近した油圧ホース82Bとその左側端部61cとの間に配置すればよい。またこの場合、第2の追加部分74は、その複数本の油圧ホース82Bのすべてと排気ガス浄化装置6の左側端部61cとの間に存在するように設けることに限定されず、その一部の油圧ホース82Bと排気ガス浄化装置6の左側端部61cとの間に存在するように設ければよい。
なお第2の追加部分74は、排気ガス浄化装置6における右側端部61bに接近して通過するよう配策される第2のホース8Bがある場合、その第2のホース8Bと排気ガス浄化装置6の右側端部61bとの間に存在するように設けてもよい。
【0043】
以上のように構成される乗用草刈機1においては、草刈作業等を行うときにエンジン3を稼働させるが、このときのエンジン3から排出される高温の排気ガスが、上流側の排気パイプ36aから排気ガス浄化装置6に導入されて浄化され、しかる後、その浄化されたガスが下流側の排気パイプ36bを通して外部に排出される。
この際、乗用草刈機1では、排気ガス浄化装置6において高温の排気ガスを通過させ続けるために熱が発生し、その熱の一部が運転席2の方に移動しようとするが、その運転席2の方に移動する熱(熱気)が遮熱板7により遮られる。
したがって、この乗用草刈機1では、排気ガス浄化装置6から発生する熱の影響を少なくとも運転席2が受けることを、遮熱板7がない場合に比べると軽減することができる。
【0044】
また、この乗用草刈機1では、遮熱板7が上記したような構成からなる対向部分71と覆い部分72とを有しているので、排気ガス浄化装置6から発生する熱が運転席2の側に直接移動することや上方に立ち上がってから移動することが対向部分71と覆い部分72によって遮られる。
これにより、その熱の影響を運転席2やその運転席2に座る運転者等が受けることが適切に軽減される。
【0045】
また、この乗用草刈機1では、遮熱板7が上記したような構成からなる第2の覆い部分72Bを設けているので、排気ガス浄化装置6から発生する熱が上方に立ち上がってから運転席2の側に移動することが上記覆い部分72に加えて第2の覆い部分72Bによっても遮られる。
これにより、その熱の影響を運転席2やその運転席2に座る運転者等が受けることがより確実に軽減される。
【0046】
さらに、この乗用草刈機1では、遮熱板7が上記したような構成からなる追加部分73を有しているので、排気ガス浄化装置6に接近して通過するよう配策される燃料ホース81、油圧ホース82等の第1のホース8Aが、排気ガス浄化装置6から発生する熱の影響を受けることが追加部分73等により適切に軽減されて保護される。この結果、例えば、その燃料ホース81を流れる燃料が高温になってエンジン3の稼働に不具合が発生することが未然に防止される。
【0047】
しかも、この乗用草刈機1では、遮熱板7が上記したような構成からなる第2の追加部分74をも有しているので、排気ガス浄化装置6の左側端部61cに接近して通過するように配策される油圧ホース82B等の第2のホース8Bも、排気ガス浄化装置6から発生する熱の影響を受けることが第2の追加部分74等により適切に軽減されて保護される。
【0048】
また、本実施の形態に係る乗用草刈機1は、
図4、
図10等に示されるように、エンジン3に接続されている上流側の排気パイプ36aと、その排気パイプ36aに接近して配策される第3のホース8Cとの間に、第2の遮熱板90を設けている。
【0049】
第3のホース8Cは、上流側の排気パイプ36aと接近して並行するよう配策されるホース類のうち高熱を避けることが望ましいものであり、具体的には油圧ホース82C、ラジエータホース85等が挙げられる。ラジエータホース85は、ラジエータ38から送り出されるラジエータ液をエンジン3に送り込むインレット側のホースである。
【0050】
実施の形態における第2の遮熱板90は、上流側の排気パイプ36aと第3のホース8Cである油圧ホース82C、ラジエータホース85との間に存在して上流側の排気パイプ36aと向き合う対向部分91と、対向部分91を所要の部分に取り付けるための取付け部分92とを有する形態の板材として構成されている。取付け部分92は、例えば上部フレーム16に取り付けられる。
【0051】
また、対向部分91は、
図10と
図11に示されるように、ほぼ垂直の状態で配置される長方形状の垂直面部91aと、その垂直面部91aの下端において外側にほぼ水平に伸びた後に斜め下方に延びる屈曲面部91bとからなる平板で構成されている。屈曲面部91bは、
図11に示されるように、冷却ファン39からの冷却風(破線矢印)がエンジン3の上部側に流れるよう(矢付きに二点鎖線)案内する案内板を兼ねている。
また、取付け部分92は、垂直面部91aの上端からほぼ水平の状態で外側に延びる長方形状の平板で構成されている。
【0052】
この乗用草刈機1では、第2の遮熱板90が設けられているので、上流側の排気パイプ36aに接近して配策される油圧ホース82C、ラジエータホース85等の第3のホース8Cが、上流側の排気パイプ36aから発生する熱の影響を受けることが第2の遮熱板90等により軽減されて保護される。この結果、例えば油圧ホース82C、ラジエータホース85がゴム等の耐熱性が少し劣るものが一部溶解する等の不具合が発生することが未然に防止される。
【0053】
また、第2の遮熱板90は、その屈曲面部91bが上記したように案内板を兼ねているので、
図11に例示されるように冷却ファン39からの冷却風(破線矢印)がエンジン3の右側方部分に吹き付けられた後、その屈曲面部91bとエンジン3の間の隙間を通してエンジン3の上方に沿うように流れる(二点鎖線)。これにより、冷却ファン39からの冷却風がエンジン3に沿いながらその上方に抜けるように流れるので、エンジン3の冷却効果が屈曲面部91bのない場合に比べると向上する。
【0054】
さらに、本実施の形態に係る乗用草刈機1は、
図8や
図9に示されるように、エンジン3の開閉動可能な上カバー102と上部フレーム16の横断フレーム19との間における隙間200(
図3参照)を塞ぐ遮蔽板95を設けている。
この遮蔽板95は、
図8や
図9に示されるように、上部フレーム16の横断フレーム19から車体10の後方にせり出すよう延びて上カバー102の下方に存在するよう断面L字状の板材からなり、横断フレーム19に取り付けられている。遮蔽板95は、第2の覆い部分72Bの上方において覆いかぶさるよう重なる状態に配置されている。また、遮蔽板95については、耐熱性をも有する遮熱板として構成してもよい。
【0055】
この乗用草刈機1では、エンジン3の上カバー102と上部フレーム16の横断フレーム19との間における隙間200から刈草の一部が入り込むことが防止される。この結果、その隙間200から刈草が入り込んで、その刈草がエンジン3等で発生する熱の影響を受けることも回避することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 …乗用草刈機
2 …運転席
3 …エンジン
5 …草刈り装置
6 …排気ガス浄化装置
7 …遮熱板
8 …ホース
10…車体
56…集草容器
71…対向部分
72…覆い部分
81…燃料ホース
82…油圧ホース