(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】表皮材、及び内装材
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20240130BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20240130BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B60N2/58
B32B5/02
B60R13/02 B
(21)【出願番号】P 2020116857
(22)【出願日】2020-07-07
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 健司
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/225304(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0186058(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/58
B32B 5/02
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の繊維集合体を備えた表皮材であって、
前記繊維集合体は、カーボンブラックを含まず、かつ単繊維径が1μmより大きく5μm以下の複数の単繊維を含み、
前記単繊維の繊維横断面の外形が略三角形であり、
各前記単繊維は、それぞれ
3つの平面部を有し、
前記繊維集合体では、
以下の要件を満たす箇所が存在している、表皮材。
[要件]:
2以上の前記単繊維に関し、
各前記単繊維について、3つの前記平面部から1つの前記平面部を選択したときに、各前記単繊維には、略同一方向である第1方向を向く前記平面部が存在し、
各前記単繊維について、3つの前記平面部から他の1つの前記平面部を選択したときに、各前記単繊維には、略同一方向である第2方向を向く前記平面部が存在している。
但し、各前記単繊維において、選択した1つの前記平面部と、他の1つの前記平面部とは、異なる前記平面部であり、
前記第1方向と前記第2方向とは、異なる方向である。
【請求項2】
前記平面部は、近赤外線反射性を有する、請求項1に記載の表皮材。
【請求項3】
前記繊維集合体は、織物又は編物である、請求項1
又は請求項
2に記載の表皮材。
【請求項4】
前記単繊維は、合成繊維である、請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の表皮材。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の表皮材を備える、内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、表皮材、及び内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、遮熱機能の優れた表皮材が開示されている。具体的には、繊維径が1μmより大きく5μm以下の繊維が含まれ、この数μm程度の繊維径の繊維が占有する体積率が3%以上20%以下であり、かつZ軸方向の配向テンソルが0.42以下である表皮材は、優れた近赤外線の反射性能を有することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この文献の技術は、一定の繊維配向(配向テンソル)を持たせているものの、太陽光が入射する方向に対して、遮熱効果を持つ繊維がランダムに配置されている。よって、透過光が、車室内の部品等の蓄熱を促進するおそれがあった。
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、太陽光の透過率を低減して、太陽光由来の蓄熱を低減することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔1〕シート状の繊維集合体を備えた表皮材であって、
前記繊維集合体は、カーボンブラックを含まず、かつ単繊維径が1μmより大きく5μm以下の複数の単繊維を含み、
各前記単繊維は、それぞれ平面部を有し、
前記繊維集合体では、2以上の前記単繊維の各前記平面部が略同一方向を向いている箇所が存在している、表皮材。
【発明の効果】
【0006】
本開示の表皮材では2以上の単繊維の各平面部が略同一方向を向いている箇所が存在しているから、太陽光の入射方向に対して、2以上の単繊維の平面部を略同一方向に向けることができる。従って、太陽光の反射率が向上して、太陽光の透過率が低減し、太陽光由来の蓄熱を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示について、本開示による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明する。
