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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/36 20060101AFI20240130BHJP
   G01S 13/34 20060101ALN20240130BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20240130BHJP
【FI】
G01S7/36
G01S13/34
G01S13/931
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2022500213
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2020024986
(87)【国際公開番号】W WO2021161551
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2020021746
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓也
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0010344(US,A1)
【文献】特開2006-226779(JP,A)
【文献】特開2012-132687(JP,A)
【文献】特開2007-047112(JP,A)
【文献】特開2007-085999(JP,A)
【文献】特開2002-168944(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101651463(CN,A)
【文献】米国特許第06292592(US,B1)
【文献】米国特許第07038617(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42,
G01S 13/00-13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波としての送信信号を送信する送信部(101、102)と、
前記送信信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信部(103)と、
前記送信信号と前記反射信号とを混合したビート信号が、外乱電磁波による干渉信号の影響を受けている場合に、前記ビート信号から前記干渉信号による影響を除去する干渉信号処理部(201、202)と、
前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号に基づいて、前記対象物を検出する対象物検出部(203)と、を備え、
前記干渉信号処理部は、
前記ビート信号をサンプリングして、時間サンプルにデジタル変換するデジタル変換部(201)と、
前記時間サンプルに対して、解像度が異なる離散ウェーブレット変換を繰り返す多重解像度解析を行って、前記時間サンプルを、複数の周波数スケールに渡る時間-周波数プロットに変換する多重解像度解析部(S101)と、
前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットの中で、前記干渉信号の影響を受けている干渉プロットを検出する干渉プロット検出部(S102)と、
前記干渉プロット検出部により検出された干渉プロットに対して、前記干渉信号の影響を除去する除去処理を行う干渉除去部(S103)と、
前記干渉プロットに対して前記除去処理が行われた、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットに対して多重解像度解析の逆変換を行って、前記時間-周波数プロットを前記時間サンプルに逆変換する逆変換部(S104)と、を有し、
前記干渉プロット検出部は、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットにおいて、各周波数スケールの前記時間-周波数プロット毎に、前記干渉プロットを検出するための処理を実行し、
前記干渉プロット検出部は、前記干渉プロットを検出するための処理の対象となる前記時間-周波数プロットに関して、信号強度が所定の閾値以上であるプロットを前記干渉プロットとして検出し、
前記対象物検出部は、前記逆変換部によって逆変換された前記時間サンプルを、前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号として、前記対象物を検出するレーダ装置。
【請求項2】
電磁波としての送信信号を送信する送信部(101、102)と、
前記送信信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信部(103)と、
前記送信信号と前記反射信号とを混合したビート信号が、外乱電磁波による干渉信号の影響を受けている場合に、前記ビート信号から前記干渉信号による影響を除去する干渉信号処理部(201、202)と、
前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号に基づいて、前記対象物を検出する対象物検出部(203)と、を備え、
前記干渉信号処理部は、
前記ビート信号をサンプリングして、時間サンプルにデジタル変換するデジタル変換部(201)と、
前記時間サンプルに対して、解像度が異なる離散ウェーブレット変換を繰り返す多重解像度解析を行って、前記時間サンプルを、複数の周波数スケールに渡る時間-周波数プロットに変換する多重解像度解析部(S101)と、
前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットの中で、前記干渉信号の影響を受けている干渉プロットを検出する干渉プロット検出部(S102)と、
前記干渉プロット検出部により検出された干渉プロットに対して、前記干渉信号の影響を除去する除去処理を行う干渉除去部(S103)と、
前記干渉プロットに対して前記除去処理が行われた、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットに対して多重解像度解析の逆変換を行って、前記時間-周波数プロットを前記時間サンプルに逆変換する逆変換部(S104)と、を有し、
前記干渉プロット検出部は、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットにおいて、少なくとも2つ以上の周波数スケールの前記時間-周波数プロットをまとめて、前記干渉プロットを検出するための処理を実行し、
前記干渉プロット検出部は、前記干渉プロットを検出するための処理の対象となる前記時間-周波数プロットに関して、信号強度が所定の閾値以上であるプロットを前記干渉プロットとして検出し、
前記対象物検出部は、前記逆変換部によって逆変換された前記時間サンプルを、前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号として、前記対象物を検出するレーダ装置。
【請求項3】
電磁波としての送信信号を送信する送信部(101、102)と、
前記送信信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信部(103)と、
前記送信信号と前記反射信号とを混合したビート信号が、外乱電磁波による干渉信号の影響を受けている場合に、前記ビート信号から前記干渉信号による影響を除去する干渉信号処理部(201、202)と、
前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号に基づいて、前記対象物を検出する対象物検出部(203)と、を備え、
前記干渉信号処理部は、
前記ビート信号をサンプリングして、時間サンプルにデジタル変換するデジタル変換部(201)と、
前記時間サンプルに対して、解像度が異なる離散ウェーブレット変換を繰り返す多重解像度解析を行って、前記時間サンプルを、複数の周波数スケールに渡る時間-周波数プロットに変換する多重解像度解析部(S101)と、
前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットの中で、前記干渉信号の影響を受けている干渉プロットを検出する干渉プロット検出部(S102)と、
前記干渉プロット検出部により検出された干渉プロットに対して、前記干渉信号の影響を除去する除去処理を行う干渉除去部(S103)と、
前記干渉プロットに対して前記除去処理が行われた、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットに対して多重解像度解析の逆変換を行って、前記時間-周波数プロットを前記時間サンプルに逆変換する逆変換部(S104)と、を有し、
前記干渉プロット検出部は、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットにおいて、各周波数スケールの前記時間-周波数プロット毎に、前記干渉プロットを検出するための処理を実行し、
前記干渉プロット検出部は、前記干渉プロットを検出するための処理の対象となる前記時間-周波数プロットに関して、各プロットの信号強度の統計学的な外れ値検定を行い、外れ値に該当する信号強度のプロットを前記干渉プロットとして検出し、
前記対象物検出部は、前記逆変換部によって逆変換された前記時間サンプルを、前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号として、前記対象物を検出するレーダ装置。
【請求項4】
電磁波としての送信信号を送信する送信部(101、102)と、
