(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ブラケット
(51)【国際特許分類】
B66C 23/26 20060101AFI20240130BHJP
B66C 23/42 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B66C23/26 E
B66C23/42 B
(21)【出願番号】P 2022013939
(22)【出願日】2022-02-01
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】松尾 洋平
(72)【発明者】
【氏名】高岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】渡▲辺▼ 拓也
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-122999(JP,A)
【文献】特開平10-338467(JP,A)
【文献】米国特許第04222492(US,A)
【文献】中国特許出願公開第105540462(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジブが起伏可能に取り付けられたラチス構造のブームに着脱可能に取り付けられるブラケットであって、
前記ブームおよび前記ジブの各々は、複数種類の単位部材から選択された複数の前記単位部材が連結されることで構成されており、
前記ジブ側に設けられたジブ側部材に係合可能なブーム側部材が取り付けられた本体部と、
複数の取付手段が設けられた取付部と、
を有し、
前記取付部は、互いに連結された2つの前記単位部材に跨って、前記ブームの腹面に取り付け可能に構成され、
複数種類の前記単位部材のいずれにおいても、複数の前記取付手段のいずれかが利用されることで、前記取付部が前記ブームの腹面に取り付け可能に構成されることを特徴とするブラケット。
【請求項2】
ジブが起伏可能に取り付けられたラチス構造のブームに着脱可能に取り付けられるブラケットであって、
前記ブームおよび前記ジブの各々は、複数種類の単位部材から選択された複数の前記単位部材が連結されることで構成されており、
前記ジブ側に設けられたジブ側部材に係合可能なブーム側部材が取り付けられた本体部と、
複数の取付手段が設けられた取付部と、
を有し、
前記ブームは、
前記ブームの長手方向から見たときに角の位置に配置された主柱と、
前記主柱同士をつなぎ、前記ブームの長手方向に直交する方向に延びるように設けられた横材と、
を有し、
前記取付手段は、
前記主柱に取り付け可能な主柱取付手段と、
前記横材に取り付け可能な横材取付手段と、
を有し、
複数種類の前記単位部材のいずれにおいても、複数の前記取付手段のいずれかが利用されることで、前記取付部が前記ブームの腹面に取り付け可能に構成されることを特徴とするブラケット。
【請求項3】
前記ブームは、
前記ブームの長手方向から見たときに角の位置に配置された主柱と、
前記主柱同士をつなぎ、前記ブームの長手方向に直交する方向に延びるように設けられた横材と、
を有し、
前記取付手段は、
前記主柱に取り付け可能な主柱取付手段と、
前記横材に取り付け可能な横材取付手段と、
を有することを特徴とする請求項
1に記載のブラケット。
【請求項4】
前記取付部は、前記ブームに接する複数種類の座面を有し、
複数種類の前記座面の前記ブーム側への突出高さは、互いに異なることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のブラケット。
【請求項5】
前記ジブ側部材が、ウインチで巻き取りおよび繰り出しされるとともに前記ジブに連結されたロープであり、
前記ブーム側部材が、前記ロープをガイドする回転体であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のブラケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジブが起伏可能に取り付けられたラチス構造のブームに着脱可能に取り付けられるブラケットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タワー(ブーム)を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にした状態で、ジブをタワーに係留したり、タワーからジブを解放したりするジブ係留方法およびジブ係留装置が開示されている。タワーを鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にした状態で、ジブの係留および解放を行うため、見た目が安定しており、強風でタワーが後方に転倒する恐れもない。
【0003】
特許文献1では、フックの鉤部に連結されたロープを、タワーに設けられたウインチで巻き取ることで、ジブをタワーの方に引き寄せている。このとき、タワーの腹面に取り付けられたガイドシーブで、ガイドシーブよりも上流側のロープが、ジブの長手方向にほぼ直交する方向に引っ張られるように、ロープをガイドしている。つまり、ガイドシーブよりも上流側のロープをジブの長手方向にほぼ直交する方向にガイドするような位置に、ガイドシーブを取り付けることで、タワーが鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢であっても、ジブをタワーに十分に引き寄せることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ラチス構造のタワーは、下部ブーム、中間ブーム、および、上部ブームが連結されて構成されている。下部ブーム、中間ブーム、および、上部ブームは、それぞれ複数種類ある。そのため、これらの組み合わせは多様である。ラチス構造のジブについても同様である。よって、タワーの構成とジブの構成との組み合わせパターンは、数百パターンにも上る。このすべての組み合わせパターンに対して、ガイドシーブをタワーの腹面の所望の位置に取り付ける必要がある。
【0006】
そこで、ガイドシーブが取り付けられたブラケットを複数種類用意して、組み合わせパターンに適したブラケットを所望の位置に取り付けることが考えられるが、部品点数が増加し、コストがかかる。
【0007】
