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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】フライヤ
(51)【国際特許分類】
   A47J 37/12 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
A47J37/12 351
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021168624
(22)【出願日】2021-10-14
(65)【公開番号】P2023058858
(43)【公開日】2023-04-26
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】591109094
【氏名又は名称】アサヒ装設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090712
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 忠秋
(74)【代理人】
【識別番号】100176359
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 光代
(72)【発明者】
【氏名】山本 洋志
(72)【発明者】
【氏名】宮本 利樹
【審査官】高橋 武大
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-116535(JP,A)
【文献】特表2010-512172(JP,A)
【文献】特開2002-204754(JP,A)
【文献】特開2004-215823(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 37/00-37/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油槽と、該油槽内に上下2段に設置する上コンベヤ、下コンベヤと、前記上コンベヤに電圧を印加する電源装置とを備えてなり、前記上コンベヤ、下コンベヤは、それぞれ無端の導電性のコンベヤネットを左右のフレーム間に循環走行可能に組み込むネットコンベヤであり、前記上コンベヤのフレームは、絶縁性の支持材を介して前記下コンベヤのフレーム上に載せて設置し、前記上コンベヤは、接地されている前記油槽、下コンベヤから絶縁することを特徴とするフライヤ。
【請求項2】
記上コンベヤは、絶縁性の吊り具を有する昇降機構を介して昇降可能とすることを特徴とする請求項1記載のフライヤ。
【請求項3】
前記上コンベヤ用の駆動モータは、前記上コンベヤから絶縁して前記上コンベヤのフレーム上に搭載することを特徴とする請求項1または請求項記載のフライヤ。
【請求項4】
前記上コンベヤ用の駆動モータは、絶縁性のカップリングを介して前記上コンベヤの駆動スプロケット用の軸に連結することを特徴とする請求項記載のフライヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上下2段のネットコンベヤを備える連続式のフライヤに関する。
【背景技術】
【0002】
業務用のフライヤにおいて、揚げ加工用の油や、揚げ加工中の加工物に電界(電場)を付与すると、油の劣化防止や、加工食品の食味向上などの効果があるといわれている。
【0003】
そこで、このような技術を連続式のフライヤに適用するために、たとえば油槽内に設置する上下2段のネットコンベヤの左右両側と、油槽の各側壁の内面との間の隙間に電圧印加用の平板状の電極を配置したり(特許文献1)、上下の各ネットコンベヤの内部に、それぞれのコンベヤネットと平行に電圧印加用の枠状の電極を配置したりすることが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3165708号公報
【0005】
【文献】特開2001-95695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる従来技術の前者によるときは、油中の電界は、電圧印加用の電極と上下のネットコンベヤの側端部との間に集中され、後者によるときは、電圧印加用の電極と各ネットコンベヤのコンベヤネットとの間に集中される結果、いずれの場合も、加工物が搬送される上下のネットコンベヤ間に必要な電界が殆ど形成されず、十分な効果が期待できないという問題があった。また、油槽内に設置する電極は、それ自体が洗浄作業の際に邪魔になったり、油槽内における油の流れを妨げたりするおそれがある。
