(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】振動式歯周組織マッサージャー
(51)【国際特許分類】
A61H 13/00 20060101AFI20240130BHJP
A61H 23/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A61H13/00
A61H23/02 332
(21)【出願番号】P 2023128158
(22)【出願日】2023-07-19
【審査請求日】2023-08-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000194413
【氏名又は名称】菅野 康幸
(72)【発明者】
【氏名】菅野 康幸
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-105190(JP,A)
【文献】特開2003-024403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 13/00
A61H 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項2】
バッテリーと電源スイッチと操作部を備えた可変抵抗器で成る
振動装置制御回路と、防水性を備えたリード線と、1個以上の
振動装置で成る電気装置と、樹脂製構造体を主要構成要素として、
振動装置制御回路を樹脂製構造体内に収容設置し、1個以上の振動
装置を防水性を備えたリード線で
振動装置制御回路
と接続したマッサージ装置に於いて、
振動モーターを振動装置とし、振動モーター制御回路を振動装置制御回路として、1個以上の振動モーターを振動モーター制御回路と並列に接続し、振動モーター制御回路の構成要素である操作部を備えた該可変抵抗器は、振動モーターの定格出力から停止に至るまでの範囲に於いて無段階的な調節が可能なものであることを特徴とする、振動式歯周組織マッサージャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動刺激を用いる歯周組織のマッサージ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
歯周病は嫌気性菌による口腔粘膜の歯槽骨吸収を伴う感染症であることから、生体内と外界との境界部であり細菌の侵入部位である歯牙の歯頚部から細菌を取り除くことが原因療法となり、プラークの除去が歯周病の最も基本的な治療方法であったが、歯ブラシを用いた歯周病の治療に於いて、プラークの除去よりも歯茎のマッサージの方がより臨床効果が高いとの報告がなされていた(非特許文献1、2参照)。
しかしながら、歯茎のマッサージによって歯周病が改善されるメカニズムは、ブラッシングによる結果が生じた後の歯周組織の細胞像が示されているものの、そこに至る機能的なメカニズムは解明されていなかった。
【0003】
一般的には、マッサージの作用は末梢の血行を促進することにあると単純に考えられているが、マッサージ作用が生じるには微小循環系を構成している3種類の脈管系の機能が共に関与していると考えられ、必ずしも血行促進作用だけではないと考えられる。
例えば、超音波マッサージの場合では、超音波が表皮下で吸収される際に、振動エネルギーが熱エネルギーに変換されて表皮下組織が加温される作用があり、赤外線照射の場合でも、赤外線の透過作用を有した熱線放射による表皮下組織の加温作用であり、高周波によるマッサージも、高周波が組織の深部にまで到達する性質を利用して、筋肉等の組織深部でジュール熱を発生させ、深部組織を加温する作用である。
従って、上記のマッサージによる作用の本質は温熱作用であり、組織の温度が上がることでQ10効果による組織代謝の促進があるが、温熱作用によって動脈の径が広がり、それによって灌流圧が増大して組織への血流量が増えることで静脈血流の促進が生じさらなる代謝の促進が可能となるものであり、血流量の増大による組織液の増大と温度上昇もまた、リンパ管の蠕動運動の促進を生じさせることから、温熱作用を生じさせるマッサージ操作の主たるターゲット部位は動脈系である。
【0004】
これに対し、低周波による筋肉のマッサージでは、低周波電流の筋肉に対する電気刺激作用を利用して筋肉に弛緩収縮を起こさせ、周囲に間欠的な圧迫を生じさせることで静脈弁を有する静脈に作用して、強力なポンピング作用と搾乳作用を生じさせるものである。これによって静脈血流が増え、筋肉を通過する血液の灌流量が増加することから、動脈血流も受動的に増える。
さらに、筋代謝の上昇と動脈血流量の増加による筋温の上昇と筋肉の動きは共にリンパ管の蠕動運動を誘発、あるいは促進する作用を有していて、これらが総合されて組織の微小循環機能や代謝が改善され、疲労の回復や爽快感を得ることができると考えられることから、血流促進作用を生じさせるマッサージ操作の主たるターゲット部位は静脈系である。
【0005】
