(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】半導体装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240130BHJP
H01L 21/607 20060101ALI20240130BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240130BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20240130BHJP
H05K 1/18 20060101ALI20240130BHJP
H05K 3/32 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H01L21/60 321Z
H01L21/607 A
H01L25/04 C
H05K1/18 H
H05K3/32 Z
(21)【出願番号】P 2022534946
(86)(22)【出願日】2021-05-28
(86)【国際出願番号】 JP2021020530
(87)【国際公開番号】W WO2022009556
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2020118648
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 太一
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/031020(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/230292(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H01L 21/607
H01L 23/48
H01L 25/07
H01L 25/18
H05K 1/18
H05K 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと、
絶縁板と前記絶縁板に設けられ、前記半導体チップと電気的に接続される回路パターンとを有する絶縁回路基板と、
一端に前記回路パターンが接合される脚部を含み、他端に外部接続端子を備える配線部材と、
を備え、
前記脚部は、前記回路パターンに対して鉛直方向に延伸する垂直部と、前記垂直部の前記回路パターン側の下端部の分岐部から所定方向に屈曲し前記回路パターンに対して平行に延伸して、前記回路パターンに接合される第1分割部と、前記分岐部から前記所定方向の反対方向に屈曲し前記回路パターンに対して平行に延伸して、前記回路パターンに接合される第2分割部と、を備
え、
前記脚部は、さらに、
前記垂直部の前記分岐部と前記第1分割部とを接続する、弾性を発現する第1継続部と、
前記垂直部の前記分岐部と前記第2分割部とを接続する、弾性を発現する第2継続部と、
を備え、
前記第1分割部は、前記第1継続部が屈曲して、前記回路パターンに対して平行に延伸し、
前記第2分割部は、前記第2継続部が屈曲して、前記回路パターンに対して平行に延伸する、
半導体装置。
【請求項2】
前記脚部は、板状であって、前記第1分割部及び前記第2分割部は厚さ方向において互いに反対側にそれぞれ分割されている、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1分割部の第1厚さと前記第2分割部の第2厚さとは、前記垂直部の第3厚さから2分割されている、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1分割部の第1幅と前記第2分割部の第2幅とは、前記垂直部の第3幅から2分割されている、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記脚部は、一組の前記第1分割部及び前記第2分割部が複数組分割されている、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
平面視における前記第1分割部の第1面積と前記第2分割部の第2面積とは等しい、
請求項4または5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記分岐部から前記第1分割部の前記所定方向の第1先端部までの長さと、前記分岐部から前記第2分割部の前記所定方向の反対方向の第2先端部までの長さとが同一である、
請求項1乃至6のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項8】
前記配線部材は、前記脚部を複数含み、さらに、前記脚部の前記下端部の反対側の上端部がそれぞれ接続される本体部を備える、
請求項1乃至7のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項9】
前記本体部は、さらに、所定の配線方向に延伸し、前記脚部が前記配線方向に沿って並んで配置されている、
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記脚部は、前記本体部に対して、前記所定方向が前記配線方向に平行を成してそれぞれ接続されている、
請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
放熱板をさらに備え、
前記放熱板上に、前記絶縁回路基板が前記配線方向に複数配置され、
前記配線部材は、前記本体部が前記絶縁回路基板を跨って前記配線方向に延伸され、前記脚部が前記絶縁回路基板にそれぞれ接合されて、配置されている、
請求項9または10に記載の半導体装置。
【請求項12】
複数の前記脚部にそれぞれ含まれる前記第1分割部及び前記第2分割部は、前記本体部に対して、前記配線方向に沿って一列に配置されている、
請求項10または11に記載の半導体装置。
【請求項13】
絶縁板と前記絶縁板に設けられた回路パターンとを有する絶縁回路基板と、
一端に前記回路パターンに接合される脚部を含み、他端に外部接続端子を備え、前記脚部は、前記回路パターンに対して鉛直方向に延伸する垂直部と、前記垂直部の前記回路パターン側の下端部の分岐部から所定方向に屈曲し前記回路パターンに対して平行に延伸して、前記回路パターンに接合される第1分割部と、前記分岐部から前記所定方向の反対方向に屈曲し前記回路パターンに対して平行に延伸して、前記回路パターンに接合される第2分割部とを備える配線部材と、を用意する用意工程と、
前記回路パターンに前記脚部の前記第1分割部及び前記第2分割部を配置して、前記第1分割部及び前記第2分割部を前記回路パターンに超音波接合により同時に接合する超音波接合工程と、
を有
し、
前記脚部は、さらに、
前記垂直部の前記分岐部と前記第1分割部とを接続する、弾性を発現する第1継続部と、
前記垂直部の前記分岐部と前記第2分割部とを接続する、弾性を発現する第2継続部と、
を備え、
前記第1分割部は、前記第1継続部が屈曲して、前記回路パターンに対して平行に延伸し、
前記第2分割部は、前記第2継続部が屈曲して、前記回路パターンに対して平行に延伸する、
半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記配線部材は複数の前記脚部を備えており、複数の前記絶縁回路基板の前記回路パターンに対して前記脚部をそれぞれ接合する、
