IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ紡織株式会社の特許一覧

特許7428087電子部品の取付構造および電子部品付乗物用内装材
<>
  • 特許-電子部品の取付構造および電子部品付乗物用内装材 図1
  • 特許-電子部品の取付構造および電子部品付乗物用内装材 図2
  • 特許-電子部品の取付構造および電子部品付乗物用内装材 図3
  • 特許-電子部品の取付構造および電子部品付乗物用内装材 図4
  • 特許-電子部品の取付構造および電子部品付乗物用内装材 図5
  • 特許-電子部品の取付構造および電子部品付乗物用内装材 図6
  • 特許-電子部品の取付構造および電子部品付乗物用内装材 図7
  • 特許-電子部品の取付構造および電子部品付乗物用内装材 図8
  • 特許-電子部品の取付構造および電子部品付乗物用内装材 図9
  • 特許-電子部品の取付構造および電子部品付乗物用内装材 図10
  • 特許-電子部品の取付構造および電子部品付乗物用内装材 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】電子部品の取付構造および電子部品付乗物用内装材
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20240130BHJP
   B60Q 3/76 20170101ALI20240130BHJP
   B60Q 3/68 20170101ALI20240130BHJP
   B60Q 3/54 20170101ALI20240130BHJP
   B60Q 3/64 20170101ALI20240130BHJP
【FI】
B60R16/02 621C
B60R16/02 610J
B60Q3/76
B60Q3/68
B60Q3/54
B60Q3/64
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020102590
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2021195008
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 篤彦
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-301063(JP,A)
【文献】特開2010-208389(JP,A)
【文献】特開2018-085273(JP,A)
【文献】特開2012-144183(JP,A)
【文献】独国特許発明第10137350(DE,B4)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60Q 3/76
B60Q 3/68
B60Q 3/54
B60Q 3/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物室の内装材本体部に対する電子部品の取付構造であって、
前記内装材本体部は板状をなし、
前記電子部品は、
前記内装材本体部に対して乗物室内側に配されるとともに、前記内装材本体部に対して乗物室外側において給電されるものであって、
電子素子を備え、前記内装材本体部の表面に沿って広がる形状の電子部品本体部と、
前記電子部品本体部から前記内装材本体部側に突出する係止部と、
前記電子部品本体部から前記内装材本体部側に突出するとともに、前記電子素子に電気的に接続される導線部が設けられている突出端子部と、
を備えており、
前記内装材本体部は、前記係止部を受ける係止受部としての貫通孔と前記貫通孔から離間した位置に前記突出端子部を挿通するための取付孔が貫通形成されており、
前記電子部品は、前記係止部が前記貫通孔の孔縁部に乗物室外側から掛かり止まる状態で、前記突出端子部が乗物室内側から前記取付孔に挿通されており
前記突出端子部のうち前記内装材本体部よりも乗物室外側に突出した部分には、電気を供給するための給電端子が取り付けられ、
前記給電端子は、前記取付孔の孔縁部に乗物室外側から掛かり止まって、前記突出端子部の前記取付孔に対する抜け出めを行う抜止部材として機能することで、前記電子部品が、前記内装材本体部に取り付けられている、電子部品の取付構造。
【請求項2】
前記突出端子部は、乗物室内側から前記取付孔に挿通された状態で前記内装材本体部よりも乗物室外側に突出される部分において、前記内装材本体部の乗物室外側の表面に沿って貫通する嵌合孔が形成されており、
前記給電端子は、前記内装材本体部の乗物室外側の表面に沿って前記嵌合孔に挿通されることによって前記取付孔を横切り、前記取付孔に対して前記突出端子部を抜け止めする構成を備えている、請求項1に記載の電子部品の取付構造。
【請求項3】
前記突出端子部は、前記嵌合孔の孔側面に前記導線部が配設されており、
前記給電端子は、前記嵌合孔に挿通された状態で前記導線部に当接する位置に給電側導線部が配設されている、請求項2に記載の電子部品の取付構造。
【請求項4】
前記給電端子は、弾性変形可能な一対の挟持部を備えているとともに、前記突出端子部の前記内装材本体部よりも乗物室外側に突出された部分を、一対の前記挟持部によって弾性変形に抗して挟持することにより、前記取付孔に対して前記突出端子部を抜け止めする構成を備えている、請求項1に記載の電子部品の取付構造。
【請求項5】
前記突出端子部は、表面の少なくとも一部に前記導線部が配設されており、
前記給電端子は、一対の前記挟持部の対向する表面のうち、
前記導線部に当接する位置に給電側導線部が配設されている、請求項4に記載の電子部品の取付構造。
【請求項6】
前記内装材本体部は、前記電子部品の外形に対応して乗物室外側に向けて後退した凹部を備えており、
前記貫通孔と前記取付孔は、前記凹部内に貫通形成され、
前記内装材本体部に前記電子部品を取付けた状態において、前記内装材本体部の前記凹部の周縁の乗物室内側の表面と、前記電子部品の乗物室内側の表面とは、面一をなす構成を有している、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の電子部品の取付構造。
【請求項7】
板状をなす内装材本体部と、
前記内装材本体部に対して乗物室内側に配されると共に、前記内装材本体部に対して乗物室外側において給電される電子部品と、を備える電子部品付乗物用内装材であって、
前記電子部品は、
電子素子を備え、前記内装材本体部の表面に沿って広がる形状の電子部品本体部と、
