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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】噴射制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 51/06 20060101AFI20240130BHJP
   F02D 41/22 20060101ALI20240130BHJP
   F02M 61/16 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
F02M51/06 M
F02D41/22
F02M61/16 W
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020100927
(22)【出願日】2020-06-10
(65)【公開番号】P2021195879
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 雅司
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-247192(JP,A)
【文献】特開2017-125441(JP,A)
【文献】特開2007-113547(JP,A)
【文献】特開2018-004264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 51/00~51/08
F02D 41/00~41/40
F02M 61/00~61/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇圧スイッチを昇圧スイッチング制御して昇圧コンデンサを充電し、バッテリ電源から昇圧電源を供給する昇圧制御部(13)と、
昇圧電圧をモニタする昇圧電圧モニタ部(14)と、を備え、
前記昇圧制御部は、昇圧を開始してから停止するまでの間に、昇圧電流が前記昇圧コンデンサへ流入して前記昇圧コンデンサが持つ直流抵抗成分であるESRにより前記昇圧電圧が跳ね上がったことで昇圧電圧が所定値以上になった回数を計測回数として計測し、その計測回数を所定回数と比較して前記昇圧コンデンサの劣化を判定する噴射制御装置。
【請求項2】
前記昇圧電圧モニタ部は、昇圧電流が前記昇圧コンデンサへ流入して前記昇圧コンデンサが持つ直流抵抗成分であるESRにより昇圧電圧が跳ね上がった回数を計測するための昇圧電圧をモニタする第1昇圧電圧モニタ部(24)と、昇圧要否を判定するための昇圧電圧をモニタする第2昇圧電圧モニタ部(25)と、を備え、
前記第1昇圧電圧モニタ部のローパスフィルタの時定数と、前記第2昇圧電圧モニタ部のローパスフィルタの時定数とが異なる請求項1に記載した噴射制御装置。
【請求項3】
前記昇圧制御部は、前記所定値を、昇圧を停止する昇圧停止閾値と異なる値で設定する請求項1又は2に記載した噴射制御装置。
【請求項4】
前記昇圧制御部は、昇圧を停止したときに、前記計測回数を所定回数と比較して前記昇圧コンデンサの劣化を判定する請求項1から3の何れか一項に記載した噴射制御装置。
ことを特徴とする噴射制御装置。
【請求項5】
前記昇圧コンデンサが劣化したと前記昇圧制御部により判定されたときに、自装置の修理交換が必要であることを示す修理交換信号を出力する劣化判定時処置部(15)を備える請求項1から4の何れか一項に記載した噴射制御装置。
【請求項6】
前記昇圧コンデンサが劣化したと前記昇圧制御部により判定されたときに、前記昇圧電流を低下させる劣化判定時処置部(15)を備える請求項1から5の何れか一項に記載した噴射制御装置。
【請求項7】
前記昇圧コンデンサが劣化したと前記昇圧制御部により判定されたときに、燃料噴射弁の噴射インターバルを拡大する劣化判定時処置部(15)を備える請求項1から6の何れか一項に記載した噴射制御装置。
【請求項8】
前記昇圧コンデンサが劣化したと前記昇圧制御部により判定されたときに、多段噴射時の段数の上限制約を変更する劣化判定時処置部(15)を備える請求項1から7の何れか一項に記載した噴射制御装置。
