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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】端子カバー
(51)【国際特許分類】
   H01H 71/08 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
H01H71/08
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021035619
(22)【出願日】2021-03-05
(65)【公開番号】P2022135669
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】508296738
【氏名又は名称】富士電機機器制御株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張 爍
(72)【発明者】
【氏名】大野 貴史
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-098240(JP,U)
【文献】特開平10-271618(JP,A)
【文献】実開平07-023908(JP,U)
【文献】特開2013-088090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 69/00 - 69/01
H01H 71/00 - 83/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が接続される端子を覆う端子カバーであって、
外枠切欠を有する外枠と、
前記外枠における前記外枠切欠内に設けられ、前記外枠切欠より小さい内枠切欠を有する内枠と、
を備え、
前記外枠と前記内枠とは、周辺部より薄く形成されて、曲げ、捩じりまたは切断工具によって切断可能な切取部によって接続されており、
前記内枠切欠から前記端子を臨むことが可能なように構成されていることを特徴とする端子カバー。
【請求項2】
第1カバーおよび第2カバーからなる2分割構造であり、
前記第1カバーおよび前記第2カバーは、それぞれ前記外枠および前記内枠を備えており、それぞれの前記外枠切欠および前記内枠切欠の開口部が互いに対向するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の端子カバー。
【請求項3】
前記端子はねじ式であり、
前記第1カバーは、前記端子のねじが抜ける方向を覆う第1壁を備え、
前記第2カバーは、前記端子のねじが螺入する方向を覆う第2壁を備えることを特徴とする請求項2に記載の端子カバー。
【請求項4】
前記第2壁の少なくとも一部は切り取り可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の端子カバー。
【請求項5】
前記第1壁には、棒状器具が前記端子に当接可能な操作孔が設けられていることを特徴とする請求項3または4に記載の端子カバー。
【請求項6】
前記内枠は入れ子構造で大きさの異なる複数からなり、それぞれ隣接する同士は前記切取部によって接続されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の端子カバー。
【請求項7】
前記外枠と前記内枠とは、前記外枠切欠の開口部近傍の両端、および前記外枠切欠の最奥部の3か所で前記切取部によって接続されていることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の端子カバー。
【請求項8】
前記端子は回路遮断器の端子であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の端子カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線が接続される端子を覆う端子カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器は配電盤などに設けられ、電源側の端子と負荷側の端子との間を接続および遮断する。端子のまわりは異物、工具および指等(以下、異物等という。)が入ることのないようにカバーで覆われていることが望ましい。カバーには電線が通るための切欠が設けられるが、異物等の進入を防止するためには切欠と電線との間は十分に狭くなっていることが望ましい。
【0003】
