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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】電池監視装置の異常判定装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240130BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20240130BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/02 H
H01M10/48 P
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020198366
(22)【出願日】2020-11-30
(65)【公開番号】P2022086397
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】朝長 幸拓
(72)【発明者】
【氏名】本多 一隆
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-208880(JP,A)
【文献】特開2018-004406(JP,A)
【文献】特開2012-147587(JP,A)
【文献】特開2022-075221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 -10/48
G01R 31/50 -31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セル(Ce1、Ce2)を直列接続した組電池(1)を監視する電池監視装置(2)の異常判定装置であって、
前記複数の電池セル(Ce1、Ce2)の電圧を監視する監視IC(3)と、
前記監視ICの外に設けられた均等化スイッチ(Sp)を用いて構成され、前記均等化スイッチがオンすると前記電池セルから前記均等化スイッチに通ずる周回経路(A)に通電することで前記複数の電池セルの電圧を均等化する均等化回路(102)と、
前記周回経路に介在して構成されるシャント抵抗(Rs2、Rs1)と、
抵抗(Rf)及びコンデンサ(Cf)を含んで構成されると共に前記電池セルの電極間電圧を直接入力するフィルタ(11;211;311)と、
前記均等化スイッチのオフ制御時において、前記周回経路に電流が流れることに起因して前記シャント抵抗に生じる電圧降下を含まないように前記フィルタを通じて得られる第1検出値と、前記周回経路に電流が流れることに起因して前記シャント抵抗に生じる前記電圧降下を含むように得られる第2検出値と、を比較することにより前記均等化回路にショート異常を生じているか否かを判定する判定部(9)と、を備える電池監視装置の異常判定装置。
【請求項2】
前記シャント抵抗は、前記電池セルの一方の第1電極(K1)に接続される第1シャント抵抗(Rs1)、及び、前記電池セルの他方の第2電極(K2)に接続される第2シャント抵抗(Rs2)、を備え、
前記フィルタ(11)は、
抵抗(Rf)及びコンデンサ(Cf)による直列回路により構成され、前記電池セルの第1電極及び前記第1シャント抵抗との間の第1ノード(N1)と、前記電池セルの第2電極及び前記第2シャント抵抗との間の第2ノード(N2)との間に接続されたRCフィルタにより構成される請求項1記載の電池監視装置の異常判定装置。
【請求項3】
前記シャント抵抗は、前記電池セルの一方の第1電極(K1)に接続される第1シャント抵抗(Rs1)、及び、前記電池セルの他方の第2電極(K2)に接続される第2シャント抵抗(Rs2)、を備え、
前記フィルタ(211)は、
前記電池セルの第1電極及び前記第1シャント抵抗の間の第1ノード(N1)と、前記電池セルの第2電極及び前記第2シャント抵抗の間の第2ノード(N2)との間に2つの抵抗(Rf)及びコンデンサ(Cf)をπ型に接続したπ型フィルタにより構成される請求項1記載の電池監視装置の異常判定装置。
【請求項4】
前記シャント抵抗は、前記電池セルの一方の第1電極(K1)に接続される第1シャント抵抗(Rs1)、及び、前記電池セルの他方の第2電極(K2)に接続される第2シャント抵抗(Rs2)、を備え、
