(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】手摺装置、連結手摺及び手摺システム
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20240130BHJP
A61H 3/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
E04F11/18
A61H3/00 Z
(21)【出願番号】P 2019060669
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2020-10-20
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-11
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示日:平成30年10月10日~平成30年10月12日 展示会名:第45回国際福祉機器展 H.C.R.2018 開催場所:東京ビッグサイト(東京都江東区有明3-11-1)
(73)【特許権者】
【識別番号】000113779
【氏名又は名称】マツ六株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000110479
【氏名又は名称】ナカ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑田 貴喜
(72)【発明者】
【氏名】森 勇信
(72)【発明者】
【氏名】細谷 秀靖
(72)【発明者】
【氏名】加藤 信一
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】有家 秀郎
【審判官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-178606(JP,A)
【文献】特開2016-185242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F11/18
A61H3/00
A61H3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部と、このベース部に立設された支柱部と、この支柱部により支持された手摺と、を備えた手摺装置であって、
前記手摺は、手摺本体の両端部に、使用者に対してその者の手が当該手摺本体の端部に達しているとの注意を喚起する注意喚起部が設けられ、
前記注意喚起部は、前記手摺本体の端部に外嵌固定される飲み込み部と、前記飲み込み部から曲面を描いて立ち上がる立ち上がり部、及び該立ち上がり部から連続する丸みを帯びた頂部から構成される膨出部と、前記膨出部の膨出方向とは反対側に形成され、前記支柱部の先端部が嵌入される支柱嵌入部と、を備え、
前記手摺本体の上辺から前記膨出部の頂部までの膨出高さが、使用者の手が前記手摺本体の端部から滑落するのを防止し得る高さとされたことを特徴とする手摺装置。
【請求項2】
請求項1に記載の手摺装置であって、
前記注意喚起部の前記膨出高さは、前記手摺本体の上辺から前記膨出部の頂点までの高さであって、該高さが6.5mm以上12.5mm以下とされていることを特徴とする手摺装置。
【請求項3】
ベース部、このベース部に立設された支柱部、及びこの支柱部により支持された手摺をそれぞれ備えた2つの手摺装置の前記手摺同士の間に架設される連結手摺であって、
前記連結手摺は、手摺本体と、前記手摺本体の両端部に取り付けられた連結部材と、前記連結部材と枢着され、使用者に対してその者の手が当該手摺本体の端部に達しているとの注意を喚起する注意喚起部と、前記注意喚起部と接続され、前記手摺装置の前記支柱部を把持する支柱把持部と、を備え、
前記注意喚起部は、前記連結部材との枢着部分の上辺から曲面を描いて立ち上がる立ち上がり部、及び該立ち上がり部から連続する丸みを帯びた頂部から構成される膨出部を備え、
前記枢着部分の上辺から前記膨出部の頂部までの膨出高さが、使用者の手が前記手摺本体の端部から滑落するのを防止し得る高さとされたことを特徴とする連結手摺。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の複数の手摺装置と、これら手摺装置の手摺同士の間に架設された請求項3に記載の一又は複数の連結手摺と、から構成された手摺システムであって、
前記手摺装置における注意喚起部の膨出部の頂部と、該手摺装置に架設された前記連結手摺における注意喚起部の膨出部の頂部とが隣接されてなることを特徴とする手摺システム。
【請求項5】
請求項4に記載の手摺システムであって、
