(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】光センサ
(51)【国際特許分類】
G01J 1/02 20060101AFI20240130BHJP
H10N 10/851 20230101ALI20240130BHJP
H10N 10/00 20230101ALI20240130BHJP
H10N 10/01 20230101ALI20240130BHJP
H10N 10/17 20230101ALI20240130BHJP
【FI】
G01J1/02 C
H10N10/851
H10N10/00 S
H10N10/01
H10N10/17 A
(21)【出願番号】P 2021530581
(86)(22)【出願日】2020-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2020024591
(87)【国際公開番号】W WO2021006034
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2019125867
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】足立 真寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 喜之
(72)【発明者】
【氏名】藤井 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】三橋 史典
【審査官】蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-527644(JP,A)
【文献】特開2007-309796(JP,A)
【文献】特開2015-169533(JP,A)
【文献】特開2012-215531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-1/60、5/00-5/90
H10N 10/00-10/857
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光センサであって、
支持層と、
熱エネルギーを電気エネルギーに変換する帯状の複数の第1材料層および導電性を有する帯状の複数の第2材料層を含み、前記支持層の一方の主面上に配置される熱電変換材料部と、
前記支持層の他方の主面上であって、前記支持層の外縁に沿って配置される環状のヒートシンクと、
前記支持層の厚さ方向に見て前記ヒートシンクの内縁に取り囲まれた領域において、前記第1材料層の長手方向に温度差を形成するよう配置され、受けた光を熱エネルギーに変換する光吸収膜と、を備え、
各前記第1材料層は、
長手方向において一方に位置する第1の端部を含む第1領域と、
長手方向において他方に位置する第2の端部を含む第2領域と、を含み、
各前記第2材料層は、
長手方向において一方に位置する第3の端部を含む第3領域と、
長手方向において他方に位置する第4の端部を含み、前記第2領域と接続される第4領域と、を含み、
前記光センサは、
前記第1領域と電気的に接続される第1電極と、
前記第1電極と離隔して配置され、前記第3領域と電気的に接続される第2電極と、をさらに備え、
前記複数の第1材料層および前記複数の第2材料層はそれぞれ、前記第1電極と接続される前記第1領域および前記第2電極と接続される前記第3領域を除いて、前記第1領域と前記第3領域とが接続され、前記第2領域と前記第4領域とが接続されるよう交互に配置され、
前記光吸収膜は、
前記支持層の厚さ方向に見て、第1外縁と、前記第1外縁に第1頂点において接続される第2外縁と、を含み、
前記第3領域と接続される第1領域であって、前記第1頂点の周辺に配置される第1領域の少なくとも一つの第1領域を頂点第1領域とすると、前記頂点第1領域は、前記支持層の厚さ方向に見て、前記光吸収膜の外縁と前記ヒートシンクの内縁との間の領域に配置され、
前記第3領域と接続される第1領域であって、前記第1外縁を横切る第1材料層の第1領域のうち少なくとも一つの第1領域を外縁第1領域とすると、前記外縁第1領域は、前記支持層の厚さ方向に見て、前記内縁よりも外側に配置される、光センサ。
【請求項2】
前記光吸収膜は、前記支持層の厚さ方向に見て、前記第1外縁と、前記第2外縁とによって規定され、前記支持層の外縁に向かって凸状の第1角部を含む、請求項1に記載の光センサ。
【請求項3】
前記第1領域は、前記第1頂点から見て前記第1外縁とは反対側に延びる前記第1外縁の延長線と前記第1頂点から見て前記第2外縁とは反対側に延びる前記第2外縁の延長線によって挟まれる領域に配置される、請求項2に記載の光センサ。
【請求項4】
前記第1材料層の長さは、前記第1頂点から前記第1頂点と最短距離にある前記ヒートシンクの内縁までの距離の10%以上120%以下である、請求項2または請求項3に記載の光センサ。
【請求項5】
前記支持層の厚さ方向に見て、前記第1角部の角度は、90度以下である、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項6】
前記光吸収膜の外縁の形状は、前記支持層の厚さ方向に見て、角度が90度以下であって前記支持層の外縁に向かって凸状の複数の角部を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項7】
前記第2領域と前記第4領域とが接続される各接続部は、前記支持層の厚さ方向に見て前記光吸収膜と重なり、
隣り合う前記各接続部を仮想の線分で結んで形成される図形の形状は、前記支持層の厚さ方向に見て前記光吸収膜の外縁に沿う形状である、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項8】
前記第1材料層および前記第2材料層の少なくともいずれか一方は、半導体で構成される、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項9】
前記第1材料層および前記第2材料層は、共に半導体で構成されており、
前記第2材料層は、前記第1材料層と導電型が異なり、前記第3領域と前記第4領域との間の温度差を電気エネルギーに変換する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の光センサ。
【請求項10】
前記第1材料層は、SiおよびGeを母材元素として含む半導体で構成される、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の光センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光センサに関するものである。
【0002】
本出願は、2019年7月5日出願の日本出願第2019-125867号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
温度差(熱エネルギー)を電気エネルギーに変換する熱電変換材料を用いたサーモパイル型の赤外線センサに関する技術が知られている(たとえば特許文献1参照)。赤外線センサは、光エネルギーを熱エネルギーに変換する受光部と、温度差(熱エネルギー)を電気エネルギーに変換する熱電変換部(サーモパイル)とを備える。熱電変換部においては、p型熱電変換材料とn型熱電変換材料とを接続して形成される熱電対が用いられる。複数のp型熱電変換材料と複数のn型熱電変換材料とを交互に直列で接続することにより、出力を増加させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示に従った光センサは、支持層と、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する帯状の複数の第1材料層および導電性を有する帯状の複数の第2材料層を含み、支持層の一方の主面上に配置される熱電変換材料部と、支持層の他方の主面上であって、支持層の外縁に沿って配置される環状のヒートシンクと、支持層の厚さ方向に見てヒートシンクの内縁に取り囲まれた領域において、第1材料層の長手方向に温度差を形成するよう配置され、受けた光を熱エネルギーに変換する光吸収膜と、を備える。各第1材料層は、長手方向において一方に位置する第1の端部を含む第1領域と、長手方向において他方に位置する第2の端部を含む第2領域と、を含む。各第2材料層は、長手方向において一方に位置する第3の端部を含む第3領域と、長手方向において他方に位置する第4の端部を含み、第2領域と接続される第4領域と、を含む。光センサは、第1領域と電気的に接続される第1電極と、第1電極と離隔して配置され、第3領域と電気的に接続される第2電極と、をさらに備える。複数の第1材料層および複数の第2材料層はそれぞれ、第1電極と接続される第1領域および第2電極と接続される第3領域を除いて、第1領域と第3領域とが接続され、第2領域と第4領域とが接続されるよう交互に配置される。第1領域は、支持層の厚さ方向に見て、光吸収膜の外縁とヒートシンクの内縁との間の領域に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、実施の形態1における光センサの外観の概略平面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1における光センサの外観の概略平面図である。