【0007】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、上コンベヤに直接電圧を印加することによって、電圧印加用の電極自体を不必要にするとともに、加工物が搬送される上下のネットコンベヤ間に実質的に均一な電界を形成することができるフライヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、油槽と、油槽内に上下2段に設置する上コンベヤ、下コンベヤと、上コンベヤに電圧を印加する電源装置とを備えてなり、上コンベヤ、下コンベヤは、それぞれ無端の導電性のコンベヤネットを左右のフレーム間に循環走行可能に組み込むネットコンベヤであり、上コンベヤのフレームは、絶縁性の支持材を介して下コンベヤのフレーム上に載せて設置し、上コンベヤは、接地されている油槽、下コンベヤから絶縁することをその要旨とする。
【0009】
なお、上コンベヤは、絶縁性の吊り具を有する昇降機構を介して昇降可能とすることができる。
【0010】
また、上コンベヤ用の駆動モータは、上コンベヤから絶縁して上コンベヤのフレーム上に搭載してもよく、絶縁性のカップリングを介して上コンベヤの駆動スプロケット用の軸に連結してもよい。
【発明の効果】
【0011】
かかる発明の構成によるときは、電源装置は、上コンベヤに電圧を印加することにより、上下に対面する上コンベヤのコンベヤネットの下面と下コンベヤのコンベヤネットの上面との間、すなわち加工物が搬送される上下のネットコンベヤ間の油中にほぼ均一な電界を形成することができ、揚げ加工用の油や、揚げ加工中の加工物の双方に対し、良好な電界付与効果を期待することができる。また、上コンベヤのコンベヤネットの下面側を電圧印加用、電界形成用の電極として利用できるため、その他の格別な電極を油槽内に設ける必要がなく、油槽内に電極を設けることによる不都合が発生するおそれもない。
【0012】
上コンベヤは、絶縁性の支持材を介して下コンベヤのフレーム上に設置することにより、下コンベヤや、下コンベヤを設置する油槽から容易に絶縁することができる。なお、支持材は、それを介して下コンベヤのフレーム上に上コンベヤのフレームを設置可能であればよく、上コンベヤ、下コンベヤの前後方向に連続する長尺材の他、同方向に複数個を分散配置するブロック材などの任意の形態に形成することができる。
【0013】
昇降機構と組み合わせる上コンベヤは、必要に応じて昇降機構により高く吊り上げることができ、たとえば洗浄作業などの際に便宜である。なお、絶縁性の吊り具は、上コンベヤの吊上げ高さに拘らず、上コンベヤと昇降機構との間の絶縁を維持することができる。
【0014】
上コンベヤ用の駆動モータは、上コンベヤから絶縁して上コンベヤのフレーム上に搭載すると、安全性のために駆動モータ自体のケーシングなどを接地しても、上コンベヤの絶縁が阻害されるおそれがない。なお、この場合の駆動モータは、たとえば絶縁性のカップリングを介して上コンベヤの駆動スプロケット用の軸に連結し、上コンベヤとの絶縁性を完成させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】全体構成模式縦断面図
図2図1のX-X線矢視相当模式断面図
図3】全体構成模式側面図
図4】動作説明線図
図5】比較例を示す図2相当説明図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0017】
フライヤは、油槽31と、上コンベヤ10、下コンベヤ20と、電源装置32とを備えてなる(図1図2)。ただし、上コンベヤ10、下コンベヤ20は、油槽31内に上下2段に設置され、電源装置32は、出力ケーブル32aを介して上コンベヤ10に電圧Vを印加することができる。
【0018】
油槽31は、前後に長い箱状容器であり、図示しないバーナまたはヒータ等の加熱源により、内部に収容する揚げ加工用の油Fを所定温度に加熱することができる。なお、油槽31の底面は、前部が緩い斜め上向きの斜面31aに形成されている。
【0019】
上コンベヤ10は、左右のフレーム11、11の間にたとえば金属製の無端の導電性のコンベヤネット12を循環走行可能に組み込んで構成するネットコンベヤである。上コンベヤ10の前部は、油槽31の前部の斜面31aに倣って斜め上向きに形成されており、コンベヤネット12は、フレーム11、11間の前後の軸13a、13a上の各複数のローラ13、13…に巻き掛けられている。なお、上コンベヤ10の中間部には、図示しないガイドローラが配設されている。
