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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】産業車両用駐車ブレーキ
(51)【国際特許分類】
   B60T 7/10 20060101AFI20240130BHJP
   B60T 11/04 20060101ALI20240130BHJP
   F16D 55/38 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B60T7/10 Q
B60T11/04
F16D55/38
B60T7/10 R
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020194685
(22)【出願日】2020-11-24
(65)【公開番号】P2022083318
(43)【公開日】2022-06-03
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】梅谷 英史
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-145202(JP,A)
【文献】特開2007-113669(JP,A)
【文献】特開2004-086567(JP,A)
【文献】実開昭54-107781(JP,U)
【文献】特開平07-119776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/10
B60T 11/04
F16D 55/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重ねて配置される複数のブレーキディスクと、
隣り合う前記ブレーキディスク同士を圧接させるための押圧部を有するロッド、及び前記ロッドと一体的に回転するレバー本体を有するレバーと、
前記レバーを揺動自在に支持する支持体と、
ケーブルを介して前記レバー本体と連結されるブレーキ操作具と、
前記ロッドに連結されるとともに、前記レバー本体に対する位置を切り替え可能なブラケットと、
前記支持体に連結される第1端部と前記ブラケットに連結される第2端部とを備える付勢部材と、
前記レバー本体及び前記ブラケットが一体的に揺動する一体揺動状態と、前記レバー本体及び前記ブラケットが相対的に揺動する相対揺動状態とを切り替えられるように前記ロッドと前記ブラケットとを連結する連結部材と、を備え、
前記一体揺動状態において、前記付勢部材は、前記ブレーキ操作具の操作に伴い前記ケーブルが前記レバー本体を引っ張る方向とは反対方向に向けて、前記ブラケットを介して前記レバー本体を付勢し、
前記相対揺動状態において、前記ブラケットに前記付勢部材の付勢力を作用させた状態で前記レバー本体を前記ブラケットに対して揺動可能としたことを特徴とする産業車両用駐車ブレーキ。
【請求項2】
前記ブラケットは、
前記ロッドに前記連結部材により連結される連結部と、
前記連結部から延びる板状をなし、且つ前記付勢部材の第2端部が連結される延設部と、を有し、
前記連結部材を、第1連結部材とすると、
前記一体揺動状態と前記相対揺動状態とを切り替えられるように前記延設部と前記レバー本体とを連結する第2連結部材を備え、
前記延設部には、前記第2連結部材が挿通される孔が形成され、
前記第2連結部材の先端は、前記レバー本体と一体的に揺動可能となるように前記レバー本体に固定され、
前記相対揺動状態において、前記第2連結部材が前記孔の内部を前記延設部に対して相対的に移動可能としたことを特徴とする請求項1に記載の産業車両用駐車ブレーキ。
【請求項3】
前記付勢部材は、スプリングであり、
前記第2端部は、リン状をなし、
前記延設部の先端には、前記レバー本体に向けて延び、且つ前記第2端部に挿通される係止部が設けられ、
前記レバー本体には、前記レバー本体の揺動方向に延び、且つ前記レバー本体の外面から凹む溝が形成され、
前記係止部の先端は、前記溝内に位置していることを特徴とする請求項2に記載の産業車両用駐車ブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両用駐車ブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されるパーキングブレーキが知られている。