【
図3】
図3は、
図1の線分III-IIIに沿う断面の一部を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、実施の形態1における光センサの一部を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、支持層の他方の主面内における温度分布を示す図である。
【
図6】
図6は、支持層の他方の主面内における温度勾配を示す図である。
【
図7】
図7は、第1材料層の長さの比率と光センサの比検出能D
*との関係を示すグラフである。
【
図8】
図8は、実施の形態2における光センサの外観の概略平面図である。
【
図9】
図9は、形状の異なる光センサと光センサの比検出能D
*との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
サーモパイル型赤外線センサの出力Voutは、以下の式(1)で与えられる。サーモパイル型赤外線センサの雑音Vnは、以下の式(2)で与えられる。
【0008】
【0009】
ΔTは各熱電対の温接点と冷接点との温度差である。Nは熱電対の数である。nは自然数である。α1はp型熱電変換材料のゼーベック係数である。α2はn型熱電変換材料のゼーベック係数である。kはボルツマン定数である。Tは熱電対の平均温度である。Rnは各熱電対の電気抵抗である。Δfは雑音帯域幅である。
【0010】
光センサの性能を示す比検出能D*について、以下の式(3)の関係が成立する。
【0011】
【0012】
Qは光吸収膜の単位面積当たりに入射する入射光の単位時間当たりのエネルギーである。Aは受光部である光吸収膜の面積である。比検出能D*と、(Vout/Vn)×Δf1/2×Q×A1/2との関係は、比例関係にある。(Vout/Vn)×Δf1/2×Q×A1/2を大きくすると、比検出能D*が大きくなる。VoutとVnとの比をS/Nで表すと、入射光パワーQおよび光吸収膜の面積Aが同じ値を採る場合、S/Nを増加させれば、比検出能D*が大きくなる。S/Nを高くすることが比検出能D*の向上を図る上で重要である。
【0013】
特許文献1に開示の赤外線センサでは、比検出能が不十分な場合がある。さらなる比検出能の向上が求められる。
【0014】
そこで、比検出能の向上を図ることができる光センサを提供することを目的の1つとする。
【0015】
[本開示の効果]
上記光センサによれば、比検出能の向上を図ることができる。
【0016】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。本開示に係る光センサは、支持層と、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する帯状の複数の第1材料層および導電性を有する帯状の複数の第2材料層を含み、支持層の一方の主面上に配置される熱電変換材料部と、支持層の他方の主面上であって、支持層の外縁に沿って配置される環状のヒートシンクと、支持層の厚さ方向に見てヒートシンクの内縁に取り囲まれた領域において、第1材料層の長手方向に温度差を形成するよう配置され、受けた光を熱エネルギーに変換する光吸収膜と、を備える。各第1材料層は、長手方向において一方に位置する第1の端部を含む第1領域と、長手方向において他方に位置する第2の端部を含む第2領域と、を含む。各第2材料層は、長手方向において一方に位置する第3の端部を含む第3領域と、長手方向において他方に位置する第4の端部を含み、第2領域と接続される第4領域と、を含む。光センサは、第1領域と電気的に接続される第1電極と、第1電極と離隔して配置され、第3領域と電気的に接続される第2電極と、をさらに備える。複数の第1材料層および複数の第2材料層はそれぞれ、第1電極と接続される第1領域および第2電極と接続される第3領域を除いて、第1領域と第3領域とが接続され、第2領域と第4領域とが接続されるよう交互に配置される。第1領域は、支持層の厚さ方向に見て、光吸収膜の外縁とヒートシンクの内縁との間の領域に配置される。
【0017】
本開示の光センサにおいては、ヒートシンクの内縁に取り囲まれた領域に受けた光を熱エネルギーに変換する光吸収膜が支持層の一方の主面上に配置される。また、本開示の光センサにおいては、支持層の厚さ方向に見て支持層の外縁に沿って環状のヒートシンクが支持層の他方の主面上に配置される。光センサに光が照射された場合、支持層の厚さ方向に見て光吸収膜が配置される支持層の中央側が高温となり、ヒートシンクが配置される支持層の外縁側が低温となる。帯状の複数の第1材料層および帯状の複数の第2材料層を含む熱電変換材料部については、支持層の一方の主面上に配置される。光吸収膜は、第1材料層の長手方向、すなわち、第1領域と第2領域との間において温度差を形成するよう配置される。第1材料層は、第1の端部を含む第1領域が外縁側となり、第2の端部を含む第2領域が中央側となるよう配置される。支持層の厚さ方向に見て第1領域が外縁側に配置される冷接点となり、第2領域が中央側に配置される温接点となる。
【0018】
支持層の厚さ方向に見て第1領域をヒートシンクと重なる位置に配置すると、第1材料層の第1領域と第2領域との間に形成される温度差は、光吸収膜とヒートシンクとの間に形成される温度差と等しくなる。ここで、支持層における温度勾配は、一様ではない。すなわち、光吸収膜が配置された位置からヒートシンクが配置された位置まで中央から外縁に向かって同じ温度勾配で一様に温度が低下していっているのではなく、支持層の厚さ方向に見てある領域では温度勾配が大きく、ある領域では温度勾配が小さくなっている。温度勾配が小さい領域に第1材料層を配置すると、第1領域と第2領域との温度差の影響よりも第1材料層の電気抵抗および熱抵抗の影響が大きくなる。そうすると、S/Nを大きくすることができない。その結果、光センサの比検出能D*の向上を図ることができない場合がある。
【0019】
本開示の光センサによると、第1領域は、支持層の厚さ方向に見て、光吸収膜の外縁とヒートシンクの内縁との間の領域に配置される。光吸収膜の外縁とヒートシンクの内縁との間の領域では、温度勾配が大きい。よって、この領域に第1領域を配置することにより、第1領域と第2領域との間に形成される大きい温度勾配を利用して、温度差に基づく大きな電気エネルギーを出力することができる。第1材料層は、光吸収膜が配置される領域からヒートシンクが配置される領域に至る構成ではないため、第1材料層の長さを短くすることができる。したがって、第1材料層の電気抵抗および熱抵抗の影響を小さくすることができる。また、第1材料層は複数含まれているため、出力を大きくすることができる。その結果、S/Nを向上させて光センサの比検出能D*の向上を図ることができる。
【0020】
上記光センサにおいて、光吸収膜は、支持層の厚さ方向に見て、第1方向に延びる第1外縁と、第1方向に交差する第2方向に延び、第1外縁に第1頂点において接続される第2外縁とによって規定され、支持層の外縁に向かって凸状の第1角部を含んでもよい。光吸収膜の外縁とヒートシンクの内縁との間の領域において、支持層の外縁に向かって凸状の第1角部の周辺の領域は、外縁に向かって急激に温度が低下しにくく、高温の状態を維持しやすい。よって、第1領域を第1角部の周辺の領域に配置して温度勾配が大きい部分を効率的に利用し、S/Nを向上させて光センサの比検出能D*の向上を図ることができる。
【0021】