【請求項9】
前記昇圧コンデンサが劣化したと前記昇圧制御部により判定されたときに、エンジン回転数の上限制約を変更する劣化判定時処置部(15)を備える請求項1から8の何れか一項に記載した噴射制御装置。
【請求項10】
前記昇圧コンデンサが劣化したと前記昇圧制御部により判定されたときに、前記所定回数を変更する劣化判定時処置部(15)を備える請求項1から9の何れか一項に記載した噴射制御装置。
【請求項11】
昇圧スイッチを昇圧スイッチング制御して昇圧コンデンサを充電し、バッテリ電源から昇圧電源を供給する昇圧制御部(13)と、
昇圧電圧をモニタする昇圧電圧モニタ部(14)と、を備え、
前記昇圧制御部は、昇圧を開始してから停止するまでの間に、昇圧電流が前記昇圧コンデンサへ流入して前記昇圧電圧が跳ね上がったことで昇圧電圧が所定値以上になった回数を計測回数として計測し、その計測回数を所定回数と比較して前記昇圧コンデンサの劣化を判定し、
前記昇圧電圧モニタ部は、昇圧電流が前記昇圧コンデンサへ流入して昇圧電圧が跳ね上がった回数を計測するための昇圧電圧をモニタする第1昇圧電圧モニタ部(24)と、昇圧要否を判定するための昇圧電圧をモニタする第2昇圧電圧モニタ部(25)と、を備え、
前記第1昇圧電圧モニタ部のローパスフィルタの時定数と、前記第2昇圧電圧モニタ部のローパスフィルタの時定数とが異なる噴射制御装置。
【請求項12】
昇圧スイッチを昇圧スイッチング制御して昇圧コンデンサを充電し、バッテリ電源から昇圧電源を供給する昇圧制御部(13)と、
昇圧電圧をモニタする昇圧電圧モニタ部(14)と、
前記昇圧コンデンサが劣化したと前記昇圧制御部により判定されたときに、燃料噴射弁の噴射インターバルを拡大する劣化判定時処置部(15)と、を備え、
前記昇圧制御部は、昇圧を開始してから停止するまでの間に、昇圧電流が前記昇圧コンデンサへ流入して前記昇圧電圧が跳ね上がったことで昇圧電圧が所定値以上になった回数を計測回数として計測し、その計測回数を所定回数と比較して前記昇圧コンデンサの劣化を判定する噴射制御装置。
【請求項13】
昇圧スイッチを昇圧スイッチング制御して昇圧コンデンサを充電し、バッテリ電源から昇圧電源を供給する昇圧制御部(13)と、
昇圧電圧をモニタする昇圧電圧モニタ部(14)と、
前記昇圧コンデンサが劣化したと前記昇圧制御部により判定されたときに、エンジン回転数の上限制約を変更する劣化判定時処置部(15)と、を備え、
前記昇圧制御部は、昇圧を開始してから停止するまでの間に、昇圧電流が前記昇圧コンデンサへ流入して前記昇圧電圧が跳ね上がったことで昇圧電圧が所定値以上になった回数を計測回数として計測し、その計測回数を所定回数と比較して前記昇圧コンデンサの劣化を判定する噴射制御装置。
【請求項14】
昇圧スイッチを昇圧スイッチング制御して昇圧コンデンサを充電し、バッテリ電源から昇圧電源を供給する昇圧制御部(13)と、
昇圧電圧をモニタする昇圧電圧モニタ部(14)と、
前記昇圧コンデンサが劣化したと前記昇圧制御部により判定されたときに、前記昇圧コンデンサの劣化を判定するための所定回数を変更する劣化判定時処置部(15)と、を備え、
前記昇圧制御部は、昇圧を開始してから停止するまでの間に、昇圧電流が前記昇圧コンデンサへ流入して前記昇圧電圧が跳ね上がったことで昇圧電圧が所定値以上になった回数を計測回数として計測し、その計測回数を前記所定回数と比較して前記昇圧コンデンサの劣化を判定する噴射制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴射制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
