IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スミダコーポレーション株式会社の特許一覧 ▶ 国立大学法人京都大学の特許一覧

<>
  • 特許-励起光照射装置および励起光照射方法 図1
  • 特許-励起光照射装置および励起光照射方法 図2
  • 特許-励起光照射装置および励起光照射方法 図3
  • 特許-励起光照射装置および励起光照射方法 図4
  • 特許-励起光照射装置および励起光照射方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】励起光照射装置および励起光照射方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 24/00 20060101AFI20240130BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240130BHJP
   G01R 33/26 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
G01N24/00 P
G01N21/64 Z
G01R33/26
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020098053
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021189148
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-01-26
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、産学共創プラットフォーム共同研究推進プログラム委託事業、「超スマート社会実現のカギを握る革新的半導体技術を基盤としたエネルギーイノベーションの創出に関する国立大学法人京都大学による研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】橋本 将輝
(72)【発明者】
【氏名】芳井 義治
(72)【発明者】
【氏名】竹村 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】水落 憲和
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-067444(JP,A)
【文献】特開2020-038086(JP,A)
【文献】特開2017-146158(JP,A)
【文献】特開2014-055987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N24/00-G01N24/14
G01R33/00-G01R33/64
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光で励起されるカラーセンタを含む基材と、
前記基材に対して離間して配置されそれぞれ反射面を有する少なくとも1対の反射部材と、
前記励起光を出射する照射装置と、
前記カラーセンタの電子スピン量子操作を行うためのマイクロ波を前記カラーセンタに印加するコイルとを備え、
前記コイルは、当該コイルの両端となる2つの引出導体部と、前記引出導体部に接続される円形状導体部とを備え、
前記基材および前記反射部材は、前記円形状導体部の内側中空部分内に配置され、
記少なくとも1対の反射部材は、前記基材の互いに対向する2つの面からそれぞれ出射した前記励起光を前記反射面で反射して前記基材に入射させ、前記励起光の、前記基材への入射および前記基材からの出射を繰り返させて、所定回数だけ前記励起光を前記基材に通過させ、
前記照射装置は、前記励起光を、前記2つの引出導体部の間隙を進行するように出射して、前記基材に入射させること、
を特徴とする励起光照射装置。
【請求項2】
前記反射部材における前記反射面のうち、前記励起光を最初に反射する反射面が、前記2つの引出導体部の間隙を進行して前記基材に入射する前記励起光の垂直方向に対して傾斜角を有することを特徴とする請求項1記載の励起光照射装置。
【請求項3】
前記反射部材における前記反射面のうち、前記励起光を最初に反射する2つの反射面が、前記2つの引出導体部の間隙を進行して前記基材に入射する前記励起光の垂直方向に対して、互いに反対方向に傾斜する傾斜角を有し、
前記2つの反射面は、前記励起光を、前記励起光の垂直方向において、互いに逆方向となる2方向に進行させること、
を特徴とする請求項2記載の励起光照射装置。
【請求項4】
前記コイルは、出射側貫通孔をさらに備え、
前記出射側貫通孔は、前記励起光が前記所定回数だけ前記基材に通過した後に前記出射側貫通孔を介して進行するように配置されていること、
を特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれか1項記載の励起光照射装置。
【請求項5】
基材に含まれるカラーセンタに励起光を照射する励起光照射方法において、
記基材に対して離間して配置されそれぞれ反射面を有する少なくとも1対の反射部材で、前記基材の互いに対向する2つの面からそれぞれ出射した前記励起光を前記反射面で反射して前記基材に入射させることで、前記励起光の、前記基材への入射および前記基材からの出射を繰り返させて、所定回数だけ前記励起光を前記基材に通過させ、
前記基材および前記反射部材は、前記カラーセンタの電子スピン量子操作を行うためのマイクロ波を前記カラーセンタに印加するコイルの円形状導体部の内側中空部分内に配置されており、
前記励起光を、前記コイルの両端となる2つの引出導体部の間隙を進行させて前記基材に入射させること、
を特徴とする励起光照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起光照射装置および励起光照射方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーセンタを利用した光検出磁気共鳴(ODMR:Optically Detected Magnetic Resonance)に基づく磁場計測方法が開発されている。
