(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】積層鉄心の製造装置
(51)【国際特許分類】
B21D 28/02 20060101AFI20240130BHJP
B21D 45/08 20060101ALI20240130BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20240130BHJP
H02K 15/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B21D28/02 D
B21D45/08 Z
H01F41/02 B
H02K15/02 E
H02K15/02 F
(21)【出願番号】P 2022174393
(22)【出願日】2022-10-31
(62)【分割の表示】P 2017208480の分割
【原出願日】2017-10-27
【審査請求日】2022-10-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂野 肇
(72)【発明者】
【氏名】小野 真平
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-026735(JP,A)
【文献】特開2006-035267(JP,A)
【文献】特開2003-311486(JP,A)
【文献】特開2011-073047(JP,A)
【文献】特開昭58-219040(JP,A)
【文献】特開平10-319154(JP,A)
【文献】特開平06-269996(JP,A)
【文献】特開昭50-027190(JP,A)
【文献】特許第5859715(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 28/02
H02K 15/02
H01F 41/02
B21D 45/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状のワークから鉄心片を打ち抜くダイ及びパンチと、前記パンチの進退方向において前記パンチとは反対側から前記鉄心片に対して背圧を付与する背圧装置と、を備え、前記パンチと前記背圧装置とによって、積層された複数の前記鉄心片をかしめることにより積層鉄心を製造する装置であって、
前記背圧装置は、
前記パンチの進退方向において変位可能に設けられた支持体と、
前記支持体により支持され、前記鉄心片を前記パンチに向けて付勢する付勢部材と、
前記進退方向に対して直交する直交方向に延びる軸線を中心に回転駆動される出力軸を有する駆動装置と、
前記出力軸の回転運動を前記進退方向における前記支持体の直線運動に変換する変換機構と、
前記進退方向に沿った前記支持体の変位を案内するガイド機構と、を備え、
前記変換機構は、
前記駆動装置の前記出力軸に連結され、前記出力軸に対して偏心した偏心軸部と、
前記偏心軸部を回動可能に支持し、前記偏心軸部からの力を前記支持体に伝達する伝達部材と、を備えており、
前記支持体には、前記伝達部材を収容する収容部が設けられており、
前記収容部は、前記進退方向への前記伝達部材の相対変位を規制する一方、前記進退方向及び前記直交方向の双方に直交する方向への相対変位を許容してなり、
前記支持体は、前記進退方向に沿って延在するとともに前記収容部が設けられたベース部と、前記ベース部に連結されるとともに前記付勢部材を支持する支持部と、を有し、
前記ガイド機構は、前記進退方向において前記支持部に対向するとともに、前記直交方向において前記駆動装置とは反対側から前記ベース部と係合する、
積層鉄心の製造装置。
【請求項2】
前記付勢部材は、ガススプリングである、
請求項1に記載の積層鉄心の製造装置。
【請求項3】
前記進退方向における前記パンチと前記出力軸との間には、前記進退方向に対して直交する方向に沿って前記積層鉄心を取り出す取り出し機構が設けられている、
請求項1または請求項2に記載の積層鉄心の製造装置。
【請求項4】
前記背圧装置は、
前記支持体に対して、前記進退方向に延びる軸線を中心とする同心円上に固定された複数のブッシュと、
前記複数のブッシュにそれぞれ昇降可能に支持された複数のポストと、
前記複数のポストの端部がそれぞれ固定され、前記鉄心片を受ける受け台と、を備え、
