(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】測距装置、カメラ、及び測距装置の駆動調整方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4861 20200101AFI20240130BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20240130BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
G01S7/4861
G01S17/89
G01C3/06 120Q
(21)【出願番号】P 2020553015
(86)(22)【出願日】2019-09-27
(86)【国際出願番号】 JP2019038221
(87)【国際公開番号】W WO2020080065
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018195018
(32)【優先日】2018-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218280
【氏名又は名称】安保 亜衣子
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(74)【代理人】
【識別番号】100173864
【氏名又は名称】齊藤 健治
(72)【発明者】
【氏名】永瀬 正規
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-045066(JP,A)
【文献】特開2010-267720(JP,A)
【文献】国際公開第2017/022219(WO,A1)
【文献】特開2015-049148(JP,A)
【文献】特開2017-167120(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008962(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第04305011(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
H04N 5/30- 5/33
H01L 27/14-27/148
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物に光パルスを投影する発光部と、
前記対象物からの前記光パルスの反射光を受光する受光領域と、
Nを3以上の正の整数とし、前記受光領域で光電変換された信号電荷を、N個の電荷移動経路に沿って順に振り分け転送するN個の電荷振分ゲートと、
前記信号電荷以外の電荷を前記受光領域から排出する電荷排出ゲートと、
N個の電荷振分ゲートに沿って転送された前記信号電荷をそれぞれ蓄積するN個の電荷蓄積領域と、
前記発光部に制御信号を供給し、且つN個の電荷振分ゲート及び前記電荷排出ゲートのそれぞれに、オフセット時間を挟んだ異なるタイミングで、順次、駆動信号を供給
し、特定の電荷振分ゲートに割り当てられる電荷蓄積時間を、他の電荷振分ゲートに割り当てられる電荷蓄積時間よりも伸張して駆動する駆動回路と、
N個の電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷をそれぞれ独立に読み出す読出増幅回路と、
前記読出増幅回路を経由した信号を入力し、前記対象物までの距離の算出を含む演算を実施する論理演算回路と、
を備えることを特徴とする測距装置。
【請求項2】
前記論理演算回路が出力した値から、
前記特定の電荷振分ゲートに割り当てられる
前記電荷蓄積時間を、逐次伸張する信号を生成し、前記駆動回路に供給する制御演算回路を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記特定の電荷振分ゲートは、前記電荷排出ゲートに印加される駆動信号の繰り返し周期で定義される繰り返し周期時間の内の、最後に割り当てられる電荷蓄積時間に対応する電荷振分ゲートであることを特徴とする請求項
2に記載の測距装置。
【請求項4】
前記制御演算回路は、前記論理演算回路が直前に測定し算出した暗時相当の信号電荷と、一つ前のタイミングで測定され算出された暗時相当の信号電荷の差が予め決めたしきい値を下回るか否かを判定し、前記しきい値を下回らない場合は、前記特定の電荷振分ゲートに割り当てられる電荷蓄積時間を更に伸張し、前記しきい値を下回る場合は、前記伸張を終了することを特徴とする請求項3に記載の測距装置。
【請求項5】
前記制御演算回路は、前記論理演算回路が直前に測定し算出された距離の検出値と、一つ前のタイミングで測定され算出された距離の検出値の差が、予め決めたしきい値を下回るか否かを判定し、前記しきい値を下回らない場合は、前記特定の電荷振分ゲートに割り当てられる電荷蓄積時間を更に伸張し、前記しきい値を下回る場合は、前記伸張を終了することを特徴とする請求項3に記載の測距装置。
【請求項6】
前記N個の電荷蓄積領域のそれぞれには補助キャパシタが設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の測距装置。
【請求項7】
前記特定の電荷振分ゲートからの信号電荷を蓄積する電荷蓄積領域に接続された補助キャパシタの容量が、他の補助キャパシタの容量よりも大きいことを特徴とする請求項6に記載の測距装置。
【請求項8】
撮像光学系と、
対象物に光パルスを投影する発光部と、
前記撮像光学系を介し前記対象物からの前記光パルスの反射光を受光する受光領域、Nを3以上の正の整数とし前記受光領域で光電変換された信号電荷をN個の電荷移動経路に沿って順に振り分け転送するN個の電荷振分ゲート、前記信号電荷以外の電荷を前記受光領域から排出する電荷排出ゲート、N個の電荷振分ゲートに沿って転送された前記信号電荷をそれぞれ蓄積するN個の電荷蓄積領域、前記発光部に制御信号を供給し且つN個の電荷振分ゲート及び前記電荷排出ゲートのそれぞれに順次、駆動信号を供給する駆動回路を集積化した固体撮像装置と、
前記N個の電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷をそれぞれ独立に読み出す読出増幅回路と、
前記撮像光学系を制御し、且つ前記読出増幅回路を経由した信号を入力し前記対象物までの距離の算出を含む演算を実施する論理演算回路と、
前記論理演算回路が出力した値から、N個の電荷振分ゲートの内の特定の電荷振分ゲートに割り当てられる電荷蓄積時間を、逐次伸張する信号を生成し、前記駆動回路に供給する制御演算回路と
を有することを特徴とするカメラ。
【請求項9】
前記駆動回路が、前記N個の電荷振分ゲート及び前記電荷排出ゲートのそれぞれに、オフセット時間を挟んだ異なるタイミングで、前記駆動信号を供給することを特徴とする請求項8に記載のカメラ。
【請求項10】
対象物に光パルスを投影する発光部、前記対象物からの前記光パルスの反射光を受光する受光領域、 Nを3以上の正の整数とし前記受光領域で光電変換された信号電荷をN個の電荷移動経路に沿って順に振り分け転送するN個の電荷振分ゲート、前記信号電荷以外の電荷を前記受光領域から排出する電荷排出ゲート、 N個の電荷振分ゲートに沿って転送された前記信号電荷をそれぞれ蓄積するN個の電荷蓄積領域、前記発光部に制御信号を供給し、且つN個の電荷振分ゲート及び前記電荷排出ゲートのそれぞれに順次、駆動信号を供給する駆動回路、N個の電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷をそれぞれ独立に読み出す読出増幅回路を備える測距装置の駆動調整方法であって、
前記読出増幅回路を経由した信号を入力し、前記対象物までの距離の算出を含む演算をするステップと、
前記演算の結果から、N個の電荷振分ゲートの内の特定の電荷振分ゲートに割り当てられる電荷蓄積時間を、逐次伸張する信号を生成し、前記駆動回路に供給するステップと、
を含む駆動調整方法。
【請求項11】
前記N個の電荷振分ゲート及び前記電荷排出ゲートのそれぞれに、オフセット時間を挟んだ異なるタイミングで前記駆動信号が供給されることを特徴とする請求項10に記載の駆動調整方法。
【請求項12】
前記特定の電荷振分ゲートは、前記電荷排出ゲートに印加される駆動信号の繰り返し周期で定義される繰り返し周期時間の内の、最後に割り当てられる電荷蓄積時間に対応する電荷振分ゲートであることを特徴とする請求項10又は11に記載の駆動調整方法。
【請求項13】
前記伸張する信号の生成は、直前に測定し算出した暗時相当の信号電荷と、一つ前のタイミングで測定され算出された暗時相当の信号電荷の差が予め決めたしきい値を下回るか否かを判定し、前記しきい値を下回らない場合は、前記特定の電荷振分ゲートに割り当てられる電荷蓄積時間を更に伸張し、前記しきい値を下回る場合は、前記伸張を終了することを特徴とする請求項10又は11に記載の駆動調整方法。
【請求項14】
前記伸張する信号の生成は、直前に測定し算出された距離の検出値と、一つ前のタイミングで測定され算出された距離の検出値の差が、予め決めたしきい値を下回るか否かを判定し、前記しきい値を下回らない場合は、前記特定の電荷振分ゲートに割り当てられる電荷蓄積時間を更に伸張し、前記しきい値を下回る場合は、前記伸張を終了することを特徴とする請求項10又は11に記載の駆動調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距素子及び3D撮像装置等の測距装置に関し、特にCMOSイメージセンサ(CIS)又はこのCISの画素を用いた測距装置、この測距装置を搭載したカメラ及び測距装置の駆動調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、固体撮像装置を用いた3Dイメージング素子の開発が活発に行われている。3Dイメージング素子においても、従来CCDイメージセンサ(CCD)が主流であったが、現在は、CISが主流となりつつある。
【0003】
各種3Dイメージング手法の中でも、光飛行時間(TOF)型は距離精度が高く、又測定可能距離範囲が広く且つ距離演算が比較的容易な手法である。TOF型3Dイメージング素子は、主に連続波変調(CW)型と光パルス同期型とがある。CW型及び光パルス型のいずれもフォトダイオード(PD)等の光ディテクタに複数の電荷振分ゲートが付加された構造をなしており、この複数の電荷振分ゲートのオン/オフを繰り返すロックイン駆動を行っている。
【0004】
TOF型3Dイメージング素子は、信号光に赤外光を用い、環境光(背景光)を除去するために、バンドパスフィルタ等を用い信号光以外の光を出来るだけカットして使用するのが一般的である。しかし、環境光をすべて除去することは非常に困難である。3タップ(Tap) ロックインピクセルと称される3分岐型ロックインピクセルでは、3つの電荷振分ゲートの内の最初に電荷を振り分ける一つの電荷振分ゲートを環境光の除去専用に用いており、環境光除去能力が高いので、室外や明るい室内等、環境光の影響が大きい環境での使用に適している。
【0005】
しかしながら、従来の3分岐型ロックインピクセルでは3つの電荷振分ゲートに電荷を振り分ける3分岐経路の1回当たりの電荷蓄積時間、即ち前のゲートオフから次のゲートオフまでの時間の長さがすべて同じ長さに設定されていた(特許文献1参照。)。このことにより、遠景の線形性が劣化し、測距範囲が狭くなるという課題があった。
【0006】
図10の破線は、特許文献1に記載された発明の手法にしたがって、撮像素子から被写体までの実際の距離と測距データとの関係を調べた結果である。従来の3分岐型ロックインピクセルでは、実際の距離が3m程度の距離から線形性が崩れてきていることが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2007/026779号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記問題点を鑑み、本発明は、遠景の線形性が改善され、且つ測距範囲が拡大された測距装置、この測距装置を搭載したカメラ、及び測距装置の駆動調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、(a)対象物に光パルスを投影する発光部と、(b)対象物からの光パルスの反射光を受光する受光領域と、 (c)Nを3以上の正の整数とし、受光領域で光電変換された信号電荷を、N個の電荷移動経路に沿って順に振り分け転送するN個の電荷振分ゲートと、(d)信号電荷以外の電荷を受光領域から排出する電荷排出ゲートと、(e)N個の電荷振分ゲートに沿って転送された信号電荷をそれぞれ蓄積するN個の電荷蓄積領域と、(f)発光部に制御信号を供給し、且つN個の電荷振分ゲート及び電荷排出ゲートのそれぞれに順次駆動信号を供給する駆動回路と、(g)N個の電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷をそれぞれ独立に読み出す読出増幅回路と、(h)読出増幅回路を経由した信号を入力し、対象物までの距離の算出を含む演算を実施する論理演算回路と、(i)論理演算回路が出力した値から、N個の電荷振分ゲートの内の特定の電荷振分ゲートに割り当てられる電荷蓄積時間を、逐次伸張する信号を生成し、駆動回路に供給する制御演算回路を備える測距装置であることを要旨とする。
【0010】