前記電子部品本体部から前記内装材本体部側に突出する係止部と、
前記電子部品本体部から前記内装材本体部側に突出するとともに、前記電子素子に電気的に接続される導線部が配設されている突出端子部と、
を備え、
前記内装材本体部は、前記係止部を受ける係止受部としての貫通孔と前記貫通孔から離間した位置に前記突出端子部を挿通するための取付孔が貫通形成されており、
前記電子部品は、前記係止部が前記貫通孔の孔縁部に乗物室外側から掛かり止まる状態で、前記突出端子部が乗物室内側から前記取付孔に挿通されており
前記突出端子部のうち前記内装材本体部よりも乗物室外側に突出した部分には、電気を供給するための給電端子が取り付けられ、
前記給電端子は、前記取付孔の孔縁部に乗物室外側から掛かり止まって、前記突出端子部の前記取付孔に対する抜け出めを行う抜止部材として機能することで、前記電子部品が、前記内装材本体部に取り付けられている、電子部品付乗物用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示される技術は、電子部品の取付構造および電子部品付乗物用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の乗物の天井部には、ルームランプやマップランプ等の室内灯としての照明装置が取り付けられている。また近年では、空気清浄機や芳香機、カメラセンサ等の種々の電子部品が天井部に取り付けられるようになっている。これらの電子部品は、例えば下記の特許文献1に記載されるように、乗物の内装材としてのルーフトリムに設けられた開口に挿入された状態で、このルーフトリムに取り付けられたり、さらには、ブラケットを介して乗物の骨格をなすルーフパネルに固定されたりしている。そして、これらの電子部品の天井部への取付に際しては、ルーフパネルの裏面(乗物室外側面)に配索されているルーフハーネス等に接続されたのち、ルーフトリムに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-208389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、照明装置等の電子部品については薄型化と軽量化とが図られており、ルーフトリムへの電子部品の取付構造については改良の余地があった。
【0005】
ここに開示される技術は、上記事情に鑑みてなされたものであり、新規な電子部品の取付構造と、この取付構造を採用した電子部品付乗物用内装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、ここに開示される技術は、乗物室の内装材本体部に対する電子部品の取付構造を提供する。この取付構造において、前記内装材本体部は板状をなし、前記電子部品は、前記内装材本体部に対して乗物室内側に配されるとともに、前記内装材本体部に対して乗物室外側において給電されるものであって、電子素子を備える電子部品本体部と、前記電子部品本体部から前記内装材本体部側に突出する係止部と、前記電子部品本体部から前記内装材本体部側に突出するとともに、前記電子素子に電気的に接続される導線部が設けられている突出端子部と、を備えている。そして、前記内装材本体部は、前記係止部を受ける係止受部を備えるとともに、前記突出端子部を挿通するための取付孔が貫通形成されており、前記電子部品は、前記係止部を前記係止受部に係止した状態で、前記突出端子部が乗物室内側から前記取付孔に挿通されているとともに、前記突出端子部のうち前記内装材本体部よりも乗物室外側に突出した部分に抜止部材が取り付けられることによって、前記取付孔に対して抜け止めされるとともに、前記内装材本体部に取り付けられている。このような構成によると、内装材本体部に大きな開口を形成することなく、内装材本体部に対して電子部品を取り付けることができる。
【0007】
ここに開示される取付構造の好ましい態様において、前記抜止部材は、電気を供給するための給電端子であり、前記突出端子部は、前記内装材本体部よりも乗物室外側において、前記給電端子によって給電可能な状態で抜け止めされている。上記構成によると、抜止部材として給電端子を用いることで、内装材本体部に対して電子部品を抜け止めすると同時に、電子部品に対して給電することができる。これによって、部品点数を減らして、電子部品を内装材本体部に簡便かつ効率よく取り付けることができる。
【0008】
ここに開示される取付構造の好ましい態様において、前記突出端子部は、乗物室内側から前記取付孔に挿通された状態で前記内装材本体部よりも乗物室外側に突出される部分において、前記内装材本体部の乗物室外側の表面に沿って貫通する嵌合孔が形成されており、前記抜止部材は、前記内装材本体部の乗物室外側の表面に沿って前記嵌合孔に挿通されることによって前記取付孔を横切り、前記取付孔に対して前記突出端子部を抜け止めする構成を備えている。上記構成によると、取付孔を横切る形で抜止部材を嵌合孔に挿通することができ、抜止部材として給電端子を用いることで、内装材本体部に対して電子部品を物理的に確かな構成で取り付けることができる。
【0009】
ここに開示される取付構造の好ましい態様において、前記突出端子部は、前記嵌合孔の孔側面に前記導線部が配設されており、前記抜止部材は給電端子であって、前記嵌合孔に挿通された状態で前記導線部に当接する位置に給電側導線部が配設されている。上記構成によると、突出端子部の孔側面に配した導線部と抜止部材の表面に配した給電側導線部とを導通させることができ、内装材本体部に対する電子部品の取り付けと電子部品への給電とを同一の構成によって実現することができる。
【0010】
ここに開示される取付構造の好ましい態様において、前記抜止部材は、弾性変形可能な一対の挟持部を備えているとともに、前記突出端子部の前記内装材本体部よりも乗物室外側に突出された部分を、一対の前記挟持部によって弾性変形に抗して挟持することにより、前記取付孔に対して前記突出端子部を抜け止めする構成を備えている。上記構成によると、抜止部材によって取付孔を横切る形で突出端子部を挟持することができ、内装材本体部に対して電子部品を物理的に確かな構成で取り付けることができる。また、乗物室内側からの電子部品の変位によって、突出端子部は抜止部材に対して挿抜が自在な構成とされている。これにより、電子部品を任意のタイミングで着脱可能な取り付け構造が提供される。
【0011】
