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特許7428135蓄電素子の管理装置、蓄電装置、車両、及び、蓄電素子の管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】蓄電素子の管理装置、蓄電装置、車両、及び、蓄電素子の管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/00 20060101AFI20240130BHJP
   G01R 31/374 20190101ALI20240130BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20240130BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240130BHJP
   B60L 58/12 20190101ALI20240130BHJP
【FI】
G01R15/00 500
G01R31/374
G01R31/3828
H01M10/48 P
H01M10/48 301
B60L58/12
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020556168
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(86)【国際出願番号】 JP2019044703
(87)【国際公開番号】W WO2020100982
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-09-01
(31)【優先権主張番号】P 2018215399
(32)【優先日】2018-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成本 悟
(72)【発明者】
【氏名】白石 剛之
【審査官】青木 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-514115(JP,A)
【文献】国際公開第2018/199222(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/181489(WO,A1)
【文献】特開2017-090124(JP,A)
【文献】国際公開第2006/022073(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107861069(CN,A)
【文献】特開2015-224975(JP,A)
【文献】特表2010-541520(JP,A)
【文献】特表2013-511703(JP,A)
【文献】国際公開第2012/098770(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/104752(WO,A1)
【文献】特開2011-164008(JP,A)
【文献】特開2006-149070(JP,A)
【文献】特開2017-156187(JP,A)
【文献】特開2006-060946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/00
G01R 31/36-31/396
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される蓄電素子の管理装置であって、
前記蓄電素子と直列に接続されている抵抗体を有し、前記抵抗体において電流の流れ方向に離間した二つの位置の電位差を検出して電流値を計測する電流センサと、
管理部と、
を備え、
前記管理部は、前記電流値に基づいて推定された前記蓄電素子の充電状態を、前記二つの位置の間の温度勾配に起因して生じた前記電流センサの計測誤差に基づいて補正する補正処理を実行し、
前記補正処理において、前記車両が駐車されてから生じた前記計測誤差に基づいて補正する、管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記蓄電素子は前記車両のエンジンを始動させるスタータに電力を供給する始動用の蓄電素子であ、管理装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記管理部は、前記補正処理において、前記電流センサによって計測された電流値が第1の閾値以下である期間に生じた前記計測誤差に基づいて前記充電状態を補正する、管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記管理部は、前記電流センサによって計測された電流値の単位時間当たりの変化量が第2の閾値より大きい場合に前記充電状態を補正する、管理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記管理部は、前記補正処理において、前記電流センサによって計測された電流値が前記第1の閾値以下まで低下したときから、その後に電流値の単位時間当たりの変化量が前記第2の閾値以下になったときまでの時間と、その間の電流値の変化量とに基づいて前記充電状態の補正値を決定する、管理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記管理部は、前記電流センサによって計測された電流値の単位時間当たりの変化量が前記第2の閾値以下になる前に前記電流センサによって前記第1の閾値より大きい電流値が計測された場合は前記補正処理を中止する、管理装置。
【請求項7】
請求項3に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記管理部は、前記補正処理において、前記計測誤差と前記二つの位置の温度差とに基づいて前記充電状態を補正する、管理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記二つの位置の温度を計測する温度センサを備え、
前記管理部は、前記補正処理において、前記二つの位置の温度差が第3の閾値より大きい場合に前記充電状態を補正する、管理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記管理部は、前記補正処理において、前記電流センサによって計測された電流値が前記第1の閾値以下まで低下したときから、その後に前記二つの位置の温度差が前記第3の閾値以下になったときまでの時間と、その間の電流値の変化量とに基づいて前記充電状態の補正値を決定する、管理装置。
【請求項10】
請求項9に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記管理部は、前記温度センサによって計測された前記二つの位置の温度差が前記第3の閾値以下になる前に前記電流センサによって前記第1の閾値より大きい電流値が計測された場合は前記補正処理を中止する、管理装置。
【請求項11】
請求項3に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記充電状態の補正に用いる補正値を記憶する記憶部を備え、
前記管理部は、前記補正処理において、前記記憶部に記憶されている前記補正値を用いて前記充電状態を補正する、管理装置。
【請求項12】
請求項11に記載の蓄電素子の管理装置であって、