本発明の目的は、ブームの構成とジブの構成との組み合わせがどのようなものであっても、ブームの腹面の所望の位置に取り付けることが可能なブラケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ジブが起伏可能に取り付けられたラチス構造のブームに着脱可能に取り付けられるブラケットであって、前記ブームおよび前記ジブの各々は、複数種類の単位部材から選択された複数の前記単位部材が連結されることで構成されており、前記ジブ側に設けられたジブ側部材に係合可能なブーム側部材が取り付けられた本体部と、複数の取付手段が設けられた取付部と、を有し、複数種類の前記単位部材のいずれにおいても、複数の前記取付手段のいずれかが利用されることで、前記取付部が前記ブームの腹面に取り付け可能に構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、複数種類の単位部材のいずれにおいても、取付部に設けられた複数の取付手段のいずれかが利用されることで、取付部がブームの腹面に取り付け可能に構成されている。ジブ側に設けられたジブ側部材に、本体部に取り付けられたブーム側部材を係合させるには、ブームの腹面の所望の位置に取付部を取り付ける必要がある。取付部に設けられた複数の取付手段のいずれかを利用することで、複数種類の単位部材のいずれにおいても、取付部を取り付けることができる。よって、ブームの構成とジブの構成との組み合わせがどのようなものであっても、ブームの腹面の所望の位置にブラケットを取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】タワークレーンの側面図であり、ジブがタワーに引き寄せられた状態を示す図である。
【
図4】
図1の要部Aの拡大図であり、ピンが凹部に嵌った状態を示す図である。
【
図7】係止装置および被係止装置の拡大側面図であり、係止装置と被係止装置とが係止された状態を示す図である。
【
図8】係止装置および被係止装置の拡大側面図であり、係止装置と被係止装置との係止が解除された状態を示す図である。
【
図9】係止装置および被係止装置の拡大側面図であり、係止装置と被係止装置とが離隔した状態を示す図である。
【
図10】係止装置および被係止装置の拡大平面図である。
【
図15A】タワーの下部ブームの腹面にブラケットが取り付けられた状態を示す図である。
【
図15B】タワーの下部ブームと中間ブームとの連結部分の腹面にブラケットが取り付けられた状態を示す図である。
【
図15C】タワーの中間ブーム同士の連結部分の腹面にブラケットが取り付けられた状態を示す図である。
【
図15D】タワーの中間ブームの腹面にブラケットが取り付けられた状態を示す図である。
【
図24】タワークレーンの側面図であり、ロープと巻上ロープとが巻き取られていく状態を示す図である。
【
図25】タワークレーンの側面図であり、ジブがタワーに引き寄せられていく様子を示す図である。
【
図26】タワークレーンの側面図であり、ジブがタワーに引き寄せられた状態を示す図である。
【
図27】タワークレーンの側面図であり、ロープの先端が連結されたフック装置が地面近くまで降ろされた状態を示す図である。
【
図28】タワークレーンの側面図であり、タワーが倒伏された状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
(タワークレーンの構成)
本実施形態のブラケット1は、ジブ係留装置70に設けられている。ジブ係留装置70は、タワークレーン20の側面図である
図1に示すように、タワークレーン20に設けられている。タワークレーン20は、クローラ式の下部走行体21に上部旋回体22が旋回可能に搭載された構成となっている。なお、タワークレーン20は、クローラ以外の移動手段(例えばホイール)を用いた移動式クレーンであってもよいし、移動手段を持たない固定式クレーンであってもよい。また、本発明の適用対象はタワークレーンに限定されず、例えば、ラッフィングクレーンに本発明を適用することも可能である。
【0013】
上部旋回体22は、運転室23と、タワー(ブーム)24と、ジブ25と、ガントリ26と、ストラット27と、下部スプレッダ28と、フック用ウインチ43と、ジブ起伏用ウインチ44と、ブーム起伏用ウインチ45と、カウンタウエイト29と、バックストップ装置30と、を有している。
【0014】
運転室23は、上部旋回体22の前部に設けられている。タワー24は、上部旋回体22の前部に、上部旋回体22に対して起伏可能に連結されている。タワー24の先端には、ブームガイライン39の一端が接続されている。
【0015】
ジブ25は、タワー24の先端部に、タワー24に対して起伏可能に連結されている。ジブ25の先端には、ジブポイントシーブ31が設けられている。このジブポイントシーブ31からは巻上ロープ32を介してフック装置71が吊り下げられている。
図1では、ジブ25が垂下した状態を図示している。
【0016】
ガントリ26は、上部旋回体22の後部に取り付けられている。ストラット27は、側方からの平面視で三角形状であって、タワー24の先端部に取り付けられている。ストラット27のフロントストラット27bの先端とジブ25の先端とは、ジブガイライン34により連結されている。
【0017】
タワー24の下部背面側に取り付けられたジブ起伏用下部スプレッダ35と、ジブガイライン36の一端に連結したジブ起伏用上部スプレッダ37との間には、ジブ起伏ロープ38が掛け渡されている。ジブガイライン36の他端は、ストラット27のリアストラット27aの先端に接続されている。
【0018】
下部スプレッダ28は、ガントリ26の上端に取り付けられている。下部スプレッダ28と、ブームガイライン39の他端に連結した上部スプレッダ40との間には、ブーム起伏ロープ41が掛け渡されている。
【0019】
フック用ウインチ43、および、ジブ起伏用ウインチ44は、タワー24の基部(下部ブーム)にそれぞれ配置されている。ブーム起伏用ウインチ45は、ガントリ26の下部に配置されている。なお、フック用ウインチ43、ジブ起伏用ウインチ44、および、ブーム起伏用ウインチ45は、上部旋回体22の中央部にそれぞれ配置されていてもよい。
【0020】