本発明の第2の態様は、(p)撮像光学系と、(q)対象物に光パルスを投影する発光部と、(r)撮像光学系を介し対象物からの光パルスの反射光を受光する受光領域、Nを3以上の正の整数とし受光領域で光電変換された信号電荷をN個の電荷移動経路に沿って順に振り分け転送するN個の電荷振分ゲート、信号電荷以外の電荷を受光領域から排出する電荷排出ゲート、N個の電荷振分ゲートに沿って転送された信号電荷をそれぞれ蓄積するN個の電荷蓄積領域、発光部に制御信号を供給し且つN個の電荷振分ゲート及び電荷排出ゲートのそれぞれに順次駆動信号を供給する駆動回路を集積化した固体撮像装置と、(s)撮像光学系を制御し、且つ読出増幅回路を経由した信号を入力し対象物までの距離の算出を含む演算を実施する論理演算回路と、(t) 論理演算回路が出力した値から、N個の電荷振分ゲートの内の特定の電荷振分ゲートに割り当てられる電荷蓄積時間を、逐次伸張する信号を生成し、駆動回路に供給する制御演算回路を有するカメラであることを要旨とする。
【0011】
本発明の第3の態様は、対象物に光パルスを投影する発光部、対象物からの光パルスの反射光を受光する受光領域、 Nを3以上の正の整数とし受光領域で光電変換された信号電荷をN個の電荷移動経路に沿って順に振り分け転送するN個の電荷振分ゲート、信号電荷以外の電荷を受光領域から排出する電荷排出ゲート、N個の電荷振分ゲートに沿って転送された信号電荷をそれぞれ蓄積するN個の電荷蓄積領域、発光部に制御信号を供給し、且つN個の電荷振分ゲート及び電荷排出ゲートのそれぞれに順次駆動信号を供給する駆動回路、N個の電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷をそれぞれ独立に読み出す読出増幅回路を備える測距装置の駆動調整方法に関する。本発明の第3の態様に係る駆動調整方法は、 (u)読出増幅回路を経由した信号を入力し、対象物までの距離の算出を含む演算をするステップと、(v)演算の結果から、N個の電荷振分ゲートの内の特定の電荷振分ゲートに割り当てられる電荷蓄積時間を、逐次伸張する信号を生成し、駆動回路に供給するステップを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、遠景の線形性が改善され、且つ測距範囲が拡大された測距装置、この測距装置を搭載したカメラ、及び測距装置の駆動調整方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る測距装置の主要部の一例の概略を説明する模式的なブロック図である。
【
図2】第1の実施形態に係る測距装置の周辺回路に含まれる制御演算回路の内部構造をハードウェア資源として説明する論理的なブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る測距装置の3分岐型画素の構造の概略を説明する平面図である。
【
図4】
図3のIV-IV方向から見た断面図である。
【
図5】
図1に示した制御演算回路を中心とした、第1の実施形態に係る測距装置の周辺回路による調整動作の流れの概略を説明するフローチャートである。
【
図6】第1の実施形態に係る測距装置を調整する際の動作を説明する駆動タイミング図である。
【
図7】第1の実施形態に係る測距装置を調整する際の動作を説明する駆動タイミング図である。
【
図8】本発明に至る前に検討した参考技術に係る測距装置の周辺回路による調整動作の概略を説明するフローチャートである。
【
図9】参考技術に係る測距装置を調整する際の動作を説明する駆動タイミング図である。
【
図10】参考技術に係る測距装置及び本発明の第1の実施形態に係る測距装置による実際の距離と測距値の関係を示すグラフである。
【
図11】参考技術に係る測距装置の問題点を引き起こす光電子の挙動を説明する断面図である。
【
図12】参考技術に係る測距装置の過渡応答の波形図である。
【
図13】
図13(a)は第1の実施形態に係る測距装置による電荷蓄積時間に対するG
3の出力の変化を示すグラフで、
図13(b)は、
図13(a)に対応する電荷蓄積時間に対するG
3の出力の変化量(微分)を示すグラフである。
【
図14】第2の実施形態に係る測距装置を説明する波形図である。
【
図15】
図1に示した制御演算回路を中心とした、第2の実施形態に係る測距装置の周辺回路による調整動作の流れの概略を説明するフローチャートである。
【
図16】第2の実施形態に係る測距装置を調整する際の動作を説明する駆動タイミング図である。
【
図17】第3の実施形態に係る測距装置を説明する波形図である。
【
図18】第3の実施形態に係る測距装置の周辺回路による調整動作の流れの概略を説明するフローチャートである。
【
図19】第3の実施形態に係る測距装置を調整する際の動作を説明する駆動タイミング図である。
【
図20】第4の実施形態に係る測距装置を調整する際の動作を説明する駆動タイミング図である。
【
図21】第4の実施形態に係る測距装置の画素の光電変換転送部に着目した構造を示す断面図である。
【
図22】
図22(b)は、
図22(a)に示した第4の実施形態に係る駆動タイミング図と比較して、第4の実施形態の変形例に係る測距装置を調整する際の動作を説明する駆動タイミング図である。
【
図23】第4の実施形態の変形例に係る測距装置の画素の光電変換転送部に着目した構造を示す断面図である。
【
図24】
図24(b)は、
図24(a)に示した参考技術に係る駆動タイミング図と比較して、第4の実施形態の変形例に係る測距装置を調整する際の動作を説明する駆動タイミング図である。
【
図25】第5の実施形態に係る測距装置の画素の主要部の平面図である。
【
図26】参考技術に係る測距装置の画素の主要部のレイアウト図である。
【
図27】第6の実施形態に係る測距装置の画素の主要部のレイアウト図である。
【
図28】本発明の第1~第6の実施形態に係る測距装置を利用分野としての一例であるカメラの構造の概略を説明するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明の第1~第6の実施の形態を説明する。第1~第6の実施形態に係る図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
又、第1~第6の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、回路素子や回路ブロックの構成や配置、或いは半導体チップ上でのレイアウト等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
尚、以下の第1~第6の実施形態の説明では、第1伝導型をp型、第2伝導型をn型として説明するが、第1伝導型をn型、第2伝導型をp型としても、電気的な極性を反対にすれば同様な効果が得られることは容易に理解できるであろう。この場合、パルス波形のハイレベルとローレベルも、当業者の技術常識に応じて、適宜反転する必要が発生する場合もあることは勿論である。
【0017】
例えば、以下の
図1では、説明の便宜上、複数の画素(測距素子)が画素アレイ部に2次元マトリクス状に配置された3D撮像装置を基礎とする測距装置を示すが、単なる例示に過ぎない。画素アレイ部に1次元的に測距素子が画素として配列されたラインセンサのレイアウトでも構わない。又、画素アレイ部に単一の測距素子のみが配置された単純な構造の距離センサであっても構わない。
【0018】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る測距装置は、
図1に示すように、画素アレイ部(X
11~X
1m;X
21~X
2m;……;X
n1~X
nm)と周辺回路部(71,72,74~77,94~96,NC1~NCm)とを同一の半導体チップ上に集積化した2次元イメージセンサ(3D撮像装置)を基礎とする。画素アレイ部(X
11~X
1m;X
21~X
2m;……;X
n1~X
nm)には、2次元マトリクス状に多数の画素X
ij(i=1~m,j=1~n;m,nはそれぞれ2以上の正の整数である。)が配列されており、方形状の撮像領域を構成している。
【0019】
そして、この画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の上辺部には駆動回路94が、下辺部には水平シフトレジスタ96が、それぞれ画素行X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm方向に沿って設けられ、画素アレイ部の右辺部には画素列X11~Xn1;X12~Xn2;……;X1j~Xnj;……;X1m~Xnm方向に沿って垂直シフトレジスタ及び垂直走査回路95が設けられている。駆動回路94には各画素Xijが測距素子として距離測定を行うに必要な光を繰り返しパルス信号として投影する発光部91が接続されている。
【0020】
この駆動回路94にはインターフェイス76を介して制御演算回路(CPU)74から駆動回路94を制御する制御信号が伝達される。制御演算回路74には、制御演算回路74での一連の動作を命令するプログラムを記憶したプログラム記憶装置77と、制御演算回路74における論理演算に必要なデータやしきい値等を記憶するデータ記憶装置72が接続される。制御演算回路74には更に、制御演算回路74における論理演算の結果を出力する出力部75が接続されている。データ記憶装置72には画素アレイ部(X
11~X
1m;X
21~X
2m;……;X
n1~X
nm)からの出力信号を、出力バッファ97,98を介して入力し、距離画像の形成に必要な対象物までの距離の算出を含む演算を実施する論理演算回路71が接続されている。尚、
図1において、画素X
n1に内部構造をブロック図として模式的に例示したように、それぞれの画素X
ijは、光電変換素子と信号電荷転送部を備える信号生成部81及びソースフォロア型の読出増幅回路82等を含む。論理演算回路71は、直前に測定した信号から暗時相当出力を算出する演算の他、後述する式(5)を用いて、
図1に示した対象物92と画素アレイ部(X
11~X
1m;X
21~X
2m;……;X
n1~X
nm)との推定距離Lの算出等の演算処理を実施する。
【0021】
駆動回路94、水平シフトレジスタ96、垂直シフトレジスタ及び垂直走査回路95によって画素アレイ部内の画素X
ijが順次走査され、画素信号の読み出しや電子シャッタ動作が実行される。即ち、本発明の第1の実施形態に係る測距装置では、画素アレイ部を各画素行X
11~X
1m;X
21~X
2m;……;X
n1~X
nm単位で垂直方向に走査することにより、各画素行X
11~X
1m;X
21~X
2m;……;X
n1~X
nmの画素信号を各画素列X
11~X
n1;X
12~X
n2;……;X
1j~X
nj;……;X
1m~X
nm毎に設けられた垂直出力信号線によって読み出す構成となっている。尚、
図1では、論理演算回路71、インターフェイス76、制御演算回路74、プログラム記憶装置77、データ記憶装置72及び出力部75が同一半導体チップに集積された構造が示されているが、単なる例示に過ぎない。
図1に示したトポロジやレイアウトに限定されず、論理演算回路71、インターフェイス76、制御演算回路74、プログラム記憶装置77、データ記憶装置72及び出力部75の少なくとも一部の回路等が別々のチップや基板に搭載される態様でも構わない。
【0022】
測距素子としての各画素X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnmからの信号読み出しについては、概ね通常のCMOSイメージセンサと同様である。但し、各画素X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnmのそれぞれのフォトダイオードからの信号電荷転送させるための第1駆動信号G1,第2駆動信号G2,第3駆動信号G3は、駆動回路94から全画素X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnmに同時に与えられ、しかも高い周波数の信号であるので、その期間には、スイッチングノイズが発生する。したがって画素部からの信号読み出しは、ノイズ処理回路NC1~NCmによる処理が終了した後に読み出し期間を設けて行う。
【0023】
制御演算回路74は、
図2に論理的に示すように、時間設定論理回路741、時間設定値出力制御回路742、距離画像出力制御回路743、設定値判定回路744及びシーケンス制御回路745をハードウェア資質として備える。時間設定論理回路741は、後述する
図6に示す光投影時間T
o及び第1電荷蓄積時間T
a1、第2電荷蓄積時間T
a2、第3電荷蓄積時間T
a3の値等を設定し、或いは、設定値判定回路744の出力信号に応じて、時間設定論理回路741は、後述する
図6に示す光投影時間T
o及び第1電荷蓄積時間T
a1、第2電荷蓄積時間T
a2、第3電荷蓄積時間T
a3の値等を適宜変更する論理回路である。この際、時間設定論理回路741は、転送ゲートに印加する第1駆動信号G
1,第2駆動信号G
2,第3駆動信号G
3が
図6に示すように、オフセット時間を挟んだ異なるタイミングとなるように時間設定をする。
【0024】
時間設定値出力制御回路742は、時間設定論理回路741が設定若しくは変更した繰り返し周期時間Tc、光投影時間To、第1電荷蓄積時間Ta1、第2電荷蓄積時間Ta2、第3電荷蓄積時間Ta3、及び電荷転送時間Ton等をインターフェイス76を介して駆動回路94に制御信号として出力する論理回路である。
【0025】
距離画像出力制御回路743は、設定値判定回路744がOKと判定した場合、論理演算回路71が算出した距離の検出値を距離画像のデータとして合成し、出力部75に出力する論理回路である。
【0026】