請求項
13に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
絶縁板と前記絶縁板に設けられた回路パターンとをそれぞれ有し、一方向に配列された複数の絶縁回路基板と、
一端に、前記複数の絶縁回路基板にそれぞれ対応し、前記回路パターンに接合される複数の脚部を含み、他端に外部接続端子を備え、前記複数の脚部は、前記回路パターンに対して鉛直方向に延伸する垂直部と、前記垂直部の前記回路パターン側の下端部の分岐部から所定方向に屈曲し前記回路パターンに対して平行に延伸して、前記回路パターンに接合される第1分割部と、前記分岐部から前記所定方向の反対方向に屈曲し前記回路パターンに対して平行に延伸して、前記回路パターンに接合される第2分割部とをそれぞれ備える配線部材と、を用意する用意工程と、
前記回路パターンに前記複数の脚部の前記第1分割部及び前記第2分割部をそれぞれ配置して、前記一方向に沿って、前記複数の脚部ごとに前記第1分割部及び前記第2分割部を前記回路パターンに超音波接合により順次接合する超音波接合工程と、
を有
し、
前記脚部は、さらに、
前記垂直部の前記分岐部と前記第1分割部とを接続する、弾性を発現する第1継続部と、
前記垂直部の前記分岐部と前記第2分割部とを接続する、弾性を発現する第2継続部と、
を備え、
前記第1分割部は、前記第1継続部が屈曲して、前記回路パターンに対して平行に延伸し、
前記第2分割部は、前記第2継続部が屈曲して、前記回路パターンに対して平行に延伸する、
半導体装置の製造方法。
【請求項16】
半導体チップと、
絶縁板と前記絶縁板に設けられ、前記半導体チップと電気的に接続される回路パターンとを有する絶縁回路基板と、
前記回路パターンが接合される
複数の脚部
と所定の配線方向に延伸し、前記複数の脚部の前記回路パターン側の下端部の反対側のそれぞれの上端部に接続され、前記複数の脚部が前記配線方向に沿って並んで配置されている本体部とを含み、
前記本体部の前記複数の脚部の反対側に外部接続端子を備える配線部材と、
を備え、
前記
複数の脚部は、前記回路パターンに対して鉛直方向に延伸する垂直部と、
前記下端部の分岐部から所定方向に屈曲し前記回路パターンに対して平行に延伸して、前記回路パターンに接合される第1分割部と、前記分岐部から前記所定方向の反対方向に屈曲し前記回路パターンに対して平行に延伸して、前記回路パターンに接合される第2分割部と、を
それぞれ備
え、
前記複数の脚部は、前記本体部に対して、前記所定方向が前記配線方向に平行を成してそれぞれ接続されている、
半導体装置。
【請求項17】
放熱板をさらに備え、
前記放熱板上に、前記絶縁回路基板が前記配線方向に複数配置され、
前記配線部材は、前記本体部が前記絶縁回路基板を跨って前記配線方向に延伸され、前記脚部が前記絶縁回路基板にそれぞれ接合されて、配置されている、
請求項
16に記載の半導体装置。
【請求項18】
複数の前記脚部にそれぞれ含まれる前記第1分割部及び前記第2分割部は、前記本体部に対して、前記配線方向に沿って一列に配置されている、
請求項
17に記載の半導体装置。
【請求項19】
前記脚部は、さらに、
前記垂直部の前記分岐部と前記第1分割部とを接続する、弾性を発現する第1継続部と、
前記垂直部の前記分岐部と前記第2分割部とを接続する、弾性を発現する第2継続部と、
を備え、
前記第1分割部は、前記第1継続部が屈曲して、前記回路パターンに対して平行に延伸し、
前記第2分割部は、前記第2継続部が屈曲して、前記回路パターンに対して平行に延伸する、
請求項
16に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)といった半導体素子を含んでいる。半導体装置は、放熱板と、当該放熱板上にそれぞれ接合された、半導体素子が設けられたセラミック回路基板とを備える。さらに、半導体装置では、各セラミック回路基板の回路パターンがリードフレームによりそれぞれ電気的に接続されている。リードフレームは、本体部と本体部に接続された複数の外部接続端子と本体部に接続された複数の脚部とを有する。本体部は複数のセラミック回路基板上を通過するように延伸している。外部接続端子は外部機器等に電気的に接続されている。外部接続端子は、本体部に対して電流を入力または本体部を導通する電流を外部に出力する。脚部は側面視でL字形を成している。このような脚部は、複数のセラミック回路基板上を通過する本体部に沿って、本体部にそれぞれ接続されている。脚部は、各セラミック回路基板の回路パターンに電気的に接合されて、各セラミック回路基板と本体部とを電気的に接続する。この際、脚部は、セラミック回路基板の回路パターンに超音波接合により接合される。このようなリードフレームは、例えば、銅または銅合金により構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リードフレームの脚部は超音波接合により回路パターンに接合される。接合される際、脚部は振動方向に応じて接合予定箇所から位置ずれして接合されてしまう場合がある。複数の脚部のうち、本体部の一端部に位置する脚部から本体部の延伸方向に沿って順に脚部の超音波接合を行うと、本体部の一端部の反対側の他端側に連れて、回路パターンに対する脚部の位置ずれが大きくなってしまう。このようにして脚部が接合されたリードフレームはセラミック回路基板に対して寸法公差が大きくなってしまい、半導体装置を製造できなくなってしまう場合がある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、リードフレームの脚部の接合箇所の位置ずれが防止された半導体装置及び半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、半導体チップと、絶縁板と前記絶縁板に設けられ、前記半導体チップと電気的に接続される回路パターンとを有する絶縁回路基板と、一端に前記回路パターンが接合される脚部を含み、他端に外部接続端子を備える配線部材と、を備え、前記脚部は、前記回路パターンに対して鉛直方向に延伸する垂直部と、前記垂直部の前記回路パターン側の下端部の分岐部から所定方向に屈曲し前記回路パターンに対して平行に延伸して、前記回路パターンに接合される第1分割部と、前記分岐部から前記所定方向の反対方向に屈曲し前記回路パターンに対して平行に延伸して、前記回路パターンに接合される第2分割部と、を備え、前記脚部は、さらに、前記垂直部の前記分岐部と前記第1分割部とを接続する、弾性を発現する第1継続部と、前記垂直部の前記分岐部と前記第2分割部とを接続する、弾性を発現する第2継続部と、を備え、前記第1分割部は、前記第1継続部が屈曲して、前記回路パターンに対して平行に延伸し、前記第2分割部は、前記第2継続部が屈曲して、前記回路パターンに対して平行に延伸する、半導体装置が提供される。
【0007】