前記管理部は、前記電流センサによって計測された電流値が前記第1の閾値以下まで低下した後、所定時間が経過する前に前記電流センサによって前記第1の閾値より大きい電流値が計測された場合は前記補正処理を中止する、管理装置。
【請求項13】
蓄電素子と、
請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の管理装置と、
を備える蓄電装置。
【請求項14】
請求項13に記載の蓄電装置であって、
前記蓄電素子は、充電状態の変化に対して開放電圧の変化が小さいプラトー領域を有する、蓄電装置。
【請求項15】
請求項13又は請求項14に記載の蓄電装置を備える車両であって、
前記蓄電装置は当該車両のエンジンが収容されている収容室内に収容されている、車両。
【請求項16】
車両に搭載される蓄電素子の管理方法であって、
前記蓄電素子と直列に接続されている抵抗体を有し、前記抵抗体において電流の流れ方向に離間した二つの位置の電位差を検出して電流値を計測する電流センサによって計測された電流値に基づいて前記蓄電素子の充電状態を推定する推定ステップと、
前記二つの位置の間の温度勾配に起因して生じた前記電流センサの計測誤差に基づいて前記充電状態を補正する補正ステップと、
を含み、
前記補正ステップにおいて、前記車両が駐車されてから生じた前記計測誤差に基づいて補正する、管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
蓄電素子の管理装置、蓄電装置、車両、及び、蓄電素子の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、蓄電素子の充電状態(SOC:State Of Charge)を推定する方法として電流積算法が知られている。電流積算法は電流センサによって蓄電素子の充放電電流を常時計測することで蓄電素子に出入りする電力量を計測し、これを初期容量から加減することでSOCを推定する方法である。
【0003】
上述した電流センサとしては、蓄電素子と直列に接続されている抵抗体(シャント抵抗)を有し、抵抗体において電流の流れ方向に離間した二つの位置の電位差を検出して電流値を計測するものが知られている。このような電流センサでは二つの位置の間に温度勾配が生じ、ゼーベック効果による起電力によって電流値の計測誤差が生じる場合がある。電流値の計測誤差が生じるとSOCの推定精度が低下する。
【0004】
このため、従来、ゼーベック効果の影響を抑制する試みが行われている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、特許文献1に記載の技術では、一対の電流端子と、当該一対の電流端子間に通電される電流によって発生する電圧降下を検出するための一対の電圧端子とを有するシャント抵抗において、各電流端子と電圧端子との間に熱的影響を阻害するための伝熱阻害手段が設けられている。特許文献1に記載の技術は、伝熱阻害手段によって温度差の発生を抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-047721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の技術では電流端子と電圧端子との間に伝熱阻害手段を備える必要があり、シャント抵抗の構成が複雑になる。
本明細書では、電流値に基づいて蓄電素子の充電状態を推定する場合のゼーベック効果の影響を簡素な構成で抑制する技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
蓄電素子の管理装置であって、前記蓄電素子と直列に接続されている抵抗体を有し、前記抵抗体において電流の流れ方向に離間した二つの位置の電位差を検出して電流値を計測する電流センサと、管理部と、を備え、前記管理部は、前記電流値に基づいて推定された前記蓄電素子の充電状態を、前記二つの位置の間の温度勾配に起因して生じた前記電流センサの計測誤差に基づいて補正する補正処理を実行する。
【発明の効果】
【0008】
電流値に基づいて蓄電素子の充電状態を推定する場合のゼーベック効果の影響を簡素な構成で抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1に係る蓄電装置、及び、その蓄電装置が搭載されている自動車の模式図
図2】蓄電装置の分解斜視図
図3A図2に示す蓄電素子の平面図
図3B図3Aに示すA-A線の断面図
図4図1の本体内に蓄電素子を収容した状態を示す斜視図
図5図4の蓄電素子にバスバーを装着した状態を示す斜視図
図6】蓄電装置の電気的構成を示す模式図
図7】電流センサの模式図
図8】車両の駐車後の電流値の変化を示すグラフ(電流値が大きく計測される計測誤差が生じる場合)
図9】車両の駐車後の電流値の変化を示すグラフ(電流値が小さく計測される計測誤差が生じる場合)
図10】補正処理のフローチャート
図11】実施形態2に係る電流センサの模式図
図12】鉄系の蓄電素子のOCV-SOCカーブ
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本実施形態の概要)
(1)蓄電素子の管理装置であって、前記蓄電素子と直列に接続されている抵抗体を有し、前記抵抗体において電流の流れ方向に離間した二つの位置の電位差を検出して電流値を計測する電流センサと、管理部と、を備え、前記管理部は、前記電流値に基づいて推定された前記蓄電素子の充電状態を、前記二つの位置の間の温度勾配に起因して生じた前記電流センサの計測誤差に基づいて補正する補正処理を実行する。
【0011】
上記の管理装置によると、電流センサによって計測される電流値は抵抗体の二つの位置の間の温度勾配に起因する計測誤差(ゼーベック効果に起因する計測誤差)を含んだものとなるため、充電状態の推定精度が低下する。しかしながら、上記の管理装置によると、ゼーベック効果に起因する電流センサの計測誤差に基づいて充電状態を補正するので、結果として充電状態を精度よく推定できる。
すなわち、上記の管理装置によると、従来のように抵抗体に伝熱阻害手段を設けて電流値の計測誤差を低減しなくてもゼーベック効果の影響を抑制できるので、電流値に基づいて蓄電素子の充電状態を推定する場合のゼーベック効果の影響を簡素な構成で抑制できる。
【0012】
(2)前記蓄電素子は車両のエンジンを始動させるスタータに電力を供給する始動用の蓄電素子であり、前記管理部は、前記補正処理において、前記車両が駐車されてから生じた前記計測誤差に基づいて補正してもよい。
【0013】
車両が走行中のときはエンジンの熱や蓄電素子自体の発熱などによって蓄電素子が全体に暖まっているため、抵抗体の二つの位置の温度はほぼ同じ場合がある。しかしながら、車両が駐車されると蓄電素子の構成や使用環境などによっては二つの位置の間に温度勾配が生じる。このため、車両が駐車されると電流値の計測誤差が生じ易い。
一般にゼーベック効果による電流値の計測誤差は微小であるが、充電状態の推定に高い精度が求められる場合は、車両が駐車されてから生じた計測誤差は以下の理由から充電状態の推定誤差要因として無視できない。
理由1:駐車された後に蓄電素子から車両に流れる暗電流の電流値は数十mAと微小であるため、ゼーベック効果の影響が相対的に大きくなる。本願発明者らが実験したところでは、1℃の温度勾配によって10mA程度の計測誤差が生じた。通常、車両が駐車されると2℃~3℃の温度勾配が生じる。暗電流が20mAであるとすると、計測される電流値は本来計測されるべき電流値(20mA)の2倍以上になる可能性がある。