【
図1】実施形態の一例の表皮材(繊維集合体)の斜視図である。
【
図3】実施形態の一例の表皮材の部分拡大斜視図である。
【
図5】略三角断面の単繊維について、光の入射角度と光線透過率との関係を示す図である。
【
図6】丸断面の単繊維について、光の入射角度と光線透過率との関係を示す図である。
【
図7】2以上の単繊維の各平面部が略同一方向を向いている箇所の拡大断面図である。
【
図8】2以上の単繊維の各平面部が略同一方向を向いている箇所の拡大断面図である。
【
図9】実施形態の一例の表皮材(繊維集合体)の平面図である。
【
図11】表皮材の使用状態の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
ここで、本開示の望ましい例を示す。
〔2〕前記平面部は、近赤外線反射性を有する、〔1〕に記載の表皮材。
本表皮材は、近赤外線の反射効率が高いから、遮熱機能に優れる。
【0009】
〔3〕前記単繊維の繊維横断面の外形が略三角形である、〔1〕又は〔2〕に記載の表皮材。
本表皮材では、単繊維に3つの平面部が存在し、3つの平面部を使って反射できるから、太陽光の入射方向の変化にも柔軟に対応できる。
【0010】
〔4〕前記繊維集合体は、織物又は編物である、〔1〕から〔3〕のいずれか一項に記載の表皮材。
繊維集合体が織物又は編物であると、各単繊維を拘束して平面部を略同一方向に向けやすい。
【0011】
〔5〕前記単繊維は、合成繊維である、〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の表皮材。
1μmより大きく5μm以下の単繊維が合成繊維であると製造しやすい。
【0012】
〔6〕〔1〕から〔5〕のいずれか一項に記載の表皮材を備える、内装材。
本内装材は、近赤外線の反射効率が高いから、遮熱機能に優れる。
【0013】
ここで示される事項は例示的なもの及び本開示の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本開示の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本開示の根本的な理解のために必要である程度以上に本開示の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本開示の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0014】
以下、本開示の実施形態を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「~」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10~20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10~20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。なお、本開示における図面は、物を概念的に示したものであり、それらの構成を正確に示したものではない。
【0015】
1.表皮材1
本実施形態の表皮材1は、シート状の繊維集合体3を備える。繊維集合体3は、カーボンブラックを含まず、かつ単繊維径が1μmより大きく5μm以下の複数の単繊維5を含む。
図1には、繊維集合体3の例として、経糸に単繊維5を用いた織物が示されている。
図1では、単繊維5が図面横方向に延びるように配されている様子が模式的に示されている。なお、
図2では、単繊維5がランダムに配された従来例の表皮材10が模式的に示されている。
図3は、
図1の織物である繊維集合体3から緯糸を省略して経糸(単繊維5)のみを表示した模式図を示している。
表皮材1は、繊維集合体3からなってもよい。表皮材1は、繊維集合体3の他に、他の構成要素を備えていてもよい。他の構成要素としては、繊維集合体3の表面に設けられる表面層、繊維集合体3の裏面に設けられる裏面層が例示される。裏面層は、例えば、バッキング層やウレタンフォーム層が好適に挙げられる。バッキング層は、表皮材1を補強するため、及び/又は接着剤の含侵を防ぐためのコーティング層である。
【0016】
(1)単繊維5
(1.1)カーボンブラック
本実施形態では、繊維集合体3に含まれる単繊維5には、カーボンブラックが含まれていない。カーボンブラックが含まれると、繊維集合体3の反射性能が低下するからである。
【0017】
(1.2)単繊維5の単繊維径