【0020】
上コンベヤ10の前部のローラ13、13…の軸13aは、駆動チェーン13bを介して駆動スプロケット13cに連結され、駆動スプロケット13cの軸13dは、絶縁性のカップリング14bを介して駆動モータ14の出力軸14aに連結されている。なお、駆動モータ14は、図示しないブラケットを介し、上コンベヤ10から絶縁された状態で上コンベヤ10のフレーム11、11上に搭載されている。駆動モータ14は、図示しない制御装置を介して駆動制御する可変速モータであり、上コンベヤ10を図1の矢印K1 方向に駆動することができる。駆動モータ14のケーシングは、安全のために接地されている。
【0021】
下コンベヤ20は、左右のフレーム21、21の間にたとえば金属製の無端の導電性のコンベヤネット22を循環走行可能に組み込んで構成するネットコンベヤである。下コンベヤ20の前部は、油槽31の前部の斜面31aに倣って斜め上向きに形成されて油槽31の前端に突出しており、コンベヤネット22は、フレーム21、21間の前後の軸23a、23a上の各複数のローラ23、23…に巻き掛けられている。なお、下コンベヤ20の中間部には、図示しないガイドローラが配設されている。
【0022】
下コンベヤ20の前部のローラ23、23…の軸23aは、駆動チェーン23bを介して駆動モータ24の出力軸24a上のスプロケット24bに連結されており、駆動モータ24は、図示しないブラケットを介して下コンベヤ20のフレーム21、21上に搭載されている。駆動モータ24は、図示しない制御装置を介して駆動制御する可変速モータであり、下コンベヤ20を図1の矢印K2 方向に駆動することができる。なお、下コンベヤ20の後部は、油槽31の底面に沿って、上コンベヤ10の後端を越えて延長されている。
【0023】
下コンベヤ20のフレーム21、21は、油槽31の底面に設置されている。また、上コンベヤ10のフレーム11、11は、左右の絶縁性の支持材25、25を介して下コンベヤ20のフレーム21、21上に設置され、上コンベヤ10は、駆動モータ14を除く全体が油槽31、下コンベヤ20から絶縁されている。
【0024】
上コンベヤ10、下コンベヤ20は、それぞれの下面、上面を介し、油槽31の後部に投入される加工物W、W…を油槽31内の加熱された油F中に沈めたまま搬送し、油槽31の前端に到達するまでの間に揚げ加工することができる。なお、加工物W、W…は、油槽31の後部において下コンベヤ20のコンベヤネット22上に連続的に投入され(図1の矢印K方向)、油槽31の前端において、下コンベヤ20の上向きの斜行部を介して油槽31の前方に排出される。ただし、図1において、上コンベヤ10、下コンベヤ20の各フレーム11、21の図示が省略されている。
【0025】
上コンベヤ10は、昇降機構40を介して昇降可能に吊下されている(図2図3)。ただし、図3において、上コンベヤ10、下コンベヤ20の各フレーム11、21、駆動モータ14、24の図示が省略されている。
【0026】
昇降機構40は、絶縁性の吊り具41を介して上コンベヤ10を吊下する前後左右のワイヤ42、42…を備えて構成されている。各ワイヤ42の上端部は、巻上げドラム43に巻き付けられており、巻上げドラム43、43…は、前後の各一対ごとに共通の駆動軸43a上に固定されている。前後の駆動軸43a、43aは、油槽31の左右の側縁上に立設する脚44a、44a付きの架台フレーム44、44を介して上コンベヤ10を横切るように配置されており、図示しない共通の可変速モータを介して正逆に同期回転させることができる。
【0027】
そこで、上コンベヤ10は、駆動軸43a、43aを介して巻上げドラム43、43…を一斉に正逆に回転駆動して前後左右のワイヤ42、42…を巻き上げ、巻き下げることにより、水平姿勢を保ちながら左右の支持材25、25の上方に吊り上げて上昇させ、支持材25、25上に下降させることができる。また、昇降機構40は、たとえば図示しない係合ブラケットを介して上コンベヤ10のフレーム11、11と支持材25、25とを一体に連結すると、上コンベヤ10、下コンベヤ20を一挙に昇降させることもでき、上コンベヤ10、下コンベヤ20、油槽31のそれぞれの洗浄作業の際に便利に使い分けることができる。
【0028】
電源装置32の出力ケーブル32aは、上コンベヤ10のフレーム11に接続されている(図2)。ただし、出力ケーブル32aは、図示に拘らず、上コンベヤ10の昇降動作に十分適合する余裕長さを有するものとし、必要に応じて、図示しないコネクタを介して上コンベヤ10との接続を切断可能としてもよい。