噴射制御装置は、昇圧スイッチを昇圧スイッチング制御して昇圧コンデンサを充電し、バッテリ電源から昇圧電源を供給する。昇圧コンデンサとしてアルミ電解コンデンサが用いられる構成が考えられている。アルミ電解コンデンサは、例えば経年劣化等による劣化が進むと電解液が減少する特性がある。例えば特許文献1には、漏れ電流を検出してアルミ電解コンデンサの劣化を判定する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-247192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルミ電解コンデンサは電解液による自己修復機能を有する素子であるが、漏れ電流を検出してアルミ電解コンデンサの劣化を判定する特許文献1の構成では、電解液が減少し始めてからしか劣化を判定することができず、劣化を判定する時点では自己修復機能が消失されていることになる。
【0005】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、自己修復機能が消失される前に昇圧コンデンサの劣化を適切に判定することができる噴射制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載した発明によれば、昇圧制御部(13)は、昇圧スイッチを昇圧スイッチング制御して昇圧コンデンサを充電し、バッテリ電源から昇圧電源を供給する。昇圧電圧モニタ部(14)は、昇圧電圧をモニタする。昇圧制御部は、昇圧を開始してから停止するまでの間に、昇圧電流が昇圧コンデンサへ流入して昇圧コンデンサが持つ直流抵抗成分であるESRにより昇圧電圧が跳ね上がったことで昇圧電圧が所定値以上になった回数を計測回数として計測し、その計測回数を所定回数と比較して昇圧コンデンサの劣化を判定する。
【0007】
昇圧コンデンサとしてアルミ電解コンデンサが用いられる構成において、アルミ電解コンデンサが持つ直流抵抗成分であるESRにより昇圧電圧が跳ね上がる特性を利用し、跳ね上がった昇圧電圧が所定値以上になった計測回数を、昇圧コンデンサの劣化を判定可能な所定回数と比較して昇圧コンデンサの劣化を判定するようにした。これにより、漏れ電流を検出して昇圧コンデンサの劣化を判定する従来構成とは異なり、電解液が減少し始める前でも昇圧コンデンサの劣化を判定することができ、電解液が減少し始める前の電解液の組成が変化した時点で劣化を判定することができる。その結果、自己修復機能が消失される前に昇圧コンデンサの劣化を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態を示す機能ブロック図
図2】昇圧コンデンサの劣化判定の動作シーケンスを示すタイミングチャート
図3】フローチャート
図4】第2実施形態を示す機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、噴射制御装置の幾つかの実施形態について図面を参照して説明する。以下に示す各実施形態において、先行する実施形態で説明した内容に対応する部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を省略することがある。
(第1実施形態)
【0010】
第1実施形態について図1から図5を参照して説明する。図1に示すように、噴射制御装置1は、例えば自動車等の車両に搭載されている内燃機関に燃料を噴射するソレノイド式の燃料噴射弁2a~2dの駆動を制御する装置であり、電子制御装置(ECU:Electronic Control Unit)から構成される。燃料噴射弁2aと燃料噴射弁2dは逆位相となる関係の気筒に配置されており、燃料噴射弁2aの噴射と燃料噴射弁2dの噴射はオーバーラップしない関係にある。燃料噴射弁2bと燃料噴射弁2cは逆位相となる関係の気筒に配置されており、燃料噴射弁2bの噴射と燃料噴射弁2cの噴射はオーバーラップしない関係にある。換言すれば、燃料噴射弁2aの噴射や燃料噴射弁2dの噴射と燃料噴射弁2bの噴射や燃料噴射弁2cの噴射はオーバーラップする関係にある。本実施形態では、4本の燃料噴射弁2a~2dによる4気筒の構成を例示しているが、任意の気筒数でも良く、例えば6気筒や8気筒等の構成にも適用することができる。
【0011】