前記手摺装置における注意喚起部と前記連結手摺における注意喚起部とは、前記膨出部の頂部から滑らかに連続する鉛直面部を有することを特徴とする手摺システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護や福祉の分野での使用に適した手摺装置、連結手摺及び手摺システムに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者や要介護支援者等が自宅或いは介護施設や病院等において自力で歩行する際にその安全を確保するうえから、廊下や階段の壁面に手摺が取り付けられたり、或いは、廊下や玄関などに据置型の手摺装置や手摺システムなどが設置されたりしている。
【0003】
従来の手摺は、壁面に複数個のブラケットを取り付け、これらブラケットに手摺本体である棒状の部材を固定したものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、手摺装置としては、例えば、ベース部と、このベース部に立設された支柱部と、この支柱部により支持された手摺と、を備えたものが知られている(例えば、特許文献2、3参照)。
【0005】
また、手摺システムとしては、上記したような手摺装置を複数台用意し、これら手摺装置間に手摺を架設したものが知られている。その一例として、第1ベースプレートと、第2ベースプレートと、第1ベースプレートに取り付けられた第1支柱と、第2ベースプレートに取り付けられた第2支柱と、第1支柱の上端部に取り付けられた第1ヒンジと、第1ヒンジを介して、第1支柱に対して角度が変更可能に取り付けられた第1手摺取付部と、第2支柱の上端部に取り付けられた第2ヒンジと、第2ヒンジを介して、第2支柱に対して角度が変更可能に取り付けられた第2手摺取付部と、第1手摺取付部と第2手摺取付部とに架け渡された第1手摺とを備えたものがある(例えば、特許文献4参照)。また、他の例として、ほぼ平行に相対峙する一対の支柱間の上下方向に複数本の横桟が連結され、支柱の下端はベース板にほぼ垂直に支持されて成る立ち上がり動作補助具と、上下にほぼ平行に相対峙して一対をなす水平方向の手摺り材の間に複数本の縦桟が連結されて成る横移動用手摺りとを共通に使用可能に連結して成るもので、立ち上がり動作補助具のいずれかの支柱と、横移動用手摺のいずれかの縦桟とが、二つのソケット部を平行に配置した構成の連結具により平行状態に、且つ回転可能状態に連結されたものがある(例えば、特許文献5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-67452号公報
【文献】実用新案登録第3096533号公報
【文献】実用新案登録第3127542号公報
【文献】特開2016-118016号公報
【文献】特開2010-220851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、高齢者や要介護支援者等は、手摺を利用して歩行する際、足元に不安があることから注意を専ら足元に集中させがちとなる。このため、手元の方が疎かとなり、手摺のどの位置を掴んでいるかを把握していないことが多い。したがって、歩行に伴い手摺の端部に手が達しているにも拘らずそのことに気付かない場合がある。ここで、高齢者や要介護支援者等は、手摺を掴んでいる際体重を手摺に預けることが多いため、もし手が手摺の端部に達していることに気付かないまま歩行を続けると、必然的に手が手摺の端部から外れてしまい、その結果激しく転倒して骨折などの重傷を負うことが想定される。また、例えば、水平な手摺から下り勾配の手摺に続くような場合も、水平な手摺が終わることに気付かないまま歩行を続けると、水平な手摺がまだ続くとの本人の予想に反していきなり下り勾配の手摺に手が移ることから、その急な変化に驚いて手摺を掴み損ねてしまい、前記と同様転倒事故に至ることが危惧される。
【0008】
このような転倒事故を未然に防ぐためには、手摺の端部に手が達していることを高齢者や要介護支援者等に何らかの手段で知らせる必要がある。しかしながら、上記従来の手摺や手摺装置及び手摺システムにあっては、手摺はどれも全長に亘って一様な形態であるため、手摺の端部がどこであるのかを高齢者や要介護支援者等に知らせることができない。したがって、上記従来技術では転倒事故を未然に防ぐことは望めなかった。