また、本発明の一観点によれば、絶縁板と前記絶縁板に設けられた回路パターンとを有する絶縁回路基板と、一端に前記回路パターンに接合される脚部を含み、他端に外部接続端子を備え、前記脚部は、前記回路パターンに対して鉛直方向に延伸する垂直部と、前記垂直部の前記回路パターン側の下端部の分岐部から所定方向に屈曲し前記回路パターンに対して平行に延伸して、前記回路パターンに接合される第1分割部と、前記分岐部から前記所定方向の反対方向に屈曲し前記回路パターンに対して平行に延伸して、前記回路パターンに接合される第2分割部とを備える配線部材と、を用意する用意工程と、前記回路パターンに前記脚部の前記第1分割部及び前記第2分割部を配置して、前記第1分割部及び前記第2分割部を前記回路パターンに超音波接合により同時に接合する超音波接合工程と、を有し、前記脚部は、さらに、前記垂直部の前記分岐部と前記第1分割部とを接続する、弾性を発現する第1継続部と、前記垂直部の前記分岐部と前記第2分割部とを接続する、弾性を発現する第2継続部と、を備え、前記第1分割部は、前記第1継続部が屈曲して、前記回路パターンに対して平行に延伸し、前記第2分割部は、前記第2継続部が屈曲して、前記回路パターンに対して平行に延伸する、半導体装置の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、回路パターンに対してリードフレームの脚部の接合箇所の位置ずれが防止され、半導体装置を適切に製造することができる。
【0009】
本発明の上記及び他の目的、特徴及び利点は本発明の例として好ましい実施の形態を表す添付の図面と関連した以下の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態の半導体装置の内部の平面図である。
【
図2】第1の実施の形態の半導体装置を説明するための図である。
【
図3】第1の実施の形態の半導体装置に含まれるセラミック回路基板の平面図である。
【
図4】第1の実施の形態の半導体装置に含まれるリードフレームで接続された複数のセラミック回路基板の平面図である。
【
図5】第1の実施の形態の半導体装置に含まれるリードフレームで接続された複数のセラミック回路基板の側面図である。
【
図6】第1の実施の形態の半導体装置に含まれるリードフレームの脚部の斜視図である。
【
図7】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
【
図8】第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる超音波接合工程を説明するための図である。
【
図9】第2の実施の形態の半導体装置に含まれるリードフレームの脚部の斜視図である。
【
図10】第2の実施の形態の半導体装置に含まれるリードフレームの別の脚部を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、「おもて面」及び「上面」とは、
図2の半導体装置10において、上側を向いた面を表す。同様に、「上」とは、
図2の半導体装置10において、上側の方向を表す。「裏面」及び「下面」とは、
図2の半導体装置10において、下側を向いた面を表す。同様に、「下」とは、
図2の半導体装置10において、下側の方向を表す。必要に応じて他の図面でも同様の方向性を意味する。「おもて面」、「上面」、「上」、「裏面」、「下面」、「下」、「側面」は、相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。
【0012】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態の半導体装置10について
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、第1の実施の形態の半導体装置の内部の平面図であり、
図2は、第1の実施の形態の半導体装置を説明するための図である。なお、
図1は、
図2の半導体装置10からケース20を取り外したときの平面図を表している。また、
図2(A)は、半導体装置10の平面図、
図2(B)は
図2(A)の半導体装置10を図中下側からの側面図をそれぞれ表している。
【0013】
半導体装置10は、
図1に示されるように、放熱ベース板30と放熱ベース板30上に設けられた複数のセラミック回路基板40a~40f及び制御配線ユニット50a~50fとを含む。なお、セラミック回路基板40a~40fは、それぞれを区別しない場合には、セラミック回路基板40と表す。また、制御配線ユニット50a~50fは、それぞれを区別しない場合には、制御配線ユニット50と表す。そして、半導体装置10は、各セラミック回路基板40に電気的に接続された正極用,負極用,出力用リードフレーム60a~60cがそれぞれ設けられている。なお、正極用,負極用,出力用リードフレーム60a~60cは、それぞれ区別しない場合には、リードフレーム60と表す。このような、半導体装置10は、放熱ベース板30上にケース20が取り付けられている(
図2を参照)。放熱ベース板30上のセラミック回路基板40及び制御配線ユニット50はケース20により覆われている。
【0014】
セラミック回路基板40a~40fは、放熱ベース板30のおもて面に、放熱ベース板30の長辺に沿って一列にそれぞれ配置されている。セラミック回路基板40は、放熱ベース板30のおもて面に対して、例えば、はんだまたは銀ろう等を介して接合されている。セラミック回路基板40a~40fは、後述する第1半導体チップ45a,46a及び第2半導体チップ45b,46bが接合され、ボンディングワイヤにより電気的に接続されている。ボンディングワイヤは、導電性に優れた材質により構成されている。当該材質として、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金により構成されている。また、ボンディングワイヤの径は、例えば、100μm以上、500μm以下である。なお、セラミック回路基板40並びに第1半導体チップ45a,46a及び第2半導体チップ45b,46bの詳細については後述する。
【0015】
制御配線ユニット50a,50c,50eは、放熱ベース板30上であって、
図1中、セラミック回路基板40a,40c,40eの上方に配置されている。制御配線ユニット50b,50d,50fは、放熱ベース板30上であって、
図1中、セラミック回路基板40a,40d,40eの下方に配置されている。このような制御配線ユニット50は、絶縁板51と絶縁板51上に設けられた回路パターン52と回路パターン52上に接合された制御用リードフレーム60dとを有している。なお、制御配線ユニット50のうち、制御配線ユニット50fは、回路パターン52及び制御用リードフレーム60dが一組形成されている。他の制御配線ユニット50は、回路パターン52及び制御用リードフレーム60dが二組形成されている。
【0016】
絶縁板51は、熱伝導性のよいセラミックスにより構成されている。このようなセラミックスは、例えば、酸化アルミニウムと当該酸化アルミニウムに添加された酸化ジルコニウムとを主成分とする複合材料、または、窒化珪素を主成分とする材料により構成されている。また、絶縁板51の厚さは、0.5mm以上、2.0mm以下である。絶縁板51は、平面視で、矩形状である。また、角部がR形状や、C形状に面取りされていてもよい。
【0017】