設定値判定回路744は、論理演算回路71が直前に測定し算出された暗時相当出力もしくは距離の検出値とその前のタイミングで測定され算出された暗時相当出力もしくは距離の検出値の差が、データ記憶装置72に予め格納されたしきい値を下回るか否かを判定し、判定結果を時間設定論理回路741又は距離画像出力制御回路743に出力する論理回路である。
【0027】
シーケンス制御回路745は時間設定論理回路741、時間設定値出力制御回路742、距離画像出力制御回路743、設定値判定回路744、インターフェイス76、プログラム記憶装置77及びデータ記憶装置72のそれぞれの動作をクロック信号に依拠して順次シーケンス制御する論理回路である。時間設定論理回路741、時間設定値出力制御回路742、距離画像出力制御回路743、設定値判定回路744及びシーケンス制御回路745のそれぞれはバス736を介して情報の送受信が可能である。
【0028】
図1の右側のブロック図に示した、CPU74を含むコンピュータシステムの構成に該当する部分において、データ記憶装置72は、複数のレジスタ、複数のキャッシュメモリ、主記憶装置、補助記憶装置を含む一群の内から適宜選択された任意の組み合わせとすることも可能である。又、キャッシュメモリは1次キャッシュメモリと2次キャッシュメモリの組み合わせとしてもよく、更に3次キャッシュメモリを備えるヒエラルキーを有しても構わない。図示を省略しているが、データ記憶装置72に複数のレジスタが含まれる場合等においては、バス736はインターフェイス76、プログラム記憶装置77及びデータ記憶装置72等にまで延長されていても構わない。
【0029】
図2に示した制御演算回路74は、マイクロチップとして実装されたマイクロプロセッサ(MPU)等を使用してコンピュータシステムを構成することが可能である。又、コンピュータシステムを構成する制御演算回路74として、算術演算機能を強化し信号処理に特化したデジタルシグナルプロセッサ(DSP)や、メモリや周辺回路を搭載し組込み機器制御を目的としたマイクロコントローラ(マイコン)等を用いてもよい。或いは、現在の汎用コンピュータのメインCPUを制御演算回路74に用いてもよい。
【0030】
更に、制御演算回路74の一部の構成又はすべての構成をフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)のようなプログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)で構成してもよい。PLDによって、制御演算回路74の一部又はすべてを構成した場合は、データ記憶装置72は、PLDを構成する論理ブロックの一部に含まれるメモリブロック等のメモリ要素として構成することができる。更に、制御演算回路74は、CPUコア風のアレイとPLD風のプログラム可能なコアを同じチップに搭載した構造でもよい。このCPUコア風のアレイは、予めPLD内部に搭載されたハードマクロCPUと、PLDの論理ブロックを用いて構成したソフトマクロCPUを含む。つまりPLDの内部においてソフトウェア処理とハードウェア処理を混在させた構成でもよい。
【0031】
第1の実施形態に係る測距装置のそれぞれの画素X
11~X
1m;X
21~X
2m;……;X
n1~X
nm内の信号生成部81として機能する部分の平面構造の一例を
図3に示す。又、
図3に示す平面構造の断面構造の一例を
図4に示す。
図4は、
図3のレイアウト図のIV-IV方向から見た断面図である。開口部42以外を遮光された埋込フォトダイオードに、埋込フォトダイオードの受光領域で光電変換された信号電荷を転送する第1の電荷振分ゲート(31a,31b)、第2の電荷振分ゲート(32a,32b)、第3の電荷振分ゲート(33a,33b)及び電荷排出ゲート(34a,34b)が電界制御電極対として接続されている。
【0032】
第1の電荷振分ゲート(31a,31b)、第2の電荷振分ゲート(32a,32b)、第3の電荷振分ゲート(33a,33b)及び電荷排出ゲート(34a,34b)は、受光領域を囲む位置において、ゲート絶縁膜33上に受光領域の中心位置から第1電荷蓄積領域23a、第2電荷蓄積領域23b、第3電荷蓄積領域23c及び電荷排出領域23dのそれぞれに向かって対角線方向に伸びる電荷移動経路の両側に対をなす電界制御電極対として配置されている。
図1の発光部91から繰り返しパルス信号として投影(照射)された光は、対象物92で反射され、
図3の受光領域の周辺を覆う遮光膜41の開口部42を介して受光領域に入射する。即ち、光電変換素子の受光領域は、遮光膜41の開口部42を介して入射したパルス光を光信号として受光し、この光信号を信号電荷に変換し、第1の電荷振分ゲート(31a,31b)、第2の電荷振分ゲート(32a,32b)、及び第3の電荷振分ゲート(33a,33b)の3方向に信号電荷を振り分ける。
【0033】
第1の実施形態に係る測距装置の画素内の信号生成部81として機能する部分は、
図3の平面図、及び
図4の断面図に示すように、p型の半導体からなる機能基体層20、機能基体層20の上部の一部に設けられたn型の表面埋込領域22、及び表面埋込領域22の表面に接して設けられた、p
+型のピニング層29を含む光電変換領域(29,22)と、光電変換領域(29,22)上に設けられたゲート絶縁膜33を含む。そして、光電変換領域(29,22)の中央部を受光領域としている。
図3の平面図に示すように、受光領域を囲むように受光領域の中心位置に関して対称となる4つの位置のそれぞれに互いに離間して設けられた、機能基体層20よりも高不純物密度でn
+型の第1電荷蓄積領域23a、第2電荷蓄積領域23b、第3電荷蓄積領域23c及び電荷排出領域23dを備える。
【0034】
各画素を構成している光電変換素子の第1の電荷振分ゲート(31a,31b)は、フック状(鉤型)の第1静電誘導電極31aと、フック状の第2静電誘導電極31bとを対角線方向に伸びる電荷移動経路を、互いに島状に挟んで互いに対峙させた電極ペア(電界制御電極対)である。第1静電誘導電極31aに所定の駆動電圧を印加した状態においては、左上に向かう対角線方向に伸びる電荷移動経路の信号電荷に対する電位障壁の高さが低下し、電荷移動経路の導通状態を補助する横方向電界制御による電位分布が実現できる。第2静電誘導電極31bに所定の駆動電圧を印加した状態においても、対角線方向に伸びる電荷移動経路の信号電荷に対する電位障壁の高さが低下し、電荷移動経路の導通状態を補助する電位分布が実現できる。
【0035】
第2の電荷振分ゲート(32a,32b)は、フック状の第3静電誘導電極32aと、フック状の第4静電誘導電極32bとを左下に向かう対角線方向に伸びる電荷移動経路を、互いに島状に挟んで互いに対峙させた電極ペアである。第3の電荷振分ゲート(33a,33b)は、フック状の第5静電誘導電極33aと、フック状の第6静電誘導電極33bとを右上方向に向かう対角線方向に伸びる電荷移動経路を、互いに島状に挟んで互いに対峙させた電極ペアである。電荷排出ゲート(34a,34b)は、フック状の第7静電誘導電極34aと、フック状の第8静電誘導電極34bとを右下に向かう対角線方向に伸びる電荷移動経路を、互いに島状に挟んで互いに対峙させた電極ペアである。
【0036】
図3の平面図から分かるように、第1電荷蓄積領域23a、第2電荷蓄積領域23b、第3電荷蓄積領域23c及び電荷排出領域23dの配置トポロジは、受光領域の中心位置に関して4回回転対称である。
図3に示すように、第1の実施形態に係る測距装置の画素は、更に、受光領域を囲む周辺部に、機能基体層20よりも高不純物密度でn型の電荷排出補助領域27a,27b,27c,27dが、互いに離間して設けられている。
【0037】
第1静電誘導電極31aと第2静電誘導電極31bは、第1電荷蓄積領域23aに向かう電荷移動経路の両側に、鏡像関係で対向配置されている。第3静電誘導電極32aと第4静電誘導電極32bは、第2電荷蓄積領域23bに向かう電荷移動経路の両側に、鏡像関係で対向配置されている。第5静電誘導電極33aと第6静電誘導電極33bは、第3電荷蓄積領域23cに向かう電荷移動経路の両側に、鏡像関係で対向配置されている。第7静電誘導電極34aと第8静電誘導電極34bは、電荷排出領域23dに向かう電荷移動経路の両側に、鏡像関係で対向配置されている。
【0038】
第1の実施形態に係る測距装置の画素は、
図6に示すように、それぞれ電界制御電極対を構成する第1の電荷振分ゲート(31a,31b)、第2の電荷振分ゲート(32a,32b)、第3の電荷振分ゲート(33a,33b)及び電荷排出ゲート(34a,34b)に対し第1駆動信号G
1、第2駆動信号G
2、第3駆動信号G
3及び排出駆動信号G
Dを電界制御パルスとして、周期的に印加し、表面埋込領域22の空乏化電位を交互に変化させることにより、電荷移動経路のいずれかに、電荷を輸送する方向に向かう電位勾配を交互に形成して、表面埋込領域22中で発生及び収集された信号電荷の移動先を第1電荷蓄積領域23a、第2電荷蓄積領域23b、第3電荷蓄積領域23c及び電荷排出領域23dのいずれかに順次設定するように制御する。
【0039】
又、
図3に示すように周辺部に電荷排出補助領域27a,27b,27c,27dを設けてあるので、電荷移動経路を設定する際に用いる第1電位レベルの第1駆動信号G
1,第2駆動信号G
2,第3駆動信号G
3,排出駆動信号G
Dより大きな第2電位レベルの電荷排出パルスを第1の電荷振分ゲート(31a,31b)に印加することにより、第1の電荷排出補助領域27a及び第4の電荷排出補助領域27dに、背景光(環境光)等に起因した測距に対するノイズ電流成分となる電荷を排出することができる。
【0040】
同様に、第2電位レベルの電荷排出パルスを第2の電荷振分ゲート(32a,32b)に印加することにより、第2の電荷排出補助領域27b及び第1の電荷排出補助領域27aに測距に対するノイズ電流成分となる電荷を排出することができる。又、第2電位レベルの電荷排出パルスを第3の電荷振分ゲート(33a,33b)に印加することにより、第3の電荷排出補助領域27c及び第4の電荷排出補助領域27dに測距に対するノイズ電流成分となる電荷を排出することができる。更に、第2電位レベルの電荷排出パルスを電荷排出ゲート(34a,34b)に印加することにより、第2の電荷排出補助領域27b及び第3の電荷排出補助領域27cに測距に対するノイズ電流成分となる電荷を排出することができる。例えば第1駆動信号G1,第2駆動信号G2,第3駆動信号G3,排出駆動信号GDの電圧を2.0Vとした場合に、電荷排出パルスとしての第2電位レベルの電圧を5V程度に設定すればよい。
【0041】
第1の実施形態に係る測距装置の画素では、受光領域の中心で互いにクロスするX型を構成するように電荷移動経路が設定される。それぞれの電荷移動経路を横断する方向に、静電誘導効果で電界制御を行う第1の電荷振分ゲート(31a,31b)及び第2の電荷振分ゲート(32a,32b),第3の電荷振分ゲート(33a,33b),電荷排出ゲート(34a,34b)によって、受光領域で発生した光電子を、X型を構成する電荷移動経路に沿って、X字の4つの方向に電界制御により高速に移動させて、電荷変調を行うことができる。
【0042】
第1の実施形態に係る測距装置の画素において、受光領域で発生した電子を、X字をなす電荷移動経路に沿って、
図3の左上方向に移動させ、第1の電荷振分ゲート(31a,31b)の間を通過させる場合は、第2の電荷振分ゲート(32a,32b)、第3の電荷振分ゲート(33a,33b)及び電荷排出ゲート(34a,34b)を、それぞれゼロバイアス(接地電位GND)として、第1の電荷振分ゲート(31a,31b)に第1駆動信号G
1=2.0Vの第1電界制御パルスを与えれば、表面埋め込み領域22から第1電荷蓄積領域23aに向かう左上がりの対角方向に沿って電位勾配が形成される。
【0043】
逆に、受光領域で発生した電子を、X字をなす電荷移動経路沿って、
図3の右下方向に移動させ、電荷排出ゲート(34a,34b)の間を通過させる場合は、第1の電荷振分ゲート(31a,31b)、第2の電荷振分ゲート(32a,32b)及び第3の電荷振分ゲート(33a,33b)をゼロバイアス(接地電位GND)として、電荷排出ゲート(34a,34b)に排出駆動信号G
D=2.0Vのパルスを与えれば右下方向に向かう電位勾配が形成される。
【0044】
図5は、
図1に示した第1の実施形態に係る測距装置の制御演算回路74に関連する動作の概略を示すフローチャートであり、
図6及び
図7は、
図5に示したフローチャートの流れとなるプログラムに従って駆動方法が変化する駆動タイミング図を例示した図である。
【0045】
図6は、第1の実施形態に係る測距装置の調整時の動作を説明する駆動タイミング図である。第1の電荷振分ゲート(31a,31b)に与える第1駆動信号G
1、第2の電荷振分ゲート(32a,32b)に与える第2駆動信号G
2、及び第3の電荷振分ゲート(33a,33b)に与える第3駆動信号G
3のパルスのオン/オフ周期は初期状態(i=0)において同じであり、それぞれ互いに第1電荷蓄積時間T
a1、第2電荷蓄積時間T
a2、第3電荷蓄積時間T
a3の値に応じてずらしてある。電荷排出ゲート(34a,34b)に与える排出駆動信号G
Dのオン時間は第1駆動信号G
1、第2駆動信号G
2、第3駆動信号G
3のパルスよりも長い。排出駆動信号G
Dのパルスが、オン/オフする期間が繰り返し周期時間(T
c)である。
【0046】
図6に示すとおり投影光は、第1駆動信号G
1との関係で第2駆動信号G
2のパルスに割り当てられる第2電荷蓄積時間T
a2に同期している。第2駆動信号G
