(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】膜分離装置、造水システム、膜分離方法および造水方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20240130BHJP
B01D 61/06 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C02F1/44 A
B01D61/06
C02F1/44 D
C02F1/44 G
(21)【出願番号】P 2020533539
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2019029669
(87)【国際公開番号】W WO2020027056
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2018147018
(32)【優先日】2018-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】722014321
【氏名又は名称】東洋紡エムシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 信也
(72)【発明者】
【氏名】中尾 崇人
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0349465(US,A1)
【文献】特開2014-184403(JP,A)
【文献】特開2018-001110(JP,A)
【文献】特開2012-192324(JP,A)
【文献】特開2004-081913(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/00 - 71/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を含む対象液を、濃縮された前記対象液である濃縮液と、希釈された前記対象液である希釈液と、に分離する膜分離装置であって、
半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有し、前記対象液の一部を所定の圧力で前記第1室に流し、前記対象液の他の一部を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流すことで、前記第1室内の前記対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記対象液に移行させ、前記第1室から前記濃縮液を排出し、前記第2室から前記希釈液を排出する、半透膜モジュールと、
前記濃縮液(ただし、他の半透膜モジュールの第2室に供給される濃縮液を除く)のエネルギーである第1エネルギーを回収する、第1エネルギー回収装置と、
を備える、膜分離装置。
【請求項2】
前記第1エネルギーは、前記対象液に伝達され、前記対象液が昇圧される、請求項1に記載の膜分離装置。
【請求項3】
前記膜分離装置は、圧力低下装置をさらに備え、
前記所定の圧力を有する前記対象液の他の一部が、前記圧力低下装置を通過することによって、前記所定の圧力より低い圧力で前記第2室に流される、請求項1または2に記載の膜分離装置。
【請求項4】
原液から淡水を生産する造水システムであって、
前記原液を所定の圧力に昇圧して逆浸透モジュールに供給する高圧ポンプと、
前記所定の圧力に昇圧された前記原液から逆浸透膜を介して前記淡水を分離および回収し、濃縮された前記原液である濃縮原液を排出する、前記逆浸透モジュールと、
請求項1または2に記載の膜分離装置と、を備え、
前記膜分離装置に供される前記対象液は、前記濃縮原液である、造水システム。
【請求項5】
前記第1エネルギーは、前記原液に伝達され、前記原液が昇圧される、請求項4に記載の造水システム。
【請求項6】
前記膜分離装置は、圧力低下装置をさらに備え、
前記所定の圧力を有する前記対象液の他の一部が、前記圧力低下装置を通過することによって、前記所定の圧力より低い圧力で前記第2室に流される、請求項4または5に記載の造水システム。
【請求項7】
前記圧力低下装置において、前記所定の圧力を有する前記対象液のエネルギーである第2エネルギーが回収される、請求項6に記載の造水システム。
【請求項8】
前記第2エネルギーは、前記原液に伝達され、前記原液が昇圧される、請求項7に記載の造水システム。
【請求項9】
水を含む対象液を、濃縮された前記対象液である濃縮液と、希釈された前記対象液である希釈液と、に分離する膜分離方法であって、
半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有する半透膜モジュールに対して、前記対象液の一部を所定の圧力で前記第1室に流し、前記対象液の他の一部を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流すことで、前記第1室内の前記対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記対象液に移行させ、前記第1室から前記濃縮液を排出し、前記第2室から前記希釈液を排出する、膜分離工程と、