上記のパーキングブレーキは、産業車両であるフォークリフトに適用されている。パーキングブレーキは、ブレーキハウジングに収容される複数のブレーキディスクを備えている。複数のブレーキディスク群の一側には押圧板が配置されている。ブレーキハウジングは、フォークリフトのドライブシャフトの一部を覆うように設けられている。ブレーキハウジングの内部には、ドライブシャフトに係合するブレーキディスクと、ブレーキハウジングに係合するブレーキディスクとが交互に重ねて配置されている。
【0003】
パーキングブレーキは、レバーと、レバーを揺動可能に支持する支持体と、ケーブルを介してレバーと連結されるブレーキ操作具としてのパーキングブレーキレバーと、レバーと支持体とに係止される付勢部材の一例であるスプリングとを備えている。レバーは、押圧部を有している。パーキングブレーキが作動する位置にパーキングブレーキレバーを操作すると、ケーブルがレバーを引っ張ることでレバーが揺動し、押圧部が押圧板を押圧する。これにより、ドライブシャフトに係合するブレーキディスクと、ブレーキハウジングに係合するブレーキディスクとが圧接され、パーキングブレーキが作動する。このとき、スプリングは伸長する。このため、パーキングブレーキが作動する状態では、スプリングの伸長により、複数のブレーキディスクの圧接が解除される位置に向けた付勢力がレバーに作用している。
【0004】
パーキングブレーキを解除する位置にパーキングブレーキレバーを操作すると、ケーブルがレバーを引っ張る方向とは反対方向に向けてレバーが揺動するようにスプリングがレバーを付勢する。すると、ドライブシャフトに係合するブレーキディスクと、ブレーキハウジングに係合するブレーキディスクとの圧接が解除され、パーキングブレーキが解除される。なお、パーキングブレーキレバーの操作位置に依らず、レバーには、複数のブレーキディスクの圧接を解除する方向の付勢力がスプリングにより常時作用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2007-145202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、パーキングブレーキが解除されている状態で、隣り合うブレーキディスクの隙間を調整するために、レバーが揺動する方向において、レバーの位置を調整することがある。このとき、レバーと支持体との間の距離が長くなることでスプリングが延びると、スプリングの付勢力が大きくなり、パーキングブレーキの操作力が大きくなる。また、レバーと支持体との間の距離が短くなることでスプリングが縮むと、スプリングの付勢力が小さくなり、パーキングブレーキの操作力が小さくなる。すなわち、レバーが揺動する方向において、レバーの位置を調整する前後でパーキングブレーキレバーの操作力が変化することがある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する産業車両用駐車ブレーキは、重ねて配置される複数のブレーキディスクと、隣り合う前記ブレーキディスク同士を圧接させるための押圧部を有するロッド、及び前記ロッドと一体的に回転するレバー本体を有するレバーと、前記レバーを揺動自在に支持する支持体と、ケーブルを介して前記レバー本体と連結されるブレーキ操作具と、前記ロッドに連結されるとともに、前記レバー本体に対する位置を切り替え可能なブラケットと、前記支持体に連結される第1端部と前記ブラケットに連結される第2端部とを備える付勢部材と、前記レバー本体及び前記ブラケットが一体的に揺動する一体揺動状態と、前記レバー本体及び前記ブラケットが相対的に揺動する相対揺動状態とを切り替えられるように前記ロッドと前記ブラケットとを連結する連結部材と、を備え、前記一体揺動状態において、前記付勢部材は、前記ブレーキ操作具の操作に伴い前記ケーブルが前記レバー本体を引っ張る方向とは反対方向に向けて、前記ブラケットを介して前記レバー本体を付勢し、前記相対揺動状態において、前記ブラケットに前記付勢部材の付勢力を作用させた状態で前記レバー本体を前記ブラケットに対して揺動可能とした。
【0008】
これによれば、隣り合うブレーキディスクの隙間を調整するためにレバーの位置を調整する場合、連結部材によりレバー本体及びブラケットが相対揺動状態となる。このとき、ブラケットを揺動させずにレバー本体のみを揺動させることでレバー本体の位置を調整できる。すなわち、スプリングの長さがレバーの位置を調整することにより変化することを抑制できる。レバーの位置を調整した後、再び連結部材によりレバー本体及びブラケットが一体揺動状態となる。よって、レバーの位置を調整する前後で付勢部材の伸縮状態の変化が抑制される。すなわち、ブレーキ操作具に伝わる付勢部材の付勢力が、レバーの位置を調整する前後で大きく変わることがない。したがって、ブレーキ操作具の操作力の変化を抑制できる。