理由2:一般に車両は走行している時間よりも駐車されている時間の方が長いため、車両が駐車されてから生じた計測誤差は充電状態の推定誤差に大きく影響する。
上記の管理装置によると、車両が駐車されてから生じた充電状態の推定誤差を補正するので、ゼーベック効果の影響を抑制する効果が顕著となる。
【0014】
(3)前記管理部は、前記補正処理において、前記電流センサによって計測された電流値が第1の閾値以下である期間に生じた前記計測誤差に基づいて前記充電状態を補正してもよい。
【0015】
一般にゼーベック効果による電流値の計測誤差は微小であるが、電流値が第1の閾値以下のときはゼーベック効果の影響が相対的に大きくなるので、充電状態の推定誤差要因として無視できない。
上記の管理装置によると、電流値が第1の閾値以下である期間に生じた計測誤差に基づいて充電状態を補正するので、ゼーベック効果の影響を抑制する効果が顕著となる。
【0016】
(4)前記管理部は、前記電流センサによって計測された電流値の単位時間当たりの変化量が第2の閾値より大きい場合に前記充電状態を補正してもよい。
【0017】
電流値が第1の閾値以下になっても必ずしも抵抗体の二つの位置の間に温度勾配が生じるとは限らない(ゼーベック効果が生じるとは限らない)。
ゼーベック効果が生じているか否かは、電流センサによって計測された電流値の単位時間当たりの変化量(横軸を時間、縦軸を電流値としたグラフの傾き)から判断できる。具体的には、抵抗体の二つの位置の間に温度勾配が生じている場合(ゼーベック効果が生じている場合)は時間の経過に伴ってそれら二つの位置の温度が徐々に均一になるため、ゼーベック効果が徐々に収束する。このため、ゼーベック効果が生じている場合は時間の経過に伴って電流値が変化する。このため、計測される電流値の単位時間当たりの変化量がある程度大きくなる。このため、電流値の単位時間当たりの変化量が第2の閾値より大きいか否かにより、ゼーベック効果が生じているか否かを判断できる。
上記の管理装置によると、電流値の単位時間当たりの変化量が第2の閾値より大きい場合(ゼーベック効果が生じている場合)に充電状態を補正するので、ゼーベック効果が生じていないにもかかわらず補正が行われることを抑制できる。
【0018】
(5)前記管理部は、前記補正処理において、前記電流センサによって計測された電流値が前記第1の閾値以下まで低下したときから、その後に電流値の単位時間当たりの変化量が前記第2の閾値以下になったときまでの時間と、その間の電流値の変化量とに基づいて前記充電状態の補正値を決定してもよい。
【0019】
ゼーベック効果に起因する充電状態の推定誤差は、電流値が第1の閾値以下まで低下したときから、その後に電流値の単位時間当たりの変化量が第2の閾値以下になったとき(言い換えるとゼーベック効果が収束したとき)までの時間を底辺、その間の電流値の変化量を高さとする三角形の面積によって表すことができる。
上記の管理装置によると、上述した三角形の面積を補正値とするので、電流センサの計測誤差に基づいて充電状態を補正できる。
【0020】
(6)前記管理部は、前記電流センサによって計測された電流値の単位時間当たりの変化量が前記第2の閾値以下になる前に前記電流センサによって前記第1の閾値より大きい電流値が計測された場合は前記補正処理を中止してもよい。
【0021】
電流値が第1の閾値以下まで低下しても、その後にゼーベック効果が収束する前に蓄電素子が使用される場合がある。通常、蓄電素子が使用される場合は第1の閾値より大きい電流が流れる。電流値が第1の閾値より大きい場合はゼーベック効果による電流値の計測誤差は無視できる程度である。
上記の管理装置によると、電流値が第1の閾値以下まで低下した後、電流センサによって計測された電流値の単位時間当たりの変化量が第2の閾値以下になる前(ゼーベック効果が収束する前)に第1の閾値より大きい電流値が計測された場合は補正処理を中止するので、無用な補正を抑制できる。
【0022】
(7)前記管理部は、前記補正処理において、前記計測誤差と前記二つの位置の温度差とに基づいて前記充電状態を補正してもよい。
【0023】
電流値が第1の閾値以下になっても必ずしも抵抗体の二つの位置の間に温度勾配が生じるとは限らない(ゼーベック効果が生じるとは限らない)。ゼーベック効果が生じているか否かは、抵抗体の二つの位置の温度差から判断できる。具体的には、ゼーベック効果が生じている場合は抵抗体の二つの位置の温度差がある程度大きくなるので、二つの位置の温度差に基づくことにより、ゼーベック効果が生じているか否かを判断できる。
上記の管理装置によると、二つの位置の温度差に基づいて充電状態を補正するので、ゼーベック効果が生じていないにもかかわらず補正が行われることを抑制できる。
【0024】
(8)前記二つの位置の温度を計測する温度センサを備え、前記管理部は、前記補正処理において、前記二つの位置の温度差が第3の閾値より大きい場合に前記充電状態を補正してもよい。
【0025】
上記の管理装置によると、二つの位置の温度差が第3の閾値より大きい場合(ゼーベック効果が生じている場合)に推定誤差を補正するので、ゼーベック効果が生じていないにもかかわらず補正が行われることを抑制できる。
【0026】
(9)前記管理部は、前記補正処理において、前記電流センサによって計測された電流値が前記第1の閾値以下まで低下したときから、その後に前記二つの位置の温度差が前記第3の閾値以下になったときまでの時間と、その間の電流値の変化量とに基づいて前記充電状態の補正値を決定してもよい。
【0027】
ゼーベック効果に起因する充電状態の推定誤差は、電流値が第1の閾値以下まで低下したときから、その後に抵抗体の二つの位置の間の温度差が第3の閾値以下になったとき(言い換えるとゼーベック効果が収束したとき)までの時間を底辺、その間の電流値の変化量を高さとする三角形の面積によって表すことができる。
上記の管理装置によると、上述した三角形の面積を補正値とするので、電流センサの計測誤差に基づいて充電状態を補正できる。
【0028】
(10)前記管理部は、前記温度センサによって計測された前記二つの位置の温度差が前記第3の閾値以下になる前に前記電流センサによって前記第1の閾値より大きい電流値が計測された場合は前記補正処理を中止してもよい。
【0029】
電流値が第1の閾値以下まで低下しても、その後にゼーベック効果が収束する前に蓄電素子が使用される場合がある。通常、蓄電素子が使用される場合は第1の閾値より大きい電流が流れる。電流値が第1の閾値より大きい場合はゼーベック効果による電流値の計測誤差は無視できる程度である。
上記の管理装置によると、電流値が第1の閾値以下まで低下した後、温度センサによって計測された二つの位置の温度差が第3の閾値以下になる前(ゼーベック効果が収束する前)に第1の閾値より大きい電流値が計測された場合は補正処理を中止するので、無用な補正を抑制できる。
【0030】
(11)前記充電状態の補正に用いる補正値を記憶する記憶部を備え、前記管理部は、前記補正処理において、前記記憶部に記憶されている前記補正値を用いて前記充電状態を補正してもよい。
【0031】
多くの場合、補正値は概ね一定の値になる。このため、実験などによって予め補正値を決定して記憶部に記憶させておけば、補正の度に補正値を求めなくてよい。このため補正処理が簡素になる。
【0032】
(12)前記管理部は、前記電流センサによって計測された電流値が前記第1の閾値以下まで低下した後、所定時間が経過する前に前記電流センサによって前記第1の閾値より大きい電流値が計測された場合は前記補正処理を中止してもよい。