前記濃縮液(ただし、他の半透膜モジュールの第2室に供給される濃縮液を除く)のエネルギーである第1エネルギーを回収する、第1エネルギー回収工程と、
を備える、膜分離方法。
【請求項10】
原液から淡水を生産する造水方法であって、
前記原液を所定の圧力に昇圧して逆浸透モジュールに供給する昇圧工程と、
前記逆浸透モジュールを用いて、前記所定の圧力に昇圧された前記原液から逆浸透膜を介して前記淡水を分離および回収し、濃縮された前記原液である濃縮原液を排出する、逆浸透工程と、
請求項9に記載の膜分離方法と、を備え、
前記膜分離方法に供される前記対象液は、前記濃縮原液である、造水方法。
【請求項11】
水を含む第1対象液から濃縮された前記第1対象液である濃縮液を得ると共に、第2対象液
(ただし、前記第1対象液よりも浸透圧の高い液を除く)から希釈された前記第2対象液である希釈液を得る、膜分離装置であって、
半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有し、前記第1対象液を所定の圧力で前記第1室に流し、前記第2対象液を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流すことで、前記第1室内の前記第1対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記第2対象液に移行させ、前記第1室から前記濃縮液を排出し、前記第2室から前記希釈液を排出する、半透膜モジュールと、
前記濃縮液のエネルギーである第1エネルギーを回収する、第1エネルギー回収装置と、
を備える、膜分離装置。
【請求項12】
前記第1エネルギーは、前記第1対象液に伝達され、前記第1対象液が昇圧される、請求項11に記載の膜分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜分離装置、造水システム、膜分離方法および造水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
海水から淡水を生産する造水システムは、高圧ポンプによって浸透圧より高い所定の圧力に昇圧された海水を逆浸透(RO:Reverse Osmosis)モジュールに供給し、RO膜を通過させることで、海水中の塩分等を除去して淡水を取り出すシステムである。残りの海水は、濃縮塩水(ブライン)としてROモジュールから排出される。
【0003】
このROモジュールから排出される濃縮塩水も高圧であり、高い圧力エネルギーを有している。このため、近年では、高圧の濃縮塩水が有する圧力エネルギーを各種のエネルギー回収装置(Energy Recovery Device。以下、「ERD」と略す場合がある)で回収し、回収したエネルギーを海水の加圧に利用することで、高圧ポンプ等の消費電力(消費動力)を削減している。このようなERDは、例えば、特許文献1(特開2004-81913号公報)、特許文献2(特開平1-123605号公報)などに開示されている。
【0004】
一方、
図1を参照して、RO法を用いた淡水化処理に必要なエネルギーを低下させること等を目的として、半透膜モジュール1の第1室11に対象液の一部を流し、第2室12に対象液の他の一部を流して、第1室11を加圧することで、第1室11内の対象液に含まれる水を半透膜10を介して第2室12内の対象液に移行させ、第2室12から希釈された対象液(希釈液)を排出する膜分離方法(ブラインコンセントレーション)が検討されている(特許文献3:特開2018-1111号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-81913号公報
【文献】特開平1-123605号公報
【文献】特開2018-1111号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のブラインコンセントレーション(以下、「BC」と略す場合がある)を用いる場合において、第1室11内から排出される対象液の圧力と、第1室11に供給される対象液の圧力(例えば、6~8MPa程度)との差は、例えば50kPa以下であり、第1室11内から排出される対象液も高い圧力エネルギーを有しているため、このエネルギーが無駄になっていた。このため、さらにエネルギーを削減する余地があった。
【0007】
したがって、本発明は、ブラインコンセントレーションを用いる場合において、さらに必要なエネルギーを削減し、エネルギー効率を高めることのできる、膜分離装置、造水システム、膜分離方法および造水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 水を含む対象液を、濃縮された前記対象液である濃縮液と、希釈された前記対象液である希釈液と、に分離する膜分離装置であって、
