(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】解析装置、解析方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240130BHJP
【FI】
G06Q10/20
(21)【出願番号】P 2021054394
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2022-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江間 伸明
(72)【発明者】
【氏名】神戸 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】石 建信
(72)【発明者】
【氏名】安念 正人
【審査官】樋口 龍弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-205964(JP,A)
【文献】特開2018-049316(JP,A)
【文献】再公表特許第2011/152108(JP,A1)
【文献】特開2018-169760(JP,A)
【文献】特開2013-214256(JP,A)
【文献】特開2019-121380(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、前記保守処理を実施しない場合の両方について、指定した条件で前記解析対象プラントが生成する成果物
の量または質の少なくともいずれか、および
、前記成果物を生成する工程において付随的に排出される排出物の
量に依存する運用価値を解析する運用価値解析部と、
前記保守処理を実施する場合の第1の前記運用価値と、前記保守処理を実施しない場合の第2の前記運用価値とを比較する価値比較部と、
を備え、
前記排出物は物質であ
り、
前記排出物は、前記排出物の量が多いほど前記運用価値が高くなる第1の前記排出物と、前記排出物の量が多いほど前記運用価値が低くなる第2の前記排出物とを含む、
解析装置。
【請求項2】
解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、前記保守処理を実施しない場合の両方について、指定した条件で前記解析対象プラントが生成する成果物の質および前記成果物を生成する工程において付随的に排出される排出物の量に依存する運用価値を解析する運用価値解析部と、
前記保守処理を実施する場合の第1の前記運用価値と、前記保守処理を実施しない場合の第2の前記運用価値とを比較する価値比較部と、
を備え、
前記排出物は物質である、
解析装置。
【請求項3】
前記成果物の質は、前記成果物の歩留まりか、または、前記成果物の組成または性質に基づいて前記成果物を複数のグレードに分類する場合における、各グレードに分類される前記成果物の比率である、請求項
2に記載の解析装置。
【請求項4】
解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、前記保守処理を実施しない場合の両方について、指定した条件で前記解析対象プラントが生成する成果物または排出する排出物の量または質の少なくともいずれかに依存する運用価値を解析する運用価値解析部と、
前記保守処理を実施する場合の第1の前記運用価値と、前記保守処理を実施しない場合の第2の前記運用価値とを比較する価値比較部と、
前記解析対象プラントを構成する複数の機器の状態が第1の状態で生産を行う場合を模擬した第1のモデルと、前記複数の機器の状態が前記第1の状態とは異なる第2の状態で生産を行う場合を模擬した第2のモデルとを生成するモデル生成部と、
前記第1のモデルおよび前記第2のモデルを比較して、それぞれの前記機器の状態が前記運用価値に与える影響度を評価する影響度評価部と、
前記影響度に基づいて、前記複数の機器から保守処理を実施する候補を抽出する保守候補抽出部と
を備え、
前記運用価値解析部は、前記候補として抽出された前記機器に前記保守処理を実施した場合の前記第1の運用価値を解析する、
解析装置。
【請求項5】
前記運用価値解析部は、前記成果物の質に依存する前記運用価値を解析する
請求項
4に記載の解析装置。
【請求項6】
前記運用価値解析部は、前記排出物の量に依存する前記運用価値を解析する
請求項
4に記載の解析装置。
【請求項7】
前記運用価値解析部は、前記解析対象プラントの単位稼働時間当たりの前記運用価値を算出する
請求項1から
6のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項8】
前記第1の運用価値および前記第2の運用価値の差分と、前記保守処理の費用とに基づいて、前記保守処理の価値を算出する保守価値算出部を更に備える
請求項1から
7のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項9】
前記解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、前記保守処理を実施しない場合の両方について、指定した条件における前記解析対象プラントの運用コストを解析する運用コスト解析部を更に備え、
前記保守価値算出部は、前記保守処理を実施する場合の第1の前記運用コストと、前記保守処理を実施しない場合の第2の前記運用コストとの差分に更に基づいて、前記保守処理の価値を算出する
請求項
8に記載の解析装置。
【請求項10】
前記保守価値算出部は、前記保守処理の価値を最大化する前記保守処理の時期を算出する
請求項
8または
9に記載の解析装置。
【請求項11】
解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、前記保守処理を実施しない場合の両方について、指定した条件で前記解析対象プラントが生成する成果物または排出する排出物の量または質の少なくともいずれかに依存する運用価値を解析する運用価値解析部と、
前記保守処理を実施する場合の第1の前記運用価値と、前記保守処理を実施しない場合の第2の前記運用価値とを比較する価値比較部と、
前記解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、前記保守処理を実施しない場合の両方について、指定した条件における前記解析対象プラントの運用コストを解析する運用コスト解析部と、
前記解析対象プラントを構成する複数の機器の状態が第1の状態で生産を行う場合を模擬した第1のモデルと、前記複数の機器の状態が前記第1の状態とは異なる第2の状態で生産を行う場合を模擬した第2のモデルとを生成するモデル生成部と、