前記送信信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信部(103)と、
前記送信信号と前記反射信号とを混合したビート信号が、外乱電磁波による干渉信号の影響を受けている場合に、前記ビート信号から前記干渉信号による影響を除去する干渉信号処理部(201、202)と、
前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号に基づいて、前記対象物を検出する対象物検出部(203)と、を備え、
前記干渉信号処理部は、
前記ビート信号をサンプリングして、時間サンプルにデジタル変換するデジタル変換部(201)と、
前記時間サンプルに対して、解像度が異なる離散ウェーブレット変換を繰り返す多重解像度解析を行って、前記時間サンプルを、複数の周波数スケールに渡る時間-周波数プロットに変換する多重解像度解析部(S101)と、
前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットの中で、前記干渉信号の影響を受けている干渉プロットを検出する干渉プロット検出部(S102)と、
前記干渉プロット検出部により検出された干渉プロットに対して、前記干渉信号の影響を除去する除去処理を行う干渉除去部(S103)と、
前記干渉プロットに対して前記除去処理が行われた、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットに対して多重解像度解析の逆変換を行って、前記時間-周波数プロットを前記時間サンプルに逆変換する逆変換部(S104)と、を有し、
前記干渉プロット検出部は、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットにおいて、少なくとも2つ以上の周波数スケールの前記時間-周波数プロットをまとめて、前記干渉プロットを検出するための処理を実行し、
前記干渉プロット検出部は、前記干渉プロットを検出するための処理の対象となる前記時間-周波数プロットに関して、各プロットの信号強度の統計学的な外れ値検定を行い、外れ値に該当する信号強度のプロットを前記干渉プロットとして検出し、
前記対象物検出部は、前記逆変換部によって逆変換された前記時間サンプルを、前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号として、前記対象物を検出するレーダ装置。
【請求項5】
電磁波としての送信信号を送信する送信部(101、102)と、
前記送信信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信部(103)と、
前記送信信号と前記反射信号とを混合したビート信号が、外乱電磁波による干渉信号の影響を受けている場合に、前記ビート信号から前記干渉信号による影響を除去する干渉信号処理部(201、202)と、
前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号に基づいて、前記対象物を検出する対象物検出部(203)と、を備え、
前記干渉信号処理部は、
前記ビート信号をサンプリングして、時間サンプルにデジタル変換するデジタル変換部(201)と、
前記時間サンプルに対して、解像度が異なる離散ウェーブレット変換を繰り返す多重解像度解析を行って、前記時間サンプルを、複数の周波数スケールに渡る時間-周波数プロットに変換する多重解像度解析部(S101)と、
前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットの中で、前記干渉信号の影響を受けている干渉プロットを検出する干渉プロット検出部(S102)と、
前記干渉プロット検出部により検出された干渉プロットに対して、前記干渉信号の影響を除去する除去処理を行う干渉除去部(S103)と、
前記干渉プロットに対して前記除去処理が行われた、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットに対して多重解像度解析の逆変換を行って、前記時間-周波数プロットを前記時間サンプルに逆変換する逆変換部(S104)と、を有し、
前記干渉プロット検出部は、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットにおいて、各周波数スケールの前記時間-周波数プロット毎に、前記干渉プロットを検出するための処理を実行し、
前記干渉プロット検出部は、前記干渉プロットを検出するための処理の対象となる前記時間-周波数プロットに関して、時間軸で隣接するプロットの信号強度を用いて各プロットの信号強度の傾きを求め、その信号強度の傾きが所定の閾値以上であるプロットを前記干渉プロットとして検出し、
前記対象物検出部は、前記逆変換部によって逆変換された前記時間サンプルを、前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号として、前記対象物を検出するレーダ装置。
【請求項6】
電磁波としての送信信号を送信する送信部(101、102)と、
前記送信信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信部(103)と、
前記送信信号と前記反射信号とを混合したビート信号が、外乱電磁波による干渉信号の影響を受けている場合に、前記ビート信号から前記干渉信号による影響を除去する干渉信号処理部(201、202)と、
前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号に基づいて、前記対象物を検出する対象物検出部(203)と、を備え、
前記干渉信号処理部は、
前記ビート信号をサンプリングして、時間サンプルにデジタル変換するデジタル変換部(201)と、
前記時間サンプルに対して、解像度が異なる離散ウェーブレット変換を繰り返す多重解像度解析を行って、前記時間サンプルを、複数の周波数スケールに渡る時間-周波数プロットに変換する多重解像度解析部(S101)と、
前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットの中で、前記干渉信号の影響を受けている干渉プロットを検出する干渉プロット検出部(S102)と、
前記干渉プロット検出部により検出された干渉プロットに対して、前記干渉信号の影響を除去する除去処理を行う干渉除去部(S103)と、
前記干渉プロットに対して前記除去処理が行われた、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットに対して多重解像度解析の逆変換を行って、前記時間-周波数プロットを前記時間サンプルに逆変換する逆変換部(S104)と、を有し、
前記干渉プロット検出部は、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットにおいて、少なくとも2つ以上の周波数スケールの前記時間-周波数プロットをまとめて、前記干渉プロットを検出するための処理を実行し、
前記干渉プロット検出部は、前記干渉プロットを検出するための処理の対象となる前記時間-周波数プロットに関して、時間軸で隣接するプロットの信号強度を用いて各プロットの信号強度の傾きを求め、その信号強度の傾きが所定の閾値以上であるプロットを前記干渉プロットとして検出し、
前記対象物検出部は、前記逆変換部によって逆変換された前記時間サンプルを、前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号として、前記対象物を検出するレーダ装置。
【請求項7】
電磁波としての送信信号を送信する送信部(101、102)と、
前記送信信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信部(103)と、
前記送信信号と前記反射信号とを混合したビート信号が、外乱電磁波による干渉信号の影響を受けている場合に、前記ビート信号から前記干渉信号による影響を除去する干渉信号処理部(201、202)と、
前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号に基づいて、前記対象物を検出する対象物検出部(203)と、を備え、
前記干渉信号処理部は、
前記ビート信号をサンプリングして、時間サンプルにデジタル変換するデジタル変換部(201)と、
前記時間サンプルに対して、解像度が異なる離散ウェーブレット変換を繰り返す多重解像度解析を行って、前記時間サンプルを、複数の周波数スケールに渡る時間-周波数プロットに変換する多重解像度解析部(S101)と、
前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットの中で、前記干渉信号の影響を受けている干渉プロットを検出する干渉プロット検出部(S102)と、
前記干渉プロット検出部により検出された干渉プロットに対して、前記干渉信号の影響を除去する除去処理を行う干渉除去部(S103)と、
前記干渉プロットに対して前記除去処理が行われた、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットに対して多重解像度解析の逆変換を行って、前記時間-周波数プロットを前記時間サンプルに逆変換する逆変換部(S104)と、を有し、
前記干渉プロット検出部は、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットにおいて、各周波数スケールの前記時間-周波数プロット毎に、前記干渉プロットを検出するための処理を実行し、