ここに開示される取付構造の好ましい態様において、前記突出端子部は、表面の少なくとも一部に前記導線部が配設されており、前記抜止部材は給電端子であって、一対の前記挟持部の対向する表面のうち、前記導線部に当接する位置に給電側導線部が配設されている。上記構成によると、突出端子部の表面に配した導線部と抜止部材の挟持部の対向面に配した給電側導線部とを導通させることができ、内装材本体部に対する電子部品の取り付けと電子部品への給電とを同一の構成によって実現することができる。
【0012】
ここに開示される取付構造の好ましい態様において、前記内装材本体部は、前記電子部品の外形に対応して乗物室外側に向けて後退した凹部を備えており、前記内装材本体部に前記電子部品を取付けた状態において、前記内装材本体部の前記凹部の周縁の乗物室内側の表面と、前記電子部品の乗物室内側の表面とは、面一をなす構成を有している。上記構成によると、内装材本体部に対して電子部品が突出した状態で取付けられることを回避でき、意匠性に優れた電子部品の取付構造が実現される。
【0013】
他の側面において、ここに開示される技術は、板状をなす内装材本体部と、前記内装材本体部に対して乗物室内側に配されると共に、前記内装材本体部に対して乗物室外側において給電される電子部品と、を備える電子部品付乗物用内装材を提供する。前記電子部品は、電子素子を備える電子部品本体部と、前記電子部品本体部から前記内装材本体部側に突出する係止部と、前記電子部品本体部から前記内装材本体部側に突出するとともに、前記電子素子に電気的に接続される導線部が配設されている突出端子部と、を備え、前記内装材本体部は、前記係止部を受ける係止受部を備えるとともに、前記突出端子部を挿通するための取付孔が貫通形成されており、前記電子部品は、前記係止部を前記係止受部に係止した状態で、前記突出端子部が乗物室内側から前記取付孔に挿通されているとともに、前記突出端子部は、前記内装材本体部よりも乗物室外側に突出した部分に抜止部材が取り付けられることによって前記取付孔に対して抜け止めされて、前記内装材本体部に取り付けられている。上記構成によると、内装材本体部に大きな開口を形成することなく内装材本体部に対して電子部品を取り付けることができ、内装材本体部と電子部品とが一体化(モジュール化)された電子部品付乗物用内装材が実現される。これにより、内装材本体部と電子部品とが一体化(モジュール化)された形態の取り扱い性に優れた電子部品付乗物用内装材が提供される。この電子部品付乗物用内装材は、例えば、当該乗物用内装材を乗物パネルに取り付ける際に抜け止め部材として給電端子を用いることによって、簡便かつ円滑に給電することができる。
【発明の効果】
【0014】
ここに開示される技術によれば、新規な電子部品の取付構造が提供される。また、ここに開示される技術によれば、この取付構造を採用した電子部品付乗物用内装材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る電子部品付乗物用内装材を採用した車両の断面図
図2】一実施形態に係る電子部品付乗物用内装材を乗物室内から見た斜視図
図3】一実施形態に係る照明装置を乗物室内から見た平面図
図4】一実施形態に係る電子部品の取付構造を説明する拡大断面図(図3におけるIV-IV断面に相当)
図5図3の照明装置の構成を説明する要部断面図
図6図5の照明装置の取付構造の要部分解斜視図
図7】他の実施形態に係る照明装置の構成を説明する要部断面図
図8】他の実施形態に係る電子部品の取付構造を説明する要部断面図
図9図7の照明装置の取付構造の要部分解斜視図
図10】従来の照明装置の構成を説明する断面図
図11】従来の電子部品の取付構造を説明する断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
≪実施形態1≫
以下、図1から図6を参照しつつ、実施形態1に係る電子部品取付構造1および電子部品付乗物用内装材10、ならびに照明装置20について説明する。ここに開示される電子部品取付構造1は、図1から図3に示すように、乗物としての車両2(自動車)の内装材、具体的には、車室(乗物室)における天井を構成するルーフトリム6(内装材本体部)の室内側に、電子部品の一例である照明装置20を取り付ける際に好ましく採用され得る。ルーフトリム6は、車両2の骨格をなす金属製のルーフパネル4の車内側に図示しないクリップ等により取付けられ、車室の意匠性と居住性とを高める部材である。なお、各図に示した符号F,Rr,L,R,U,Dはそれぞれ、乗物前後方向の前,後,乗物幅方向の左,右,鉛直方向の上,下を表す。また、符号IN,OUTは乗物室における室内側,室外側を表すとともに、照明装置20の厚み方向と一致している。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0017】
まず、照明装置20の構成について説明する。ここに開示される照明装置20は、車室の運転席上方に取付けられているマップランプであり、例えば図4に示すように、従来のこの種の照明装置よりも薄型であって軽量であることを特徴としている。すなわち、照明装置20は、図5に示すように、大まかには、基板21と、配線パターン22と、発光素子23と、透明樹脂層25と、意匠層26と、を備えることで、その本体部分20A(電子部品本体部)が構成されている。また、照明装置20は、例えば図4に示すように、ルーフトリム6に取付けるときの取り付け部材として、バスバーコネクタ27と、係止部28と、を備えている。
【0018】
基板21は、絶縁性を有し、発光素子23が発生する光に対して透明な樹脂フィルムによって構成されている。基板21は、これに限定されるものではないが、例えば厚みは1000μm以下(好ましくは30μm以上、典型的には50μm以上であって、好ましくは500μm以下、典型的には200μm以下)であって可撓性を有していることが好ましい。また、基板21を構成する樹脂は、後述するように任意の形状に容易に加工できることが望ましいとの観点から、これに限定されるものではないが、例えば熱可塑性の、ポリイミド(PI)や、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、アクリル樹脂等が好適例として挙げられる。
【0019】
なお、本明細書において基板と透明樹脂層についていう「透明」とは、上記光学素子が発光する光が透過し得ることを意味し、例えば、当該光の透過率が30%以上、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上であることをいう。光透過率は、例えば市販されている紫外可視近赤外分光光度計を用いて計測された値を採用できる。