フック用ウインチ43は、巻上ロープ32を巻き取り又は繰り出してフック装置71の巻き上げ又は巻き下げを行う。ジブ起伏用ウインチ44は、ジブ起伏ロープ38を巻き取り又は繰り出すことで、ストラット27を、タワー24の先端部との結合点を中心に起伏させる。その結果、ジブ25がタワー24との結合点を中心として起伏する。ブーム起伏用ウインチ45は、ブーム起伏ロープ41を巻き取り又は繰り出すことで、タワー24を、その支点であるブームフットピン42回りに起伏させる。
【0021】
カウンタウエイト29は、上部旋回体22の後部に搭載されている。バックストップ装置30は、タワー24の下部背面側に設けられている。バックストップ装置30は、上部旋回体22に設けられたバックストップ受け(図示せず)に受けられることで、タワー24の後側への回動を規制する。
【0022】
タワー24およびジブ25の各々は、ラチス構造であって、複数種類の単位部材から選択された複数の単位部材が連結されることで構成されている。具体的には、タワー24は、下部ブーム24aと、一または複数の中間ブーム24bと、上部ブーム24cとで構成されている。下部ブーム24a、中間ブーム24b、および、上部ブーム24cは、単位部材である。下部ブーム24a、中間ブーム24b、および、上部ブーム24cは、それぞれ複数種類ある。種類が異なるとは、大きさや長さ、形状が異なることを意味する。
【0023】
同様に、ジブ25は、下部ジブ25aと、一または複数の中間ジブ25bと、上部ジブ25cとで構成されている。下部ジブ25a、中間ジブ25b、および、上部ジブ25cは、単位部材である。下部ジブ25a、中間ジブ25b、および、上部ジブ25cは、それぞれ複数種類ある。
【0024】
(ジブ係留装置の構成)
図1の要部Aの拡大図である
図2に示すように、ジブ係留装置70は、上述のフック装置71と、ジブ格納ブラケット72と、を有している。フック装置71は、ジブ25の先端から吊り下げられている。ジブ格納ブラケット72は、ジブ25の先端部に設けられている。
【0025】
(フック装置)
図2に示すように、フック装置71は、フック本体81と、フック82と、ピン83と、を有している。
図2をB方向から見た図である
図3にも示すように、フック本体81は、左右一対の側板81aを有している。これら側板81aの間には、トラニオンピン81bとシーブピン81cとが支持されている。
【0026】
図2に示すように、トラニオンピン81bは、側板81aの下端部に配置されている。フック82は、トラニオンピン81bに回転および揺動自在に支持されている。
図2に示すように、シーブピン81cは、側板81aの中央部に配置されている。
図3に示すように、シーブピン81cには、シーブ81dが回転自在に支持されている。シーブ81dには、巻上ロープ32が掛け回されている。
【0027】
図2に示すように、ピン83は、フック本体81の上部に設けられている。具体的には、ピン83は、側板81aの上端部において、一対の側板81aに支持されている。なお、このピン83は、フック装置71に巻上ロープ32を奇数掛けで使用する際に使用するロープソケット取付ピンである。本実施形態において、フック装置71は、巻上ロープ32が2本掛けされるものである。なお、フック装置71は、巻上ロープ32が1本掛けされるものであってもよい。
【0028】
(ブラケット)
図2に示すように、ジブ格納ブラケット72は、傾斜面84と、凹部85と、を有している。傾斜面84は、ジブ格納ブラケット72の下端に位置しており、ジブ25が垂下された際に、タワークレーン20の前後方向(紙面左右方向)にピン83が摺動可能である。凹部85は、傾斜面84に連続しており、ジブ25が垂下された際に、ピン83を下方から嵌めることが可能である。傾斜面84は、タワークレーン20の前後方向における凹部85の両側にそれぞれ設けられている。
図3に示すように、タワークレーン20の左右方向(紙面左右方向)において、ピン83の長さは、ジブ格納ブラケット72の幅よりも長くされている。
【0029】
ジブ25が垂下された状態で、フック装置71が巻き上げられると、
図2に示すように、ピン83が傾斜面84に当接し、傾斜面84を摺動する。さらにフック装置71の巻き上げを進めると、
図1の要部Aの拡大図である
図4に示すように、傾斜面84を摺動したピン83が凹部85に嵌る。
【0030】
(検出装置)
また、
図2および
図4に示すように、ジブ係留装置70は、検出装置73を有している。検出装置73は、例えばリミットスイッチであり、ジブ格納ブラケット72に設けられている。検出装置73は、凹部85内の所定位置にピン83が位置したことを検出する。所定位置は、凹部85の上端よりも下方に位置している。
【0031】
フック装置71の巻き上げ中に、ピン83が所定位置に位置したことを検出装置73が検出した場合に、フック装置71の巻き上げが停止される。これにより、凹部85の上端にピン83が衝突してフック装置71が破損するのが抑制される。
【0032】
(駆動機構)
また、ジブ係留装置70は、
図1に示すように、駆動機構74を有している。駆動機構74は、タワー24に対して折り畳まれた状態のジブ25をタワー24に係留する際に、鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢のタワー24に、垂下したジブ25を引き寄せる。また、駆動機構74は、タワー24に係留されたジブ25をタワー24から解放する際に、鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢のタワー24に引き寄せられているジブ25を、タワー24から離隔させる。
【0033】
駆動機構74は、ロープ86と、ウインチ87と、ガイドシーブ(回転体)88と、シーブ89と、を有している。フック装置71の拡大図である
図5に示すように、ロープ86は、ピン83に連結される。
図4に示すように、ピン83は、凹部85に嵌った際にジブ格納ブラケット72のタワー24側(図中左側)の下端よりも上側に位置する。なお、ロープ86の代わりに、ワイヤ、チェーン等の紐状部材を用いてもよい。
【0034】
図5を上から見た図である
図6に示すように、ピン83には、一対の連結部材91が取り付けられている。連結部材91は、フック装置71のフック本体81の両側にそれぞれ配置されている。ロープ86の先端には、シャックル92が設けられている。一対の連結部材91とシャックル92とが、一対のワイヤ93でそれぞれ連結されることで、ロープ86がピン83に連結される。なお、ワイヤ93の代わりにリンクを用いてもよい。