前記第1のモデルおよび前記第2のモデルを比較して、それぞれの前記機器の状態が前記運用コストに与える影響度を評価する影響度評価部と、
前記影響度に基づいて、前記複数の機器から保守処理を実施する候補を抽出する保守候補抽出部と、
を備え、
前記運用コスト解析部は、前記候補として抽出された前記機器に前記保守処理を実施した場合の前記運用コストを解析する、
解析装置。
【請求項12】
複数の既存プラントにおいて各種の保守処理を行った場合の、それぞれの既存プラントの状態変化を示す保守データを記憶する保守データ記憶部を更に備え、
前記運用価値解析部は、前記解析対象プラントに対応する前記既存プラントの前記保守データを前記保守データ記憶部から抽出し、抽出した前記保守データに基づいて前記運用価値を解析する
請求項1から
11のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項13】
前記運用価値解析部は、プラントの規模、前記成果物の種類、前記排出物の種類または使用機器の少なくとも一つに基づいて、前記解析対象プラントに類似する前記既存プラントを抽出する
請求項
12に記載の解析装置。
【請求項14】
前記解析対象プラントに対して前記保守処理を実施する場合の前記解析対象プラントの状態を示す第1状態情報と、前記保守処理を実施しない場合の前記解析対象プラントの状態を示す第2状態情報とを取得する状態取得部と、
前記解析対象プラントの状態の経時的な変化を示す変化情報を記憶する変化情報記憶部と
を更に備え、
前記運用価値解析部は、
前記第1状態情報および前記変化情報に基づいて、前記保守処理を実施する前記解析対象プラントの経時的な状態を解析し、前記経時的な状態に基づいて前記第1の運用価値を解析し、
前記第2状態情報および前記変化情報に基づいて、前記保守処理を実施しない前記解析対象プラントの経時的な状態を解析し、前記経時的な状態に基づいて前記第2の運用価値を解析する
請求項1から
13のいずれか一項に記載の解析装置。
【請求項15】
解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、前記保守処理を実施しない場合の両方について、指定した条件で前記解析対象プラントが生成する成果物
の量または質の少なくともいずれか、および
、前記成果物を生成する工程において付随的に排出される排出物の
量に依存する運用価値を解析する運用価値解析ステップ
であって、前記排出物は、前記排出物の量が多いほど前記運用価値が高くなる第1の前記排出物と、前記排出物の量が多いほど前記運用価値が低くなる第2の前記排出物とを含む、運用価値解析ステップと、
前記保守処理を実施する場合の第1の前記運用価値と、前記保守処理を実施しない場合の第2の前記運用価値とを比較する運用価値比較ステップと、
を備え、
前記排出物は物質である、
解析方法。
【請求項16】
コンピュータに、請求項
15に記載の解析方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解析装置、解析方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラントの挙動を解析する技術が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
特許文献1 特開2017-91289号公報
特許文献2 特開平11-327626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プラントを運用していると、プラントの機器等が劣化する場合がある。この場合、プラントの機器の交換または修理等の保守処理を行うことが考えられる。プラントの解析においては、プラントを保守すべきかどうかの判断材料を提供できることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様においては、解析装置を提供する。解析装置は、解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、保守処理を実施しない場合の両方について、指定した条件で解析対象プラントが生成する成果物または排出する排出物の量または質の少なくともいずれかに依存する運用価値を解析する運用価値解析部を備えてよい。解析装置は、保守処理を実施する場合の第1の運用価値と、保守処理を実施しない場合の第2の運用価値とを比較する価値比較部を備えてよい。
【0005】
本発明の第2の態様においては、解析方法を提供する。解析方法は、解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、保守処理を実施しない場合の両方について、指定した条件で解析対象プラントが生成する成果物または排出する排出物の量または質の少なくともいずれかに依存する運用価値を解析してよい。解析方法は、保守処理を実施する場合の第1の運用価値と、保守処理を実施しない場合の第2の運用価値とを比較してよい。
【0006】
本発明の第3の態様においては、コンピュータに、第2の態様に係る解析方法を実行させるためのプログラムを提供する。
【0007】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】プラントの動作を解析する解析装置100の構成例を示す。
【
図5】解析装置100の他の構成例を示す図である。
【
図6】解析装置100の他の構成例を示す図である。
【
図7】解析装置100の他の構成例を示す図である。
【
図8】保守データ記憶部50が記憶する保守データの一例を示す図である。
【
図9】解析装置100の他の構成例を示す図である。
【
図10】変化情報記憶部70が記憶する変化情報の一例を示す図である。
【
図11】解析装置100の他の構成例を示す図である。
【
図12】解析装置100の他の構成例を示す図である。
【
図13】解析対象プラントの解析方法の一例を示す図である。
【
図14】本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されうるコンピュータ1200の構成例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0010】
図1は、プラントの動作を解析する解析装置100の構成例を示す。解析装置100は、解析対象プラントに保守処理を行うべきか否かを判断するための情報を提供する。具体的には、解析装置100は、解析対象プラントに保守処理を行った場合のプラントの動作と、解析対象プラントに保守処理を行わない場合のプラントの動作とを解析する。プラントは、例えば、水処理施設、生産施設、発電施設、および、貯蔵施設等の施設の少なくとも一部である。