特許文献1に記載の端子カバーは、端面に電線を通すU字状の切欠溝を形成した第1カバーおよび第2カバーの二分割構造となっており、第1カバーに形成した切欠溝の開放端を第2カバーで閉塞するようにしていることから電線との隙間を狭くすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-067728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回路遮断器などの端子には使用現場により様々な径の電線が用いられ、その本数も1本ではなく複数本が接続されることがある。特許文献1に記載の端子カバーは、端子に対して固定径の電線を接続するのには好適であるが、異なる径や複数本の電線を接続するためには個別形状の切欠溝を有するカバーを別途準備する必要がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、接続される電線の径や本数に応じて汎用的に用いることができる端子カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる端子カバーは、電線が接続される端子を覆う端子カバーであって、外枠切欠を有する外枠と、前記外枠における前記外枠切欠内に設けられ、前記外枠切欠より小さい内枠切欠を有する内枠と、を備え、前記外枠と前記内枠とは、周辺部より薄く形成されて、曲げ、捩じりまたは切断工具によって切断可能な切取部によって接続されており、前記内枠切欠から前記端子を臨むことが可能なように構成されていることを特徴とする。
【0008】
このような端子カバーは、接続される電線の径や本数に応じて汎用的に用いることができる。
【0009】
端子カバーは、第1カバーおよび第2カバーからなる2分割構造であり、前記第1カバーおよび前記第2カバーは、それぞれ前記外枠および前記内枠を備えており、それぞれの前記外枠切欠および前記内枠切欠の開口部が互いに対向するように配置されていてもよい。このように端子カバーを第1カバーおよび第2カバーから構成し、それぞれに外枠と内枠とを設けることにより、一層汎用的に電線の径や本数に対応させることができる。また、第1カバーと第2カバーとは電線が通る挿通部が境となるように設けられ、電線が接続された状態で第1カバーをも個別に着脱することができる。
【0010】
前記端子はねじ式であり、前記第1カバーは、前記端子のねじが抜ける方向を覆う第1壁を備え、前記第2カバーは、前記端子のねじが螺入する方向を覆う第2壁を備えてもよい。これにより端子を一層確実に保護することができる。
【0011】
前記第2壁の少なくとも一部は切り取り可能に構成されていてもよい。このように、第2壁に切り取り可能な部分を設けると、ねじ式の端子におけるねじの螺入方向からブスバーなどを取り付け可能になる。
【0012】
前記第1壁には、棒状器具が前記端子に当接可能な操作孔が設けられていると、検電や端子の増し締め作業などが可能となる。
【0013】
前記内枠は入れ子構造で大きさの異なる複数からなり、それぞれ隣接する同士は前記切取部によって接続されていてもよい。このように、内枠を入子構造で複数設けることにより、一層汎用的かつ柔軟な対応が可能となる。
【0014】
前記外枠と前記内枠とは、前記外枠切欠の開口部近傍の両端、および前記外枠切欠の最奥部の3か所で前記切取部によって接続されていてもよい。内枠は3か所の切取部で外枠と接続されていると、適度な接続強度があって安定する。
【0015】
前記端子は回路遮断器の端子であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかる端子カバーでは、外枠と内枠との間が切欠部で接続されていて切断可能となっていて、内枠を切り取ることができる。そして、内枠を切り取るか否かにより電線を通す挿通部の面積を調整することが可能であり、接続される電線の径や本数に応じて汎用的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態にかかる端子カバーを備える回路遮断器を斜め表側から見た斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態にかかる端子カバーを備える回路遮断器を斜め裏側から見た斜視図である。
図3図3は、第1カバーを取り外した状態の回路遮断器の分解斜視図である。
図4図4は、端子カバーの正面図である。
図5図5は、第2カバーを斜め裏側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明にかかる端子カバーの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態にかかる端子カバー10を備える回路遮断器12を斜め表側から見た斜視図である。図2は、回路遮断器12を斜め裏側から見た斜視図である。図3は、第1カバー30を取り外した状態の回路遮断器12の分解斜視図である。まず、回路遮断器12について説明する。
【0020】