【0009】
上記の産業車両用駐車ブレーキにおいて、前記ブラケットは、前記ロッドに前記連結部材により連結される連結部と、前記連結部から延びる板状をなし、且つ前記付勢部材の第2端部が連結される延設部と、を有し、前記連結部材を、第1連結部材とすると、前記一体揺動状態と前記相対揺動状態とを切り替えられるように前記延設部と前記レバー本体とを連結する第2連結部材を備え、前記延設部には、前記第2連結部材が挿通される孔が形成され、前記第2連結部材の先端は、前記レバー本体と一体的に揺動可能となるように前記レバー本体に固定され、前記相対揺動状態において、前記第2連結部材が前記孔の内部を前記延設部に対して相対的に移動可能とするとよい。
【0010】
これによれば、レバーの位置を調整するとき、相対揺動状態で延設部に対してレバー本体を揺動させる。このとき、第2連結部材は、延設部の孔の内部を移動しつつレバー本体と一体的に移動する。このため、付勢部材の伸縮状態を変化させることなく、レバーの位置を調整するときにレバー本体を必要以上に揺動させると、第2連結部材が孔の内周面に係止する。よって、レバー本体をブラケットに対して必要以上に揺動させることを抑制できる。
【0011】
上記の産業車両用駐車ブレーキにおいて、前記付勢部材は、スプリングであり、前記第2端部は、リン状をなし、前記延設部の先端には、前記レバー本体に向けて延び、且つ前記第2端部に挿通される係止部が設けられ、前記レバー本体には、前記レバー本体の揺動方向に延び、且つ前記レバー本体の外面から凹む溝が形成され、前記係止部の先端は、前記溝内に位置しているとよい。
【0012】
これによれば、スプリングの第2端部に係止部が挿通され、係止部の先端が溝内に位置する。そのため、スプリングの第2端部が係止部の先端に移動しても、係止部の先端とレバー本体の外面との間をスプリングの第2端部が通過しない。そのため、スプリングがブラケットから離脱し難くなる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、ブレーキ操作具の操作力の変化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】産業車両用駐車ブレーキの概略図。
図2】産業車両用駐車ブレーキの分解斜視図。
図3】産業車両用駐車ブレーキの斜視図。
図4】レバー本体とブラケットの正面図。
図5図4の5-5線で切断したときの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、産業車両用駐車ブレーキを具体化した一実施形態を図1図5にしたがって説明する。本実施形態の産業車両用駐車ブレーキは、例えばフォークリフトに搭載されており、図示しないエンジンから車輪に至る駆動伝達経路を構成する部材であるドライブシャフトを制動するために用いられる。
【0016】
図1に示すように、産業車両用駐車ブレーキ1は、ブレーキハウジング101と、重ねて配置される複数のブレーキディスク10とを備えている。ブレーキハウジング101は、フォークリフトの底部に回転自在に支持されたドライブシャフト102を一部覆うように設けられている。ブレーキハウジング101の内部には、複数のブレーキディスク10が収容されている。複数のブレーキディスク10は、ドライブシャフト102に対してドライブシャフト102の軸方向に移動自在、且つ相対回転不能に係合する第1ブレーキディスク11を含んでいる。複数のブレーキディスク10は、ブレーキハウジング101に対してドライブシャフト102の軸方向に移動自在、且つ相対回転不能に係合する第2ブレーキディスク12を含んでいる。ブレーキハウジング101の内部において、第1ブレーキディスク11と第2ブレーキディスク12とは交互に重ねて配置されている。ドライブシャフト102の軸方向において、複数のブレーキディスク10群の一側には、押圧板103が重ねて配置されている。ブレーキハウジング101の内部には、潤滑油が充填されている。すなわち、産業車両用駐車ブレーキ1は、湿式のブレーキである。なお、図1に記載の複数のブレーキディスク10が全て接触しているように見えるが、産業車両用駐車ブレーキ1が作動していないとき、第1ブレーキディスク11と第2ブレーキディスク12との間には隙間が形成される。また、産業車両用駐車ブレーキ1が作動しているとき、第1ブレーキディスク11と第2ブレーキディスク12とは圧接される。