複数の回路パターン52は、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銀、銅、ニッケル、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。また、複数の回路パターン52の厚さは、0.5mm以上、1.5mm以下である。複数の回路パターン52の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。絶縁板51に対する複数の回路パターン52は、絶縁板51のおもて面に金属板を形成し、この金属板に対してエッチング等の処理を行って得られる。または、あらかじめ金属板から切り出した複数の回路パターン52を絶縁板51のおもて面に圧着させてもよい。なお、
図1に示す複数の回路パターン52は一例である。必要に応じて、回路パターン52の個数、形状、大きさ等を適宜選択してもよい。
【0018】
制御用リードフレーム60dは、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銀、銅、ニッケル、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。制御用リードフレーム60dの表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。また、制御用リードフレーム60dの先端部には、制御用外部接続端子62dが設けられている。
【0019】
正極用,負極用,出力用リードフレーム60a~60cもまた、制御用リードフレーム60dと同様に、導電性に優れた金属により構成されて、めっき処理が行われてもよい。また、正極用リードフレーム60aは、二つの正極用外部接続端子62aが接続されている。負極用リードフレーム60bは、二つの負極用外部接続端子62bが接続されている。出力用リードフレーム60cは、一つの出力用外部接続端子62cが接続されている。
【0020】
放熱ベース板30は、熱伝導性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、アルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。放熱ベース板30の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。なお、このような半導体装置10の放熱ベース板30の裏面に冷却器(図示を省略)を、サーマルグリースを介して取りつけてもよい。これにより放熱性を向上させることも可能である。なお、サーマルグリースは、例えば、金属酸化物のフィラーが混入されたシリコーンである。この場合の冷却器は、例えば、熱伝導性に優れたアルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金等により構成されている。また、冷却器として、フィン、または、複数のフィンから構成されるヒートシンク並びに水冷による冷却装置等を適用することができる。また、放熱ベース板30は、このような冷却器と一体的に構成されてもよい。その場合は、熱伝導性に優れたアルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金により構成される。そして、耐食性を向上させるために、例えば、ニッケル等の材料をめっき処理等により冷却器と一体化された放熱ベース板30の表面に形成してもよい。具体的には、ニッケルの他に、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金等がある。
【0021】
ケース20は、下部収納部21と上部収納部22とを含んでいる。下部収納部21は平面視で矩形状であって、箱型を成している。上部収納部22もまた平面視で矩形状であって、下部収納部21よりも小さい箱型を成している。下部収納部21と上部収納部22とは一体的に接続されており、内部が空洞になっている。ケース20の空洞内に、セラミック回路基板40、正極用,負極用,出力用,制御用リードフレーム60a~60d等が収納される。このようなケース20は、熱可塑性樹脂により構成されている。このような樹脂として、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリアミド樹脂、または、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂等が挙げられる。
【0022】
下部収納部21のおもて面に一方の長辺に沿って、ケース20の裏面側に窪んだ制御端子領域21a,21c,21eが設けられている。制御端子領域21a,21c,21eから、制御用リードフレーム60dの制御用外部接続端子62dがそれぞれ表出されている。下部収納部21のおもて面に他方の長辺に沿って、ケース20の裏面側に窪んだ制御端子領域21b,21d,21fが設けられている。制御端子領域21b,21d,21fから、制御用リードフレーム60dの制御用外部接続端子62dがそれぞれ表出されている。上部収納部22のおもて面からは、長辺に沿って、出力用外部接続端子62cと正極用外部接続端子62aと負極用外部接続端子62bと正極用外部接続端子62aと負極用外部接続端子62bとがそれぞれ表出されている。なお、出力用外部接続端子62cは、平板状であって、上部収納部22のおもて面の一方の長辺側から鉛直上方に延出して、おもて面側に折り返されている。正極用外部接続端子62aと負極用外部接続端子62bと正極用外部接続端子62aと負極用外部接続端子62bとも平板状であって、上部収納部22のおもて面の他方の長辺側から鉛直上方に延出して、おもて面側に折り返されている。
【0023】
次に、セラミック回路基板40について
図3を用いて説明する。
図3は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれるセラミック回路基板の平面図である。なお、
図3では、セラミック回路基板40aを示しているものの、他のセラミック回路基板も同様の構成を成している。
【0024】
セラミック回路基板40aは、第1半導体チップ45a,46a及び第2半導体チップ45b,46bが配置され、ボンディングワイヤ47a~47dにより電気的に接続されている。第1半導体チップ45a,46aは、シリコンまたは炭化シリコンにより構成されたスイッチング素子である。スイッチング素子は、例えば、IGBT、パワーMOSFETである。第1半導体チップ45a,46aがIGBTである場合には、裏面に主電極としてコレクタ電極を、おもて面に、制御電極としてゲート電極及び主電極としてエミッタ電極をそれぞれ備えている。第1半導体チップ45a,46aがパワーMOSFETである場合には、裏面に主電極としてドレイン電極を、おもて面に、制御電極としてゲート電極及び主電極としてソース電極をそれぞれ備えている。また、第2半導体チップ45b,46bは、シリコンまたは炭化シリコンにより構成されたダイオード素子である。ダイオード素子は、例えば、SBD(Schottky Barrier Diode)、PiN(P-intrinsic-N)ダイオード等のFWD(Free Wheeling Diode)である。このような第2半導体チップ45b,46bは、裏面に主電極としてカソード電極を、おもて面に主電極としてアノード電極をそれぞれ備えている。第1半導体チップ45a,46a及び第2半導体チップ45b,46bは、その裏面側が所定の回路パターン42a,42b上にはんだ(図示を省略)により接合されている。はんだは、鉛フリーはんだが用いられる。鉛フリーはんだは、例えば、錫-銀-銅からなる合金、錫-亜鉛-ビスマスからなる合金、錫-銅からなる合金、錫-銀-インジウム-ビスマスからなる合金のうち少なくともいずれかの合金を主成分とする。さらに、はんだには、添加物が含まれてもよい。添加物は、例えば、ニッケル、ゲルマニウム、コバルトまたはシリコンである。はんだは、添加物が含まれることで、濡れ性、光沢、結合強度が向上し、信頼性の向上を図ることができる。はんだに代わり、金属焼結体を用いてもよい。また、第1半導体チップ45a,46a及び第2半導体チップ45b,46bの厚さは、例えば、180μm以上、220μm以下であって、平均は、200μm程度である。