空気圧式リンパマッサージャー(非特許文献3参照)では、エアーバッグで血行を阻害しない程度に組織に間欠的圧力刺激を加えることで、弁を有している静脈とリンパ管にポンピング作用が生じる他、組織圧が高くなることによって組織液の静脈とリンパ管への取り込みが促進され、組織液の排出が促進される作用が生じるものであり、組織液の排出促進作用を生じさせるマッサージ操作の主たるターゲット部位は静脈系およびリンパ管系である。
【0006】
微小循環系は複雑な相互作用を有していて、マッサージ操作による作用は被マッサージ部に在る動脈系や静脈系、リンパ管系のすべてに影響が及ぶことから、マッサージ操作のターゲット部位を単純に分けることはできないが、マッサージには動脈系が主として機能するマッサージ方法と、静脈系が主として機能するマッサージ方法と、リンパ系が主として機能するマッサージ方法の3種類があると考えることができる。
【0007】
一方、プラークの除去よりも歯茎のマッサージをより重視した前記歯磨きの方法では、他の歯磨き方法と比べて歯間乳頭部の歯茎に間欠的圧力刺激が加わることが特徴と考えられるが、生体には僅かな圧力変動で静脈血やリンパ液を中枢側に送出する還流支援機構が備わっていることから、該歯磨きの方法でも同様な機構が働いて、静脈血流やリンパ輸送が促進されることが臨床効果の高い原因であると考えることが可能である。
細胞外液である体液は、血液、組織液、リンパ液に分けられるが、心臓のポンプ作用は血液を駆出する能力は高いが、静脈血を還流させる能力は高くなく、リンパ液を還流させる能力はない。そこで生体には、静脈血やリンパ液を心臓の力を借りずに心臓に還流させる仕組みが備わっている。
それは、静脈やリンパ管に備わっている弁の、逆流を防止して静脈血やリンパ液を中枢側へしか流さない整流作用と、血液やリンパ液は圧力の高い所から圧力の低い所へ流れる自然原則の下で、周囲の圧力変動を利用して静脈血やリンパ液の心臓への還流を促進する仕組みである。
寄り添って走る伴行動静脈に於ける動脈の脈動が、接している静脈の静脈血の還流を促進することや、呼吸運動に伴う胸腔や腹腔の体腔内圧の変動までも、その仕組みの中で機能しているが、特に脚の筋肉に挟まれた脈管系ではこの働きが大きく、脚の筋肉運動がポンプのように働いて静脈血やリンパ液の還流を促進していることは、一般的に筋ポンプ作用として良く知られている(非特許文献4参照)。
これを、歯ブラシを用いた歯茎のマッサージに適応して考えると、歯茎に加えられた圧力によって静脈が圧迫され、扁平になることによって静脈の内圧が高くなるが、末梢への逆流は末梢側の静脈弁によって阻止される。しかし中枢側は、中枢側に在る静脈弁が中枢側に開いて、加圧された静脈の中の静脈血が圧力の低い中枢側へ送出される。
その後、脈管に加わる圧力が除かれると、静脈血を送出して扁平となった脈管が脈管の弾力性によって元の形状に戻る動きが生じるが、その際に脈管の中では陰圧が発生し、空となっている脈管内に末梢からの静脈血が引き込まれて、再び脈管内を静脈血によって満たす動きが生じてくる。
その時の中枢側の静脈弁は閉じていて、送り出した静脈血の末梢側への逆流は阻止されるが、末梢側の静脈弁は開いていて、末梢側からの静脈血の流入を許して脈管内に静脈血が溜まり、次ぎにくる圧力刺激で再び満たされた静脈血が中枢側へ送り出される。
ポンピング作用による末梢循環の促進は、これを効率的に繰り返すことであるが、それを可能とするためには、再び加圧する前に脈管内が静脈血で再び満たされている必要があり、送出後の脈管内に末梢からの静脈血が流入して脈管内を再び満たすまで待つ必要がある。そのため、再び加圧するまでの時間(再充満時間)を十分にとることが必要で、それが間欠的圧力刺激によって効率的なポンピング作用を生じさせる重要な条件である。
しかし、もし、脈管内が静脈血で十分に満たされないまま早い頻度で次の間欠的圧力刺激がきて、それが繰り返されるようなマッサージのやり方では、送出すべき静脈血が脈管の中に十分に溜まらないまま次の圧力刺激が繰り返されることになる。
これによって、一回当たりの静脈血の送出量が漸減しながら、ついには有効な静脈血の送出が起きない事態となり、実質的には静脈を閉塞するに等しくなる。
その様な現象は、心拍数が多いにもかかわらず有効心拍出量が激減して、重篤な事態に至る心室細動や心房細動のメカニズムと似ているが、一方で、ブラッシングに於ける間欠的圧力刺激の適当な頻度については定量的なデータが得られていなかった。
そこで、人体内で生理的に生じている周期的圧力変動で一番大きな頻度と思われる最高心拍数の約200回/分程を準用して、約200回/分以下の頻度の間欠的圧力刺激であれば、すでに生体内で生理的に機能している頻度であり、弁を有した末梢静脈が必要とする再充満時間の確保に十分可能な頻度であると推測することができる。
そうすると、マッサージ作用が大きいとされる手を用いて歯ブラシを操作する該歯磨きの方法では、その頻度が上記の範囲を逸脱することがないと考えられる。