【0017】
産業車両用駐車ブレーキ1は、板状部材である支持体20と、レバー30と、ブレーキ操作具としてのトグルレバー40と、付勢部材としてのスプリング50と、を備えている。
【0018】
支持体20は、押圧板103の近傍に配置されている。支持体20は、フォークリフトの車体に図示しない固定部材により固定されることにより、押圧板103との位置関係が変化しないように設けられている。支持体20は、厚さ方向の一方に第1面21を有し、厚さ方向の他方に第2面22を有している。支持体20の第1面21は、ブレーキハウジング101に臨む面である。複数のブレーキディスク10及び押圧板103は、支持体20の第1面21の近傍に配置されている。
【0019】
レバー30は、基部31と、ロッド32と、レバー本体33とを有している。
基部31は、支持体20に回転自在に支持されている。基部31は、円筒状をなしている。基部31は、支持体20の第1面21に設けられている。基部31は、支持体20を厚さ方向に貫通している。
【0020】
ロッド32は、基部31の内周面に挿通されている。ロッド32は、基部31に一体的に設けられている。ロッド32は、支持体20を厚さ方向に貫通している。ロッド32の第1端部32aは、ドライブシャフト102の軸方向において、押圧板103と隣り合う位置まで延びている。図2に示すように、ロッド32の第2端部32bは、支持体20の第2面22側に延びている。
【0021】
図1に示すように、ロッド32は、基部31が支持体20に対して回転したときに一体的に回転する。基部31及びロッド32の回転軸心Oは、支持体20の厚さ方向に延びている。ロッド32の第1端部32aは、押圧板103寄りに押圧部32dを有する。押圧部32dは、ロッド32が回転軸心Oを中心に回転したとき、押圧板103に対し近接又は離間する。押圧部32dは、ロッド32から押圧板103に向けて突出する突出部である。押圧部32dは、押圧板103に常に当接している。
【0022】
図1及び図2に示すように、レバー本体33は、支持体20の第2面22側に設けられている。レバー本体33は、ロッド32の第2端部32bから支持体20の第2面22に沿って延びている。レバー本体33は、ロッド32の第2端部32bと一体的に設けられている。レバー本体33は、ロッド32から離間する方向に延びている。レバー本体33は、ロッド32が支持体20に対して回転したときに一体的に揺動する。ここで、レバー本体33の先端33aが回転軸心Oを中心として揺動する方向を揺動方向Aとする。基部31、ロッド32、及びレバー本体33が一体的に設けられ、且つ支持体20に対して回転自在であるため、レバー30は、支持体20に揺動自在に支持されている。
【0023】
支持体20は、第1固定部23と、第2固定部24とを有している。第1固定部23及び第2固定部24は、揺動方向Aにおいて、レバー本体33が間に介在する位置に設けられている。第1固定部23は、板状をなしている。第1固定部23は、ロッド32の押圧部32dが押圧板103に近接するときにレバー本体33の先端33aが近接する位置に設けられている。第1固定部23は、支持体20の厚さ方向において第2面22側に延びている。
【0024】
第2固定部24は、板状をなしている。第2固定部24は、ロッド32の押圧部32dが押圧板103から離間するときにレバー本体33の先端33aが近接する位置に設けられている。第2固定部24は、支持体20の第2面22から突出している。
【0025】
トグルレバー40は、産業車両用駐車ブレーキ1を作動させるブレーキ解除位置P1と、産業車両用駐車ブレーキ1を作動させないブレーキ位置P2とを切り替える操作レバーである。トグルレバー40には、ケーブル41の第1端41aが接続されている。ケーブル41の第2端41bは、レバー本体33の先端33aに接続されている。トグルレバー40は、ケーブル41を介してレバー本体33と連結されている。ケーブル41の第1端41aと第2端41bとの間の部分は、固定具Fにより第1固定部23に固定されている。固定具Fは、ケーブル41が移動可能となるように第1固定部23に固定されている。
【0026】
スプリング50は、引張コイルバネである。スプリング50は、揺動方向Aにおいて、レバー本体33と第2固定部24との間に設けられている。スプリング50の第1端部51は、第2固定部24に固定されている。スプリング50は、レバー本体33を第2固定部24に向けて揺動するように付勢する付勢力を常に発生させている。