【0020】
配線パターン22および発光素子23は、図5に示すように、基板21の一方の面(ここでは室外側)に備えられ、基板21の一方の面に電子回路24を構成している。発光素子23は、車室を照らす光の光源であって、電気信号に基づいて光(例えば電磁波)を発光することができる各種の素子を用いることができる。発光素子23が発する光は特に制限されず、例えば、紫外光領域(波長約100~400nm)、可視光領域(波長約360~830nm)、および赤外線領域(波長約780nm~1mm)のいずれかの光が含まれているとよい。発光素子23としては、例えば可視光領域の全域の光を照射することが可能な可視光LED(Light Emission Diode)や、赤外線通信やセンシング等を行うための赤外線LED、車室内部を殺菌するための紫外線LED等を好ましく用いることができる。発光素子23は、1つの照明装置20に1つまたは2つ以上が備えられていてもよい。2つ以上の発光素子23を備える場合、発光素子23が発する光は同じであってもよいし、一部または全部が異なっていてもよい。本実施形態の照明装置20は、図2に示すように、ルーフトリム6に取付けるときの左方と右方とに対応する位置に、それぞれ1つずつ発光素子23が備えられている。また電子回路24は、発光素子23の他に、図示しないスイッチング素子等の他の電子素子(狭義の電子部品であり得る。)を含んでいてもよい。発光素子23等の電子素子は、その入出力端子部が、後述する配線パターン22と電気的に接続するように、はんだ等の導電性結着材を介して基板21または配線パターン22上に実装される。このとき、発光素子23は、基板21の厚み方向で発光素子23が備えられている側(つまり、ここでは室外側)に向かって光を発生するように基板21または配線パターン22上に配置される。
【0021】
配線パターン22は、発光素子23等の電子素子と、図示しない外部電源とを電気的に接続するための要素であり、電気伝導性を有する導線部である。配線パターン22は、典型的には、一つの電子素子に対して、入力側と出力側とからなる一対の配線が備えられている。また、配線パターン22は、例えばタッチパネルのスイッチ電極等、他の電子素子の一部(導電性部分)を構成していてもよい。配線パターン22の形成方法は限定されないものの、ここに開示される技術において配線パターン22は、基板21の表面に一体的に形成されていることが好ましく、例えば、導電性インクを用いて印刷することで形成されていることが好ましい。印刷の手法は特に限定されず、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、凸版印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等であってよく、中でも無版印刷であるインクジェット印刷により形成されていることがより好ましい。また、配線パターン22は、重ね印刷によって嵩高く低抵抗に形成されていてもよい。導電性インクは、導電性媒体(導電性粒子)として、金や銀、白金等の高導電性材料や、銅、アルミニウム等の良導電性材料、酸化インジウムスズ(ITO)やフッ素ドープ酸化スズ(FTO)、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等の透明導電性材料等を含むものであってよく、配線パターン22の位置や求められる機能に応じて、2種以上の導電性インクを使い分けていてもよい。また導電性インクの硬化機構は特に制限されず、例えば、乾燥硬化型、紫外線硬化型、低温焼結型等の導電性インクを好ましく用いることができる。このような構成により、基板21と電子回路24とからなるプリント回路板が構成される。
【0022】
意匠層26は、図5に示すように、基板21の他方(ここでは室内側)の表面に形成され、照明装置20においては室内側に晒される意匠面を構成する。この意匠層26は、発光素子23からの発光を透過する光透過部26Bを備えている。また、意匠層26は、光透過部26B以外の部分である一般部26Aを備えていてもよい。光透過部26Bは、意匠層26のうちの一般部26Aよりも、発光素子23からの発光の透過率が相対的に高くなるようになっている。光透過部26Bの光透過率は、基板21の光透過率を100%(基準)としたとき、50%以上(例えば70%以上、好ましくは90%以上)であるとよく、光透過部26Bは、例えば図5に示すように、意匠層26において一般部26Aの中の開口等として形成され、意匠層26が存在せずに基板21が露出された部分として構成されていてもよい。また、意匠層26のうち、光透過部26Bでない一般部26Aの光透過率は、これに限定されるものではないが、基板21の光透過率を100%(基準)としたとき、70%以下(例えば70%未満、典型的には50%以下や50%未満、好ましくは30%以下や10%以下)であってよい。
【0023】
意匠層26の形成方法は限定されないものの、ここに開示される技術において意匠層26は、基板21の表面に一体的に形成されていることが好ましく、例えば、インク(典型的には、カラーインク)を用いて任意の意匠を印刷することで形成されていることが好ましい。この場合、一般部26Aと光透過部26Bとはそれぞれ、発光素子23が発光する光に対して所定の光透過率を有する塗膜を形成することができるインクを用いることで形成することができる。印刷の手法は特に限定されず、例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷、凸版印刷、グラビア印刷、オフセット印刷等であってよく、中でも無版印刷であるインクジェット印刷により形成されていることがより好ましい。インクは、色材として顔料を含む顔料インクや、色材として染料を含む水系インクであってよく、例えば、一般に、顔料インクを用いることで相対的に可視光に対する光透過率の低い意匠層26(例えば一般部26A)を好適に形成することができ、水系インクを用いることで相対的に可視光に対する光透過率の高い意匠層26(例えば光透過部26B)を好適に形成することができる。また、例えば、赤外線透過材料(一例として、コバルトブルー、ビスマスイエロー、ペリレンレッド、フタロシアニン系化合物、アゾ系化合物等)を含むインクを用いることで相対的に赤外線に対する光透過率の高い(より好ましくは可視光および紫外線に対する光透過率が低い)光透過部26Bを好適に形成することができ、赤外線反射材料または赤外線吸収材料(例えば、酸化チタン、ナフタロシアニン系化合物等)を含むインクを用いることで相対的に赤外線に対する光透過率の低い一般部26Aを好適に形成することができる。なお、一般部26Aについては、例えば、発光素子23が発光する光に対して透過性の低い層を下地層として形成し、この下地層の上に任意のカラーインクで所望の意匠を備える層を形成することで構成してもよい。