上記光センサにおいて、第1領域は、第1頂点から見て第1外縁とは反対側に延びる第1外縁の延長線と第1頂点から見て第2外縁とは反対側に延びる第2外縁の延長線によって挟まれる領域に配置されてもよい。上記した第1外縁の延長線と第2外縁の延長線によって挟まれる領域は、温度勾配が大きくなりやすい。よって、第1領域を配置させる領域を、第1外縁の延長線と第2外縁の延長線によって挟まれる温度勾配の大きい領域として、S/Nを向上させて光センサの比検出能D*の向上を図ることができる。
【0022】
上記光センサにおいて、第1材料層の長さは、第1頂点から第1頂点と最短距離にあるヒートシンクの内縁までの距離の10%以上120%以下であってもよい。このように第1頂点から第1頂点と最短距離にあるヒートシンクの内縁までの距離に対する第1材料層の長さの比率を調整し、第1材料層の長さの影響と温度勾配により得られる電気エネルギーの出力とのバランスを適切にして、より効率的に光センサの比検出能D*の向上を図ることができる。
【0023】
上記光センサにおいて、支持層の厚さ方向に見て、第1角部の角度は、90度以下であってもよい。第1角部の角度を90度以下とすると、第1外縁と第2外縁とによって規定される第1角部の周辺の領域について、高温の状態をより維持しやすくなる。よって、確実に第1角部の周辺の領域を高温として、温度勾配を大きくすることができる。したがって、より効率的に光センサの比検出能D*の向上を図ることができる。
【0024】
上記光センサにおいて、光吸収膜の外縁の形状は、支持層の厚さ方向に見て、角度が90度以下であって支持層の外縁に向かって凸状の複数の角部を含んでもよい。このようにすることにより、光センサにおいて高温になりやすい角部を多くして、温度勾配の高い領域を多くすることが容易になる。したがって、S/Nを向上させて光センサの比検出能D*を向上させることが容易になる。
【0025】
上記光センサにおいて、第2領域と第4領域とが接続される各接続部は、支持層の厚さ方向に見て光吸収膜と重なってもよい。隣り合う各接続部を仮想の線分で結んで形成される図形の形状は、支持層の厚さ方向に見て光吸収膜の外縁に沿う形状であってもよい。このようにすることにより、光吸収膜とヒートシンクにより形成される温度差を効率的に利用した光センサを得ることができる。
【0026】
上記光センサにおいて、第1材料層および第2材料層の少なくともいずれか一方は、半導体で構成されてもよい。半導体は、熱伝導率が比較的低いため、光センサの比検出能D*の向上を図ることができる。
【0027】
上記光センサにおいて、第1材料層および第2材料層は、共に半導体で構成されていてもよい。第2材料層は、第1材料層と導電型が異なり、第3領域と第4領域との間の温度差を電気エネルギーに変換するようにしてもよい。このようにすることにより、第2材料層によって得られる出力を第1材料層によって得られる出力に足し合わせて、出力の増加を図ることができる。
【0028】
上記光センサにおいて、第1材料層は、SiおよびGeを母材元素として含む半導体で構成されてもよい。このような半導体は、光センサを構成する材料として、好適に使用される。
【0029】
[本開示の実施形態の詳細]
次に、本開示の光センサの一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照符号を付しその説明は繰り返さない。
【0030】
(実施の形態1)
本開示の実施の形態1に係る光センサについて説明する。
図1および
図2は、実施の形態1における光センサの外観の概略平面図である。理解の容易の観点から、
図1では、後述する赤外線吸収膜および絶縁膜の図示を省略している。
図1において、赤外線吸収膜が配置される際の外縁は、破線で示されている。
図3は、
図1および
図2の線分III-IIIに沿う断面を示す概略断面図である。
図4は、実施の形態1における光センサの一部を示す概略断面図である。
図4は、後述する第1領域、第2領域、第3領域および第4領域を含む部分を拡大して示す概略断面図である。
【0031】
図1、
図2、
図3および
図4を参照して、光センサ11aは、たとえば赤外線センサである。光センサ11aは、支持層13と、支持層13の一方の主面13b上に配置される熱電変換材料部12と、ヒートシンク14と、光吸収膜としての赤外線吸収膜23と、第1電極24と、第2電極25と、を備える。熱電変換材料部12は、第1材料層21a,21b,21c,21dを含む複数の第1材料層21と、第2材料層22a,22b,22c,22dを含む複数の第2材料層22と、を含む。本実施形態においては、第1材料層21および第2材料層22はそれぞれ、47本ずつ備えられる。光センサ11aは、第1電極24と第2電極25との間に生ずる電位差を検出することにより、光センサ11aに照射される赤外線を検出する。光センサ11a全体を板状とすると、その厚さ方向は、
図3中の矢印Zで示す方向によって表される。
【0032】
支持層13は、薄膜状であって、厚さ方向に見て長方形の形状を有する。支持層13は、複数の第1材料層21および複数の第2材料層22を含む熱電変換材料部12と、赤外線吸収膜23と、第1電極24と、第2電極25とを支持する。支持層13は、たとえばSiO2/SiN/SiO2膜から形成されている。すなわち、支持層13は、SiO2とSiNとSiO2とを積層させた構成である。
【0033】
ヒートシンク14は、支持層13全体の外縁である外縁13cに沿って配置される。ヒートシンク14全体の外縁である外縁14cと支持層13の外縁13cとは、Z方向に連なって延びている。ヒートシンク14は、光センサ11aの厚さ方向に離れて配置される一方の面14aと、他方の面14bとを含む。ヒートシンク14は、支持層13の他方の主面13a上に配置される。具体的には、ヒートシンク14は、ヒートシンク14の一方の面14aと支持層13の他方の主面13aとが当接するように配置される。ヒートシンク14の他方の面14bは、露出している。ヒートシンク14の形状は、環状である。ヒートシンク14は、
図3に示す断面において、2つの台形状の形状によって表れる。面14aは、
図3に示す断面において平行に配置される台形状の一対の辺のうち、長い方の辺に相当する面である。ヒートシンク14は、支持層13と比較して十分に厚い。たとえばヒートシンク14の厚さは、支持層13の厚さの10倍以上である。ヒートシンク14は、本実施形態においては、いわゆる基板である。ヒートシンク14は、たとえばSiからなる。
【0034】
光センサ11aには、厚さ方向に凹む凹部16が形成される。面14b側から見て凹部16に対応する領域において、支持層13、具体的には、支持層13の他方の主面13aが露出する。凹部16を取り囲むヒートシンク14の内周面14dは、面14b側に位置する開口側が広いいわゆるテーパ状である。凹部16は、たとえば平板状の基板を異方性ウェットエッチングすることにより形成される。このような凹部16を形成することにより、赤外線吸収膜23からヒートシンク14への熱の逃げを抑制できる。よって、後述する第1材料層21および第2材料層22の長手方向の温度差をより大きくすることができる。
【0035】
図1において、ヒートシンク14と支持層13との境界であるヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dは、
図1において破線で示される。
図1に示すように、本実施形態においては、ヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dは、支持層13の厚さ方向に見て、正方形の形状を有する。内縁16aおよび内縁16cは、第1方向であるX方向に延びる。内縁16bおよび内縁16dは、第2方向であるY方向に延びる。支持層13の厚さ方向に見て、第1方向と第2方向とは垂直に交わる。
【0036】
第1材料層21は、帯状の形状を有する。第1材料層21は、長手方向において一方に位置する第1の端部28cを含む第1領域28aと、長手方向において他方に位置する第2の端部28dを含む第2領域28bと、を含む。第1領域28aと第2領域28bを結ぶ線の延びる方向が、帯状の第1材料層21の長手方向となる。第1材料層21は、第1領域28aと第2領域28bとの間の温度差を電気エネルギーに変換する。第1材料層21は、支持層13の一方の主面13b上に配置される。第1材料層21は、支持層13の一方の主面13bと接触するようにして配置される。第1材料層21は、支持層13の厚さ方向に見て、第1領域28aがヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dに近い側に位置し、第2領域28bが赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dに近い側に位置するよう配置される。第1材料層21は、第1導電型であるp型の半導体からなる。なお、p型の熱電変換材料から構成される第1材料層21の材質としては、たとえばSiおよびGeを母材元素とし、Auを添加元素とした化合物半導体が選択される。