【0027】
このように構成された産業車両用駐車ブレーキ1において、トグルレバー40をブレーキ解除位置P1からブレーキ位置P2に操作すると、ケーブル41がレバー本体33の先端33aを第1固定部23に向けて引っ張る。すると、レバー本体33の先端33aが揺動方向Aにおいて、第1固定部23に向けて揺動する。レバー本体33が揺動することによりロッド32が回転軸心Oを中心に揺動し、ロッド32の押圧部32dが押圧板103を押圧する。ロッド32の押圧部32dが、隣り合う第1ブレーキディスク11と第2ブレーキディスク12とを圧接させることで、ドライブシャフト102がブレーキハウジング101に対して制動される。すなわち、産業車両用駐車ブレーキ1が作動する。なお、トグルレバー40をブレーキ解除位置P1からブレーキ位置P2に操作したとき、トグルレバー40には、スプリング50の付勢力がトグルレバー40の操作力として伝わる。
【0028】
トグルレバー40をブレーキ位置P2からブレーキ解除位置P1に操作すると、スプリング50がレバー本体33を第2固定部24に向けて付勢する。すなわち、スプリング50は、ケーブル41がレバー本体33を引っ張る方向とは反対方向に向けてレバー本体33を付勢する。すると、押圧部32dが押圧板103から離間する方向にロッド32とともに揺動し、第1ブレーキディスク11と第2ブレーキディスク12との圧接が解除され、ドライブシャフト102がブレーキハウジング101に対して回転自在となる。すなわち、産業車両用駐車ブレーキ1が解除される。
【0029】
ここで、複数のブレーキディスク10の厚さの公差等により複数のブレーキディスク10の間に形成される隙間の大きさが、産業車両用駐車ブレーキ1の設計時の規定値よりも小さい場合がある。また、産業車両用駐車ブレーキ1を使用し続けることにより、複数のブレーキディスク10が摩耗し、複数のブレーキディスク10の間に形成される隙間の大きさが、規定値よりも大きくなる場合がある。そのため、産業車両用駐車ブレーキ1が作動していない状態において、複数のブレーキディスク10の間に形成される隙間の大きさが規定値となるように調整する必要がある。当該調整とは、レバー本体33を揺動方向Aに揺動させ、押圧部32dの押圧板103への押し付け具合を変更し、第1ブレーキディスク11と第2ブレーキディスク12との間の隙間の大きさを規定値に近づけることを示している。ここで、産業車両用駐車ブレーキ1は、第1ブレーキディスク11と第2ブレーキディスク12との間に形成される隙間を調整する調整機構65を備えている。調整機構65は、支持体20の第2固定部24を厚さ方向に貫通するボルト66により構成されている。ボルト66は、第2固定部24を貫通してレバー本体33に常に当接している。ボルト66をレバー本体33に向けて螺進させることによりレバー本体33の先端33aが第1固定部23に向けて揺動し、押圧部32dが押圧板103に押圧される。ボルト66をレバー本体33に向けて螺進させることは、複数のブレーキディスク10の間の隙間を小さくする調整である。ボルト66をレバー本体33から離れる方向に螺退することは、複数のブレーキディスク10の間の隙間を大きくする調整である。
【0030】
ところで、仮にスプリング50がレバー本体33と第2固定部24とに固定されている場合、レバー本体33を揺動させて、複数のブレーキディスク10の間の隙間を調整すると、複数のブレーキディスク10の間の隙間の調整前後で、スプリング50の伸縮状態が変わる。すなわち、トグルレバー40に伝わる操作力が変化する虞がある。本実施形態では、トグルレバー40の操作力の変化を抑制する構成が採用されており、以下のその点について詳しく説明する。
【0031】
図2に示すように、レバー本体33は、円筒状の軸部34と、長板部35とを有している。軸部34の内周面には、ロッド32の第2端部32bが挿通されている。軸部34には、ロッド32が一体的に設けられている。軸部34は、ロッド32と一体的に回転する。ロッド32の第2端部32bには、回転軸心Oに沿って深さを有する雌ねじ穴32cを有している。雌ねじ穴32cは、支持体20の第2面22とは反対側に開口している。
【0032】
長板部35は、支持体20の厚さ方向と同じ方向に厚さを有している。長板部35は、軸部34の外周面から支持体20の第2面22に沿って延びている。長板部35は、軸部34の軸線が延びる方向における軸部34の外周面の中間に設けられている。すなわち、軸部34の支持体20の第2面22とは反対側の端面と、長板部35における支持体20の第2面22とは反対側に位置する端面とにより段差が形成されている。