【0003】
ODMRでは、サブレベルの準位と光学遷移準位とをもつ媒質に高周波磁場(マイクロ波)と光をそれぞれサブレベル間の励起と光遷移間の励起のために照射することで、サブレベル間の磁気共鳴による占有数の変化などが光信号により高感度で検出される。通常、基底状態の電子が緑光で励起された後、基底状態に戻る際に赤光を発する。一方、例えば、ダイヤモンド構造中の窒素と格子欠陥(NVC:Nitrogen Vacancy Center)中の電子は、2.87GHz程度の高周波磁場の照射により、光励起により初期化された後では、基底状態中の3つのサブレベルの中で一番低いレベル(スピン磁気量子数ms=0)から、基底状態中のそれより高いエネルギー軌道のレベル(ms=±1)に遷移する。その状態の電子が緑光で励起されると、無輻射で基底状態中の3つのサブレベルの中で一番低いレベル(ms=0)に戻るため発光量が減少し、この光検出より、高周波磁場により磁気共鳴が起こったかどうかを知ることができる。ODMRでは、このような、NVCを含むダイヤモンドといった光検出磁気共鳴部材が使用される。
【0004】
NVCを利用したある磁場計測方法は、NVCを有するダイヤモンド基板に、レーザ光を入射させ、レーザ光が照射されたNVCの発する蛍光をダイヤモンド基板から出射させ、ダイヤモンド基板から出射してきた蛍光をCCD(Charge Coupled Device)で検出している(例えば非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】「High sensitivity magnetic imaging using an array of spins in diamond」,S. Steinert, F. Dolde, P. Neumann, A. Aird, B. Naydenov, G. Balasubramanian, F. Jelezko, and J. Wrachtrup著,Review of Scientific Instrument 81, 043705,2010年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のような磁場計測方法の場合、NVCなどのカラーセンタからの蛍光の光量を増やすためには、ダイヤモンド基板の基材内でのレーザ光の光路が長いほうが好ましいため、基材内部を進行するレーザ光を基材表面にて繰り返し全反射させることが考えられる。
【0007】
しかしながら、上述の磁場計測方法のように、基材内部を進行するレーザ光を基材表面にて多数回全反射させて、長い光路長を確保する場合、基材外部から内部へのレーザ光の入射角や入射位置の誤差に起因して、基材内を進行するレーザ光の反射回数(ひいては光路長)が不規則になりやすい。
【0008】
基材内を進行するレーザ光の光路(光路長)が不規則である場合、上述の入射角や入射位置の誤差に起因する上述の蛍光の強度変動が、磁場計測などの測定結果に影響を与えるため、磁場計測などの測定精度(測定誤差)が均一にならず、正確な測定が困難になる。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、安定的に、基材内のカラーセンタの発する光に基づく測定を正確に行えるようにする励起光照射装置および励起光照射方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る励起光照射装置は、励起光で励起されるカラーセンタを含む基材と、基材に対して離間して配置されそれぞれ反射面を有する少なくとも1対の反射部材と、励起光を出射する照射装置と、カラーセンタの電子スピン量子操作を行うためのマイクロ波をカラーセンタに印加するコイルとを備える。コイルは、当該コイルの両端となる2つの引出導体部と、引出導体部に接続される円形状導体部とを備え、基材および反射部材は、円形状導体部の内側中空部分内に配置される。上述の少なくとも1対の反射部材は、基材の互いに対向する2つの面からそれぞれ出射した励起光を反射面で反射して基材に入射させ、励起光の、基材への入射および基材からの出射を繰り返させて、所定回数だけ励起光を基材に通過させる。そして、照射装置は、励起光を、上述の2つの引出導体部の間隙を進行するように出射して、基材に入射させる。
【0011】
本発明に係る励起光照射方法は、(a)基材に対して離間して配置されそれぞれ反射面を有する少なくとも1対の反射部材で、基材の互いに対向する2つの面からそれぞれ出射した励起光を反射面で反射して基材に入射させることで、励起光の、基材への入射および基材からの出射を繰り返させて、所定回数だけ励起光を基材に通過させ、()基材および反射部材は、カラーセンタの電子スピン量子操作を行うためのマイクロ波をカラーセンタに印加するコイルの円形状導体部の内側中空部分内に配置されており、励起光を、コイルの両端となる2つの引出導体部の間隙を進行させて基材に入射させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、安定的に、基材内のカラーセンタの発する光に基づく測定を正確に行えるようにする励起光照射装置および励起光照射方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施の形態1に係る励起光照射装置を備える測定装置の構成例を示す図である。
図2図2は、図1に示す測定装置の光学系の一例を示す図である。
図3図3は、実施の形態1に係る励起光照射装置の構成を示す断面図である。
図4図4は、実施の形態1における基材1および反射部材21a,21b並びに励起光の光路を説明する正面図である。
図5図5は、実施の形態2における基材1および反射部材21a,21b並びに励起光の光路を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0015】
実施の形態1.