【0037】
第2材料層22は、帯状の形状を有する。第2材料層22は、長手方向において一方に位置する第3の端部29cを含む第3領域29aと、長手方向において他方に位置する第4の端部29dを含む第4領域29bを含む。第3領域29aと第4領域29bを結ぶ線の延びる方向が、帯状の第2材料層22の長手方向となる。第2材料層22は、第3領域29aと第4領域29bとの間の温度差を電気エネルギーに変換する。第2材料層22は、支持層13と接触して配置される後述する絶縁膜26の一部の上および第1材料層21の一部の上に配置される。第2材料層22は、支持層13の厚さ方向に見て、第3領域29aがヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dに近い側に位置し、第4領域29bが赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dに近い側に位置するよう配置される。第2材料層22は、第1導電型とは異なる第2導電型であるn型の半導体からなる。n型の熱電変換材料から構成される第2材料層22の材質としては、たとえばビスマス(Bi)が選択される。
【0038】
複数の第1材料層21および複数の第2材料層22は、支持層13上において、
図1中の二点鎖線の長方形の形状で示す領域15内に収まるように配置される。熱電変換材料部12は、複数の第1材料層21および複数の第2材料層22により、温度差(熱エネルギー)を電気エネルギーに変換する。なお、熱電変換材料部12は、絶縁膜26を含む。絶縁膜26の材質としては、たとえばSiO
2が選択される。複数の第1材料層21および複数の第2材料層22の配置については、後に詳述する。
【0039】
赤外線吸収膜23は、支持層13の一方の主面13b上、第1材料層21の一部上、第2材料層22の一部上および絶縁膜26の一部上に配置される。赤外線吸収膜23は、第1材料層21の長手方向、すなわち、第1領域28aと第2領域28bとの間において温度差を形成するよう配置される。具体的には、赤外線吸収膜23は、第1材料層21の第1領域28aおよび第2材料層22の第3領域29aを露出し、第1材料層21の第2領域28bおよび第2材料層22の第4領域29bを覆うように配置される。本実施形態においては、赤外線吸収膜23は、第2材料層22の長手方向、すなわち、第3領域29aと第4領域29bとの間において温度差を形成するよう配置される。赤外線吸収膜23は、支持層13の厚さ方向に見て、ヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dに取り囲まれた領域に配置される。
【0040】
図1に示すように、本実施形態においては、支持層13の厚さ方向に見て、外縁23a,23b,23c,23dを有する赤外線吸収膜23は、正方形の形状を有する。外縁23aおよび外縁23cは、X方向に延びる。外縁23bおよび外縁23dは、Y方向に延びる。また、外縁23aは、内縁16aに沿って延びる。外縁23bは、内縁16bに沿って延びる。外縁23cは、内縁16cに沿って延びる。外縁23dは、内縁16dに沿って延びる。
【0041】
赤外線吸収膜23は、支持層13の外縁13cに向かって凸状の第1角部としての角部17a,17b,17c,17dを含む。本実施形態においては、赤外線吸収膜23は、4つの第1角部としての角部17a,17b,17c,17dを含む。角部17aは、支持層13の厚さ方向に見て、第1外縁としての外縁23aと、外縁23aに第1頂点18aにおいて接続される第2外縁としての外縁23bとによって規定される。角部17bは、支持層13の厚さ方向に見て、第2外縁としての外縁23bと、外縁23bに第1頂点18bにおいて接続される第1外縁としての外縁23cとによって規定される。角部17cは、支持層13の厚さ方向に見て、第1外縁としての外縁23cと、外縁23cに第1頂点18cにおいて接続される第2外縁としての外縁23dとによって規定される。角部17dは、支持層13の厚さ方向に見て、第2外縁としての外縁23dと、外縁23dに第1頂点18dにおいて接続される第1外縁としての外縁23aとによって規定される。角部17a,17b,17c,17dの角度はそれぞれ、支持層13の厚さ方向に見て、90度である。
【0042】
赤外線吸収膜23は、支持層13の厚さ方向に見て、赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dによって形成される正方形の形状の中心と、ヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dによって形成される正方形の形状の中心とが重なるよう配置される。赤外線吸収膜23は、赤外線を熱に変換する。赤外線吸収膜23の材質としては、たとえばカーボン(C)が選択される。
【0043】
なお、上記したヒートシンク14は、第2角部としての角部19a,19b,19c,19dを含む。本実施形態においては、ヒートシンク14は、4つの第2角部としての角部19a,19b,19c,19dを含む。角部19aは、支持層13の厚さ方向に見て、外縁23aに沿って延びる第1内縁としての内縁16aと、外縁23bに沿って延び、第2頂点20aにおいて接続される第2内縁としての内縁16bとによって規定される。角部19bは、支持層13の厚さ方向に見て、外縁23bに沿って延びる第2内縁としての内縁16bと、外縁23cに沿って延び、第2頂点20bにおいて接続される第1内縁としての内縁16cとによって規定される。角部19cは、支持層13の厚さ方向に見て、外縁23cに沿って延びる第1内縁としての内縁16cと、外縁23dに沿って延び、第2頂点20cにおいて接続される第2内縁としての内縁16dとによって規定される。角部19dは、支持層13の厚さ方向に見て、外縁23dに沿って延びる第2内縁としての内縁16dと、外縁23aに沿って延び、第2頂点20dにおいて接続される第1内縁としての内縁16aとによって規定される。角部19a,19b,19c,19dの角度はそれぞれ、支持層13の厚さ方向に見て、90度である。
【0044】
次に、熱電変換材料部12および赤外線吸収膜23の配置について説明する。絶縁膜26は、具体的には、第1材料層21が配置されている部分においては第1材料層21上に配置され、第1材料層21が配置されていない部分においては支持層13の一方の主面13b上に配置される。絶縁膜26は、第1材料層21の第1領域28aおよび第2領域28bを覆わないように配置される。第2材料層22は、支持層13の一方の主面13bの一部の上、絶縁膜26の一部の上および第1材料層21の一部の上に配置される。第2材料層22は、第1材料層21の第1領域28aと第2材料層22の第3領域29aとが接触し、第1材料層21の第2領域28bと第2材料層22の第4領域29bとが接触するように配置される。
【0045】
赤外線吸収膜23は、支持層13の一方の主面13bの一部の上、絶縁膜26の一部の上および第2材料層22の一部の上に配置される。赤外線吸収膜23は、第1材料層21の第1領域28aおよび第2材料層22の第3領域29aを露出するように配置される。赤外線吸収膜23は、第1材料層21の第2領域28bおよび第2材料層22の第4領域29bを覆うように配置される。すなわち、第2領域28bと第4領域29bとが接続される各接続部は、支持層13の厚さ方向に見て赤外線吸収膜23と重なっている。隣り合う各接続部を仮想の線分で結んで形成される図形の形状は、支持層13の厚さ方向に見て赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dに沿う形状である。第1材料層21の第1領域28aおよび第2材料層22の第3領域29aは、赤外線吸収膜23によって覆われていない。すなわち、第1材料層21および第2材料層22はそれぞれ、第1材料層21および第2材料層22のそれぞれの長手方向に温度差を形成するよう赤外線吸収膜23と熱的に接続される。赤外線吸収膜23の熱が第1材料層21の第2領域28bおよび第2材料層22の第4領域29bに伝達されるように配置される。このようにして、第1材料層21および第2材料層22の長手方向に温度差が形成される。このようにすることにより、赤外線吸収膜23とヒートシンク14により形成される温度差を効率的に利用した光センサ11aを得ることができる。
