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特許7428234スペクトラム監視装置、海底機器及び光通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】スペクトラム監視装置、海底機器及び光通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/077 20130101AFI20240130BHJP
【FI】
H04B10/077
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022504461
(86)(22)【出願日】2021-03-04
(86)【国際出願番号】 JP2021008496
(87)【国際公開番号】W WO2021177414
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2020038561
(32)【優先日】2020-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】河井 元良
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-254309(JP,A)
【文献】国際公開第2017/033438(WO,A1)
【文献】特開2011-077808(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
海底機器が挿入された海底光ケーブルに含まれる光ファイバで伝送された、通信データに応じた第1の変調がされた信号光及び前記第1の変調と異なる第2の変調がされた基準信号光のうち、指示された波長帯域の光を通過させる可変光バンドパスフィルタと、
前記可変光バンドパスフィルタを通過した前記信号光及び前記基準信号光を受け取り、受け取った前記信号光及び前記基準信号光のレベルを示すレベル信号を出力する受光部と、
予め保持している波長テーブルを参照して、前記可変光バンドパスフィルタに通過させる波長帯域を指示し、かつ、前記波長テーブルと前記レベル信号とを用いて前記可変光バンドパスフィルタを通過した前記信号光及び前記基準信号光のスペクトラムを取得する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記基準信号光を通過させるために前記可変光バンドパスフィルタに指示した波長帯域の中心波長と、前記スペクトラムにおいて前記基準信号光に対応するピークの中心波長と、の間の波長ドリフトを、前記第2の変調がされた前記基準信号光のピークが位置する波長に基づいて検出し、
前記波長テーブルを更新して、検出した前記波長ドリフトを補正する、
スペクトラム監視装置。
【請求項2】
前記光ファイバに挿入され、前記光ファイバで伝送される前記信号光及び前記基準信号光の一部を前記可変光バンドパスフィルタへ分岐する光分岐部をさらに備える、
請求項1に記載のスペクトラム監視装置。
【請求項3】
複数の前記光ファイバのそれぞれに挿入された前記光分岐部と、前記可変光バンドパスフィルタと、の間に挿入され、前記可変光バンドパスフィルタへの前記信号光及び前記基準信号光の入力経路を択一的に選択可能な光スイッチを更に備え、
前記複数の前記光ファイバの一部又は全部を通じて、前記信号光及び前記基準信号光が伝送される、
請求項2に記載のスペクトラム監視装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記可変光バンドパスフィルタを通過する前記信号光及び前記基準信号光の波長帯域を、前記可変光バンドパスフィルタに入力する前記信号光及び前記基準信号光が属する範囲で変化させる、
請求項1乃至3いずれか一項に記載のスペクトラム監視装置。
【請求項5】
海底光ケーブルに含まれる光ファイバに挿入され、前記光ファイバで伝送される、通信データに応じた第1の変調がされた信号光及び前記第1の変調と異なる第2の変調がされた基準信号光を含む信号光の一部を分岐する光分岐部と、
前記光分岐部で分岐された前記第1の変調がされた信号光及び前記基準信号光を含む前記信号光のスペクトラムを監視するスペクトラム監視装置と、を備え、
前記スペクトラム監視装置は、