回路遮断器12は配線用遮断器または漏電遮断器などであり、大電流が流れることを検知して電路を自動的に遮断する。回路遮断器12は電源側端子と負荷側端子14(以下、単に端子14とも呼ぶ)との間を接続および遮断する。なお、各図では電源側端子は隠れて視認されない位置となっている。
【0021】
以下の説明では、回路遮断器12で電源側端子が設けられる側を上側、負荷側端子14が設けられる側を下側とする。また、レバー16が設けられる面の方向を表側、その反対側を裏側とする。表面は操作面であって、トリップボタン18なども設けられている。各図では適宜矢印でこれらの向きを示す。なお、これらの方向を示す表記は説明上の便宜的なものであって、回路遮断器12の取り付け向きは限定されない。
【0022】
回路遮断器12は、表カバー20aと裏カバー20bとで覆われた本体20の内部に消弧装置、開閉機構および引き外し機構などを有している。裏カバー20bにおける下方部には3つの負荷側端子14が並列して設けられている。回路遮断器12は三相仕様であり端子14が3つ設けられているが、1端子型、2端子型または4端子型などであってもよい。3つの負荷側端子14は端子カバー10で覆われている。裏カバー20bにおける上方部には3つの電源側端子が並列して設けられているが、図示を省略する。電源側端子についても端子カバー10を設けてもよい。裏面の取付部20baは、例えば配電盤における所定のレールなどに取り付け可能な構造になっている。
【0023】
図3に示すように、各端子14は両側一対の側壁22および端子14相互間の中間隔壁23によって区画された領域内に設けられている。側壁22は裏カバー20bから表カバー20aにわたって連続的に形成されている。端子14はねじ式であって、台座部14aと、該台座部14aのねじ穴に螺入されるねじ14bとによって構成されている。ねじ14bは裏側に向かって螺入され、表側に向かって抜ける。端子14はねじアップ式、またはスプリング式などでもよい。端子14は、台座部14aとねじ14bのヘッド部とによって電線端子を締め付けることによって電線を固定し導通する。
【0024】
各端子14には、所定の許容仕様にしたがって太い電線24、細い電線26およびブスバー28などが固定可能である。また、細い電線26は表裏方向に重ねて複数本(図1図2では2本)をまとめて固定することも可能である。固定された電線24,26は、端子14の近傍では上下方向に沿って延在する。
【0025】
次に、端子カバー10について説明する。
端子カバー10は3つの端子14を覆うものであり、第1カバー30および第2カバー32の二分割構造となっている。第1カバー30および第2カバー32は樹脂成型品であって絶縁性を有する。端子カバー10における各部の隙間は異物等が進入しない程度に十分狭くなっており端子14を保護する。端子カバー10における保護等級は、例えばJIS C 0920で規定されるIP20相当を実現する。
【0026】
第1カバー30と第2カバー32とは組み合わされて用いられる。第1カバー30は、端子14を基準として、表側部分および表寄りの下方部分を覆う。第2カバー32は、端子14を基準として、裏側部分および裏寄りの下方部分を覆う。以下の説明では理解を容易にするため、第1カバー30の要素の符号には適宜「A」を付し、第2カバー32における対応する要素の符号には適宜「B」を付す。なお、端子カバー10単体の説明では、端子カバー10の「正面」を図1図3に示される場合で下方、つまり電線24,26が延在している方向から見た面とする。
【0027】
第1カバー30は、表壁(第1壁)34、一対の側壁36A、一対の中間隔壁38Aおよび正面部40Aを有する。
【0028】
表壁34は3つの端子14の表側(換言すれば、ねじ14bが抜ける方向)をまとめて覆っている。表壁34には、3つの端子に対応した操作孔34aが設けられている。操作孔34aは検電器やドライバーなどの棒状器具が挿入されて端子14の一部に当接可能な位置に設けられており、検電や増し締めなどの操作が可能となっている。操作孔34aは円筒形状からなっており、棒状器具がねじ14bのヘッド部に当接する適正な向きとなるように案内する機能と、円筒形状となっている。回路遮断器の表面に外部操作ハンドル装置が取り付けられた際に、外部操作ハンドル装置を回路遮断器に取り付けた取付けねじに棒状器具が接触するのを防止し、通電時における作業者の地絡・感電を防止する機能を備えている。スナップフィット部34bは本体20に対する取り付け部である。
【0029】
側壁36Aは側壁22の延長面を形成して外部領域と端子14とを隔てる。中間隔壁38Aは中間隔壁23の延長面を形成し各端子14の相互間を隔てる。中間隔壁38Aの裏側端部には小さい突起38Aaが設けられている。
【0030】