2のパルスに割り当てられる第2電荷蓄積時間T
a2及び第3駆動信号G
3のパルスに割り当てられる第3電荷蓄積時間T
a3の間に受信光が得られる領域で距離測定ができる。排出駆動信号G
Dは、第3駆動信号G
3のパルスに割り当てられる第3電荷蓄積時間T
a3以降の受信光が距離測定のノイズにならないように光電子を排出するための電荷排出ゲート(34a,34b)に与えられるパルスである。第1駆動信号G
1は、背景光(環境光)や暗電流等を排除(オフセット)するためのパルスの電圧であり、排出駆動信号G
Dのパルス印加後の第1電荷蓄積時間T
a1が割り当てられている。
【0047】
即ち、
図3に示すような3方向振分構造を有する測距用光電変換素子において、第1の電荷振分ゲート(31a,31b)を通り電荷蓄積領域23aに転送され蓄積された信号電荷Q1、第2の電荷振分ゲート(32a,32b)を通り電荷蓄積領域23bに転送され蓄積された信号電荷Q2と、第3の電荷振分ゲート(33a,33b)を通り電荷蓄積領域23cに転送され蓄積された信号電荷Q3とすると、電荷蓄積領域23bに蓄積されるべき真の信号電荷Q2
real(a)は、
図6に示す駆動タイミング図では、
Q2
real(a) = Q2-Q1 ……(1)
で与えられる。
【0048】
又、電荷蓄積領域23cに蓄積されるべき真の信号電荷Q3real(a)は、
Q3real(a) = Q3-Q1alpha-ef. ……(2)
で与えられる。ここで電荷蓄積領域23aに転送され蓄積される実効信号電荷Q1alpha-ef.は、αを第1駆動信号G1との関係で第3駆動信号G3のパルスに割り当てられる第3電荷蓄積時間Ta3の伸張割合を示す係数として、
Q1alpha-ef. =α×Q1 ……(3)
で与えられる。
【0049】
式(1)及び(2)から分かるように、
図6の駆動タイミング図で、最初に電荷を振り分ける第1の電荷振分ゲート(31a,31b)を環境光の除去専用に用いることにより、環境光除去能力が高くなる。よって第1の実施形態に係る測距装置は、室外や明るい室内等、環境光の影響が大きい環境での使用に適していることが分かる。
【0050】
左右の2方向に信号を振り分けるTOF型の光電変換素子による推定距離Lは、以下の式(4)で与えられることが知られている。即ち、右側の第1転送電極を通り右側の電荷蓄積領域に転送され蓄積された信号電荷をQ1、左側の第2転送電極を通り左側の電荷蓄積領域に転送され、蓄積された信号電荷をQ2とすると、2方向振分型の光電変換素子の推定距離Lは、
L=(cTo/2)(Q2/(Q1+Q2)) ……(4)
で与えられる。ここで、cは光速、Toは、パルス光の光投影時間(パルス幅)である。
【0051】
一方、3方向振分構造を有する第1の実施形態に係る測距用光電変換素子による推定距離Lは、式(1)及び(2)を考慮すると、式(4)を変形し以下の式(5)で与えられることが分かる:
L=(cTo/2)(Q3real(a)/(Q2real(a)+ Q3real(a)))…(5)
【0052】
第1電荷蓄積領域23aには、
図3に示すように、第1補助キャパシタC1と、図示されていないが、第1のソースフォロア増幅トランジスタSF1とが表面配線等を介して接続されている。同様に、第2電荷蓄積領域23bには第2補助キャパシタC2と、第2のソースフォロア増幅トランジスタSF2とが、第3電荷蓄積領域23cには第3補助キャパシタC3と、第3のソースフォロア増幅トランジスタSF3とが接続されている。電荷排出領域23dには電源VDDが接続されている。
【0053】
図2に示した第1の実施形態に係る測距装置の制御演算回路74の動作の概略は
図5に示すようなフローチャートの流れの手順で説明できる。
図5のステップS101において、制御演算回路74の時間設定論理回路741が第1電荷蓄積時間T
a1=第2電荷蓄積時間T
a2=第3電荷蓄積時間T
a3に設定する。設定された第1電荷蓄積時間T
a1、第2電荷蓄積時間T
a2、第3電荷蓄積時間T
a3を、時間設定値出力制御回路742が
図1に示したインターフェイス76を介して駆動回路94に制御信号として出力する。制御演算回路74の時間設定値出力制御回路742から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて、発光部91から、パルス発光がなされる。パルス発光は、例えば、近赤外LD(レーザダイオード)や近赤外LEDが用いられる。対象物92を反射したパルス光が、レンズ93やBPF(バンドパスフィルタ)などを通して
図1に示した画素アレイ部(X
11~X
1m;X
21~X
2m;……;X
n1~X
nm)に照射される。
【0054】
引き続き、ステップS102において、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の各画素Xijは、受光により生成された電子(光電子)を、制御演算回路74の時間設定論理回路741から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて動作し、出力信号を出力バッファ97.98を介して論理演算回路71に送る。ステップS102では論理演算回路71が、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の各画素Xijから出力された信号に応じて、式(5)を用いて距離を算出する演算を行い、距離測定をする。ステップS102では、論理演算回路71が更に、距離算出及び付帯する演算結果を、制御演算回路74の時間設定論理回路741に送る。
【0055】
図5のステップS103において、制御演算回路74の時間設定論理回路741が第3電荷蓄積時間T
a3を伸張する。設定された第1電荷蓄積時間T
a1、第2電荷蓄積時間T
a2、第3電荷蓄積時間T
a3を、時間設定値出力制御回路742が
図1に示したインターフェイス76を介して駆動回路94に制御信号として再度出力する。制御演算回路74の時間設定値出力制御回路742から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて、発光部91から、パルス発光がなされる対象物92を反射したパルス光が、レンズ93やBPFなどを通して
図1に示した画素アレイ部(X
11~X
1m;X
21~X
2m;……;X
n1~X
nm)に再度照射される。
【0056】
そして、ステップS104において、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の各画素Xijは、受光により生成された電子を、制御演算回路74の時間設定論理回路741から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて動作し、出力信号を出力バッファ97.98を介して論理演算回路71に送る。ステップS104では論理演算回路71が、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の各画素Xijから出力された信号に応じて、式(5)を用いて距離を算出する演算を行い、距離測定をし、距離算出及び付帯する演算結果を時間設定論理回路741に再度送る。
【0057】
図5のステップS105において、設定値判定回路744は、ステップS104において論理演算回路71が直前に測定し算出された暗時相当の第3信号電荷Q3と、ステップS102等のステップS104よりも一つ前のタイミングで測定され算出された暗時相当の第3信号電荷Q3の差が、データ記憶装置72に予め格納されたしきい値を下回るか否かを判定する。若しくは、ステップS104において論理演算回路71が直前に測定し算出された距離の検出値と、ステップS102等のステップS104よりも一つ前のタイミングで測定され算出された距離の検出値の差が、データ記憶装置72に予め格納されたしきい値を下回るか否かを判定する。ここで、「暗時相当」とは、式(1)及び(2)を用いて計算することによって、環境光の影響を排除することを指す。
【0058】
ステップS105において、設定値判定回路744がしきい値を下回らない(Yes)と判断した場合は、制御演算回路74の時間設定論理回路741へデータを渡す。時間設定論理回路741は、
図3のステップS106において、制御演算回路74の時間設定論理回路741が第3電荷蓄積時間T
a3を伸張したのち、ステップS104に戻り、再度の距離測定をする。以下ステップS104からステップS105、ステップS106を経てステップS104に戻るループ処理が、ステップS105で設定値判定回路744がしきい値を下回る(No)と判断するまで、繰り返される。
【0059】
図5のステップS104からステップS105、ステップS106を経てステップS104に戻るループ処理に伴い、第3電荷蓄積時間T
a3が逐次伸張される駆動タイミング図が
図6に示されている。即ち、
図6では、制御演算回路74の内部で、シーケンス制御回路745の命令に従い、i=0~8まで第3電荷蓄積時間T
a3が逐次伸張されるループが繰り返され、i=8でしきい値を下回る暗時相当のG3出力となる第3電荷蓄積時間T
a3が得られた例を示している。
【0060】
図7も同様に、ステップS104からステップS105、ステップS106を経てステップS104に戻るループ処理が、i=0~11,12、……とシーケンス制御回路745の命令で繰り返され、第3電荷蓄積時間T
a3が逐次伸張される様子を示している。
図7も
図5のフローチャートに基づいたタイミング図であるが、
図6と同様、i=8でしきい値を下回る暗時相当の第3信号電荷Q3となる第3電荷蓄積時間T
a3が得られている。しかし、第3電荷蓄積時間T
a3に対する暗時相当の第3信号電荷Q3の変化を確認するために、第3電荷蓄積時間T
a3を伸張させる回数を8回に限定せず、距離測定を行っている。このときの第3電荷蓄積時間T
a3に対する暗時相当の第3信号電荷Q3の変化を
図13(a)に示す。
【0061】
図13(a)に示すように、第3電荷蓄積時間T
a3の値が大きくなるにしたがって、暗時相当の第3信号電荷Q3は、ある特定の漸近値に漸近的に近づくように増大している。例えば
図13(a)に示す漸近値に近いi=8のときの第3信号電荷Q3の値を「しきい値」に選定してもよい。一方、
図13(b)に示すように、第3電荷蓄積時間T
a3の変化に対する、暗時相当の第3信号電荷Q3の微分値(=ΔG
3/Δt)をプロットして、しきい値を決定してもよい。
【0062】
図13(b)の縦軸の微分値ΔG
3/Δtを定義するΔtは時間(第3電荷蓄積時間T
a3)の変化量である。即ち、
図13(b)において、i=0とi=8の間に位置する第3信号電荷Q3の増加量(微分値)の特定の値を「しきい値」と定義することが可能である。
図13(b)に示した微分値の変化でしきい値を決めた場合は、i=0のときの第3電荷蓄積時間T
a3に対する暗時相当の第3信号電荷Q3の増加量はしきい値より大きい。iが8以上のとき、暗時相当の第3信号電荷Q3の増加量はしきい値より小さくなっている。
【0063】
そして、設定値判定回路744がしきい値を下回る(No)と判断すれば、制御演算回路74の距離画像出力制御回路743が出力部75へデータを渡し、出力部75から出力信号が出力され
図5に示した処理が終了する。
【0064】
[参考技術]
図8に本発明に至る前の段階で本発明者が検討した参考技術に係る測距装置の動作の概略を示すフローチャートを示す。
図8に示す参考技術は、特許文献1等に記載された従来の3分岐型ロックインピクセルの問題点を改善する目的の技術である。参考技術も
図2に示したハードウェア資源と同様な各種の論理回路を有する構成の制御演算回路74の処理に従う。
図8に示すフローチャートの流れに対応する駆動タイミング図が、
図9である。
【0065】
図8のステップS901において、制御演算回路74の時間設定論理回路741が光投影時間T
oを最大値に設定する。引き続き、ステップS902において、時間設定論理回路741が繰り返し周期時間T
cを最大値に設定する。設定された光投影時間T
o及び繰り返し周期時間T
cを、時間設定値出力制御回路742が
図1に示したインターフェイス76を介して駆動回路94に制御信号として出力する。制御演算回路74の時間設定値出力制御回路742から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて、発光部91から、パルス発光がなされる。対象物92を反射したパルス光が、レンズ93やBPFなどを通して
図1に示した画素アレイ部(X
11~X
1m;X
21~X
2m;……;X
n1~X
nm)に照射される。
【0066】
図8のステップS903において、画素アレイ部の各画素X
ijは、受光により生成された電子(光電子)を、制御演算回路74の時間設定論理回路741から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて動作し、出力信号を出力バッファ97.98を介して論理演算回路71に送る。この際、
図9に示すように、第1駆動信号G
1,第2駆動信号G
2,第3駆動信号G
3,排出駆動信号G
Dがオフセット時間を挟んだ異なるタイミングで、それぞれ印加される。ステップS903では論理演算回路71が、各画素X
ijから出力された信号に応じて、式(3)のα=1として式(5)を用いて距離を算出する演算を行い、距離測定をする。
【0067】