噴射制御装置1は、制御IC3と、昇圧回路4と、駆動回路5とを備える。制御IC3は、例えばASICによる集積回路装置であり、例えばCPUやロジック回路等の制御部と、RAMやROMやEEPROM等の記憶部と、コンパレータによる比較器等を備え、ハードウェア及びソフトウェアに基づいて各種制御を実行する。制御IC3は、外部に設けられているセンサ(図示せず)からセンサ信号を入力すると、噴射指令タイミングを算出し、その算出した噴射指令タイミングにしたがって駆動回路5を駆動する。
【0012】
駆動回路5は、上流側スイッチ6と、下流側スイッチ7とを備える。上流側スイッチ6は、燃料噴射弁2a~2dの上流側に設けられているスイッチであり、燃料噴射弁2a~2dへの昇圧電源Vboostの放電をオンオフするためのピーク電流駆動スイッチと、バッテリ電源VBを用いて定電流制御するためのバッテリ電圧駆動スイッチとを備える。昇圧電源Vboostは例えば65ボルトであり、バッテリ電源VBは例えば12ボルトである。ピーク電流駆動スイッチやバッテリ電圧駆動スイッチは、例えばnチャネル型のMOSトランジスタを用いて構成されるが、バイポーラトランジスタ等の他種類のトランジスタを用いて構成されても良い。下流側スイッチ7は、燃料噴射弁2a~2dの下流側に設けられているスイッチであり、気筒を選択するためのローサイド駆動スイッチを備える。ローサイド駆動スイッチも、上記したピーク電流駆動スイッチやバッテリ電圧駆動スイッチと同様に、例えばnチャネル型のMOSトランジスタを用いて構成されるが、バイポーラトランジスタ等の他種類のトランジスタを用いて構成されても良い。
【0013】
駆動回路5は、後述する通電制御部16により通電電流プロファイルにしたがって上流側スイッチ6及び下流側スイッチ7がスイッチング制御されることで駆動する。駆動回路5は、駆動すると燃料噴射弁2a~2dに対してピーク電流駆動及び定電流駆動を行うことで燃料噴射弁2a~2dの開弁及び閉弁を制御し、燃料噴射弁2a~2dから内燃機関への燃料の噴射を制御する。
【0014】
昇圧回路4は、例えばインダクタから構成される昇圧コイル8と、例えばMOSトランジスタから構成される昇圧スイッチ9と、電流検出抵抗10と、昇圧ダイオード11と、昇圧コンデンサ12とを図示形態に備えた昇圧チョッパ回路によるDCDCコンバータにより構成されている。昇圧回路4の形態は、図示形態に限らず、様々な形態を適用することができる。昇圧回路4は、後述する昇圧制御部13により昇圧スイッチ9が昇圧スイッチング制御されることで昇圧コイル8に蓄積された電流エネルギーを昇圧ダイオード11により整流し、その整流した電流エネルギーを昇圧コンデンサ12に蓄積して昇圧コンデンサ12を充電し、バッテリ電源VBから昇圧電源Vboostを供給する。昇圧コンデンサ12としてはアルミ電解コンデンサが用いられている。
【0015】
制御IC3は、昇圧制御部13と、昇圧電圧モニタ部14と、劣化判定時処置部15と、通電制御部16とを備える。制御IC3が提供する機能は、実体的なメモリ装置であるROMに記憶されているソフトウェア及びそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、又はそれらの組み合わせにより提供することができる。
【0016】
昇圧制御部13は、電流検出抵抗10に流れる電流を検出すると共に、昇圧要否を昇圧要否判定部13bにより判定し、例えば昇圧電圧が昇圧開始閾値以下になったことで昇圧要を判定すると、昇圧スイッチ9による昇圧スイッチング制御を開始して昇圧を開始する(図2中(ア)参照)。昇圧を開始したことで昇圧電流が昇圧コンデンサ12へ流入すると、アルミ電解コンデンサが持つ直流抵抗成分であるESR(Equivalent Series Resistance)により昇圧電圧が約10V程度跳ね上がる(図2中(イ)参照)。
【0017】