【0033】
電流値が第1の閾値以下まで低下しても、その後にゼーベック効果が収束する前に蓄電素子が使用される場合もある。通常、蓄電素子が使用される場合は第1の閾値より大きい電流が流れる。記憶部に記憶される補正値はゼーベック効果が収束するまで蓄電素子が使用されないことを前提に決定されるので、ゼーベック効果が収束する前に蓄電素子が使用された場合(電流センサによって第1の閾値より大きい電流値が計測された場合)にもその補正値を用いて推定誤差を補正すると不適切に補正される可能性がある。
上記の管理装置によると、電流値が第1の閾値以下まで低下した後、所定時間(ゼーベック効果の収束に要する時間として予め実験などによって決定された時間)が経過する前に蓄電素子が使用された場合は補正処理を中止するので、充電状態が不適切に補正される可能性を低減できる。
【0034】
(13)蓄電装置であって、蓄電素子と、請求項1乃至請求項12のいずれか一項に記載の管理装置と、を備える。
【0035】
上記の蓄電装置によると、電流値に基づいて蓄電素子の充電状態を推定する場合のゼーベック効果の影響を簡素な構成で抑制できる。
【0036】
(14)前記蓄電素子は、充電状態の変化に対して開放電圧の変化が小さいプラトー領域を有してもよい。
【0037】
電流積算法では電流を常時計測するので電流センサの計測誤差が累積して次第に不正確になる場合がある。このため、従来、蓄電素子の開放電圧(OCV:Open Circuit Voltage)と充電状態(SOC)との間に比較的精度の良い相関関係があることを利用し、電流積算法によって推定した充電状態を開放電圧から推定した充電状態によって補正することが行われている。
しかしながら、図12に示すように、蓄電素子の中には開放電圧と充電状態との関係を表すOCV-SOCカーブがプラトー領域を有しているものがある(例えば鉄系の蓄電素子)。プラトー領域とは、OCVとSOCとの相関関係を表すOCV-SOCカーブにおいてSOCの変化量に対するOCVの変化量が小さい領域のことをいう。具体的には例えば、SOCの変化量に対するOCVの変化量が2[mV/%]以下の領域をプラトー領域という。
OCV-SOCカーブがプラトー領域を有している場合は開放電圧に対応する充電状態を精度よく特定することが難しい。このため、OCV-SOCカーブがプラトー領域を有している蓄電素子の場合は電流積算法の推定精度を向上させることがより求められている。
上記の蓄電装置によると、二つの位置の間の温度勾配に起因して生じた電流センサの計測誤差に基づいて充電状態を補正するので、充電状態を精度よく推定できる。このため、OCV-SOCカーブがプラトー領域を有している蓄電素子の場合に特に有用である。
【0038】
(15)蓄電装置を備える車両であって、前記蓄電装置は当該車両のエンジンが収容されている収容室内に収容されている。
【0039】
蓄電装置がエンジンの収容室内に収容されているとエンジンの熱の影響を受け易いため、温度勾配が発生し、電流センサの計測誤差が生じ易い。
上記の車両によると、二つの位置の間の温度勾配に起因して生じた電流センサの計測誤差に基づいて充電状態を補正するので、蓄電素子がエンジンの収容室内に収容されていても充電状態を精度よく推定できる。
【0040】
(16)蓄電素子の管理方法であって、前記蓄電素子と直列に接続されている抵抗体を有し、前記抵抗体において電流の流れ方向に離間した二つの位置の電位差を検出して電流値を計測する電流センサによって計測された電流値に基づいて前記蓄電素子の充電状態を推定するステップと、前記二つの位置の間の温度勾配に起因して生じた前記電流センサの計測誤差に基づいて前記充電状態を補正するステップと、を含む。
【0041】
上記の管理方法によると、電流値に基づいて蓄電素子の充電状態を推定する場合のゼーベック効果の影響を簡素な構成で抑制できる。
【0042】
本明細書によって開示される発明は、装置、方法、これらの装置または方法の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体等の種々の態様で実現できる。
【0043】
<一実施形態>
一実施形態を図1ないし図10によって説明する。
図1を参照して、実施形態1に係る蓄電装置1、及び、蓄電装置1を備える自動車2(車両の一例)について説明する。図1に示す自動車2はエンジン自動車であり、エンジンを始動させるスタータを備えている。蓄電装置1は自動車2に搭載されてスタータに電力を供給する始動用の蓄電装置である。図1では蓄電装置1がエンジンルーム2A(収容室の一例)に収容されている場合を示しているが、蓄電装置1は居室の床下やトランクに収容されてもよい。
【0044】
(1)蓄電装置の構成
図2に示すように、蓄電装置1は外装体10と、外装体10の内部に収容される複数の蓄電素子12とを備える。外装体10は合成樹脂材料からなる本体13と蓋体14とで構成されている。本体13は有底筒状であり、平面視矩形状の底面部15とその4辺から立ち上がって筒状となる4つの側面部16とで構成される。4つの側面部16によって上端部分に上方開口部17が形成されている。
【0045】
蓋体14は平面視矩形状であり、その4辺から下方に向かって枠体18が延びている。蓋体14は本体13の上方開口部17を閉鎖する。蓋体14の上面には平面視略T字形の突出部19が形成されている。蓋体14の上面には突出部19が形成されていない2箇所のうち一方の隅部に正極外部端子20が固定され、他方の隅部に負極外部端子21が固定されている。
【0046】
蓄電素子12は繰り返し充電可能な二次電池であり、具体的には例えばリチウムイオン電池である。より具体的には、蓄電素子12は後述する電極体23の正極活物質にリン酸鉄リチウム(LFP)を含有した所謂鉄系のリチウムイオン電池である。
【0047】
図3(a)及び図3(b)に示すように、蓄電素子12は直方体形状のケース22内に電極体23を非水電解質と共に収容したものである。ケース22はケース本体24と、その上方の開口部を閉鎖するカバー25とで構成されている。
電極体23は、詳細については図示しないが、銅箔からなる基材に活物質を塗布した負極要素と、アルミニウム箔からなる基材に活物質を塗布した正極要素との間に多孔性の樹脂フィルムからなるセパレータを配置したものである。これらはいずれも帯状であり、セパレータに対して負極要素と正極要素とを幅方向の反対側にそれぞれ位置をずらした状態で、ケース本体24に収容可能となるように扁平状に巻回されている。
【0048】
正極要素には正極集電体26を介して正極端子27が接続されている。負極要素には負極集電体28を介して負極端子29が接続されている。正極集電体26及び負極集電体28は平板状の台座部30と、台座部30から延びる脚部31とを有している。台座部30には貫通孔が形成されている。脚部31は正極要素又は負極要素に接続されている。正極端子27及び負極端子29は、端子本体部32と、その下面中心部分から下方に突出する軸部33とを有している。そのうち正極端子27の端子本体部32と軸部33とはアルミニウム(単一材料)によって一体成形されている。負極端子29においては、端子本体部32がアルミニウム製であり、軸部33が銅製であり、これらを組み付けたものである。正極端子27及び負極端子29の端子本体部32はカバー25の両端に絶縁材料からなるガスケット34を介して配置され、このガスケット34から外方へ露出されている。
【0049】