【0046】
次に、複数の第1材料層21および複数の第2材料層22の配置について説明する。複数の第1材料層21は、それぞれ間隔をあけて配置される。第1材料層21a,21b,21c,21dを除き、複数の第1材料層21は、X方向またはY方向に長手方向が沿うように配置される。第1材料層21a,21b,21c,21dを除き、複数の第1材料層21は、正方形の形状の領域15の各辺側から向かい合う辺側に向けて延びるように(当該方向に長手方向が沿うように)配置される。第1電極24に接続される第1領域28aおよび第2電極25に接続される第3領域29aを除き、第1材料層21と第2材料層22とは交互に接続される。具体的には、第1材料層21の第1領域28aと第1材料層21の一方で隣り合う第2材料層22の第3領域29aとが接続される。第1材料層21の第2領域28bと第1材料層21の他方で隣り合う第2材料層22の第4領域29bとが接続される。複数の第1材料層21および複数の第2材料層22は、第1電極24および第2電極25に接続される第1領域28aおよび第3領域29aを除き、第2領域28b、第4領域29b同士および第1領域28a、第3領域29a同士が接続される。すなわち、第1材料層21と第2材料層22とは対となって、隣り合う第1材料層21および第2材料層22とが端部を含む領域で交互に接続されている。
【0047】
4つの角部17a,17b,17c,17dのそれぞれに最も近い4対の第1材料層21a,21b,21c,21dおよび第2材料層22a,22b,22c,22dを除いて、第2材料層22の長手方向の長さは、第1材料層21の長手方向の長さよりも長い。また、複数の第1材料層21の長手方向の長さは、それぞれ同等である。また、複数の第2材料層22の長手方向の長さについても、それぞれ同等である。第1材料層21aの長さについては、後に詳述する。
【0048】
光センサ11aに光が照射された時に発生する温度勾配の向きに対して、第1材料層21の一方に位置する第1の端部28cを含む第1領域28aに発生する電圧の極性と第2材料層22の一方に位置する第3の端部29cを含む第3領域29aに発生する電圧の極性とが逆となる。本実施形態においては、光が照射された場合、第1材料層21のうちの支持層13の外縁13c側に位置する第1領域28aが正の電圧となり、第2材料層22のうちの支持層13の外縁13c側に位置する第3領域29aが負の電圧となる。ここで、常に交互に複数の第1材料層21および複数の第2材料層22が接続されている。交互に接続された第1材料層21および複数の第2材料層22のうち、最も端に配置される第1材料層21は、第1領域28aで第1電極24と電気的に接続される。交互に直列に接続された第1材料層21および第2材料層22のうち、最も端に配置される第2材料層22は、第3領域29aで第2電極25と電気的に接続される。第1電極24および第2電極25は、支持層13の一方の主面13b上において、領域15外に配置される。第1電極24と第2電極25とは、離れて配置される。第1電極24および第2電極25はそれぞれ、たとえばパッド電極である。第1電極24および第2電極25の材質としては、たとえば金(Au)、チタン(Ti)、白金(Pt)等が採用される。
【0049】
ここで、第1材料層21a,21b,21c,21dのそれぞれの第1領域28aは、支持層13の厚さ方向に見て、赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dとヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dとの間の領域30に配置される。本実施形態においては、第1材料層21aの第1領域28aは、第1頂点18aから見て外縁23aとは反対側に延びる外縁23aの延長線31aと第1頂点18aから見て外縁23bとは反対側に延びる外縁23bの延長線32aによって挟まれる領域33aに配置される。第1材料層21aの第1領域28aに接続される第2材料層22aの第3領域29aも、同じ領域33aに配置される。第1材料層21bの第1領域28aは、第1頂点18bから見て外縁23bとは反対側に延びる外縁23bの延長線31bと第1頂点18bから見て外縁23cとは反対側に延びる外縁23cの延長線32bによって挟まれる領域33bに配置される。第1材料層21bの第1領域28aに接続される第2材料層22bの第3領域29aも、同じ領域33bに配置される。第1材料層21cの第1領域28aは、第1頂点18cから見て外縁23cとは反対側に延びる外縁23cの延長線31cと第1頂点18cから見て外縁23dとは反対側に延びる外縁23dの延長線32cによって挟まれる領域33cに配置される。第1材料層21cの第1領域28aに接続される第2材料層22cの第3領域29aも、同じ領域33cに配置される。第1材料層21dの第1領域28aは、第1頂点18dから見て外縁23dとは反対側に延びる外縁23dの延長線31dと第1頂点18dから見て外縁23aとは反対側に延びる外縁23aの延長線32dによって挟まれる領域33dに配置される。第1材料層21dの第1領域28aに接続される第2材料層22dの第3領域29aも、同じ領域33dに配置される。延長線31a,31b,31c,31d,32a,32b,32c,32dはそれぞれ一点鎖線で示される。
【0050】
第1材料層21aの長さは、第1頂点18aから第1頂点18aと最短距離にあるヒートシンク14の内縁16a,16bまでの距離の10%以上120%以下である。本実施形態において、第1頂点18aから第1頂点18aと最短距離にあるヒートシンク14の内縁16a,16bまでの距離は、支持層13の厚さ方向に見て、第1頂点18aから内縁16aを示す破線への垂線の長さ、および第1頂点18aから内縁16bを示す破線への垂線の長さのうちの短い方の長さに相当する。第1材料層21bの長さは、第1頂点18bから第1頂点18bと最短距離にあるヒートシンク14の内縁16b,16cまでの距離の10%以上120%以下である。本実施形態において、第1頂点18bから第1頂点18bと最短距離にあるヒートシンク14の内縁16b,16cまでの距離は、支持層13の厚さ方向に見て、第1頂点18bから内縁16bを示す破線への垂線の長さ、および第1頂点18bから内縁16cを示す破線への垂線の長さのうちの短い方の長さに相当する。第1材料層21cの長さは、第1頂点18cから第1頂点18cと最短距離にあるヒートシンク14の内縁16c,16dまでの距離の10%以上120%以下である。本実施形態において、第1頂点18cから第1頂点18cと最短距離にあるヒートシンク14の内縁16c,16dまでの距離は、支持層13の厚さ方向に見て、第1頂点18cから内縁16cを示す破線への垂線の長さ、および第1頂点18cから内縁16dを示す破線への垂線の長さのうちの短い方の長さに相当する。第1材料層21dの長さは、第1頂点18dから第1頂点18dと最短距離にあるヒートシンク14の内縁16d,16aまでの距離の10%以上120%以下である。本実施形態において、第1頂点18dから第1頂点18dと最短距離にあるヒートシンク14の内縁16d,16aまでの距離は、支持層13の厚さ方向に見て、第1頂点18dから内縁16dを示す破線への垂線の長さ、および第1頂点18dから内縁16aを示す破線への垂線の長さのうちの短い方の長さに相当する。
【0051】
次に、実施の形態1における光センサ11aの製造方法について、簡単に説明する。まず、平板状の基板を準備し、厚さ方向の一方の主面上に支持層13を形成する。この時、基板と支持層13の他方の主面13aは当接している。次に、支持層13の一方の主面13b上に第1材料層21のパターンを形成する。その後、絶縁膜26のパターンを形成する。次に、第2材料層22を形成する。その後、赤外線吸収膜23のパターンを形成する。第1材料層21の形成については、以下の通りである。まず支持層13の一方の主面13b上にリフトオフ用レジストを層状に塗布する。次に、リフトオフ用レジストの上にポジ型レジストを層状に塗布する。その後、ポジ型レジストにフォトリソグラフィを施して露光し、現像液により溶解させる。次に、半導体材料を蒸着させてパターンを形成し、レジストを支持層13上から除去する(リフトオフ)。このようにして、上記した第1材料層21のパターンを形成する。同様に上記した第2材料層22等のパターンを形成する。