【0035】
図1に示すように、ウインチ87は、タワー24の下部ブーム24aに設けられている。ウインチ87は、ロープ86の巻き取りおよび繰り出しを行う。ウインチ87は、タワー24の背面側に配置されている。なお、ウインチ87は、上部旋回体22(特に、タワー24側の部分)に設けられていてもよいし、下部走行体21(特に、タワー24側の部分)に設けられていてもよい。
【0036】
ガイドシーブ88およびシーブ89は、ロープ86をガイドするものである。シーブ89は、タワー24の下部ブーム24aの腹面側に取り付けられている。ガイドシーブ88は、ブラケット1に取り付けられている。ブラケット1は、タワー24の腹面に着脱可能に取り付けられる。ブラケット1については後述する。なお、ガイドシーブ88の代わりに、ローラ等を用いてもよい。
【0037】
ガイドシーブ88は、ピン83に連結されたロープ86をウインチ87で巻き取る際に、ガイドシーブ88よりも上流側のロープ86が、ジブ25の長手方向にほぼ直交する方向に引っ張られるように、ロープ86をガイドする。言い換えれば、ガイドシーブ88よりも上流側のロープ86をジブ25の長手方向にほぼ直交する方向にガイドするような位置にガイドシーブ88が位置するように、ブラケット1がタワー24の腹面に取り付けられている。
【0038】
ガイドシーブ88よりも上流側のロープ86が、ジブ25の長手方向にほぼ直交する方向に引っ張られるように、ガイドシーブ88でロープ86をガイドすることで、ガイドシーブ88よりも上流側のロープ86がジブ25の長手方向に対して鈍角をなす方向に引っ張られるようにロープ86をガイドするのに比べて、モーメントアームを大きく採ることができる。その結果、小さな力でジブ25を引き寄せることができる。
【0039】
なお、ロープ86が連結部材91に連結されないときには、ロープ86の先端は、タワー24の基部に設けられた繋止部(図示せず)に係止される。
【0040】
(係止装置)
また、
図1に示すように、ジブ係留装置70は、係止装置76と、被係止装置77と、解除ロープ78と、を有している。係止装置76は、タワー24の前面部に設けられている。被係止装置77は、ジブ25に設けられている。被係止装置77は、タワー24に対してジブ25を折り畳んだ際に係止装置76に対向する位置に設けられている。タワー24に対してジブ25が折り畳まれた状態で被係止装置77が係止装置76によって係止されることで、ジブ25をタワー24にロックすることができる。
【0041】
図7~
図9は、係止装置76および被係止装置77の拡大側面図であり、
図10は、係止装置76および被係止装置77の拡大平面図である。係止装置76は、ロックピン51を有する。このロックピン51が、被係止装置77の係止軸61を係止する係止位置(
図7に示す位置)と、係止軸61の係止を解除する係止解除位置(
図8、
図9に示す位置)との間で移動することによって、ジブ25のロックおよびロック解除を実現することができる。
【0042】
タワー24に取り付けられたタワー側ブラケット52には、レバー支持ブラケット53が突設されており、このレバー支持ブラケット53に、ロック解除レバー54が支点ピン54aを介して回動可能に連結されている。ロック解除レバー54の前端部にはロックピン51が連結されており、ロック解除レバー54の後端部には解除ロープ78が連結されている。なお、ロープの代わりに、ワイヤ、チェーン等の紐状部材、ロッド等の棒状部材を用いてもよい。
【0043】
タワー側ブラケット52に取り付けられたロックフレーム56には、ガイド筒56aが形成されるとともに、ガイド筒56aに相対する位置にロック穴56bが形成されている。ロックピン51はガイド筒56a内を上下に移動することによって、ロックピン51がロック穴56bに嵌合する係止位置と、ロックピン51がロック穴56bから外れた係止解除位置との間で移動可能となっている。
【0044】
ロック解除レバー54は、ロックピン51を係止位置に移動させるロック位置(
図7に示す位置)と、ロックピン51を係止解除位置に移動させるロック解除位置(
図8、
図9に示す位置)との間で移動可能(回動可能)である。ロック解除レバー54のうち支点ピン54aよりも前側(ジブ25側)の部分とタワー側ブラケット52との間には、ロックスプリング57が介装されている。ロック解除レバー54は、ロックスプリング57によってロック位置の方向に付勢されている。
【0045】
ロックフレーム56内には、ピンブロック部材58が設けられている。ピンブロック部材58は、ロックフレーム56内を前後方向に移動可能であり、スプリング58aによって前方に付勢されている。
図8、
図9に示すように、ロックピン51が係止解除位置にあるときには、ピンブロック部材58がガイド筒56aの一部を閉塞する位置まで付勢される。これによって、ロックピン51がピンブロック部材58によってブロックされ、係止位置に移動できないようになっている。
【0046】
(解除ロープ)
解除ロープ78は、ロック解除レバー54の後端部に連結されている。この解除ロープ78を引っ張ることにより、ロックスプリング57による付勢力に抗してロック解除レバー54をロック解除位置に移動させることが可能である。即ち、係止装置76と被係止装置77との係合を解除することが可能である。また、解除ロープ78を引っ張るのを止めれば、ロックスプリング57による付勢力によって、ロック解除レバー54がロック位置に移動可能となる。
【0047】
(被係止装置)
ジブ25に設けられた被係止装置77は、係止軸61を有しており、この係止軸61がロックピン51によって係止されることで、折り畳まれた状態のジブ25がタワー24にロックされる。
図10に示すように、ジブ25に取り付けられたジブ側ブラケット62には、左右一対の軸支持ブラケット63が突設されている。軸支持ブラケット63の先端にはベアリング63aが設けられており、左右一対のベアリング63aによりロックピン51と交差する係止軸61が支持されている。
【0048】
上記のような構成において、
図7に示すように、係止位置にあるロックピン51により、ロックピン51よりもタワー24側に位置する係止軸61が係止されることで、ジブ25がタワー24の前面部にロックされる。ジブ25がロック状態であることは、運転室23に設けられたモニタランプにより作業者に報知される。