しかしながら、ポンピング作用が生じるには被加圧部での静脈弁の存在が必要であり、歯周組織では上下顎共に齦頬移行部でしか多数の静脈弁が認められないことから(非特許文献5参照)、歯間乳頭部の歯茎に限局した間欠的圧力刺激では血流を促進するポンピング作用は生じないと考えられ、歯間乳頭部の歯茎に限局した間欠的圧力刺激による臨床効果の高さは、動脈や静脈が主としてかかわる血流促進以外の要因によると考えることができる。
【0008】
歯周組織の歯間乳頭部には上皮の直下に豊富な毛細血管網が存在していて、リンパ管にも富んでいる特徴がある。
リンパ管は、僅かな圧力変動、僅かな張力、僅かな振動などによって、蠕動運動が停止している場合には蠕動運動が誘発され、蠕動運動が生じている場合には蠕動運動が促進される性質を有していることから(非特許文献6参照)、ブラシングによる歯茎に対する間欠的圧力刺激はリンパ管の蠕動運動を促進すると考えられる。
そして、炎症によって組織間隙に滲出した血球や細菌、あるいはそれらの残骸などの顆粒状成分や、蛋白質等の分子量の大きな物質は毛細血管を透過することができないことから(非特許文献6参照)、それらの歯周組織からの排除は、それらを透過するリンパ管からでしかできず、ブラッシングによって生じる炎症症状の改善効果は、リンパ管系の関与を抜きにしては考えることのできない現象である。
血液やリンパ液、組織液は、体液の内の細胞外液であり、血液中の水分、ガス、電解質、その他の溶質、分子量の小さい少量の蛋白質などは、毛細血管壁を通過して組織間隙に至り細胞代謝の影響を受けた後、大部分は再び血管内に戻るが、少量の蛋白質など分子量の大きな物質を含んだ組織液はリンパ管へ移行してリンパ流を形成し、リンパ液が静脈角に注ぐことで、すべての拍出された血液が心臓に還流している。
そして、リンパ流の主な推進力はリンパ管壁の能動的な収縮にあるとされるが、筋収縮、動脈拍動、組織のマッサージ、呼吸運動等の、外部の力による受動的な圧力変動もまた、リンパ流の促進とリンパ液の還流に大きく作用している(非特許文献6参照)。
従って、歯ブラシによる間欠的圧力刺激には、リンパ管のアンカーリングフィラメントを緊張させて組織液をリンパ管に吸引し、リンパ管の蠕動運動を誘発あるいは促進してリンパ流を促進し、リンパ輸送を増大させる作用があると考えられ、リンパ管でしか輸送できない細菌や白血球、また、それらの死骸、毒素、組織融解を引き起こす各種酵素、細胞浸潤を引き起こす遊走因子、血管透過性亢進因子、血液凝固因子等、炎症によって連鎖的に生じた複雑な免疫関連物質や炎症性物質を、リンパ管を通して歯周組織から排出して、歯周組織が浄化されることによって炎症の負の連鎖反応が止められ、それによって血管の透過性の亢進が抑制されると共に分子量の大きな物質が排出されて組織液の膠質浸透圧が下がることから、Starlingの仮説(非特許文献6参照)によって組織液の静脈側毛細血管への流入量が増えて静脈血流量が増え、それによってヘマトクリット値が低下し血漿の粘性が低下することで静脈血が流れ易くなることから動脈の血流量も受動的に増えると考えられる。
これによって歯周組織への酸素供給量が増大し、歯周組織内の嫌気的環境が改善されて嫌気性菌が抑制され、歯周組織の代謝の正常化と亢進がなされることでコラーゲンの合成能と線維芽細胞の増殖能力が高まる他、付着上皮細胞のターンオーバーも正常化すること等で歯周組織の修復能力と防御能力を回復し、歯周病の治癒機転が進行すると考えられる。
以上のことから、口腔粘膜の炎症症状が該方法による歯茎のブラッシングによって改善され高い臨床効果が得られるのは、間欠的圧力刺激によって組織液のリンパ管への流入と、リンパ管の蠕動運動が誘発、促進されてリンパ流が促進されることにより、リンパ輸送が増大する作用の結果であると考えることができる。
従って、歯周病に罹患している場合には、主としてリンパ管系を機能させるマッサージが適していると考えられる。
【0009】
これに対して、明らかに歯周病に罹患していない健康な歯周組織では、組織液の量や組成等に異常がなく、微小循環系の機能にも異常がないために、組織液の排出ではなく歯周組織の各細胞に十分な栄養と酸素を届けて代謝の亢進を図ることが、各細胞を活性化して組織の健全性を保ち、歯周組織内環境を好気的に維持して嫌気性菌の抑制につながることから、動脈系を機能させるマッサージが歯周病予防に於いて効果的であると考えられる。
【0010】
しかしながら、動脈血流の増大による組織血流量の増大は、動脈側毛細血管からの血漿の濾過量が血流量に比例して生理的に増えることから、炎症等によって血管の透過性が亢進している場合には、組織液が過剰に増えて浮腫を生じる危険性があり、しかも浮腫は毛細血管からの酸素の拡散移動距離を拡大させることから、歯周組織に酸素供給不足を招来して嫌気的環境となり、炎症を悪化させる要因となる。
一方、体内と体外の移行部である歯牙歯頚部の歯肉内縁付着上皮は、常に細菌の侵入に曝されていることから、一般的には自覚されないまま歯周病に罹患している場合が多く、常に血管の透過性が亢進している可能性のあることを考慮する必要がある。
それ故、歯茎をブラッシングする場合には、動脈血流の促進作用だけではなく、静脈血流の促進作用やリンパ流促進作用を共に有したマッサージ操作を行うことが望ましく、あるいはそれらの作用を有したマッサージを後で行うことも、マッサージによる浮腫を抑制して炎症の憎悪を導かないためには効果的であり、微小循環系の改善あるいは歯周病の予防に於いても効果的であると考えられる。