半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有し、前記対象液の一部を所定の圧力で前記第1室に流し、前記対象液の他の一部を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流すことで、前記第1室内の前記対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記対象液に移行させ、前記第1室から前記濃縮液を排出し、前記第2室から前記希釈液を排出する、半透膜モジュールと、
前記濃縮液のエネルギーである第1エネルギーを回収する、第1エネルギー回収装置と、
を備える、膜分離装置。
【0009】
(2) 前記第1エネルギーは、前記対象液に伝達され、前記対象液が昇圧される、(1)に記載の膜分離装置。
【0010】
(3) 前記膜分離装置は、圧力低下装置をさらに備え、
前記所定の圧力を有する前記対象液の他の一部が、前記圧力低下装置を通過することによって、前記所定の圧力より低い圧力で前記第2室に流される、(1)または(2)に記載の膜分離装置。
【0011】
(4) 原液から淡水を生産する造水システムであって、
前記原液を所定の圧力に昇圧して逆浸透モジュールに供給する高圧ポンプと、
前記所定の圧力に昇圧された前記原液から逆浸透膜を介して前記淡水を分離および回収し、濃縮された前記原液である濃縮原液を排出する、前記逆浸透モジュールと、
(1)または(2)に記載の膜分離装置と、を備え、
前記膜分離装置に供される前記対象液は、前記濃縮原液である、造水システム。
【0012】
(5) 前記第1エネルギーは、前記原液に伝達され、前記原液が昇圧される、(4)に記載の造水システム。
【0013】
(6) 前記膜分離装置は、圧力低下装置をさらに備え、
前記所定の圧力を有する前記対象液の他の一部が、前記圧力低下装置を通過することによって、前記所定の圧力より低い圧力で前記第2室に流される、(4)または(5)に記載の造水システム。
【0014】
(7) 前記圧力低下装置において、前記所定の圧力を有する前記対象液のエネルギーである第2エネルギーが回収される、(6)に記載の造水システム。
【0015】
(8) 前記第2エネルギーは、前記原液に伝達され、前記原液が昇圧される、(7)に記載の造水システム。
【0016】
(9) 水を含む対象液を、濃縮された前記対象液である濃縮液と、希釈された前記対象液である希釈液と、に分離する膜分離方法であって、
半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有する半透膜モジュールに対して、前記対象液の一部を所定の圧力で前記第1室に流し、前記対象液の他の一部を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流すことで、前記第1室内の前記対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記対象液に移行させ、前記第1室から前記濃縮液を排出し、前記第2室から前記希釈液を排出する、膜分離工程と、
前記濃縮液のエネルギーである第1エネルギーを回収する、第1エネルギー回収工程と、
を備える、膜分離方法。
【0017】
(10) 原液から淡水を生産する造水方法であって、
前記原液を所定の圧力に昇圧して逆浸透モジュールに供給する昇圧工程と、
前記逆浸透モジュールを用いて、前記所定の圧力に昇圧された前記原液から逆浸透膜を介して前記淡水を分離および回収し、濃縮された前記原液である濃縮原液を排出する、逆浸透工程と、
(9)に記載の膜分離方法と、を備え、
前記膜分離方法に供される前記対象液は、前記濃縮原液である、造水方法。
【0018】
(11) 水を含む第1対象液から濃縮された前記第1対象液である濃縮液を得ると共に、第2対象液から希釈された前記第2対象液である希釈液を得る、膜分離装置であって、
半透膜と、前記半透膜で仕切られた第1室および第2室と、を有し、前記第1対象液を所定の圧力で前記第1室に流し、前記第2対象液を前記所定の圧力よりも低い圧力で前記第2室に流すことで、前記第1室内の前記第1対象液に含まれる水を前記半透膜を介して前記第2室内の前記第2対象液に移行させ、前記第1室から前記濃縮液を排出し、前記第2室から前記希釈液を排出する、半透膜モジュールと、
前記濃縮液のエネルギーである第1エネルギーを回収する、第1エネルギー回収装置と、
を備える、膜分離装置。
【0019】
(12) 前記第1エネルギーは、前記第1対象液に伝達され、前記第1対象液が昇圧される、(11)に記載の膜分離装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ブラインコンセントレーションを用いる場合において、さらに必要なエネルギーを削減し、エネルギー効率を高めることのできる、膜分離装置、造水システム、膜分離方法および造水方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】実施形態1の膜分離装置を示す模式図である。
【
図3】実施形態1の膜分離装置の変形例を示す模式図である。
【
図5】実施形態2の造水システムを示す模式図である。
【
図6】実施形態3の造水システムを示す模式図である。
【
図7】実施形態4の造水システムを示す模式図である。
【
図8】実施形態5の造水システムを示す模式図である。
【