それぞれが電界制御電極対である第1の電荷振分ゲート(31a,31b)及び第2の電荷振分ゲート(32a,32b),第3の電荷振分ゲート(33a,33b),電荷排出ゲート(34a,34b)間に定義される電荷移動経路を通る信号電荷の違いにより、論理演算回路71が、式(3)のα=1として式(5)を用いて距離を算出する演算を実行する。ステップS903では、論理演算回路71が更に、距離算出の演算結果を、制御演算回路74の時間設定論理回路741に送る。
【0068】
図8のステップS904において、制御演算回路74の設定値判定回路744が、論理演算回路71から出力された距離算出の演算結果に対して、駆動設定が適切かどうかの判定を行う。ステップS904において、設定値判定回路744がイエス(Yes)と判断した場合は、制御演算回路74の時間設定論理回路741へデータを渡す。時間設定論理回路741は、
図8のステップS905において、光投影時間T
oを短縮する。引き続き、ステップS906において、時間設定論理回路741が繰り返し周期時間T
cを短縮する。
【0069】
光投影時間T
o及び繰り返し周期時間T
cが短縮され、駆動方法が変更された制御信号が、
図1に示した駆動回路94を介し、発光部91及び画素アレイ部に渡され、
図8のステップS903において距離が測定される。以下ステップS903、ステップS904、ステップS905、ステップS906を経てステップS903に戻るループ処理が、ステップS904で設定値判定回路744が否(No)と判断するまで、繰り返される。そして、設定値判定回路744が否(No)と判断すれば、ステップS907において制御演算回路74の距離画像出力制御回路743が出力部75へデータを渡し、出力部75から出力信号が出力される。
【0070】
図8及び
図9に示したように、参考技術に係る測距装置では測定距離に応じて、光投影時間T
o及び繰り返し周期時間T
cを変更して距離精度を向上させることができる。しかし、
図8及び
図9に示した参考技術に係る測距装置においては、第1電荷蓄積時間T
a1=第2電荷蓄積時間T
a2=第3電荷蓄積時間T
a3=光投影時間T
o=一定であるが、
図10の破線に示すような実際の距離に対する推定距離Lの線形性が崩れる問題がある。
図10は、光投影時間T
o=第1電荷蓄積時間T
a1=第2電荷蓄積時間T
a2=第3電荷蓄積時間T
a3=34ns、片道光路長=5.1mの設定条件の場合の実測例である。理想的には5m程の線形性が得られる条件であるが、
図10の破線に示す実測結果では、実際の距離が3m程度から対応する推定距離Lの線形性が崩れてきている。
【0071】
図8及び9に示した参考技術に係る測距装置の駆動方法では、
図6及び
図7のi=0のときの暗時相当の第3信号電荷Q3を、距離算出の演算に用いており、その結果
図10の破線に示すように遠景の線形性が崩れる。第1の実施形態に係る測距装置の駆動方法によると、i=8のときの暗時相当の第3信号電荷Q3を距離を算出する演算に用いており、
図10の太い実線に示すように、距離が3.5mでの測距データの線形性が図中の矢印のように回復していることが分かる。
【0072】
図11は、参考技術に係る測距装置で実際の距離に対する測定距離の線形性が崩れる理由となる光電子の挙動を説明する模式図である。
図11の遮光膜41の開口部42を通り過ぎた光(光子)は、機能基体層20内で吸収されて、光電子(電子)を発生する。機能基体層20内で、光(光子)は、表面から指数関数的に吸収され、1対1で光電子を発生するが、
図11では、説明を簡単にするために、比較的浅く、表面に近い表面埋込領域22と、機能基体層20の比較的深い(表面から遠い)ところで発生した2つの光電子とその挙動を示している。
【0073】
機能基体層20の比較的浅いところで発生した光電子は、機能基体層20の該当箇所にかかる電界によってドリフト輸送される。光電子は、p型の機能基体層20とn型の表面埋込領域22が生成する空乏層の電位最深部に瞬時に移動して待機する。そののち、
図3に示した第1の電荷振分ゲート(31a,31b)を構成する電界制御電極対間に定義される電荷移動経路の電位が下がれば、光電子は第1電荷蓄積領域23aへと移動し、第1電荷蓄積領域23aに貯まる信号となる。
【0074】
又、機能基体層20の比較的浅いところで発生した光電子はp型の機能基体層20とn型の表面埋込領域22が生成する空乏層の電位最深部に瞬時に移動して待機する。
図3に示した電荷排出ゲート(34a,34b)を構成する電界制御電極対間に定義される電荷移動経路の電位が下がれば、光電子は電荷排出領域23dへと移動し、図示していない電源(VDD)に排出される。
【0075】
機能基体層20の比較的深いところで発生した光電子は、機能基体層20の比較的深いところに電界がかかっていないため、
図11に模式的に示したように、しばらくの間ランダムウォークする。その後、機能基体層20の内部の電界がかかる位置に到達すると、電界ドリフトによって、p型の機能基体層20とn型の表面埋込領域22が生成する空乏層の電位最深部に瞬時に移動して待機する。そののち、第1の電荷振分ゲート(31a,31b)を構成する電界制御電極対間に定義される電荷移動経路の電位が下がれば、第1電荷蓄積領域23aへと移動し、第1電荷蓄積領域23aに貯まる信号となる。
【0076】
又、機能基体層20の比較的深いところで発生した光電子はしばらくの間ランダムウォークしたのち、p型の機能基体層20とn型の表面埋込領域22が生成する空乏層の電位最深部に瞬時に移動して待機する。電荷排出ゲート(34a,34b)を構成する電界制御電極対間に定義される電荷移動経路の電位が下がれば、光電子は電荷排出領域23dへと移動し、図示していない電源(VDD)に排出される。
【0077】
図12は、参考技術に係る測距装置の問題点を引き起こす主メカニズムのイメージを過渡応答波形の形でまとめた図である。
図12(a)が、理想状態を示している。
図12(a)で、T
oは光投影時間、T
dは受信光の遅延時間、T
aeffは電荷蓄積に必要な時間である。理想的な矩形投影パルス光が出射されれば、距離に応じて遅延時間T
dだけ遅れて、投影パルス光と同じ形をした受信光が返ってくる。そして、返ってきた受信光が、遮光膜41の開口部42を介して参考技術に係る測距装置の受光部に照射されれば、やはり、同じ形をした矩形の光電子分布が得られる。
【0078】
図12(b)は、
図11に示した機能基体層20内の光電子の挙動を考慮した状態を示している。
図12(b)においても、T
oは光投影時間、T
dは受信光の遅延時間、T
aeffは電荷蓄積に必要な時間であり、T
oeffは実効的な光投影時間である。たとえ理想的な矩形投影パルス光が出射され、距離に応じて遅延時間T
dだけ遅れて、投影パルス光と同じ形をした受信光が返ってきても、返ってきた受信光が、参考技術に係る測距装置の受光部に照射されたのち、光電変換されると、その光電変換された位置の拡がりによって、第1電荷蓄積領域23a、第2電荷蓄積領域23b、第3電荷蓄積領域23c等に収集される時間がバラツキ、遅れていくことを示している。
【0079】
-第1の実施形態の変形例-
第1の実施形態に係る測距装置においては、第3電荷蓄積時間Ta3を伸張させ、環境光の時間線形補正を行うため、環境光による第3電荷蓄積領域23c及び第3補助キャパシタC3のそれぞれの電荷蓄積量の和が、蓄積時間に比例して大きくなる。これにより、第3電荷蓄積領域23c及び第3補助キャパシタC3のそれぞれの電荷蓄積量の和で、画素が飽和する場合が多くなる。このことを改善するためには、第3電荷蓄積領域23c及び第3補助キャパシタC3のそれぞれの電荷蓄積量の和を、第1電荷蓄積領域23a及び第1補助キャパシタC1のそれぞれの電荷蓄積量の和、並びに第2電荷蓄積領域23b及び第2補助キャパシタC2のそれぞれの電荷蓄積量の和よりも大きくなるように設計すればよい。
【0080】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る測距装置の構成の一例は、第1及び第1の実施形態の変形例に係る測距装置と同様、
図1~4で示される。
図14は、第2の実施形態に係る測距装置における過渡応答の波形を模式的に示す図である。第1及び第1の実施形態の変形例に係る測距装置における
図14に対応する図は
図12(b)に示される。第1及び第1の実施形態の変形例において、投影光の波形の歪みは考慮されていない。しかしながら実際は、
図14に示すように、投影光自体に遅れや、波形の歪みが生じる。受信光は、被写体までの距離の分だけ遅れて入射する。光電子は、第1及び第1の実施形態の変形例において述べた理由により、受信光波形よりも更に遅れ、波形の歪みが生じる。
【0081】
図15に、第2の実施形態に係る測距装置の制御演算回路74の動作の概略をフローチャートで示す。フロー実施時の測距値は後述する式(6)~(9)による補正によって環境光の影響を排除できるが、フロー実施時は、環境光の影響を避ける方が簡便であり、精度を高めることができるので、暗時環境下で測定を行うことが望ましい。
【0082】
図15のステップS201において、制御演算回路74の時間設定論理回路741が第1電荷蓄積時間T
a1=第2電荷蓄積時間T
a2=第3電荷蓄積時間T
a3に設定する。設定された第1電荷蓄積時間T
a1、第2電荷蓄積時間T
a2、第3電荷蓄積時間T
a3を、時間設定値出力制御回路742が
図1に示したインターフェイス76を介して駆動回路94に制御信号として出力する。制御演算回路74の時間設定値出力制御回路742から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて、発光部91から、パルス発光がなされる。
【0083】
引き続き、ステップS202において、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の各画素Xijは、受光により生成された電子(光電子)を、制御演算回路74の時間設定論理回路741から駆動回路94を通して与えられた制御信号に応じて動作し、出力信号を出力バッファ97.98を介して論理演算回路71に送る。論理演算回路71が、画素アレイ部(X11~X1m;X21~X2m;……;Xn1~Xnm)の各画素Xijから出力された信号に応じて、後述する式(6)~(9)を用いて距離を算出する演算を行い、距離測定をする。ステップS202では、論理演算回路71が更に、距離算出の演算結果を、制御演算回路74の時間設定論理回路741に送る。
【0084】
図15のステップS203において、設定値判定回路744は、暗時相当の第1信号電荷Q1が、データ記憶装置72に予め格納されたしきい値を上回らないか否かを判定する。但し、1回目の測定で否(No)となることはない。
図16に示すように、第2電荷蓄積領域23bに電荷を蓄積するタイミングに同期させて発光させており、発光時間が必ず第2電荷蓄積領域23bに電荷を蓄積するタイミングから遅れ、更に受光時間は発光時間よりも遅れるため、初期設定において暗時相当の第1信号電荷Q1がしきい値を超えることはない。
【0085】
ステップS203において、設定値判定回路744がイエス(YES)と判断した場合は、制御演算回路74の時間設定論理回路741へデータを渡す。時間設定論理回路741は、
図15のステップS204において、制御演算回路74の時間設定論理回路741が第1電荷蓄積時間T
a1を伸張したのち、ステップS202において距離測定をする。以下ステップS202、ステップS203、ステップS204を経てステップS202に戻るループ処理が、ステップS203で設定値判定回路744が否(No)と判断するまで、繰り返される。そして、設定値判定回路744が否(No)と判断すれば、ステップS205において、制御演算回路74の時間設定論理回路741が第1電荷蓄積時間T
a1を1サイクル以上前の、暗時相当の第1信号電荷Q1がしきい値を超えなかったときの値まで縮小し、処理が終了する。
【0086】
第2の実施形態に係る測距装置による推定距離Lは、以下の式(6)~(9)で表される:
Q2
real(b)= Q2-Q1
beta-ef. ……(6)
Q3
real(b)= Q3-Q1
beta-ef. ……(7)
Q1
beta-ef.=β×Q1 ……(8)
L=(cT
o/2)(Q3
real(b)/(Q2
real(b)+ Q3
real(b))) …(9)
ここで、βは、第1電荷蓄積時間T
a1の伸張割合である。第2の実施形態に係る測距装置においては、
図2に示した制御演算回路74の時間設定論理回路741を用いて第1電荷蓄積時間T
a1を伸張させることができるので、式(6)~(9)に示すように、第1電荷蓄積時間T
a1の伸張割合βによる環境光の時間線形補正を行えばよい。
【0087】
図16は、
図15のフローチャートに基づいたタイミング図である。i=0からi=4まで第1電荷蓄積時間T
a1を伸張し、i=4で暗時相当の第1信号電荷Q1がしきい値を超えた例である。
図16に示す例では、
図15に示すフローチャートのステップS205のときに、第1電荷蓄積時間T
a1をi=2のときの値に縮小している。i=2のときの値に縮小したのは、各種バラツキを考慮し、より安全な状況に向けてマージンを取っているためである。
【0088】
このシーケンスで重要なことは、距離情報シグナルとなる受信光が環境光補正に用いる第1電荷蓄積時間Ta1には受信されないこと、及び第1電荷蓄積時間Ta1が終了する時間が出来るだけ受信光入射開始時期に近いことである。こうすることにより、短距離側の測距できる最短距離は変化しないが、第2電荷蓄積時間Ta2及びTa3を十分使えるようになるため、測距範囲を拡大できる。
【0089】
-第2の実施形態の変形例-