本実施形態では、繊維集合体3に含まれる単繊維5の単繊維径は、1μmより大きく5μm以下であり、好ましくは2μm以上5μm以下である。単繊維径がこの範囲内であると、表皮材1の近赤外線に対する反射性能が優れる。よって、表皮材1により覆われた各種物品の温度上昇が抑制される。
単繊維径がこの範囲内となると反射性能が優れる理由は定かではないが、単繊維径がこの範囲内となると、単繊維径が近赤外線波長と同等から数倍の領域内となり、ミー散乱と呼ばれる光の散乱現象が起きるためであると推測される。
単繊維5の断面形状は異形断面である。断面形状の外接円の直径が単繊維径である。なお、単繊維径は、走査型電子顕微鏡で単繊維5の横断面を撮影することにより測定可能である。
【0018】
(1.3)単繊維5の形状
単繊維5は、平面部6を有した形状とされている。
図4には、平面部6を有する単繊維5の一例が示されている。
単繊維5の単糸断面形状は、平面部6が存在する単繊維5の断面形状である限り、特に限定されない。単糸断面形状として、丸断面以外の異形断面が例示される。異形断面の形状としては、略三角断面、略四角断面、略五角断面等が好適に例示される。つまり、単繊維5の繊維横断面の外形は、略三角形、略四角形、略五角形が好ましい。これらの形状にすると、近赤外線を反射する面が複数存在することになり、近赤外線の反射性能が優れる。略三角形には、角が丸まった三角形、辺が緩やかな曲線を有する三角形等が含まれる。略四角形には、角が丸まった四角形、辺が緩やかな曲線を有する四角形等が含まれる。略五角形には、角が丸まった五角形、辺が緩やかな曲線を有する五角形等が含まれる。これらの形状の中でも、繊維を密に配置して反射面を増す、あるいは反射角の均一性を増す観点から、略三角形であることが好ましい。また、略三角形の中でも、3つの辺の長さが略同一の略正三角形が好ましい。略正三角形とすることで、3つの側面の幅を、近赤外線の反射効率が高くなる寸法に揃えることができ、3つの側面を近赤外線の反射面として機能させることができる。
異形断面の単繊維5を得る方法は、特に限定されない。例えば、溶融紡糸時に用いる口金の形状を異形にする方法が例示される。
【0019】
(1.4)光の入射角度と光線透過率との関係についての幾何光学解析例
平面部6を有する略三角断面の単繊維5、及び丸断面の単繊維のそれぞれについて、入射角度と光線透過率との関係について検討した。
図5は、略三角断面の単繊維5(径2μm)を用いた場合のシミュレーション結果を示している。単繊維5をxyz空間内に
図5のように配置した場合を検討する。単繊維5の軸は、y軸に平行に配置されている。この場合において、光(波長:550nm)をy軸方向から入射させる。すなわち、単繊維5に対する入射角度が0°の場合には、光線の透過率は79.3%となる。単繊維5に対する入射角度が30°の場合、すなわち、単繊維5の軸に対する入射角度が30°の場合には、光線の透過率は64.4%となる。単繊維5に対する入射角度が60°の場合、すなわち、単繊維5の軸に対する入射角度が60°の場合には、光線の透過率は28.0%となる。単繊維5に対する入射角度が90°の場合、すなわち、単繊維5の軸に対する入射角度が90°の場合には、光線の透過率は28.0%となる。
【0020】
図6は、丸断面の単繊維(径2μm)を用いた場合のシミュレーション結果を示している。単繊維をxyz空間内に
図6のように配置した場合を検討する。単繊維の軸は、y軸と平行に配置されている。この場合において、光(波長:550nm)をy軸方向から入射させる。すなわち、単繊維に対する入射角度が0°の場合には、透過した光線の透過率は85.7%となる。単繊維に対する入射角度が30°の場合、すなわち、単繊維5の軸に対する入射角度が30°の場合には、光線の透過率は87.8%となる。単繊維に対する入射角度が60°の場合、すなわち、単繊維5の軸に対する入射角度が60°の場合には、光線の透過率は89.1%となる。単繊維に対する入射角度が90°の場合、すなわち、単繊維の軸に対する入射角度が90°の場合には、光線の透過率は89.5%となる。
【0021】
以上のシミュレーション結果から、次のことが分かる。平面部を有しない丸断面の単繊維の場合には、光の入射角度を調整しても光反射率はほとんど変化しない。
平面部6を有する略三角断面の単繊維5を用いると、光の入射角度を調整することで光反射率が変化する。単繊維5の軸と、近赤外線の入射方向と、のなす角度を、30度以上90度以下に設定することで、光線透過率が低減する。
【0022】
(1.5)単繊維径が1μmより大きく5μm以下でない繊維(単繊維5以外のその他の繊維、以下、単に「その他の繊維」ともいう)
繊維集合体3には、その他の繊維を含んでいてもよい。但し、繊維集合体3に含まれる繊維の全量を100質量部とした場合に、単繊維5は、5質量部以上含まれていることが好ましく、10質量部以上含まれていることがより好ましく、15重量部以上含まれていることが更に好ましい。単繊維5の量がこの範囲内であると、繊維集合体3の遮熱性能が特に優れるからである。遮熱の観点からは、繊維集合体3に含まれる繊維は、全て単繊維5であってもよい(100質量部であってもよい)。