図4に示すように、蓄電素子12は複数個(例えば12個)が幅方向に並設された状態で本体13内に収容されている。ここでは本体13の一端側から他端側(矢印Y1からY2方向)に向かって3つの蓄電素子12を1組として、同一組では隣り合う蓄電素子12の端子極性が同じになり、隣り合う組同士では隣り合う蓄電素子12の端子極性が逆になるように配置されている。最も矢印Y1側に位置する3つの蓄電素子12(第1組)では矢印X1側が負極、矢印X2側が正極となっている。第1組に隣接する3つの蓄電素子12(第2組)では矢印X1側が正極、矢印X2側が負極となっている。さらに第2組に隣接する第3組では第1組と同じ配置となっており、第3組に隣接する第4組では第2組と同じ配置となっている。
【0050】
図5に示すように、正極端子27及び負極端子29には導電部材としての端子用バスバー(接続部材)36~40が溶接により接続されている。第1組の矢印X2側では正極端子27群が第1バスバー36によって接続されている。第1組と第2組の間では矢印X1側で第1組の負極端子29群と第2組の正極端子27群とが第2バスバー37によって接続されている。第2組と第3組の間では矢印X2側で第2組の負極端子29群と第3組の正極端子27群とが第3バスバー38によって接続されている。第3組と第4組の間では、矢印X1側で第3組の負極端子29群と第4組の正極端子27群とが第4バスバー39によって接続されている。第4組の矢印X2側では、負極端子29群が第5バスバー40によって接続されている。
【0051】
図2を併せて参照すると、電気の流れの一端に位置する第1バスバー36は第1の電子機器42A(例えばヒューズ)、第2の電子機器42B(例えばリレー)、バスバー43及びバスバーターミナル(図示せず)を介して正極外部端子20に接続されている。電気の流れの他端に位置する第5バスバー40はバスバー44A,44B及び負極バスバーターミナル(図示せず)を介して負極外部端子21に接続されている。これによりそれぞれの蓄電素子12は正極外部端子20及び負極外部端子21を介して充電と放電とが可能になっている。電子機器42A,42Bと電気部品接続用バスバー43、44A及び44Bとは、積層配置した複数の蓄電素子12の上部に配置された回路基板ユニット41に取り付けられている。バスバーターミナルは、蓋体14に配置されている。
【0052】
(2)蓄電装置の電気的構成
図6に示すように、蓄電装置1は前述した複数の蓄電素子12と、それらの蓄電素子12を管理するBMS(Battery Management System)50とを備えている。BMS50は管理装置の一例である。
【0053】
BMS50は電流センサ51、電圧センサ52、及び、管理部55を備えている。
電流センサ51は蓄電素子12と直列に接続されている。電流センサ51は蓄電素子12の充放電電流を計測して管理部55に出力する。電流センサの具体的な構成については後述する。
電圧センサ52は各蓄電素子12に並列に接続されている。電圧センサ52は各蓄電素子12の端子電圧を計測して管理部55に出力する。
【0054】
管理部55はCPU55B、ROM55C(記憶部の一例)、RAM55Dなどが1チップ化されたマイクロコンピュータ55A(所謂マイコン)、通信部55Eなどを備えている。これらは図2に示す回路基板ユニット41に実装されている。ROM55Cには管理プログラムや各種のデータが記憶されている。管理部55はROM55Cに記憶されている管理プログラムを実行することによって蓄電素子12を管理する。通信部55EはCPU55Bが自動車2側のシステム(例えばECU:Engine Control Unit)と通信するためのインタフェースである。
【0055】
(3)電流センサの構成
図7を参照して、電流センサ51の構成について説明する。電流センサ51は蓄電素子12と直列に接続されているシャント抵抗60(抵抗体の一例)と、シャント抵抗60において互いに電流の流れ方向に離間した二つの計測位置61(61L,61R)の電位差を検出する検出回路62とを有しており、シャント抵抗60の抵抗値と二つの計測位置61の電位差とから電流値を算出する。二つの計測位置61はそれぞれ位置の一例である。
【0056】
(4)管理部によって実行される処理
管理部55は、次に説明する推定処理及び補正処理を実行する。
【0057】
(4-1)推定処理
推定処理は、電流積算法によって蓄電素子12のSOCを推定する処理である。電流積算法は、電流センサ51によって蓄電素子12の充放電電流を常時計測することで蓄電素子12に出入りする電力量を計測し、これを初期容量から加減することでSOCを推定する方法である。電流積算法によって推定されたSOCは「電流値に基づいて推定された蓄電素子の充電状態」の一例である。
【0058】
(4-2)補正処理
図7に示すように、シャント抵抗60の両端にはバスバーB1,B2が接続されている。ここで、図7においてシャント抵抗60の左側は蓄電素子12側であり、右側は負極外部端子21側である。図7に示す例ではシャント抵抗60の左側に接続されているバスバーB1の方が右側に接続されているバスバーB2より熱容量が小さいと仮定する。
【0059】
通常、エンジンの動作中や急速充電、大電流が放電されたときなどはエンジンの熱や蓄電素子12自体の発熱などによって蓄電装置1が全体に温まっているので、バスバーB1の温度とバスバーB2の温度とがほぼ同じである。しかしながら、バスバーB1の方がバスバーB2より熱容量が小さいと、車両が駐車されてバスバーB1及びバスバーB2の温度が低下するとき、バスバーB1の方がバスバーB2より発熱が大きくなる。このためバスバーB1の方がバスバーB2より温度が高くなる。
【0060】
バスバーB1の方がバスバーB2より温度が高いと、シャント抵抗60の左側の計測位置61Lの方が右側の計測位置61Rより温度が高くなる。この温度勾配によるゼーベック効果の起電力によってシャント抵抗60に左方向(放電方向)の電流が流れる。このため、電流センサ51によって計測される電流値は蓄電素子12の放電電流の電流値にゼーベック効果による電流値が加算されたものとなり、電流値が本来より大きく計測される計測誤差が生じる。
【0061】
電流値の計測誤差は大きく計測される計測誤差に限られない。例えばバスバーB2の方がバスバーB1より熱容量が小さいことによってバスバーB2の方がバスバーB1より温度が高くなる場合もある。その場合は右方向(充電方向)に電流が流れる。このため電流センサ51によって計測される電流値は蓄電素子12の放電電流の電流値からゼーベック効果による電流値を減算したものとなり、電流値が本来より小さく計測される計測誤差が生じる。
【0062】
バスバーB1とバスバーB2とに温度差が生じる原因は熱容量の違いに限られない。例えばバスバーB1とバスバーB2とで熱容量が同じであっても蓄電装置1の周囲の環境などによって温度差が生じることもある。例えばバスバーB1の方がバスバーB2よりエンジンに近いことにより、エンジンの熱によってバスバーB1の方がバスバーB2より温度が高くなることも考えられる。
【0063】
ゼーベック効果によって電流値の計測誤差が生じるとSOCの推定精度が低下する。このため、管理部55は電流積算法によって推定されたSOCを、二つの計測位置61の間の温度勾配に起因して生じた電流センサ51の計測誤差(ゼーベック効果に起因して生じた電流センサ51の計測誤差)に基づいて補正する補正処理を実行する。以下、具体的に説明する。
【0064】
(4-2-1)補正処理の概略