図9】実施形態6の造水システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表すものである。また、長さ、幅、厚さ、深さなどの寸法関係は図面の明瞭化と簡略化のために適宜変更されており、実際の寸法関係を表すものではない。なお、
図1~
図9において、各流路を示す線の太さの違いは流れる液の圧力の違いを示し、線が太い方が圧力が高いことを示している。
【0023】
<膜分離装置>
以下、本発明の造水システムの実施形態について説明する。
【0024】
〔実施形態1〕
図2は、実施形態1の膜分離装置を示す模式図である。
【0025】
本実施形態の膜分離装置は、水を含む対象液を、濃縮された対象液である濃縮液と、希釈された対象液である希釈液と、に分離する膜分離装置である。
【0026】
図2を参照して、本実施形態の膜分離装置は、半透膜モジュール1と、第1エネルギー回収装置と、を備える。
【0027】
半透膜モジュール1は、半透膜10と、半透膜10で仕切られた第1室11および第2室12と、を有する。
【0028】
半透膜モジュール1において、対象液の一部を所定の圧力で第1室11に流し、対象液の他の一部を所定の圧力よりも低い圧力で第2室12に流すことで、第1室11内の対象液に含まれる水を半透膜10を介して第2室12内の対象液に移行させ、第1室11から濃縮液を排出し、第2室12から希釈液を排出する。
【0029】
ここで、半透膜モジュール1の第1室11と第2室12とに流入する対象液は、同じ液であるため、基本的に等しい浸透圧を有する。このため、RO法のように、対象液(高浸透圧液)と淡水との間の高い浸透圧差に逆らって逆浸透を起こさせるための高い圧力が必要なく、比較的低圧の加圧によって、対象液の膜分離を実施することができる(一部の対象液を希釈し、他の一部の対象液を濃縮することができる)。
【0030】
ただし、第1室11に流される対象液と第2室12に流される対象液との間で濃度が異なる場合でも、その浸透圧差(絶対値)が第1室11に供給される対象液の圧力よりも小さければ、理論上、膜分離工程は実施可能である。好ましくは、第1室11(加圧側)に流入する塩水の浸透圧と第2室12に供給される対象液の浸透圧との差は、第1室11に供給される対象液の所定の圧力の30%以下である。
【0031】
なお、膜分離装置は、
図1に示されるように1つの半透膜モジュール1を用いた1段の装置であってもよいが、複数の半透膜モジュールを用いた多段の装置であってもよい。膜分離工程において、半透膜10の両側の希釈塩水と第1ブラインとの浸透圧差を、半透膜モジュール1の第1室11に供給される液の圧力以上にすることはできないため、1段の工程(1つの半透膜モジュール)による塩水の希釈率には限界がある。このため、淡水化処理工程に供される希釈塩水をより低濃度にして、淡水化処理工程に必要な圧力をさらに低下させること等を目的として、膜分離工程を2段以上の工程としてもよい。
【0032】
半透膜としては、例えば、逆浸透膜(RO膜:Reverse Osmosis Membrane)、正浸透膜(FO膜:Forward Osmosis Membrane)、ナノろ過膜(NF膜:Nanofiltration Membrane)、限外ろ過膜(UF膜:Ultrafiltration Membrane)と呼ばれる半透膜が挙げられる。半透膜は、好ましくは逆浸透膜または正浸透膜、ナノろ過膜である。なお、半透膜として逆浸透膜または正浸透膜、ナノろ過膜を用いる場合、第1室11に供給される対象液の圧力は好ましくは6~8MPaである。
【0033】
通常、RO膜およびFO膜の孔径は約2nm以下であり、UF膜の孔径は約2~100nmである。NF膜は、RO膜のうちイオンや塩類の阻止率が比較的低いものであり、通常、NF膜の孔径は約1~2nmである。半透膜としてRO膜またはFO膜、NF膜を用いる場合、RO膜またはFO膜、NF膜の塩除去率は好ましくは90%以上である。
【0034】
半透膜を構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、セルロース系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。半透膜は、セルロース系樹脂およびポリスルホン系樹脂の少なくともいずれかを含む材料から構成されることが好ましい。
【0035】
セルロース系樹脂は、好ましくは酢酸セルロース系樹脂である。酢酸セルロース系樹脂は、殺菌剤である塩素に対する耐性があり、微生物の増殖を抑制できる特徴を有している。酢酸セルロース系樹脂は、好ましくは酢酸セルロースであり、耐久性の点から、より好ましくは三酢酸セルロースである。
【0036】
ポリスルホン系樹脂は、好ましくはポリエーテルスルホン系樹脂である。ポリエーテルスルホン系樹脂は、好ましくはスルホン化ポリエーテルスルホンである。
【0037】
半透膜(および後述する逆浸透膜)の形状としては、特に限定されないが、例えば、平膜、スパイラル膜または中空糸膜が挙げられる。なお、
図2では、半透膜10として平膜を簡略化して描いているが、特にこのような形状に限定されるものではない。なお、中空糸膜(中空糸型半透膜)は、スパイラル型半透膜などに比べて、モジュール当たりの膜面積を大きくすることができ、浸透効率を高めることができる点で有利である。