【0052】
次に500℃程度の加熱による活性化処理を行い、アモルファス状態のSi、Ge等を部分的に結晶化させる。その後、厚さ方向において支持層13とは反対側に位置する基板の他方の主面から基板の中央の領域に凹部16を形成する。この場合、基板の他方の主面から支持層13の他方の主面13aに至るまで凹む凹部16を形成する。このようにして、基板から構成されるヒートシンク14を形成し、上記光センサ11aを得る。
【0053】
次に、光センサ11aの動作について説明する。光、たとえば赤外線が光センサ11aに照射されると、赤外線吸収膜23によって光エネルギーが熱エネルギーに変換される。この場合、赤外線吸収膜23は、ヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dに取り囲まれた領域内に形成されており、赤外線吸収膜23が配置されている部分が高温側となる。一方、内縁16a,16b,16c,16dの外側においてはヒートシンク14が配置されているため、温度は上昇しない。ここで、一つの第1材料層21に着目すると、第1材料層21の第2領域28bが高温となり、第1材料層21の第1領域28aが低温となる。すなわち、一つの第1材料層21の長手方向において、両端部を含む領域間に温度差が形成される。この温度差により、電位差が形成される。第2材料層22の長手方向についても同様に帯状の形状を有する。よって、両端部を含む領域間において温度差が形成される。この温度差により、電位差が形成される。複数の第1材料層21および複数の第2材料層22は交互に極性が逆になるよう直列で接続されているため、第1電極24および第2電極25によって出力される電位差が、複数の第1材料層21および複数の第2材料層22の温度差によって生じた電位差の合計となる。この第1電極24と第2電極25との間の電位差によって流れる電流を検知することにより、光センサ11aは光を、この場合、赤外線を検知する。
【0054】
上記光センサ11aにおいては、第1材料層21は、複数備えられている。第2材料層22は、複数備えられている。複数の第1材料層21および複数の第2材料層22はそれぞれ、第1電極24と接続される第1領域28aおよび第2電極25と接続される第3領域29aを除いて、第1領域28aと第3領域29aとが接続され、第2領域28bと第4領域29bとが接続されるよう交互に配置される。したがって、第1電極24および第2電極25によって出力される電位差を、複数の第1材料層21のそれぞれに生ずる電位差を足し合わせたものとすることができ、電位差を大きくすることができる。その結果、出力を大きくすることができ、光センサ11aの比検出能の向上を図ることができる。
【0055】
ここで、上記光センサ11aにおいて、支持層13の一方の主面13b側における温度差および温度勾配について説明する。
図5は、支持層13の一方の主面13b側における温度分布を示す図である。
図6は、支持層13の一方の主面13b側における温度勾配を示す図である。
図5および
図6は、シミュレーション結果に基づくものである。
図5および
図6においては、ヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dは、破線で示され、赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dは、一点鎖線で示される。
図5および
図6においては、支持層13の外縁13c、赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dおよびヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dの形状を単純化し、支持層13の厚さ方向に見てそれぞれ正方形の形状としている。赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dの一辺の長さを0.75mmとし、ヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dの一辺の長さを1.2mmとしている。
【0056】
図5を参照して、それぞれ実線で仕切られる領域36a,36b,36c,36d,36e,36f,36g,36hはそれぞれ、同じ温度範囲内にある領域を示している。領域36a,36b,36c,36d,36e,36f,36g,36hの順に温度が低くなっている。赤外線吸収膜23が配置された領域が最も温度が高く、ヒートシンク14が配置された領域が最も温度が低い。赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dとヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dが配置された領域との間の領域30においては、赤外線吸収膜23が配置された領域からヒートシンク14が配置された領域に向かって徐々に温度が低くなっている。しかし、この領域30においては、温度勾配は一定ではない。
【0057】
図6を参照して、領域37a,37b,37c,37d,37e,37fはそれぞれ、同じ温度勾配である領域を示している。領域37a,37b,37c,37d,37e,37fの順に温度勾配が高い領域を示している。赤外線吸収膜23が配置された領域およびヒートシンク14が配置された領域については、いずれも領域37fに属し、温度勾配はほとんどない。これに対し、赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dとヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dが配置された領域との間の領域30については、温度勾配の領域37b,37c,37d,37eに属しており、温度勾配が大きい。特に角部17a,17b,17c,17dの周囲の領域37a、37bでは温度勾配が大きい。
【0058】
上記光センサ11aによると、第1材料層21a,21b,21c,21dのそれぞれの第1領域28aは、支持層13の厚さ方向に見て、赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dとヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dとの間の領域30に配置される。赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dとヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dとの間の領域30は、温度勾配が大きい。よって、この領域30に第1領域28aを配置することにより、第1領域28aと第2領域28bとの間に形成される大きい温度勾配を利用して、温度差に基づく大きな電気エネルギーを出力することができる。第1材料層21a,21b,21c,21dはそれぞれ、赤外線吸収膜23が配置される領域からヒートシンク14が配置される領域に至る構成ではないため、第1材料層21a,21b,21c,21dの長さを短くすることができる。したがって、第1材料層21a,21b,21c,21dの電気抵抗および熱抵抗の影響を小さくすることができる。その結果、S/Nを向上させて光センサ11aの比検出能D*の向上を図ることができる。
【0059】
また、本実施形態において、第2材料層22a,22b,22c,22dのそれぞれの第3領域29aは、支持層13の厚さ方向に見て、赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dとヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dとの間の領域30に配置される。赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dとヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dとの間の領域30は、温度勾配が大きい。よって、この領域に第3領域29aを配置することにより、第3領域29aと第4領域29bとの間の大きい温度勾配を利用して、温度差に基づく大きな電気エネルギーを出力することができる。第3領域29aは、赤外線吸収膜23が配置される領域からヒートシンク14が配置される領域に至る構成ではないため、第2材料層22a,22b,22c,22dの長さを短くすることができる。したがって、第2材料層22a,22b,22c,22dの電気抵抗および熱抵抗の影響を小さくすることができる。その結果、S/Nを向上させて光センサ11aの比検出能D*の向上を図ることができる。