前記干渉プロット検出部は、前記干渉プロットを検出するための処理の対象となる前記時間-周波数プロットに関して、時間軸で隣接するプロットの信号強度を用いて各プロットの信号強度の傾きを求め、その信号強度の傾きの統計学的な外れ値検定を行い、外れ値に該当する信号強度の傾きのプロットを前記干渉プロットとして検出し、
前記対象物検出部は、前記逆変換部によって逆変換された前記時間サンプルを、前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号として、前記対象物を検出するレーダ装置。
【請求項8】
電磁波としての送信信号を送信する送信部(101、102)と、
前記送信信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信部(103)と、
前記送信信号と前記反射信号とを混合したビート信号が、外乱電磁波による干渉信号の影響を受けている場合に、前記ビート信号から前記干渉信号による影響を除去する干渉信号処理部(201、202)と、
前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号に基づいて、前記対象物を検出する対象物検出部(203)と、を備え、
前記干渉信号処理部は、
前記ビート信号をサンプリングして、時間サンプルにデジタル変換するデジタル変換部(201)と、
前記時間サンプルに対して、解像度が異なる離散ウェーブレット変換を繰り返す多重解像度解析を行って、前記時間サンプルを、複数の周波数スケールに渡る時間-周波数プロットに変換する多重解像度解析部(S101)と、
前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットの中で、前記干渉信号の影響を受けている干渉プロットを検出する干渉プロット検出部(S102)と、
前記干渉プロット検出部により検出された干渉プロットに対して、前記干渉信号の影響を除去する除去処理を行う干渉除去部(S103)と、
前記干渉プロットに対して前記除去処理が行われた、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットに対して多重解像度解析の逆変換を行って、前記時間-周波数プロットを前記時間サンプルに逆変換する逆変換部(S104)と、を有し、
前記干渉プロット検出部は、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットにおいて、少なくとも2つ以上の周波数スケールの前記時間-周波数プロットをまとめて、前記干渉プロットを検出するための処理を実行し、
前記干渉プロット検出部は、前記干渉プロットを検出するための処理の対象となる前記時間-周波数プロットに関して、時間軸で隣接するプロットの信号強度を用いて各プロットの信号強度の傾きを求め、その信号強度の傾きの統計学的な外れ値検定を行い、外れ値に該当する信号強度の傾きのプロットを前記干渉プロットとして検出し、
前記対象物検出部は、前記逆変換部によって逆変換された前記時間サンプルを、前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号として、前記対象物を検出するレーダ装置。
【請求項9】
前記干渉プロット検出部は、前記干渉プロットを検出するための処理の対象となる前記時間-周波数プロットに関して、時間軸で隣接するプロットの信号強度を用いて各プロットの信号強度の和を求め、その信号強度の和の統計学的な外れ値検定を行い、外れ値に該当する信号強度の和のプロットを前記干渉プロットとして検出する請求項7又は8に記載のレーダ装置。
【請求項10】
電磁波としての送信信号を送信する送信部(101、102)と、
前記送信信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信部(103)と、
前記送信信号と前記反射信号とを混合したビート信号が、外乱電磁波による干渉信号の影響を受けている場合に、前記ビート信号から前記干渉信号による影響を除去する干渉信号処理部(201、202)と、
前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号に基づいて、前記対象物を検出する対象物検出部(203)と、を備え、
前記干渉信号処理部は、
前記ビート信号をサンプリングして、時間サンプルにデジタル変換するデジタル変換部(201)と、
前記時間サンプルに対して、解像度が異なる離散ウェーブレット変換を繰り返す多重解像度解析を行って、前記時間サンプルを、複数の周波数スケールに渡る時間-周波数プロットに変換する多重解像度解析部(S101)と、
前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットの中で、前記干渉信号の影響を受けている干渉プロットを検出する干渉プロット検出部(S102)と、
前記干渉プロット検出部により検出された干渉プロットに対して、前記干渉信号の影響を除去する除去処理を行う干渉除去部(S103)と、
前記干渉プロットに対して前記除去処理が行われた、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットに対して多重解像度解析の逆変換を行って、前記時間-周波数プロットを前記時間サンプルに逆変換する逆変換部(S104)と、を有し、
前記干渉プロット検出部は、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットにおいて、各周波数スケールの前記時間-周波数プロット毎に、前記干渉プロットを検出するための処理を実行し、
前記干渉プロット検出部は、前記干渉プロットを検出するための処理の対象となる前記時間-周波数プロットに関して、各プロットの信号強度と、各プロットの前記ビート信号における位相との少なくとも一方の変化が相対的に大きいエッジに相当するプロットを抽出するエッジ抽出処理を行い、エッジに相当するプロットを前記干渉プロットとして検出し、
前記対象物検出部は、前記逆変換部によって逆変換された前記時間サンプルを、前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号として、前記対象物を検出するレーダ装置。
【請求項11】
電磁波としての送信信号を送信する送信部(101、102)と、
前記送信信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信部(103)と、
前記送信信号と前記反射信号とを混合したビート信号が、外乱電磁波による干渉信号の影響を受けている場合に、前記ビート信号から前記干渉信号による影響を除去する干渉信号処理部(201、202)と、
前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号に基づいて、前記対象物を検出する対象物検出部(203)と、を備え、
前記干渉信号処理部は、
前記ビート信号をサンプリングして、時間サンプルにデジタル変換するデジタル変換部(201)と、
前記時間サンプルに対して、解像度が異なる離散ウェーブレット変換を繰り返す多重解像度解析を行って、前記時間サンプルを、複数の周波数スケールに渡る時間-周波数プロットに変換する多重解像度解析部(S101)と、
前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットの中で、前記干渉信号の影響を受けている干渉プロットを検出する干渉プロット検出部(S102)と、
前記干渉プロット検出部により検出された干渉プロットに対して、前記干渉信号の影響を除去する除去処理を行う干渉除去部(S103)と、
前記干渉プロットに対して前記除去処理が行われた、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットに対して多重解像度解析の逆変換を行って、前記時間-周波数プロットを前記時間サンプルに逆変換する逆変換部(S104)と、を有し、
前記干渉プロット検出部は、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットにおいて、少なくとも2つ以上の周波数スケールの前記時間-周波数プロットをまとめて、前記干渉プロットを検出するための処理を実行し、
前記干渉プロット検出部は、前記干渉プロットを検出するための処理の対象となる前記時間-周波数プロットに関して、各プロットの信号強度と、各プロットの前記ビート信号における位相との少なくとも一方の変化が相対的に大きいエッジに相当するプロットを抽出するエッジ抽出処理を行い、エッジに相当するプロットを前記干渉プロットとして検出し、
前記対象物検出部は、前記逆変換部によって逆変換された前記時間サンプルを、前記干渉信号処理部によって処理された前記ビート信号として、前記対象物を検出するレーダ装置。
【請求項12】
前記干渉プロット検出部は、前記干渉プロットが検出されると、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットにおいて、前記干渉プロットとして検出されたプロットに、時間軸と周波数軸との少なくとも一方で隣接する隣接プロットも前記干渉プロットに準じるものとして検出する請求項1乃至11のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項13】
前記干渉プロット検出部は、前記干渉プロットとして検出されたプロットに周波数軸において隣接する隣接プロットについて、低周波数側の隣接プロットのみを前記干渉プロットに準じるものとして検出する請求項12に記載のレーダ装置。
【請求項14】
前記送信信号は、時間の経過とともに周波数が変化する信号であり、