【0025】
セラミック回路基板40aは、絶縁板41と絶縁板41の裏面に形成された金属板43(
図5を参照)とを有している。さらに、セラミック回路基板40aは、絶縁板41のおもて面に形成された回路パターン42a~42eをそれぞれ有している。なお、以下では、回路パターン42a~42eを特に区別しない場合には、回路パターン42と表す。絶縁板41は、絶縁板51と同様であって、熱伝導性に優れた、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素等の高熱伝導性のセラミックスにより構成されている。金属板43は、熱伝導性に優れたアルミニウム、鉄、銀、銅、または、少なくともこれらの一種を含む合金等の金属により構成されている。回路パターン42a~42eは、回路パターン52と同様であって、導電性に優れた銅あるいは銅合金等の金属により構成されている。そして、耐食性を向上させるために、例えば、ニッケル等の材料をめっき処理等により表面に形成してもよい。具体的には、ニッケルの他に、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金等がある。また、回路パターン42a~42eの厚さは、例えば、0.1mm以上、1mm以下である。このような構成を有するセラミック回路基板40aとして、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板、AMB(Active Metal Brazed)基板を用いることができる。セラミック回路基板40aは、第1,第2半導体チップ45a,45bで発生した熱を回路パターン42a,42b、絶縁板41及び金属板43を介して、放熱ベース板30に伝導させることができる。
【0026】
回路パターン42aは、第1アーム部Aのコレクタパターンを構成する。回路パターン42aは、第1,第2半導体チップ45a,45bの裏面に形成されたコレクタ電極がはんだを介して接合されている。回路パターン42aは、略矩形状を成しており、
図3中下側に正極用リードフレーム60aの脚部64が接合される部分が突出している。回路パターン42dは、第1アーム部Aの制御パターンを構成する。回路パターン42dは、第1半導体チップ45aのゲート電極と接続されたボンディングワイヤ47aが接続される。さらに、回路パターン42dは、制御配線ユニット50bとボンディングワイヤ(図示を省略)により電気的に接続される。
【0027】
回路パターン42bは、第1アーム部Aのエミッタパターン及び第2アーム部Bのコレクタパターンを構成する。回路パターン42bは、回路パターン42a上の第1,第2半導体チップ45a,45bの出力電極(エミッタ電極)と接続されたボンディングワイヤ47bが接続されている。また、回路パターン42bは、第1,第2半導体チップ46a,46bの裏面に形成されたコレクタ電極がはんだを介して接合されている。回路パターン42bは、略矩形状を成しており、
図3中上側の部分が突出している。回路パターン42bは、回路パターン42aと並んで、配置される。さらに、回路パターン42bは、制御配線ユニット50aとボンディングワイヤ(図示を省略)により電気的に接続される。回路パターン42eは、第2アーム部Bの制御パターンを構成する。回路パターン42eは、第1半導体チップ46aのゲート電極と接続されたボンディングワイヤ47cが接続されている。
【0028】
回路パターン42cは、第2アーム部Bのエミッタパターンを構成する。回路パターン42cは、
第1,第2半導体チップ
46a,46bの出力電極(エミッタ電極)と接続されたボンディングワイヤ47dが接続されている。回路パターン42cは、回路パターン42bの
図3中下側に配置されている。このような回路パターン42cは、負極用リードフレーム60bの脚部64が接合される。
【0029】
半導体装置10では、このような第1半導体チップ45a,46a及び第2半導体チップ45b,46bが接合されたセラミック回路基板40が放熱ベース板30のおもて面に放熱ベース板30の長手方向に沿って複数配置されている。さらに、複数のセラミック回路基板40に適宜電気的に接続される正極用,負極用,出力用リードフレーム60a~60cが設けられている。このような、複数のセラミック回路基板40及び正極用,負極用,出力用リードフレーム60a~60cについて、
図4及び
図5を用いて説明する。
図4は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれるリードフレームで接続された複数のセラミック回路基板の平面図である。
図5は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれるリードフレームで接続された複数のセラミック回路基板の側面図である。なお、
図4では、放熱ベース板30の記載は省略している。
図5は、正極用リードフレーム60aのみの側面を示している。また、
図5では、ケース20のうち上部収納部22の一部を示している。
【0030】
図4及び
図5に示されるように、一方向に配置されたセラミック回路基板40a~40fに対して、正極用,負極用,出力用リードフレーム60a~60cが適宜電気的に接合されている。正極用リードフレーム60aは、本体部61と正極用外部接続端子62aと連係部63と脚部64とを含んでいる。正極用リードフレーム60aは、本体部61に対して、接続されるセラミック回路基板40に応じた位置に脚部64(並びに連係部63)を備えている。正極用リードフレーム60aは、本体部61に対して、ケース20から表出する位置に応じて、正極用外部接続端子62aを備えている。また、負極用,出力用リードフレーム60b,60cもまた、本体部61に対して、接続されるセラミック回路基板40に応じた位置に脚部64(並びに連係部63)を備えている。負極用,出力用リードフレーム60b,60cは、本体部61に対して、
図2で示したようにケース20から表出する位置に応じて、
図4及び
図5で図示を省略する負極用,出力用外部接続端子62b,62cを備えている。
【0031】
本体部61は、平板状であって、
図4及び
図5に示されるように、一方向に複数配置されたセラミック回路基板40のおもて面から所定の高さにおいて配線方向に延伸して設けられている。正極用,負極用,出力用外部接続端子62a~62cは、平板状であって、セラミック回路基板40のおもて面に対して鉛直方向に突出して本体部61に一体的に接続されている。なお、正極用,負極用,出力用外部接続端子62a~62cは、それぞれ、ケース20の上部収納部22のおもて面に対向するように設けられている。ケース20が放熱ベース板30に取り付けられると、正極用,負極用,出力用外部接続端子62a~62cがケース20の上部収納部22のおもて面から鉛直方向に延出する。ケース20の上部収納部22のおもて面から延出する正極用,負極用,出力用外部接続端子62a~62cを折り曲げることで、