【0049】
ジブ25のロックを解除する場合には、解除ロープ78を引っ張る。これにより、ロックスプリング57による付勢力に抗してロック解除レバー54がロック解除位置に移動する。
【0050】
その結果、
図8に示すように、ロックピン51が係止解除位置に移動し、係止軸61の係止状態が解除される。すると、係止軸61がスプリング58aの付勢力によってピンブロック部材58に押される。このとき、ジブ25をタワー24から前方に振り出すように起伏操作することで、ジブ25のロックが解除される。また、後述するように、タワー24が鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢である場合には、ジブ25が自重でタワー24から離隔することで、ジブ25のロックが解除される。このとき、ロックピン51はピンブロック部材58によってブロックされ、ロックピン51が係止位置に戻ることはない。ジブ25のロックが解除状態であることは、運転室23に設けられたモニタランプにより作業者に報知される。
【0051】
ジブ25をロックする場合には、
図9に示す状態において、ジブ25をタワー24の前面に向かって折り畳む。すると、係止軸61がピンブロック部材58に当接し、スプリング58aの付勢力に抗してピンブロック部材58をタワー24側に押し込む。その結果、ピンブロック部材58によるロックピン51のブロックが解除され、
図7に示すように、ロックスプリング57の付勢力によりロック解除レバー54がロック位置に移動するのと同時に、ロックピン51が係止位置に移動し、ジブ25がタワー24にロックされる。
【0052】
(ブラケット)
また、ジブ係留装置70は、
図1に示すように、ブラケット1を有している。上述したように、ブラケット1は、タワー24の腹面に着脱可能に取り付けられる。
【0053】
ブラケット1の正面図である
図11、および、ブラケット1の側面図である
図12に示すように、ブラケット1は、本体部2と、取付部3と、を有している。
【0054】
図11に示すように、ブラケット1は、図中上下方向に互いに離隔して配置されて、互いに図中左右方向に延びる2本のパイプ11を有している。本体部2は、2本のパイプ11の中央部に設けられている。取付部3は、2本のパイプ11の両端部にそれぞれ設けられている。
【0055】
本体部2には、上述したガイドシーブ88が取り付けられている。ガイドシーブ88は、ジブ25側に設けられたジブ側部材に係合可能なブーム側部材の一例である。ブーム側部材がガイドシーブ88の場合、ジブ側部材はロープ86である。
【0056】
なお、ガイドシーブ88の代わりに、上述した係止装置76が本体部2に取り付けられていてもよい。ブーム側部材が係止装置76の場合、ジブ側部材は被係止装置77である。また、ガイドシーブ88の代わりに、上述した係止装置76を被係止装置77に向かって進出させる移動機構(例えばシリンダ装置)が本体部2に取り付けられていてもよい。
【0057】
図12に示すように、本体部2には、パイプ11の長手方向(紙面に直交する方向)に直交する方向に突出した一対のフレーム12を有している。この一対のフレーム12の間に、ガイドシーブ88が着脱可能に取り付けられている。
【0058】
ガイドシーブ88の外周に位置する個所において、一対のフレーム12には、2つのピン13が挿通されている。これらピン13は、ガイドシーブ88に架け渡されたロープ86がガイドシーブ88から外れるのを防止するものである。
【0059】
ブラケット1の上面図である
図13に示すように、取付部3の上側には、リンク14が設けられている。同様に、取付部3の下側にも、リンク14が設けられている。リンク14は、パイプ11の長手方向の外側に取付部3から突出した張り出し位置(
図13に図示する位置)と、取付部3の上側および下側に重なる格納位置(
図11に示す位置)との間で、180度回転される。リンク14は、張り出し位置および格納位置において、それぞれピンで固定される。
【0060】
タワー24の腹面に対してブラケット1が着脱される際には、リンク14が張り出し位置に位置され、リンク14に締結されたワイヤを介して、別のクレーン(図示せず)でブラケット1が吊り下げられる。ブラケット1が取り付けられた状態のタワー24が、タワークレーン20から取り外されてトレーラなどで搬送される際には、規定された輸送高さとなるように、リンク14が格納位置に位置される。
【0061】
図11に示すように、取付部3には、複数の取付手段が設けられている。本実施形態では、取付部3には、複数の取付穴15が取付手段として形成されている。これら取付穴15には、Uボルトが取り付けられる。Uボルトの両端がそれぞれ挿通されるため、取付穴15は2個1組で用いられる。なお、取付手段は取付穴15に限定されず、金具などであってもよい。
【0062】
ここで、複数の取付穴15のうち、パイプ11の長手方向に直交する方向(紙面上下方向)に対して傾斜した平行四辺形を形成する4つの取付穴15を取付穴15Aとする。また、取付穴15Aの上方に配置されて、パイプ11の長手方向に並んだ2つの取付穴15を取付穴15Bとする。また、取付穴15Aの下方に配置されて、パイプ11の長手方向に直交する方向に並んだ2つの取付穴15を取付穴15Cとする。また、取付穴15Bの下方に配置されて、パイプ11の長手方向に直交する方向に平行な長方形を形成する4つの取付穴15を取付穴15Dとする。取付穴15Cは、パイプ11の長手方向に直交する方向に長い長穴である。
【0063】
後述するように、取付穴15A、取付穴15B、および、取付穴15Dは、メインパイプ(主柱)24dに取り付け可能な主柱取付手段である(
図16、
図18、
図20、
図22参照)。また、取付穴15Cは、直交パイプ(横材)24eに取り付け可能な横材取付手段である(
図18、
図20参照)。
【0064】
図11の要部Cの背面図である
図14に示すように、取付部3は、タワー24に接する複数種類の座面16を有している。複数種類の座面16のタワー24側(紙面手前側)への突出高さは、互いに異なっている。具体的には、座面16Bは、座面16Aよりもタワー24側に突出している。座面16Cは、座面16Bよりもタワー24側に突出している。
【0065】