前記送信信号と前記反射信号とを混合したビート信号は、前記送信信号と前記反射信号を受信した受信信号との周波数の差を示す信号である請求項1乃至13のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項15】
前記多重解像度解析部は、ハールウェーブレットを基底とし、リフティングスキームにより、前記時間-周波数プロットへの変換を行うものである請求項1乃至14のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項16】
前記多重解像度解析部は、双直交ウェーブレットを基底とし、リフティングスキームにより、前記時間-周波数プロットへの変換を行うものである請求項1乃至14のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項17】
前記多重解像度解析部は、前記時間サンプルを低周波成分と高周波成分とに分解するとともに、分解された低周波成分をさらに低周波成分と高周波成分とに分解することを繰り返すことにより、前記時間-周波数プロットへの変換を行うものであり、
前記多重解像度解析部は、前記時間サンプルから分解された低周波成分の分解に加えて、前記時間サンプルから分解された高周波成分の低周波成分と高周波成分への分解も行うものである請求項1乃至16のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項18】
前記干渉信号処理部は、前記対象物検出部において前記対象物を検出するために必要な時間長さの前記時間サンプルを、1回の干渉信号の除去処理の対象とする請求項1乃至17のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項19】
前記干渉信号処理部は、前記対象物検出部において前記対象物を検出するために必要な時間長さの前記時間サンプルより短い時間長さの時間サンプルを、1回の干渉信号の除去処理の対象とし、前記対象物検出部は、前記干渉信号処理部による複数回の干渉信号の除去処理によって得られた前記時間サンプルに基づいて、前記対象物を検出する請求項1乃至17のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項20】
前記干渉除去部は、前記除去処理として、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットの中で、前記干渉プロットとして検出されたプロットに、ゼロ相当のデータを代入する請求項1乃至19のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項21】
前記干渉除去部は、前記除去処理として、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットの中で、前記干渉プロットとして検出されたプロットに、前記干渉プロット以外のプロットによる波形から推定される推定値を代入する請求項1乃至19のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【請求項22】
前記干渉除去部は、前記除去処理として、前記複数の周波数スケールの前記時間-周波数プロットの中で、前記干渉プロットとして検出されたプロットのデータを、元のデータに対して、前記干渉プロットの大きさを減衰させる減衰係数を乗じたデータに変更する請求項1乃至19のいずれか1項に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2020年2月12日に日本に出願された特許出願第2020-21746号を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、電磁波としての送信信号を送信し、対象物で反射した反射信号を受信して、その送受信結果に基づき対象物を検出するレーダ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
上述したようなレーダ装置として、例えば、特許文献1に開示されるレーダシステムや、特許文献2に開示されるレーダ装置などが知られている。
【0004】
特許文献1のレーダシステムでは、送信信号と反射信号との周波数の差を表す差周波信号をデジタル信号に変換した時間サンプルの勾配値に基づいて、例えば他のレーダ装置から送信された送信信号などによる干渉信号を検知する。そして、干渉信号が検知された干渉期間の時間サンプルをゼロの値とすることにより、時間サンプルから干渉信号を除去する。特許文献1のシムテムは、干渉信号が除去された時間サンプルに対してFFT処理を行い、その処理結果に基づいて対象物を検出する。
【0005】
また、特許文献2のレーダ装置では、送信信号と反射信号の周波数差を示す信号をサンプリングしたデータを予め定められた長さの複数の干渉判断期間に区切る。そして、全ての干渉判断期間の内、干渉を生じている時点を含む干渉判断期間を干渉期間として検知する。干渉期間が検知された場合、送信信号の1つの周期の期間中において、干渉期間を除いた期間の内、最も長く連続する干渉判断期間でサンプリングしたデータをFFT処理の対象とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-171001号公報
【文献】特開2010-107219号公報
【発明の概要】
【0007】
特許文献1のレーダシステムのように、干渉期間の時間サンプルをゼロ補間したデータに対してFFT処理を行った場合、処理結果にリップルが生じてしまい、それにより、対象物の検出精度の低下を招く虞がある。また、特許文献2のレーダ装置のように、FFT処理結果にリップルが生じてしまうことを防ぐために、サンプリングデータにおいて干渉期間を除いてしまうと、FFT処理の対象となるデータ数が減少してしまうので、対象物の検出精度が十分に確保できない虞がある。
【0008】
本開示は、上述した点に鑑みてなされたものであり、外乱電磁波による干渉の影響を受けた場合であっても、対象物の検出精度を確保することが可能なレーダ装置を提供することを目的とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本開示によるレーダ装置の一態様は、
電磁波としての送信信号を送信する送信部と、
送信信号が対象物で反射した反射信号を受信する受信部と、
送信信号と反射信号とを混合したビート信号が、外乱電磁波による干渉信号の影響を受けている場合に、ビート信号から干渉信号による影響を除去する干渉信号処理部と、
干渉信号処理部によって処理されたビート信号に基づいて、対象物を検出する対象物検出部と、を備え、
干渉信号処理部は、
ビート信号をサンプリングして、時間サンプルにデジタル変換するデジタル変換部と、
時間サンプルに対して、解像度が異なる離散ウェーブレット変換を繰り返す多重解像度解析を行って、時間サンプルを、複数の周波数スケールに渡る時間-周波数プロットに変換する多重解像度解析部と、
複数の周波数スケールの時間-周波数プロットの中で、干渉信号の影響を受けている干渉プロットを検出する干渉プロット検出部と、
干渉プロット検出部により検出された干渉プロットに対して、干渉信号の影響を除去する除去処理を行う干渉除去部と、
干渉プロットに対して除去処理が行われた、複数の周波数スケールの時間-周波数プロットに対して多重解像度解析の逆変換を行って、時間-周波数プロットを時間サンプルに逆変換する逆変換部と、を有し、
干渉プロット検出部は、複数の周波数スケールの時間-周波数プロットにおいて、各周波数スケールの時間-周波数プロット毎に、干渉プロットを検出するための処理を実行し、
干渉プロット検出部は、干渉プロットを検出するための処理の対象となる時間-周波数プロットに関して、信号強度が所定の閾値以上であるプロットを干渉プロットとして検出し、
対象物検出部は、逆変換部によって逆変換された時間サンプルを、干渉信号処理部によって処理されたビート信号として、対象物を検出するように構成される。
【0010】
このように、本開示のレーダ装置では、干渉信号処理部において、ビート信号をデジタル変換した時間サンプルが、多重解像度解析により、複数の周波数スケールに渡る時間-周波数プロットに変換される。この複数の周波数スケールに渡る時間-周波数プロットの中で、干渉プロットの検出、および干渉プロットに対する干渉信号の影響を除去する除去処理が行われる。そして、干渉プロットに対する干渉信号の影響の除去処理が行われた、複数の周波数スケールの時間-周波数プロットが時間サンプルに逆変換される。対象物検出部は、逆変換された時間サンプルに基づいて、対象物を検出する。
【0011】
本開示のレーダ装置によれば、干渉信号の除去処理として、時間サンプルの値そのものを置換したり、干渉期間を除いた干渉判断期間のサンプリングデータのみに短縮したりする従来技術とは異なり、多重解像度解析により得られた複数の周波数スケールの時間-周波数プロットの中で、干渉信号の影響を除去する除去処理が行われる。このため、例えば、一部の周波数スケールの時間-周波数プロットにおいて干渉プロットのデータがゼロに置き換えられたとしても、他の周波数スケールの時間-周波数プロットのプロットデータが残っているため、複数の周波数スケールの時間-周波数プロットから逆変換された時間サンプルは、干渉が生じなかった場合の値を近似することができ、また、時間サンプルのデータ数が減少することもない。従って、本開示のレーダ装置は、逆変換された時間サンプルに基づいて、対象物を高精度に検出することが可能となる。
【0012】