図2に示されるように、正極用,負極用,出力用外部接続端子62a~62cの主面が上部収納部22のおもて面に表出される。
【0032】
脚部64は、正極用,負極用,出力用リードフレーム60a~60cごとに、各セラミック回路基板40の回路パターン42a~42cに接合されて電気的に接続されている。なお、脚部64の詳細については後述する。連係部63は、本体部61と脚部64とに一体的に接続されている。よって、連係部63は本体部61と脚部64とを電気的に接続する。
【0033】
次に、正極用,負極用,出力用リードフレーム60a~60cの脚部64の詳細について、
図6を用いて説明する。
図6は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれるリードフレームの脚部の斜視図である。なお、
図6では、回路パターン42に接合されている、リードフレーム60の脚部64(の下端部側)を示している。リードフレーム60において本体部61及び連係部63の図示を省略している。
【0034】
脚部64は、垂直部64aと分割部64b,64cとを含んでいる。脚部64の幅は、垂直部64a及び分割部64b,64cにおいて均一である。なお、後述するように、分割部64b,64cの厚さは、それぞれ、垂直部64aの厚さの略半分であることが望ましい。すなわち、分割部64b,64cの厚さを合わせることで垂直部64aの厚さとなる。垂直部64aは、回路パターン42に対して鉛直方向に延伸する。垂直部64aは延伸先で連係部63と接続される。分割部64bは、さらに、継続部64b1と平行部64b2とを備える。継続部64b1は、垂直部64aの回路パターン42側の下端部の分岐部64a1から所定方向に屈曲する。所定方向とは、厚さ方向である。または、所定方向とは、後述するように挟持された一端部(垂直部64a)に対する他端部に幅方向に対して平行に他端部を横切るように形成された裂け目から割くように分割する方向である。平行部64b2は、継続部64b1から継続して回路パターン42に対して平行に延伸して、裏面の回路パターン接合領域64b3により回路パターン42に接合されている。他方、分割部64cは、分割部64bの反対側に設けられ、継続部64c1と平行部64c2とを備える。継続部64c1は、垂直部64aの回路パターン42側の下端部の分岐部64a1から所定方向の反対側に屈曲する。平行部64c2は、継続部64c1から継続して回路パターン42に対して平行に延伸して、裏面の回路パターン接合領域64c3により回路パターン42に接合されている。
【0035】
このような脚部64は、本体部61に対して連係部63を介して接続されており、分割部64b,64cにおける所定方向が本体部61の配線方向に平行になるように回路パターン42に取り付けられている。脚部64において、分割部64bの分岐部64a1から所定方向の先端部までの長さと、分割部64cの分岐部64a1から所定方向の反対側の先端部までの長さとが等しい。また、分割部64b,64cの幅は等しいため、分割部64b,64cの面積は等しく、特に、平行部64b2,64c2の面積が等しい。
【0036】
また、このような脚部64は、矩形状であって板状の導電板の一端部(垂直部64a)を挟持して固定し、他端部に幅方向に対して平行に当該幅を横切る裂け目を形成する。当該裂け目から割くように分割し、分割したものをそれぞれ反対方向に屈曲させて得られる。このため、垂直部64aの厚さは、分割部64b,64cを合わせた厚さである。なお、この際、分割部64b,64cの厚さは、それぞれ、垂直部64aの厚さの半分であることが望ましい。このようにして得られた脚部64では、分割部64b,64cが回路パターン42に接合される。後述するように、分割部64b,64cは、回路パターン42に超音波接合で接合されている。このため、分割部64b,64cと回路パターン42との間には、接合部材がなく、直接接合されている。したがって、脚部64は、回路パターン42に対して安定して接合されるようになる。また、垂直部64aはおもて面側、裏面側がそれぞれ分割部64b,64cで確実にかつ安定して支持される。さらに、継続部64b1,64c1は回路パターン42に接合されておらず、垂直部64aと分割部64b,64cとの間で弾性を発現する。このため、継続部64b1,64c1は脚部64に対する外部からの衝撃を緩和することができる。したがって、垂直部64aの変形、位置ずれ等が防止され、リードフレーム60を所定の接合箇所に維持することができる。
【0037】
次に、このように回路パターン42に接合された脚部64を含む半導体装置10の製造方法について、
図7及び
図8を用いて説明する。
図7は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法を示すフローチャートである。
図8は、第1の実施の形態の半導体装置の製造方法に含まれる超音波接合工程を説明するための図である。
【0038】
まず、ケース20、放熱ベース板30、セラミック回路基板40、制御配線ユニット50a~50e、第1半導体チップ45a,46a及び第2半導体チップ45b,46b、リードフレーム60等を用意する用意工程を行う(
図7のステップS10)。この際、リードフレーム60は、予め、
図6に示した脚部64が形成されている。
【0039】
次いで、以下の載置工程を行う(
図7のステップS11)。放熱ベース板30のおもて面の所定箇所に、セラミック回路基板40、制御配線ユニット50a~50eをはんだを介してそれぞれ載置する。さらに、セラミック回路基板40の回路パターン42に第1半導体チップ45a,46a及び第2半導体チップ45b,46bをはんだを介してそれぞれ載置する。
【0040】
次いで、ステップS11の状態で以下のはんだ接合工程を行う(
図7のステップS12)。まず、加熱してはんだを溶融させる。はんだが溶融した後、冷却してはんだを固化することで、放熱ベース板30に、セラミック回路基板40、制御配線ユニット50a~50eをそれぞれはんだにより接合する。そして、セラミック回路基板40の回路パターン42に第1半導体チップ45a,46a及び第2半導体チップ45b,46bをそれぞれはんだにより接合する。
【0041】
次いで、ボンディングワイヤにより、セラミック回路基板40と第1半導体チップ45a,46a及び第2半導体チップ45b,46bとの間を電気的に接続して、配線を行う配線工程を行う(
図7のステップS13)。次いで、リードフレーム60の脚部64をセラミック回路基板40の回路パターン42に超音波接合により接合する超音波接合工程を行う(
図7のステップS14)。超音波接合は超音波接合装置により行われる。超音波接合装置は、超音波発生装置と超音波発生装置から発生された超音波を伝搬させる、
図8に示される、超音波ツール70とを含む。まず、脚部64の平行部64b2,64c2の回路パターン接合領域64b3,64c3を回路パターン42の接合箇所に配置する。超音波接合装置の2つの超音波ツール70を、