座面16Aには、取付穴15Aが形成されている。座面16Bは、タワー24の長手方向(紙面上下方向)に3つ設けられており、パイプ11の長手方向(紙面左右方向)において、取付部3の外側寄りにそれぞれ配置されている。上側1つの座面16Bの両側には、取付穴15Bが配置されている。下側2つの座面16Bの両側には、取付穴15Dが配置されている。座面16Cは、タワー24の長手方向の下方に設けられており、パイプ11の長手方向において、取付部3の内側寄りに配置されている。座面16Cには、取付穴15Cが形成されている。
【0066】
上述したように、タワー24は、下部ブーム24a、中間ブーム24b、および、上部ブーム24cが連結されて構成されている。下部ブーム24a、中間ブーム24b、および、上部ブーム24cは、単位部材であり、それぞれ複数種類ある。ジブ25についても同様である。よって、タワー24の構成とジブ25の構成との組み合わせパターンは、数百パターンにも上る。このすべての組み合わせパターンに対して、ガイドシーブ88をタワー24の腹面の所望の位置に取り付ける必要がある。
【0067】
そこで、複数種類の単位部材のいずれにおいても、複数の取付穴15のいずれかが利用されることで、取付部3がタワー24の腹面に取り付け可能に構成されている。タワー24の複数個所の各々において、ブラケット1が取り付けられた状態を
図15A~
図15Dに示す。
図15Aは、タワー24の下部ブーム24aの腹面にブラケット1が取り付けられた状態を示している。
図15Bは、タワー24の下部ブーム24aと中間ブーム24bとの連結部分の腹面にブラケット1が取り付けられた状態を示している。
図15Cは、タワー24の中間ブーム24b同士の連結部分の腹面にブラケット1が取り付けられた状態を示している。
図15Dは、タワー24の中間ブーム24bの腹面にブラケット1が取り付けられた状態を示している。
【0068】
図15Aの要部Dの拡大図である
図16に示すように、下部ブーム24aの腹面に取付部3が取り付けられる際には、取付穴15Aが利用される。下部ブーム24aのメインパイプ24dは、パイプ11の長手方向に直交する方向(紙面上下方向)に対して傾斜している。4つの取付穴15Aが形成する平行四辺形は、メインパイプ24dの傾斜角度と同じ角度で傾斜している。取付穴15Aを2個1組として、これらにUボルトが取り付けられることで、取付部3がメインパイプ24dに取り付けられる。このとき、メインパイプ24dには、座面16Aが当接される(
図14参照)。
【0069】
ここで、メインパイプ(主柱)24dは、タワー24の長手方向から見たときに角の位置に配置されたパイプである。
【0070】
図16をH方向から見た図である
図17に示すように、下部ブーム24aのメインパイプ24dの側面で形成される腹面は、単一の平面である。単一の座面16Aをメインパイプ24dに当接させることで、取付部3を安定して下部ブーム24aの腹面に取り付けることができる。
【0071】
図15Bの要部Eの拡大図である
図18に示すように、下部ブーム24aと中間ブーム24bとの連結部分の腹面に取付部3が取り付けられる際には、取付穴15Bおよび取付穴15Cが利用される。取付穴15Bを2個1組として、これらにUボルトが取り付けられることで、中間ブーム24bのメインパイプ24dに取付部3が取り付けられる。このとき、中間ブーム24bのメインパイプ24dには、座面16Bが当接される(
図14参照)。また、取付穴15Cを2個1組として、これらにUボルトが取り付けられることで、下部ブーム24aの直交パイプ24eに取付部3が取り付けられる。このとき、下部ブーム24aの直交パイプ24eには、キーパプレート17(
図19参照)を介して座面16Cが当接される(
図14参照)。
【0072】
ここで、直交パイプ(横材)24eは、メインパイプ24d同士をつなぎ、タワー24の長手方向に直交する方向(図中左右方向)に延びるように設けられたパイプである。取付穴15Cが長穴であるため、取付部3と直交パイプ24eとの上下方向の位置を調整することができる。
【0073】
図18をI方向から見た図である
図19に示すように、中間ブーム24bのメインパイプ24dの側面で形成される腹面に対して、下部ブーム24aのメインパイプ24dの側面で形成される腹面は傾斜している。つまり、下部ブーム24aと中間ブーム24bとの連結部分において、タワー24の腹面は、単一の平面でない。これに対して、中間ブーム24bのメインパイプ24dに座面16Bを当接させ、下部ブーム24aの直交パイプ24eに、キーパプレート17を介して座面16Cを当接させることで、取付部3を安定してタワー24の腹面に取り付けることができる。
【0074】
図15Cの要部Fの拡大図である
図20に示すように、中間ブーム24b同士の連結部分の腹面に取付部3が取り付けられる際には、取付穴15Bおよび取付穴15Cが利用される。取付穴15Bを2個1組として、これらにUボルトが取り付けられることで、上側の中間ブーム24bのメインパイプ24dに取付部3が取り付けられる。このとき、上側の中間ブーム24bのメインパイプ24dには、座面16Bが当接される(
図14参照)。また、取付穴15Cを2個1組として、これらにUボルトが取り付けられることで、下側の中間ブーム24bの直交パイプ24eに取付部3が取り付けられる。このとき、下側の中間ブーム24bの直交パイプ24eには、座面16Cが当接される(
図14参照)。
【0075】
図20をJ方向から見た図である
図21に示すように、中間ブーム24b同士の連結部分は、メインパイプ24dよりもブラケット1側に突出している。つまり、タワー24の腹面は、単一の平面でない。これに対して、上側の中間ブーム24bのメインパイプ24dに座面16Bを当接させ、下側の中間ブーム24bの直交パイプ24eに座面16Cを当接させることで、取付部3を安定してタワー24の腹面に取り付けることができる。
【0076】
図15Dの要部Gの拡大図である
図22に示すように、中間ブーム24bの腹面に取付部3が取り付けられる際には、取付穴15Dが利用される。下部ブーム24aのメインパイプ24dは、パイプ11の長手方向に直交する方向(紙面上下方向)に平行である。4つの取付穴15Dが形成する長方形もまた、パイプ11の長手方向に直交する方向に平行である。取付穴15Dを2個1組として、これらにUボルトが取り付けられることで、取付部3がメインパイプ24dに取り付けられる。このとき、メインパイプ24dには、座面16Bが当接される(