上述した特徴以外の、請求の範囲の各請求項に記載した技術的特徴に関しては、後述する実施形態の説明及び添付図面から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るレーダ装置の全体構成を表すブロック図である。
図2】ビート信号が外乱電磁波による干渉信号の影響を受けた場合の、ビート信号の時間サンプルの一例を示すグラフである。
図3】離散ウェーブレット変換および多重解像度解析の手法の1例を説明するための説明図である。
図4】多重解像度解析によって得られる、複数の周波数スケールの時間-周波数プロットを概念的に示した図である。
図5】(a)~(h)は、各周波数スケールの時間-周波数プロットにおいて、各プロットの信号強度として各プロットの振幅の絶対値を示すグラフである。
図6】干渉プロット検出部が、1回の干渉プロット検出処理において、検出対象とする範囲の一例を示す図である。
図7】干渉プロット検出部が、1回の干渉プロット検出処理において、検出対象とする範囲の別の例を示す図である。
図8】干渉プロット検出部が、1回の干渉プロット検出処理において、検出対象とする範囲のさらに別の例を示す図である。
図9】干渉プロット検出部が、同じ周波数スケールの時間-周波数プロットにおいて、時間軸で隣接する隣接プロットを干渉プロットに準じる干渉プロットとして検出することを説明するための説明図である。
図10】干渉プロット検出部が、異なる周波数スケールの時間-周波数プロットに渡って、周波数軸で隣接する隣接プロットを干渉プロットに準じる干渉プロットとして検出することを説明するための説明図である。
図11】干渉プロット検出部が、周波数軸で隣接する隣接プロットに関して、低周波数側の隣接プロットのみを干渉プロットに準じる干渉プロットとして検出することを説明するための説明図である。
図12】干渉除去部による除去処理後の複数の周波数スケールの時間-周波数プロットから逆変換された時間サンプルの一例を示すグラフである。
図13】対象物検出(特に、対象物の速度検出)に必要な複数の受信チャープ信号を示すグラフである。
図14】干渉信号処理部と信号処理部とによる信号処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図15図14の信号処理とは別の信号処理の例を視覚的に示したグラフである。
図16図15の信号処理を実行するための、干渉信号処理部と信号処理部とによる処理を示すフローチャートである。
図17】(a)~(d)は、第1実施形態による多重解像度解析によって、低周波成分の分解が繰り返される様子を概念的に示す図である。
図18】(a)~(c)は、第3実施形態による多重解像度解析によって、低周波成分の分解に加えて、高周波成分も分解される様子を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態によるレーダ装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本実施形態におけるレーダ装置100の全体構成を表すブロック図である。本実施形態において説明するレーダ装置100は、例えば車両に搭載され、前方走行車両等の対象物の距離、相対速度、方位を検出することが可能なものである。なお、レーダ装置100によって対象物の距離、相対速度、方位などが検出されると、その検出結果は、例えば、前方車両に追従するように、自車両の速度および車間を制御するアダプティブクルーズ制御装置において利用されたり、対象物との衝突を回避したり、衝突被害を軽減したりするプリクラッシュセーフティシステムにおいて利用されたりする。
【0015】
図1に示すように、本実施形態のレーダ装置100は、送信アンテナ102を介してミリ波帯の電磁波信号Ewを送信する送信信号生成部101を備えている。この送信信号生成部101は、例えば、制御部、D/A変換器、および電圧制御発振器を含んで構成される。制御部は、時間に対して周波数が漸増する信号を出力する。D/A変換器は、制御部から出力された信号をデジタルアナログ変換する。電圧制御発振器は、D/A変換器から出力されたアナログ信号を変調信号として、変調されたミリ波帯の高周波信号を生成する。電圧制御発振器から出力される信号は、送信アンテナ102に供給される送信信号Twと、後述する信号混合部104へ供給されるローカル信号Lwとに所定の比率で分配される。
【0016】
レーダ装置100は、先行車両等の対象物によって反射された電磁波信号Ewを受信する受信アンテナ103を備えている。反射された電磁波信号Ewが受信アンテナ103で受信されると、受信アンテナ103は、受信した電磁波信号Ewに応じた受信信号Dwを発生する。具体的には、受信アンテナ103は、受信した電磁波信号Ewの周波数に対応する周波数で変化するとともに、電磁波信号Ewの強度に応じた振幅を持つ受信信号Dwを発生する。受信アンテナ103によって発生された受信信号Dwは、信号混合部104に出力される。
【0017】
信号混合部104は、受信アンテナ103からの受信信号Dwとローカル信号Lwとを混合したビート信号Bwを生成する。信号混合部104によって生成されたビート信号Bwは、ローパスフィルタ105によってフィルタ処理されて、受信信号Dwとローカル信号Lwとの周波数差に相当するビート信号Bw2のみを通過させる。なお、ローカル信号Lwは一定の振幅を持った信号であるのに対し、上述したように、受信信号Dwは、受信した電磁波信号Ewの強度に応じて振幅が変化する信号である。このため、生成されるビート信号Bw2の振幅も、受信した電磁波信号の強度に応じて振幅が変化する信号となる。このようにして生成されたビート信号Bw2は、制御演算装置106に入力される。
【0018】
制御演算装置106は、アナログデジタル変換器201、干渉信号処理部202、および信号処理部203を備えている。アナログデジタル変換器201は、ビート信号Bw2を所定の時間間隔でサンプリングして、デジタルデータ(時間サンプル)Tsに変換する。アナログデジタル変換器201によってデジタル変換されたビート信号Bw2の時間サンプルTsは、干渉信号処理部202に与えられる。
【0019】
干渉信号処理部202および信号処理部203は、例えば、車両に搭載された車載コンピュータによって構成される。車載コンピュータは、主として、少なくとも1つのプロセッサ、RAM、ROMなどのコンピュータ読み取り可能な非遷移記憶媒体、入出力インターフェイス、および、それらを接続するバスを含む。あるいは、車載コンピュータは、プロセッサとしての専用のハードウェア回路によって一部もしくは全部の信号処理を行うように構成されうる。干渉信号処理部202と信号処理部203とは、1つの車載コンピュータによって構成されてもよいし、別個の車載コンピュータによって構成されてもよい。
【0020】
干渉信号処理部202は、ビート信号Bw2の時間サンプルTsが外乱電磁波による干渉信号の影響を受けている場合に、ビート信号Bw2の時間サンプルTsから干渉信号による影響を除去する処理を実行しても良いし、干渉信号の影響の有無を判定せずに除去する処理を実行しても良い。近年、FCM(Fast Chirp Modulation)方式のレーダ装置を始め、FMCW(Frequency-Modulated Continuous Wave)方式、2周波CW方式、多周波CW方式、パルス方式、スペクトラム拡散方式のレーダ装置など、ミリ波帯の電磁波をレーダ波として利用し、対象物との距離等を検知するレーダ装置が車両において普及しつつある。このようなミリ波レーダに対しては、他の車両に装備されたレーダ装置からのレーダ波が外乱電磁波となり、ビート信号Bw2に、その外乱電磁波による干渉信号の影響が生じる可能性がある。ビート信号Bw2が干渉信号の影響を受けた場合、例えば、図2に示すように、ビート信号Bw2の時間サンプルTsには、干渉信号によって不規則に変化するノイズが含まれることになる。
【0021】
以下、干渉信号処理部202において、このような干渉信号の影響を除去する処理を行うための構成について説明する。干渉信号処理部202は、図1に示すように、多重解像度解析部S101、干渉プロット検出部S102、干渉除去部S103、および多重解像度逆解析部S104を備えている。これらの構成は、車載コンピュータのプロセッサにおいて、それぞれの役割を果たすように構成されたプログムを実行することによって実現することが可能である。あるいは、これらの構成は、車載コンピュータの専用のハードウェア回路によって実現することも可能である。
【0022】
ここで、波形解析としては、フーリエ解析が一般的に用いられる。フーリエ解析は、時間軸の情報をフーリエ変換して、周波数軸の情報に置き換えて解析を行なう解析方法である。しかし、通常のフーリエ解析では、時間軸の情報が欠落してしまう。一方、ウェーブレット変換を用いれば、時間軸の情報と周波数軸の情報を維持しつつ、波形解析を行うことが可能である。本実施形態では、多重解像度解析部S101が、ビート信号Bw2の時間サンプルTsに対して、解像度が異なる離散ウェーブレット変換を繰り返し行って、時間サンプルTsを複数の周波数スケールに渡る時間-周波数プロットに変換する、多重解像度解析を行なう。
【0023】
入力信号である時間サンプルTsの離散ウェーブレット変換は、例えば、図3に示すように、ハイパスフィルタ300aとローパスフィルタ300bとの1組のフィルタを通すことによって行うことができる。これにより、時間サンプルTsは、ハイパスフィルタ300aの出力である詳細係数と、ローパスフィルタ300bの出力である近似係数とに分解される。なお、ハイパスフィルタ300aとローパスフィルタ300bとは、直交ミラーフィルタをなす。
【0024】