正面部40Aは、表側が表壁34と接続され、両側が側壁36Aと接続された部分であり、各端子14に対応して設けられた3つの電線径調整部42Aを有している。3つの電線径調整部42Aは端子14の並びに対応して並列している。正面部40Aにおける電線径調整部42A以外の箇所は外枠44Aを形成している。
【0031】
端子カバー10は電線24,26が挿通するための挿通部46(図1図2参照)を有する。挿通部46は、3つの端子14に対して個別に設けられ、それぞれ端子14を臨むことが可能なように設けられている。電線径調整部42Aは、端子14に接続される電線24,26の径および本数に応じて挿通部46の面積を調整する部分である。
【0032】
図4は、端子カバー10の正面図である。図4に示すように、第1カバー30における電線径調整部42Aは、外枠44Aに形成された外枠切欠48Aと、外枠切欠48Aの内側に設けられた第1内枠50Aと、第1内枠(内枠)50Aに形成された第1内枠切欠(内枠切欠)52Aと、第1内枠切欠52Aの内側に設けられた第2内枠54Aと、第2内枠54Aに形成された第2内枠切欠56Aと、第2内枠切欠56Aの内側に設けられた第3内枠58Aと、第3内枠58Aに形成された第3内枠切欠60Aとを有する。外枠切欠48Aの最も表側(図4の上方)の部分と外枠44Aとの間にはヒレ62が設けられている。ヒレ62は本体20から第1カバー30を取り外す際に指を掛ける部分である。
【0033】
第1内枠50A、第2内枠54Aおよび第3内枠58AはそれぞれU字形状である。第1内枠50A、第2内枠54Aおよび第3内枠58Aはこの順に小さくなっており、それぞれ略相似形状でいわゆる入れ子構造になっている。外枠44Aと第1内枠50Aとの隙間、第1内枠50Aと第2内枠54Aとの隙間、および第2内枠54Aと第3内枠58Aとの隙間はそれぞれほぼ同幅であり、異物等が進入しない程度に十分狭くなっている。
【0034】
外枠切欠48A、第1内枠切欠52A、第2内枠切欠56Aおよび第3内枠切欠60Aはそれぞれ略相似形のU字形状であり、裏側(図4の下側)に開口している。外枠切欠48A、第1内枠切欠52A、第2内枠切欠56Aおよび第3内枠切欠60Aはこの順に小さくなっている。
【0035】
第1内枠50Aは外枠44Aに対して、外枠切欠48Aの開口側(図4の下側)の両端位置に設けられた一対の開口部接続片64A,64Aと、最奥部の奥側接続片66Aとの3か所で接続されており、適度な接続強度があって安定している。なお、開口部接続片64Aは、外枠切欠48Aの開口側端部よりはやや奥まった位置に設けられて隙間Gが形成されている。隙間Gは後述する切断工具での切り離しの際、切り取りの力が弱くても出来る様に辺を短くカットしたものである。第1内枠50Aは、最奥部で奥側接続片66Aによりヒレ62を介して外枠44Aと接続されている。
【0036】
開口部接続片64Aおよび奥側接続片66Aには切取部64Aa,66Aaが設けられている。切取部64Aa,66Aaは、第1内枠50Aおよび外枠44Aの上下方向(図4における紙面垂直方向)の厚みよりも薄く、ニッパ、カッターなどの動力を必要としない切断工具によって切断可能に形成されている。切取部64Aa,66Aaは切断工具で切り取り可能となる程度に、少なくともその周辺部よりも薄く形成されていればよい。切取部64Aa,66Aaは、切り取られていない状態では適度な強度を維持する。後述する各切取部も同様である。3つの切取部64Aa,64Aa,66Aaを切り取ると、第1内枠50Aは外枠44Aから離間する。
【0037】
第1内枠50Aと第2内枠54Aとの間、第2内枠54Aと第3内枠58Aとの間も外枠44Aと第1内枠50Aとの接続形態と同様に接続されている。すなわち、第2内枠54Aは第1内枠50Aに対して、第1内枠切欠52Aの開口側の一対の開口部接続片68A,68Aと、最奥部の奥側接続片70Aとの3か所で接続されている。第3内枠58Aは第2内枠54Aに対して、第2内枠切欠56Aの開口側の一対の開口部接続片72A,72Aと、最奥部の奥側接続片74Aとの3か所で接続されている。
【0038】
開口部接続片68A、奥側接続片70A、開口部接続片72A、奥側接続片74Aには切取部68Aa,70Aa,72Aa,74Aaが形成されている。これらの切取部68Aa,70Aa,72Aa,74Aaは、上記の切取部64Aa,66Aaと同様に切断工具によって切断可能な厚みとなっているが、部品成型上の理由から箇所により大きさ、向きまたは形状が異なっている。具体的には、切取部64Aa,66Aa,68Aa,72Aaは図4の紙面に直角な方向に薄くなっているのに対し、切取部70Aa,74Aaは図4における左右方向に薄くなっている。
【0039】