【0011】
本例の解析装置100は、所定のデータ処理を行うコンピュータである。コンピュータは、当該コンピュータを解析装置100の各部として機能させるためのプログラムを実行してよい。
【0012】
解析装置100は、運用価値解析部10および価値比較部20を備える。運用価値解析部10は、解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、保守処理を実施しない場合の両方について、指定した条件で解析対象プラントが生成する成果物または排出する排出物の量または質の少なくともいずれかに依存する運用価値を解析する。条件の指定は、解析装置100の使用者等により、解析前に予め設定されていてよく、解析中に適宜設定または変更されてもよい。条件は、解析対象プラントが生成する運用価値に影響を与えうる、解析対象プラントの稼働状況を指定する。条件は、解析対象プラントの稼働期間であってよい。この場合、解析装置100は、当該稼働期間内に解析対象プラントが生成する運用価値を解析する。条件は、成果物または排出物の量を指定するものであってもよい。この場合、解析装置100は、解析対象プラントが当該量の成果物または排出物を生成するのに要する期間に基づいて、運用価値を解析してよい。例えば解析装置100は、当該期間が短いほど運用価値を高く算出してよい。なお条件は、これらの例に限定されない。条件は、解析対象プラントの各機器を制御するためのパラメータを指定するものであってもよい。対象期間の始点は、例えば保守処理を実施する時点である。対象期間の終点は、解析対象プラントの運用を終了する時点であってよく、次の保守処理を実施する時点であってよく、他の任意の時点であってもよい。
【0013】
保守処理とは、解析対象プラントを構成する機器を交換または修理することを指す。保守処理は、機器の部品の交換または修理を含んでよく、機器を制御するソフトウェアの交換または更新を含んでもよい。
【0014】
成果物とは、解析対象プラントが生成すべきものを指す。成果物は、物質に限定されない。成果物は、電力または熱等のエネルギーであってもよい。成果物の一例として、水、気体、化学反応により得られる化学物質、電力等があげられる。排出物とは、成果物を生成する工程において付随的に生成されるものを指す。排出物は、物質であってよい。排出物の一例として、排水、二酸化炭素等の気体、化学反応により生じる副生成物があげられる。
【0015】
プラントの運用価値は、対象期間に生成される成果物または排出物の量または質の少なくとも一方に依存する。例えば、成果物の量がより多ければ運用価値はより高くなる。同様に、有益な排出物の量がより多ければ運用価値はより高くなり、不要な排出物の量がより多ければ運用価値はより低くなる。成果物または排出物の量とは、体積、重量、エネルギー量の少なくともいずれかであってよい。
【0016】
成果物の質とは、成果物の組成、性質等のように、製品の価値に影響を与える物理的または化学的なパラメータである。成果物の組成とは、例えば純度等である。成果物の性質とは、例えば粘度、密度、透明度等である。成果物の質は、成果物の歩留まり(例えば良品率)であってもよい。また、成果物の質は、成果物の組成または性質の分布であってもよい。例えば、組成または性質に基づいて成果物を複数のグレードに分類する場合に、成果物の質は、各グレードに分類される成果物の比率であってよい。排出物の質も同様である。
【0017】
運用価値は、成果物の量または品質に応じて、成果物を金額に換算した値であってもよい。成果物の単位数量当たりの単価は、成果物の生産時期によらず一定であってよく、生産時期によって変動してもよい。成果物の生産時期ごとの単価は、現在の市場価値に基づいて算出してよく、成果物の需要予測に基づいて算出してもよい。排出物に関しても同様である。排出物の運用価値には、排出物を処理するのに要するコストが含まれていてもよい。当該コストも、排出物の排出時期によらず一定であってよく、排出時期によって変動してもよい。
【0018】
本例の運用価値解析部10は、第1価値解析部11と、第2価値解析部12とを有する。第1価値解析部11は、解析対象プラントに保守処理を実施した場合の第1の運用価値を解析する。第2価値解析部12は、解析対象プラントに保守処理を実施しない場合の第2の運用価値を解析する。それぞれの価値解析部は、所定のシミュレーションモデルを用いて、解析対象プラントに保守処理を実施した場合のプラントの動作と、保守処理を実施しない場合のプラントの動作を解析してよい。シミュレーションモデルは、成果物または排出物の質または量の少なくともいずれかを解析できる公知のモデルを用いてよい。
【0019】
第2価値解析部12には、プラント情報が入力されてよい。当該情報は、解析装置100の使用者が入力してよく、解析対象プラントから自動的に取得してもよい。プラント情報は、解析対象プラントの第2の運用価値を解析するための情報である。解析対象プラントが稼働中のプラントの場合、プラント情報は、解析対象プラントの現在の運用価値を示す情報であってよい。例えばプラント情報は、解析対象プラントが現在生成している、または、生成可能な成果物または排出物の質または量の情報を含んでよい。プラント情報は、解析対象プラントに投入されている原料の量等の情報を含んでよく、電力消費量等の情報を含んでよい。プラント情報は、解析対象プラントのシミュレーションモデルを生成するための情報であってもよい。プラント情報は、プラントの各構成機器の種類、性能、品番、接続関係に関する情報が含まれてよい。プラント情報は、解析対象プラントに設けられた温度センサ、圧力センサ等の各センサの計測値を含んでよい。プラント情報は、配管計装図(P&ID)または、機器および配管等の設備の配置を示すCADデータ等の情報を含んでよい。
【0020】
第2価値解析部12は、プラント情報に基づいて、解析時点以降の解析対象プラントを模擬する第2シミュレーションモデルを構築してよい。プラント情報には、解析時点における、各構成機器の性能を示す情報が含まれてもよい。これにより、解析時点以降におけるプラントの特性を模擬した第2シミュレーションモデルを構築できる。プラント情報には、プラントの構築時における各構成機器の性能の初期値を示す初期値情報と、プラントの稼働履歴を示す履歴情報とが含まれてもよい。第2価値解析部12は、初期値情報、解析時点での各構成機器の性能、および履歴情報から、解析時点以降におけるプラントの特性を模擬した第2シミュレーションモデルを構築してもよい。第2価値解析部12には、プラントの稼働履歴により、プラントの各機器がどのように劣化するかをシミュレーションするための、各機器の劣化モデルが与えられてよい。
【0021】