昇圧電圧モニタ部14は、昇圧コンデンサ12の陽極とグランドとの間の電圧を検出し、昇圧電圧をモニタする。昇圧電圧モニタ部14は、ローパスフィルタ14aを通過前の昇圧電圧を、予め設定されている跳ね上がり検出閾値と比較し、ローパスフィルタ14aを通過前の昇圧電圧が跳ね上がり検出閾値以上になると、昇圧制御部13の跳ね上がりカウンタ13aへの出力をオフからオンに切替え、一定時間経過後に、跳ね上がりカウンタ13aへの出力をオンからオフに切替える。又、昇圧電圧モニタ部14は、ローパスフィルタ14aを通過後の昇圧電圧を、予め設定されている昇圧停止閾値及び昇圧開始閾値と比較回路14bにより比較し、ローパスフィルタ14aを通過後の昇圧電圧が昇圧停止閾値以上になると、昇圧制御部13の昇圧要否判定部13bへの出力をオフからオンに切替え、その後、ローパスフィルタ14aを通過後の昇圧電圧が昇圧開始閾値以下になると、昇圧要否判定部13bへの出力をオフからオンに切替える。跳ね上がり検出閾値と、昇圧停止閾値及び昇圧開始閾とは異なる値である。
【0018】
昇圧制御部13は、昇圧電圧モニタ部14から跳ね上がりカウンタ13aへの入力がオフからオンに切替わる毎にカウント値をカウントアップする。昇圧制御部13は、第1劣化判定閾値と、第1劣化判定閾値よりも値が大きい第2劣化判定閾値とを保持している。昇圧制御部13は、跳ね上がりカウンタ13aのカウント値を第1劣化判定閾値や第2劣化判定閾値と比較して昇圧コンデンサ12の劣化を判定し、その判定結果を劣化判定時処置部15に出力する。
【0019】
劣化判定時処置部15は、昇圧制御部13から入力した判定結果により跳ね上がりカウンタ13aのカウント値が第1劣化判定閾値に到達したと判定すると、噴射制御装置1の修理交換が必要であることを示す修理交換信号を出力したり、昇圧電流を低下させたり、燃料噴射弁2a~2dの噴射インターバルを拡大したり、多段噴射時の段数の上限制約を変更したりする。劣化判定時処置部15は、上記した処置の一部のみを行っても良いし全てを行っても良い。劣化判定時処置部15は、昇圧制御部13から入力した判定結果により跳ね上がりカウンタ13aのカウント値が第2劣化判定閾値に到達したと判定すると、エンジン回転数の上限制約を変更する。又、昇圧制御部13は、跳ね上がりカウンタ13aのカウント値が第1劣化判定閾値や第2劣化判定閾値に到達すると、第1劣化判定閾値や第2劣化判定閾値を変更する。
【0020】
昇圧制御部13は、昇圧電圧モニタ部14から昇圧要否判定部13bへの入力がオフからオンに切替わり、その後、昇圧電圧モニタ部14から昇圧要否判定部13bへの入力がオンからオフに切替わり、即ち、昇圧電圧が昇圧停止閾値未満であると判定すると、昇圧が必要であると判定するが、昇圧電圧モニタ部14から昇圧要否判定部13bへの入力がオンからオフに切替わらずに昇圧要否判定部13bへの入力のオンが一定時間継続し、即ち、昇圧電圧が昇圧停止閾値以上であると判定すると、昇圧が不要であると判定し、跳ね上がりカウンタ13aのカウント値をクリアする(図2中(ウ)参照)。
【0021】
次に、上記した構成の作用について図3を参照して説明する。
制御IC3は、昇圧モニタ処理の開始イベントの発生を所定周期で監視しており、昇圧モニタ処理の開始イベントの発生を検出すると、昇圧モニタ処理を開始する。制御IC3は、昇圧モニタ処理を開始すると、ローパスフィルタ14aを通過後の昇圧電圧を昇圧開始閾値と比較し、ローパスフィルタ14aを通過後の昇圧電圧が昇圧開始閾値以下であるか否かを判定する(S1)。制御IC3は、ローパスフィルタ14aを通過後の昇圧電圧が昇圧開始閾値以下であると判定すると(S1:YES)、昇圧スイッチング制御を開始して昇圧を開始する(S2)。
【0022】
制御IC3は、ローパスフィルタ14aを通過前の昇圧電圧を跳ね上がり検出閾値と比較し、ローパスフィルタ14aを通過前の昇圧電圧が跳ね上がり検出閾値以上になったか否かを判定する(S3)。制御IC3は、ローパスフィルタ14aを通過前の昇圧電圧が跳ね上がり検出閾値以上になったと判定すると(S3:YES)、跳ね上がりカウンタ13aのカウント値をカウントアップし(S4)、昇圧スイッチング制御を継続して昇圧を継続する(S5)。
【0023】
制御IC3は、ローパスフィルタ14aを通過後の昇圧電圧を昇圧停止閾値と比較し、ローパスフィルタ14aを通過後の昇圧電圧が昇圧停止閾値以上であるか否かを判定する(S6)。制御IC3は、ローパスフィルタ14aを通過後の昇圧電圧が昇圧停止閾値以上でないと判定すると(S6:NO)、ステップS3に戻り、ステップS3以降を繰り返す。制御IC3は、昇圧電圧が昇圧停止閾値以上であると判定すると(S6:YES)、昇圧スイッチング制御を停止して昇圧を停止し(S7)、跳ね上がりカウンタ13aのカウント値を劣化判定閾値と比較する(S8)。