【0038】
また、半透膜モジュール(および後述する逆浸透モジュール)の形態としては、特に限定されないが、中空糸膜を用いる場合は、中空糸膜をストレート配置した軸流型モジュールや、中空糸膜を芯管に巻きつけたクロスワインド型モジュールなどが挙げられる。平膜を用いる場合は、平膜を積み重ねた積層型モジュールや、平膜を封筒状として芯管に巻きつけたスパイラル型モジュールなどが挙げられる。
【0039】
具体的な中空糸膜の一例としては、全体がセルロース系樹脂から構成されている単層構造の膜が挙げられる。ただし、ここでいう単層構造とは、層全体が均一な膜である必要はなく、例えば、特開2012-115835号公報に開示されるように、外周表面近傍に緻密層を有し、この緻密層が実質的に中空糸膜の孔径を規定する分離活性層となっていることが好ましい。
【0040】
具体的な中空糸膜の別の例としては、支持層(例えば、ポリフェニレンオキサイドからなる層)の外周表面にポリフェニレン系樹脂(例えば、スルホン化ポリエーテルスルホン)からなる緻密層を有する2層構造の膜が挙げられる。また、他の例として、支持層(例えば、ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンからなる層)の外周表面にポリアミド系樹脂からなる緻密層を有する2層構造の膜が挙げられる。
【0041】
なお、中空糸膜を用いた半透膜モジュールにおいて、通常は、中空糸膜の外側が第1室となる。中空糸膜の内側(中空部)を流れる流体を加圧しても、圧力損失が大きくなり加圧が十分に働き難いためである。
【0042】
本明細書において、「対象液」とは、水を含む液体であれば特に限定されず、溶液および懸濁液のいずれであってもよい。対象液としては、例えば、海水、河川水、汽水、排水などが挙げられる。排水としては、例えば、工業排水、生活排水、油田またはガス田の排水などが挙げられる。
【0043】
また、本実施形態の膜分離装置が後述する造水システムに用いられる場合、膜分離装置に供給される対象液は、逆浸透工程で排出される濃縮原液であってもよい。
【0044】
なお、対象液は、対象液中に含まれる微粒子、微生物等を除去するための前処理が施されたものであってもよい。前処理としては、海水淡水化技術に用いられる種々公知の前処理を実施することができ、例えば、NF膜、UF膜、MF膜等を用いたろ過、次亜塩素酸ナトリウムの添加、凝集剤添加などが挙げられる。
【0045】
(第1エネルギー回収装置)
第1エネルギー回収装置は、濃縮液のエネルギーである第1エネルギーを回収する。
【0046】
図2(a)~(c)には、3種類のERDを用いた膜分離装置が示されている。
本実施形態において、第1エネルギー回収装置(第1ERD)としては、例えば、タービン等を用いて電気としてエネルギーを回収する電気式のERD、または、濃縮液から機械的にエネルギーを回収する機械式のERDが挙げられる。電気式のERDよりもエネルギー変換ロスの小さい機械式のERDを用いた方が、消費電力の削減効果が大きい。
【0047】
機械式のERDとしては、ターボチャージャー、または、高圧ポンプの駆動軸と同軸上に結合された水車を用いて、濃縮液の圧力エネルギーを動力として回収する動力伝達式のERDが知られている。また、機械式のERDの別の例として、圧力変換装置(Pressure Exchanger:PX)などの濃縮液の圧力を直接回収する圧力伝達式のERDを用いることもできる。
【0048】
図2(a)に示される膜分離装置において、第1ERDは、圧力変換装置(PX)5(圧力伝達式のERD)である。機械式のERDの一種である圧力伝達式のERDは、一般に動力伝達式のERDよりも変換ロスが小さくエネルギー回収効率に優れている。
【0049】
なお、
図2(a)に示されるように、半透膜モジュール1から排出された濃縮液の圧力を圧力伝達式のERDで対象液に伝達する場合、通常は、高圧ポンプ31を通過する流路とは別の流路を設け、その流路の対象液を圧力伝達式のERDで昇圧する。そして、圧力伝達式のERDで昇圧された対象液は、さらにブースターポンプ32を用いて高圧ポンプ31から排出された対象液と同じ圧力まで昇圧されてから、高圧ポンプ31を通過する流路に供給されている。
【0050】
図2(b)に示される膜分離装置において、第1ERDは、ターボチャージャー6(動力伝達式のERD)である。なお、ターボチャージャー6は、タービン6a,6bを含む。濃縮液をターボチャージャー6の一方側(濃縮液側)のタービン6aへ送ることで、他方側(対象液側)のタービン6bによって、濃縮液から対象液へ動力としてエネルギーを伝達することができる。
【0051】
なお、ターボチャージャー6のタービン6bは高圧ポンプ31の下流側に配置されている。このような配置構成を採用したのは、高圧ポンプ31の上流側に動力(圧力)を伝達し、高圧ポンプ31の吸い込み側を高圧にすると、汎用の高圧ポンプを採用することが困難になり、上流側の耐圧性能の高い特別なポンプを用いる必要があり、設備コストが増大するからである。
【0052】