前記光分岐部で分岐された前記第1の変調がされた信号光及び前記基準信号光を含む前記信号光のうち、指示された波長帯域の光を通過させる可変光バンドパスフィルタと、
前記可変光バンドパスフィルタを通過した前記第1の変調がされた信号光及び前記基準信号光を受け取り、受け取った前記第1の変調がされた信号光及び前記基準信号光のレベルを示すレベル信号を出力する受光部と、
予め保持している波長テーブルを参照して、前記可変光バンドパスフィルタに通過させる波長帯域を指示し、かつ、前記波長テーブルと前記レベル信号とを用いて前記可変光バンドパスフィルタを通過した前記第1の変調がされた信号光及び前記基準信号光のスペクトラムを取得する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記基準信号光を通過させるために前記可変光バンドパスフィルタに指示した波長帯域の中心波長と、前記スペクトラムにおいて前記基準信号光に対応するピークの中心波長と、の間の波長ドリフトを、前記第2の変調がされた前記基準信号光のピークが位置する波長に基づいて検出し、
前記波長テーブルを更新して、検出した前記波長ドリフトを補正する、
海底機器。
【請求項6】
第1の光伝送装置と第2の光伝送装置との間を接続する海底光ケーブルと、
前記海底光ケーブルに挿入される海底機器と、を備え、
前記海底機器は、
前記海底光ケーブルに含まれる光ファイバに挿入され、前記光ファイバで伝送される、通信データに応じた第1の変調がされた信号光及び前記第1の変調と異なる第2の変調がされた基準信号光を含む信号光の一部を分岐する光分岐部と、
前記光分岐部で分岐された前記第1の変調がされた信号光及び前記基準信号光を含む前記信号光のスペクトラムを監視するスペクトラム監視装置と、を備え、
前記スペクトラム監視装置は、
前記光分岐部で分岐された前記第1の変調がされた信号光及び前記基準信号光を含む前記信号光のうち、指示された波長帯域の光を通過させる可変光バンドパスフィルタと、
前記可変光バンドパスフィルタを通過した前記第1の変調がされた信号光及び前記基準信号光を受け取り、受け取った前記前記第1の変調がされた信号光及び前記基準信号光のレベルを示すレベル信号を出力する受光部と、
予め保持している波長テーブルを参照して、前記可変光バンドパスフィルタに通過させる波長帯域を指示し、かつ、前記波長テーブルと前記レベル信号とを用いて前記可変光バンドパスフィルタを通過した前記第1の変調がされた信号光及び前記基準信号光のスペクトラムを取得する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記基準信号光を通過させるために前記可変光バンドパスフィルタに指示した波長帯域の中心波長と、前記スペクトラムにおいて前記基準信号光に対応するピークの中心波長と、の間の波長ドリフトを、前記第2の変調がされた前記基準信号光のピークが位置する波長に基づいて検出し、
前記波長テーブルを更新して、検出した前記波長ドリフトを補正する、
光通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペクトラム監視装置、海底機器及び光通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)装置を用いた海底光通信システムでは、WDM(Wavelength Division Multiplexing)信号の各チャンネルの信号品質を把握するため、動作中に信号光のスペクトラムの形状を監視する必要がある。こうした要求に対応するために、一般的には、IEC TR 62343-6-7にて示される、可変光バンドパスフィルタと受光器とを組み合わせたOCM(Optical Channel Monitor)が用いられる。
【0003】
スペクトラムを監視するOCMへ信号光を入力するため、波長選択スイッチなどによって監視する信号光をOCMへ分岐する構成が知られている(特許文献1及び2)。この構成においては、信号光が伝送される経路に波長選択スイッチが挿入されている。しかし、経年変化などにより、波長選択スイッチでの波長分離精度が低下して、波長ズレが生じる。そこで、OCMでの監視結果に基づいて、波長選択スイッチの波長ズレを補正することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-133720号公報