図8に示されるように、脚部64の平行部64b2,64c2にそれぞれセットする。超音波ツール70は、L字状を成しており、押圧部71と押圧部71に接続された伝搬部72とを含む。押圧部71は、脚部64の平行部64b2,64c2のおもて側に当接される平面を含んでいる。伝搬部72は、その一端側に押圧部71を備え、他端側が超音波発生装置に接続されている。伝搬部72は、超音波発生装置から発生された超音波振動を押圧部71に伝搬する。
【0042】
このような超音波ツール70の押圧部71により、脚部64の平行部64b2,64c2を回路パターン42に対して同時に振動させながら押圧する。すると、平行部64b2,64c2は超音波振動により同時かつ振動方向(例えば、分割部64b,64cの屈曲方向)に対して平行に変形してしまう(例えば、
図8中の破線の矢印方向)。すなわち、平行部64b2,64c2が同様に振動方向に沿って変形するために、垂直部64aが位置ずれすることなく、平行部64b2,64c2を回路パターン42に接合することができる。このようにして、リードフレーム60に設けられている各脚部64をセラミック回路基板40aからセラミック回路基板40fに向けて順に接合しても、リードフレーム60の脚部64はセラミック回路基板40fに近づくに連れて位置ずれが大きくなることはない。したがって、リードフレーム60を複数のセラミック回路基板40の所定の接合箇所に対して適切に接合される。
【0043】
また、超音波ツール70の押圧部71によって脚部64の平行部64b2,64c2を次のように押圧して接合してもよい。すなわち、複数の脚部64が設けられたリードフレーム60において、本体部61に沿って一端部の脚部64から他端部の脚部64まで、超音波ツール70により平行部64b2,64c2を交互にセラミック回路基板40に対して超音波接合してもよい。
【0044】
例えば、正極用リードフレーム60aの場合について説明する(
図4及び
図5を参照)。まず、正極用リードフレーム60aの最端部の脚部64の平行部64b2をセラミック回路基板40aに超音波接合により接合し、当該脚部64の平行部64c2をセラミック回路基板40aに超音波接合により接合する。次いで、正極用リードフレーム60aの当該最端部の脚部64の隣の脚部64の平行部64b2をセラミック回路基板40bに超音波接合により接合し、当該脚部64の平行部64c2をセラミック回路基板40bに超音波接合により接合する。このように正極用リードフレーム60aにおいて本体部61に沿って脚部64をセラミック回路基板40に対して平行部64b
2,64c2の順に接合していく。最終的に、正極用リードフレーム60aの最終端の脚部64の平行部64b2をセラミック回路基板40fに超音波接合により接合し、当該脚部64の平行部64c2をセラミック回路基板40fに超音波接合により接合する。なお、リードフレーム60の本体部61に沿って複数の脚部64の平行部64b2,64c2を交互に接合する場合に限らず、本体部61に沿って複数の脚部64の平行部64c2,64b2を交互に接合してもよい。これらの場合でも、脚部64の平行部64b2,64c2を同時に接合した場合と同様に、リードフレーム60に設けられている各脚部64をセラミック回路基板40aからセラミック回路基板40fに向けて順に接合しても、リードフレーム60の脚部64はセラミック回路基板40fに近づくに連れて位置ずれが大きくなることはない。したがって、リードフレーム60を複数のセラミック回路基板40の所定の接合箇所に対して適切に接合される。
【0045】
次いで、ケース20の各箇所から正極用,負極用,出力用,制御用外部接続端子62a~62dを表出させて、ケース20を放熱ベース板30に接着剤により取り付ける(
図7のステップS15)。以上により、
図2に示した半導体装置10が得られる。
【0046】
上記の半導体装置10は、第1半導体チップ45a,46a及び第2半導体チップ45b,46bと、絶縁板41と絶縁板41に設けられ、第1半導体チップ45a,46a及び第2半導体チップ45b,46bと電気的に接続される回路パターン42とを有するセラミック回路基板40と、を含む。さらに、半導体装置10は、一端に回路パターン42が接合される脚部64を含み、他端に正極用,負極用,出力用外部接続端子62a~62cを備えるリードフレーム60を含む。この際、脚部64は、垂直部64aと分割部64b,64cとをさらに備える。垂直部64aは、回路パターン42に対して鉛直方向に延伸する。分割部64bは、垂直部64aの回路パターン42側の下端部の分岐部64a1から所定方向に屈曲し回路パターン42に対して平行に延伸して、回路パターン42に接合される。分割部64cは、分岐部64a1から所定方向の反対方向に屈曲し回路パターン42に対して平行に延伸して、回路パターン42に接合される。
【0047】
このような脚部64では、垂直部64aがおもて面側、裏面側がそれぞれ分割部64b,64cで確実に支持される。このため、脚部64は回路パターン42に対して安定して接合されるようになる。また、このような脚部64は厚さ方向に分割されているのでそれぞれの分割部64b,64cが垂直部64aより薄くなっており、平行部64b2,64c2と回路パターン42との回路パターン接合領域64b3,64c3に超音波振動が伝わり易く、より強固に接合することができる。また、このような脚部64を回路パターン42に対して、分割部64b,64cを超音波振動により同時に接合する。すると、分割部64b,64cが屈曲方向に対して平行に同様に変形するため、垂直部64aが位置ずれすることがない。したがって、垂直部64aの位置ずれ等が防止され、リードフレーム60を所定の接合箇所に維持することができる。この結果、半導体装置10を適切に製造することができる。
【0048】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは異なる脚部について、
図9を用いて説明する。
図9は、第2の実施の形態の半導体装置に含まれるリードフレームの脚部の斜視図である。なお、
図9は、脚部64のみを示している。第2の実施の形態の脚部64は、第1の実施の形態のリードフレーム60の脚部64に代わって設けられるものである。したがって、第2の実施の形態の半導体装置のその他の構成は、第1の実施の形態の半導体装置10と同様の構成を成している。
【0049】
図9に示される脚部64は、垂直部64aと分割部64b,64cとを含んでいる。垂直部64aは、回路パターン42に対して鉛直方向に延伸する。垂直部64aは延伸先で連係部63と接続される。分割部64b,64cは、第1の実施の形態と異なり、垂直部64aの幅方向に対して、垂直部64aに垂直に1か所で切断されて分割されている。したがって、分割部64b,64cを合わせた幅は、垂直部64aの幅に相当する。分割部64bは、さらに、継続部64b1と平行部64b2とを備える。継続部64b1は、垂直部64aの回路パターン42側の下端部の分岐部64a1から、第1の実施の形態と同様に、所定方向に屈曲する。平行部64b2は、継続部64b1から継続して回路パターン42に対して平行に延伸して、裏面の回路パターン接合領域64b3により回路パターン42に接合されている。他方、分割部64cは、分割部64bの反対側に設けられ、継続部64c1と平行部64c2とを備える。継続部64c1は、垂直部64aの回路パターン42側の下端部の分岐部64a1から所定方向の反対側に屈曲する。平行部64c2は、継続部64c1から継続して回路パターン42に対して平行に延伸して、裏面の回路パターン接合領域64c3により回路パターン42に接合されている。また、このような脚部64も、第1の実施の形態と同様に、超音波ツール70の押圧部71により、脚部64の平行部64b2,64c2を回路パターン42に対して第1の実施の形態と同様に同時に振動させながら、または、交互に振動させながら押圧することで接合することができる。