【0011】
旧来より、チエーンソウ等の振幅の大きな振動刺激が血管のNA(ノルアドレナリン)に対する感受性を低下させて、動脈の径を拡大して血流量を増大させること、しかし、振動刺激の後にはNAに対する感受性の増大が生じて白ロウ病の原因となることが、白ロウ病発症のメカニズム究明の中で明らかにされていた(非特許文献6参照)。
しかし、同時に、その様な振幅の大きな振動刺激の後のNAに対する感受性の増大が、振動刺激の周波数が10Hz以下の場合、あるいは振動刺激時間が30分以内であれば生じないことも明らかにされていた(非特許文献6参照)。
【0012】
また、リンパ管に対する振動的内圧負可刺激の実験から、小振幅の振動的内圧変化が静止しているリンパ管に自動性を惹起し、すでに自動性を示しているリンパ管では既存の蠕動リズムを促進させることも明らかにされていた(非特許文献6参照)。
【0013】
一方、近年では、1980年にFurchgottらによって発見された血管壁の平滑筋を弛緩させて管径を拡張する作用を有している物質がNO(一酸化窒素)であると解明されて(非特許文献7参照)以来、血流速度が大きくなると細動脈内皮細胞へのずり応力刺激が大きくなって内皮細胞から多くのNOが分泌され、血管平滑筋が弛緩して血管径が広がること、同様に、リンパ管の内皮細胞でもリンパの流れによるずり応力刺激の大きさに比例してNOが産生され分泌されることが知られていた。(非特許文献8参照)。
また、リンパ管が極めて大きな受動的伸展性を有するために、リンパ管の内皮細胞からNOが分泌された場合には、リンパ管の平滑筋が弛緩してリンパ液がリンパ管内に一時貯留されるものの、一定のリンパ液が溜まるごとにリンパ管壁の平滑筋が引き伸ばされて生じた張力に対する反射性の収縮が生じて、貯留された多量のリンパ液が中枢側へ向けて速やかに送出され、結果的にリンパ輸送が促進されることも知られていた(非特許文献8参照)。
上記のことから、血管やリンパ管の内皮細胞には血流に起因するずり応力刺激が作用していて、血流やリンパ流の増加と共にずり応力刺激が大きくなり、平滑筋の弛緩物質であるNOが産生されて分泌されることから、血流やリンパ流の流速に影響を与える振動刺激は、細動脈とリンパ管の平滑筋を弛緩させ、動脈血流の促進作用とリンパ輸送の促進作用を生じさせることができると考えられる。
【先行技術文献】
【0014】
【文献】渡邊 達夫:つまようじ法 岡山歯学会雑誌 26 63-73,2007
【文献】森田 学 他:つまようじ法とフロッシングを併用したバス法とのマッサージ効果の比較 口腔衛生学会雑誌 47 158-163,1997
【文献】加藤 征治 リンパの科学 講談社 168-169,2016
【文献】池上 晴夫 運動生理学 朝倉書店 58-59,1987
【文献】高橋 和人:歯肉を知ろう(2) 歯界展望 70(1),104-120,1987
【文献】東 健彦、神谷 瞭 微小循環 コロナ社 1983
【文献】Palmer,R.M.,Ferrige,A.G.,& Moncada,S.Nitricoxide release accounts for the biological activity of endothelium -derived relaxing factor.Nature,327(6122),524-526,1987
【文献】大橋 俊夫 リンパのふしぎ ちくま新書
【文献】NHKスペシャル「人体3」骨メッセージ物質(オステオカルシン&オステオポンチン&スクレロスチン)の働きが凄い! 2018,01,07放送
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
振動刺激は筋肉疲労の回復感や爽快感を得ることができるとされ、すでに広く身体のマッサージに利用されているが、一般的にはそのメカニズムは血行の促進作用によるものと考えられていた。
歯周組織に対しても、振動刺激を用いる各種マッサージ装置が提供されていて、動脈系に於いてもリンパ管系に於いても作用を生じていると考えられるが、歯周組織のマッサージに於いて、動脈系に於ける作用とリンパ管系に於ける作用のマッサージ操作上の区別はなされておらず、振動刺激の動脈系に於ける作用の大きさとリンパ管系に於ける作用の大きさの相対的な割合を調節しようとする技術的発想もなく、心地良く動脈系に作用する振動強度から動脈系の作用を抑えてリンパ管系による作用を強調する可及的微小な振動強度までの無段階的な利用を可能とすることが目的の、振動モーター出力の無段階的調節機能を備えた振動式の歯周組織マッサージャーは開発されていなかった。
本発明は、歯周病の予防と治療を目的とする歯周組織のマッサージ装置に於いて、振動刺激での動脈系による作用の大きさとリンパ管系による作用の大きさの、それぞれの相対的な割合を調節可能とすると共に、不要な振動や騒音を軽減し、簡単な機構と小さなパワーで振動刺激を生じさせ、唾液に満ちた狭小な口腔内環境に装置を適用して閉口状態での歯周組織のマッサージを可能とし、複数の歯間乳頭部を同時にマッサージする機能を有した、振動式歯周組織マッサージャーの開発を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