【0024】
意匠層26を形成するためのインクの硬化機構は特に制限されず、例えば、乾燥硬化型、紫外線硬化型、低温焼結型等のインクを好適に用いることができる。意匠層26は、重ね印刷や3D印刷等によって嵩高く、立体的に形成されていてもよい。意匠層26は、上記の光透過特性を備える限り、反射防止、表面保護等の機能を有する層が重ねられていてもよい。このような構成により、基板21と電子回路24と意匠層26とからなる、意匠性を備えたプリント回路板が構成される。
【0025】
透明樹脂層25は、照明装置20の本体部分20Aの骨格をなすとともに、電子回路24を保護する要素であり、図5に示すように、配線パターン22および発光素子23等を含む電子回路24(プリント回路板)を包埋した状態で基板21の一方の表面、すなわち車両の室外側の表面に、一体的に形成される。これにより、意匠層26と、基板21と、電子回路24と、透明樹脂層25とは、この順に一体的に積層された積層構造を構築している。また、透明樹脂層25は、本体部分20Aにプリズム機能を付与する要素でもある。すなわち、透明樹脂層25の基板21とは反対側の表面(ここでは室外側の表面)には、発光素子23から発光される光を光透過部26Bに向けて反射させるプリズム部25Aが備えられている。これにより、照明装置20がルーフトリム6に取付けられたとき、発光素子23から発光される光は、まずは室内側とは反対の室外側に向けて透明樹脂層25を進行し、次いでプリズム部25Aにおいて反射されることで透明樹脂層25を室内側の光透過部26Bへと向けて進み、最終的に光透過部26Bから照明装置20の外部(すなわち室内側)に出射されるようになっている。
【0026】
透明樹脂層25の厚みは、照明装置20が所望の強度を具備し得る程度の厚みであってよく、これに限定されるものではないが、例えば1mm以上(典型的には2mm以上)であってよく、30mm以下(例えば10mm以下)とすることができる。プリズム部25Aの形状は、発光素子23と光透過部26Bとの位置、透明樹脂層25の厚み、および光透過部26Bの形状等に応じて、発光素子23から発光した光をできるだけ多く光透過部26Bから出射できるように設計することができる。透明樹脂層25を構成する樹脂は、発光素子23が発生する光に対して透明であればよく、更には屈折率が高く耐久性に優れていることが好ましい。なお、後述するように、プリズム部25Aをモールド成型によって形成するとの観点からは、透明樹脂層25は、例えば熱可塑性の、ポリカーボネート、アクリル樹脂等によって形成されていることが好ましい。
【0027】
バスバーコネクタ27は、配線パターン22と外部接続端子とを安定して電気的に接続するための接続部材であり、例えば図3および図4に示すように、照明装置20をルーフトリム6に取付けるとき、照明装置20の本体部分20Aの後方に相当する側の端部において2カ所に設けられている。バスバーコネクタ27は、ここに開示される突出端子部の一例である。また、バスバーコネクタ27は、図6に示すように、扁平な略直方体形状のコネクタ本体27Aと、このコネクタ本体27Aに配線されているバスバー部材27B(導線部)と、コネクタ本体27Aを厚み方向で貫通する挿入孔27Cと、を備えている。より具体的には、バスバーコネクタ27は、透明樹脂層25を厚み方向で貫通するかたちで透明樹脂層25によって基板21に対して固定されており、その基板21側の端部においてバスバー部材27Bと配線パターン22とが電気的に接続されている。また、バスバーコネクタ27は、本体部分20Aのプリズム部25Aが設けられている側の表面から室外側に向けて突出しており、この突出部分において挿入孔27Cが備えられている。挿入孔27Cの孔側壁における一つの側壁面は、透明樹脂層25の表面とほぼ面一をなしており、コネクタ本体27Aに配されたバスバー部材27Bは、挿入孔27Cのこの一つの側壁面において外部に露出されている。バスバー部材27Bは、典型的には、配線パターン22の一つの配線に対して一つずつ設けられており、側壁面において各配線に連なる電気接点を提供している。なお、後で詳しく説明するが、本実施形態におけるバスバーコネクタ27は、ここに開示される取付構造1において、本体部分20Aの意匠層26とは反対側の表面から突出することで、照明装置20をルーフトリム6に取付ける際の取り付け部材としても機能する。換言すると、バスバーコネクタ27は、照明装置20における電気接続端子と取り付け部材との両方の機能を兼ね備えている。
【0028】
係止部28は、例えば図3に示すように、照明装置20をルーフトリム6に取付けるときの本体部分20Aの前方に相当する側の端部において2カ所に設けられており、照明装置20をルーフトリム6に取付ける際の取り付け部材として機能する。係止部28は、図4に示すように、本体部分20Aの室外側の表面からルーフトリム6に向けて突出するとともに、その先端部が前方に向けて延出されており、断面略L字型の形状をなしている。後で詳しく説明するが、この係止部28によって、照明装置20の前方をルーフトリム6に係止することができる。係止部28は、例えば、透明樹脂層25や基板21と同一の樹脂によって構成されていてもよく、透明樹脂層25と一体的に形成されている。
【0029】