【文献】特開2012-105222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、OCMに含まれる可変光バンドパスフィルタにはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)が多く使われている。そのため、MEMSにおいて長期的な通電動作を行うと、シリコンの梁などの機械的動作を行う部品に疲労が発生し、波長精度(フィルタリング精度)が低下する波長ドリフトが発生する。その結果、OCMによる信号光の監視精度が低下してしまうという問題がある。
【0006】
また、MEMSの波長精度(フィルタリング精度)を維持するために、OCMに基準光源を設けて波長精度を維持することも可能であるが、OCMの構造が複雑化し、かつ、消費電力も増大してしまうという問題も有る。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、スペクトラム監視装置において、簡素な構成で可変光バンドパスフィルタの波長ドリフトを補正することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様であるスペクトラム監視装置は、海底機器が挿入された海底光ケーブルに含まれる光ファイバで伝送された、基準信号光を含む信号光のうち、指示された波長帯域の信号光を通過させる可変光バンドパスフィルタと、前記可変光バンドパスフィルタを通過した信号光を受け取り、受け取った信号光のレベルを示すレベル信号を出力する受光部と、予め保持している波長テーブルを参照して、前記可変光バンドパスフィルタに通過させる波長帯域を指示し、かつ、前記波長テーブルと前記レベル信号とを用いて前記可変光バンドパスフィルタを通過した信号光のスペクトラムを取得する制御部と、を有し、前記制御部は、前記基準信号光を通過させるために前記可変光バンドパスフィルタに指示した波長帯域の中心波長と、前記スペクトラムにおいて前記基準信号光対応するピークの中心波長と、の間の波長ドリフトを検出し、前記波長テーブルを更新して、検出した前記波長ドリフトを補正するものである。
【0009】
本発明の一態様である海底機器は、海底光ケーブルに含まれる光ファイバに挿入され、前記光ファイバで伝送される基準信号光を含む信号光の一部を分岐する光分岐部と、前記光分岐部で分岐された前記基準信号光を含む信号光のスペクトラムを監視するスペクトラム監視装置と、を有し、前記スペクトラム監視装置は、前記光分岐部で分岐された前記基準信号光を含む信号光のうち、指示された波長帯域の信号光を通過させる可変光バンドパスフィルタと、前記可変光バンドパスフィルタを通過した信号光を受け取り、受け取った信号光のレベルを示すレベル信号を出力する受光部と、予め保持している波長テーブルを参照して、前記可変光バンドパスフィルタに通過させる波長帯域を指示し、かつ、前記波長テーブルと前記レベル信号とを用いて前記可変光バンドパスフィルタを通過した信号光のスペクトラムを取得する制御部と、を有し、前記制御部は、前記基準信号光を通過させるために前記可変光バンドパスフィルタに指示した波長帯域の中心波長と、前記スペクトラムにおいて前記基準信号光に対応するピークの中心波長と、の間の波長ドリフトを検出し、前記波長テーブルを更新して、検出した前記波長ドリフトを補正するものである。
【0010】
本発明の一態様である光通信システムは、第1の光伝送装置と第2の光伝送装置との間を接続する海底光ケーブルと、前記海底光ケーブルに挿入される海底機器と、を有し、前記海底機器は、前記海底光ケーブルに含まれる光ファイバに挿入され、前記光ファイバで伝送される基準信号光を含む信号光の一部を分岐する光分岐部と、前記光分岐部で分岐された前記基準信号光を含む信号光のスペクトラムを監視するスペクトラム監視装置と、を有し、前記スペクトラム監視装置は、前記光分岐部で分岐された前記基準信号光を含む信号光のうち、指示された波長帯域の信号光を通過させる可変光バンドパスフィルタと、前記可変光バンドパスフィルタを通過した信号光を受け取り、受け取った信号光のレベルを示すレベル信号を出力する受光部と、予め保持している波長テーブルを参照して、前記可変光バンドパスフィルタに通過させる波長帯域を指示し、かつ、前記波長テーブルと前記レベル信号とを用いて前記可変光バンドパスフィルタを通過した信号光のスペクトラムを取得する制御部と、を有し、前記制御部は、前記基準信号光を通