ハイパスフィルタ300aからの出力およびローパスフィルタ300bからの出力は、それぞれダウンサンプリング部301a、301bで半分にダウンサンプリングされる。これにより、時間解像度は元の信号の半分になり、周波数解像度は2倍になる。
【0025】
多重解像度解析では、ローパスフィルタ300bから出力された近似係数を、再び1組のハイパスフィルタ302aとローパスフィルタ302bを用いて分解する。これを繰り返すことにより、時間サンプルTsは、図4に示すような、複数の周波数スケール(周波数帯域)の時間-周波数プロットTFsに変換される。一例として、2nの長さの入力信号は、最大でnレベルに分解することができる。また、図4において、各マス目はデータの数を示すとともに、そのデータがカバーする周波数帯域および時間を示している。すなわち、多重解像度解析では、低周波領域では周波数の分解能が高くなり、高周波領域では時間の分解能が高くなる。
【0026】
一方、多重解像度解析においては、多重解像度解析により分解された結果を逆変換することにより、元の入力信号である時間サンプルを復元することができる。例えば、図3に示す例において、最も深いレベルの近似係数および詳細係数と、それ以外の各レベルの詳細係数を用いて、図3に示す計算を逆に行う(多重解像度逆解析)ことにより、多重解像度解析結果を時間サンプルTsに逆変換することができる。
【0027】
多重解像度解析部S101での変換結果である複数の周波数スケールの時間-周波数プロットTFsは、図1に示すように、干渉プロット検出部S102および干渉除去部S103に出力される。干渉プロット検出部S102は、まず、複数の周波数スケールの時間-周波数プロットTFsに基づき、各プロットの振幅を、振幅の絶対値としたデータに変更する。この際、各プロットの信号強度の特徴をより際立たせるために、振幅の絶対値ではなく、振幅の2乗値を用いても良いし、振幅の絶対値の対数値を用いても良い。
【0028】
図5(a)~(h)は、各周波数スケールの時間-周波数プロットにおいて、各プロットの信号強度として各プロットの振幅の絶対値の対数を用いたデータの一例を示すグラフである。例えば、図5(a)のグラフは、時間サンプルTsの数が1024である場合、プロット数を512に半減した最も高い周波数帯の周波数スケールの時間-周波数プロットに含まれる各プロットの信号強度を示している。図5(b)のグラフは、図5(a)のグラフのプロット数をさらに256に半減した次に高い周波帯の周波数スケールの時間-周波数プロットに含まれる各プロットの信号強度を示している。以下、同様に、図5(c)~(h)のグラフは、順次、プロット数を半減して、より低周波帯となる周波数スケールの時間-周波数プロットに含まれる各プロットの信号強度を示している。なお、図5(a)~(h)では、時間サンプルTsを8レベルまで分解した例を示しているが、時間サンプルTsの数が1024である場合、10個のレベルまで分解することが可能である。
【0029】
干渉プロット検出部S102は、図5(a)~(h)に示される各周波数スケールの時間-周波数プロットにおける各プロットの信号強度に基づいて、干渉信号の影響を受けている干渉プロットを検出する。例えば、干渉プロット検出部S102は、信号強度が所定の閾値以上であるプロットを干渉プロットとして検出することができる。この場合、干渉プロット検出部S102は、図6に一点鎖線で示すように、各周波数スケールの特性に応じた個別の閾値を用いて、各周波数スケールの時間-周波数プロット毎に干渉プロットを検出してもよい。すなわち、最も高い周波数帯の時間-周波数プロットを第1干渉プロット検出処理対象として干渉プロットの検出を行い、次に高い周波数帯の時間-周波数プロットを第2干渉プロット検出処理対象として干渉プロットの検出を行い、その次に高い周波数帯の時間-周波数プロットを第3干渉プロット検出処理対象として干渉プロットの検出を行う。それよりも低い周波数帯の時間-周波数プロットに関しても、それぞれ別個に干渉プロット検出処理対象とする。
【0030】
あるいは、干渉プロット検出部S102は、図7図8に一点鎖線で示すように、複数の周波数スケールの時間-周波数プロットにおいて、少なくとも2つ以上の周波数スケールの時間-周波数プロットをまとめて、干渉プロットを検出する処理を実行してもよい。まとめて干渉プロットの検出処理が実行される2つ以上の周波数スケールの時間-周波数プロットでは、同じ閾値により各プロットの信号強度が判定される。なお、図7は、最も高い周波数帯の周波数スケールの時間-周波数プロットが、第1干渉プロット検出処理対象として、単独で干渉プロットの検出処理の対象とされるが、それ以外の複数の周波数スケールの時間-周波数プロットは、第2干渉プロット検出処理対象として、まとめて干渉プロットの検出処理の対象とされる例を示している。また、図8は、すべての周波数スケールの時間-周波数プロットが、1回の干渉プロット検出処理により、まとめて干渉プロットの検出処理の対象とされる例を示している。
【0031】
追加的にもしくは代替的に、干渉プロット検出部S102は、各プロットの信号強度の統計学的な外れ値検定を行い、外れ値に該当する信号強度のプロットを干渉プロットとして検出してもよい。統計学的な外れ値検定としては、例えば、干渉プロットの検出処理の対象とされる全プロットの信号強度の平均値もしくは中央値を算出し、その信号強度の平均値もしくは中央値に所定値を加えた値を基準として、その基準値を超えている場合は外れ値と判定し、超えていなければ外れ値ではないと判定することができる。あるいは、干渉プロット検出部S102は、信号強度の大きさを複数の範囲に区分し、各プロットの信号強度がどの区分に属するかを判定し、各区分に属するプロットの数もしくは比率に基づいて、外れ値検定を行ってもよい。このような外れ値検定により干渉プロットを検出する場合においても、上述した信号強度が所定の閾値以上であるプロットを干渉プロットとして検出する場合と同様に、各周波数スケールの時間-周波数プロット毎に干渉プロットを検出してもよいし、あるいは、少なくとも2つ以上の周波数スケールの時間-周波数プロットをまとめて、干渉プロットを検出する処理を実行してもよい。
【0032】
また、追加的にもしくは代替的に、干渉プロット検出部S102は、時間軸で隣接するプロットの信号強度を用いて各プロットの信号強度の傾きを求め、その信号強度の傾きが所定の閾値より大きいプロットを干渉プロットとして検出してもよい。この場合も、上述した信号強度が所定の閾値以上であるプロットを干渉プロットとして検出する場合と同様に、各周波数スケールの時間-周波数プロット毎に干渉プロットを検出してもよいし、あるいは、少なくとも2つ以上の周波数スケールの時間-周波数プロットをまとめて、干渉プロットを検出する処理を実行してもよい。
【0033】
さらに、追加的にもしくは代替的に、干渉プロット検出部S102は、時間軸で隣接するプロットの信号強度を用いて各プロットの信号強度の傾きを求め、その信号強度の傾きの統計学的な外れ値検定を行い、外れ値に該当する信号強度の傾きのプロットを干渉プロットとして検出してもよい。信号強度の傾きの統計学的な外れ値検定も、上述した信号強度の統計学的な外れ値検定と同様にして行うことができる。また、この場合も、上述した信号強度が所定の閾値以上であるプロットを干渉プロットとして検出する場合と同様に、各周波数スケールの時間-周波数プロット毎に干渉プロットを検出してもよいし、あるいは、少なくとも2つ以上の周波数スケールの時間-周波数プロットをまとめて、干渉プロットを検出する処理を実行してもよい。
【0034】
なお、干渉プロット検出部S102が、信号強度の傾きの統計学的な外れ値検定を行う場合、併せて、時間軸で隣接するプロットの信号強度を用いて各プロットの信号強度の和を求め、その信号強度の和の統計学的な外れ値検定を行い、外れ値に該当する信号強度の和のプロットを干渉プロットとして検出することが好ましい。時間軸で隣接する各プロットの信号強度の傾きは、各プロットの信号強度の差に相当するため、信号強度の傾きを求めることは、ハイパスフィルタとしての役割を果たす。このため、信号強度の傾きの統計学的な外れ値検定を行うことで、高周波領域の干渉を高い精度で検出することができる。一方、時間軸で隣接する各プロットの信号強度の和を求めることは、ローパスフィルタとしての役割を果たす。このため、信号強度の和の統計学的な外れ値検定を行うことで、低周波領域の干渉を高い精度で検出することができる。従って、信号強度の傾きの統計学的な外れ値検定と、信号強度の和の統計学的な外れ値検定を併用することで、高周波領域および低周波領域の干渉をともに高い精度で検出することが可能になる。
【0035】
干渉プロット検出部S102は、干渉プロットを検出し、その検出結果を図示しないメモリに保存しても良い。あるいは、干渉プロット検出部S102は、干渉プロットが検出されるごとに、その検出結果を逐次的に干渉除去部S103に渡すことで、干渉除去部S103による複数の周波数スケールの時間-周波数プロットTFsに対する、干渉信号の影響の除去を逐次的に行わせても良い。
【0036】
ここで、干渉プロット検出部S102は、上述した各種の手法にて干渉プロットとして検出されたプロットに加えて、上述した各種の手法では干渉プロットとして検出されなかったが、検出された干渉プロットに隣接するプロットも、干渉プロットに準じるものとして、干渉プロットとして検出してもよい。例えば、干渉プロット検出部S102は、図9に示すように、同じ周波数スケールの時間-周波数プロットにおいて、時間軸で隣接する隣接プロットを干渉プロットに準じる干渉プロットとして検出してもよい。あるいは、干渉プロット検出部S102は、図10に示すように、異なる周波数スケールの時間-周波数プロットに渡って、周波数軸で隣接する隣接プロットを干渉プロットに準じる干渉プロットとして検出してもよい。この周波数軸で隣接する隣接プロットに関しては、図11に示すように、干渉プロット検出部S102は、低周波数側の隣接プロットのみを干渉プロットに準じるものとして検出するようにしてもよい。