前記付勢部材は、前記受け台を介して前記鉄心片を前記パンチに向けて付勢するものである、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の積層鉄心の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層鉄心の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁石挿入型の回転電機のモータコアは、凹凸部が形成された薄板状の磁性鋼板を積層させ、互いに隣り合う磁性鋼板同士の凹凸部を嵌合させてかしめることにより製造される。こうしたモータコア(以下、積層鉄心)の製造装置においては、ダイ及びパンチにより磁性鋼板から鉄心片を打ち抜くと同時に、打ち抜かれた鉄心片に対してパンチとは反対側から背圧を付与する背圧装置を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の背圧装置は、打ち抜かれた鉄心片を保持するスクイズリング内に昇降自在に設けられ、鉄心片が順次載置される受け台と、受け台を支持するボールねじと、ボールねじを回転駆動させる昇降用モータとを備えている。同装置では、磁性鋼板の打ち抜き時に、昇降用モータの出力トルクを高めることで受け台による背圧を高めるようにしている。これにより、複数の鉄心片をかしめて積層する際に鉄心片に対して適切な背圧が付与される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の背圧装置においては、受け台を昇降させるためのボールねじがパンチの進退方向(上下方向)に沿って延在している。そのため、上記進退方向における背圧装置の体格を抑えることには自ずと限界があり、製造装置全体の小型化が困難である。
【0006】
本発明の目的は、小型化することのできる積層鉄心の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための積層鉄心の製造装置は、薄板状のワークから鉄心片を打ち抜くダイ及びパンチと、前記パンチの進退方向において前記パンチとは反対側から前記鉄心片に対して背圧を付与する背圧装置と、を備え、前記パンチと前記背圧装置とによって、積層された複数の前記鉄心片をかしめることにより積層鉄心を製造する装置であって、前記背圧装置は、前記パンチの進退方向において変位可能に設けられた支持体と、前記支持体により支持され、前記鉄心片を前記パンチに向けて付勢する付勢部材と、前記進退方向に対して直交する直交方向に延びる軸線を中心に回転駆動される出力軸を有する駆動装置と、前記出力軸の回転運動を前記進退方向における前記支持体の直線運動に変換する変換機構と、前記進退方向に沿った前記支持体の変位を案内するガイド機構と、を備え、前記変換機構は、前記駆動装置の前記出力軸に連結され、前記出力軸に対して偏心した偏心軸部と、前記偏心軸部を回動可能に支持し、前記偏心軸部からの力を前記支持体に伝達する伝達部材と、を備えており、前記支持体には、前記伝達部材を収容する収容部が設けられており、前記収容部は、前記進退方向への前記伝達部材の相対変位を規制する一方、前記進退方向及び前記直交方向の双方に直交する方向への相対変位を許容してなり、前記支持体は、前記進退方向に沿って延在するとともに前記収容部が設けられたベース部と、前記ベース部に連結されるとともに前記付勢部材を支持する支持部と、を有し、前記ガイド機構は、前記進退方向において前記支持部に対向するとともに、前記直交方向において前記駆動装置とは反対側から前記ベース部と係合する。
【0008】
同構成によれば、パンチにより打ち抜かれた鉄心片は、パンチと付勢部材とによりパンチの進退方向、すなわち鉄心片の厚さ方向において挟圧されることで既にパンチと付勢部材との間にある他の鉄心片とかしめられて積層される。ここで、駆動装置の出力軸を回転させることにより、変換機構を介して支持体を上記進退方向においてパンチと離間する側に変位させることができる。このため、鉄心片の積層枚数に応じて、上記進退方向における付勢部材の位置を変更することができる。
【0009】
上記構成によれば、駆動装置が上記進退方向に対して直交する直交方向に延在するため、駆動装置が上記進退方向に延在する従来の構成と比較して、上記進退方向における背圧装置の体格を小さくすることができる。したがって、製造装置を小型化することができる。
【0010】