過させるために前記可変光バンドパスフィルタに指示した波長帯域の中心波長と、前記スペクトラムにおいて前記基準信号光に対応するピークの中心波長と、の間の波長ドリフトを検出し、前記波長テーブルを更新して、検出した前記波長ドリフトを補正するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、スペクトラム監視装置において、簡素な構成で可変光バンドパスフィルタの波長ドリフトを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態1にかかるスペクトラム監視装置を含む光通信システムの基本構成を示す図である。
図2】実施の形態1にかかる光中継器の構成を模式的に示す図である。
図3】実施の形態1にかかるスペクトラム監視装置の構成を模式的に示す図である。
図4】可変光バンドパスフィルタでの波長ドリフトが生じていない場合のスペクトラムを示す図である。
図5】可変光バンドパスフィルタに波長ドリフトが生じている場合のスペクトラムを示す図である。
図6】更新前後の波長テーブルの例を示す図である。
図7】実施の形態2にかかる光中継器の構成を模式的に示す図である。
図8】実施の形態2にかかるスペクトラム監視装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
【0014】
実施の形態1
実施の形態1にかかるスペクトラム監視装置について説明する説明する。本実施の形態におけるスペクトラム監視装置は、複数の端局に設けられた複数の光伝送装置間を接続する、複数の光ファイバが収容された光ケーブルに挿入される、光中継器、光分岐挿入装置及びROADM装置などの機器に設けられるものである。この光ケーブルは、例えば、海底に敷設される海底光ケーブルであり、この場合、スペクトラム監視装置は、光中継器、光分岐挿入装置及びROADM装置などの海底機器に設けられる。
【0015】
以下では、実施の形態1にかかるスペクトラム監視装置100が光中継器110に設けられるものとして説明する。但し、スペクトラム監視装置100の搭載は、光中継器に限られるものではなく、光分岐挿入装置やROADM装置などの各種の光機器に搭載可能である。
【0016】
図1に、実施の形態1にかかるスペクトラム監視装置100を含む光通信システム1000の基本構成を示す。光通信システム1000は、一方の端局1030に設けられる光伝送装置1010、他方の端局1040に設けられる光伝送装置1020、光ケーブル1100及び光中継器110を有する。端局1030及び1040は、例えば海底光ケーブルの陸揚げ局として設けられるものである。
【0017】
光伝送装置1010と光伝送装置1020との間は、複数の光ファイバが収容された光ケーブル1100によって接続される。光伝送装置1010及び1020は、信号光の送受信が可能な1つ以上のトランスポンダや光合分波回路などが設けられ、光ケーブル1100を通じて双方向の光通信を行うものとして構成される。
【0018】
光ケーブル1100には、伝送によって減衰した信号光を増幅するため、光中継器110が挿入される。
【0019】
次いで、実施の形態1にかかる光中継器110の構成について説明する。図2に、実施の形態1にかかる光中継器110の構成を模式的に示す。図2では、図面及び説明の簡略化のため、光ケーブル1100に収容される光ファイバのうち、光伝送装置1010から光伝送装置1020への下り方向の通信に用いられる光ファイバF1のみを表示している。
【0020】
光ファイバF1には、入力される信号光を2つに分岐する光分岐部11が挿入される。光分岐部11は、例えば、1入力2出力のY分岐などの光カプラとして構成してもよい。
【0021】
光伝送装置1010は、光ファイバF1を通じて、光中継器110へ通信データに応じて変調された信号光D1と、信号光D1よりも短い波長λ1の基準信号光R1と、信号光D1よりも長い波長λ2の基準信号光R2と、を出力する。なお、ここでいう基準信号光の波長とは、基準信号光の中心波長を指すものとする。
【0022】
基準信号光R1は、周波数f1で正弦波変調されている。基準信号光R2は、周波数f1と異なる周波数f2で正弦波変調されている。
【0023】
光伝送装置1010から出力された信号光D1、基準信号光R1及びR2は、光ファイバF1を通じて光分岐部11に入力する。光分岐部11は、信号光D1、基準信号光R1及びR2を、光ファイバF1及び光伝送路12へ分岐する。