組織への血流量を支配するのは細動脈であり、細動脈はマッサージに於ける振動刺激の対象であるが、その血圧は40~45mmHgである。同様に、振動刺激の対象であるリンパ管のリンパ圧は組織圧と比べて低いので、2~5mmHg以下であることから、細動脈圧とリンパ圧の間には約400g/cm2以上の圧力差がある(非特許文献6参照)。
また、細動脈は径に比較して管壁が厚く平滑筋層が発達しているのに比べ、毛細リンパ管は単層の扁平な内皮細胞からなり、それが次第に毛細リンパ管の管壁が厚さを増し弁を有する細いリンパ管となっても、管壁の厚さは内皮層の外側に膠原線維・弾性繊維および少量の平滑筋繊維が存在するのみの薄い管壁である。
さらに、リンパ管は、小さな圧力変動や振動刺激、リンパ管壁の伸展張刺激等に敏感に反応して、蠕動運動が誘発される、あるいは蠕動運動が促進される性質を有している。
また、口腔粘膜に於いて、小動脈の方が多くのリンパ管よりも深層に位置している。
これらのことから、口腔粘膜表層に加えられた振動刺激は、小動脈とリンパ管のそれぞれの脈管内での流れに及ぼす影響の大きさが異なり、被マッサージ部の小動脈とリンパ管では加えられた振動刺激に対する感受性が異なると考えられる。
従って、マッサージによる振動刺激の強度を、心地良く感じられる振動強度から僅かに感知できる振動強度にまで、無段階的に調節する機能をマッサージ装置に備えることで、動脈系に於いてNOの作用が大きく生じる振動強度から殆んど生じない振動強度にまで無段階的に変えることが可能となり、リンパ管系に於けるNOの作用の大きさとの相対的な割合を変えることが可能で、動脈系に於ける作用が強調される振動強度から、動脈系に於ける作用が抑制されリンパ管系に於ける作用が強調される振動強度までの範囲を、無段階的に調整することが可能となる。
従って、本願発明では、振動モーター制御回路に可変抵抗器を備え、該可変抵抗器は振動モーターの定格出力状態から振動モーターが停止に至るまでの範囲に於いて無段階的な調節が可能であるものであり、振動発生の源装置として振動モーターを用いて、振動モーター以外の運動変換機構あるいは運動伝達機構を用いずに、振動モーターを直接的に口腔内に入れて振動を口腔粘膜に伝導することを主な手段とし、振動モーターが防水性を有し、その形態が縦長円柱状であること、振動モーターと振動モーター制御回路を接続する口腔内設置部と口腔外設置部の移行部となる物の形状が細いこと等も手段とするものである。
【発明の効果】
本発明の効果を下記に示す。
【0017】
チェ―ンソウ等を扱う人達が暴露されていた大きな振動が、動脈と交感神経、リンパ管等に作用して、白ろう病と呼ばれる振動傷害の原因となっていたことは良く知られている。
また、振動によって動脈に白ろう病と同様な現象が生じることが、オートバイのハンドルや肩叩き用のバイブレーターの使用でも見られることが知られていた[非特許文献8参照]。
本願発明で用いる振動モーターによる振動は、一般的に提供されている電動歯ブラシの振動よりも振幅が小さく、超音波歯ブラシあるいは音波振動歯ブラシと呼ばれる電動歯ブラシよりも振動数が小さくて、脈管に作用する振動刺激の強度が現在使用されている他の電動歯ブラシや歯茎のマッサージ装置と比べて小さい範囲を含んでいる特徴があり、且つ、振動強度の調節は操作部を有する可変抵抗器によって、振動モーターの定格出力状態から振動が停止に至るまでの無段階的な調節が可能であることから、通常の有感的振動強度から感知できる程度の微弱な振動強度までの範囲で、無段階的な利用が可能であり、加えられた振動刺激の小動脈に対する作用の大きさとリンパ管に対する作用の大きさの違いを利用して、動脈系作用を主とした作用とリンパ管系作用を主とした作用とに、使い分けることが可能である。
これによって、健康な歯茎を守り歯周病を予防する効果の高い振動刺激マッサージと歯周病の治癒機転促進効果の高い振動刺激マッサージを使い分けることが可能である他、振動強度の無段階的な調節が可能なことから、歯周病の改善状況に応じて徐々に振動強度を上げてゆく使い方が可能であり、常に適切で安全な振動強度の利用が可能である。
【0018】
本願発明による装置では、振動モーター以外の機械的駆動機構や振動伝達機構を含まないために、運動変換や運動伝達に伴うエネルギー損失や、不要な振動と騒音を生じることがなく、振動モーターの形状が縦長円柱形の形状であり防水性を有していることから、湿潤な口腔内の狭小な部位に歯列に沿って挿入して保持することが容易である他、構造体のネック部が細長いために振動モーターを口腔内に入れて口腔内を口唇で密閉することが容易で、閉口状態でのマッサージが容易である特徴が有る。
【0019】