前記フィルタ(311)は、
前記電池セルの一方の第1電極及び前記シャント抵抗の間の第1ノードと、グランドノードとの間に抵抗及びコンデンサを直列接続した対地フィルタ(311)により構成される請求項1記載の電池監視装置の異常判定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池監視装置の異常判定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
組電池は、電池セルを多段接続して構成されている。従来より、これらの電池セルを監視するため監視ICを設けており、また、電池セルのセル電圧が均等になるように均等化スイッチを設けている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
近年、監視ICの放熱性を高める目的から、監視ICに対して均等化回路を外付けして構成することが要求されている。特許文献1記載の技術では、監視ICの内部に均等化スイッチの検出回路を設けており、オン固着を検出している。
【0004】
しかし、特許文献1記載の技術は、監視ICに内蔵される均等化スイッチのオン固着を検出する回路であり、監視ICに外付けした均等化回路のオン固着検出手段は提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6398964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、監視ICに外付けされた均等化回路の異常を判定できるようにした電池監視装置の異常判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、複数の電池セルを直列接続した組電池を監視する電池監視装置の異常判定装置を対象としている。均等化回路は、監視ICの外に設けられた均等化スイッチを用いて構成され、均等化スイッチがオンすると当該均等化スイッチ及び電池セルを通ずる周回経路に通電することで複数の電池セルの電圧を均等化する。
【0008】
シャント抵抗は、周回経路に介在して構成されている。判定部は、周回経路に電流が流れることに起因してシャント抵抗に生じる電圧降下を含まないようにフィルタを通じて得られる第1検出値と、周回経路に電流が流れることに起因してシャント抵抗に生じる電圧降下を含むように得られる第2検出値と、を比較することにより均等化回路のショート異常を生じているか否かを判定する。
【0009】
均等化回路のショート異常時には周回経路に電流が流れるため、シャント抵抗に電圧降下を生じる。このため、このシャント抵抗に生じる電圧降下を含まない第1検出値と、シャント抵抗に生じる電圧降下を含む第2検出値と、を比較することで均等化回路のショート異常を生じているか否かを判定でき、この結果、監視ICに外付けされた均等化回路の異常を正常に検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態を説明する電気的構成図
図2】第1実施形態を説明する電気的構成図
図3】第1実施形態についてスイッチ切替制御内容を説明するタイムチャートのその1
図4】第1実施形態についてスイッチ切替制御内容を説明するタイムチャートのその2
図5】第1実施形態の比較例の説明図
図6】第2実施形態を説明する電気的構成図のその1
図7】第2実施形態を説明する電気的構成図のその2
図8】第2実施形態についてスイッチ切替内容を説明するタイムチャートのその1
図9】第2実施形態についてスイッチ切替内容を説明するタイムチャートのその2
図10】第2実施形態についてスイッチ切替内容を説明するタイムチャートのその3
図11】第3実施形態を説明する電気的構成図
図12】第4実施形態を説明する電気的構成図