【0016】
図1は、本発明の実施の形態1に係る励起光照射装置を備える測定装置の構成例を示す図である。一例として、図1に示す測定装置は、光検出磁気共鳴(ODMR)方式で磁場や電場などといった被測定場の強度を測定する。図1に示す測定装置は、励起光で励起されるカラーセンタを含む基材1を備える。基材1には、1または複数のカラーセンタが含まれる。実施の形態1では、基材1は、略直方体形状を有し、長手方向において、互いに略平行な4つの面(平面)を有する。
【0017】
この実施の形態では、基材1は、電子スピン共鳴部材であり、この電子スピン共鳴部材は、被測定場(被測定磁場や被測定電場)内に配置される。この電子スピン共鳴部材は、後述の所定の測定シーケンスにおいて、ラビ振動に基づく電子スピン量子操作を施される。
【0018】
なお、被測定場の測定方式は、光検出磁気共鳴方式に限定されず、ラビ振動に基づく電子スピン量子操作を利用するものであれば、他の方式でもよい。また、この実施の形態では、基材1は、光検出磁気共鳴方式用の、NVCを有するダイヤモンドなどの部材であって、支持部材1Sに固定されている。なお、光検出磁気共鳴方式用の電子スピン共鳴部材としての基材1は、NVCを有するダイヤモンドに限定されず、他のカラーセンタ(例えば、GeVセンタなど)を有するものでもよい。
【0019】
図1に示す測定装置は、マイクロ波生成用のコイル2および高周波電源3を備える。
【0020】
コイル2は、電子スピン共鳴部材としての基材1内の1または複数のカラーセンタに対してラビ振動に基づく電子スピン量子操作を行うためのマイクロ波(磁場)を生成し基材1(カラーセンタ)に印加する。この実施の形態では、コイル2は、例えば、略長方形の板状の導体の中央部分を円形に成形したものであり、基材1は、コイル2の円形部分によりその内側に形成される中空部内に配置されている。上述のカラーセンタは、このマイクロ波を照射され、測定対象の発生する被測定場の強度などを特定するために使用される。
【0021】
実施の形態1では、コイル2は、上述のカラーセンタにおけるラビ振動に基づく電子スピン量子操作を行うためのマイクロ波(の磁場)を基材1に印加する。そのマイクロ波の周波数は、基材1(電子スピン共鳴部材)の種類に応じて設定される。例えば、基材1が、NVCを有するダイヤモンドである場合、コイル2は、2.87GHz程度のマイクロ波磁場を印加する。高周波電源3は、コイル2にマイクロ波の電流(つまり、上述のマイクロ波の磁場を生成するための電流)を導通させる。
【0022】
さらに、図1に示す測定装置は、照射装置4、受光装置5、演算処理装置6などを観測系11として備える。観測系11は、上述のマイクロ波が照射された電子スピン共鳴部材としての基材1を使用して被測定場の強度を特定する。
【0023】
照射装置4は、所定波長の励起光および所定波長の測定光を出射する装置であり、基材1にその励起光および測定光を照射する(入射させる)。受光装置5は、測定光の照射時において基材1から発せられる蛍光を検出する。
【0024】
演算処理装置6は、例えばコンピュータを備え、プログラムをコンピュータで実行して、各種処理部として動作する。この実施の形態では、演算処理装置6は、測定制御部6aおよび演算部6bとして動作する。
【0025】
測定制御部6aは、高周波電源3および照射装置4を制御して、上述のカラーセンタでの物理的事象を検出しその物理的事象の検出値を導出する。物理的事象は、被測定場に対応する所定の測定シーケンスを実行することで発生する。ここでは、測定制御部6aは、所定の測定シーケンスにおいて、高周波電源3および照射装置4を制御し、受光装置5により検出された蛍光(物理的事象)の検出光量を検出値として特定する。
【0026】