第1価値解析部11には、保守情報およびプラント情報が入力されてよい。当該情報は、解析装置100の使用者が入力してよい。保守情報は、解析対象プラントに行う保守の内容を示す情報である。保守情報は、保守の時期、保守対象の機器、保守後の当該機器の性能の情報を含んでよい。第1価値解析部11は、プラント情報および保守情報に基づいて、解析対象プラントを保守した場合の第1シミュレーションモデルを構築する。第1価値解析部11は、第2価値解析部12が構築した第2シミュレーションモデルに対して、保守対象の機器の性能を保守情報に基づいて変更したモデルを構築してよい。
【0022】
第1価値解析部11は、第1シミュレーションモデルに基づいて、保守処理を実施する場合の第1の運用価値を算出する。第2価値解析部12は、第2シミュレーションモデルに基づいて、保守処理を実施しない場合の第2の運用価値を算出する。
【0023】
価値比較部20は、第1の運用価値と、第2の運用価値とを比較する。運用価値の比較とは、2つの運用価値を用いて何らかの情報処理を行うことを指す。価値比較部20は、第1の運用価値と第2の運用価値の差分を算出してよく、第1の運用価値と第2の運用価値とを同時または順番に表示する表示画面を生成してもよい。
【0024】
図2は、運用価値の一例を示す図である。
図2の横軸は時間を示し、縦軸は単位稼働時間当たりのプラントの運用価値を示している。例えば縦軸は、プラントが1時間、1日、1か月等の単位時間稼働した場合の運用価値を示している。プラントを運用していると、機器の劣化等により生産量、生産効率等が減少する場合がある。この場合、
図2に示すように、プラントの単位稼働時間当たりの運用価値は徐々に減少する。
【0025】
所定の保守時期においてプラントの保守を行うと、運用価値が向上する。例えば、成果物の質または量の少なくとも一方が改善することで、運用価値が向上する。
図2においては、保守時期以降において、保守処理を行った場合の第1の運用価値を実線で示し、保守処理を行わない場合の第2の運用価値を破線で示している。
【0026】
価値比較部20は、第1の運用価値と、第2の運用価値との差分を算出してよい。また、価値比較部20は、所定の期間における当該差分を積分してよい。当該積分値が、保守処理を行ったことによる、運用価値の増大分に対応する。価値比較部20は、
図2に示すような情報を表示してもよい。
【0027】
図3は、解析装置100の動作例を示す図である。本例の第1価値解析部11は、複数の種類の保守処理について、保守処理を行った場合の運用価値を算出する。それぞれの保守処理の種類とは、保守処理の内容であってよい。例えば、保守処理の内容とは、保守対象の機器、交換後の機器の種類または性能、修理後の機器の性能等である。価値比較部20は、それぞれの保守処理の運用価値と、保守処理をしない場合の運用価値とを比較する。
【0028】
図4は、解析装置100の動作例を示す図である。本例の第1価値解析部11は、複数の保守時期において、保守処理を行った場合の運用価値を算出する。また、第1価値解析部11は、それぞれの保守時期において、複数種類の保守処理に対して運用価値を算出してもよい。つまり、第1価値解析部11は、
図3に示した処理と、
図4に示した処理とを組み合わせてもよい。
【0029】
図5は、解析装置100の他の構成例を示す図である。本例の解析装置100は、
図1に示した構成に比べて、保守価値算出部30を更に備える。保守価値算出部30は、第1の運用価値および第2の運用価値の差分と、保守処理の費用とに基づいて、保守処理の価値を算出する。保守費用は、使用者等から入力された値を用いてよく、価値比較部20が、保守内容に基づいて算出してもよい。また、保守処理の費用は、保守内容ごとに、価値比較部20に予め設定されていてもよい。
【0030】
価値比較部20は、それぞれの保守処理による運用価値の増大分から、保守費用を減算した値を、保守価値として算出してよい。上述したように、運用価値の増大分とは、単位稼働時間当たりの第1の運用価値および第2の運用価値の差分を、所定の期間内で積分した値である。
【0031】
また、
図3に示した例では、価値比較部20は、保守処理の種類毎に、保守価値を算出してよい。価値比較部20は、保守価値が最大となる保守処理の種類を検出して、利用者に提示してよい。
【0032】
また、
図4に示した例では、価値比較部20は、保守処理の時期毎に、保守価値を算出してよい。価値比較部20は、保守価値が最大となる保守時期を検出して、利用者に提示してよい。
【0033】
また、価値比較部20は、保守処理の種類および保守処理の時期の組み合わせ毎に、保守価値を算出してよい。価値比較部20は、保守価値が最大となる保守処理の種類および保守時期の組み合わせを検出して、利用者に提示してよい。
【0034】
図6は、解析装置100の他の構成例を示す図である。本例の解析装置100は、
図5に示した例に対して、運用コスト解析部40を更に備える。運用コスト解析部40は、解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、保守処理を実施しない場合の両方について、指定された条件における解析対象プラントの運用コストを解析する。当該条件は、運用価値を解析するときに指定される条件と同様である。運用コストは、プラントの運用に伴う投入材料のコストおよび消費エネルギーのコスト等の、プラントを運用するのに要するコストである。
【0035】
運用コスト解析部40には、解析対象プラントの構造、機器の状態等を示すプラント情報と、保守内容を示す保守情報とが入力されてよい。プラントの機器を交換または修理した場合、消費エネルギー、および、投入材料の量に対する成果物の量または質が変動し得る。運用コスト解析部40は、保守情報およびプラント情報に基づいて、これらの変動を解析する。運用コスト解析部40は、保守処理を実施する場合の第1の運用コストと、保守処理を実施しない場合の第2の運用コストを算出してよい。第2の運用コストは、現段階での解析対象プラントの運用コストの実績値であってよく、運用コストの過去の履歴に基づいて推測した推定値であってもよい。運用コストの推定値は、稼働時期によらず一定値を用いてよく、稼働時期に応じた上昇する値を用いてもよい。稼働時期に応じた運用コストの上昇は、当該プラントの運用コストの過去の履歴から推定してよく、他の既存プラントの実績から推定してもよい。運用コスト解析部40は、他の既存プラントの実績データを有してよい。
【0036】