図14参照)。
【0077】
図22をK方向から見た図である
図23に示すように、中間ブーム24bのメインパイプ24dの側面で形成される腹面は、単一の平面である。単一の座面16Bをメインパイプ24dに当接させることで、取付部3を安定して中間ブーム24bの腹面に取り付けることができる。
【0078】
このように、複数種類の単位部材のいずれにおいても、取付部3に形成された複数の取付穴15のいずれかが利用されることで、取付部3がタワー24の腹面に取り付け可能に構成されている。ジブ25側に設けられたジブ側部材(ロープ86)に、本体部2に取り付けられたブーム側部材(ガイドシーブ88)を係合させるには、タワー24の腹面の所望の位置に取付部3を取り付ける必要がある。取付部3に形成された複数の取付穴15のいずれかを利用することで、複数種類の単位部材のいずれにおいても、取付部3を取り付けることができる。よって、タワー24の構成とジブ25の構成との組み合わせがどのようなものであっても、タワー24の腹面の所望の位置にブラケット1を取り付けることができる。
【0079】
また、取付部3は、互いに連結された2つの単位部材に跨って、タワー24の腹面に取り付け可能に構成されている。
図15Bおよび
図15Cに示したように、ジブ側部材の位置に合うようなブーム側部材の位置が、2つの単位部材に跨る位置である場合が想定される。このような場合でも、ブーム側部材が適切な位置に配置されるように、ブラケット1をタワー24の腹面に取り付けることができる。
【0080】
また、取付穴15は、タワー24のメインパイプ24dに取り付け可能な取付穴15A、取付穴15B、および、取付穴15Dと、タワー24の直交パイプ24eに取り付け可能な取付穴15Cと、を有している。よって、タワー24の様々な位置にブラケット1を取り付けることができる。
【0081】
また、取付部3が、タワー24に接する複数種類の座面16を有している。複数種類の座面16のタワー24側への突出高さは、互いに異なっている。例えば、タワー24の単位部材である、下部ブーム24aと中間ブーム24bとの連結部分や、中間ブーム24b同士の連結部分においては、タワー24の腹面は単一の平面ではない。そこで、これら連結部分を跨いで取付部3を取り付ける場合に、適切な座面16をタワー24に接触させることで、取付部3をタワー24の腹面に安定して取り付けることができる。
【0082】
また、ブーム側部材が、ロープ86をガイドするガイドシーブ88である。タワー24を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にした状態で、ロープ86を巻き取ることでタワー24にジブ25を十分に引き寄せるには、ガイドシーブ88よりも上流側のロープ86をジブ25の長手方向にほぼ直交する方向にガイドするような位置に、ガイドシーブ88を位置させる必要がある。本実施形態では、タワー24の腹面の所望の位置にブラケット1を取り付けることができるので、所望の位置にガイドシーブ88を位置させることができる。
【0083】
(ジブ係留装置の動作)
次に、ジブ係留装置70の動作について、図面を参照しつつ説明する。
図24~
図28は、タワークレーン20の側面図である。
【0084】
(係留ステップ)
まず、折り畳まれた状態のジブ25をタワー24に係留する場合について説明する。まず、
図24に示すように、ブーム起伏ロープ41を繰り出すことで、タワー24を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にする。本実施形態において、タワー24の水平面からの傾斜角度は80度であるが、傾斜角度はこれに限定されない。
【0085】
次に、ジブ起伏ロープ38を繰り出して、ジブ25を鉛直方向に垂下した状態にする。次に、ロープ86を繰り出して、ロープ86の先端を地面近くまで降ろす。また、巻上ロープ32を繰り出して、フック装置71を地面近くまで降ろす。そして、ロープ86の先端を連結部材91(
図5参照)に連結する。
【0086】
次に、ロープ86と巻上ロープ32とを同時に巻き取っていく。なお、ロープ86および巻上ロープ32の巻き取りを、同時に行わなくてもよい。
【0087】
巻上ロープ32を巻き取ることで、フック装置71を巻き上げていくと、
図2に示すように、ピン83が傾斜面84に当接し、傾斜面84を摺動する。さらにフック装置71を巻き上げると、傾斜面84を摺動したピン83が凹部85に嵌る。所定位置にピン83が位置したことを検出装置73が検出すると、フック装置71の巻き上げが停止される。
【0088】
次に、
図25に示すように、ウインチ87でロープ86を巻き取っていくと、フック装置71がタワー24に引き寄せられることで、
図26に示すように、垂下していたジブ25がタワー24の前面部に引き寄せられる。
【0089】
ジブ25がタワー24に十分に近接すると、
図8に示すように、係止軸61がピンブロック部材58に当接し、ピンブロック部材58をタワー24側に押し込む。これにより、
図7に示すように、ロック解除レバー54がロック位置に移動するのと同時に、ロックピン51が係止位置に移動する。これにより、ジブ25をタワー24に係留する際に、タワー24に引き寄せられたジブ25を確実にロックすることができる。
【0090】
次に、
図27に示すように、ロープ86および巻上ロープ32を繰り出しながら、フック装置71を地面近くまで降ろす。そして、ロープ86の先端と連結部材91との連結を解除する。そして、ロープ86の先端を繋止部に連結する。
【0091】
その後、
図28に示すように、ブーム起伏ロープ41を繰り出すことで、タワー24を倒伏させる。
【0092】
(解放ステップ)
次に、タワー24に係留されたジブ25をタワー24から解放する場合について説明する。まず、
図28に示すように、タワー24が倒伏された状態から、ブーム起伏ロープ41を巻き取ることで、
図27に示すように、タワー24を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にする。本実施形態において、タワー24の水平面からの傾斜角度は80度であるが、傾斜角度はこれに限定されない。
【0093】
次に、ロープ86を繰り出して、ロープ86の先端を地面近くまで降ろす。また、巻上ロープ32を繰り出して、フック装置71を地面近くまで降ろす。そして、ロープ86の先端を連結部材91(