図2(c)に示される膜分離装置において、第1ERDは、高圧ポンプ31の駆動軸と同軸上に結合された水車7(動力伝達式のERD)である。濃縮液を水車7へ送ることで、高圧ポンプ31によって、濃縮液から対象液へ動力としてエネルギーを伝達することができる。
【0053】
水車7としては、緩衝水車および反動水車のいずれも用いることができるが、流量調整運転が容易である点で、緩衝水車を用いることが好ましい。例えば、緩衝水車としてペルトン水車を用いた場合、ERDに要求される出力の変化に応じて、水車に濃縮液等を噴射するためのノズルの開度を変更することで、濃縮液等の流量を調整することができる。
【0054】
緩衝水車としては、ペルトン水車以外にも、例えば、ターゴインパルス水車、クロスフロー水車を用いてもよい。これらの中でも、回収効率やメンテナンスの容易性の観点から、ペルトン水車を用いることが好ましい。
【0055】
なお、高圧ポンプ31と水車7との間にクラッチを設けてもよい。これにより、造水システムを始動してから定常状態に至る初期状態において、クラッチを切ることで、初期状態においても水車7が高圧ポンプ31の負荷とならないようにすることができる。
【0056】
図2(b)および
図2(c)に示されるような動力伝達式のERDは、電気式のERDよりもエネルギー回収効率が高く、また、圧力伝達式のERDよりERD自体のエネルギー回収効率は低いものの、圧力伝達式のERDのようにブースターポンプ等が必要ないといった利点がある。なお、一般に、ターボチャージャーは、高圧ポンプの駆動軸と同軸上に結合された水車などに比べて、処理可能な流量範囲が広いため、大量処理に適しているという利点がある。
【0057】
ただし、機械式のERDは、特に造水システムの始動時や停止時の操作も考慮すると、システム全体の設計が難しい。これに対して、電気式のERDは、発電した電気を高圧ポンプ31等へ配線を介して供給すればよいため、設計の自由度が高い。
【0058】
本実施形態において、濃縮液のエネルギー(第1エネルギー)は、対象液に伝達され、対象液が昇圧される。すなわち、第1エネルギー回収装置は、濃縮液から回収した第1エネルギーを半透膜モジュール1の第1室11に供給される対象液に伝達する。
【0059】
半透膜モジュール1から排出される濃縮液の圧力は、高圧ポンプ31によって昇圧された所定の圧力よりは低くなるものの、高い圧力エネルギーを有している。濃縮液のエネルギー(第1エネルギー)を第1ERDで回収して、濃縮液から対象液へとエネルギーを伝達する(対象液を昇圧させる)ことで、濃縮液の高い圧力エネルギーを利用して、高圧ポンプ31の消費動力を低減させることが可能となる。
【0060】
(圧力低下装置)
本実施形態において、膜分離装置は、圧力低下装置をさらに備える。所定の圧力を有する対象液の他の一部が、圧力低下装置を通過することによって、所定の圧力より低い圧力で第2室12に流される。
【0061】
圧力低下装置としては、例えば、所定の圧力に昇圧された対象液を半透膜モジュール1の第1室11と第2室12とに分けて流すことのできる分流弁4などが挙げられる。ここで、分流弁4(圧力低下装置)は、第2室12に流される対象液を所定の圧力より低い圧力に減圧する機能を有している。
【0062】
このような圧力低下装置を用いることで、例えば、該圧力低下装置の上流側の対象液の流路が1本で済むという利点がある。
【0063】
なお、高圧ポンプ31の上流側には、図示しない前処理装置を備えていてもよい。前処理装置は、ポンプ30で取水した原液を砂濾過やUF膜(Ultrafiltration:限外ろ過膜)、MF膜(Microfiltration:精密ろ過膜)、カートリッジフィルターなどによって処理する装置である。前処理装置により、原液から濁質を除去し、半透膜モジュール1等に適合する水質の原液を得ることができる。必要により、pHの調整手段や塩素添加装置などを付け加えることも可能である。
【0064】
〔実施形態1の変形例〕
図3は、実施形態1の膜分離装置の変形例を示す模式図である。
図3に示される膜分離装置は、第1室11と第2室12との各々に対象液が独立して供給される点で、
図2に示される膜分離装置とは異なる。それ以外の点は、
図2に示される膜分離装置と同様である。
【0065】
すなわち、本変形例は、水を含む第1対象液から濃縮された第1対象液である濃縮液を得ると共に、第2対象液から希釈された第2対象液である希釈液を得る、膜分離装置である。第1対象液を所定の圧力で第1室に流し、第2対象液を所定の圧力よりも低い圧力で第2室に流すことで、第1室内の第1対象液に含まれる水を半透膜を介して第2室内の第2対象液に移行させ、第1室から濃縮液を排出し、第2室から希釈液を排出する。
【0066】
第1室11に供給される対象液(第1対象液)と、第2室12に供給される対象液(第2対象液)とは、同じ液であってもよく、異なる液であってもよい。なお、上述のとおり、第1室11に流される対象液(第1対象液)と第2室12に流される対象液(第2対象液)との間で濃度(浸透圧)が異なる場合でも、膜分離工程は実施可能である。
【0067】
なお、本変形例において、第1エネルギーは、第1対象液に伝達され、第1対象液が昇圧される。
【0068】
<膜分離方法>