次に、第2カバー32について説明する。図5は、第2カバー32を斜め裏側から見た斜視図である。図2図3および図5に示すように、第2カバー32は、裏壁(第2壁)76、一対の側壁36B、一対の中間隔壁38Bおよび正面部40Bを有する。裏壁76は3つの端子14の裏側(換言すれば、ねじ14bが螺入する方向)をまとめて覆っている。裏壁76には、3つのねじ14bのそれぞれの裏側部分に薄く形成された切取壁76aが含まれる。
【0040】
切取壁76aは、動力を必要としない切断工具によって切取り可能に形成されている。裏壁76において切取壁76aを切り取った箇所(図2および図5の仮想線参照)からはブスバー28が挿入されて端子14に接続可能となっている。切取壁76aを切り取った箇所は図2の矢印で示す上側に向かって開口し、ブスバー28を端子14に接続した状態で第2カバー32の着脱が可能になっている。一般的にブスバー28は配電盤内で回路遮断器12よりも裏面側で延在するように設けられることから、裏壁76の切取壁76aを切り取った箇所から挿入可能とすることにより接続が容易となる。裏壁76は、接続が想定されるブスバー28などの導電材の断面積に応じて少なくとも一部が切取壁76aとして形成されているとよい。
【0041】
側壁36Bは側壁22の延長面を形成して外部領域と端子14とを隔てる。中間隔壁38B上記の中間隔壁38Aと一部が重なって中間隔壁23の延長面を形成し、各端子14の相互間を隔てる。中間隔壁38Bの表側方向端部には小さい凹部38Baが設けられている。凹部38Baには上記の突起38Aaが嵌り込んで安定する。
【0042】
正面部40Bは、裏側が裏壁76と接続され、両側が側壁36Bと接続された部分であり、各端子14に対応して設けられた3つの電線径調整部42Bを有している。3つの電線径調整部42Bは端子14の並びに対応して並列している。正面部40Bにおける電線径調整部42B以外の箇所は外枠44Bを形成している。
【0043】
図4に示すように、電線径調整部42Bは細部を除いて基本的には上記の電線径調整部42Aに対して表裏対称形状となっている。電線径調整部42Bの構成要素は、上記の電線径調整部42Aの構成要素が「A」を付しているところを「B」を付しており、対応が識別可能となっていることから個々の詳細な説明は省略する。
【0044】
第1カバー30の電線径調整部42Aにおける各切欠は、第2カバー32の電線径調整部42Bにおける対応する各切欠よりも深くなっている。例えば、外枠切欠48Aの切り込み深さDA1は外枠切欠48Bの切り込み深さDB1よりも深く、第3内枠切欠60Aの切り込み深さDA2は第3内枠切欠60Bの切り込み深さDB2よりも深くなっている。電線径調整部42Bでは上記のヒレ62が省略されている。
【0045】
このように構成される端子カバー10は、第1カバー30および第2カバー32からなる分割構造であり、第1カバー30および第2カバー32は、外枠切欠48A,48Bが対向し、第1内枠切欠52A,52Bが対向し、第2内枠切欠56A,56Bが対向し、第3内枠切欠60A,60Bが対向している。
【0046】
そして、図4に示すように第1内枠50A,50B、第2内枠54A,54B、第3内枠58A,58Bのいずれもが切り取られていない初期状態では、最も内側の第3内枠切欠60A,60Bが対向して挿通部46を形成している。この状態で挿通部46からは端子14が臨まれ、図示は省略するが1本の細い電線26が挿通して接続可能となっている。この場合、挿通部46の面積は適度に狭いため1本の細い電線26と第3内枠切欠60A,60Bとの隙間は十分に狭く、異物等が進入することが防止される。
【0047】
また、上記のとおり端子14には細い電線26を表裏方向に重ねて複数本をまとめて固定することも可能である。ただし、細い電線26を例えば2本重ねて端子14に固定する場合には、それだけ表裏方向の幅が厚くなるため、第3内枠切欠60A,60Bが対向して形成される初期状態の挿通部46を通すことはできない。
【0048】
そのため、図1図2における3つの挿通部46のうちの中央で2本の細い電線26が挿通している部分では、第1カバー30における電線径調整部42Aの第3内枠58Aが切り取られており、面積がやや大きくなっている。第3内枠58Aは切取部72Aa,72Aa,74Aaを切断することにより第2内枠54Aから切り離される。すなわち、ここでの挿通部46は、第2内枠切欠56Aおよび第3内枠切欠60Bによって形成されている。
【0049】
電線26を2本重ねると1本の場合と比較して表側に向かって1本分だけ寸法が大きくなるため、表側の第1カバー30における第3内枠58Aを切り取ることによりちょうど2本の電線26が挿通可能な面積の挿通部46を形成することができる。したがって、2本の細い電線26と第2内枠切欠56Aおよび第3内枠切欠60Bとの隙間は十分に狭く、異物が進入することが防止される。ただし、作業条件や作業者の判断によっては、表側の第3内枠58Aではなく裏側の第3内枠58Bを切り取るようにしてもよく、現場に応じた柔軟な対応が可能である。