例えば、照射装置4は、レーザーダイオードなどを光源として備えるとともに、その光源の発する光(励起光)を導光し所定入射角および所定入射位置で基材1に入射させる光学系を備える。また、例えば、受光装置5は、フォトダイオードなどを受光素子として備える。また、例えば、測定制御部6aは、受光素子の出力信号に対して増幅などを行って得られる受光装置5の出力信号に基づいて、上述の検出光量を特定する。この実施の形態では、上述の所定の測定シーケンスとして、ラムゼイパルスシーケンス、スピンエコーパルスシーケンスなどが被測定場に応じて選択され適用される。なお、測定シーケンスはラムゼイパルスシーケンスおよびスピンエコーパルスシーケンスに限定されるものではない。
【0027】
演算部6bは、所定の演算式などに従って、上述の物理的事象の検出値(上述の検出光量)に基づいて被測定場の測定値(例えば、磁束密度の振幅、向きなど)を演算する。
【0028】
図2は、図1に示す測定装置の光学系の一例を示す図である。この測定装置の光学系は、支持部材1Sとしての1対の複合放物面型集光器(CPC)を備える。この1対のCPCにおいて、2つのCPCの大口径端面が互いに接合しており、一方のCPCの小口径端面から入射する光(つまり、カラーセンタの発する蛍光)が、他方のCPCの小口径端面から出射する。基材1のカラーセンタで発生する蛍光は、このように支持部材1Sを通過して受光装置5に入射する。なお、照射装置4からの励起光および測定光は、支持部材1Sを通過せずに、基材1に照射される。
【0029】
上述の測定装置は、基材1周辺の光学系を含む励起光照射装置を備える。図3は、実施の形態1に係る励起光照射装置の構成を示す断面図である。図4は、実施の形態1における基材1および反射部材21a,21b並びに励起光の光路を説明する正面図である。
【0030】
この励起光照射装置は、上述の基材1と、基材1に対して離間して配置された少なくとも1対の(少なくとも2つの)反射部材21a,21bを備える。
【0031】
例えば図3に示すように、反射部材21aは、1つの部材とされ、反射部材21bは、2つの部材とされる。
【0032】
基材1は、例えば図3および図4に示すように、互いに対向する側面1a,1bを有し、当該基材1の側面1a,1bにおいて、当該基材1内に入射した励起光を出射させる。つまり、励起光は基材1を複数回通過する。
【0033】
例えば図3および図4に示すように、反射部材21a,21bは、反射面21-1,21-2を有する平板形状の部材である。例えば、各反射部材21a,21bは、ガラスや透明樹脂などの光透過性部材と、光透過性部材の1面上で反射面21-i(i=1,2)を形成する膜とを備える。例えば、反射面21-1,21-2は、誘電体多層膜で形成される。
【0034】
反射部材21a,21bは、例えば平板形状を有し、反射面21-1,21-2をそれぞれ有する。それらの反射部材21a,21bは、基材1から出射した励起光を反射面21-1,21-2で反射して基材1に入射させて、励起光の、基材1への入射および基材1からの出射を繰り返させて、所定回数だけ励起光を基材1に通過させる。
【0035】
図3および図4において、側面1a,1bおよび反射面21-1,21-2は、Y-Z平面に対して略平行であり、励起光は、X軸に対して略平行に入射してくる。
【0036】
この実施の形態では、例えば図4に示すように、反射面21-2は、入射してくる励起光の光路に対して略垂直であり、反射面21-1は、反射面21-2(入射してくる励起光の光路に対して略垂直な方向)に対して所定の傾斜角θで傾斜しており、反射面21-2と側面1a,1bとは互いに略平行である。この傾斜角θは、0度より大きく、かつ90度未満である。
【0037】
例えば、反射部材21a,21bは図示せぬ支持部材に固定されて位置決めされる。なお、上述の励起光は、支持部材1Sには入射しない。
【0038】
また、例えば図3および図4に示すように、コイル2は、略1ターンのコイルであり、当該コイル2の両端となる2つの引出導体部2aと、引出導体部2aに接続される円形状導体部2bとを備える。基材1および反射部材21a,21bは、その円形状導体部2bの内側中空部分内に配置される。ここでは、各引出導体部2aは、平板形状を有し、円形状導体部2bは、略円筒形状を有する。