【0033】
長板部35の軸部34とは反対側の端部が、レバー本体33の先端33aである。長板部35は、回転軸心Oから離間する方向、すなわちロッド32から離間する方向に延びている。長板部35には、軸部34と先端33aとの間に雌ねじ穴35aと、溝36とが設けられている。雌ねじ穴35a及び溝36は、長板部35の厚さ方向において、長板部35における支持体20の第2面22とは反対側に位置する端面35bに設けられている。長板部35の厚さ方向で見た平面視において、長板部35における軸部34から先端33aに向かう方向を第1延設方向D1とする。雌ねじ穴35a及び溝36は、第1延設方向D1において長板部35にこの順に配置されている。長板部35の厚さ方向で見た平面視において、溝36は、レバー本体33の揺動方向Aに延びる円弧状をなしている。長板部35の厚さ方向で見た平面視において、溝36は、レバー本体33の外面としての長板部35の端面35bから凹む溝36は、長板部35の揺動方向Aにおける両縁に開口していない。すなわち、溝36は、長板部35の厚さ方向において支持体20とは反対側に向けて開口している。
【0034】
産業車両用駐車ブレーキ1は、ブラケット60と、第1連結部材71と、第2連結部材72とを備えている。
ブラケット60は、レバー本体33に重ねて配置されている。ブラケット60は、支持体20の厚さ方向と同じ方向に厚さを有する板部材である。ブラケット60は、連結部61と、延設部62とを有している。連結部61は、軸部34及びロッド32の第2端部32bに重ねて配置される。連結部61は、ロッド32の雌ねじ穴32cと対応する挿通孔61aを有する円板状をなしている。挿通孔61aは、連結部61を厚さ方向に貫通している。延設部62は、連結部61から延びる長板状をなしている。ブラケット60は、回転軸心Oから離間する方向、すなわちロッド32から離間する方向に延びている。延設部62は、回転軸心Oの延びる方向において、レバー本体33と重なる。延設部62は、レバー本体33に沿って延びる長板状である。延設部62の先端は、延設部62の厚さ方向において、溝36に対応する位置に配置される。
【0035】
延設部62において、連結部61と延設部62の先端との間には、拡幅部62aが設けられている。延設部62における連結部61から先端に向かう方向を第2延設方向D2とする。拡幅部62aは第2延設方向D2に直交する方向に延設部62の一部を拡幅させた部位である。拡幅部62aには孔62bが設けられている。孔62bは、延設部62を厚さ方向に貫通している。孔62bは、第2延設方向D2に直交する方向に延びる長孔である。孔62bは、延設部62の厚さ方向において、雌ねじ穴35aに対応する位置に設けられている。
【0036】
図3及び図5に示すように、ブラケット60は、係止部63を有している。延設部62の先端には、係止部63が設けられている。係止部63は、延設部62の先端を厚さ方向に貫通する軸状をなしている。係止部63の先端は、溝36内に位置している。スプリング50の第1端部51及び第2端部52は、いずれもリング状をなしている。スプリング50の第1端部51は、第2固定部24に連結されている。スプリング50の第2端部52には、係止部63が挿通されている。スプリング50の第2端部52は、ブラケット60に連結されている。すなわち、スプリング50は、第2固定部24に連結される第1端部51と、ブラケット60に連結される第2端部52とを備えている。
【0037】
図2及び図3に示すように、第1連結部材71及び第2連結部材72は、ボルトである。第1連結部材71は、ブラケット60の連結部61の挿通孔61aに挿通され、且つロッド32の雌ねじ穴32cに螺着される。第1連結部材71により連結部61はロッド32の第2端部32bに連結される。第1連結部材71は、ブラケット60とロッド32とを連結する連結部材である。
【0038】
延設部62と長板部35との間には、円筒状のスペーサ80が介在されている。スペーサ80は、延設部62が長板部35に向けて撓むことを抑制している。第2連結部材72は、延設部62の孔62b、及びスペーサ80の内部に挿通され、且つ長板部35の雌ねじ穴35aに螺着される。第2連結部材72は、延設部62とレバー本体33とを連結している。第2連結部材72の先端が長板部35の雌ねじ穴35aに螺着されているため、第2連結部材72は、レバー本体33と一体的に揺動可能となるようにレバー本体33に固定されている。