【0024】
スペクトラム監視装置100は、光伝送路12を介して信号光D1、基準信号光R1及びR2を受け取る。
【0025】
なお、海底機器の一例である光中継器110には、光ファイバF1によって伝送される信号光の減衰を補償するために、例えば、光ファイバF1に光増幅器が挿入されてもよい。図2では、例として、光増幅器120が設けられている。
【0026】
光増幅器120は、例えば、エルビウム添加ファイバ光増幅器(EDFA:Erbium Doped Fiber Amplifier)として構成される。EDFAは、励起光源から励起光をエルビウム添加光ファイバ(EDF:Erbium Doped Fiber)へ出力してEDFを励起し、EDFに信号光を入力することで信号光を増幅する。光増幅器120は、入力される光を増幅して、光ファイバF1を介して、光伝送装置1020へ出力する。
【0027】
次いで、スペクトラム監視装置100の構成について説明する。図3に、実施の形態1にかかるスペクトラム監視装置100の構成を模式的に示す。スペクトラム監視装置100は、可変光バンドパスフィルタ(BPF:band Pass Filter)13、受光部14及び制御部15を有する。
【0028】
光伝送路12へ分岐された信号光D1、基準信号光R1及びR2は、可変光バンドパスフィルタ13に入力される。可変光バンドパスフィルタ13は、制御部15が出力する制御信号CON1に応じて、通過させる信号光の波長帯域を、受け取った信号光の全波長帯域内でスイープする。例えば、可変光バンドパスフィルタ13を、通過させる信号光の波長帯域を、短波長から長波長へ変化させる。
【0029】
受光部14は、例えばフォトダイオードであり、可変光バンドパスフィルタ13から出力された信号光のレベル(強度)を表すレベル信号S1を、制御部15へ出力する。なお、可変光バンドパスフィルタ13は通過させる信号光の波長帯域をスイープするので、受光部14が受け取る信号光の波長帯域はスイープに応じて変化する。
【0030】
制御部15は、予め保持している波長テーブル15Aを参照して、可変光バンドパスフィルタ13へ制御信号CON1を出力して波長帯域のスイープを制御するとともに、受光部14が出力するレベル信号S1を受け取る。これにより、可変光バンドパスフィルタ13が通過させた波長帯域(すなわち、中心波長)ごとに信号光のレベル(強度)を取得することができる。これにより、信号光D1、基準信号光R1及びR2の全波長帯域におけるスペクトラムSPが得られる。
【0031】
波長テーブル15Aは、制御部15に設けられたメモリなどの記憶装置に格納されていてもよいし、制御部15とは分離して設けられたメモリなどの記憶装置に格納されていてもよい。いずれの場合でも、制御部15は、波長テーブル15Aから必要な情報を読み出し、かつ、必要な情報を波長テーブル15Aに書き込むことが可能に構成される。
【0032】
また、制御部15は、スペクトラムSPを参照して、可変光バンドパスフィルタ13の波長ドリフトを検出して、検出した波長ドリフトを補正するために保持している波長テーブル15Aを更新するように構成される。
【0033】
なお、基準信号光R1及びR2は正弦波変調されているので、制御部15は、変調された信号を検出することで、スペクトラムSPのうちで基準信号光R1及びR2に対応するピークを特定することができる。
【0034】
以下、スペクトラム監視装置100の波長ドリフト補正動作について、基準信号光R1に着目して説明する。図4は、可変光バンドパスフィルタ13での波長ドリフトが生じていない場合のスペクトラムを示す図である。制御部15が、可変光バンドパスフィルタ13を通過する波長帯域として、中心波長λ1で幅がWの帯域Baを指定したとき、図4に示すように、基準信号光R1は可変光バンドパスフィルタ13を通過する。波長ドリフトが生じていない場合には、制御部15が取得するスペクトラムSPには、中心波長λ1の位置に基準信号光R1のピークが立つこととなる。
【0035】
次いで、可変光バンドパスフィルタ13に波長ドリフトが生じている場合について説明する。図5は、可変光バンドパスフィルタ13に波長ドリフトΔλが生じている場合のスペクトラムを示す図である。波長ドリフトΔλが生じている状態で、制御部15が、可変光バンドパスフィルタ13を通過する波長帯域として波長帯域Baを指定したとしても、波長ドリフトΔλだけ波長帯域Baからずれた波長帯域Bbが可変光バンドパスフィルタ13に設定されることとなる。