また、上記構成によれば、駆動装置の出力軸を回転させると、偏心軸部が出力軸を中心とする所定の円軌道に沿って回転するようになる。このとき、偏心軸部の回転に伴って伝達部材が回転しようとする。ただし、伝達部材は支持体の収容部内において上記態様にて収容されていることから、伝達部材は進退方向と進退方向及び前記直交方向の双方に直交する方向とへ変位しつつ、支持体を進退方向において変位させることとなる。このように、偏心軸部、伝達部材、及び収容部によって変換機構が構成されるため、変換機構の構成を簡単にすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、積層鉄心の製造装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】積層鉄心の製造装置の一実施形態について、製造装置の構成を示す断面図。
【
図4】同実施形態の背圧装置の支持体を中心とした正面図であって、(a)は、支持体が最上位置にあるときの図、(b)は、支持体が最上位置から最下位置に変位する途中の中間位置にあるときの図、(c)は、支持体が最下位置にあるときの図、(d)は、支持体が最下位置から最上位置に変位する途中の中間位置にあるときの図。
【
図5】
図1に対応する図であって、背圧装置の支持体が最下位置にある状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、
図1~
図5を参照して、一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態における積層鉄心の製造装置(以下、製造装置1)は、略円筒状のダイ22を有する下型20と、下型20の上方に設けられ、ダイ22に対して進退可能な略円柱状のパンチ23を有する上型(図示略)とを備えている。
【0014】
下型20には、上面である支持面20aに開口するとともに下型20の内部に設けられた収容空間25に連通する透孔21が設けられている。透孔21の内部には、上記ダイ22が嵌入して固定されている。
【0015】
透孔21の内部におけるダイ22の直下には、ダイ22の内径よりも僅かに小さな内径を有するスクイズリング24が設けられている。
こうした製造装置1においては、電磁鋼板からなる薄板状のワーク10がダイ22の上方に搬送されると、パンチ23がダイ22に向けて降下されることで、ワーク10から略円盤状の鉄心片11が打ち抜かれる。打ち抜かれた鉄心片11は、スクイズリング24内に押し込まれるとともにスクイズリング24によって全周にわたって側方から支持される。
【0016】
上記収容空間25は、下型20における一方(同図の左方)の側面に開口する開口部25aを有している。
収容空間25は、開口部25aに連なる底面26、天井面27、及び内側面28を有している。
【0017】
内側面28は、開口部25aに対向する対向部28aを有している。
底面26のうち内側面28の対向部28aと隣接する部分には、底面26のうちの開口部25a側の部分よりも一段低くされた段差部26aが設けられている。
【0018】
製造装置1は、スクイズリング24内の鉄心片11に対して下側から、すなわちパンチ23の進退方向においてパンチ23とは反対側から背圧を付与する背圧装置30を備えている。
【0019】
次に、本実施形態の背圧装置30について詳細に説明する。
背圧装置30は、駆動装置としてのサーボモータ31、サーボモータ31の出力軸31aに連結された減速機32、減速機32の出力軸に連結された継手33、及び継手33に連結されたシャフト34を備えている。サーボモータ31の出力軸31a、減速機32の出力軸、継手33、及びシャフト34は、同一の軸線C上に位置している。
【0020】
シャフト34は、継手33に連結された円柱状の連結部34aと、連結部34aにおける継手33とは反対側に連なるとともに連結部34aよりも外径が拡径された円柱状の拡径部34bとを有している。
【0021】
シャフト34の連結部34aは、収容空間25内に配置された軸受40により回転可能に支持されている。
本実施形態では、継手33及びシャフト34が収容空間25の内部に収容されている。また、シャフト34の拡径部34bの先端面が収容空間25の内側面28の対向部28aと対向している。
【0022】
なお、以降において、サーボモータ31の出力軸31aの軸線Cに沿う方向(
図2の左右方向)を軸線方向Lとし、軸線方向L及び上下方向の双方に直交する方向(
図2の上下方向)を幅方向Wとして説明する。また、軸線方向Lのうちシャフト34の先端に向かう側及び基端に向かう側をそれぞれ単に先端側及び基端側として説明する。
【0023】
図1及び
図3に示すように、シャフト34の拡径部34bの先端には、軸線Cに対して偏心した偏心軸部35が突設されている。偏心軸部35は、軸線方向Lに沿って延在している。
【0024】
図1~