なお、繊維集合体3が例えば織物である場合には、経糸及び緯糸の少なくとも一方に単繊維5を用いることができる。この場合において、繊維集合体3の製造が容易という観点から、経糸に単繊維5を用いることが好ましい。
【0023】
(1.6)単繊維5の材質
単繊維径が1μmより大きく5μm以下の単繊維5は、合成繊維、再生繊維、半合成繊維、天然繊維のいずれであってもよい。
合成繊維としては、特に限定されない。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリトリメチレンテレフタレート繊維、ポリ乳酸繊維等のポリエステル系繊維;ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維等のポリアミド系繊維;ポリアクリル系繊維、ポリプロピレン繊維等のポリオレフィン系繊維等の各種の合成繊維を用いることができる。
これらの繊維のうちでは、汎用性が高いことから、ポリエステル系繊維(特にPET繊維)、ポリプロピレン繊維、ポリアミド6繊維が好ましい。
単繊維径が1μmより大きく5μm以下の単繊維5として、単一種の繊維のみならず、2種類以上の繊維を混合して用いることもできる。
なお、合成繊維は、未延伸糸でもよく、半延伸糸でもよく、これらが混合されている混合糸でもよい。
再生繊維としては、特に限定されない。例えば、セルロース系のレーヨン、精製セルロース繊維系のリヨセル等を用いることができる。レーヨンには、ポリノジック、ビスコース、キュプラレーヨン等の種類がある。
半合成繊維としては、特に限定されない。例えば、セルロース系のアセテート、たんぱく質系のプロミックス等を用いることができる。
天然繊維としては、特に限定されない。例えば、綿、麻等の植物繊維や、絹、獣毛(例えば羊毛)等の動物繊維を用いることができる。
【0024】
(2)繊維集合体3
(2.1)繊維集合体3の構成
繊維集合体3は、次の構成とされている。繊維集合体3には、特定方向の入射光に対する反射効率を高めるという観点から2以上の単繊維5の各平面部6が略同一方向を向いている箇所が存在している。この箇所の拡大断面図を
図7に模式的に示す。ここでは、単繊維5はランダムに配置されていない。
本開示において「平面部6が略同一方向を向いている」とは、以下のように定義する。各単繊維5の断面(横断面)が可能な限り直線に並ぶように、繊維集合体3を配置する。この状態で、対比する2つの平面部6における各法線ベクトルVを求める。2つの法線ベクトルVのなす角が0°以上10°以下である場合を略同一方向を向いていると定義する。
図7のように4本の単繊維5A,5B,5C,5Dが並んで配置している場合を例として説明する。単繊維5A,5Bは、それぞれ平面部6A,6Bを有する。平面部6A,6Bのそれぞれ法線ベクトルを、法線ベクトルV1,V2とする。そして、単繊維5Aの平面部6Aの法線ベクトルV1と、単繊維5Bの平面部6Bの法線ベクトルV2とのなす角が0°以上10°以下である場合を略同一方向を向いていると定義する。本開示の場合、少なくとも2本の単繊維5の平面部6がこのような関係にある。
図7のように2本よりも多い例えば4本の単繊維5A,5B,5C,5Dにおいて、平面部6A,6B,6C,6Dが略同一方向を向いていてもよい。この場合には、平面部6A,6B,6C,6Dの法線ベクトルV1,V2,V3,V4から任意の2つを選択すると、2つの法線ベクトルのなす角が0°以上10°以下となっている。
なお、一つの単繊維5に複数の平面部6が存在する場合における「平面部6が略同一方向を向いている」とは、以下のように定義する(
図8参照)。まず、対比する単繊維5(第1の単繊維5、第2の単繊維5)を選択する。第1の単繊維5について、平面部6毎にそれぞれ法線ベクトルV11,V12,V13・・・を求める。第2の単繊維5についても、同様に、平面部6毎にそれぞれ法線ベクトルV21,V22,V23・・・を求める。そして、第1の単繊維5の法線ベクトルV11,V12,V13・・・のうちから特定の第1法線ベクトルを選択し、第2の単繊維5の法線ベクトルV21,V22,V23・・・のうちから特定の第2法線ベクトルを選択し、2つの法線ベクトル(第1法線ベクトルと第2法線ベクトル)のなす角が0°以上10°以下である場合には、2以上の単繊維5の各平面部6が略同一方向を向いているとする。なお、第1法線ベクトル及び第2法線ベクトルの選択は、両者のなす角が最も小さくなるような組合せで選択する。例えば、
図8の場合には、V11とV21の組合せとする。
【0025】
繊維集合体3には、