図13】第5実施形態を説明する電気的構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、幾つかの実施形態について図面を参照しながら説明する。以下に説明する各実施形態において同一又は類似の動作を行う構成については、同一又は類似の符号を付し、必要に応じて説明を省略することがある。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態について図1から図5を参照しながら説明する。図1に示すように、組電池1は、二次電池である複数の電池セルCe1、Ce2を多段に直列接続して構成されている。電池監視装置2は、組電池1の電圧を監視する装置であり、監視IC3の内部回路と、監視IC3の外に設けられた外付け回路3aに分けて構成されている。
【0013】
監視IC3は、電池セルCe1、Ce2の電圧を監視するために設けられた集積回路装置である。監視IC3内には、制御回路4、均等化回路5、マルチプレクサ6、入力スイッチ7、A/D変換回路8、及び判定部として判定回路9が構成されている。
【0014】
監視IC3の外には、外付け回路3aとして、RCフィルタ11、均等化回路101、102、抵抗Rs、第1シャント抵抗Rs1、第2シャント抵抗Rs2、及び、均等化スイッチSpの制御端子を駆動するためのゲート抵抗Rmが構成されている。抵抗Rsは、数十Ω程度に設定されており、第1シャント抵抗Rs1及び第2シャント抵抗Rs2は、数十mΩ程度に設定されている。また、均等化スイッチSpの制御端子保護のため、ツェナーダイオードDが構成されている。
【0015】
なお図1中には、本願にかかる特徴部分の説明を行うときの利便性を考慮して符号を付しており、組電池1は、奇数番の電池セルCe1及び偶数番の電池セルCe2に分けて符号を付している。
【0016】
また、奇数番の電池セルCe1の正側の第1電極K1に直接接続されるシャント抵抗を第1シャント抵抗Rs1と記載しており、電池セルCe1の負側の第2電極K2に直接接続されるシャント抵抗を第2シャント抵抗Rs2としている。
【0017】
さらに、偶数番の電池セルCe2の正側の第2電極K2に直接接続されるシャント抵抗を第2シャント抵抗Rs2と記載しており、電池セルCe2の負側の第1電極K1に直接接続されるシャント抵抗を第1シャント抵抗Rs1としている。
【0018】
偶数番の電池セルCe2の負側に直接接続される第1シャント抵抗Rs1と奇数番の電池セルCe1の正側に直接接続される第1シャント抵抗Rs1とは共用されている。同様に、奇数番の電池セルCe1の負側に直接接続される第2シャント抵抗Rs2と偶数番の電池セルCe2の正側に直接接続される第2シャント抵抗Rs2とは共用されている。
【0019】
各電池セルCe1、Ce2にそれぞれ対応して電極間電圧Vclの検出回路が設けられている。偶数番の電池セルCe2の電極間電圧Vclの検出回路は、第1シャント抵抗Rs1、第2シャント抵抗Rs2、抵抗Rsにより構成されている。隣接する奇数番の電池セルCe1の電極間電圧Vclの検出回路もまた、第1シャント抵抗Rs1、第2シャント抵抗Rs2、及び抵抗Rsを用いて構成され、これらの抵抗Rs1、Rs2、Rsを共用している。
【0020】
監視IC3は、各電池セルCe1、Ce2の両電極からそれぞれ抵抗Rsを通じて接続されるシャント抵抗接続端子Tsを備える。シャント抵抗接続端子Tsは、放電用の抵抗Rs及び第1シャント抵抗Rs1又は第2シャント抵抗Rs2を介して対応する電池セルCe1、Ce2の両電極K1、K2にそれぞれ接続されている。
【0021】
監視IC3は、各電池セルCe1、Ce2の両電極K1、K2からそれぞれRCフィルタ11を通じて接続されるフィルタ接続端子Tfを備える。フィルタ接続端子Tfには、各電池セルCe1、Ce2の電極間電圧VclがRCフィルタ11の抵抗Rfを通じて直接入力されている。
【0022】
RCフィルタ11は、抵抗Rf及びコンデンサCfを備える。抵抗Rfは、電池セルCeの第1電極K1及び第1シャント抵抗Rs1の間の第1ノードN1と、電池セルCeの第2電極K2及び第2シャント抵抗Rs2の間の第2ノードN2と、の間に接続されている。
【0023】
コンデンサCfは、フィルタ接続端子Tfと電池セルCe1の負側のノードN2との間に接続されている。RCフィルタ11は、電池セルCe1、Ce2の両電極に直接接続されているため、両電極のノードN1及びN2間の電圧をノイズ除去しながら検出できる。
【0024】