図3に示すように、シャフト34の先端部には、支持体50が連結されている。支持体50は、スクイズリング24の下方に位置している。支持体50は、幅方向Wに沿って延在する略直方体状のベース部51を備えている。ベース部51には、軸線方向Lに沿って貫通するとともに幅方向Wに沿って延在する収容部51aが設けられている。
【0025】
図3に示すように、収容部51aは正面視において長方形状をなしており、直方体状の空間を構成している。収容部51aには、略立方体状をなす伝達部材36が収容されている。伝達部材36の高さ(上下方向の長さ)は、収容部51aの高さよりも僅かに小さくされている。また、伝達部材36の幅(幅方向Wの長さ)は、収容部51aの幅の半分よりも小さく設定されている。したがって、伝達部材36は、収容部51a内において、上下方向への相対変位が規制される一方、幅方向Wへの相対変位が許容されている。伝達部材36の上下方向及び幅方向Wの中央部には、軸線方向Lに沿って貫通する支持孔36aが設けられている。支持孔36aには、上記シャフト34の偏心軸部35が挿入されている。すなわち、支持孔36aによりシャフト34が回動可能に支持されている。
【0026】
サーボモータ31の出力軸31aが回転されると、シャフト34が回転される。このとき、シャフト34の回転に伴い偏心軸部35が、軸線Cを中心とする所定の円軌道に沿って回転するとともに伝達部材36が回転しようとする。ただし、伝達部材36は収容部51a内において上述した態様にて収容されている。このため、伝達部材36の回転しようとする力、すなわち上下方向及び幅方向Wへ変位しようとする力が支持体50に伝達されて支持体50が上下方向において変位するようになる。
【0027】
なお、
図1に示すように、収容空間25の底面26の段差部26aには、支持体50のベース部51の先端面に設けられた係合部(図示略)に係合して支持体50の上下方向に沿った変位を案内する周知のガイド機構70が設けられている。
【0028】
本実施形態では、シャフト34の偏心軸部35、伝達部材36、及び支持体50の収容部51aによって、シャフト34(サーボモータ31の出力軸31a)の回転運動を支持体50の昇降運動、すなわち上下方向における直線運動に変換する変換機構90が構成されている。
【0029】
図2に示すように、ベース部51の上部には、幅方向Wの中央部から先端側(同図の右側)に向けて張り出した第1の張出部53と、幅方向Wの両端部から基端側(同図の左側)に向けて張り出した一対の第2の張出部54とが設けられている。
【0030】
図2に示すように、第1の張出部53及び各第2の張出部54の上部には、上下方向に沿って延在する中心孔(図示略)を有する都合3つのブッシュ61が同心円上にて固定されている。ブッシュ61の中心孔には、ポスト62の下部が挿入されている。ブッシュ61によりポスト62が昇降可能に支持されている。各ポスト62の上端には、鉄心片11が積層された積層体12を受ける円板状の受け台66が固定されている。各ブッシュ61及び各ポスト62により、支持体50に対する受け台66の上下方向における変位を案内するガイド部材60が構成されている。
【0031】
図2及び
図3に示すように、ベース部51の幅方向Wの中央部には、上方に向けて突出する規制突部55が設けられている。
ベース部51の上端における幅方向Wの両端部には、付勢部材としての一対のガススプリング63が設けられている。ガススプリング63は、ベース部51に固定され、内部にガスが封入されたシリンダ64と、シリンダ64内に収容され、シリンダ64に対して昇降可能に設けられたロッド65とを備えている。ロッド65は、シリンダ64から上方に向けて突出している。
【0032】
なお、ガススプリング63による反力は、ロッド65の可動範囲内において略一定とされている。
各ロッド65の上端は、円板状の受け台66の下面に固定されている。
【0033】
ここで、上記規制突部55の上面は、支持体50のうち最も上側に位置している。したがって、ガススプリング63の付勢力に抗して受け台66が支持体50に向けて近接する際に、受け台66の下面が規制突部55の上面に当接されることにより、受け台66の変位が規制されるようになっている。
【0034】
こうした構成を備える背圧装置30において、支持体50は、
図1に示す最上位置から
図5に示す最下位置までの範囲内において昇降可能とされている。
すなわち、
図1に示すように、支持体50が最上位置にあるの受け台66の上面は、スクイズリング24の下面と上下方向において略同一位置にある。
【0035】
図1及び
図5に示すように、下型20には、軸線方向Lに沿って延在するとともに収容空間25における内側面28の対向部28aに開口する貫通孔29が設けられている。