図5参照)に連結する。
【0094】
次に、
図26に示すように、ロープ86と巻上ロープ32とを同時に巻き取っていく。なお、ロープ86および巻上ロープ32の巻き取りを、同時に行わなくてもよい。
【0095】
巻上ロープ32を巻き取ることで、フック装置71を巻き上げていくと、
図2に示すように、ピン83が傾斜面84に当接し、傾斜面84を摺動する。さらにフック装置71を巻き上げると、傾斜面84を摺動したピン83が凹部85に嵌る。所定位置にピン83が位置したことを検出装置73が検出すると、フック装置71の巻き上げが停止される。
【0096】
次に、
図8に示すように、解除ロープ78を引っ張ることで、ロック解除レバー54がロック解除位置に移動すると同時に、ロックピン51が係止解除位置に移動し、係止軸61の係止状態が解除される。これにより、ジブ25のロックが解除され、ジブ25は自重でタワー24から離隔する。
【0097】
次に、ウインチ87でロープ86を繰り出す。これにより、
図25に示すように、フック装置71がタワー24から離隔することで、ジブ25がタワー24から離隔していき、最終的に、ジブ25がタワー24から垂下した状態になる。
【0098】
次に、
図24に示すように、ロープ86を繰り出しながら、巻上ロープ32を繰り出して、フック装置71を地面近くまで降ろす。そして、ロープ86の先端と連結部材91との連結を解除する。
【0099】
その後、巻上ロープ32を巻き取って、フック装置71をジブ格納ブラケット72の近傍まで巻き上げる。また、ロープ86の先端を繋止部に連結する。
【0100】
(効果)
以上に述べたように、本実施形態に係るブラケット1によると、複数種類の単位部材のいずれにおいても、取付部3に形成された複数の取付穴15のいずれかが利用されることで、取付部3がタワー24の腹面に取り付け可能に構成されている。ジブ25側に設けられたジブ側部材(ロープ86)に、本体部2に取り付けられたブーム側部材(ガイドシーブ88)を係合させるには、タワー24の腹面の所望の位置に取付部3を取り付ける必要がある。取付部3に形成された複数の取付穴15のいずれかを利用することで、複数種類の単位部材のいずれにおいても、取付部3を取り付けることができる。よって、タワー24の構成とジブ25の構成との組み合わせがどのようなものであっても、タワー24の腹面の所望の位置にブラケット1を取り付けることができる。
【0101】
また、取付部3は、互いに連結された2つの単位部材に跨って、タワー24の腹面に取り付け可能に構成されている。
図15Bおよび
図15Cに示したように、ジブ側部材の位置に合うようなブーム側部材の位置が、2つの単位部材に跨る位置である場合が想定される。このような場合でも、ブーム側部材が適切な位置に配置されるように、ブラケット1をタワー24の腹面に取り付けることができる。
【0102】
また、取付穴15は、タワー24のメインパイプ24dに取り付け可能な取付穴15A、取付穴15B、および、取付穴15Dと、タワー24の直交パイプ24eに取り付け可能な取付穴15Cと、を有する。よって、タワー24の様々な位置にブラケット1を取り付けることができる。
【0103】
また、取付部3が、タワー24に接する複数種類の座面16を有している。複数種類の座面16のタワー24側への突出高さは、互いに異なっている。例えば、タワー24の単位部材である、下部ブーム24aと中間ブーム24bとの連結部分や、中間ブーム24b同士の連結部分においては、タワー24の腹面は単一の平面ではない。そこで、これら連結部分を跨いで取付部3を取り付ける場合に、適切な座面16をタワー24に接触させることで、取付部3をタワー24の腹面に安定して取り付けることができる。
【0104】
また、ブーム側部材が、ロープ86をガイドするガイドシーブ88である。タワー24を鉛直方向に対して前方に傾斜した姿勢にした状態で、ロープ86を巻き取ることでタワー24にジブ25を十分に引き寄せるには、ガイドシーブ88よりも上流側のロープ86をジブ25の長手方向にほぼ直交する方向にガイドするような位置に、ガイドシーブ88を位置させる必要がある。本実施形態では、タワー24の腹面の所望の位置にブラケット1を取り付けることができるので、所望の位置にガイドシーブ88を位置させることができる。
【0105】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施の形態に記載された、作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0106】
1 ブラケット
2 本体部
3 取付部
11 パイプ
12 フレーム
13 ピン
14 リンク
15 取付穴(取付手段)
15A,15B,15D 取付穴(主柱取付手段)
15C 取付穴(横材取付手段)
16 座面
17 キーパプレート
20 タワークレーン
21 下部走行体
22 上部旋回体
23 運転室
24 タワー(ブーム)
24a 下部ブーム
24b 中間ブーム
24c 上部ブーム
24d メインパイプ(主柱)
24e 直交パイプ(横材)
25 ジブ
26 ガントリ
27 ストラット
28 下部スプレッダ
29 カウンタウエイト
30 バックストップ装置
31 ジブポイントシーブ
32 巻上ロープ
34 ジブガイライン
35 ジブ起伏用下部スプレッダ
36 ジブガイライン
37 ジブ起伏用上部スプレッダ
38 ジブ起伏ロープ
39 ブームガイライン
40 上部スプレッダ
41 ブーム起伏ロープ
42 ブームフットピン
43 フック用ウインチ
44 ジブ起伏用ウインチ
45 ブーム起伏用ウインチ
51 ロックピン
52 タワー側ブラケット
53 レバー支持ブラケット
54 ロック解除レバー
56 ロックフレーム
57 ロックスプリング
58 ピンブロック部材
61 係止軸
62 ジブ側ブラケット
63 軸支持ブラケット
70 ジブ係留装置
71 フック装置
72 ジブ格納ブラケット
73 検出装置
74 駆動機構
76 係止装置
77 被係止装置
78 解除ロープ
81 フック本体
82 フック
83 ピン
84 傾斜面
85 凹部
86 ロープ(ジブ側部材)
87 ウインチ
88 ガイドシーブ(ブーム側部材、回転体)
89 シーブ
91 連結部材
92 シャックル
93 ワイヤ