【0037】
干渉プロット検出部S102は、複数の周波数スケールの時間-周波数プロットに含まれるすべてのプロットについて、干渉プロットであるか否かの検出、および、任意ではあるが、干渉プロットに準じる干渉プロットの検出が完了すると、検出結果ITFsを干渉除去部S103に出力する。もしくは、干渉プロット検出部S102は、上述したように、干渉プロット、および、任意ではあるが、その干渉プロットに準じる干渉プロットが検出されるごとに、検出結果ITFsを干渉除去部S103に出力する。
【0038】
干渉除去部S103は、多重解像度解析部S101から受信した複数の周波数スケールの時間-周波数プロットTFsと、干渉プロット検出部S102での干渉プロットの検出結果ITFsとに基づいて、複数の周波数スケールの時間―周波数プロットTFsにおいて干渉プロットを特定する。干渉プロット検出部S102が干渉プロットの検出に用いた、各プロットの振幅を振幅の絶対値に変更したデータにおけるそれぞれのプロットは、多重解像度解析部S101から受信した複数の周波数スケールの時間-周波数プロットTFsにおけるそれぞれのプロットと1対1に対応している。従って、干渉除去部S103は、干渉プロット検出部S102での干渉プロットの検出結果ITFsから、複数の周波数スケールの時間―周波数プロットTFsに含まれるプロットの中で、いずれのプロットが干渉プロットであるかを特定することができる。
【0039】
干渉除去部S103は、特定した干渉プロットに対して、干渉信号の影響を除去する除去処理を行う。この除去処理として、干渉除去部S103は、複数の周波数スケールの時間-周波数プロットTFsの中で、干渉プロットとして特定されたプロットに、ゼロ相当のデータを代入してもよい。
【0040】
干渉信号処理部202では、後述するように、干渉信号の影響を除去する除去処理を行った後の複数の周波数スケールの時間-周波数プロットTFs2に対して多重解像度逆解析を行うことにより、複数の周波数スケールの時間-周波数プロットTFs2を時間サンプルTs2に逆変換する。従って、例えば、一部の周波数スケールの時間-周波数プロットTFsにおいて干渉プロットのデータがゼロに置き換えられたとしても、他の周波数スケールの時間-周波数プロットTFsのプロットデータが残っている。このため、干渉除去部S103から出力される除去処理後の複数の周波数スケールの時間-周波数プロットTFs2から逆変換される時間サンプルTs2は、例えば図12に一例を示すように、干渉が生じなかった場合の値を近似することが可能となる。
【0041】
ただし、干渉プロットとして特定されたプロットにゼロ相当のデータを代入した場合、時間サンプルTs2に逆変換する際の情報量が少なくなるので、逆変換された時間サンプルTs2の波形は、本来の波形(干渉がなかった場合の波形)とは若干相違したものとなる。逆変換された時間サンプルTs2の波形を本来の波形により近づけるために、干渉除去部S103は、例えば、自己回帰モデル(ARモデル)を用いて、干渉プロット以外のプロットによる波形から干渉プロットにおける値を推定し、その推定値を干渉プロットに代入してもよい。あるいは、干渉除去部S103は、干渉プロットとして特定されたプロットのデータを、元のデータに対して、干渉プロットの大きさを減衰させる減衰係数を乗じたデータに変更してもよい。減衰係数は一定値であってもよいし、可変値であってもよい。可変値とする場合には、例えば、干渉プロットの振幅の大きさが、干渉を受けていないプロットの振幅の大きさに対して同等レベルとなるように、減衰係数を決定してもよい。
【0042】
干渉除去部S103によって干渉信号の影響を除去する除去処理が行われた後の複数の周波数スケールの時間-周波数プロットTFs2は、多重解像度逆解析部S104に出力される。多重解像度逆解析部S104は、受信した複数の周波数スケールの時間-周波数プロットTFs2に対して多重解像度解析の逆変換を行って、複数の時間-周波数プロットTFs2を時間サンプルTs2に逆変換する。すなわち、多重解像度逆解析部S104が、請求の範囲における逆変換部に相当する。多重解像度逆解析部S104によって逆変換された時間サンプルTs2は、信号処理部203に出力される。
【0043】
信号処理部203は、FCM方式のレーダ装置を採用した場合、受信した時間サンプルTs2に対して距離検出FFT処理を施すことにより、対象物との距離を求める。さらに、信号処理部203は、距離検出FFT処理により得られた結果に対してさらに速度検出FFT処理を施すことにより、対象物の速度を求める。
【0044】
例えば、レーダ装置100として、FCM方式のレーダ装置を採用した場合、レーダ装置100は、電磁波信号Ewとして、例えば、周波数が漸増する送信チャープ信号を所定の間隔で繰り返し送信する。対象物によって送信チャープ信号が反射されると、受信アンテナ103は、対象物との距離に応じた時間遅延後に、図13に示すように、送信チャープ信号と同様に周波数が漸増する受信チャープ信号を受信する。対象物との距離が一定であれば、送信チャープ信号と受信チャープ信号との周波数差は、その距離に応じた一定の周波数となる。従って、信号処理部203は、距離検出FFT処理において、時間サンプルTs2に対してフーリエ解析を行い、送信チャープ信号と受信チャープ信号との周波数差に応じた周波数を抽出することで、対象物との距離を求めることができる。また、信号処理部203は、複数の受信チャープ信号の周波数差を示す時間サンプルTs2について、距離検出FFT処理波形に対してさらに速度検出FFT処理を施す。自車両と対象物との間に速度差が生じている場合、複数の受信チャープ信号の周波数差を示す時間サンプルTs2の距離検出FFT処理のピーク波形の位相はドップラー効果により変化する。従って、信号処理部203は、複数の受信チャープ信号の周波数差を示す時間サンプルTs2の距離検出FFT処理波形に対して、さらに速度検出FFT処理を施すことにより、対象物の速度(相対速度)を求めることができる。
【0045】
図14のフローチャートに、干渉信号処理部202と信号処理部203とによる信号処理の流れの一例を示す。この図14に示すフローチャートの処理によれば、ステップS200において、アナログデジタル変換器201によってデジタル変換された時間サンプルTsのデータをメモリに格納する。このメモリが格納できるデータ長は、図13に示すように、対象物検出(特に、対象物の速度検出)に必要な複数の受信チャープ信号をデジタル変換した時間サンプルTsのデータ数(データ長)となっている。
【0046】
ステップS210では、メモリの全格納領域に、時間サンプルTsのデータが格納されたか否かを判定する。この判定処理において肯定判定された場合、測定物検出に必要なデータが収集されたことになるので、ステップS220の処理に進む。一方、ステップS210にて否定判定された場合には、必要なデータ長の時間サンプルTsが収集されるまで、ステップS200の処理を繰り返す。
【0047】
ステップS220では、上述した多重解像度解析部S101による多重解像度解析、干渉プロット検出部S102による干渉プロットの検出、干渉除去部S103による干渉除去、および多重解像度逆解析部S104による時間サンプルTs2への逆変換を含む干渉信号処理を、個々の受信チャープ信号の時間サンプルTs毎に実行する。ステップS230では、ステップS220にて干渉信号処理された個々の受信チャープ信号の周波数差に相当する時間サンプルTs2に対して、距離検出FFTを行って、対象物との距離を求める。ステップS240では、ステップS230の複数の距離検出FFT処理波形に対して速度検出FFTを行って、対象物の速度を求める。
【0048】
図14のフローチャートには、対象物検出に必要な全データが収集されてから、干渉信号処理、距離検出FFT、および速度検出FFTを行う例を示したが、対象物の検出をさらに迅速に行うために、干渉信号処理部202と信号処理部203は、図15および図16に示すように、干渉信号処理、距離検出FFT、および速度検出FFTを実行してもよい。つまり、図15に視覚的に示すように、干渉信号処理部202と信号処理部203は、干渉信号処理および距離検出FFTを、個々の受信チャープ信号の周波数差を示す時間サンプルTsが収集される毎に実行する。さらに、信号処理部203は、対象物の速度検出に必要なデータ長の時間サンプルTsが得られた時点で速度検出FFTを実行する。これにより、対象物の距離および速度をより迅速に求めることが可能となる。
【0049】
図16は、図15に示す時間スケジュールにて、干渉信号処理、距離検出FFT、および速度検出FFTを行う場合の、干渉信号処理部202と信号処理部203とにおける処理内容を示すフローチャートである。ステップS300では、アナログデジタル変換器201によってデジタル変換された時間サンプルTsのデータをメモリに格納する。この場合、メモリに格納されるデータ長は、対象物検出(特に、対象物の速度検出)に必要な複数の受信チャープ信号をデジタル変換した時間サンプルTsのデータ数(データ長)よりも短くなっている。より具体的には、メモリの時間サンプルTsの格納領域は、1つの受信チャープ信号の周波数差を示す時間サンプルTsのデータ長を格納可能となっている。
【0050】
ステップS310では、メモリの時間サンプルTsの格納領域に、1つの受信チャープ信号の周波数差を示す時間サンプルTsのデータの格納が完了されたか否かを判定する。この判定処理において肯定判定された場合、ステップS320の処理に進む。一方、ステップS310にて否定判定された場合には、必要なデータ長の時間サンプルTsが収集されるまで、ステップS300の処理を繰り返す。