均等化回路101及び102は、それぞれ均等化スイッチSp及び均等化スイッチSpに直列接続された抵抗Rpにより構成される。均等化スイッチSpは、トランジスタ、例えばNチャネル型のMOSFETにより構成されている。
【0025】
均等化スイッチSpを構成するMOSFETのドレインソース間と抵抗Rpは、第1シャント抵抗Rs1及び抵抗Rs間のノードと第2シャント抵抗Rs2及び抵抗Rs間のノードとの間に直列接続されている。均等化回路101、102は、均等化スイッチSpをオンすると電池セルCe1、Ce2を通じて周回電流を通電することで各電池セルCe1、Ce2の電圧を均等化できる。
【0026】
監視IC3の内部にもまた均等化回路5が設けられている。均等化回路5は、隣接する2つのシャント抵抗接続端子Tsの間に直列接続されたトランジスタにより構成されている。トランジスタは、例えばNチャネル型のMOSFETによる。均等化回路5は、電池セルCe1、Ce2の電圧を均等化するために設けられる。
【0027】
マルチプレクサ6は、各シャント抵抗接続端子Tsの電圧を選択するための奇数番のスイッチS1、S3、S5、S7…、各フィルタ接続端子Tfの電圧を選択するための偶数番のスイッチS2、S4、S6、S8…により構成されている。
【0028】
制御回路4がマルチプレクサ6を切替制御することでシャント抵抗接続端子Tsとフィルタ接続端子Tfとの間の電圧を検出でき、これにより各電池セルCe1、Ce2に対応したRCフィルタ11の出力電圧を検出できる。
【0029】
マルチプレクサ6の後段には入力スイッチ7が構成されている。入力スイッチ7は、複数のスイッチSI1~SI4により構成される。制御回路4は、入力スイッチ7のスイッチSI1~SI4をオン・オフ制御することで出力電圧の正負を変換できる。
【0030】
図示しないが、A/D変換回路8の入力側にはレベルシフト回路が設けられており、A/D変換回路8はレベルシフト回路を介して電圧を入力する。 A/D変換回路8は入力電圧をA/D変換し判定回路9に出力する。判定回路9は、均等化回路101、102の異常を検出する。
【0031】
上記構成について、均等化回路102のショート異常検査方法を説明する。以下の説明では、図2に示したように、電池セルCe2に対応した均等化スイッチSpのショート異常の検査方法を説明する。以降では、電池セルCe2をN+1番目の電池セルCe2と称し、この電池セルCe2の上下に隣接した電池セルCe1をそれぞれN番目、N+2番目の電池セルCe1と称して説明する。
【0032】
制御回路4は、均等化回路102のショート異常を検出するときに、全ての均等化スイッチSa及びSpをオフに保持した状態で、図3に示すように、マルチプレクサ6のスイッチS1~S4をオン・オフ制御すると共に、入力スイッチ7のスイッチSI1~SI4をオン・オフ制御する。
【0033】
N+1番目の電池セルCe2に対応した均等化スイッチSpがオン固着しておりショート異常を生じていると、N+1番目の電池セルCe2から、第2シャント抵抗Rs2、均等化回路102、及び第1シャント抵抗Rs1を通じた周回経路A(図2参照)に短絡電流が流れる。周回経路Aに短絡電流が流れることで、第2シャント抵抗Rs2に電圧がかかると共に、第1シャント抵抗Rs1にも電圧がかかる。
【0034】
制御回路4は、図3に示す第1期間T1においてスイッチS1、S4、SI1、SI4をオン制御すると共に、スイッチS2、S3、SI2、SI3をオフ制御する。
【0035】
すると判定回路9は、第1期間T1において周回経路Aから外れた経路、ここではRCフィルタ11の抵抗Rfを接続した経路、を通じて第N+2番目の電池セルCe1の電極間電圧Vcl_N+2を直接検出する。このため、第2シャント抵抗Rs2の電圧降下ΔVを含まないように第1検出値を取得できる。
【0036】
制御回路4は、第2期間T2においてスイッチS2、S3、SI2、SI3をオン制御すると共に、スイッチS1、S4、SI1、SI4をオフ制御する。
【0037】
すると判定回路9は、第2期間T2において第2シャント抵抗Rs2を介して第N+2番目の電池セルCe1の電極間電圧Vcl_N+2を検出することで電池セルCe1の電極間電圧Vcl_N+2に第2シャント抵抗Rs2の両端電圧ΔVを加算した電圧Vcl_N+2+ΔVを検出する。これにより、判定回路9は、第2シャント抵抗Rs2の電圧降下ΔVを含むように第2検出値を取得できる。