このような照明装置20の製造方法は特に制限されないが、例えば以下の手順で好適に製造することができる。すなわち、まず、基板21に対して、配線パターン22と意匠層26とをその両面にそれぞれ印刷することで(S1、S2)、プリント配線板を用意する。本実施形態において配線パターン22は、図6に示すように、厚み方向において意匠層26の一般部26Aと重なる位置に主として印刷されているものの、配線パターン22の一部は、意匠層26の光透過部26Bと重なる位置に印刷されている。そして、少なくとも光透過部26Bと重なる位置においては、配線パターン22は、透明導電性材料を含む導電性インクによって印刷されており、透明を呈している。また、本実施形態において意匠層26は、色材として顔料を含むカラーインクによって印刷されており、意匠層26に重なる位置に印刷された配線パターン22が室内側から透けて見えることのない構成となっている。そしてこのプリント配線板の配線パターン22上の適切な位置に、電子回路24とバスバーコネクタ27とをそれぞれ実装し(S3,S4)、プリント配線回路を用意する。本実施形態において発光素子23は、意匠層26の光透過部26Bと重なる位置に配されており、発光素子23からの光の出射方向は、概ね基板21の厚み方向に沿うように調整されている。次いで、予め、プリズム部25Aに対応する形状のキャビティを備える透明樹脂層形成用の射出成形金型を用意しておき、この金型内に用意したプリント配線回路を組み込んだ状態で、キャビティ内に未硬化の状態の透明樹脂層用樹脂組成物を充填し(S5)、その後、樹脂組成物を硬化させる(S6)。本実施形態においてプリズム部25Aは、図5に示すように、光透過部26Bおよび発光素子23と重なる位置に形成されており、その表面形状は室外側に向かって突出するかたちで概ね滑らかに湾曲したものとなっている。これにより、意匠層26を備えるプリント配線回路に対して透明樹脂層25を形成し、照明装置20の本体部分20Aを得ることができる。また、発光素子23からの発光を、光透過部26Bを通じて室内側に出射させることができる。
【0030】
なお、配線パターン22の印刷(S1)と意匠層26の印刷(S2)とは、いずれを先に実施してもよく、意匠層26の印刷(S2)については、透明樹脂層25の形成(S6)の後に実施してもよい。また、電子回路24の実装(S3)とバスバーコネクタ27の実装(S4)とについても、いずれを先に実施してもよく、また、これらの少なくとも一方の部材の実装は、インサート成形法によって透明樹脂層25の形成(S5、S6)と同時に実施してもよい。また、係止部28については、射出成形金型に係止部28に対応するキャビティを形成しておくことで、透明樹脂層25と一体的に形成するようにしてもよいし、あるいは、予め別部材として係止部28を形成しておき、この係止部28をインサート成形法によって透明樹脂層25を形成する際に一体的に取付けるようにしてもよい。これにより、照明装置20を、一体的な積層構造を有する電子部品として製造することができる。
【0031】
なお、射出成形によって透明樹脂層25を形成する際には、射出成形金型を透明樹脂層用樹脂組成物の融点以上の高い温度にまで加熱する。そこで、この金型の加熱を利用して、照明装置20の意匠層26側の表面が任意の外形を備えるように加工してもよい。すなわち、射出成形金型について、プリント配線回路が組み込まれる側の金型(例えば下型)を、照明装置20の任意の外形に対応したキャビティを備えるものとして用意する。そして、透明樹脂層25の射出成形に際しては、プリント配線回路を金型内に組み込んだ際に、まずは、金型を基板21の軟化点付近にまで加熱し、プリント配線回路をこの金型に沿う形状に圧縮成形する(S5a)。そしてその後、キャビティ内に未硬化の状態の透明樹脂層用樹脂組成物を充填することで(S5)、透明樹脂層25を射出成形するとよい(S6)。これにより、意匠層26の側に任意の立体意匠を備えた照明装置20を作製することができる。
【0032】
ルーフトリム6は、例えば図4に示すように、繊維がバインダとしての熱可塑性樹脂により結着されて構成されてなる基材6Aを主体として構成されており、その室内側の表面に表皮材6Bが貼着されることで、意匠面を構成している。ルーフトリム6の照明装置20の取り付け領域には、照明装置20の外形に対応してルーフトリム6が室外側に向けて後退してなる凹部8が形成されている。そしてこの凹部8には、照明装置20の係止部28に対応する位置に、係止部28の先端が挿通可能な貫通孔9Aが設けられている。照明装置20は、係止部28を貫通孔9Aに挿通した状態で前方に向けてスライドさせることで、係止部28が、ルーフトリム6の貫通孔9Aの周縁を室外側から係止できる構成となっている。これにより、照明装置20の前方を、ルーフトリム6に対して係止することができる。貫通孔9Aは、係止部28を受ける係止受部の一例である。
【0033】
凹部8の照明装置20のバスバーコネクタ27に対応する位置には、バスバーコネクタ27が挿通可能な貫通孔9Bが設けられている。また、ここに開示される取付構造1においては、バスバーコネクタ27の挿入孔27Cに挿通可能であるとともに、挿通方向に沿う寸法がコネクタ本体27Aの厚み方向の寸法よりも大きい(長い)板状の抜止部材9Cが用意されている。そして、照明装置20は、バスバーコネクタ27を貫通孔9Bに挿通させた状態で、ルーフトリム6よりも室外側に突出しているバスバーコネクタ27の挿入孔27Cに抜止部材9Cを挿通することで、照明装置20の自重によってバスバーコネクタ27が貫通孔9Bから抜け落ちることが抑制されている。これにより、照明装置20は、前方をルーフトリム6に対して係止した状態で、後方をルーフトリム6に固定することができる。換言すると、ルーフトリム6に対して照明装置20を取付けることができる。貫通孔9Bは、バスバーコネクタ27を挿通するための取付孔の一例である。
【0034】
なお、ルーフトリム6が車両のルーフパネル4に固定されていない状態においては、照明装置20は、バスバーコネクタ27の挿入孔27Cに任意の抜止部材9Cを挿通することでルーフトリム6に取付けることができる。そして、ルーフトリム6を車両のルーフパネル4に固定する際には、ルーフトリム6とルーフパネル4との間に配索されるルーフハーネス30のコネクタ部分32を、抜止部材9Cとして用いることができる。図6に示すように、バスバーコネクタ27の挿入孔27Cの側壁面には、バスバー部材27Bが露出された電気接点が配列されている。ルーフハーネス30のコネクタ部分32には、その表面に接続端子34が露出するかたちで配列されている。したがって、バスバーコネクタ27の挿入孔27Cに、ルーフハーネス30のコネクタ部分32を挿通することで、照明装置20のバスバー部材27B(導線部)と、ルーフハーネス30の接続端子34(給電側導線部)とを、電気的に接続することができる。これにより、車両のバッテリーから、ルーフハーネス30およびバスバーコネクタ27を通じて、照明装置20に電力を供給することができる。
【0035】