本願発明による装置は、振動体を歯間部に頬舌的に挿入する歯間部挿入型のマッサージ装置ではなく、歯列と頬の間あるいは歯列と舌の間の狭小な空間の中で、近遠心方向に走る歯列に沿わせて歯頚部に在る複数の歯間乳頭部の基部と接触させることが容易で、複数の歯間乳頭部の基部を同時にマッサージすることができることから、歯周病の好発部位である歯間乳頭部に於けるマッサージの能率が良い利点がある。
【0020】
防水処置が施されたリード線で、防水性を有して口腔内に挿入される振動モーターと口腔外に置かれる振動モーター制御回路を接続する本願発明請求項1、2による実施例では、振動モーターを口腔内に入れたまま閉口し、閉口状態のまま歯茎をマッサージすることが可能である。
このため、口を閉じたまま唾液を嚥下することが容易で、開口状態でマッサージする場合のように、しばしば装置の口腔内適用部を口腔外に出して唾液を嚥下、あるいは吐き出すことや、唾液が口から滴り落ちることがなく、能率良く、何時でも、何処でも、他の行動をしながら、他に迷惑をかけることもなく、静かに歯周組織をマッサージすることが可能であるために、一日に行うマッサージの頻度を増やして時間を多くすることが容易で、その分、早く大きなマッサージ効果を期待することができる。
【0021】
本願発明では、健康な歯周組織に於いて、可変抵抗器を操作して心地の良い振動刺激強度に調節することが可能であり、これによって、動脈血流を促進して歯周組織の各細胞に十分な栄養と酸素を届け、各細胞を活性化し組織の代謝の健全性を保ち歯周組織を好気的環境に維持して嫌気性菌の抑制を支援することができると共に、リンパ流も同時に促進されることから、組織液の量と組成の健全性を保つよう支援することができ、付着上皮の代謝とターンオーバーを正常に保ち、健全な歯肉溝滲出液と白血球を生理的に歯肉溝に滲出させること等を支援して、歯周組織が備える生理的防御機構の機能を促進して歯周病を予防する効果を期待することができる。
【0022】
皮膚の表面を軽く摩るような操作でも、リンパ管の蠕動運動を誘発あるいは促進することが可能であるため、美容あるいは浮腫の治療に於いてもその様な操作が用いられているが、その様な操作は小動脈の血流動態に影響を及ぼすものではない。
本願発明では振動強度の調節が、操作部を有する可変抵抗器によって振動モーターの定格出力状態から振動が停止に至るまでの無段階的な調節が可能であり、感知できる程度の微弱な振動の利用が可能であることから、歯周病の存在が疑われる場合、もしくは歯周病の存在が明らかな場合に於いて、相当する微弱な振動刺激を用いることで動脈系の作用を抑制してリンパ系の作用を促進するマッサージ操作とすることが可能である。
これによって、量と組成に於いて異常を来たしている組織液の歯周組織からの排出を優先して促進し、炎症の進行を断ち切り、微小循環系と代謝を正常化し、歯周病を治癒機転に向かわせる効果を期待することができる。
【0023】
振動は骨内を伝わり易い性質があり、歯茎に加えられた振動が骨伝導によって内耳に伝わり、振動刺激を音として感知することができる。
従って、本願発明による装置では、顎顔面の骨に振動刺激を与えることが可能である。
一方、骨に加えられた衝撃を骨細胞が感知して、骨芽細胞に造骨を促進させる作用があることや、衝撃がない状態が続く場合には、骨細胞がスクレロスチンを大量に分泌して骨芽細胞の分裂を抑制し、骨芽細胞の数を減らすことが知られていることから[非特許文献9参照]、骨に対する振動刺激は骨細胞を刺激して造骨を促進すること、あるいはスクレロスチンの分泌を抑制して骨の正常なリモデリングを支援する効果を期待することができる。
本願発明による装置で歯間乳頭部の基部のマッサージを行う場合には、歯牙の歯頚部に沿って振動モーターを位置させることから歯槽骨にも振動が伝わる。
これによって、歯槽骨を振動刺激して骨芽細胞による造骨を促進し、歯周病による歯槽骨の吸収を抑制する効果を期待することができる。
また、咀嚼によって生じる振動が歯を伝わって歯槽骨に伝達されるが、歯を失った場合には、歯槽骨に伝達される振動が減少して、歯槽骨の減少を促進すると考えられる。
従って、歯を失った部位での本願発明の適用は、歯槽骨の吸収を抑制する効果を期待することができる。
さらに、歯牙の歯頚部に振動モーターを直接触れさせることにより、歯牙を共振現象によって振動させることが可能である。
これにより、歯槽骨に対する衝撃的な振動刺激によって歯槽骨のリモデリングを支援することや、歯根膜に対する直接的な振動刺激によって歯根膜の動脈血流量を増大させ、歯肉溝浸出液の産生量を増大することが可能であり、それらの臨床利用研究を可能とすることができる。
【0024】
歯周病は細菌によって生じる歯槽骨の吸収を伴う口腔粘膜の慢性炎症であるが、慢性副鼻腔炎も細菌による鼻甲介粘膜の慢性炎症である。そして、静脈とリンパ管に富む鼻甲介粘膜は、鬱血あるいは血管の透過性亢進等で腫脹が生じ易く、粘膜が肥厚して鼻閉がもたらされ易い特徴があり、慢性副鼻腔炎の鼻粘膜と歯周病の口腔粘膜の状態は、細菌による粘膜の慢性炎症と言う点で類似性があると考えることができる。
歯周病の予防と治療に、マッサージによる歯茎のリンパ流の促進が効果を有していることから、鼻甲介粘膜のリンパ流の促進を目的としたマッサージも、炎症症状を改善し鼻粘膜の肥厚を抑制して、鼻閉を抑制する効果を期待することができると考えられる。