貫通孔29内には、軸線方向Lに沿って往復動可能に設けられ、上記受け台66上に載置されている積層体12を押し出す押出機構81が設けられている。
【0036】
また、収容空間25内における上記押出機構81とは反対側には、押出機構81により開口部25aに向けて押し出された積層鉄心12aを下型20の外部に搬送するベルトコンベア82が設けられている。ベルトコンベア82は、サーボモータ31、減速機32、継手33、及び軸受40の上方に位置している。
【0037】
ここで、押出機構81及びベルトコンベア82は、受け台66(支持体50)の最下位置に対応して設けられている。
本実施形態では、押出機構81及びベルトコンベア82により、上下方向におけるダイ22とサーボモータ31の出力軸31aとの間に位置し、上下方向に対して直交する軸線方向Lに沿って積層鉄心12aを取り出す取り出し機構80が構成されている。
【0038】
次に、本実施形態の作用について説明する。
本実施形態の製造装置1においては、以下のようにして積層鉄心12aが製造される。
すなわち、まず、背圧装置30の支持体50は、初期状態において、
図4(a)に示す最上位置にある。
【0039】
この状態において、ダイ22の上方に搬送されたワーク10に向けてパンチ23が降下されると、ダイ22及びパンチ23によってワーク10から鉄心片11が打ち抜かれる。パンチ23により打ち抜かれた鉄心片11は、スクイズリング24内に押し込まれる。
【0040】
このようにしてワーク10から打ち抜かれた鉄心片11が順にスクイズリング24内に押し込まれて積層されることにより積層体12が形成される。
ここで、鉄心片11には、所謂ダボ加工により下方に向けて突出形成された周知の結合部(図示略)が設けられている。また、スクイズリング24内においては、鉄心片11がスクイズリング24により全周にわたって側方から支持されている。このため、パンチ23によってスクイズリング24内に押し込められて互いに隣り合う鉄心片11は、それらの結合部同士が凹凸の関係により、かしめられることで互いに結合される。
【0041】
なお、積層体12には、所定の枚数毎に上記結合部が打ち抜かれた孔(図示略)を有するダミーの鉄心片11が含まれる。このため、ダミーの鉄心片11は、当該鉄心片11の直上の鉄心片11とは結合される一方、当該鉄心片11の直下の鉄心片11に対して結合されない。したがって、積層体12は、ダミーの鉄心片11を境界として上下に分離されることとなる。
【0042】
その後、積層体12を構成する鉄心片11の枚数が増加することで最も下側の鉄心片11がスクイズリング24よりも下方に突出すると、積層体12の下面に対して受け台66(背圧装置30)からの背圧が付与されるようになる。これにより、互いに隣り合う積層体12の結合部同士がより強固にかしめられる。
【0043】
またこのとき、ガススプリング63は、スクイズリング24から下方に突出した鉄心片11の厚さ(以下、突出厚さ)の分だけ圧縮される。ここで、上記突出厚さがガススプリング63のロッド65の可動範囲の最大値を超える前に、図示しない制御装置を通じてサーボモータ31が駆動されることにより、ガススプリング63への圧縮力が解放される位置まで支持体50が降下される。
【0044】
ここで、支持体50は以下のようにして降下される。
すなわち、
図4(a)に示すように、支持体50が最上位置にあるときには、偏心軸部35は、軸線Cを中心とする12時位置に位置している。また、伝達部材36は収容部51a内における幅方向Wの中央部に位置している。
【0045】
この状態から、
図4(b)に示すように、サーボモータ31によりシャフト34が時計回りに回転され、偏心軸部35が軸線Cを中心とする3時位置まで回転されると、伝達部材36は収容部51a内における幅方向Wの一方側に向けて変位し、支持体50は上下方向における最上位置と最下位置との中間位置まで降下する。
【0046】
この状態から、
図4(c)に示すように、サーボモータ31によりシャフト34が時計回りに回転され、偏心軸部35が軸線Cを中心とする6時位置まで回転されると、伝達部材36は収容部51a内における幅方向Wの他方側に向けて変位し、幅方向Wの中央部に復帰する。このとき、支持体50は最下位置まで降下する。
【0047】
積層体12を構成する鉄心片11の枚数が増加することで前述したダミーの鉄心片11の直下の鉄心片11がスクイズリング24よりも下方に突出すると、この突出された部分が積層鉄心12aとして分離される。
【0048】
その後、