【0036】
よって、制御部15が取得するスペクトラムSPには、中心波長λ1の位置に立つべき基準信号光R1のピークは存在しないこととなる。
【0037】
これに対し、本構成では、可変光バンドパスフィルタ13を通過する波長帯域をスイープしているため、中心波長が波長λ1から波長ドリフトΔλだけ異なる波長帯域が可変光バンドパスフィルタ13に設定されたときに、基準信号光R1が可変光バンドパスフィルタ13を通過することとなる。したがって、制御部15が取得するスペクトラムSPには、本来であれば中心波長λ1の位置に立つべき基準信号光R1のピークは、中心波長λ1-Δλの位置に立つこととなる。
【0038】
制御部15は、スペクトラムSPを参照することで、波長テーブル15Aに規定されている、基準信号光R1を通過させるために可変光バンドパスフィルタ13に設定する波長帯域の中心波長を、λ1からλ1-Δλに更新する。図6に、更新前後の波長テーブル15Aの例を示す。更新後は、基準信号光R1を通過させる波長帯域の中心波長として、λ1-Δλを設定することで波長ドリフトを補正し、実際には中心波長がλ1の基準信号光R1を通過させることができる。
【0039】
また、制御部15は、波長テーブル15Aに含まれる、信号光D1などの他の信号光の波長を通過させる波長帯域の中心波長を、同様にΔλだけ変化した値に更新することができる。
【0040】
なお、上述では、基準信号光R2についても、基準信号光R1と同様の波長ドリフト補正を行うことができるので、その詳細については説明を省略する。
【0041】
以上、本構成によれば、可変光バンドパスフィルタ13の波長ドリフトを補正して、スペクトラム形状の監視精度を維持できるスペクトラム監視装置を実現できる。
【0042】
また、本構成では、スペクトラム監視装置に基準光源を設ける必要がないので、構成の複雑化を避けることができる。また、構成を簡素化できるので、消費電力の抑制の観点からも有利である。
【0043】
上述の波長ドリフト補正は、連続的に行ってもよいし、断続的に行ってもよい。波長ドリフト補正を断続的に行う場合には、休止期間を設けることで、スペクトラム監視装置の長寿命化や搭載される部品に対する信頼性の要求水準を緩和することができる。
【0044】
実施の形態2
上述の実施の形態1では、下り通信に用いる光ファイバを有する構成について説明したが、本実施の形態では下り通信及び上り通信に用いる光ファイバペアを有する構成について説明する。図7に、実施の形態2にかかる光中継器210の構成を模式的に示す。光中継器210は、光ファイバF1及びF2、光分岐部11及び21、光伝送路12及び22、スペクトラム監視装置200を有する。なお、図7では、説明の簡略化のため、光増幅器120を含む他の構成については省略している。
【0045】
光ファイバF1は、実施の形態1と同様に、光伝送装置1010から光伝送装置1020への下り方向の通信に用いられる光ファイバである。光ファイバF2は、光伝送装置1020から光伝送装置1010への上り方向の通信に用いられる光ファイバである。スペクトラム監視装置200は、光ファイバF1及びF2に挿入される。
【0046】
光伝送装置1010は、光ファイバF1を通じて、光中継器210のスペクトラム監視装置200へ、通信データに応じて変調されたデータ信号光D1と、基準信号光R1及びR2と、を出力する。
【0047】
光伝送装置1020は、光ファイバF2を通じて、光中継器210のスペクトラム監視装置200へ、通信データに応じて変調された信号光D2と、信号光D2よりも短い波長λ3の基準信号光R3と、信号光D2よりも長い波長λ4の基準信号光R4と、を出力する。
【0048】
光伝送装置1020から出力された信号光D2、基準信号光R3及びR4は、光ファイバF2を通じて光分岐部21に入力する。光ファイバF2に挿入された光分岐部21は、光分岐部11と同様に、入力された信号光を2つに分岐するものとして構成される。図8に示すように、光分岐部21は、信号光D2、基準信号光R3及びR4を、光ファイバF2及び光伝送路22へ分岐する。
【0049】
図8に、実施の形態2にかかるスペクトラム監視装置200の構成を模式的に示す。スペクトラム監視装置200は、スペクトラム監視装置100に光スイッチ23を追加した構成を有する。