従って、本願発明を用いて、歯槽粘膜を介して上顎骨を振動刺激する、あるいは鼻を介して鼻骨を振動刺激することによって、骨伝導によって伝達された振動刺激によって、鼻甲介粘膜をリンパ管系の作用発現を主体とした振動強度でマッサージすることが可能である。
本願発明、請求項2による実施例では、振動モーターを鼻に接して保持する器具の製作が容易であり、鼻粘膜組織の組織液の排出を促進して鼻粘膜の肥厚を抑制し、鼻閉の改善あるいは鼻閉を予防する効果を期待することができる。
【0025】
本願発明、請求項2による実施例では、上下顎の印象を採得して、上下顎模型上で、防水性を有し弾性樹脂で被覆された複数の振動モーターを、それぞれの歯列の歯間乳頭部の基部に接するように配置して、振動モーターをマウスピースに固定設置したマウスピースの製作が可能である。その際には、それぞれの振動モーターは1基しかない電源部とそれぞれに並列に接続するものであるが、その際に、それぞれの振動モーターに可変抵抗器を個別に設けて、それぞれの振動モーターを個別に制御することも可能である。
振動モーターをマウスピースに設置することによって、何時でも何処でもマウスピースをしたまま他の作業をすることや、上下顎の歯茎をそれぞれの歯茎の状態に応じた振動強度で一度に短時間でマッサージすることが可能となり、効果を得るまでの期日の短縮が可能となる他、振動モーターを床タイプのシーネに固定設置することも可能であり、臨床応用がし易い利点がある。
【0026】
本発明による装置は清掃機能を全く備えていないマッサージ専用の装置であるが、歯茎のマッサージが何時でも、何処でも可能であるために、洗面所などで行う歯磨きでは、プラークの除去に専念するだけでよく、口腔衛生機器が備えるべき機能に於いて、歯の清掃機能と歯茎のマッサージ機能を明確に分離することが可能である。
それによって、それぞれに高い性能を持つ専用機器の機能別の使用が容易となり、かえって精度が高く能率の良い機能の組み合わせ利用によって、口腔の健康を効率良く大きく増進させる効果を期待することができる。
【0027】
本願発明による装置は、振動モーター以外の機械的駆動機構や運動伝達機構を有していないために、不要な振動や音を生じることがなく、骨伝導によって内耳に伝達される振動音がモノトーンとなって、不快感が少ない特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1~
図6
【
図1】請求項1による実施例の、振動モーターと可変抵抗器を備えた振動モーター制御回路を接続した電気装置の電気回路図
【
図2】請求項1による上記実施例の、縦長で円柱状をした防水仕様で弾性樹脂製皮膜に覆われた振動モーターをヘッド部に設置し、細縦長形状のネック部を有した振動式歯周組織マッサージャーの外観を示す模式図
【
図3】請求項1による上記実施例の、口腔内での使用の様子を示す模式図
【
図4】請求項2による実施例の、2個の振動モーターを可変抵抗器を備えた振動モーター制御回路とそれぞれ並列に接続した電気装置の電気回路図
【
図5】請求項2による上記実施例の、防水性を有し弾性樹脂製皮膜で被覆され縦長で円柱状をした2個の振動モーターを振動モーター制御回路とコネクターを介して接続した振動式歯周組織マッサージャーの外観を示す模式図
【
図6】請求項2による上記実施例の振動モーターを、左右の頬側歯間乳頭部の基部に当てて口腔内に設置した状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。
【0029】
図1は、本願発明の請求項1による実施例で、振動モーター(1)と、乾電池あるいは充電池であるバッテリー(2)と電源スイッチ(3)と操作部を備えた可変抵抗器(4)で成る振動モーター制御回路(9)が接続されていることを示す電気装置の電気回路図であり、本実施例の電気装置が、振動モーター(1)と、乾電池あるいは充電池であるバッテリー(2)と、電源スイッチ(3)と、操作部を備えた可変抵抗器(4)で構成されていることを示すものである。
電源スイッチ(3)を操作することで電源が入り、再度操作することで電源が切れるものである。
振動強度の調節は可変抵抗器(4)の操作部を操作して抵抗値を連続的に変えることで行うものであり、該可変抵抗器(4)は振動モーターが定格出力で稼動している状態から振動モーターが停止に至るまでのモーター出力を無段階的に調節するものである。
また、振動モーター(1)と、バッテリー(2)と電源スイッチ(3)と可変抵抗器(4)で成る振動モーター制御回路(9)との接続にコネクターを介在させることにより、ネック部(6)とハンドル部(7)との間で着脱式にすることが可能で、あるいは着脱部位をネック部とヘッド部にすることも可能であるが、本実施例では非着脱式の一体型である。
【0030】
図2は、請求項1による上記実施例の外観を示す模式図で、振動モーターを設置し振動モーター制御回路(9)を収容する樹脂製の構造体は、振動モーター(1)を設置するヘッド部(5)と、細長で銃床状形態のネック部(6)と、振動モーター制御回路(9)を収容設置するハンドル部(7)で成り、それらが一体型で構成されていることを示すものである。