図5に示すように、受け台66に積層鉄心12aが載置された状態の支持体50が最下位置まで降下されると、押出機構81によりベルトコンベア82上に押し出されて下型20の外部に搬送される。
【0049】
こうして積層鉄心12aが搬送された後に、サーボモータ31によりシャフト34が回転されることにより、支持体50が最上位置まで上昇される。
ここで、支持体50は以下のようにして上昇される。
【0050】
すなわち、
図4(d)に示すように、サーボモータ31によりシャフト34が時計回りに回転され、偏心軸部35が軸線Cを中心とする9時位置まで回転されると、伝達部材36は収容部51a内における幅方向Wの他方側に向けて変位し、支持体50は上記中間位置まで上昇する。
【0051】
そして、この状態から、
図4(a)に示すように、サーボモータ31によりシャフト34が時計回りに回転され、偏心軸部35が軸線Cを中心とする12時位置まで回転されると、伝達部材36は収容部51a内における幅方向Wの一方側に向けて変位し、幅方向Wの中央位置に復帰する。このとき、支持体50は最上位置まで上昇する。
【0052】
以降、上述した一連の手順が繰り返されることによって、積層鉄心12aが製造される。
以上説明した本実施形態に係る積層鉄心の製造装置によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
【0053】
(1)製造装置1は、薄板状のワーク10から鉄心片11を打ち抜くダイ22及びパンチ23と、パンチ23の進退方向においてパンチ23とは反対側から鉄心片11に対して背圧を付与する背圧装置30とを備え、パンチ23と背圧装置30とによって、積層された複数の鉄心片11をかしめることにより積層鉄心12aを製造する。背圧装置30は、パンチ23の進退方向(上下方向)において変位可能に設けられた支持体50と、支持体50により支持され、鉄心片11をパンチ23に向けて付勢する付勢部材としてのガススプリング63とを備えている。また、背圧装置30は、上記進退方向に対して直交する直交方向である軸線方向Lを中心に回転駆動される出力軸31aを有する駆動装置としてのサーボモータ31と、出力軸31aの回転運動を上記進退方向における支持体50の直線運動に変換する変換機構90とを備えている。
【0054】
こうした構成によれば、パンチ23により打ち抜かれた鉄心片11は、パンチ23とガススプリング63とにより上下方向において挟圧されることで、既にパンチ23とガススプリング63との間にある他の鉄心片11とかしめられて積層される。ここで、サーボモータ31の出力軸31aを回転させることにより、変換機構90を介して支持体50を上下方向においてパンチ23と離間する側に変位させることができる。このため、鉄心片11の積層枚数に応じて、上下方向におけるガススプリング63の位置を変更することができる。
【0055】
上記構成によれば、駆動装置としてのサーボモータ31が軸線方向Lに延在するため、駆動装置が上下方向に延在する従来の構成と比較して、上下方向における背圧装置30の体格を小さくすることができる。また、支持体50にガススプリング63を設けることで、支持体50に対して油圧シリンダなどを用いて背圧の調整を行う構成と比較して、上下方向における背圧装置30の体格を小さくすることができる。したがって、製造装置1を小型化することができる。
【0056】
(2)変換機構90は、サーボモータ31の出力軸31aに連結され、出力軸31aに対して偏心した偏心軸部35と、偏心軸部35を回動可能に支持し、偏心軸部35からの力を支持体50に伝達する伝達部材36とを備えている。支持体50には、伝達部材36を収容する収容部51aが設けられている。収容部51aは、上下方向への伝達部材36の相対変位を規制する一方、幅方向Wへの相対変位を許容してなる。
【0057】
こうした構成によれば、サーボモータ31の出力軸31aを回転させると、偏心軸部35が出力軸31aを中心とする所定の円軌道に沿って回転するようになる。このとき、偏心軸部35の回転に伴って伝達部材36が回転しようとする。ただし、伝達部材36は支持体50の収容部51a内において上記態様にて収容されていることから、伝達部材36は上下方向及び幅方向Wへ変位しつつ、支持体50を上下方向において変位させることとなる。このように、偏心軸部35、伝達部材36、及び収容部51aによって変換機構90が構成されるため、変換機構90の構成を簡単にすることができる。
【0058】
(3)上下方向におけるサーボモータ31の出力軸31aとダイ22との間には、軸線方向Lに沿って積層鉄心12aを取り出す取り出し機構80が設けられている。