図8は電流値が大きく計測される計測誤差が生じる場合の例である。図8において実線65は電流センサ51によって計測された電流値(ゼーベック効果による計測誤差を含んだ電流値)を示しており、点線66はゼーベック効果が生じていない場合に計測される電流値(本来計測されるべき電流値)を示している。実線65と点線66との差は、二つの計測位置61の間の温度勾配に起因して生じた電流センサ51の計測誤差に相当する。
【0065】
図8において時点T1は自動車2が駐車された時点である。時点T1で自動車2が駐車されると蓄電素子12の放電電流が徐々に低下する。ただし、放電電流は完全には0mAにはならず、駐車中も20mAなどの微小な暗電流が流れる。
時点T2は電流値が第1の閾値(例えば100mA)以下まで低下した時点である。第1の閾値は100mAに限定されるものではなく、適宜に決定できる。時点T1から時点T2までの期間もゼーベック効果による電流値の計測誤差が生じるが、この期間は比較的短く、且つ、電流値も比較的大きいのでSOCの推定誤差要因としては無視できる程度である。このため、管理部55は、自動車2が駐車されても時点T1から時点T2までの期間についてはSOCの補正を行わない。
【0066】
時点T4はゼーベック効果が収束した時点を示している。二つの計測位置61の間に温度勾配が生じている場合(ゼーベック効果が生じている場合)は時間の経過に伴ってそれら二つの計測位置61の温度が徐々に均一になるため、ゼーベック効果が徐々に収束する。このため、時点T2から時点T4では電流センサ51によって計測される電流値が徐々に小さくなる。
【0067】
時点T2から時点T4までの期間は比較的長く、且つ、電流値も微小(100mA以下)であるため、SOCの推定誤差要因として無視できない。このため、管理部55は時点T2から時点T4までの期間(電流値が100mA以下である期間)に生じた電流センサ51の計測誤差に基づいてSOCを補正する。具体的には、図8においてハッチングで示される三角形67の面積は、時点T2から時点T4までの期間に生じた電流センサ51の計測誤差によって生じたSOCの推定誤差に相当する。このため、管理部55は電流積算法によって推定したSOCから三角形67の面積を減じることによってSOCを補正する。
【0068】
ただし、時点T2で電流値が100mA以下まで低下しても、その後にゼーベック効果が収束する前に蓄電素子12が使用される場合もある。通常、蓄電素子12が使用される場合は100mAより大きい電流が流れる。電流値が100mAより大きい場合はゼーベック効果による電流値の計測誤差は無視できる程度である。このため、管理部55は、電流値が100mA以下まで低下した後、ゼーベック効果が収束する前に100mAより大きい電流値が計測された場合は補正処理を中止する。
【0069】
図9は電流値が小さく計測される計測誤差が生じる場合の例である。この場合は電流センサ51の計測誤差によってSOCが本来より小さく推定されるので、管理部55は電流積算法によって推定したSOCに図9においてハッチングで示される三角形68の面積を加算することによってSOCを補正する。
【0070】
(4-2-2)補正処理のフロー
図10を参照して、補正処理のフローについて説明する。以下の説明では自動車2の駐車中は電流センサ51によって数秒~数十秒間隔で電流値が計測されるものと仮定する。
【0071】
S101では、管理部55は自動車2が駐車されたか否かを判断する。
具体的には、管理部55は自動車2のECUからエンジンの状態を示す信号を一定時間間隔で受信しており、自動車2が駐車されたか否かを当該信号から判断する。自動車2が駐車されたか否かを判断する方法はこれに限られるものではなく、適宜の方法で判断できる。例えばエンジンの振動が検出されなくなったら自動車2が駐車されたと判断してもよい。
管理部55は、自動車2が駐車された場合はS102に進み、駐車されていない場合は所定時間が経過した後に再度S101を実行する。
【0072】
S102では、管理部55は電流センサ51によって次の電流値が計測されるまで待機し、電流値が計測されるとS103に進む。
S103では、管理部55は計測された電流値が100mA以下であるか否かを判断し、100mA以下である場合はS104に進み、100mAより大きい場合はS102に戻って処理を繰り返す。
【0073】
S104では、管理部55は時間のカウントを開始するとともに、100mA以下の電流値として最初に計測された電流値をRAM55Dに記憶する。
例えば前回計測された電流値が103mAであり、今回計測された電流値が98mAであるとする。この場合、管理部55は前述したS103において電流値が100mA以下まで低下したと判断し、S104において時間のカウントを開始するとともに、98mAをRAM55Dに記憶する。
【0074】
S105では、管理部55はゼーベック効果が生じているか否かを判断する。ゼーベック効果が生じているか否かは、電流センサ51によって計測された電流値の単位時間当たりの変化量(横軸を時間、縦軸を電流値としたグラフの傾き)から判断できる。以降の説明では電流値の単位時間当たりの変化量のことを電流値の傾きという。
【0075】
具体的には、ゼーベック効果が生じていない場合は暗電流が略一定(例えば20mA)になるため、計測される電流値の傾きはほぼ0になる。これに対し、ゼーベック効果が生じている場合は電流値が徐々に小さくなるため、電流値の傾きの絶対値がある程度大きくなる。このため、電流値の傾きの絶対値が第2の閾値(例えば0.1)より大きいか否かにより、ゼーベック効果が生じているか否かを判断できる。
【0076】
管理部55は、S103で電流値が100mA以下まで低下したと判断した後、所定時間(例えば3分)が経過するまで待機する。図8において時点T3は所定時間が経過した時点を示している。管理部55は所定時間が経過するまで待機するのではなく、電流値が所定回数(例えば10回)計測されるまで待機してもよい。
【0077】
管理部55は所定時間が経過するとその間に計測された電流値から傾きを計算し、計算した傾きが第2の閾値より大きい場合はゼーベック効果が生じていると判断してS106に進む。傾きが第2の閾値以下である場合は、管理部55はゼーベック効果が生じていない(あるいは生じていたとしても無視できる程度である)と判断して本処理を中止する。
【0078】
S106では、管理部55は電流センサ51によって次の電流値が計測されるまで待機し、電流値が計測されるとS107に進む。
S107では、管理部55は計測された電流値が100mAより大きいか否かを判断する。管理部55は、電流値が100mA以下の場合は蓄電素子12が使用されていないと判断してS108に進み、100mAより大きい場合は蓄電素子12が使用されたと判断して本処理を中止する。
【0079】
S108では、管理部55はゼーベック効果が収束したか否かを判断する。
具体的には、ゼーベック効果が収束すると電流値が概ね20mAで一定となるので、電流値の傾きの絶対値がほぼ0になる。このため、管理部55は前回計測された電流値と今回計測された電流値とから電流値の傾きを計算する。今回を含む直近の3回以上の計測によって計測された電流値から傾きを計算してもよい。
管理部55は、計算した電流値の傾きの絶対値が第2の閾値以下であるか否かを判断し、第2の閾値以下である場合はゼーベック効果が収束したと判断してS109に進み、第2の閾値より大きい場合はS106に戻って処理を繰り返す。
【0080】