以上の車室のルーフトリム6に対する照明装置20の取付構造において、ルーフトリム6は板状をなし、照明装置20は、ルーフトリム6に対して室内側に配されるとともに、ルーフトリム6に対して室外側において給電されるものであって、発光素子23を備える本体部分20Aと、本体部分20Aからルーフトリム6側に突出する係止部28と、本体部分20Aからルーフトリム6側に突出するとともに、発光素子23に電気的に接続されるバスバー部材27Bが設けられているバスバーコネクタ27と、を備えており、ルーフトリム6は、係止部28を受ける貫通孔9Aを備えるとともに、バスバーコネクタ27を挿通するための貫通孔9Bが貫通形成されている。そして照明装置20は、係止部28を貫通孔9Aに係止した状態で、バスバーコネクタ27が室内側から貫通孔9Bに挿通されているとともに、バスバーコネクタ27のうちルーフトリム6よりも室外側に突出した部分に抜止部材9Cが取り付けられることによって、貫通孔9Bに対して抜け止めされるとともに、ルーフトリム6に取り付けられている。上記構成によると、ルーフトリム6に大きな開口を形成することなく、ルーフトリム6に対して照明装置20を室内側に配した状態で取り付けることができる。
【0036】
また上記構成において、抜止部材9Cは、電気を供給するためのルーフハーネス30のコネクタ部分32(給電端子)であり、バスバーコネクタ27は、ルーフトリム6よりも室外側において、ルーフハーネス30のコネクタ部分32によって給電可能な状態で抜け止めされている。これにより、抜止部材9Cとしてルーフハーネス30のコネクタ部分32を用いることで、ルーフトリム6に対して照明装置20を抜け止めすると同時に、照明装置20に対して給電することができる。これによって、部品点数を減らして、照明装置20をルーフトリム6に簡便かつ効率よく取り付けることができる。
【0037】
また上記構成において、バスバーコネクタ27は、室内側から貫通孔9Bに挿通された状態でルーフトリム6よりも室外側に突出される部分において、ルーフトリム6の室外側の表面に沿って貫通する挿入孔27C(嵌合孔)が形成されており、抜止部材9Cは、ルーフトリム6の室外側の表面に沿って挿入孔27Cに挿通されることによって貫通孔9Bを横切り、貫通孔9Bに対してバスバーコネクタ27を抜け止めする構成を備えている。これにより、貫通孔9Bを横切る形で抜止部材9Cを挿入孔27Cに挿通することができ、抜止部材9Cとしてルーフハーネス30のコネクタ部分32を用いることで、ルーフトリム6に対して照明装置20を物理的に確かな構成で取り付けることができる。
【0038】
また上記構成において、バスバーコネクタ27は、挿入孔27Cの側壁面(孔側面)にバスバー部材27Bが配設されており、抜止部材9Cはルーフハーネス30のコネクタ部分32であって、挿入孔27Cに挿通された状態でバスバー部材27Bに当接する位置にルーフハーネス30の接続端子34(給電側導線部)が配設されている。これにより、バスバーコネクタ27の側壁面に配したバスバー部材27Bと抜止部材9Cの表面に配した接続端子34とを導通させることができ、ルーフトリム6に対する照明装置20の取り付けと照明装置20への給電とを同一の構成によって実現することができる。
【0039】
また上記構成において、ルーフトリム6は、照明装置20の外形に対応して室外側に向けて後退した凹部8を備えており、ルーフトリム6に照明装置20を取付けた状態において、ルーフトリム6の凹部8の周縁の室内側の表面と、照明装置20の室内側の表面とは、面一をなす構成を有している。これにより、ルーフトリム6に対して照明装置20が室内側に突出した状態で取付けられることを回避でき、意匠性に優れた取付構造1が実現される。
【0040】
上記実施形態において、電子部品付乗物用内装材10は、上記取付構造1を採用したものであって、板状をなすルーフトリム6と、ルーフトリム6に対して室内側に配されると共に、ルーフトリム6に対して室外側において給電される照明装置20(電子部品)と、を備えている。そして照明装置20は、係止部28を貫通孔9A(係止受部)に係止した状態で、バスバーコネクタ27が室内側から貫通孔9Bに挿通されているとともに、バスバーコネクタ27は、ルーフトリム6よりも室外側に突出した部分に抜止部材9Cが取り付けられることによって貫通孔9Bに対して抜け止めされて、ルーフトリム6に取り付けられている。これにより、ルーフトリム6に大きな開口を形成することなくルーフトリム6に対して照明装置20(電子部品)を取り付けることができ、ルーフトリム6と電子部品とが一体化(モジュール化)された電子部品付乗物用内装材10が実現される。これにより、ルーフトリム6と電子部品とが一体化(モジュール化)された形態の取り扱い性に優れた電子部品付乗物用内装材10が提供される。この電子部品付乗物用内装材10は、例えば、ルーフトリム6をルーフパネル4に取り付ける際に抜止部材9Cとしてルーフハーネス30のコネクタ部分32を用いることによって、簡便かつ円滑に給電することができる。
【0041】
≪参考例≫
なお、参考のために、従来の照明装置220の一例と、その取付構造201について図10および図11を参照して説明する。従来の照明装置220は、例えば図10に示すように、光源としてのLED223と配線パターン222等とが備えられた基板221に対し、別部材としての意匠面を備えるカバー部材226が、室内側に取付けられている。そして、LED223は室内側に向けて発光し、その光はカバー部材226の光通過部226Bを通じて室内に照射される。このような構成の照明装置220は、一般に、図11に示すように、ブラケット4Aを介して車両2の骨格をなすルーフパネル4に支持されるとともに、ルーフトリム6に取り付けられる。したがって、ルーフパネル4とルーフトリム6との間には、ブラケット4Aを配するためのスペースが必要になるとともに、ルーフトリム6には、大きな開口6Cを形成する必要があった。これに対し、ここに開示される照明装置20を取付ける取付構造1においては、ルーフトリム6に大きな開口6Cを形成することなく、照明装置20をルーフトリム6にのみ直接取付ければよい。また、ルーフパネル4とルーフトリム6との間にブラケット4Aを設ける必要が無く、ルーフパネル4に対してルーフトリム6を近接させることができ、車両2の室内空間を広く確保することができるという利点がある。
【0042】
≪実施形態2≫
実施形態2の電子部品取付構造101および電子部品付乗物用内装材110、ならびに照明装置120について図7から図9を参照して説明する。なお、実施形態1と共通する構成、作用、および効果については重複するため、その説明を省略する。また、実施形態1と同じ構成については同一の符号を用いるものとする。実施形態1の照明装置20において、発光素子23は、光透過部26Bと重なる位置に配されており、プリズム部25Aの表面形状は、室外側に向かって突出するかたちで概ね滑らかに湾曲していた。また、バスバーコネクタ27は挿入孔27Cを備えており、挿入孔27Cに抜止部材9Cを挿通することで、照明装置20をルーフトリム6に取付けるようにしていた。