【0050】
光スイッチ23は、2入力1出力の光スイッチであり、光伝送路12及び22に挿入される。制御部15は、制御信号CON2を光スイッチ23に出力することで、可変光バンドパスフィルタ13への信号光の入力経路として、光伝送路12及び22のいずれかを選択することができる。
【0051】
光スイッチ23を通じて、可変光バンドパスフィルタ13に基準信号光R1及びR2が入力する場合については、スペクトラム監視装置100と同様であるので、説明を省略する。
【0052】
光スイッチ23を通じて、可変光バンドパスフィルタ13に基準信号光R3及びR4が入力する場合について説明する。この場合、光伝送路22へ分岐された信号光D2、基準信号光R3及びR4は、光スイッチ23を通じて、可変光バンドパスフィルタ13に入力される。つまり、スペクトラム監視装置200は、光ファイバF1で伝送される基準信号光R1及びR2だけでなく、基準信号光R3及びR4をも受け取ることが可能となり、基準信号光R3及びR4を用いて波長ドリフトを補正することができる。なお、基準信号光R3及びR4を用いた波長ドリフト補正は、基準信号光R1用いた波長ドリフト補正と同様であるので、説明を省略する。
【0053】
なお、本構成においては、上り回線及び下り回線のいずれかのみで基準信号光を伝送してもよい。この場合、上り回線及び下り回線の両方で基準信号光を伝送する場合と比べて、基準信号光を出力するための光源や変調器などの部品を削減することが可能である。また、光スイッチ23を設けているため、上り回線及び下り回線の間で、基準信号光の伝送を必要に応じて切り替えることもできる。
【0054】
これにより、上り回線及び下り回線のいずれか又は両方によって基準信号光を伝送して波長ドリフトを補正することができる。また、波長ドリフト補正後に、光スイッチ23を制御することで、1つのスペクトラム監視装置で上り回線及び下り回線の両方のスペクトラム監視を行うことができる。
【0055】
なお、上記では、光スイッチ23が2入力1出力の光スイッチとして構成される例について説明したが、光スイッチの入力ポート数を3以上とすることで、3本以上の光ファイバの全部又は一部によって基準信号光を伝送して、波長ドリフトの補正を行うことも可能である。例えば、4入力1出力の光スイッチであれば2組のファイバペア、8入力1出力の光スイッチであれば4組のファイバペアのスペクトラム監視を、1つのスペクトラム監視装置で行うことが可能となる。
【0056】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、光中継器に設けられる光伝送路は、光ファイバであってもよい、光ファイバ以外の石英導波路などの任意の光伝送路として構成してもよい。
【0057】
上述の実施の形態では、海底機器の一例である光中継器について説明したが、光分岐装置やROADM装置などの他の海底機器にも、上述のスペクトラム監視装置を適用可能である。
【0058】
上述の実施の形態では、基準信号光は正弦波変調されているものとして説明したが、制御部が基準信号光を識別できる限り、任意の変調方式で基準信号光を変調することができる。
【0059】
上述の実施の形態では、スペクトラム監視装置と光分岐部とは分離されて設けられるものとして説明したが、光分岐部は、スペクトラム監視装置に含まれてもよい。
【0060】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0061】
この出願は、2020年3月6日に出願された日本出願特願2020-38561を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0062】
11、21 光分岐部
12、22 光伝送路
13 可変光バンドパスフィルタ
14 受光部
15 制御部
15A 波長テーブル
23 光スイッチ
100、200 スペクトラム監視装置
110、210 光中継器
120 光増幅器
F1、F2 光ファイバ
1000 光通信システム
1010、1020 光伝送装置
1100 光ケーブル
CON1、CON2 制御信号
D1、D2 信号光
R1~R4 基準信号光
S1 レベル信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8