S109では、管理部55はSOCを補正するための補正値を決定する。
具体的には、管理部55はS104でRAM55Dに記憶した電流値(例えば98mA)から、その後に電流値の傾きの絶対値が第2の閾値以下になった時点T4(ゼーベック効果が収束した時点)の電流値を減じることによってその間の電流値の変化量(三角形67の高さ)を求める。管理部55は、時点T2から時点T4までの時間(三角形67の底辺)と、上述した電流値の変化量との積を2で除算することによって補正値(三角形67の面積)を決定する。補正値は、二つの計測位置61の間の温度勾配に起因して生じた電流センサ51の計測誤差を積算した値と言い換えることもできる。
【0081】
S110では、管理部55は電流積算法によって推定されているSOCからS109で決定した補正値を減算することによってSOCを補正する。
前述した図9に示すように、電流値が小さく計測される計測誤差が生じている場合は、S104でRAM55Dに記憶した電流値から時点T5(ゼーベック効果が収束した時点)の電流値を減じると電流値の変化量がマイナスの値となるので、補正値もマイナスの値となる。この場合、SOCから補正値を減算するとマイナスの値を減算することになるため、結果としてプラスの補正値が加算される。
【0082】
(5)実施形態の効果
BMS50によると、電流積算法によって推定されたSOCを、シャント抵抗60の二つの計測位置61の間の温度勾配に起因して生じた電流センサ51の計測誤差に基づいて補正するので、従来のようにシャント抵抗60に伝熱阻害手段を設けて電流値の計測誤差を低減しなくてもゼーベック効果の影響を抑制できる。このため、電流積算法によってSOCを推定する場合のゼーベック効果の影響を簡素な構成で抑制できる。
【0083】
BMS50によると、自動車2が駐車されてから生じた電流センサ51の計測誤差に基づいてSOCを補正するので、ゼーベック効果の影響を抑制する効果が顕著となる。
【0084】
BMS50によると、電流値が100mA以下である期間(時点T2以降の期間)に生じた電流センサ51の計測誤差に基づいてSOCを補正するので、ゼーベック効果の影響を抑制する効果が顕著となる。
【0085】
BMS50によると、電流値の傾きの絶対値が第2の閾値より大きい場合(ゼーベック効果が生じている場合)にSOCを補正するので、ゼーベック効果が生じていないにもかかわらず補正が行われることを抑制できる。
【0086】
BMS50によると、図8においてハッチングで示す三角形67の面積を補正値とするので、電流センサ51の計測誤差に基づいてSOCを補正できる。
【0087】
BMS50によると、電流値が100mA以下まで低下した後、ゼーベック効果が収束する前に蓄電素子12が使用された場合は補正処理を中止するので、無用な補正を抑制できる。
【0088】
蓄電装置1によると、従来のようにシャント抵抗60に伝熱阻害手段を設けて電流値の計測誤差を低減しなくてもゼーベック効果の影響を抑制できる。このため、電流積算法によってSOCを推定する場合のゼーベック効果の影響を簡素な構成で抑制できる。
【0089】
蓄電装置1によると、ゼーベック効果に起因して生じた電流センサ51の計測誤差に基づいてSOCを補正するので、SOCを精度よく推定できる。このため、OCV-SOCカーブがプラトー領域を有している蓄電素子12の場合に特に有用である。
【0090】
自動車2によると、蓄電装置1が自動車2のエンジンルーム2A内に収容されていてもSOCを精度よく推定できる。
【0091】
<実施形態2>
図11に示すように、実施形態2に係るBMS50は、シャント抵抗60の計測位置61L近傍の温度を計測する温度センサ70、及び、計測位置61R近傍の温度を計測する温度センサ71を備えている。実施形態2に係る管理部55はゼーベック効果が生じているか否かをそれら二つの計測位置61の温度差から判断する。
【0092】
具体的には、ゼーベック効果が生じている場合は二つの計測位置61の温度差がある程度大きくなる。このため、管理部55は、二つの計測位置61の温度差が第3の閾値より大きいか否かにより、ゼーベック効果が生じているか否かを判断する。管理部55は、電流値が100mA以下まで低下し、且つ、二つの計測位置61の温度差が第3の閾値より大きい場合(ゼーベック効果が生じている場合)にSOCを補正する。
【0093】
ゼーベック効果に起因して生じた電流センサ51の計測誤差によるSOCの推定誤差は、電流値が100mA以下まで低下したときから、その後にシャント抵抗60の二つの計測位置61の間の温度差が第3の閾値以下になったとき(言い換えるとゼーベック効果が収束したとき)までの時間を底辺、その間の電流値の変化量を高さとする三角形の面積によって表すことができる。このため、管理部55は、当該三角形の面積を補正値とする。
【0094】
実施形態2に係るBMS50によると、二つの計測位置61の温度差に基づいてSOCを補正するので、ゼーベック効果が生じていないにもかかわらず補正が行われることを抑制できる。
【0095】
BMS50によると、二つの計測位置61の温度差が第3の閾値より大きい場合(ゼーベック効果が生じている場合)にSOCを補正するので、ゼーベック効果が生じていないにもかかわらず補正が行われることを抑制できる。
【0096】
BMS50によると、上述した三角形の面積を補正値とするので、電流センサ51の計測誤差に基づいてSOCを補正できる。
【0097】
BMS50によると、電流値が100mA以下まで低下した後、ゼーベック効果が収束する前に蓄電素子12が使用された場合は補正処理を中止するので、無用な補正を抑制できる。
【0098】
<実施形態3>
実施形態3では、実験などによって予めSOCの補正値を決定してROM55Cに記憶させておく。管理部55は、電流値が100mA以下まで低下し、且つ、ゼーベック効果が生じている場合(電流値の傾きの絶対値が第2の閾値より大きい場合、あるいは二つの計測位置61の温度差が第3の閾値より大きい場合)は、その補正値を用いてSOCを補正する。
多くの場合、補正値は概ね一定の値になる。このため、実験などによって予め補正値を決定してROM55Cに記憶させておけば、補正の度に補正値を求めなくてよい。このため補正処理が簡素になる。
【0099】
ただし、電流値が100mA以下まで低下しても、その後にゼーベック効果が収束する前に蓄電素子12が使用される場合もある。ROM55Cに記憶される補正値はゼーベック効果が収束するまで蓄電素子12が使用されないことを前提に決定されるので、ゼーベック効果が収束する前に蓄電素子12が使用された場合にもその補正値を用いてSOCを補正すると不適切に補正される可能性がある。
【0100】
このため、管理部55は、電流値が100mA以下まで低下した後、所定時間(ゼーベック効果の収束に要する時間として予め実験などによって決定された時間)が経過する前に蓄電素子12が使用された場合(具体的には電流センサ51によって100mAより大きい電流値が計測された場合)は補正処理を中止する。このためSOCが不適切に補正される可能性を低減できる。
【0101】
<他の実施形態>
本明細書によって開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書によって開示される技術的範囲に含まれる。
【0102】
(1)上記実施形態では、管理部55は自動車2が駐車されたか否かを判断し、自動車2が駐車された場合は電流値が100mA以下まで低下したか否かを判断し、100mA以下まで低下した場合にゼーベック効果が生じているか否かを判断する。