【0050】
このような脚部64もまた、本体部61に対して連係部63を介して接続されており、分割部64b,64cにおける所定方向が本体部61の配線方向に平行になるように回路パターン42に取り付けられている。脚部64において、分割部64bの分岐部64a1から所定方向の先端部までの長さと、分割部64cの分岐部64a1から所定方向の反対側の先端部までの長さとが等しい。また、分割部64b,64cは垂直部64aの幅の中央で分割されている場合には、それぞれの幅が等しいため、分割部64b,64cの面積は等しく、特に、平行部64b2,64c2の面積が等しい。
【0051】
また、第2の実施の形態の別の脚部について、
図10を用いて説明する。
図10は、第2の実施の形態の半導体装置に含まれるリードフレームの別の脚部を説明するための図である。なお、
図10(A)は、脚部64の斜視図を、
図10(B)は、脚部64の平面図をそれぞれ示している。
図10(A)では、分割部64cは図示されていないものの、垂直部64aの裏側に配置されている。
【0052】
図10に示される脚部64は、垂直部64aと分割部64b~64eとを含んでいる。垂直部64aは、回路パターン42に対して鉛直方向に延伸する。垂直部64aは延伸先で連係部63と接続される。分割部64b~64eは、第1の実施の形態と異なり、垂直部64aの幅方向に対して、垂直部64aに垂直であって等間隔に3か所で切断されて分割されている。したがって、分割部64b~64eを合わせた幅は、垂直部64aの幅に相当する。すなわち、
図10に示される脚部64は、
図9に示した脚部64の分割部64b,64cを二組含んでいる。なお、
図10に示される脚部64は、
図9に示した脚部64を二組含んでいる場合に限らず、三組以上含んでもよい。
【0053】
分割部64bは、さらに、継続部64b1と平行部64b2とを備える。継続部64b1は、垂直部64aの回路パターン42側の下端部の分岐部64a1から所定方向に屈曲する。平行部64b2は、継続部64b1から継続して回路パターン42に対して平行に延伸して、裏面の回路パターン接合領域64b3により回路パターン42に接合されている。また、分割部64dもまた、さらに、継続部64d1と平行部64d2とを備える。継続部64d1は、垂直部64aの回路パターン42側の下端部の分岐部64a1から所定方向に屈曲する。平行部64d2は、継続部64d1から継続して回路パターン42に対して平行に延伸して、裏面の回路パターン接合領域64d3により回路パターン42に接合されている。
【0054】
他方、分割部64cは、垂直部64aの分割部64b,64dの反対側に設けられ、継続部64c1と平行部64c2とを備える(
図9を参照)。継続部64c1は、垂直部64aの回路パターン42側の下端部の分岐部64a1から継続部64b1の反対側に屈曲する。平行部64c2は、継続部64c1から継続して回路パターン42に対して平行に延伸して、裏面の回路パターン接合領域64c3により回路パターン42に接合されている。また、分割部64eは、垂直部64aの分割部64b,64dの反対側に設けられ、継続部64e1と平行部64e2とを備える。継続部64e1は、垂直部64aの回路パターン42側の下端部の分岐部64a1から所定方向の反対側に屈曲する。平行部64e2は、継続部64e1から継続して回路パターン42に対して平行に延伸して、裏面の回路パターン接合領域64e3により回路パターン42に接合されている。
【0055】
このような脚部64もまた、本体部61に対して連係部63を介して接続されており、分割部64b~64eにおける所定方向が本体部61の配線方向に平行になるように回路パターン42に取り付けられている。脚部64において、分割部64bの分岐部64a1から所定方向の先端部までの長さと、分割部64cの分岐部64a1から所定方向の反対側の先端部までの長さと、分割部64dの分岐部64a1から所定方向の先端部までの長さと、分割部64eの分岐部64a1から所定方向の反対側の先端部までの長さとが等しい。また、分割部64b~64eは垂直部64aの幅に対して等間隔に3分割されており、それぞれの幅が等しいため、分割部64b~64eの面積は等しく、特に、平行部64b2~64e2の面積が等しい。
【0056】
このような脚部64も、第1の実施の形態と同様に、回路パターン42に対して超音波ツール70の押圧部71により接合することができる。但し、この場合は、超音波ツール70を脚部64の分割部64b~64eに対応して用意し、分割部64b~64eを回路パターン42に対して同時に振動させながら押圧することで接合することができる。
【0057】
このような第2の実施の形態の脚部64でも、第1の実施の形態と同様に、垂直部64aはおもて面側、裏面側がそれぞれ分割部64b,64c(64b~64e)で確実に支持される。このため、脚部64は回路パターン42に対して安定して接合されるようになる。また、このような脚部64を回路パターン42に対して、分割部64b,64c(64b~64e)を超音波振動により同時に接合する。すると、分割部64b,64c(64b~64e)が屈曲方向に対して平行に同様に変形するため、垂直部64aが位置ずれすることがない。したがって、垂直部64aの位置ずれ等が防止され、リードフレーム60を所定の接合箇所に維持することができる。この結果、半導体装置を適切に製造することができる。
【0058】
上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成及び応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例及び均等物は、添付の請求項及びその均等物による本発明の範囲とみなされる。
【符号の説明】
【0059】
10 半導体装置
20 ケース
21 下部収納部
21a,21b,21c,21d,21e,21f 制御端子領域
22 上部収納部
30 放熱ベース板
40,40a~40f セラミック回路基板
41,51 絶縁板
42,42a~42e,52 回路パターン
43 金属板
45a,46a 第1半導体チップ
45b,46b 第2半導体チップ
47a~47d ボンディングワイヤ
50,50a~50f 制御配線ユニット
60 リードフレーム
60a 正極用リードフレーム
60b 負極用リードフレーム
60c 出力用リードフレーム
60d 制御用リードフレーム
61 本体部
62a 正極用外部接続端子
62b 負極用外部接続端子
62c 出力用外部接続端子
62d 制御用外部接続端子
63 連係部
64 脚部
64a 垂直部
64a1 分岐部
64b~64e 分割部
64b1,64c1,64d1,64e1 継続部
64b2,64c2,64d2,64e2 平行部
64b3,64c3,64d3,64e3 回路パターン接合領域
70 超音波ツール
71 押圧部
72 伝搬部