【0024】
制御IC3は、跳ね上がりカウンタ13aのカウント値が劣化判定閾値に到達したと判定すると(S8:YES)、昇圧コンデンサ12の劣化を判定し(S9)、その劣化の程度に応じた処置を実施する(S10)。即ち、制御IC3は、跳ね上がりカウンタ13aのカウント値が第1劣化判定閾値に到達したと判定すると、噴射制御装置1の修理交換が必要であることを示す修理交換信号を出力したり、昇圧電流を低下させたり、燃料噴射弁2a~2dの噴射インターバルを拡大したり、多段噴射時の段数の上限制約を変更したりする。制御IC3は、更に跳ね上がりカウンタ13aのカウント値が第2劣化判定閾値に到達したと判定すると、エンジン回転数の上限制約を変更する。制御IC3は、跳ね上がりカウンタ13aのカウント値をクリアし(S11)、昇圧モニタ処理を終了し、次の昇圧モニタ処理の開始イベントの発生を待機する。
【0025】
第1実施形態によれば、以下に示す作用効果を得ることができる。噴射制御装置1において、昇圧コンデンサ12としてアルミ電解コンデンサが用いられる構成において、アルミ電解コンデンサが持つ直流抵抗成分であるESRにより昇圧電圧が跳ね上がる特性を利用し、跳ね上がった昇圧電圧が跳ね上がり検出閾値以上になった回数を、昇圧コンデン12サの劣化を判定可能な劣化判定閾値と比較して昇圧コンデンサ12の劣化を判定するようにした。これにより、漏れ電流を検出して昇圧コンデンサ12の劣化を判定する従来構成とは異なり、電解液が減少し始める前でも昇圧コンデンサ12の劣化を判定することができ、電解液が減少し始める前の電解液の組成が変化した時点で劣化を判定することができる。その結果、自己修復機能が消失される前に昇圧コンデンサ12の劣化を適切に判定することができる。
【0026】
尚、このように跳ね上がった昇圧電圧を跳ね上がり検出閾値と比較し、跳ね上がりカウンタ13aのカウント値を劣化判定閾値と比較し、跳ね上がり検出閾値と劣化判定閾値との組み合わせにより昇圧コンデンサ12の劣化を判定するが、これらの閾値は、昇圧コンデンサ12のESR特性(初期、経年劣化、温度特性)と、昇圧電流とに基づいて算出すれば良い。一般的に、アルミ電解コンデンサは高温多湿状態で劣化が進み、ESR特性は極低温(-30℃等)での使用時に悪化して抵抗値が大きくなる傾向があることから、これを考慮した劣化曲線に合わせて閾値を設計すれば良い。
【0027】
噴射制御装置1において、昇圧電圧の跳ね上がりを検出するための跳ね上がり検出閾値を、昇圧停止のタイミングを判定するための昇圧停止閾値とは異なる閾値とした。昇圧電圧の跳ね上がりの検出と昇圧停止のタイミングの判定とを別々の閾値により実施することができる。
【0028】
噴射制御装置1において、跳ね上がりカウンタ13aのカウント値が第1劣化判定閾値に到達すると、噴射制御装置1の修理交換が必要であることを示す修理交換信号を出力したり、昇圧電流を低下させたり、燃料噴射弁2a~2dの噴射インターバルを拡大したり、多段噴射時の段数の上限制約を変更したりするようにした。跳ね上がりカウンタ13aのカウント値が第1劣化判定閾値に到達したことを契機とし、噴射制御装置1の修理交換が必要であることを示す修理交換信号を出力したり、昇圧電流を低下させたり、燃料噴射弁2a~2dの噴射インターバルを拡大したり、多段噴射時の段数の上限制約を変更したりすることができる。
【0029】
噴射制御装置1において、跳ね上がりカウンタ13aのカウント値が第2劣化判定閾値に到達すると、エンジン回転数の上限制約を変更するようにした。跳ね上がりカウンタ13aのカウント値が第2劣化判定閾値に到達したことを契機とし、エンジン回転数の上限制約を変更することができる。
【0030】