第2の実施形態に係る測距装置においては、第1電荷蓄積時間Ta1を伸張させ、環境光の時間線形補正を行うため、環境光による第1電荷蓄積領域23a及び第1補助キャパシタC1のそれぞれの電荷蓄積量の和が、蓄積時間に比例して大きくなる。これにより、第1電荷蓄積領域23a及び第1補助キャパシタC1のそれぞれの電荷蓄積量の和で、画素が飽和する場合が多くなる。このことを改善するためには、第1電荷蓄積領域23a及び第1補助キャパシタC1のそれぞれの電荷蓄積量の和を、第2電荷蓄積領域23b及び第2補助キャパシタC2のそれぞれの電荷蓄積量の和、並びに第3電荷蓄積領域23c及び第3補助キャパシタC3のそれぞれの電荷蓄積量の和よりも大きくなるように設計すればよい。
【0090】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る測距装置の構成の一例は、第1及び第2の実施形態に係る測距装置と同様、
図1~4で示される。
図17は、第3の実施形態に係る測距装置における過渡応答の波形を模式的に示す図である。
図18は、第3の実施形態に係る測距装置の制御演算回路74の動作の概略示すフローチャートである。
図19は、
図18のフローチャートに基づいたタイミング図である。
図17に示す波形は、測距したい被写体が最短距離にある状態を示している。
図18のフローチャートは、
図15のフローチャートに第2電荷蓄積時間T
a2を伸張するフローが追加されている。追加した第2電荷蓄積時間T
a2を伸張するフローは、第1の実施形態に係る測距装置の第3電荷蓄積時間T
a3を伸張するフローと概ね同様である。即ち、第3の実施形態は第1の実施形態と第2の実施形態を組み合わせたものであり、遠景の線形性の改善と、測距範囲の拡大を同時に実現することができる。
【0091】
図18のフローチャートの実施時の測距値は、以下の式(10)~(14)による補正によって環境光の影響を排除できる。しかし、
図18のフローチャートの実施時は、環境光の影響を避ける方が簡便であり、精度を高めることができるので、暗時環境下で測定を行うことが望ましい。第3の実施形態に係る測距装置による推定距離Lは、以下の式(10)~(14)で表される:
Q2
real(c)= Q2-Q1
beta-ef. ……(10)
Q3
real(c)= Q3-Q1
gamma-ef. ……(11)
Q1
beta-ef.=β×Q1 ……(12)
Q1
gamma-ef.=γ×Q1 ……(13)
L=(cT
o/2)(Q3
real(c)/(Q2
real(c)+ Q3
real(c)))…(14)
ここで、βは第1電荷蓄積時間T
a1の伸張割合であり、γは第3電荷蓄積時間T
a3の伸張割合である。第3の実施形態に係る測距装置では、
図2に示した制御演算回路74の時間設定論理回路741を用いて第1電荷蓄積時間T
a1及び第3電荷蓄積時間T
a3を伸張させることができるので、式(10)~(14)に示すように、第1電荷蓄積時間T
a1の伸張割合β及び第3電荷蓄積時間T
a3の伸張割合γで環境光の時間線形補正を行えばよい。
【0092】
従来、各々の電荷蓄積時間はすべて同じ長さにしていた。それに対して第3の実施形態においては、各々の電荷蓄積時間をすべて互いに異なる値にしており、測距演算式の修正は、各々の電荷蓄積時間に対して線形補正するのみでよい。即ち、本発明のイメージセンサ画素の駆動においては、各々の電荷蓄積時間を必ずしもすべて同じにする必要はなく、状況に応じて、各々の電荷蓄積時間を最適となるよう変化させてもよい。
【0093】
-第3の実施形態の変形例-
第3の実施形態においては、第1電荷蓄積時間Ta1及び第3電荷蓄積時間Ta3を伸張させ、環境光の時間線形補正を行うため、環境光による第1電荷蓄積領域23a及び第1補助キャパシタC1のそれぞれの電荷蓄積量の和及び第3電荷蓄積領域23c及び第3補助キャパシタC3のそれぞれの電荷蓄積量の和が、蓄積時間に比例して大きくなる。これにより、第1電荷蓄積領域23a及び第1補助キャパシタC1のそれぞれの電荷蓄積量の和及び第3電荷蓄積領域23c及び第3補助キャパシタC3のそれぞれの電荷蓄積量の和で、画素が飽和する場合が多くなる。このことを改善するためには、第1電荷蓄積領域23a及び第1補助キャパシタC1のそれぞれの電荷蓄積量の和及び第3電荷蓄積領域23c及び第3補助キャパシタC3のそれぞれの電荷蓄積量の和を、第2電荷蓄積領域23b及び第2補助キャパシタC2のそれぞれの電荷蓄積量の和よりも大きくなるように設計すればよい。
【0094】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る測距装置の画素の主要部の断面図を
図21に示す。画素の主要部は、p型の半導体からなる機能基体層20、機能基体層20の上部の一部に設けられたn型の表面埋込領域22、及び表面埋込領域22の表面に接して設けられた、p
+型のピニング層29を含む光電変換領域(29,22)と、光電変換領域(29,22)上に設けられたゲート絶縁膜33を含む。そして、光電変換領域(29,22)の中央部を受光領域としている。光電変換領域(29,22)を囲むように光電変換領域(29,22)の中心位置に関して対称となる2つの位置のそれぞれに互いに離間して設けられた、機能基体層20よりも高不純物密度でn
+型の第1電荷蓄積領域23pが第1浮遊ドレイン領域FD1として、第2電荷蓄積領域23qが第2浮遊ドレイン領域FD2として配置されている。
【0095】
遮光膜41によって開口部以外を遮光された領域に2つの電荷振分ゲートである第1電荷振分ゲート54p(G1)、第2電荷振分ゲート54q(G2)がゲート絶縁膜33を有する絶縁ゲート型トランジスタ構造の機構を構成するように接続されている。それぞれの電荷振分ゲートを構成する絶縁ゲート型トランジスタのドレイン領域として第1電荷蓄積領域23p及び第2電荷蓄積領域23qが接続されている。第1電荷蓄積領域23p及び第2電荷蓄積領域23qのそれぞれには、図示していないが第1補助キャパシタC1及び第2補助キャパシタC2と、ソースフォロア増幅トランジスタSF1及びSF2とが表面配線等を介して接続されている。
【0096】
光電変換領域(29,22)の受光領域に収集された光電子は、第1電荷振分ゲート54p、第2電荷振分ゲート54qの内の一つのチャネル(電荷移動経路)を導通状態にすると、チャネル(電荷移動経路)を導通状態にした転送ゲート電極側に接続された浮遊ドレイン領域に移動する。
図21に示す撮像素子とほぼ同じ位置からパルス光を出射し、対象物92(
図1参照。)からの反射光を撮像素子で受光する。受信光は、対象物92と撮像素子との間の距離に応じて、投影光を出射した時間から遅延時間Tdだけ遅れて撮像素子に入射する。投影光の光投影時間T
oと、第1電荷振分ゲート54p及び第2電荷振分ゲート54qに印加する電圧パルスのオン/オフを同期させると、第1電荷振分ゲート54pに印加するパルスに合わせて第1電荷蓄積領域23pへ、第2電荷振分ゲート54qに印加するパルスに合わせて第2電荷蓄積領域23qへと、受信光の遅延時間Td、即ち測距装置と対象物92との間の距離に応じて、各々の転送ゲート電極に対応した蓄積電荷量に違いが生じ、対象物92までの距離を求めることができる。
【0097】
しかし、現実には、測距装置と対象物92との間の距離に応じて生じる受信光の遅延時間Td以外に、光電変換領域(29,22)の受光領域に入射した受信光に遅れが生じる。受信光の光子は、光電変換領域(29,22)内で、表面から指数関数的に吸収され、1対1で光電子を発生するため、比較的表面に近いところで発生する光電子が、光電変換領域(29,22)の受光領域、ゲートを経由して電荷蓄積領域に到達するまでの時間には時間差が生じる。即ち、光電変換された位置の拡がりによって、光電変換領域(29,22)に収集され、ゲートを経由して電荷蓄積領域に到達する時間にバラツキが生じるため、遅れが生じる。
【0098】
従来、電荷蓄積時間の長さは同じであった。第4の実施形態に係る測距装置では、遅れる光電子による距離精度の低下を考慮して、
図2に示した制御演算回路74の時間設定論理回路741を用いて電荷蓄積時間を異なる長さに設定する。具体的には、第1の実施形態における駆動パルスのように、時間設定論理回路741が第2電荷蓄積領域23qへ電荷が蓄積する第2電荷蓄積時間T
a2を第1電荷蓄積領域23pへ電荷が蓄積する第1電荷蓄積時間T
a1よりも長くする。
図20(b)は第4の実施形態に係る測距装置の駆動パルスを示すタイミング図であり、
図20(a)は参考技術に係る測距装置の駆動パルスを示すタイミング図である。
【0099】
第4の実施形態に係る測距装置において、光電変換領域(29,22)の受光領域に到達した電荷は第1電荷蓄積領域23p又は第2電荷蓄積領域23qのいずれかに転送され、蓄積している。
図20(a)に記載の、参考技術に係る測距装置の駆動パルスでは、遠くにある対象物92の場合、第2電荷蓄積領域23qに入るべき電子が次の周期の第1電荷蓄積領域23pに入るため、距離精度が低下する。
図20(a)に記載の、参考技術に係る測距装置の駆動パルスの場合、次の周期の第1電荷蓄積領域23pに入っていた、第2電荷蓄積領域23qに入るべき電子は、
図20(b)に記載の、第4の実施形態に係る測距装置の駆動パルスでは、次の周期の第1電荷蓄積領域23pに入ることなく第2電荷蓄積領域23qに入る。
【0100】
このように、参考技術に係る測距装置では、対象物が遠くにある場合、第2電荷蓄積領域23qに入るべき電子が次の周期の第1電荷蓄積領域23pに入るため、距離精度が低下するが、第4の実施形態に係る測距装置においては、
図2に示した制御演算回路74の時間設定論理回路741を用いて、第2電荷蓄積時間T
a2を長くしているので、対象物が遠くにある場合でも、距離精度が低下することはない。
【0101】
-第4の実施形態の変形例-
第4の実施形態の変形例に係る測距装置の画素の主要部の断面図を
図23に示す。
図23に示す画素主要部は、
図21に示す画素の主要部の光電変換領域(29,22)の受光領域に、第3電荷振分ゲート54s(G3)が接続された構造をなしている。第3電荷振分ゲート54sには第3電荷蓄積領域23sが接続され、図示していないが第3補助キャパシタC3と、ソースフォロア増幅トランジスタSF3とが表面配線等を介して接続されている。第1電荷蓄積領域23p、第2電荷蓄積領域23q及び第3電荷蓄積領域23sには、更に、第1リセットトランジスタR1、第2リセットトランジスタR2及び第3リセットトランジスタR3がそれぞれ接続されている。
【0102】
図22(b)は第4の実施形態の変形例に係る測距装置の駆動パルスを示すタイミング図であり、
図22(a)は第4の実施形態に係る測距装置の駆動パルスを示すタイミング図である。参考技術に係る測距装置では、対象物が遠くにある場合では、距離精度が低下する問題があった。このため、第4の実施形態の変形例において、第3電荷振分ゲート54sの直下のチャネル(電荷移動経路)を導通状態にする際に、第3リセットトランジスタR3のチャネル(電荷移動経路)を導通状態にすることで、電荷を第3電荷蓄積領域23sに貯めることなく、第3リセットトランジスタR3のリセットドレイン領域に接続された電源に電荷は排出される。従って、第2電荷蓄積領域23qに入るべき電子が次の周期の第1電荷蓄積領域23pに入ることがなくなり、距離精度を良好に確保することができる。
【0103】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る測距装置の画素の主要部の平面図を
図25に示す。透明電極をゲート電極としたMOS構造を用いた光電変換部を有するフォトゲート(PG)11を囲むようにフォトゲート11の中心位置に関して対称となる6つの位置のそれぞれに互いに離間して設けられた、第1電荷蓄積領域23pが第1浮遊ドレイン領域FD1として、第2電荷蓄積領域23qが第2浮遊ドレイン領域FD2として、第3電荷蓄積領域23rが第3浮遊ドレイン領域FD3として、第4電荷蓄積領域23sが浮遊ドレイン領域FD4として、第1電荷排出領域23uと第2電荷排出領域23vが電源VDDに接続されている。
【0104】
図示していない遮光膜によって開口部以外を遮光して領域を定義されたフォトゲート11の周りを囲むように、第1電荷振分ゲート33p(G1)、第2電荷振分ゲート33q(G2)、第3電荷振分ゲート33r(G3)、第4電荷振分ゲート33s(G4)、第1電荷排出ゲート33u(GD)及び第2電荷排出ゲート33v(GD)が、それぞれ絶縁ゲート型トランジスタ構造の機構を構成する6つの転送ゲート電極として接続されている。
【0105】
図示を省略しているが、第1電荷振分ゲート33p、第2電荷振分ゲート33q、第3電荷振分ゲート33r、第4電荷振分ゲート33s、第1電荷排出ゲート33u及び第2電荷排出ゲート33vの直下には、それぞれ絶縁ゲート型トランジスタを構成するゲート絶縁膜が配置されている。6つの電荷振分ゲートをそれぞれ構成する絶縁ゲート型トランジスタのドレイン領域として、第1電荷蓄積領域23p、第2電荷蓄積領域23q、第3電荷蓄積領域23r、第4電荷蓄積領域23s、第1電荷排出領域23u及び第2電荷排出領域23vが接続されている。
【0106】
第1電荷蓄積領域23p、第2電荷蓄積領域23q、第3電荷蓄積領域23r及び第4電荷蓄積領域23sのそれぞれには、図示していないが第1補助キャパシタC1、第2補助キャパシタC2、第3補助キャパシタC3及び第4補助キャパシタC4が表面配線等を介してそれぞれ接続されている。更に、第1電荷蓄積領域23p、第2電荷蓄積領域23q、第3電荷蓄積領域23r及び第4電荷蓄積領域23sのそれぞれには、第1ソースフォロア増幅トランジスタSF1、第2ソースフォロア増幅トランジスタSF2、第3ソースフォロア増幅トランジスタSF3及び第4ソースフォロア増幅トランジスタSF4が表面配線等を介して接続されている。第1電荷排出領域23u及び第2電荷排出領域23vは表面配線等を介して電源に接続されている。