【0060】
本実施形態によれば、赤外線吸収膜23は、支持層13の厚さ方向に見て、第1方向に延びる外縁23aと、第1方向に交差する第2方向に延び、外縁23aに第1頂点18aにおいて接続される外縁23bとによって規定され、支持層13の外縁13cに向かって凸状の角部17aを含む。また、赤外線吸収膜23は、上記した角部17b,17c,17dを含む。赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dとヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dとの間の領域30において、支持層13の外縁13cに向かって凸状の角部17a,17b,17c,17dの周辺の領域は、外縁13cに向かって急激に温度が低下しにくく、高温の状態を維持しやすい。よって、第1領域28aを角部17a,17b,17c,17dの周辺の領域に配置して温度勾配が大きい部分を効率的に利用し、S/Nを向上させて光センサ11aの比検出能D*の向上を図ることができる。
【0061】
本実施形態によれば、第1材料層21aの第1領域28aは、第1頂点18aから見て外縁23aとは反対側に延びる外縁23aの延長線31aと第1頂点18aから見て外縁23bとは反対側に延びる外縁23bの延長線32aによって挟まれる領域33aに配置されている。外縁23aの延長線31aと外縁23bの延長線32aによって挟まれる領域33aは、温度勾配が大きくなりやすい。よって、第1材料層21aの第1領域28aを配置させる領域を、外縁23aの延長線31aと外縁23bの延長線32aによって挟まれる温度勾配の大きい領域33aとして、S/Nを向上させて光センサ11aの比検出能D*の向上を図ることができる。他の第1材料層21b,21c,21dの場合も同様に、第1材料層21b,21c,21dの第1領域28aは、温度勾配の大きい領域33b,33c,33dに配置されている。また、第2材料層22a,22b,22c,22dの第3領域29aも、温度勾配の大きい領域33a,33b,33c,33dに配置されている。よって、さらにS/Nを向上させて光センサ11aの比検出能D*の向上を図ることができる。
【0062】
本実施形態によれば、支持層13の厚さ方向に見て、角部17aの角度は、90度以下である。具体的には、角部17aの角度は、90度である。角部17aの角度が90度以下であれば、外縁23aと外縁23bとによって規定される角部17aの周辺の領域について、高温の状態をより維持しやすくなる。よって、確実に角部17aの周辺の領域を高温として、温度勾配を大きくすることができる。他の角部17b,17c,17dの場合も同様である。したがって、より効率的に光センサ11aの比検出能D*の向上を図ることができる。
【0063】
本実施形態において、第1材料層21は、半導体からなっている。半導体は、熱伝導率が比較的低い。よって、光センサ11aの比検出能D*の向上を図ることができる。
【0064】
本実施形態において、熱電変換材料部12は、熱エネルギーを電気エネルギーに変換し、第1材料層21と異なる導電型である第2導電型であるBiからなる複数の第2材料層22を備える。複数の第2材料層22は、複数の第1材料層21と交互に接続される。したがって、熱伝導率が比較的低い材料を用いて、温度差に基づく出力を増加させて、光センサ11aの比検出能のさらなる向上を図ることができる。
【0065】
本実施形態によれば、第1材料層21a~21dの長さは、第1頂点18a~18dから第1頂点18a~18dと最短距離にあるヒートシンク14の内縁16a~16dまでの距離の10%以上120%以下である。ここで、第1材料層21a~21dの長さと、第1頂点18a~18dから第1頂点18a~18dと最短距離にあるヒートシンク14の内縁16a~16dまでの距離の関係は、以下に示される。
【0066】
図7は、第1材料層21aの長さの比率と光センサの比検出能D
*との関係を示すグラフである。
図7において、横軸は第1材料層21aの長さの比率を示し、縦軸は光センサ11aの比検出能D
*を示す。
図7において、長さの比率が0%とは、上記した構成の第1材料層21aを形成していない場合を示し、長さの比率が100%とは、第1頂点18aから第1頂点18aと最短距離にあるヒートシンク14の内縁16a~16dまでの距離に相当する長さの場合を示す。なお、
図7に示す長さの比率が141%とは、第1頂点18aから第1内縁としての内縁16aと第2内縁としての内縁16bとが交わる第2頂点20aまでの距離に相当する長さを示す。
【0067】
なお、光センサ11aの比検出能D*の算出に際し、光源を500Kの黒体炉、光センサ11aと光源の距離を30cmとし、メカニカルチョッパを用いてチョッピング周波数5Hzにて光源をチョッピングし、素子出力のチョッピング周波数成分をロックインアンプにて同期検波することで行った。光センサ11aの出力をスペクトラムアナライザにて観測し、ノイズレベルを測定することで、比検出能D*を算出した。
【0068】
図7を参照して、長さの比率が0%の時、最も比検出能D
*の値が低い。長さの比率を上げていくと、比検出能D
*の値が高くなっていく。長さの比率が60%になると、最も比検出能D
*の値が高くなる。その後、長さの比率を上げていくと比検出能D
*の値が低くなっていく。
【0069】
よって、第1材料層21aの長さを、第1頂点18aから第1頂点18aと最短距離にあるヒートシンク14の内縁16a~16dまでの距離の10%以上120%以下とする。このようにして第1頂点18aから第1頂点18aと最短距離にあるヒートシンク14の内縁16a~16dまでの距離に対する第1材料層21aの長さの比を調整する。このようにすることにより、第1材料層21aの長さの影響と温度勾配により得られる電気エネルギーの出力とのバランスを適切にして、より効率的に光センサ11aの比検出能D*の向上を図ることができる。他の第1材料層21b,21c,21dおよび第2材料層22a,22b,22c,22dについても、同様の長さを採用することにより、さらに光センサ11aの比検出能D*の向上を図ることができる。
【0070】
なお、上記の実施の形態においては、角部17a,17b,17c,17dの角度は90度であったが、これに限らず、赤外線吸収膜23の外縁の形状は、支持層13の厚さ方向に見て、角度が90度以下であって支持層13の外縁13cに向かって凸状の複数の角部を含むようにしてもよい。このようにすることにより、光センサ11aにおいて高温になりやすい角部を多くして、温度勾配の高い領域を多くすることが容易になる。したがって、S/Nを向上させて光センサ11aの比検出能D*を向上させることが容易になる。
【0071】
(実施の形態2)
次に、他の実施の形態である実施の形態2について説明する。
図8は、実施の形態2における光センサの外観の概略平面図である。
図8は、実施の形態1における
図1に示す図に相当する。実施の形態2は、第1材料層の形状、第2材料層の形状および赤外線吸収膜の形状において実施の形態1の場合とは異なっている。
図8において、赤外線吸収膜が配置される際の外縁は、破線で示されている。
【0072】
図8を参照して、実施の形態2における光センサ11bは、支持層13と、ヒートシンク14と、第1材料層21a,21b,21c,21d,21eを含む複数の第1材料層21と、第2材料層22a,22b,22c,22dを含む複数の第2材料層22と、赤外線吸収膜23と、第1電極24と、第2電極25と、を備える。複数の第1材料層21および複数の第2材料層22はそれぞれ、第1電極24と接続される第1領域28aおよび第2電極25と接続される第3領域29aを除いて、第1領域28aと第3領域29aとが接続され、第2領域28bと第4領域29bとが接続されるよう交互に配置される。
【0073】