【0038】
この後、判定回路9は、2つの経路における検出値の結果を比較することで、均等化回路102にショート異常を生じているか否かを判定する。例えば、判定回路9は、第2期間T2に検出した電圧Vcl_N+2+ΔVから第1期間T1に検出した電圧Vcl_N+2を減算し、これらの差分値が所定値に達していることを条件として、均等化回路102にショート異常を生じていると判定できる。
【0039】
なお判定回路9が、2つの検出値を減算することで均等化回路102のショート異常を判定する形態を示したが減算値に限られない。電圧降下ΔVに基づく検出値を取得できれば、第1期間T1の検出電圧及び第2期間T2の検出電圧をどのように演算しても良い。電池セルCe1、Ce2の電極間電圧Vclがそれぞれ様々な影響に基づいて変動することを考慮すれば、同一セルCe1の電極間電圧Vcl_N+2に対し何れか一方から他方を減算した差分値に基づいてショート異常を生じているか否かを判定することが望ましい。
【0040】
検査対象となるN+1番目の電池セルCe2に対応した均等化回路102のショート異常を検出するため、当該電池セルCe2の正側に隣接したN+2番目の電池セルCe1に対応したスイッチS1、S2、S3、S4をオン・オフ制御する形態を示したが、これに限定されるものではない。
【0041】
N+1番目の電池セルCe2に対応した均等化回路102のショート異常を検出するため、当該電池セルCe2の負側に隣接したN番目の電池セルCe1に対応したスイッチS5、S6、S7、S8を図4に示したようにオン・オフ制御し、これら検出された電圧に基づいて、判定回路9がN+1番目の電池セルCe2に対応した均等化回路102のショート異常を検出するようにしても良い。
【0042】
この場合、均等化スイッチSpがショートしていれば、第1シャント抵抗Rs1に生じた電圧降下ΔVを検出でき、前述同様に均等化回路102のスイッチSpのショート異常を検出できる。
【0043】
図5に比較例の構成を示している。この図5の構成では、第1シャント抵抗Rs1、第2シャント抵抗Rs2を設けていない構成を示している。この比較例の構成を適用しつつ、隣接する電池セルCe1の電極間電圧Vclを検出しても、第1シャント抵抗Rs1、第2シャント抵抗Rs2に基づく電圧降下ΔVを検出できない。このため、均等化スイッチSpのショート異常に基づく電圧変化を検出できず、この結果、均等化スイッチSpのショート異常を検出できない。
【0044】
これに対し、本実施形態によれば、第1シャント抵抗Rs1、第2シャント抵抗Rs2を設けている。判定回路9は、均等化スイッチSpのオフ制御時において、第2シャント抵抗Rs2に生じる電圧降下ΔVを含まない第1検出値と、第2シャント抵抗Rs2に生じる電圧降下ΔVを含む第2検出値と、を比較することにより均等化回路102にショート異常を生じているか否かを判定している。この結果、均等化回路102のショート異常を正常に検出できる。
【0045】
また判定回路9が、第1期間T1において第1検出値を得るときには、周回経路Aから外れた経路、ここではRCフィルタ11を通じて電池セルCe1の電極K2から直接電位を検出している。これにより、第2シャント抵抗Rs2に生じる電圧降下ΔVを含まないように第1検出値を得られる。
【0046】
また判定回路9が、第2期間T2において第2検出値を得るときには、第2シャント抵抗Rs2又は第1シャント抵抗Rs1を介して第N+2番目又は第N番目の第2電池セルCe1の電極間電圧Vclを検出している。したがって、第2シャント抵抗Rs2に生じる電圧降下ΔVを含むように第2検出値を得られる。
【0047】
RCフィルタ11は、電池セルCe2の第1電極K1及び第1シャント抵抗Rs1との間の第1ノードN1と、電池セルCe2の第2電極K2及び第2シャント抵抗Rs2との間の第2ノードN2との間に抵抗Rf及びコンデンサCfを含む直列回路を接続して構成されている。これにより、各電池セルCe1、Ce2の電極K1、K2に生じるノイズを抑制しつつ各電池セルCe1、Ce2の電極間電圧Vclを検出でき、ひいてはショート異常しているか否かを精度良く判定できる。