【0050】
また、上記のとおり端子14には太い電線24を固定することも可能である。ただし、太い電線24は2本の細い電線26よりもさらに大径であり、第2内枠切欠56Aおよび第3内枠切欠60Bによって形成される挿通部46を通すことはできない。
【0051】
そのため、図1図2における3つの挿通部46のうちの左側部分で1本の太い電線24が挿通している部分では、第1カバー30における電線径調整部42Aの第2内枠54Aが切り取られており、面積が大きくなっている。第2内枠54Aは切取部68Aa,68Aa,70Aaを切断することにより第1内枠50Aから切り離される。すなわち、ここでの挿通部46は、第1内枠切欠52Aおよび第3内枠切欠60Bによって形成されている。
【0052】
太い電線24は2本の細い電線26の場合と比較して表側に向かって寸法が大きいため、表側の第1カバー30における第2内枠54Aを切り取ることによりちょうど1本の電線24が挿通可能な面積の挿通部46を形成することができる。したがって、1本の太い電線24と第1内枠切欠52Aおよび第3内枠切欠60Bとの隙間は十分に狭く、異物が進入することが防止される。ただし、作業条件や作業者の判断によっては、表側の第2内枠54Aではなく裏側の第2内枠54Bを切り取るようにしてもよく、現場に応じた柔軟な対応が可能である。
【0053】
また、図示を省略するが電線24よりもさらに太い電線を端子14に固定する場合には、第1内枠50Aを外枠44Aから切り離し、または第1内枠50Bを外枠44Bから切り離すなどして挿通部46の面積を一層大きく確保するとよい。
【0054】
上記のように、端子カバー10では、外枠44A,44Bと第1内枠50A,50Bとの間、さらに、第1内枠50A,50B、第2内枠54A,54Bおよび第3内枠58A,58Bとの各間はそれぞれ3つの切欠部で接続されており、切断工具によって切断可能となっている。これにより、第1内枠50A,50B、第2内枠54A,54Bおよび第3内枠58A,58Bを隣接する外側の枠部から切り離すことができる。
【0055】
そして、第3内枠58A,58B、第2内枠54A,54Bおよび第1内枠50A,50Bの切取り方の選択により、第3内枠切欠60A,60B、第2内枠切欠56A,56B、第1内枠切欠52A,52Bまたは外枠切欠48A,48Bで様々な面積の挿通部46を形成することができる。挿通部46からは端子14が臨まれており、該挿通部46の面積により電線の径や本数を汎用的に適用させることができ、しかも電線と切欠との隙間を十分に狭くして異物等の進入を防止することができる。
【0056】
また、端子カバー10は挿通部46の部分を境に表側の第1カバー30と裏側の第2カバー32とから構成されており、電線を端子14に接続した後でも正面側から第1カバーの個別に取り外しが可能となっていることから作業性に優れる。
【0057】
なお、端子カバー10は、第1カバー30と第2カバー32の2つから構成されており、それぞれ個別に内枠を切り取ることができて汎用性が高いが、設計条件によっては第2カバー32の電線径調整部42Bを省略し、第1カバー30の電線径調整部42Aだけで電線径の調整を行ってもよい。
【0058】
第1カバー30には3つの切取り可能な内枠、つまり第1内枠50A、第2内枠54Aおよび第3内枠58Aが設けられているが、少なくとも第1内枠50Aがあれば相応の電線径調整機能が得られる。また逆に、第3内枠58Aの内側にさらに小さい第4内枠、第5内枠を設けてもよい。
【0059】
上記の各切取部は切断工具で切断する形態として説明したが、設計条件によっては手で曲げまたは捩じることによって切断できるように形成してもよい。
【0060】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0061】
10 端子カバー
12 回路遮断器
14 端子
14a 台座部
14b ねじ
20 本体
24,26 電線
28 ブスバー
30 第1カバー
32 第2カバー
34 表壁(第1壁)
34a 操作孔
40A,40B 正面部
42A,42B 電線径調整部
44A,44B 外枠
46 挿通部
48A,48B 外枠切欠
50A,50B 第1内枠(内枠)
52A,52B 第1内枠切欠(内枠切欠)
54A,54B 第2内枠
56A,56B 第2内枠切欠
58A,58B 第3内枠
60A,60B 第3内枠切欠
64Aa,64Ba ,66Aa,66Ba,68Aa,68Ba,70Aa,70Ba,72Aa,72Ba,74Aa,74Ba 切取部
76 裏壁(第2壁)
76a 切取壁
図1
図2
図3
図4
図5