第1の運用コストは、第2の運用コストに対して、保守処理を行ったことによる変動分を加減算したコストであってよい。運用コスト解析部40は、保守情報に基づいて、プラントの各機器の性能の上昇を推定し、性能の上昇に基づいて、運用コストの変動分を算出してよい。運用コスト解析部40は、既存プラントにおいて類似の保守処理を行った場合の運用コストの変動の実績値に基づいて、運用コストの変動分を算出してもよい。運用コスト解析部40は、他の既存プラントの実績データを有してよい。
【0037】
保守価値算出部30は、運用コストの変動に基づいて、保守価値を算出する。本例の保守価値算出部30は、保守処理を行ったことによる運用価値の増大分と、運用コストの変動分とを加減算し、保守費用を減算することで保守価値を算出してよい。
図5において説明したように、保守価値算出部30は、保守処理の種類、および、保守時期ごとに、保守価値を算出してよい。保守価値算出部30は、保守価値を最大化する保守処理の種類および保守時期を検出して、利用者に提示してよい。これにより、運用コストを考慮した保守価値を解析できる。
【0038】
図7は、解析装置100の他の構成例を示す図である。本例の解析装置100は、
図1から
図6において説明した解析装置100の構成に加えて、保守データ記憶部50を更に備える。保守データ記憶部50以外の構成は、
図1から
図6において説明したいずれかの解析装置100と同一である。
【0039】
保守データ記憶部50は、複数の既存プラントにおいて各種の保守処理を行った場合の、それぞれの既存プラントの状態変化の実績値を示す保守データを記憶する。状態変化とは、成果物または排出物の量または質の変化、もしくは、運用コストの変化のうちの少なくとも一つであってよく、これらを推定するためのパラメータの変化であってもよい。例えば状態変化は、保守対象の機器の性能の変化であってよい。機器の性能とは、単位時間当たりの処理量、生成物の質等であってよい。保守データ記憶部50が記憶した運用コストに関する情報は、運用コスト解析部40にも入力されてよい。
【0040】
第1価値解析部11は、解析対象プラントに対応する既存プラントの保守データを保守データ記憶部50から抽出し、抽出した保守データに基づいて、第1の運用価値を解析する。第1価値解析部11は、解析対象プラントの構造に最も近い既存プラントの保守データを抽出してよく、保守内容が最も近い保守データを抽出してもよい。解析対象プラントの構造とは、解析対象プラントに含まれる機器の種類、性能、接続関係等である。
【0041】
図8は、保守データ記憶部50が記憶する保守データの一例を示す図である。保守データ記憶部50は、プラントの構造を示すプラントモデル、行った保守の内容を示す保守種類、保守処理前のプラントの特性を示す保守前特性、および、保守処理後のプラントの特性を示す保守後特性を対応付けて記憶する。
【0042】
プラントモデルは、例えばP&ID等の情報を含む。プラントモデルは、プラントの規模、成果物の種類、排出物の種類または使用機器の少なくとも一つの情報を含んでよい。プラントモデルは、プラントの設置場所における温度、湿度、雨量等の、プラントの稼働環境を示す情報を含んでもよい。保守前特性および保守後特性は、上述した状態変化を示す情報である。上述したように、当該特性は、成果物または排出物の量または質の変化、もしくは、運用コストの少なくとも一つであってよく、これらを推定するためのパラメータであってもよい。
【0043】
第1価値解析部11は、解析対象プラントと、保守データのそれぞれのプラントモデルとの類似度を算出してよい。類似度は、プラントの規模、成果物の種類、排出物の種類、使用機器の種類、個数、接続関係が一致しているほど高く算出される。プラントモデルは、プラントの一部分の構造を示すモデルであってもよい。この場合、保守前特性および保守後特性は、当該部分の特性であってよい。また、第1価値解析部11は、解析対象プラントの保守対象の部分との類似度が最も高いプラントモデルを抽出してよい。
【0044】
第1価値解析部11は、解析対象プラントに対する保守種類と対応する保守データを選択してよい。保守処理は、保守内容に応じて予め複数の保守種類に分類されていてよい。保守種類は、例えば交換、修理、洗浄等であってよい。第1価値解析部11は、プラントモデルの類似度が所定値以上であり、且つ、保守種類が一致する保守データを抽出してよい。第1価値解析部11は、抽出した保守データに示される保守前後の特性に基づいて、第1の運用価値を解析する。これにより、既存プラントの実績データに基づいて、解析対象プラントを解析できる。
【0045】
図9は、解析装置100の他の構成例を示す図である。本例の解析装置100は、
図1から
図8において説明した解析装置100の構成に加えて、状態取得部60および変化情報記憶部70を更に備える。他の構造は、
図1から
図8において説明したいずれかの解析装置100と同一である。
【0046】
状態取得部60は、解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合の解析対象プラントの状態を示す第1状態情報と、保守処理を実施しない場合の解析対象プラントの状態を示す第2状態情報とを取得する。状態情報は、プラントの各機器の流量等の特性を示す情報、プラントの機器群の特性を示す情報、または、プラント全体の特性を示す情報であってよい。第1状態情報は、
図1から
図8において説明したプラント情報および保守情報を含んでよい。第2状態情報は、プラント情報を含んでよい。
【0047】
変化情報記憶部70は、解析対象プラントの状態の経時的な変化を示す変化情報を記憶する。変化情報記憶部70は、解析対象プラントの稼働条件ごとに、変化情報を記憶してよい。変化情報記憶部70は、解析対象プラントの稼働条件に基づいて、変化情報を補正してもよい。変化情報記憶部70は、既存プラントの構造および稼働条件と、プラントの状態の経時的な変化の実績値とを対応付けて記憶してもよい。
【0048】
稼働条件は、単位時間当たりに投入する材料の量、単位時間当たりの成果物または排出物の量、各機器の圧力、流量、温度、プラントの設置場所における温度、湿度、雨量等を含んでよい。稼働条件は、各機器に入力される制御情報を含んでよい。制御情報とは、機器の動作を制御するために各機器に入力する制御データを含んでよい。例えば制御データは、バルブの開度等を制御するデータである。
【0049】
第1価値解析部11は、第1状態情報および変化情報に基づいて、保守処理を実施する場合の解析対象プラントの所定期間内における経時的な状態を解析し、経時的な状態に基づいて第1の運用価値を解析する。第1価値解析部11は、第1状態情報に示される各パラメータを初期値とし、各パラメータを変化情報に応じて経時的に変化させることで、解析対象プラントの経時的な状態を解析する。
【0050】