【0048】
(第2実施形態)
第2実施形態について図6から図10を参照しながら説明する。第2実施形態では、RCフィルタ11に代えてπ型フィルタ211を設けた構成を説明する。
【0049】
本実施形態の監視IC3は、図示形態に接続したスイッチSI1~SI8からなる入力スイッチ7を備えている。制御回路4は、入力スイッチ7のスイッチSI1~SI8をオン・オフ制御することで出力電圧の正負を変換できる。マルチプレクサ6と入力スイッチ7との間で、図6に示すようにスイッチS1~S8…と、スイッチSI1~SI8とを接続することで、隣接する複数のシャント抵抗接続端子Ts間、隣接する複数のフィルタ接続端子Tf間の電圧を検出可能にしている。
【0050】
図7に示すように、π型フィルタ211は、電池セルCe2の第1電極K1及び第1シャント抵抗Rs1の間の第1ノードN1と、電池セルCe2の第2電極K2及び第2シャント抵抗Rs2の間の第2ノードN2との間に、2つの抵抗Rf及びコンデンサCfをπ型に接続して構成される。
【0051】
N+1番目の電池セルCe2に対応した均等化スイッチSpがオン固着してショート異常を生じると、N+1番目の電池セルCe2から、第2シャント抵抗Rs2、均等化回路102の抵抗Rp、均等化スイッチSp、及び第1シャント抵抗Rs1を通じた周回経路Aに短絡電流が流れる。周回経路Aに短絡電流が流れることで、第2シャント抵抗Rs2に電圧がかかると共に、第1シャント抵抗Rs1にも電圧がかかる。
【0052】
制御回路4は、図8に示すように第1期間T1中にスイッチS2、S4、SI2、SI8をオン制御すると共に、スイッチS1、S3、SI1、SI7をオフ制御する。
【0053】
すると判定回路9は、第1期間T1において隣接するフィルタ接続端子Tf間の電圧を検出できる。判定回路9は、第1期間T1において周回経路Aから外れた経路、ここではRCフィルタ11を通じて第N+2番目の電池セルCe1の電極間電圧Vcl_N+2を直接検出する。このため、第2シャント抵抗Rs2の電圧降下ΔVを含まないように第1検出値を取得できる。
【0054】
制御回路4は、第2期間T2においてスイッチS1、S3、SI1、SI4をオン制御すると共に、スイッチS2、S4、SI2、SI3をオフ制御する。すると、判定回路9は、隣接するシャント抵抗接続端子Ts間の電圧を検出できる。
【0055】
判定回路9は、第2期間T2において第2シャント抵抗Rs2を介して第N+2番目の電池セルCe1の電極間電圧Vclを検出することで第2電池セルCe1の電極間電圧Vcl_N+2に第2シャント抵抗Rs2にかかる電圧ΔVを加算した電圧Vcl_N+2+ΔVを検出する。これにより、判定回路9は、第2シャント抵抗Rs2の電圧降下ΔVを含むように第2検出値を取得できる。
【0056】
この後、判定回路9は、2つの経路における検出値の結果を比較することで、均等化回路102にショート異常を生じているか否かを判定する。例えば判定回路9は、第2期間T2に検出した電圧Vcl_N+2+ΔVから第1期間T1に検出した電圧Vcl_N+2を減算することで、これらの差分値が所定値に達していることを条件として、均等化回路102にショート異常を生じていると判定する。
【0057】
前述実施形態でも説明したように、N+1番目の電池セルCe2に対応した均等化回路102のショート異常を検出するため、当該電池セルCe2の負側に隣接したN番目の電池セルCe1に対応したスイッチS5、S6、S7、S8を図9に示すようにオン・オフ制御しても良い。判定回路9は、入力スイッチ7を通じて検出された電圧に基づいて、N+1番目の電池セルCe2に対応した均等化回路102のショート異常を検出する。
【0058】
この場合、N+1番目の電池セルCe2に対応した第1シャント抵抗Rs1に電圧降下ΔVを検出でき、前述同様に均等化回路102の均等化スイッチSpのショート異常を検出できる。
【0059】
また本実施形態の構成では、検査対象となるN+1番目の電池セルCe2に対応した均等化回路102のショート異常を検出するため、当該N+1番目の電池セルCe2に対応したスイッチS3、S4、S5、S6を図10に示すようにオン・オフ制御しても良い。判定回路9が、入力スイッチ7を通じて検出された電圧に基づいてN+1番目の電池セルCe2に対応した均等化スイッチSpのショート異常を検出することも可能である。