赤外線吸収膜23の外形形状は、8つの外縁42a,42b,42c,42d,42e,42f,42g,42hによって規定されている。赤外線吸収膜23は、支持層13の厚さ方向に見て、実施の形態1にように正方形の形状ではなく、外縁42aおよび外縁42bによって規定される第1角部としての角部43a,外縁42cおよび外縁42dによって規定される第1角部としての角部43b,外縁42eおよび外縁42fによって規定される第1角部としての角部43cおよび外縁42gおよび外縁42hによって規定される第1角部としての角部43dがそれぞれ鋭角、すなわち、90度未満である。なお、赤外線吸収膜23の面積は、実施の形態1における赤外線吸収膜23の面積と同じとなるよう構成されている。外縁42bと外縁42cとが交わる頂点44a、外縁42dと外縁42eとが交わる頂点44b、外縁42fと外縁42gとが交わる頂点44c、外縁42hと外縁42aとが交わる頂点44dはそれぞれ、角部43a,43b,43c,43dよりも支持層13の厚さ方向に見て赤外線吸収膜23の中心に近づくように配置される。赤外線吸収膜23の形状は、実施の形態1における正方形の形状の赤外線吸収膜23において、4辺の中点をそれぞれ赤外線吸収膜23の中心に近づくように配置した形状である。
【0074】
第1材料層21a,21b,21c,21dについては、第1材料層21a,21b,21c,21dの第1領域28aは、支持層13の厚さ方向に見て、赤外線吸収膜23の外縁42a,42b,42c,42d,42e,42f,42g,42hとヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dとの間の領域45に配置される。なお、第1材料層21a,21b,21c,21dのそれぞれに隣り合う第1材料層21についても同様に、領域45に第1領域28aが配置される。
【0075】
また、頂点44aに最も近い第1材料層21eについては、第1材料層21eの第1領域28aは、ヒートシンク14の上に配置され、第2領域28bが、支持層13の厚さ方向に見て、赤外線吸収膜23の外縁42a,42b,42c,42d,42e,42f,42g,42hとヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dとの間の領域45に配置される。第1材料層21eと隣り合う第1材料層21についても同様である。また、頂点44b,44c,44dにそれぞれ最も近い第1材料層21についても同様である。
【0076】
このようにすることによっても、第1領域28aと第2領域28bとの間に形成される大きい温度勾配を利用して、温度差に基づく大きな電気エネルギーを出力することができる。本実施形態においても、第1材料層21a,21b,21c,21d,21eはそれぞれ、赤外線吸収膜23が配置される領域からヒートシンク14が配置される領域に至る構成ではないため、第1材料層21a,21b,21c,21d,21eの長さを短くすることができる。したがって、第1材料層21a,21b,21c,21d,21eの電気抵抗および熱抵抗の影響を小さくすることができる。その結果、S/Nを向上させて光センサ11bの比検出能D*の向上を図ることができる。
【0077】
図9は、形状の異なる光センサと光センサの比検出能D
*との関係を示すグラフである。
図9において、横軸は形状の異なる光センサを形状A
1、形状A
2、形状A
3で示し、縦軸は光センサ11aの比検出能D
*を示す。
図9において、形状A
1は、赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dの形状およびヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dの形状が共に正方形であり、第1材料層21aの長さの比率が0%である場合を示す。形状A
2は、赤外線吸収膜23の外縁23a,23b,23c,23dの形状およびヒートシンク14の内縁16a,16b,16c,16dの形状が共に正方形であり、第1材料層21aの長さの比率が50%である場合を示す。形状A
3は、実施の形態2に係る光センサ11bの場合を示す。
【0078】
図9を参照して、形状A
1の場合、比検出能D
*は、0.69(1×10
9)(cmHz
1/2/W)に至らない。形状A
2の場合、形状A
1の場合と比較して比検出能D
*は優れており、0.71(1×10
9)(cmHz
1/2/W)をやや下回る値である。形状A
3で示す実施の形態2に係る光センサ11bの場合、比検出能D
*は、形状A
1の場合および形状A
2の場合と比較して比検出能D
*は優れており、0.72(1×10
9)(cmHz
1/2/W)以上あり、0.73(1×10
9)(cmHz
1/2/W)をやや下回る値である。
【0079】
(他の実施の形態)
上記の実施の形態において、赤外線吸収膜23としてカーボンを用いることにしてもよいし、樹脂からなる赤外線吸収膜を形成してもよい。絶縁性を有する樹脂からなる赤外線吸収膜を形成した場合、上記した絶縁膜26は不要となる。
【0080】
上記の実施の形態において、第1材料層21は、Si、Ge、Auを元素として含む化合物半導体としたが、これに限らず、Auを含まない化合物半導体であってもよいし、Mn、Siを元素として含む化合物半導体としてもよいし、Sn、Seを元素として含む化合物半導体、Cu、Seを元素として含む化合物半導体としてもよい。また、第1材料層21として、たとえば半導体としてのSi単体を用いることにしてもよい。
【0081】
上記の実施の形態においては、第2材料層22は、Biからなることとしたが、これに限らず、第2材料層22は、金属および熱エネルギーを電気エネルギーに変換し、第1材料層21と異なる導電型である半導体のうちの少なくともいずれか一方からなっていてもよい。具体的には、たとえば、第2材料層22について、Bi以外のn型の導電型を有する化合物半導体を用いることにしてもよい。第2材料層として上記第2導電型であるn型の導電型を有する半導体を採用することにより、熱伝導率が比較的低い材料を用いて、温度差に基づく出力を増加させて、光センサ11a,11bの比検出能のさらなる向上を図ることができる。また、第2材料層22として金属を採用してもよい。すなわち、熱電変換材料部12が、上記第1材料層21と、帯状の形状を有し、上記した第2材料層22と同様に配置される金属層とを備える構成であってもよい。具体的には、たとえば第1材料層21を構成する材料としてSiを用い、金属層としてAlを用いる。特に、光センサ11a,11bの特性が、第1材料層21の材料の特性に主に起因する場合、このような構成とすることにしてもよい。このようにすることにより、第2材料層22の導電率を向上させて光センサ11a,11bの電気コンダクタンスを増加させることで、光センサ11a,11bの比検出能のさらなる向上を図ることができる。第2材料層22の材質としては、他に、たとえばアンチモン(Sb)を採用することもできる。また、第2材料層22として、Biとテルル(Te)との合金やBiとTeとSbとの合金を採用することにしてもよい。また、上記の実施の形態においては、光センサ11a,11bは、複数の第1材料層21と複数の第2材料層22とを備えることとしたが、光センサ11a,11bは、一対の第1材料層21と第2材料層22とを備える構成であればよい。
【0082】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本開示の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0083】
11a,11b 光センサ
12 熱電変換材料部
13 支持層
13a,13b 主面
13c,14c,23a,23b,23c,23d,42a,42b,42c,42d,42e,42f,42g,42h 外縁
14 ヒートシンク
14a,14b 面
14d 内周面
15,30,33a,33b,33c,33d,36a,36b,36c,36d,36e,36f,36g,36h,37a,37b,37c,37d,37e,37f,45 領域
16 凹部
16a,16b,16c,16d 内縁
17a,17b,17c,17d,19a,19b,19c,19d,43a,43b,43c,43d 角部
18a,18b,18c,18d,20a,20b,20c,20d,44a,44b,44c,44d 頂点
21,21a,21b,21c,21d,21e 第1材料層
22,22a,22b,22c,22d 第2材料層
23 赤外線吸収膜
24 第1電極
25 第2電極
26 絶縁膜
28a 第1領域
28b 第2領域
28c 第1の端部
28d 第2の端部
29a 第3領域
29b 第4領域
29c 第3の端部
29d 第4の端部
31a,31b,31c,31d,32a,32b,32c,32d 延長線
A1,A2,A3 形状