【0043】
これに対し、実施形態2の照明装置120において、発光素子23および配線パターン22は、図7に示すように、意匠層26の一般部26Aと重なる位置に配されているとともに、プリズム部125Aについては光透過部26Bと重なる位置に配されている。そして、発光素子23からの光の出射方向は、プリズム部125Aに向けて厚み方向に対して傾斜するように調整されている。また、プリズム部125Aは、発光素子23に近い側では透明樹脂層25の厚みが相対的に厚くかつ発光素子23からの光を相対的に大きく屈折できるように、また、発光素子23から遠い側では透明樹脂層25の厚みが相対的に薄くかつ発光素子23からの光を相対的に緩やかに屈折できるように、その表面形状が調整されている。これにより、照明装置120は、発光素子23が室内側からの外観に晒されることがなく、また、プリズム部125Aから反射される光が発光素子23によって遮られることのないような構成となっている。
【0044】
また、電子部品付乗物用内装材110において、照明装置120のバスバーコネクタ127は、図8および図9に示すように、挿入孔のない板状であって、ルーフトリム6の貫通孔9Bに挿通されたときに室外側に突出する突出部分の表面において、バスバー部材127Bが配列されている。このようなバスバーコネクタ127に対して、抜止部材109Cは、弾性変形可能な一対の挟持部109Dを備えた断面略コの字型形状を有しており、この挟持部109Dの離間距離が、バスバーコネクタ127のコネクタ本体127Aの厚み方向の寸法よりもやや小さくなる構成とされている。そして、照明装置120は、係止部28をルーフトリム6の貫通孔9Aに係止し、バスバーコネクタ127を貫通孔9Bに挿通した状態で、この一対の挟持部109Dによって、バスバーコネクタ127の突出部分を弾性変形に抗して挟持することにより、ルーフトリム6の貫通孔9Bに対してバスバーコネクタ127を抜け止めすることができる構成となっている。また、このような電子部品付乗物用内装材110に対して、ルーフハーネス130は、コネクタ部分132がこの抜止部材109Cと共通の構成を備えており、一対の挟持部109Dの対向する表面のうち、バスバーコネクタ127のバスバー部材127Bと当接する位置に接続端子134が配設されている。また、コネクタ部分132は、図8に示すように、電子部品付乗物用内装材110をルーフパネル4に取付けたときに、貫通孔9Bに対してコネクタ部分132が所定の位置に配されるように、ブラケット4Aに固定されている。そして、電子部品付乗物用内装材110をルーフパネル4に取付ける際には、係止部28をルーフトリム6の貫通孔9Aに係止した状態で、バスバーコネクタ127を貫通孔9Bに挿通する。これにより、ルーフトリム6の室外側に突出したバスバーコネクタ127が、ルーフハーネス130のコネクタ部分132の一対の挟持部109Dの間に挿入されるとともに、一対の挟持部109Dによって挟持される。これにより、電子部品付乗物用内装材110をルーフパネル4に取付けたときに、照明装置120をルーフトリム6の貫通孔9Bに対して抜け止めしつつ、照明装置120に対して給電することができる。
【0045】
実施形態2の構成においては、抜止部材109Cは、弾性変形可能な一対の挟持部109Dを備えているとともに、バスバーコネクタ127のルーフトリム6よりも室外側に突出された部分を、一対の挟持部109Dによって弾性変形に抗して挟持することにより、貫通孔9B(取付孔)に対してバスバーコネクタ127を抜け止めするようにしている。このような構成によると、抜止部材9Cによって貫通孔9Bを横切る形でバスバーコネクタ127を挟持することができ、ルーフトリム6に対して照明装置120を物理的に確かな構成で取り付けることができる。
【0046】
また、上記構成において、バスバーコネクタ127は、表面の少なくとも一部にバスバー部材127Bが配設されており、抜止部材9Cはルーフハーネス130のコネクタ部分132であって、一対の挟持部109Dの対向する表面のうち、バスバー部材127Bに当接する位置にルーフハーネス130の接続端子134が配設されている。このような構成によっても、バスバーコネクタ127の表面に配したバスバー部材127B(導線部)とルーフハーネス130の挟持部109Dの対向面に配した接続端子134(給電側導線部)とを導通させることができ、ルーフトリム6に対する照明装置120の取り付けと照明装置120への給電とを同一の構成によって実現することができる。また、抜止部材9Cとしてのコネクタ部分132に対し、バスバーコネクタ127は、室内側からの照明装置120の変位によって、挿抜が自在な構成とされている。これにより、ルーフパネル4に取付けられたルーフトリム6に対し、照明装置120を任意のタイミングで着脱可能な取り付け構造が提供される。
【0047】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0048】
(1)電子部品はマップランプに限定されず、ルームランプやカーテシランプ等の他の照明装置や、カメラ等のセンサ、スピーカや芳香機等の電気装置等であってよい。
(2)また、内装材本体部は、ルーフトリムに限定されず、ドアトリムやサイドトリム、インナーパネル等であってよい。
(3)上記実施形態で例示した電子部品の取付構造は、車両用に提供されるもの限られず、種々の乗物において提供されるものであってもよい。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物についても、上記電子部品の取付構造
を適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
1,101…電子部品取付構造、2…車両、6…ルーフトリム(内装材本体部)、9C、109C…抜止部材、10…電子部品付乗物用内装材、20,120・・・照明装置、21: 基板、22…配線パターン、23…発光素子、25…透明樹脂層、25A,125A…プリズム部、26…意匠層、26A…一般部、26B…光透過部、27,127…バスバーコネクタ、28…係止部、30,130…ルーフハーネス、32,132…コネクタ部分、34,134…接続端子、109D・・・挟持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11