本発明は、水を含む対象液を、濃縮された対象液である濃縮液と、希釈された対象液である希釈液と、に分離する膜分離方法にも関する。
【0069】
本実施形態の膜分離方法は、少なくとも膜分離工程と第1エネルギー回収工程とを備える。
【0070】
膜分離工程では、半透膜10と、半透膜10で仕切られた第1室11および第2室12と、を有する半透膜モジュール1に対して、対象液の一部を所定の圧力で第1室11に流し、対象液の他の一部を所定の圧力よりも低い圧力で第2室12に流すことで、第1室11内の対象液に含まれる水を半透膜10を介して第2室12内の対象液に移行させ、第1室11から濃縮液を排出し、第2室12から希釈液を排出する。
【0071】
第1エネルギー回収工程では、濃縮液のエネルギーである第1エネルギーを回収する。
<造水システム>
以下、本発明の造水システムの実施形態について説明する。
【0072】
〔実施形態2〕
図5は、実施形態2の造水システムを示す模式図である。
【0073】
本実施形態の造水システムは、原液から淡水を生産するためのシステムである。
図5を参照して、本実施形態の造水システムは、高圧ポンプ31と、逆浸透(RO)モジュール2と、上記の膜分離装置と、を備える。高圧ポンプ31は、原液を所定の圧力に昇圧してROモジュール2に供給する。ROモジュール2は、所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透(RO)膜を介して淡水を分離および回収し、濃縮された原液である濃縮原液を排出する。
【0074】
本実施形態において、上記の膜分離装置に供される対象液は、この濃縮原液である。すなわち、ROモジュール2(第1室21)の下流に上記の膜分離装置が接続されている。
【0075】
実施形態1と同様に、本実施形態でも、第1エネルギー回収装置によって、濃縮液のエネルギーである第1エネルギーが回収される。ただし、本実施形態では、実施形態1と異なり、回収された第1エネルギーは、原液に伝達され、原液が昇圧される。
【0076】
本明細書において、「原液」とは、ROモジュール2に供給される水を含む液体であれば特に限定されず、溶液および懸濁液のいずれであってもよい。原液としては、対象液と同様に、例えば、海水、河川水、汽水、排水などが挙げられる。
【0077】
(高圧ポンプ)
本実施形態の造水システムでは、まず、原液(海水など)をポンプ30aにより高圧ポンプ31に供給する。そして、高圧ポンプ31は、原液を所定の圧力(例えば、6~8MPa)に昇圧して、ROモジュール2へ供給する。
【0078】
高圧ポンプは、周波数変換装置(インバータ)を有するインバータ方式のポンプであることが好ましい。この場合、造水システムを始動した直後から定常状態に至るまでの初期状態において高圧ポンプを低速(低流量)で駆動し、徐々に定常状態になるまで流量を増加させることが可能となる。
【0079】
(逆浸透モジュール)
逆浸透(RO)モジュール2は、高圧ポンプ31によって所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透(RO)膜を介して淡水を分離および回収し、濃縮された原液である濃縮原液を排出する。こうしてROモジュール2のRO膜を透過した淡水を得ることができる。分離された淡水は、必要により次の精製工程等に送られて生産水となる。ROモジュール2から排出される濃縮原液(対象液)は、高い圧力を有しているため、その圧力によって半透膜モジュール1(膜分離装置)へ送られる。
【0080】
(膜分離装置)
図5(a)~
図5(c)に示される造水システムは、上記の膜分離装置を備える。膜分離装置は第1ERDおよび圧力低下装置(分流弁4)を含む。
【0081】
図5(a)において、第1ERDは、圧力変換装置(PX)5である。
図5(b)において、第1ERDは、ターボチャージャー6である。
図5(c)において、第1ERDは、高圧ポンプ31の駆動軸と同軸上に結合された水車7である。
【0082】
実施形態1と同様に、このような第1ERDによって、濃縮液のエネルギー(第1エネルギー)を回収して、対象液へ伝達することで、高圧ポンプ31の消費動力を低減させることが可能となる。
【0083】
なお、上記の膜分離装置が圧力低下装置(分流弁4)を用いていることにより、ROモジュール2から排出される濃縮原液の持つ圧力を利用して、膜分離装置において第1室に流す対象液と第2室に流す対象液との間で圧力差を生じさせることができる。
【0084】
〔実施形態3〕
図6は、実施形態3の造水システムを示す模式図である。
【0085】
本実施形態では、圧力低下装置において、所定の圧力を有する対象液のエネルギーである第2エネルギーが回収される。すなわち、圧力低下装置としてERDが用いられている。本実施形態では、第2エネルギーは、原液に伝達され、原液が昇圧される。
【0086】
図6(a)に示される膜分離装置において、第1ERDは、圧力変換装置(PX)5である。また、圧力低下装置は、ターボチャージャー6であり、これにより第2エネルギーが回収される。なお、ターボチャージャー6によって対象液(濃縮原液)の圧力は失われるため、ターボチャージャー6(タービン6a)を通過した後の対象液は、ポンプ30bによって半透膜モジュール1の第2室12に送られる。