【0039】
そして、照射装置4は、例えば図4に示すように、励起光を、コイル2における上述の2つの引出導体部2aの間隙2-1を進行するように出射して、基材1に入射させる。
【0040】
また、照射装置4は、例えば図3および図4に示すように、励起光が反射面21-1,21-2の2軸Y,Z(つまり、反射面21-1,21-2の平面を張る2軸)のうちの一方の軸Zに対しては垂直に、かつ反射面21-1,21-2の2軸Y,Zのうちの他方の軸Yに対しては(90度未満の)傾斜角で反射面21-1,21-2に入射するように、励起光を出射する。
【0041】
また、この実施の形態では、コイル2は、例えば図3および図4に示すように、出射側貫通孔2-2をさらに備える。出射側貫通孔2-2は、励起光が上述の所定回数だけ基材1に通過した後に出射側貫通孔2-2を介して進行するように配置されている。つまり、出射側貫通孔2-2は、上述の傾斜角に応じて決定される光路が通過する位置に形成される。なお、出射側貫通孔2-2を設けずに、励起光の光路にコイル2が干渉しないように、ミラーなどで励起光の光路を設定するようにしてもよい。このように、基材1通過後の励起光をコイル2に照射しないようにすることで、コイル2への励起光の照射に起因する発熱および装置の温度上昇を抑制することができる。
【0042】
また、この実施の形態では、例えば図4に示すように、反射部材21a,21bにおける反射面21-1,21-2のうち、励起光を最初に反射する反射面21-1が、2つの引出導体部2aの間隙2-1を進行して基材1に入射する励起光の垂直方向に対して傾斜角θを有する。
【0043】
さらに、この実施の形態では、例えば図4に示すように、反射部材における反射面21-2,21-2のうち、励起光を最初に反射する2つの反射面21-1(21-1a,21-1b)が、2つの引出導体部2aの間隙2-1を進行して基材1に入射する励起光の垂直方向に対して、互いに反対方向に傾斜する傾斜角θを有し、その2つの反射面21-1a,21-1bは、励起光を、励起光の垂直方向(図4ではY軸方向)において、互いに逆方向となる2方向に進行させる。
【0044】
なお、上述の所定回数だけ基材1に通過した後、励起光は、基材1に再入射しないように(ここでは、出射側貫通孔2-2を進行した後に)ビームダンパなどで終端される。
【0045】
次に、実施の形態1に係る励起光照射装置の動作について説明する。
【0046】
この励起光照射装置は、測定対象の近傍で被測定場内に配置される。そして、測定制御部6aは、演算部6bとともに、上述の測定シーケンスを実行して、被測定場の強度の測定を実行する。
【0047】
上述の測定シーケンスにおいて、励起光の照射タイミングになると、照射装置4は、励起光を出射する。例えば図3および図4に示すように、照射装置4から出射した励起光は、最初に、基材1に対して垂直に(つまり入射角ゼロで)側面1aに入射し、基材1内を進行し、基材1に対して垂直に(つまり出射角ゼロで)側面1bから出射し、反射面21-1に入射し、反射面21-1で反射する。
【0048】
その後、例えば図4に示すように、励起光は、反射面21-1,21-2で繰り返し反射しつつY軸方向において中央の入射位置から外側へ向かってジグザグに進行していき、所定回数だけ、基材1を通過する。そして、基材1において、励起光の光路上に存在するカラーセンタは、励起光によって励起する。
【0049】
その後、測定光の照射タイミングになると、照射装置4は、測定光を出射する。測定光は、励起光と同一の光路を通り、その際に、カラーセンタで発生する蛍光が、直接、または、基材1の周囲の反射面21-1,21-2で反射して、支持部材1SとしてのCPCに入射し、そのCPCによって受光装置5に集光される。受光装置5で受光された蛍光が電気信号に変換される。そして、測定制御部6aは、その電気信号に基づいて検出値(蛍光強度)を特定し、演算部6bは、その検出値から被測定場の測定値を算出する。
【0050】