【0107】
フォトゲート11に収集された信号電荷等は、第1電荷振分ゲート33p、第2電荷振分ゲート33q、第3電荷振分ゲート33r又は第4電荷振分ゲート33sの直下のいずれか一つのチャネル(電荷移動経路)を導通状態にすると、チャネル(電荷移動経路)が導通状態になった電荷振分ゲートに接続された浮遊ドレイン領域に移動する。一方、第1電荷排出ゲート33u又は第2電荷排出ゲート33vの直下のいずれか一つ又は両方のチャネル(電荷移動経路)を導通状態にすると、背景光(環境光)に起因した電荷等はドレインを介して電源に排出される。
【0108】
図25に示す撮像素子とほぼ同じ位置からパルス光を出射し、対象物92(
図1参照。)からの反射光を撮像素子で受光する。受信光は、対象物92と撮像素子との間の距離に応じて、投影光を出射した時間から遅延時間Tdだけ遅れて撮像素子に入射する。投影光の光投影時間T
oと、第1電荷振分ゲート33p、第2電荷振分ゲート33q、第3電荷振分ゲート33r又は第4電荷振分ゲート33sに印加する電圧パルスのオン/オフを同期させると、第1電荷振分ゲート33pに印加するパルスに合わせて第1電荷蓄積領域23pへ、第2電荷振分ゲート33qに印加するパルスに合わせて第2電荷蓄積領域23qへ、第3電荷振分ゲート33rに印加するパルスに合わせて第3電荷蓄積領域23rへ、第4電荷振分ゲート33sに印加するパルスに合わせて第4電荷蓄積領域23sへと、受信光の遅延時間Td、即ち測距装置と対象物92との間の距離に応じて、各々の電荷振分ゲートに対応した蓄積電荷量に違いが生じ、対象物92までの距離を求めることができる。
【0109】
しかし、現実には、測距装置と対象物92との間の距離に応じて生じる受信光の遅延時間Td以外に、シリコン内部でも受光領域に入射した受信光に遅れが生じる。即ち、光電変換された位置の拡がりによって、フォトゲート11に収集され、4つの電荷振分ゲートを経由して、対応するそれぞれの電荷蓄積領域に到達する時間にバラツキが生じるため、遅れが生じる。
【0110】
図24(b)は第5の実施形態に係る測距装置の駆動パルスを示すタイミング図であり、
図24(a)は参考技術に係る測距装置の駆動パルスを示すタイミング図である。従来、電荷蓄積時間の長さは同じであったが、遅れる信号電荷等による距離精度の低下を考慮して、電荷蓄積時間を異なる長さに設定すればよい。具体的には、
図2の制御演算回路74の時間設定論理回路741を用いて、
図24(b)のタイミング図に示すように、第4電荷蓄積領域23sへ電荷を蓄積する時間として割り当てられる第4電荷蓄積時間T
a4を、第1電荷蓄積領域23pへ電荷を蓄積する時間として割り当てられる第1電荷蓄積時間時間T
a1、第2電荷蓄積領域23qへ電荷を蓄積する時間として割り当てられる第2電荷蓄積時間時間T
a2、第3電荷蓄積領域23rへ電荷を蓄積する時間として割り当てられる第3電荷蓄積時間T
a3よりも長くすればよい。
【0111】
第1~第5の実施形態に係る測距装置において、背景光(環境光)成分を含む信号電荷の経路となる電荷振分ゲートの数が3つの場合及び4つの場合について述べた。しかし、背景光(環境光)成分を含む信号電荷の経路となる電荷振分ゲートの数が5つより大きい場合にも、同様の議論が成り立つ。一般にはNを3以上の正の整数としてN個の電荷振分ゲートであれば、例えばN番目の電荷振分ゲートに割り当てられる電荷蓄積時間を長くすれば、第1~第5の実施形態に係る測距装置において述べたのと同様の機能と効果が実現される。
【0112】
(第6の実施形態)
第6の実施形態に係る測距装置の画素の主要部の平面図を
図27に、参考技術に係る測距装置の画素の主要部の平面図を
図26に示す。pn接合を用いた光電変換部を有するフォトダイオード11の中心位置に関して対称となる4つの位置のそれぞれに、互いに離間して設けられた、n
+型の第1電荷蓄積領域23pが第1浮遊ドレイン領域FD1として、n
+型の第2電荷蓄積領域23qが第2浮遊ドレイン領域FD2として、n
+型の第3電荷蓄積領域23rが第3浮遊ドレイン領域FD3として、n
+型の電荷排出領域23sがドレインとして配置されている。
【0113】
図示していない遮光膜によって開口部以外を遮光して領域を定義されたフォトダイオード11の周りを囲むように、4つの電荷振分ゲートである第1電荷振分ゲート54p(G1)、第2電荷振分ゲート54q(G2)、第3電荷振分ゲート54r(G3)及び電荷排出ゲート54s(GD)が配置されている。第1電荷振分ゲート54p、第2電荷振分ゲート54q、第3電荷振分ゲート54r及び電荷排出ゲート54sは、それぞれ絶縁ゲート型トランジスタ構造の機構を構成するように多結晶シリコン等の導電体薄膜でゲート電極を構成している。
【0114】
それぞれの電荷振分ゲートを構成する絶縁ゲート型トランジスタのドレイン領域には、第1電荷蓄積領域23p、第2電荷蓄積領域23q、第3電荷蓄積領域23r及び電荷排出領域23sが接続されている。第1電荷蓄積領域23p、第2電荷蓄積領域23q及び第3電荷蓄積領域23rのそれぞれには、第1補助キャパシタC1、第2補助キャパシタC2及び第3補助キャパシタC3が表面配線等を介して接続されている。
図26及び
図27の右上に示した第1補助キャパシタC1はn
+型の拡散領域25pと、拡散領域25pの上に設けられたキャパシタ絶縁膜(図示省略)と、このキャパシタ絶縁膜の上に設けられた多結晶シリコン等の導電体薄膜からなる第1キャパシタ電極38pで平行平板型のコンデンサを構成できる。
【0115】
同様に、
図26及び
図27の右下に示した第2補助キャパシタC2はn
+型の拡散領域25qと、拡散領域25qの上に設けられたキャパシタ絶縁膜(図示省略)と、このキャパシタ絶縁膜の上に設けられた多結晶シリコン等の導電体薄膜からなる第2キャパシタ電極38qで平行平板型のコンデンサを構成できる。又、
図26の左上に示した第3補助キャパシタC3はn
+型の拡散領域25rと、拡散領域25rの上に設けられたキャパシタ絶縁膜(図示省略)と、このキャパシタ絶縁膜の上に設けられた多結晶シリコン等の導電体薄膜からなる第3キャパシタ電極38rで平行平板型のコンデンサを構成されている。
【0116】
一方、
図27の左上に示した第3補助キャパシタC3は、
図26の拡散領域25rより大きな面積のn
+型の拡散領域25Rと、拡散領域25Rの上に設けられたキャパシタ絶縁膜(図示省略)と、このキャパシタ絶縁膜の上に設けられた多結晶シリコン等の導電体薄膜からなる第3キャパシタ電極38rで平行平板型のコンデンサを構成している。このため、
図27に示した第3補助キャパシタC3は、
図26に示した第3補助キャパシタC3の容量よりも約1.4倍大きい。尚、
図26及び
図27において、第1補助キャパシタC1の容量と第2補助キャパシタC2の容量は等しい。
図26においては、第1補助キャパシタC1の容量=第2補助キャパシタC2の容量=第3補助キャパシタC3としているので、
図27においては、第3補助キャパシタC3の容量は、第1補助キャパシタC1の容量の約1.4倍の大きさになっている。
【0117】
拡散領域25p、拡散領域25q及び拡散領域25rの上に示した6個の白抜きの四角形は、それぞれコンタクトホールを模式的に示すものであり、コンタクトホールの上に延びる表面配線を介して、拡散領域25p、拡散領域25q及び拡散領域25rは接地電位(GND)に接続される。
【0118】
更に、第1電荷蓄積領域23p、第2電荷蓄積領域23q及び第3電荷蓄積領域23rをそれぞれのソース領域として、第1ゲート電極53pを有する第1リセットトランジスタRT、第2ゲート電極53qを有する第2リセットトランジスタRT及び第3ゲート電極53rを有する3リセットトランジスタRTが構成されている。第1ゲート電極53p、第2ゲート電極53q及び第3ゲート電極53rは、多結晶シリコン等の導電体薄膜で構成できる。第1リセットトランジスタRTは、第1ゲート電極53pを介して第1電荷蓄積領域23pに対向する第1リセットドレイン(RD)領域26pを有する。第2リセットトランジスタRTは、第2ゲート電極53qを介して第2電荷蓄積領域23qに対向する第2リセットドレイン(RD)領域26qを有する。第3リセットトランジスタRTは、第3ゲート電極53rを介して第3電荷蓄積領域23rに対向する第3リセットドレイン(RD)領域26rを有する。
【0119】
第1リセットドレイン領域26p、第2リセットドレイン領域26q及び第3リセットドレイン領域26rの上に示した1個の白抜きの四角形は、それぞれコンタクトホールを模式的に示すものであり、コンタクトホールの上に延びる表面配線を介して、第1リセットドレイン領域26p、第2リセットドレイン領域26q及び第3リセットドレイン領域26rは電源電位(VDD)に接続される。
【0120】
更に、第1電荷蓄積領域23p、第2電荷蓄積領域23q及び第3電荷蓄積領域23rの上に示した1個の白抜きの四角形も、それぞれコンタクトホールを模式的に示すものであり、コンタクトホールの上に延びる表面配線を介して、第1電荷蓄積領域23p、第2電荷蓄積領域23q及び第3電荷蓄積領域23rは、第1ソースフォロア増幅トランジスタSF1の第1増幅ゲート電極52p、第2ソースフォロア増幅トランジスタSF2の第2増幅ゲート電極52q及び第3ソースフォロア増幅トランジスタSF3の第3増幅ゲート電極52rに、表面配線等を介して接続されている。第4電荷蓄積領域23sは、1個の白抜きの四角形で模式的に示したコンタクトホールの上を走る表面配線等を介して電源電位(VDD)に接続されている。
【0121】
又、第1電荷蓄積領域23p、第2電荷蓄積領域23q及び第3電荷蓄積領域23rのそれぞれコンタクトホールの上に延びる他の表面配線を介して、第1電荷蓄積領域23p、第2電荷蓄積領域23q及び第3電荷蓄積領域23rは、第1補助キャパシタC1の第1キャパシタ電極38p、第2補助キャパシタC2の第2キャパシタ電極38q及び第3補助キャパシタC3の第3キャパシタ電極38rに接続されている。
【0122】
第1ソースフォロア増幅トランジスタSF1の第1増幅ドレイン領域18p、第2ソースフォロア増幅トランジスタSF2の第2増幅ドレイン領域18q及び第3ソースフォロア増幅トランジスタSF3の第3増幅ドレイン領域18rは、それぞれ図示を省略した電源VDDに接続される。第1ソースフォロア増幅トランジスタSF1の第1増幅ソース領域21pは、画素選択用の第1選択トランジスタSL1の第1ドレイン電極に共通領域として接続されている。同様に、第2ソースフォロア増幅トランジスタSF2の第2増幅ソース領域21qは画素選択用の第2選択トランジスタSL2の第2ドレイン電極に共通領域として接続され、第3ソースフォロア増幅トランジスタSF3の第3増幅ソース領域21rは、画素選択用の第3選択トランジスタSL3の第3ドレイン電極に共通領域として接続されている。
【0123】
図26及び
図27に示すように、第1選択トランジスタSL1の第1選択ソース領域19pは、1個の白抜きの四角形で模式的に示したコンタクトホールを介して、第1の垂直出力信号線Sig1に接続され、第1選択トランジスタSL1の第1選択ゲート電極51pには水平ラインの選択用制御信号Sが
図1に示した垂直シフトレジスタ及び垂直走査回路95から与えられる。同様に、第2選択トランジスタSL2の第2選択ソース領域19qは、1個の白抜きの四角形で模式的に示したコンタクトホールを介して、第2の垂直出力信号線Sig2に接続され、第2選択トランジスタSL2の第2選択ゲート電極51qには水平ラインの選択用制御信号Sが垂直シフトレジスタ及び垂直走査回路95から与えられる。更に、第3選択トランジスタSL3の第3選択ソース領域19rは、1個の白抜きの四角形で模式的に示したコンタクトホールを介して、第3の垂直出力信号線Sig3に接続され、第3選択トランジスタSL3の第3選択ゲート電極51rには水平ラインの選択用制御信号Sが垂直シフトレジスタ及び垂直走査回路95から与えられる。
【0124】
選択用制御信号Sをハイレベルにすることにより、選択トランジスタSL1,SL2,SL3が導通し、ソースフォロア増幅トランジスタSF1,SF2、SF3で増幅された第1電荷蓄積領域23p,第2電荷蓄積領域23q,第3電荷蓄積領域23rの電位に対応する電位に第1の垂直出力信号線Sig1、第2の垂直出力信号線Sig2及び第3の垂直出力信号線Sig3がそれぞれなる。
【0125】
既に述べたとおり、
図26及び
図27に示した平面レイアウトの違いは、
図26に示す参考技術においては、第1補助キャパシタC1の容量=第2補助キャパシタC2の容量=第3補助キャパシタC3の容量であるが、
図27に示す第6の実施形態に係る測距装置においては、第3補助キャパシタC3の容量>第1補助キャパシタC1の容量=第2補助キャパシタC2であることである。第1~第5の実施形態に係る測距装置において、複数の電荷振分ゲートに割り当てられる電荷蓄積時間の内、最後に割り当てられる電荷蓄積時間を長くする例を説明した。このとき、環境光により、電荷蓄積時間を長くした最後の電荷振分ゲートに接続される電荷蓄積領域と補助キャパシタに蓄積される電荷蓄積量の和が大きくなる。
【0126】