【0029】
電源装置32の出力仕様は、たとえば次の範囲内にあることが好ましい。すなわち、正または負のDC出力もしくは商用周波数を含む周波数20kHz 以下のAC出力であって、電圧V=0.2~20kV程度であればよい。また、電源装置32は、出力電流をたとえば5mA以下に制限する電流制限回路、または出力電流がたとえば5mA以上増加方向に変動したことにより出力電流を瞬時に遮断する電流監視回路などを組み込むことにより、作業員の感電事故を防止することが好ましい。
【0030】
フライヤは、上コンベヤ10、下コンベヤ20を同一速度で運転して加工物W、W…を連続的に揚げ加工するとともに、電源装置32により上コンベヤ10に電圧Vを印加すると、上コンベヤ10のコンベヤネット12の下面側と下コンベヤ20のコンベヤネット22の上面側との間、すなわち加工物W、W…が搬送される油F中にほぼ均一な電界を形成することができる(図4の曲線(1))。ただし、図4の横軸は、図2における上コンベヤ10、下コンベヤ20の幅方向の位置を示し、縦軸は、コンベヤネット12、22間の電界の強さの相対値を示す。なお、上コンベヤ10は、下コンベヤ20、油槽31、昇降機構40から絶縁され、下コンベヤ20、油槽31は、駆動モータ14のケーシング、電源装置32の筺体とともに接地されている。
【0031】
ちなみに、図4の曲線(2)、(3)は、それぞれ図5(A)、(B)に従って油槽31内に電圧印加用の電極Pを配置した場合の比較例データである。図5(A)では、絶縁されていない上コンベヤ10、下コンベヤ20の左右両側と、油槽31の各側壁の内面との間に、絶縁性の支持材25、25を介して平板状の電極P、Pが配置され、各電極Pは、電源装置32からの出力ケーブル32a、32aを介して同極性の電圧Vが印加されている。図5(B)では、下コンベヤ20のコンベヤネット22の内部に平板状の電極Pが絶縁して配置されており、電極Pは、電源装置32からの出力ケーブル32aを介して電圧Vが印加されている。ただし、図5(A)、(B)において、電源装置32は、図示が省略されている。
【0032】
図5(A)の構成によると、コンベヤネット12、22間の電界は、上コンベヤ10、下コンベヤ20の左右の側端部に極端に偏在してしまう(図4の曲線(2))。図5(B)の構成によれば、電界は、上コンベヤ10、下コンベヤ20の幅方向に均一に分布するが(図4の曲線(3))、その強さは、同図の曲線(1)のこの発明の場合の約1/5前後しか得られない。ただし、図4において、電界の強さの絶対値は、電源装置32からの電圧Vに依存するから、必要に応じて、電圧Vを適宜設定すればよい。
【0033】
なお、図4の曲線(1)~(3)を得たときの上コンベヤ10、下コンベヤ20の概略諸元を示すと、上下のコンベヤネット12、22の幅600mm、それぞれの上面側、下面側の間隔40mm、コンベヤネット12の下面側、コンベヤネット22の上面側の間隔55mmである。また、図5(A)の各電極Pは、上下方向幅15mm×前後方向長さ700mm×厚さ1mmのSUS430板であり、図5(B)の電極Pは、下コンベヤ20の幅方向長さ590mm×前後方向長さ400mm×厚さ1mmのSUS430板であって、コンベヤネット22の上面側との距離8mmである。
【0034】
以上の説明において、上コンベヤ10は、電源装置32からの電圧Vを印加してコンベヤネット12を電界形成用の電極として動作させるために、絶縁性の支持材25、25、吊り具41、41…を介して下コンベヤ20、油槽31、昇降機構40から絶縁し、さらに、駆動モータ14のケーシングを接地して安全性を高めるために、駆動モータ14を絶縁してフレーム11、11上に搭載するとともに、絶縁性のカップリング14bを導入している。そこで、上コンベヤ10は、同様の動作機能が達成できる限り、具体的な絶縁支持構造をさらに任意に変更してよいものとする。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明は、上下2段のネットコンベヤを備える食品加工用の大小の業務用のフライヤに対し、広く好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0036】
V…電圧
10…上コンベヤ
11…フレーム
12…コンベヤネット
13c…駆動スプロケット
13d…軸
14…駆動モータ
14b…カップリング
20…下コンベヤ
21…フレーム
22…コンベヤネット
25…支持材
40…昇降機構
41…吊り具

特許出願人 アサヒ装設株式会社
図1
図2
図3
図4
図5