噴射制御装置1において、跳ね上がりカウンタ13aのカウント値が第1劣化判定閾値や第2劣化判定閾値に到達すると、第1劣化判定閾値や第2劣化判定閾値を変更するようにした。第1劣化判定閾値や第2劣化判定閾値を小さい値に変更することで、これ以降の昇圧コンデンサ12の劣化を厳しい方に判定することができ、一方、第1劣化判定閾値や第2劣化判定閾値を大きい値に変更することで、これ以降の昇圧コンデンサ12の劣化を緩い方に判定することができる。
【0031】
(第2実施形態)
第2実施形態について図4を参照して説明する。第2実施形態は、昇圧電圧が跳ね上がった回数を計測するための昇圧電圧をモニタする昇圧電圧モニタ部と、昇圧要否を判定するための昇圧電圧をモニタする昇圧電圧モニタ部とが別々に設けられている点が第1実施形態と異なる。
【0032】
噴射制御装置21において、制御IC22は、昇圧制御部23と、第1昇圧電圧モニタ部24と、第2昇圧電圧モニタ部25と、劣化判定時処置部15と、通電制御部16とを備える。第1昇圧電圧モニタ部24は、昇圧コンデンサ12の陽極とグランドとの間の電圧を検出し、昇圧電圧をモニタする。第1昇圧電圧モニタ部24は、ローパスフィルタ24aを通過後の昇圧電圧を、予め設定されている跳ね上がり検出閾値と比較回路24bにより比較する。第1昇圧電圧モニタ部24は、ローパスフィルタ24aを通過後の昇圧電圧が跳ね上がり検出閾値以上になると、昇圧制御部23の跳ね上がりカウンタ23aへの出力をオフからオンに切替え、一定時間経過後に、跳ね上がりカウンタ23aへの出力をオンからオフに切替える。
【0033】
第2昇圧電圧モニタ部25は、昇圧コンデンサ12の陽極とグランドとの間の電圧を検出し、昇圧電圧をモニタする。第2昇圧電圧モニタ部25は、ローパスフィルタ25aを通過後の昇圧電圧を、予め設定されている昇圧停止閾値及び昇圧開始閾値と比較回路25bにより比較する。第2昇圧電圧モニタ部25は、ローパスフィルタ25aを通過後の昇圧電圧が昇圧停止閾値以上になると、昇圧制御部23の昇圧要否判定部23bへの出力をオフからオンに切替え、その後、ローパスフィルタ25aを通過後の昇圧電圧が昇圧開始閾値以下になると、昇圧要否判定部23bへの出力をオフからオンに切替える。第1昇圧電圧モニタ部24のローパスフィルタ24aの時定数と、第2昇圧電圧モニタ部25のローパスフィルタ25aの時定数とは異なる。
【0034】
第2実施形態によれば、以下に示す作用効果を得ることができる。噴射制御装置21において、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができ、自己修復機能が消失される前に昇圧コンデンサ12の劣化を適切に判定することができる。
【0035】
噴射制御装置21において、昇圧電圧が跳ね上がった回数を計測するための昇圧電圧をモニタする第1昇圧電圧モニタ部24のローパスフィルタ24aの時定数と、昇圧要否を判定するための昇圧電圧をモニタする第2昇圧電圧モニタ部25のローパスフィルタ25aの時定数とが異なるようにした。昇圧要否を判定するための昇圧電圧をモニタする用途ではノイズの影響を避けるためにローパスフィルタ24aの時定数を比較的大きな値に設定する必要があり、一方、昇圧電圧が跳ね上がった回数を計測するための昇圧電圧をモニタする用途ではローパスフィルタ25aの時定数を比較的大きな値に設定する必要がないことから、それらの時定数を別々の値により設定することで、昇圧要否を判定するための昇圧電圧をモニタすることと、昇圧電圧が跳ね上がった回数を計測するための昇圧電圧をモニタすることとを適切に両立することができる。
【0036】
(その他の実施形態)
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、更には、それらに一要素のみ、それ以上、或いはそれ以下を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0037】
図面中、1,21は噴射制御装置、9は昇圧スイッチ、12は昇圧コンデンサ、13,23は昇圧制御部、14は昇圧電圧モニタ部、15は劣化判定時処置部、23は昇圧制御部、24は第1昇圧電圧モニタ部、25は第2昇圧電圧モニタ部である。
図1
図2
図3
図4