【0039】
第1連結部材71を雌ねじ穴32cに完全に螺着すると、第1連結部材71は、連結部61と軸部34とが一体的に揺動するように連結部61と軸部34とを連結する。第2連結部材72を雌ねじ穴35aに完全に螺着すると、第2連結部材72は、延設部62と長板部35とが一体的に揺動するように延設部62と長板部35とを連結する。
【0040】
第1連結部材71を連結部61の挿通孔61aに挿通し、且つ雌ねじ穴32cに螺着した状態で第1連結部材71を緩めると、第1連結部材71は、連結部61と軸部34とが相対的に揺動するように連結部61と軸部34とを連結する。第2連結部材72を延設部62の孔62bに挿通し、且つ雌ねじ穴35aに螺着した状態で第2連結部材72を緩めると、第2連結部材72は、延設部62と長板部35とが相対的に揺動するように延設部62と長板部35とを連結する。
【0041】
第1連結部材71及び第2連結部材72は、締め具合によりレバー本体33とブラケット60とを一体的に揺動させるか、相対的に揺動させるかを切り替えることができる。したがって、第1連結部材71は、レバー本体33及びブラケット60が一体的に揺動する一体揺動状態と、レバー本体33及びブラケット60が相対的に揺動する相対揺動状態とを切り替えられるようにロッド32とブラケット60とを連結している。第2連結部材72は、長板部35及び延設部62が一体的に揺動する一体揺動状態と、長板部35と延設部62が相対的に揺動する相対揺動状態とを切り替えられるように長板部35と延設部62とを連結している。ブラケット60は、レバー本体33に対する位置を切り替え可能である。
【0042】
産業車両用駐車ブレーキ1では、一体揺動状態において、スプリング50がブラケット60を介してレバー本体33を付勢し、相対揺動状態において、ブラケット60にスプリング50の付勢力を作用させた状態でレバー本体33をブラケット60に対して揺動可能である。
【0043】
本実施形態の作用を説明する。
例えば、複数のブレーキディスク10の間の隙間を大きくするためにレバー30の位置調整を実施する場合を考える。
【0044】
図4に示すように、産業車両用駐車ブレーキ1が作動してない状態で第1連結部材71と第2連結部材72を緩めることで、レバー本体33とブラケット60とを相対揺動状態とする。相対揺動状態において、ボルト66をレバー本体33から離間するように螺退させる。このとき、ブラケット60にはスプリング50による付勢力が作用し、且つレバー本体33にはスプリング50の付勢力が作用していない。すなわち、ボルト66をレバー本体33から離間するように螺退させると、ボルト66の先端とレバー本体33との間に隙間が形成される。このとき、ブラケット60を揺動させずに、図4の破線で示すようにレバー本体33をボルト66の先端に当接させるように揺動させると、押圧部32dの押圧板103の押し付け具合が弱まるようにレバー30が揺動する。よって、第1ブレーキディスク11と第2ブレーキディスク12との間の隙間が大きくなるようにレバー30の位置が調整される。
【0045】
レバー本体33をボルト66の先端に当接させるように揺動させるとき、第2連結部材72は、第2延設方向D2に直交する方向において、孔62bの第1端621から第2端622に向けて移動する。すなわち、相対揺動状態において、第2連結部材72が孔62bの内部を延設部62に対して相対的に移動する。
【0046】
第1ブレーキディスク11と第2ブレーキディスク12との間に隙間を大きくする調整を実施した後、第1連結部材71を雌ねじ穴32cに、第2連結部材72を雌ねじ穴35aに完全に螺着すると、レバー本体33とブラケット60とが一体揺動状態となり、レバー30の位置調整が完了する。よって、レバー30の位置を調整する前後で、レバー本体33の揺動に基づきスプリング50の長さが変化し難く、伸縮状態が変化しない。なお、複数のブレーキディスク10の間の隙間を小さくする調整を実施する場合であっても、レバー30の位置調整の前後で、レバー本体33の揺動に基づきスプリング50の長さが変化し難い。
【0047】
本実施形態の効果を説明する。