第2価値解析部12は、第2状態情報および変化情報に基づいて、保守処理を実施しない場合の解析対象プラントの所定期間内における経時的な状態を解析し、経時的な状態に基づいて第2の運用価値を解析する。第2価値解析部12は、第2状態情報に示される各パラメータを初期値とし、各パラメータを変化情報に応じて経時的に変化させることで、解析対象プラントの経時的な状態を解析する。本例によれば、保守処理を行った後の、プラントの経時的な劣化等を考慮して、運用価値を算出できる。
【0051】
図10は、変化情報記憶部70が記憶する変化情報の一例を示す図である。本例の変化情報記憶部70は、プラントモデルと、稼働条件と、変化情報とを対応付けて記憶する。変化情報記憶部70は、既存プラントの実績データを記憶してよい。運用価値解析部10は、解析対象プラントの構造とプラントモデルとの類似度を算出し、類似度が所定値以上の変化情報を抽出してよい。運用価値解析部10は、解析対象プラントに対して、稼働条件の類似度が所定値以上となる変化情報を抽出してもよい。
【0052】
図11は、解析装置100の他の構成例を示す図である。本例の解析装置100は、
図1から
図10において説明した解析装置100の構成に加えて、モデル生成部80、影響度評価部82、および、保守候補抽出部84を更に備える。他の構造は、
図1から
図10において説明したいずれかの解析装置100と同一である。
【0053】
モデル生成部80は、解析対象プラントを構成する複数の機器の状態が第1の状態で生産を行う場合を模擬した第1のモデルと、複数の機器の状態が第1の状態とは異なる第2の状態で生産を行う場合を模擬した第2のモデルとを生成する。機器の状態とは、機器の性能であってよい。各モデルは、各機器の動作を模擬するシミュレーションモデルであってよい。第1のモデルと第2のモデルとでは、一つまたは複数の機器の状態が異なっている。例えば当該機器は、同一の制御値を入力した場合でも、動作結果が第1のモデルと第2のモデルとで異なる。
【0054】
影響度評価部82は、第1のモデルおよび第2のモデルを比較して、それぞれの機器の状態が運用価値に与える影響度を評価する。影響度評価部82は、第1のモデルおよび第2のモデルのそれぞれについて、プラントの動作をシミュレートして、運用価値を算出してよい。第1のモデルおよび第2のモデルの運用価値の差分から、第1のモデルおよび第2のモデルで状態が異なるように設定された機器の、運用価値に与える影響度を評価できる。
【0055】
モデル生成部80は、モデル間で状態を相違させる機器を変化させた、複数の第2のモデルを生成してよい。影響度評価部82は、第1のモデルと、それぞれの第2のモデルとを比較する。これにより、それぞれの機器が運用価値に与える影響度を評価できる。
【0056】
また、モデル生成部80は、モデル間における状態の相違度合いを変化させた、複数の第2のモデルを生成してよい。影響度評価部82は、第1のモデルと、それぞれの第2のモデルとを比較する。これにより、それぞれの機器の状態変化の度合いが、運用価値に与える影響度を評価できる。
【0057】
保守候補抽出部84は、影響度評価部82における評価結果に基づいて、解析対象プラントにおいて保守候補となる1つ以上の機器を抽出する。保守候補抽出部84は、運用価値への影響度が大きい機器から順番に、1つ以上の機器を保守候補として抽出してよい。
【0058】
第1価値解析部11は、保守候補抽出部84が抽出した機器に対して、所定の保守処理を実施した場合の第1の運用価値を算出する。保守処理の内容は、保守情報により指定されてよく、機器毎に予め設定されていてもよい。複数の機器が抽出されている場合、第1価値解析部11は、機器毎に第1の運用価値を算出してよい。本例によれば、保守すべき機器の候補を抽出して、当該機器を保守した場合の効果を利用者に提示できる。
【0059】
一例として、第1の状態は理想的な生産が行われた場合の状態を示す。つまり、第1の状態は、プラントの各機器の特性が、機器の仕様値等の初期値から変動しない状態である。第2の状態は、例えば現実の生産状況を模した状態である。第2の状態では、各機器の特性が初期値から変動している。第2の状態は、既存のプラントの状態の実測値であってよい。この場合、第2の状態に対する運用価値は、当該プラントの運用価値の実測値であってよい。つまり、第2のモデルは、既存プラントの実績値から生成してよい。
【0060】
保守候補抽出部84は、第1の状態および第2の状態の運用価値の差分から、運用価値に影響を与える機器または機器群を抽出できる。価値比較部20は、保守すべき機器の候補と、当該機器を保守した場合の運用価値の変化を出力してよい。価値比較部20は、保守すべき機器の候補と、運用価値の変化、運用コストの変化、および、保守コストを出力してもよい。
【0061】
図12は、解析装置100の他の構成例を示す図である。本例の解析装置100は、
図7において説明した解析装置100の構成に加えて、モデル生成部80、影響度評価部82、および、保守候補抽出部84を更に備える。他の構造は、
図7において説明したいずれかの解析装置100と同一である。また、モデル生成部80、影響度評価部82、および、保守候補抽出部84の機能は、
図11の例と同様である。
【0062】
ただし、影響度評価部82は、第1のモデルおよび第2のモデルを比較して、それぞれの機器の状態が運用コストに与える影響度を評価する。影響度評価部82は、第1のモデルおよび第2のモデルのそれぞれについて、プラントの動作をシミュレートして、運用コストを算出してよい。第1のモデルおよび第2のモデルの運用コストの差分から、第1のモデルおよび第2のモデルで状態が異なるように設定された機器の、運用コストに与える影響度を評価できる。
【0063】
保守候補抽出部84は、影響度評価部82が算出した影響度に基づいて、保守処理を実施する候補となる機器を抽出する。運用コスト解析部40は、候補として抽出された機器に保守処理を実施した場合の運用コストを解析する。また、第1価値解析部11は、候補として抽出された機器に保守処理を実施した場合の運用価値を解析する。本例によれば、運用コストへの影響に基づいて保守対象の機器の候補を抽出できる。
【0064】
図13は、解析対象プラントの解析方法の一例を示す図である。解析方法における各処理は、
図1から
図12において説明した解析装置100の動作と同様である。
【0065】
まず、運用価値解析部10により、解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、保守処理を実施しない場合の両方について、指定される条件で解析対象プラントが生成する成果物または排出する排出物の量または質の少なくともいずれかに依存する運用価値を解析する(S1301)。