防水性を有し、歯牙の破折防止作用を有した弾性樹脂製皮膜に覆われた縦長で円柱形をしている振動モーター(1)は、本体の内側に向けてヘッド部(5)に設置されている。
細いネック部(6)にはリード線が防水性を有して埋伏されていて、該リード線はハンドル部(7)内に収容設置された振動モーター制御回路(9)とヘッド部(5)に設置された振動モーター(1)を電気的に接続している。
ハンドル部(7)の表面には、電源スイッチ(3)のボタンと可変抵抗器の操作部(4)が設置されていて、それらによって電源のON/OFFと振動強度の調節を行うことができる。
本実施例ではネック部(6)の形態が細長い銃床状形態であるが、細ければネック部の形態はこれにこだわるものではない。
また、弾性樹脂製皮膜に一列の半球形の突起形態を設けることや、弾性を有し先端が丸型のブラシ毛束を一列、振動モーターの表面に設置することで、歯間乳頭を直接的に振動刺激することが容易になる。
【0031】
図3は、上記実施例での口腔内での使用の様子を示す模式図であり、ヘッド部(5)に設置された振動モーター(1)が、複数の歯間乳頭部の基部に直接的に当てられている様子を示すものである。
ネック部(6)が細いので、ヘッド部(5)を口腔内に入れたまま、閉口状態で口腔粘膜のマッサージが可能である。
【0032】
図4は、本願発明の請求項2による実施例で、乾電池あるいは充電池であるバッテリー(2)と電源スイッチ(3)と操作部を備えた可変抵抗器(4)で成る1基の振動モーター制御回路(9)に、2個の振動モーター(1)、(1)を並列に接続した電気装置の電気回路図である。
電源は、電源スイッチ(3)の操作ボタンを操作することで電源が入り、再度操作することで電源が切れるものである。
振動強度の調節は、可変抵抗器の操作部(4)を操作して抵抗値を連続的に変えることで行うものであり、振動モーターが定格出力で稼動している状態から振動モーターが停止に至るまでの無段階的なモーター出力の調節が可能である。
2個の防水仕様の振動モーター(1)、(1)はそれぞれ弾性樹脂製皮膜で被覆されていて、それぞれのリード線と共通のコネクター(8)を介することによって振動モーター(1)、(1)とハンドル内の振動モーター制御回路(9)とが着脱式に接続できるものである。
破線(10)は、2個の振動モーターと振動モーター制御回路を着脱式として接続する場合の、電気回路での接続部位を示すものであり、破線(10)の右側が振動モーター制御回路(9)で、左側が2個の振動モーター(1)、(1)である。
【0033】
図5は、請求項2による上記実施例での外観を示す模式図で、2個の縦長の円柱形をして弾性樹脂製皮膜に覆われた防水仕様の振動モーター(1)が、それぞれに防水被覆されたリード線(11)で共通の着脱式のコネクター(8)を介してハンドル部(7)内の振動モーター制御回路(9)と接続されていることを示すものである。
ハンドル部(7)の表面には電源スイッチ(3)と可変抵抗器の操作部(4)が設置されていて、これらによって電源のON/OFFと振動強度の調節を行うことができる。
【0034】
図6は請求項2による上記実施例での、口腔内での使用の様子を示す模式図で、下顎左右側歯列の頬側にて、振動モーター(1)、(1)が複数の歯間乳頭部の基部に当てられて位置していることを示すものである。
投込み型の装置であり、頬と歯列との間で振動モーター(1)を保持しながら閉口状態での歯茎のマッサージが容易であることから、手を用いることが不要で、他の動作を行いながら静かに歯茎のマッサージをすることができる。
【0035】
振動モーターが小型でそれぞれ独立し、リード線(11)がフレキシブルなので、振動モーターを設置したマウスピースや床タイプの装置の製作が可能である。
【0036】
【符号の説明】
【0037】
1.振動モーター
2.バッテリー
3.電源スイッチ
4.操作部を備えた可変抵抗器
5.ヘッド部
6.銃床状ネック部
7.ハンドル部
8.コネクター
9.振動モーター制御回路
10.破線
11.防水被覆されたリード線
【要約】 (修正有)
【課題】本願発明は、与えられた振動刺激の動脈系での作用とリンパ管系での作用の、相対的な大きさの割合を調節可能とし、簡単な機構と小さなパワーで振動刺激を生じさせて不要な振動や騒音を少なくし、唾液に満ちた狭小な口腔内環境に装置を適用して、複数の歯間乳頭部を閉口状態で同時にマッサージすることを目的とする、歯周組織マッサージャーの開発を課題とするものである。
【解決手段】本願発明では、振動モーターを用いる歯周組織マッサージャーの振動モーター制御回路に可変抵抗器を備え、該可変抵抗器が振動モーターの定格出力から振動モーターが停止に至るまでの範囲に於いて無段階的な調節が可能であるものとし、振動モーター以外の運動変換機構あるいは運動伝達機構を用いず、防水性を有した振動モーターを口腔内に入れて、振動モーターの振動を口腔粘膜に伝導することを手段とするものである。
【選択図】
図2