【0051】
ステップS320では、上述した多重解像度解析部S101による多重解像度解析、干渉プロット検出部S102による干渉プロットの検出、干渉除去部S103による干渉除去、および多重解像度逆解析部S104による時間サンプルTs2への逆変換を含む干渉信号処理を、1つの受信チャープ信号の時間サンプルTsに対して実行する。ステップS330では、ステップS320にて干渉信号処理された1つの受信チャープ信号の周波数差に相当する時間サンプルTs2に対して、距離検出FFTを行って、対象物との距離を求める。ステップS340では、ステップS330にて行われた距離検出FFT処理結果をメモリに格納する。メモリの距離検出FFT処理結果の格納領域は、対象物の速度を検出する信号処理(速度検出FFT)を行うために必要なデータ長のデータを格納可能となっている。
【0052】
ステップS350では、メモリの距離検出FFT処理結果の格納領域に、速度検出FFTを行うために必要なデータ長のデータが格納されたか否かを判定する。この判定処理において肯定判定された場合、速度検出FFTに必要なデータが収集されたことになるので、ステップS360の処理に進む。一方、ステップS350にて否定判定された場合には、必要なデータ長のデータが収集されるまで、ステップS300~S340の処理を繰り返す。ステップS360では、距離検出FFT処理結果に基づいて、距離検出FFT処理波形に対して速度検出FFTを行って、対象物の速度を求める。
【0053】
なお、図15および図16では、干渉信号処理部202と信号処理部203が、干渉信号処理および距離検出FFTを、個々の受信チャープ信号の周波数差を示す時間サンプルTsが収集される毎に実行する例を示した。しかしながら、干渉信号処理部202のみが、個々の受信チャープ信号の周波数差を示す時間サンプルTsが収集される毎に干渉信号処理を実行し、信号処理部203は、速度検出FFTを行うために必要なデータ長のデータが全て揃ったときに、距離検出FFTと速度検出FFTとを行うようにしてもよい。
【0054】
また、上述したレーダ装置100において、送信アンテナ102と受信アンテナ103の少なくとも一方を複数個設けることで、対象物による反射波の到来方向を推定できるようにしてもよい。これにより、レーダ装置100は、対象物の方位も検出することが可能となる。
【0055】
以上、説明したように、本実施形態のレーダ装置100では、干渉除去部S103が、干渉信号の除去処理として、時間サンプルの値そのものを置換したり、干渉期間を除いた干渉判断期間のサンプリングデータのみに短縮したりする従来技術とは異なり、多重解像度解析された複数の周波数スケールの時間-周波数プロットの中で、干渉信号の影響を除去する除去処理を行う。従って、本開示のレーダ装置100は、逆変換された時間サンプルTs2に基づいて、対象物を高精度に検出することが可能となる。
【0056】
(第2実施形態)
次に本開示の第2実施形態について説明する。上述した第1実施形態のレーダ装置では、多重解像度解析部S101が、ハイパスフィルタ300aとローパスフィルタ300bとの1組のフィルタを用いた離散ウェーブレット変換を繰り返すことにより、時間サンプルTsを複数の周波数スケールの時間-周波数プロットに変換する例を説明した。
【0057】
しかしながら、時間サンプルTsを多重解像度解析する手法は、第1実施形態にて説明した手法に限られない。例えば、多重解像度解析部S101は、いわゆるリフティングスキームを用いて、離散ウェーブレット変換を行ってもよい。リフティングスキームでは、信号を偶数番目の要素と奇数番目の要素とにわけ、偶数番目の要素で奇数番目の要素を予測し、予測とのズレを高周波成分、残差を低周波成分とする。このような手法を採用することにより、多重解像度解析部S101は、より高速に離散ウェーブレット変換、ひいては多重解像度解析を行うことができる。なお、リフティングスキームによる離散ウェーブレット変換は、ハールウェーブレットと双直交ウェーブレットを扱えるため、マザーウェーブレットとして、ハールウェーブレットと双直交ウェーブレットのいずれも採用することが可能である。
【0058】
(第3実施形態)
次に本開示の第3実施形態について説明する。上述した第1実施形態のレーダ装置では、多重解像度解析部S101が、まず、図17(a)に示す時間サンプルTsを、1組のハイパスフィルタ300aとローパスフィルタ300bとにより、図17(b)に示すように、ハイパスフィルタ300aの出力である高周波成分(詳細係数)と、ローパスフィルタ300bの出力である低周波成分(近似係数)とに分解する。そして、多重解像度解析部S101は、ローパスフィルタ300bから出力された低周波成分を、再び1組のハイパスフィルタ302aとローパスフィルタ302bを用いて、図17(c)に示すように、高周波成分と低周波成分とに分解する。このような分解を繰り返すことで、多重解像度解析部S101は、時間サンプルTsを、図17(d)に示すような、低周波領域では周波数の分解能が高くなり、高周波領域では時間の分解能が高くなる、複数の周波数スケール(周波数帯域)の時間-周波数プロットに変換した。
【0059】
それに対して、本実施形態では、多重解像度解析部S101が、ローパスフィルタの出力である低周波成分だけでなく、ハイパスフィルタの出力である高周波成分に対しても、1組のハイパスフィルタとローパスフィルタとを用いて、高周波成分と低周波成分とに分解するものである。例えば、図18(a)、(b)、(c)には、時間サンプルTsを1組のハイパスフィルタとローパスフィルタによって高周波成分と低周波成分とに分解し、さらに、分解された高周波成分と低周波成分との各々が、それぞれ、1組のハイパスフィルタとローパスフィルタとを用いて、高周波成分と低周波成分とに分解される例が示されている。
【0060】
このように、低周波成分の分解に、高周波成分の分解を組み合わせることにより、複数の周波数スケールに渡る時間―周波数プロットの周波数分解能と時間分解能を調整することが出来る。例えば、図18(c)に示すように、低周波領域から高周波領域まで、等しい周波数および時間の分解能を有する時間―周波数プロットを得ることもできる。これにより、いずれの周波数帯域の時間周波数プロットに干渉が生じたとしても、同等の精度で干渉を検出することが可能となる。
【0061】
なお、低周波領域から高周波領域の全域において、必ずしも周波数の分解能を等しくする必要はない。例えば、高周波成分の分解のレベルを、低周波成分の分解のレベルよりも少なくしてもよい。また、例えば、近隣を走行する他車両と通信を行い、その他車両に装備されたレーダ装置からのレーダ波の周波数変調に関する情報を取得し、その周波数変調特性に合わせ、時間―周波数プロットの周波数分解能を調整してもよい。
【0062】
また、上述した第3実施形態における、低周波成分の分解に、高周波成分の分解を組み合わせる手法は、第2実施形態で説明した、リフティングスキームを用いて、離散ウェーブレット変換を行う多重解像度解析にも適用することができる。
【0063】
(第4実施形態)
次に、本開示の第4実施形態について説明する。上述した第1実施形態において、干渉プロット検出部S102が、干渉プロットを検出するための種々の手法を説明したが、さらに、別の干渉プロットの検出手法を採用することもできる。
【0064】
例えば、図1に示す構成において、90deg位相を変化させた送信信号と混合する信号混合部104’と、その出力を処理するローパスフィルタ105’と、その出力を処理するアナログデジタル変換機201’とを設けることで、ビート信号Bw2を複素数として検出することができる。これにより、時間サンプルは、ビート信号の振幅の大きさだけでなく、ビート信号の位相を示す情報も含むものとなる。従って、多重解像度解析部S101による多重解像度解析後の時間-周波数プロットも、振幅(信号強度)および位相の情報を含んだものとなる。そして、例えば、干渉プロット検出部S102は、干渉プロットを検出するための処理の対象となる周波数フレームの時間-周波数プロットに関して、各プロットのビート信号の位相の変化が閾値以上であるプロットを干渉プロットとして検出することが出来る。
【0065】
さらに、その他の手法として、例えば、干渉プロット検出部S102は、エッジ抽出処理を行うことで、エッジに相当するプロットを干渉プロットとして検出することもできる。このエッジ抽出処理には、例えば、公知のソーベル法、キャニー法、ガウスのラプラシアン法などを用いることができる。
【0066】
このエッジ抽出処理において、複数の周波数フレームの時間-周波数プロットを対象とし、2次元のエッジ抽出処理が行われても良い。
【0067】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明したが、本開示は、上述した実施形態になんら制限されることなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲において、種々、変形して実施することができる。
【0068】
例えば、上述した各実施形態は、FCM方式のレーダ装置100を採用する例について説明した。しかしながら、本開示では、例えばFMCW方式など、送信信号が、時間の経過とともに周波数が変化し、その送信信号と反射信号との周波数の差をビート信号として発生する装置に適用可能なものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図16
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