【0066】
次に、価値比較部20により、保守処理を実施する場合の第1の運用価値と、保守処理を実施しない場合の第2の運用価値とを比較する(S1302)。解析方法においては、
図13に示す処理の他、
図1から
図12において説明した処理を行ってよい。
【0067】
図14は、本発明の複数の態様が全体的または部分的に具現化されうるコンピュータ1200の構成例を示す。コンピュータ1200にインストールされたプログラムは、コンピュータ1200に、本発明の実施形態に係る装置に関連付けられるオペレーション又は当該装置の1又は複数の「部」として機能させ、又は当該オペレーション又は当該1又は複数の「部」を実行させることができ、及び/又はコンピュータ1200に、本発明の実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階を実行させることができる。このようなプログラムは、コンピュータ1200に、本明細書に記載のフローチャート及びブロック図のブロックのうちのいくつか又はすべてに関連付けられた特定のオペレーションを実行させるべく、CPU1212によって実行されてよい。また、本発明の実施形態に係るプロセス又は当該プロセスの段階は、クラウド上で実行されてもよい。
【0068】
本実施形態によるコンピュータ1200は、CPU1212、RAM1214、グラフィックコントローラ1216、及びディスプレイデバイス1218を含み、これらはホストコントローラ1210によって相互に接続される。コンピュータ1200はまた、通信インターフェイス1222、ハードディスクドライブ1224、DVD-ROMドライブ1226、及びICカードドライブのような入出力ユニットを含み、これらは入出力コントローラ1220を介してホストコントローラ1210に接続される。コンピュータはまた、ROM1230及びキーボード1242のようなレガシの入出力ユニットを含み、これらは入出力チップ1240を介して入出力コントローラ1220に接続される。
【0069】
CPU1212は、ROM1230及びRAM1214内に格納されたプログラムに従い動作し、これにより各ユニットを制御する。グラフィックコントローラ1216は、RAM1214内に提供されるフレームバッファ等又は当該グラフィックコントローラ1216自体の中に、CPU1212によって生成されるイメージデータを取得し、イメージデータがディスプレイデバイス1218上に表示させる。
【0070】
通信インターフェイス1222は、ネットワークを介して他の電子デバイスと通信する。ハードディスクドライブ1224は、コンピュータ1200内のCPU1212によって使用されるプログラム及びデータを格納する。DVD-ROMドライブ1226は、プログラム又はデータをDVD-ROM1201から読み取り、ハードディスクドライブ1224にRAM1214を介してプログラム又はデータを提供する。ICカードドライブは、プログラム及びデータをICカードから読み取り、及び/又はプログラム及びデータをICカードに書き込む。
【0071】
ROM1230は、内部に、アクティブ化時にコンピュータ1200によって実行されるブートプログラム等、及び/又はコンピュータ1200のハードウェアに依存するプログラムを格納する。入出力チップ1240はまた、様々な入出力ユニットをパラレルポート、シリアルポート、キーボードポート、マウスポート等を介して、入出力コントローラ1220に接続してよい。
【0072】
プログラムが、DVD-ROM1201又はICカードのようなコンピュータ可読記憶媒体によって提供される。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体から読み取られ、コンピュータ可読記憶媒体の例でもあるハードディスクドライブ1224、RAM1214、又はROM1230にインストールされ、CPU1212によって実行される。これらのプログラム内に記述される情報処理は、コンピュータ1200に読み取られ、プログラムと、上記様々なタイプのハードウェアリソースとの間の連携をもたらす。装置又は方法が、コンピュータ1200の使用に従い情報のオペレーション又は処理を実現することによって構成されてよい。
【0073】
例えば、通信がコンピュータ1200及び外部デバイス間で実行される場合、CPU1212は、RAM1214にロードされた通信プログラムを実行し、通信プログラムに記述された処理に基づいて、通信インターフェイス1222に対し、通信処理を命令してよい。通信インターフェイス1222は、CPU1212の制御の下、RAM1214、ハードディスクドライブ1224、DVD-ROM1201、又はICカードのような記録媒体内に提供される送信バッファ領域に格納された送信データを読み取り、読み取られた送信データをネットワークに送信し、又はネットワークから受信した受信データを記録媒体上に提供される受信バッファ領域等に書き込む。
【0074】
また、CPU1212は、ハードディスクドライブ1224、DVD-ROMドライブ1226(DVD-ROM1201)、ICカード等のような外部記録媒体に格納されたファイル又はデータベースの全部又は必要な部分がRAM1214に読み取られるようにし、RAM1214上のデータに対し様々なタイプの処理を実行してよい。CPU1212は次に、処理されたデータを外部記録媒体にライトバックしてよい。
【0075】
様々なタイプのプログラム、データ、テーブル、及びデータベースのような、様々なタイプの情報が、情報処理されるべく、記録媒体に格納されてよい。CPU1212は、RAM1214から読み取られたデータに対し、本開示の随所に記載され、プログラムの命令シーケンスによって指定される様々なタイプのオペレーション、情報処理、条件判断、条件分岐、無条件分岐、情報の検索/置換等を含む、様々なタイプの処理を実行してよく、結果をRAM1214に対しライトバックする。また、CPU1212は、記録媒体内のファイル、データベース等における情報を検索してよい。例えば、各々が第2の属性の属性値に関連付けられた第1の属性の属性値を有する複数のエントリが記録媒体内に格納される場合、CPU1212は、当該複数のエントリの中から、第1の属性の属性値が指定されている条件に一致するエントリを検索し、当該エントリ内に格納された第2の属性の属性値を読み取り、これにより所定の条件を満たす第1の属性に関連付けられた第2の属性の属性値を取得してよい。
【0076】