(1)隣り合うブレーキディスク10の隙間を調整するためにレバー30の位置を調整する場合、第1連結部材71及び第2連結部材72によりレバー本体33及びブラケット60が相対揺動状態となる。このとき、ブラケット60を揺動させずにレバー本体33のみを揺動させることでレバー本体33の位置を調整できる。すなわち、スプリング50の長さがレバー30の位置を調整することにより変化することを抑制できる。レバー30の位置を調整した後、再び第1連結部材71及び第2連結部材72によりレバー本体33及びブラケット60が一体揺動状態となる。よって、レバー30の位置を調整する前後でスプリング50の伸縮状態の変化が抑制される。すなわち、トグルレバー40に伝わるスプリング50の付勢力が、レバー30の位置を調整する前後で大きく変わることがない。したがって、トグルレバー40の操作力の変化を抑制できる。
【0048】
(2)レバー30の位置を調整するとき、相対揺動状態で延設部62に対してレバー本体33を揺動させる。このとき、第2連結部材72は、延設部62の孔62bの内部を移動しつつレバー本体33と一体的に移動する。このため、スプリング50の伸縮状態を変化させることなく、レバー30の位置を調整するときにレバー本体33を必要以上に揺動させると、第2連結部材72が孔62bの内周面である第1端621及び第2端622に係止する。よって、レバー本体33をブラケット60に対して必要以上に揺動させることを抑制できる。
【0049】
(3)スプリング50の第2端部52に係止部63が挿通され、係止部63の先端が溝36内に位置する。そのため、スプリング50の第2端部52が係止部63の先端に移動しても、係止部63の先端と長板部35の端面35bとの間をスプリング50の第2端部52が通過しない。そのため、スプリング50がブラケット60から離脱し難くなる。
【0050】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
○ 溝36は、揺動方向Aに延びる円弧状をなしていたが、係止部63の先端が溝36の内部で円滑に移動できるのであれば形状は適宜変更してもよい。
【0051】
○ ブラケット60の係止部63は、割愛してもよい。スプリング50の第2端部52は、延設部62の先端に連結されていればよい。
○ 孔62bは、長孔であったが、例えば、揺動方向Aに延びる円弧孔に変更してもよい。
【0052】
○ 延設部62の拡幅部62aにより孔62bを形成していたが、拡幅部62aを割愛した状態で孔62bを形成してもよい。
○ 第2連結部材72を割愛してもよい。この場合、スペーサ80、延設部62の孔62b、及び長板部35の雌ねじ穴35aを割愛してもよい。
【0053】
○ レバー本体33の端面35bに凸部を設けることにより、スペーサ80を割愛してもよい。
○ 本実施形態では、レバー本体33の軸部34がロッド32の第2端部32bに挿通されていたが、これに限らない。例えば、ロッド32の第2端部32bの外周面に長板部35を直接的に設けてもよい。このとき、レバー本体33は、長板部35により構成される。
【0054】
○ 本実施形態では、レバー30から基部31を割愛してもよい。レバー30は、ロッド32とレバー本体33により構成されていればよい。ロッド32が支持体20に対して回転自在に支持されるように変更する。
【0055】
○ 付勢部材としてスプリング50が採用されていたが、レバー本体33の先端33aを第2固定部24に向けて常に付勢することができれば、ゴム部材等を付勢部材として採用してもよい。
【0056】
○ 調整機構65は、ボルト66であったが、レバー本体33の位置を調整したときに第2固定部24との距離を一定に保つことができる構成であれば、適宜変更してもよい。
○ ブレーキハウジング101に潤滑油を充填しなくてもよい。第1ブレーキディスク11と第2ブレーキディスク12とが圧接されるような構成であればよい。
【0057】
○ 第1固定部23は、第1板部23aのみで構成してもよい。
○ 産業車両用駐車ブレーキ1は、フォークリフトに搭載されていたが、これに限らず、トーイングトラクター等に搭載されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…産業車両用駐車ブレーキ、10…ブレーキディスク、11…第1ブレーキディスク、12…第2ブレーキディスク、20…支持体、30…レバー、31…基部、32…ロッド、32d…押圧部、33…レバー本体、34…軸部、35…長板部、36…溝、40…トグルレバー、41…ケーブル、50…スプリング、51…第1端部、52…第2端部、60…ブラケット、61…連結部、62…延設部、62b…孔、63…係止部、71…第1連結部材、72…第2連結部材、A…揺動方向。
図1
図2
図3
図4
図5