【0087】
図6(b)に示される膜分離装置は、圧力低下装置が、高圧ポンプ31の駆動軸と同軸上に結合された水車7である点のみが、
図6(a)とは異なる。
【0088】
本実施形態においては、第1エネルギーだけでなく、第2エネルギーも回収することにより、エネルギー回収効率を向上させ、消費電力の削減効果を大きくすることができる。
【0089】
なお、
図4は、従来の造水システムを示す模式図である。上記の膜分離装置(ブラインコンセントレーション:BC)の上流にROモジュール2を備える造水システムにおいて、ROモジュール2の第1室21内から排出される対象液の圧力と、第1室21に供給される対象液の圧力との差は、例えば50kPa以下であり、第1室21内から排出される対象液も高い圧力エネルギーを有している。このため、ROモジュール2の第1室21内から排出される濃縮された原液(濃縮原液)からエネルギーを回収することで、さらにエネルギー効率を向上させる余地があった。
【0090】
また、上流のROモジュール2から排出される濃縮原液(対象液)は、例えば、6~8MPaの圧力で半透膜モジュール1の第1室11に供給され、分流弁によって例えば3MPa以下の圧力に減圧された対象液が半透膜モジュール1の第2室12に供給される。本実施形態においては、この分流弁によって低下する分に相当する対象液の圧力エネルギーを有効活用することができる。
【0091】
〔実施形態4〕
図7は、実施形態4の造水システムを示す模式図である。
【0092】
図7(a)および
図7(b)に示される膜分離装置は、第1ERDを備えていない点のみが、
図6(a)および
図6(b)とは異なる。
【0093】
本実施形態においては、第1エネルギー(濃縮液のエネルギー)の回収は行われず、第2エネルギー(濃縮原液のエネルギー)のみが回収される。このように、第2エネルギーだけを回収する場合でも、ブラインコンセントレーション(上記の膜分離装置)を用いる場合において、さらに必要なエネルギーを削減し、エネルギー効率を高めることができる。
【0094】
〔実施形態5〕
図8は、実施形態5の造水システムを示す模式図である。
【0095】
図8(a)に示される造水システムにおいては、ROモジュール2から排出される濃縮原液のエネルギーを回収するためのERDとして、圧力変換装置5が設けられている。それ以外の点は、
図5(b)と同様である。圧力低下装置(分流弁4)でのエネルギー回収は行わない。
【0096】
ここで、
図8(a)に示されるように、ROモジュール2と半透膜モジュール1とを接続する流路の途中に、濃縮原液を一時的に貯留するタンク9を設けてもよい。タンク9を設けることで、第1ERDと第2ERDとの間での調整が容易になり、造水システムの制御が容易になる。
【0097】
図8(b)に示される膜分離装置は、圧力低下装置が、高圧ポンプ31の駆動軸と同軸上に結合された水車7である点のみが、
図8(a)とは異なる。
【0098】
本実施形態においては、さらにROモジュール2から排出される濃縮原液のエネルギーを回収することで、造水システムのエネルギー効率をさらに高めることができる。
【0099】
〔実施形態6〕
図9は、実施形態6の造水システムを示す模式図である。
【0100】
図9(a)に示される造水システムにおいて、第1ERDは、圧力変換装置52であり、圧力低下装置は、ターボチャージャー6であり、所定の圧力を有する対象液のエネルギー(第2エネルギー)を回収するERDを兼ねている。さらに、ROモジュール2から排出された濃縮原液のエネルギーを回収するためのERDとして圧力変換装置51が設けられている。それ以外の点は、
図8(a)と同様である。
【0101】
図9(b)に示される膜分離装置は、圧力低下装置が、高圧ポンプ31の駆動軸と同軸上に結合された水車7である点のみが、
図9(a)とは異なる。
【0102】
本実施形態においては、3つのエネルギー回収装置(ERD)を用いることにより、造水システムのエネルギー効率をさらに高めることができる。
【0103】
<造水方法>
本発明は、原液から淡水を生産する造水方法にも関する。
【0104】
本実施形態の造水方法は、少なくとも昇圧工程と、逆浸透工程と、上記(9)に記載の膜分離方法と、を備える。
【0105】
昇圧工程では、原液を所定の圧力に昇圧して逆浸透モジュールに供給する。
逆浸透工程では、逆浸透モジュールを用いて、所定の圧力に昇圧された原液から逆浸透膜を介して淡水を分離および回収し、濃縮された原液である濃縮原液を排出する。
【0106】
膜分離方法に供される対象液は、逆浸透工程で得られた濃縮原液である。
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0107】
1 半透膜モジュール、10 半透膜、11 第1室、12 第2室、2 逆浸透(RO)モジュール、20 逆浸透(RO)膜、21 第1室、22 第2室、30,30a,30b ポンプ、31 高圧ポンプ、32 ブースターポンプ、4 分流弁、5,51,52 圧力変換装置、6 ターボチャージャー、6a,6b タービン、7 水車、9 タンク。