以上の説明によるプログラム又はソフトウェアモジュールは、コンピュータ1200上又はコンピュータ1200近傍のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてよい。また、専用通信ネットワーク又はインターネットに接続されたサーバシステム内に提供されるハードディスク又はRAMのような記録媒体が、コンピュータ可読記憶媒体として使用可能であり、これにより、プログラムをコンピュータ1200にネットワークを介して提供する。
【0077】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0078】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
[項目1]
解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、前記保守処理を実施しない場合の両方について、指定した条件で前記解析対象プラントが生成する成果物または排出する排出物の量または質の少なくともいずれかに依存する運用価値を解析する運用価値解析部と、
前記保守処理を実施する場合の第1の前記運用価値と、前記保守処理を実施しない場合の第2の前記運用価値とを比較する価値比較部と、
を備える解析装置。
[項目2]
前記運用価値解析部は、前記成果物の質に依存する前記運用価値を解析する、項目1に記載の解析装置。
[項目3]
前記運用価値解析部は、前記排出物の量に依存する前記運用価値を解析する、項目1に記載の解析装置。
[項目4]
前記運用価値解析部は、前記解析対象プラントの単位稼働時間当たりの前記運用価値を算出する、項目1から3のいずれか一項に記載の解析装置。
[項目5]
前記第1の運用価値および前記第2の運用価値の差分と、前記保守処理の費用とに基づいて、前記保守処理の価値を算出する保守価値算出部を更に備える、項目1から4のいずれか一項に記載の解析装置。
[項目6]
前記解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、前記保守処理を実施しない場合の両方について、指定した条件における前記解析対象プラントの運用コストを解析する運用コスト解析部を更に備え、
前記保守価値算出部は、前記保守処理を実施する場合の第1の前記運用コストと、前記保守処理を実施しない場合の第2の前記運用コストとの差分に更に基づいて、前記保守処理の価値を算出する、
項目5に記載の解析装置。
[項目7]
前記保守価値算出部は、前記保守処理の価値を最大化する前記保守処理の時期を算出する、項目5または6に記載の解析装置。
[項目8]
複数の既存プラントにおいて各種の保守処理を行った場合の、それぞれの既存プラントの状態変化を示す保守データを記憶する保守データ記憶部を更に備え、
前記運用価値解析部は、前記解析対象プラントに対応する前記既存プラントの前記保守データを前記保守データ記憶部から抽出し、抽出した前記保守データに基づいて前記運用価値を解析する、
項目1から7のいずれか一項に記載の解析装置。
[項目9]
前記運用価値解析部は、プラントの規模、前記成果物の種類、前記排出物の種類または使用機器の少なくとも一つに基づいて、前記解析対象プラントに類似する前記既存プラントを抽出する、項目8に記載の解析装置。
[項目10]
前記解析対象プラントに対して前記保守処理を実施する場合の前記解析対象プラントの状態を示す第1状態情報と、前記保守処理を実施しない場合の前記解析対象プラントの状態を示す第2状態情報とを取得する状態取得部と、
前記解析対象プラントの状態の経時的な変化を示す変化情報を記憶する変化情報記憶部と、
を更に備え、
前記運用価値解析部は、
前記第1状態情報および前記変化情報に基づいて、前記保守処理を実施する前記解析対象プラントの経時的な状態を解析し、前記経時的な状態に基づいて前記第1の運用価値を解析し、
前記第2状態情報および前記変化情報に基づいて、前記保守処理を実施しない前記解析対象プラントの経時的な状態を解析し、前記経時的な状態に基づいて前記第2の運用価値を解析する、
項目1から9のいずれか一項に記載の解析装置。
[項目11]
前記解析対象プラントを構成する複数の機器の状態が第1の状態で生産を行う場合を模擬した第1のモデルと、前記複数の機器の状態が前記第1の状態とは異なる第2の状態で生産を行う場合を模擬した第2のモデルとを生成するモデル生成部と、
前記第1のモデルおよび前記第2のモデルを比較して、それぞれの前記機器の状態が前記運用価値に与える影響度を評価する影響度評価部と、
前記影響度に基づいて、前記複数の機器から保守処理を実施する候補を抽出する保守候補抽出部と、
を更に備え、
前記運用価値解析部は、前記候補として抽出された前記機器に前記保守処理を実施した場合の前記第1の運用価値を解析する、
項目1から10のいずれか一項に記載の解析装置。
[項目12]
前記解析対象プラントを構成する複数の機器の状態が第1の状態で生産を行う場合を模擬した第1のモデルと、前記複数の機器の状態が前記第1の状態とは異なる第2の状態で生産を行う場合を模擬した第2のモデルとを生成するモデル生成部と、
前記第1のモデルおよび前記第2のモデルを比較して、それぞれの前記機器の状態が前記運用コストに与える影響度を評価する影響度評価部と、
前記影響度に基づいて、前記複数の機器から保守処理を実施する候補を抽出する保守候補抽出部と、
を更に備え、
前記運用コスト解析部は、前記候補として抽出された前記機器に前記保守処理を実施した場合の前記運用コストを解析する、
項目6に記載の解析装置。
[項目13]
解析対象プラントに対して保守処理を実施する場合と、前記保守処理を実施しない場合の両方について、指定した条件で前記解析対象プラントが生成する成果物または排出する排出物の量または質の少なくともいずれかに依存する運用価値を解析し、
前記保守処理を実施する場合の第1の前記運用価値と、前記保守処理を実施しない場合の第2の前記運用価値とを比較する、
を備える解析方法。
[項目14]
コンピュータに、項目13に記載の解析方法を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0079】
10 運用価値解析部、11 第1価値解析部、12 第2価値解析部、20 価値比較部、30 保守価値算出部、40 運用コスト解析部、50 保守データ記憶部、60 状態取得部、70 変化情報記憶部、80 モデル生成部、82 影響度評価部、84 保守候補抽出部、100 解析装置、1200 コンピュータ、1201 DVD-ROM、1210 ホストコントローラ、1212 CPU、1214 RAM、1216 グラフィックコントローラ、1218 ディスプレイデバイス、1220 入出力コントローラ、1222 通信インターフェイス、1224 ハードディスクドライブ、1226 DVD-ROMドライブ、1230 ROM、1240 入出力チップ、1242 キーボード