以上のように、上記実施の形態1に係る励起光照射装置は、励起光で励起されるカラーセンタを含む基材1と、基材1に対して離間して配置されそれぞれ反射面を有する少なくとも1対の反射部材21a,21bと、その励起光を出射する照射装置4と、そのカラーセンタの電子スピン量子操作を行うためのマイクロ波をそのカラーセンタに印加するコイル2とを備える。コイル2は、当該コイル2の両端となる2つの引出導体部2aと、引出導体部に接続される円形状導体部2bとを備えており、基材1および反射部材21a,21bは、円形状導体部2bの内側中空部分内に配置されている。上述の少なくとも1対の反射部材21a,21bは、基材1の面1a,1bからそれぞれ出射した励起光を反射面21-1,21-2で反射して基材1に入射させ、励起光の、基材1への入射および基材1からの出射を繰り返させて、所定回数だけ励起光を基材1に通過させる。そして、照射装置4は、上述の励起光を、2つの引出導体部2aの間隙2-1を進行するように出射して、基材1に入射させる。
【0051】
これにより、所定回数だけ励起光が基材1を通過するように基材1の外部に配置される反射部材21a,21bで励起光の光路を設定しているため、照射装置4から基材1への励起光の入射角や入射位置が多少変動しても、励起光の通過回数が変動しない(つまり、基材1内での励起光の光路長が大きく変化しない)。したがって、安定的に、基材1内のカラーセンタの発する光に基づく測定が正確に行われる。
【0052】
また、照射装置4は、励起光が反射面21-1,21-2の2軸のうちの一方の軸に対しては垂直に入射するようにしているため(つまり、基材1が設置されている基準面(ここでは支持部材1Sの上面)に対して平行な1平面上を進行しているため)、3次元的ではなく2次元的に光路制御を行えばよく、励起光(および測定光)の光路の変動量が大きくなりにくい。
【0053】
さらに、コイル2の間隙2-1を介して励起光を、コイル2の中空部に配置されている基材1に入射させているため、コイル2によって励起光の光路が干渉されずに済む。
【0054】
実施の形態2.
【0055】
図5は、実施の形態2における基材1および反射部材21a,21b並びに励起光の光路を説明する正面図である。実施の形態2においては、反射部材21aの反射面21-1が曲面形状を有し、反射面21-1の中央からの距離に従って傾斜角が徐々に大きくなっていく。実施の形態2では、反射面21-1は、X-Y平面において所定の曲率半径の円弧を有し、Z軸方向に対して平行である。実施の形態2では、出射側貫通孔2-2は、上述の曲率半径に応じて決定される光路が通過する位置に形成される。
【0056】
なお、実施の形態2に係る励起光照射装置およびそれを備える測定装置のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0057】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0058】
例えば、上記実施の形態1,2においては、2つの反射部材21bが設けられているが、その代わりに、1つの平板状の反射部材21bとし、反射部材21bにおいて、励起光の光路と交差する箇所に貫通孔を設け、その貫通孔を励起光が進行するようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施の形態1,2においては、反射部材21a,21bは、基材1から離間しているが、反射部材21a,21bcは、基材1に接触していてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、例えば、ODMRなどに基づく磁場や電場の測定に適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 基材
2 コイル
2-1 間隙
2-2 出射側貫通孔
2a 引出導体部
2b 円形状導体部
4 照射装置
21-1,21-2 反射面
21a,21b 反射部材
図1
図2
図3
図4
図5