【0060】
制御回路4が、第2期間T2においてスイッチS3、S5、SI5、SI3をオンすることで、隣接するシャント抵抗接続端子Tsの間の電圧を検出するとき、第1シャント抵抗Rs1及び第2シャント抵抗Rs2を通じてN+1番目の電池セルCe2の電極間電圧Vcl_N+1を検出できる。すると、均等化回路102にショート異常を生じていれば、図7に示すように2倍の電圧降下2×ΔVを差分電圧として検出できる。このため、本実施形態においても前述実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0061】
(第3実施形態)
第3実施形態について図11を参照しながら説明する。第3実施形態では、図11に示すように、RCフィルタ11に代えて対地フィルタ311を設けた形態を示す。第N+2番目の電池セルCe1に対応した対地フィルタ311は、電池セルCe1の第1電極K1及び第1シャント抵抗Rs1の間のノードと、グランドノードとの間に抵抗Rf及びコンデンサCfによる回路を直列接続している。第N+1番目の電池セルCe2に対応した対地フィルタ311は、電池セルCe2の第2電極K2及び第2シャント抵抗Rs1の間のノードと、グランドノードとの間に抵抗Rf及びコンデンサCfによる回路を直列接続している。
【0062】
第3実施形態でも第2実施形態と同様に制御することで、図11に電圧値を示したように、判定回路9がN+1番目の電池セルCe2に対応した均等化回路102のショート異常を検出することができ、第2実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0063】
(第4実施形態)
第4実施形態について図12を参照しながら説明する。図12図2に代えて示す構成例である。図12に示すように、第N+1番目の電池セルCe2に対応した均等化スイッチSpに代えて、Pチャネル型のMOSFETを用いて均等化スイッチSpaを構成しても良い。図12に示したように、抵抗Rsaが、Nチャネル型及びPチャネル型のMOSFETのゲートソース間に共通接続されている。この抵抗Rsaの抵抗値を大きく設定して駆動できるため、電池セルCe1、Ce2が低電圧になったとしても均等化スイッチSpを駆動できる。
【0064】
(第5実施形態)
第5実施形態について図13を参照しながら説明する。前述実施形態では判定回路9を監視IC3の中に設けているが、図13に示すように、判定回路9の構成、機能は、監視IC3に接続されたマイコン20に構成しても良い。判定回路9の機能は、マイコン20の内部に記憶されたプログラムに基づいて実現しても良いし、A/D変換回路8の出力値をデジタル処理するロジック回路により構成しても良い。
【0065】
(他の実施形態)
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々変形して実施することができ、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【0066】
また前述した実施形態の構成は組み合わせたり入れ替えたりしても良い。本発明は、前述した実施形態に準拠して記述したが、本発明は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本発明の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0067】
図面中、Ce1、Ce2は電池セル(Ce2は所定の電池セル、Ce1は第2電池セル)、Sは異常判定装置、1は組電池、2は電池監視装置、3は監視IC、102は均等化回路、9は判定回路(判定部)、11はRCフィルタ(フィルタ)、211はπ型フィルタ(フィルタ)、311は対地フィルタ(フィルタ)、Spは均等化スイッチ、Aは周回経路、Rs1は第1シャント抵抗(シャント抵抗)、Rs2は第2シャント抵抗(シャント抵抗)、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
図13