図3,7に例示されるように、2以上の単繊維5が並列となっており、各単繊維5の各平面部6が略同一方向を向いている場所が存在している。
繊維集合体3では、少なくとも一部において、2以上の単繊維5の各平面部6が略同一方向を向いていればよい。すなわち、繊維集合体3には、単繊維5の各平面部6が略同一方向を向いていない箇所が存在していてもよい。つまり、繊維集合体3の全体において、単繊維5の各平面部6が略同一方向を向いている必要はない。
【0026】
繊維集合体3の形態は、特に限定されない。繊維集合体3は、製造容易であるという観点から、織物、編物、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布(メルトブローン不織布)、及びニードルパンチ不織布からなる群より選択される少なくとも1種であることが望ましい。
繊維集合体3の形態は、各単繊維5を位置決めして、各単繊維5の平面部6を略同一方向に向けやすいという観点から、織物又は編物が特に好ましい。
織物の組織は特に限定されず、例えば、平織物、綾織物、朱子織物及びそれらの組み合わせ等の各種の織物とすることができる。
編物は、経編又は緯編のいずれであってもよい。緯編として、基本組織(平編、ゴム編、パール編)やその変化組織を例示できる。また、経編として、基本組織(デンビー編、コード編、アトラス編、鎖編)やその変化組織を例示できる。
スパンボンド不織布は、例えば、樹脂を溶融して繊維(糸)を作り、ネット上に開繊・堆積させてウェッブを形成した後、シート状に結合させて製造される。
メルトブロー不織布は、例えば、樹脂を溶融して紡糸ノズルの周囲から噴射する高温エアにより、繊維を細くしてシート状にして製造される。
ニードルパンチ不織布は、例えば、金属製等のニードルの往復運動により、繊維相互間を交絡して製造される。
【0027】
(2.2)繊維集合体3の厚み
繊維集合体3の厚みは、特に限定されない。繊維集合体3の厚みは、製造コストを抑え、かつ反射率を高めるとの観点から、0.1mm以上10mm以下が好ましく、0.3mm以上5mm以下がより好ましく、0.5mm以上3mm以下が更に好ましい。
【0028】
(2.3)繊維集合体3の目付量
繊維集合体3の目付量は、特に限定されない。繊維集合体3の目付量は、製造コストを抑え、かつ反射率を高めるという観点から、10g/m2以上1500g/m2以下が好ましく、15g/m2以上1000g/m2以下がより好ましく、20g/m2以上500g/m2以下が更に好ましい。
【0029】
(3)表皮材1の構成
表皮材1には、繊維集合体3を用いる。
図9に示すように、繊維集合体3をそのまま表皮材1として用いてもよい。また、繊維集合体3に他の部材を貼り合わせて表皮材1としてもよい。
表皮材1は、各種技術分野の物品(部品を含む)の表皮として幅広く用いられる。表皮材1が利用される技術分野は特に限定されない。例えば、自動車、鉄道車両等の車両、航空機、船舶、建築、アパレル等の各種産業において、表皮材が拘わる技術分野に関して好適に利用される。
表皮材1は、太陽光により高温になり得る内装材11、例えば、ドアトリム(特にアッパー部分)、パッケージトレイ、シートに好適に用いることができる。
表皮材1は、近赤外線を効率よく反射する。
【0030】
2.内装材11
内装材11には、表皮材1が備えられている。内装材11は、例えば、
図10に示すように、基材8に表皮材1が積層された構造を有する。内装材11は、特に限定されない。内装材11としては、ドアトリム、パッケージトレイ、シート等の車両用内装材等が挙げられる。
表皮材1を備えた内装材11は、近赤外線を効率よく反射する。
表皮材1は、単繊維5の軸が、使用状態において略水平であることが好ましい。このように調整することで、
図11に示すように、太陽光の近赤外線の反射効率が高くなり、遮熱機能に優れる。なお、「略水平」とは、水平方向に対する傾斜角度が15°以下、好ましくは10°以下であることを意味する。
【0031】
前述の例は単に説明を目的とするものでしかなく、本開示を限定するものと解釈されるものではない。本開示を典型的な実施形態の例を挙げて説明したが、本開示の記述及び図示において使用された文言は、限定的な文言ではなく説明的及び例示的なものであると理解される。ここで詳述したように、その形態において本開示の範囲又は本質から逸脱することなく、添付の特許請求の範囲内で変更が可能である。ここでは、本開示の詳述に特定の構造、材料及び実施例を参照したが、本開示をここにおける開示事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本開示は添付の特許請求の範囲内における、機能的に同等の構造、方法、使用の全てに及ぶものとする。
【符号の説明】
【0032】
1 …表皮材
3 …繊維集合体
5 …単繊維
6 …平面部
8 …基材
10…表皮材(従来例)
11…内装材
V …法線ベクトル