こうした構成によれば、取り出し機構80が軸線方向Lに沿って積層鉄心12aを取り出すことから、上下方向における取り出し機構80の体格を小さくすることができる。したがって、製造装置1の一層の小型化を図ることができる。
【0059】
(4)背圧装置30は、下型20における収容空間25の底面26に固定されている。
こうした構成によれば、下型20に背圧装置30が固定されているため、下型20と、背圧装置30とが独立して設けられている構成において必要となる下型20と背圧装置30との位置合わせをする工程が不要となる。
【0060】
<変形例>
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・押出機構81により積層鉄心12aを幅方向Wに沿って押し出すようにしてもよい。
【0061】
・押出機構81に代えて、積層鉄心12aを引き抜く機構を採用することもできる。
・ガススプリング63に代えて、コイルスプリングなどの他の弾性部材や、その他の付勢部材を採用することもできる。
【0062】
・伝達部材36の形状は直方体状に限定されず、例えば楕円筒状であってもよい。
・本実施形態ではサーボモータ31を一方向に回転させることで、支持体50を上下方向に変位させるようにしたが、サーボモータ31の正転と逆転を切り替えることで、支持体50を上下方向に変位させるようにすることもできる。また、この場合、支持体50が最上位置にあるときの偏心軸部35の位置は、軸線Cを中心とする12時位置に限定されるものではなく、例えば、最上位置を1時位置に設定するなど、適宜変更することができる。
【0063】
(課題を解決するための手段に関する付記)
上記課題を解決するための手段は、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想である以下の(付記項1~付記項4)を含む。
【0064】
(付記項1)
薄板状のワークから鉄心片を打ち抜くダイ及びパンチと、前記パンチの進退方向において前記パンチとは反対側から前記鉄心片に対して背圧を付与する背圧装置と、を備え、前記パンチと前記背圧装置とによって、積層された複数の前記鉄心片をかしめることにより積層鉄心を製造する装置であって、前記背圧装置は、前記パンチの進退方向において変位可能に設けられた支持体と、前記支持体により支持され、前記鉄心片を前記パンチに向けて付勢する付勢部材と、前記進退方向に対して直交する直交方向を中心に回転駆動される出力軸を有する駆動装置と、前記出力軸の回転運動を前記進退方向における前記支持体の直線運動に変換する変換機構と、を備える、積層鉄心の製造装置。
【0065】
(付記項2)
前記変換機構は、前記駆動装置の前記出力軸に連結され、前記出力軸に対して偏心した偏心軸部と、前記偏心軸部を回動可能に支持し、前記偏心軸部からの力を前記支持体に伝達する伝達部材と、を備えており、前記支持体には、前記伝達部材を収容する収容部が設けられており、前記収容部は、前記進退方向への前記伝達部材の相対変位を規制する一方、前記進退方向及び前記直交方向の双方に直交する方向への相対変位を許容してなる、付記項1に記載の積層鉄心の製造装置。
【0066】
(付記項3)
前記付勢部材は、ガススプリングである、付記項1または付記項2に記載の積層鉄心の製造装置。
【0067】
(付記項4)
前記進退方向における前記パンチと前記出力軸との間には、前記進退方向に対して直交する方向に沿って前記積層鉄心を取り出す取り出し機構が設けられている、付記項1~付記項3のいずれか一つに記載の積層鉄心の製造装置。
【符号の説明】
【0068】
1…製造装置、10…ワーク、11…鉄心片、12…積層体、12a…積層鉄心、20…下型、20a…支持面、21…透孔、22…ダイ、23…パンチ、24…スクイズリング、25…収容空間、25a…開口部、26…底面、26a…段差部、27…天井面、28…内側面、28a…対向部、29…貫通孔、30…背圧装置、31…サーボモータ、31a…出力軸、32…減速機、33…継手、34…シャフト、34a…連結部、34b…拡径部、35…偏心軸部、36…伝達部材、36a…支持孔、40…軸受、50…支持体、51…ベース部、51a…収容部、53…第1の張出部、54…第2の張出部、55…規制突部、60…ガイド部材、61…ブッシュ、62…ポスト、63…ガススプリング、64…シリンダ、65…ロッド、66…受け台、70…ガイド機構、80…取り出し機構、81…押出機構、82…ベルトコンベア、90…変換機構、C…軸線、L…軸線方向、W…幅方向。