最後に割り当てられる電荷蓄積時間最後に割り当てられる電荷蓄積時間に対応する電荷振分ゲートに接続される電荷蓄積領域と補助キャパシタに蓄積される電荷蓄積量の和の増大によって測距装置の画素の飽和が決定する場合が多くなる。対策として、予め最後に割り当てられる電荷蓄積時間に対応する電荷振分ゲートに接続される電荷蓄積領域と補助キャパシタに蓄積される電荷の容量の和を他の電荷振分ゲートに接続される電荷蓄積領域と補助キャパシタに蓄積される電荷の容量の和より大きく設計すればよい。
【0127】
電荷蓄積領域の電荷の容量を変更するよりもキャパシタの容量を変更する方が容易であるので、補助キャパシタの容量を大きくすればよい。
図27の場合、第3補助キャパシタC3は、第1補助キャパシタC1及び第2補助キャパシタC2よりも1.4倍の大きい場合を例示したが、1.4倍に限定されるものではなく、環境光の強さ等を考慮して適宜、所望の容量値に設計すればよい。
【0128】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1~第6の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、既に述べた第1~第6の実施形態の説明では、第1導電型をp型、第2導電型をn型として説明したが、第1導電型をn型、第2導電型をp型としても、電気的な極性を反対にすれば同様な効果が得られることは容易に理解できるであろう。
【0129】
本発明の第1の実施形態に係る測距装置の説明では、
図3を用いて本発明の「電荷振分ゲート」が一対の横方向電界制御ゲート(LEFM)のセットで構成される例を示した。そして、又、本発明の第4~第6の実施形態に係る測距装置では、電荷振分ゲートの構造がMOS型若しくはMIS型のゲート電極構造の場合を例示した。しかし、電荷振分ゲートの構造や電荷排出電極は、第1~第6の実施形態で例示したLEFMや絶縁ゲートトランジスタの電極構造等に限定されるものではない。同様な信号電荷を輸送や転送ができる機能を備える構成であればよい。第1~第4及び第6の実施形態の記載では、光電変換部は、pn接合型のフォトダイオードを構成する受光領域を用いて説明してきた。第5の実施形態の記載では、光電変換部は、透明電極をゲート電極としたMOS構造を用いたフォトゲート構造にて説明してきた。しかし、光電変換部も、フォトダイオードや、フォトゲートの構造に限定されるものではなく、その他、同様な光電変換機能を備える構成であれば、構わない。
【0130】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の第1~第6の実施形態に係る測距装置は、例えば
図28に例示的に示すカメラ等の技術分野における3D撮像装置として利用可能である。
図28に例示的に示すように、技術分野として利用可能性のあるビデオカメラ等のカメラは、単一の撮像光学系(43,44)と、撮像光学系(43,44)の光軸に沿って入射する対象物92(
図1参照。)の像を撮像する第1~第6の実施形態に係る測距装置の主要部を構成する3D撮像装置45aと、オートフォーカス(AF)に用いる第1~第6の実施形態に係る測距装置を用いた距離センサ(測距素子)15を備える。
【0132】
本発明を利用する可能性のあるカメラは、第1~第6の実施形態に係る測距装置の主要部を構成する3D撮像装置45aから出力された画像データをデジタルデータに変換するA/D変換回路47と、A/D変換回路47がデジタルデータに変換した画像データを格納するメモリ(半導体記憶装置)48と、メモリ48から画像データを受信する中央処理制御部(CPU)13と、中央処理制御部13を介して画像データを受信して画像データを処理する画像処理部14とを備える。そして、画像処理部14には、3D撮像装置45a及び距離センサ(測距素子)15の調整データを保存する調整データ記憶装置99
extが接続され、
図5,
図8,
図15及び
図18に例示したようなフローチャートに従った調整を可能にしている。
【0133】
尚、
図28は例示に過ぎず、3D撮像装置45a又は距離センサ(測距素子)15が搭載される半導体チップ上に中央処理制御部13から送信された調整データを保存する調整データ記憶装置が接続され、半導体チップ上の駆動回路に調整データを供給するような構造でもよい。本発明を利用する可能性のあるカメラとしては、更に、中央処理制御部13に接続された駆動部12、メディアコントローラ等のメモリカード・インターフェイス19、操作部18、LCD駆動回路16、モータドライバ13b,13c,13d、ストロボ制御回路61を備えることができる。LCD駆動回路16にはLCDからなる表示部57が接続され、ストロボ制御回路61にはストロボ装置62が接続されている。ストロボ装置62は
図1に示した発光部91を構成することが可能である。
【0134】
図28に例示したカメラの中央処理制御部13は、中央処理制御部13に接続された画像処理部14、駆動部12、メモリ48,メモリカード・インターフェイス19、操作部18、LCD駆動回路16、距離センサ(測距素子)15、モータドライバ13b,13c,13d、ストロボ制御装置のそれぞれの動作や処理を制御する命令や電気信号を出力する。図示を省略しているが、中央処理制御部13には、画像処理部14、駆動部12、メモリ48,メモリカード・インターフェイス19、操作部18、LCD駆動回路16、距離センサ(測距素子)15、モータドライバ13b,13c,13d、ストロボ制御装置のそれぞれの動作をそれぞれ実行させる命令出力回路の他、オートホワイトバランス(AWB)調整を施すWB調整命令出力回路等の種々の論理回路等が論理的なハードウェア資源として組込まれている。
【0135】
撮像光学系(43,44)を構成する撮影レンズ43は、
図28に示すように、例えば主レンズ43aと、主レンズ43aに隣接したズームレンズ43bと、ズームレンズ43bに隣接したフォーカスレンズ43c等を備えることができる。
図28に例示した構造では、ズームレンズ43bにはズームモータ49bが、フォーカスレンズ43cにはフォーカスモータ49cが接続されている。フォーカスレンズ43cと3D撮像装置45aの間には撮像光学系(43,44)を構成する絞り44が配置されている。例えば、5枚の絞り羽根からなる絞り44には、絞り羽根を駆動するアイリスモータ50が接続されている。ズームモータ49b、フォーカスモータ49c及びアイリスモータ50はステッピングモータからなり、中央処理制御部13に接続されたモータドライバ13b,13c,13dから送信される駆動パルスにより動作制御され、レリーズボタン等の操作部18からの信号により撮像準備処理を行う。
【0136】
ズームモータ49bは、ズームレンズ43bを例えば20~50段階等でワイド側又はテレ側に移動させ、撮影レンズ43のズーミングを行う。フォーカスモータ49cは、対象物92からの距離やズームレンズ43bの変倍に応じてフォーカスレンズ43cを移動させ、カメラの撮像条件が最適となるように撮影レンズ43の焦点調整を行う。アイリスモータ50は、絞り44の絞り羽根を動作させて絞り44の開口面積を変化し、所望の絞り値まで適宜撮影レンズ43の露光調整を行う。
【0137】
撮影レンズ43は
図28に例示する構成に限定されるものではなく、例えば、カメラに対して着脱できる交換式レンズであっても構わない。撮影レンズ43は、主レンズ43a、ズームレンズ43b及びフォーカスレンズ43c等の複数の光学レンズ群から構成されることにより、対象物92からの光束をその焦点面近傍に配置された3D撮像装置45aの表面に結像させる。
【0138】
第1~第6の実施形態に係る測距装置の主要部を構成する3D撮像装置45aは、ガラスやセラミックからなるチップ搭載基板(パッケージ基板)46に搭載されている。3D撮像装置45aには、タイミングジェネレータ(TG)63が接続され、タイミングジェネレータ63は駆動部12を介して中央処理制御部13に接続されている。中央処理制御部13から駆動部12を介して送られる信号により、タイミングジェネレータ63がタイミング信号(クロックパルス)を発生し、タイミング信号はチップ搭載基板46を介して3D撮像装置45aを構成する半導体チップ上に周辺回路として設けられた駆動回路からの電子シャッタ用信号として各行のピクセルに送られる。
【0139】
即ち中央処理制御部13は駆動部12を介してタイミングジェネレータ63を制御し、3D撮像装置45aの電子シャッタのシャッタ速度を制御する。尚、タイミングジェネレータ63は、3D撮像装置45aを構成する半導体チップ上の周辺回路として、モノリシックに集積化しても構わない。
【0140】
3D撮像装置45aを構成する半導体チップの中央の画素アレイ部から出力された撮像信号は、半導体チップの周辺部に周辺回路として設けられた相関二重サンプリング回路(CDS)に入力され、3D撮像装置45aの各ピクセルの蓄積電荷量に正確に対応したR、G、Bの画像データとして3D撮像装置45aから出力される。3D撮像装置45aから出力された画像データは、図示を省略した増幅器で増幅され、A/D変換回路47でデジタルデータに変換される。3D撮像装置45aは、駆動部12によりタイミング制御されて、3D撮像装置45aの受光面上に結像された対象物92像を画像信号に変換してA/D変換回路47へ出力する。
【0141】
図示を省略しているが、
図28に例示したカメラの画像処理部14は、ホワイトバランス調整に用いるWB制御量を算出するWB制御量演算回路、画面全体のG信号を積算し、又は画面中央部と周辺部とで異なる重みづけをしたG信号を積算し、その積算値を出力する自動露出(AE)検出用論理演算回路、AE検出用論理演算回路が出力した積算値からAEに必要な対象物92の明るさ(撮影Ev値)を算出する撮影Ev値算出回路、更に、階調変換処理回路、ホワイトバランス補正処理回路、γ補正処理回路等の、各種画像処理や画像処理に伴う演算を画像データに対し施す種々の論理回路(ハードウェア・モジュール)を、論理構成上のハードウェア資源として備えることも可能である。
【0142】
第1の実施の形態に係る画像処理部14は、画像処理エンジン等があれば実現可能である。又、特徴量生成や識別処理に演算負荷が高い場合、ハードウェアに実装してもよい。例えば、マイクロチップとして実装されたMPU等を使用してコンピュータシステムで画像処理部14を構成することも可能である。又、コンピュータシステムを構成する画像処理部14として、算術演算機能を強化し信号処理に特化したDSPや、メモリや周辺回路を搭載し組込み機器制御を目的としたマイコン等を用いてもよい。或いは、現在の汎用コンピュータのメインCPUを画像処理部14に用いてもよい。更に、画像処理部14の一部の構成又はすべての構成をFPGAのようなPLDで構成してもよい。
【符号の説明】
【0143】
11…フォトダイオード又はフォトゲート、12…駆動部、13…中央処理制御部、13b,13c,13d…モータドライバ、14…画像処理部、16…LCD駆動回路、18…操作部、18p…第1増幅ドレイン領域、18q…第2増幅ドレイン領域、18r…第3増幅ドレイン領域、19…インターフェイス、19p…第1選択ソース領域、19q…第2選択ソース領域、19r…第3選択ソース領域、20…機能基体層、21p…第1増幅ソース領域、21q…第2増幅ソース領域、21r…第3増幅ソース領域、22…表面埋込領域、23a…第1電荷蓄積領域、23b…第2電荷蓄積領域、23c…第3電荷蓄積領域、23d…電荷排出領域、23p…第1電荷蓄積領域、23q…第2電荷蓄積領域、23r…第3電荷蓄積領域、23s…第3電荷蓄積領域、23s…第4電荷蓄積領域、23u…第5電荷蓄積領域、23v…第6電荷蓄積領域、25R,25p,25q,25r…拡散領域、26p…第1リセットドレイン領域、26q…第2リセットドレイン領域、26r…第3リセットドレイン領域、27a…第1の電荷排出補助領域、27b…第2の電荷排出補助領域、27c…第3の電荷排出補助領域、27d…第4の電荷排出補助領域、29…ピニング層、31a…第1静電誘導電極、31b…第2静電誘導電極、32a…第3静電誘導電極、32b…第4静電誘導電極、33…ゲート絶縁膜、33a…第5静電誘導電極、33b…第6静電誘導電極、33p…第1電荷振分ゲート、33q…第2電荷振分ゲート、33r…第3電荷振分ゲート、33s…第4電荷振分ゲート、33u…第1電荷排出ゲート、33v…第2電荷排出ゲート、34a…第7静電誘導電極、34b…第8静電誘導電極、38p…第1キャパシタ電極、38q…第2キャパシタ電極、38r…第3キャパシタ電極、41…遮光膜、42…開口部、43…撮影レンズ、43a…主レンズ、43b…ズームレンズ、43c…フォーカスレンズ、45a…3D撮像装置、46…チップ搭載基板、47…A/D変換回路、48…メモリ、49b…ズームモータ、49c…フォーカスモータ、50…アイリスモータ、51p…第1選択ゲート電極、51q…第2選択ゲート電極、51r…第3選択ゲート電極、52p…第1増幅ゲート電極、52q…第2増幅ゲート電極、52r…第3増幅ゲート電極、53p…第1ゲート電極、53q…第2ゲート電極、53r…第3ゲート電極、54p…第1転送ゲート電極、54p…第1電荷振分ゲート、54q…第2電荷振分ゲート、54r…第3電荷振分ゲート、54s…電荷排出ゲート、57…表示部、61…ストロボ制御回路、62…ストロボ装置、63…タイミングジェネレータ、71…論理演算回路、72…データ記憶装置、736…バス、74…制御演算回路、741…時間設定論理回路、742…時間設定値出力制御回路、743…距離画像出力制御回路、744…設定値判定回路、745…シーケンス制御回路、75…出力部、76…インターフェイス、77…プログラム記憶装置、81…信号生成部、82…読出増幅回路、91…発光部、92…対象物、93…レンズ、94…駆動回路、95…垂直走査回路、96…水平シフトレジスタ、97,98…出力バッファ、99ext…調整データ記憶装置