【0103】
これに対し、管理部55は自動車2が駐車されたか否かの判断は行わないようにしてもよい。具体的には、管理部55は、自動車2が駐車されたか否かによらず、電流値が100mA以下まで低下するとゼーベック効果が生じているか否かを判断してもよい。
あるいは、電流値が100mA以下まで低下したか否かの判断は行わないようにしてもよい。具体的には、管理部55は、自動車2が駐車されると、電流値が100mA以下まで低下したか否かによらず、ゼーベック効果が生じているか否かを判断してもよい。
【0104】
(2)上記実施形態では電流値が100mA以下まで低下したと判断した後、ゼーベック効果が生じているか否かを判断しているが、ゼーベック効果が生じているか否かを判断しなくてもよい。具体的には、電流値が100mA以下まで低下した場合はゼーベック効果が生じているとみなしてSOCの推定誤差を補正してもよい。
【0105】
(3)上記実施形態ではゼーベック効果が収束する前にエンジンが始動された場合は補正処理を中止するが(S107)、ゼーベック効果が収束する前にエンジンが始動された場合はエンジンが始動されるまでの間の補正値を算出してSOCを補正してもよい。
【0106】
(4)上記実施形態1では電流値の傾きが第2の閾値以下である場合にゼーベック効果が収束したと判断する。これに対し、ゼーベック効果が収束すると暗電流は概ね一定になるので、例えば電流値が所定の暗電流±2mA以内になるとゼーベック効果が収束したと判断してもよい。
ただし、ゼーベック効果が収束したときの暗電流は車種によって異なる可能性がある。このため、電流値が所定の暗電流±2mA以内になるとゼーベック効果が収束したと判断する場合は車種毎に所定の暗電流を記憶しておくことが望ましい。これに対し、ゼーベック効果が収束したか否かを電流値の傾きから判断すると、ゼーベック効果が収束したか否かを車種によらず判断できるので、より汎用的である。
【0107】
(5)上記実施形態2ではシャント抵抗60の計測位置61L及び計測位置61Rの温度を計測する場合を例に説明したが、バスバーB1及びバスバーB2の温度を計測してもよい。蓄電素子12の温度を計測する温度センサを備えている場合は、その温度センサによって計測された温度を用いてもよい。自動車2と蓄電装置1とを接続しているバスバーの温度を計測する温度センサを自動車2が備えている場合は、その温度センサによって計測された温度を用いてもよい。
【0108】
(6)上記実施形態3では実験などによって予め補正値を決定してROM55Cに記憶させる。これに対し、補正値そのものをROM55Cに記憶させるのではなく、ゼーベック効果が収束するまでの時間(例えば電流値が100mA以下まで低下したときから、電流値の傾きが第2の閾値以下になったときまでの時間)をROM55Cに記憶させる一方、その間の電流値の変化量については実際に計測し、ROM55Cに記憶されている時間とその間の電流値の変化量との積を2で除算した値を補正値としてもよい。
電流値が100mA以下まで低下したときから、電流値の傾きが第2の閾値以下になったときまでの間の電流値の変化量をROM55Cに記憶させる一方、ゼーベック効果が収束するまでの時間については実際に計測してもよい。
【0109】
(7)上記実施形態3ではROM55Cに記憶されている補正値をそのまま用いて補正する場合を例に説明した。これに対し、ROM55Cに記憶されている補正値を調整して用いてもよい。例えば蓄電装置1が搭載されている車種に応じて補正値を調整してもよいし、蓄電装置1の内部の温度と外気温とに応じて調整してもよい。
【0110】
(8)上記実施形態では蓄電素子12として鉄系の蓄電素子12を例に説明したが、蓄電素子12は鉄系に限られるものではなく、他のリチウムイオン電池であってもよい。
【0111】
(9)上記実施形態1では始動用の蓄電素子12を例に説明したが、蓄電素子12の用途はこれに限られない。例えば、蓄電素子12は電気自動車やハイブリッド自動車に搭載されて補機類に電力を供給する補機用であってもよいし、電気モータで走行するフォークリフトや無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)などに搭載されて電気モータに電力を供給する移動体用であってもよい。
蓄電素子12は無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)に用いられるものであってもよいし、携帯端末などに用いられるものであってもよい。ピークシフトに用いられる蓄電装置でもよいし、再生可能エネルギーを蓄電する蓄電装置でもよい。
【0112】
(10)上記実施形態では、自動車2が駐車された後、電流値が100mA以下まで低下してから電流値の単位時間当たりの変化量が第2の閾値以下になったときまでの期間に生じた電流センサ51の計測誤差に基づいてSOCを補正する場合を例に説明した。しかしながら、SOCを補正する期間はこれに限られるものではなく、自動車2が駐車されてから自動車2のエンジンが始動されるまでの間の期間であればどの期間にSOCを補正してもよい。
【0113】
例えば、夜に自動車2を駐車すると気温(環境温度)が低いことによって蓄電装置1の温度が低下する。シャント抵抗60の一端に接続されているバスバーは蓄電装置1の内部に収容されているが、他端に接続されているバスバーは自動車2と接続するために蓄電装置1の外にあるため、朝になって気温が上昇したとき、他端に接続されているバスバーの方が先に温度が上昇する。このときに生じたゼーベック効果によるSOCの推定誤差を補正してもよい。
【0114】
(11)上記実施形態では二つの計測位置61の間の温度勾配に起因して生じた電流センサの計測誤差に基づいてSOCを補正する場合を例に説明したが、この計測誤差は他の制御に用いられてもよい。例えば、一般にBMS50は蓄電素子12から供給される電力によって動作する。このため、BMS50は自動車2が駐車されるとスリープモードに移行する。スリープモードでは電流値や電圧値を計測する周期が長くなることによって電力消費が抑制される。BMS50は所定値以上の電流が流れるとエンジンが始動されたと判断して通常モード(計測周期が短いモード)に復帰する。このとき、電流値に計測誤差が含まれていると、通常モードに復帰すべきでないにもかかわらず通常モードに復帰する可能性がある。仮に自動車2が駐車中でエンジンが停止中の場合には、バッテリへの充電が行われないため、通常モードに復帰するとバッテリ上がりになる可能性がある。
そこで、電流センサ51によって計測された電流値を計測誤差に基づいて補正し、補正後の電流値を用いることでスリープモードから通常モードに復帰することを回避してもよい。これによりバッテリ上がりになることを防ぐことが出来る。
【0115】
(12)上記実施形態1では蓄電素子としてリチウムイオン電池を例に説明したが、蓄電素子はこれに限られない。例えば蓄電素子は電気化学反応を伴うキャパシタであってもよい。
【符号の説明】
【0116】
1 蓄電装置、2 自動車(車両の一例)、2A エンジンルーム2A(収容室の一例)、12 蓄電素子、23 電極体、50 BMS(管理装置の一例)、51 電流センサ、55 管理部、55C ROM(記憶部の一例)、60 シャント抵抗(抵抗体の一例)、70 温度センサ、71…温度センサ
図1
図2
図3A
図3B
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図12