【0009】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、手摺を伝って歩行する高齢者や要介護支援者等に手が手摺の端部に達していることを知らせて一旦立ち止まるように仕向け、これにより手が手摺から滑落することに起因する転倒事故を未然に防ぐことのできる手摺、手摺装置、及び手摺システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明に係る手摺装置は、ベース部と、このベース部に立設された支柱部と、この支柱部により支持された手摺と、を備え、前記手摺は、手摺本体の両端部に、使用者に対してその者の手が当該手摺本体の端部に達しているとの注意を喚起する注意喚起部が設けられ、前記注意喚起部は、前記手摺本体の端部に外嵌固定される飲み込み部と、前記飲み込み部から曲面を描いて立ち上がる立ち上がり部、及び該立ち上がり部から連続する丸みを帯びた頂部から構成される膨出部と、前記膨出部の膨出方向とは反対側に形成され、前記支柱部の先端部が嵌入される支柱嵌入部と、を備え、 前記手摺本体の上辺から前記膨出部の頂部までの膨出高さが、使用者の手が前記手摺本体の端部から滑落するのを防止し得る高さとされたことを特徴とするものである。
【0011】
上記手摺装置にあっては、前記注意喚起部の前記膨出高さは、前記手摺本体の上辺から前記膨出部の頂点までの高さであって、該高さが6.5mm以上12.5mm以下とされているとよい。
【0012】
また、本発明に係る連結手摺は、ベース部、このベース部に立設された支柱部、及びこの支柱部により支持された手摺をそれぞれ備えた2つの手摺装置の前記手摺同士の間に架設されるものであって、前記連結手摺は、手摺本体と、前記手摺本体の両端部に取り付けられた連結部材と、前記連結部材と枢着され、使用者に対してその者の手が当該手摺本体の端部に達しているとの注意を喚起する注意喚起部と、前記注意喚起部と接続され、前記手摺装置の前記支柱部を把持する支柱把持部と、を備え、前記注意喚起部は、前記連結部材との枢着部分の上辺から曲面を描いて立ち上がる立ち上がり部、及び該立ち上がり部から連続する丸みを帯びた頂部から構成される膨出部を備え、前記枢着部分の上辺から前記膨出部の頂部までの膨出高さが、使用者の手が前記手摺本体の端部から滑落するのを防止し得る高さとされたことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明に係る手摺システムは、複数の上記手摺装置と、これら手摺装置の手摺同士の間に架設された一又は複数の上記連結手摺と、から構成されたものであって、前記手摺装置における注意喚起部の膨出部の頂部と、該手摺装置に架設された前記連結手摺における注意喚起部の膨出部の頂部とが隣接されてなることを特徴とするものである。
また、本発明に係る手摺システムは、前記手摺装置における注意喚起部と前記連結手摺における注意喚起部とは、前記膨出部の頂部から滑らかに連続する鉛直面部を有することを特徴とするものである。
【0015】
上記の手摺装置、連結手摺及び手摺システムでは、手摺本体の両端部に、使用者に対してその者の手が当該手摺本体の端部に達しているとの注意を喚起する注意喚起部が設けられているため、手摺を伝って歩行する高齢者や要介護支援者等に手が手摺の端部に達していることを手の感触を通じて直に知らせることができ、そこで一旦立ち止まるように仕向けることができる。これにより、高齢者や要介護支援者等は自己の手の位置を確実に把握するので、手摺の端部から手を滑落させることはない。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、手摺を伝って歩行する高齢者や要介護支援者等に手が手摺の端部に達していることを知らせて一旦立ち止まるように仕向け、これにより手が手摺から滑落することに起因する転倒事故を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の手摺の一実施形態を示す概略正面図である。
【
図2】本発明の手摺装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す手摺装置を底面側から視た斜視図である。
【
図4】
図2に示す手摺装置の支柱の基端部における縦断面図である。
【
図5】
図2に示す手摺装置の変形例を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示す手摺装置を底面側から視た拡大斜視図である。
【
図8】本発明の手摺システムの一実施形態を示す斜視図である。
【
図9】
図8に示す手摺システムの部分拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において共通する構成要素には同一符号を付している。
【0019】
-手摺-
図1は、本発明に係る手摺の一実施形態を示す概略正面図である。この手摺1は、手摺本体2と、この手摺本体2の両端部に設けられた注意喚起部3,3とを備え、建物の壁面Wにブラケット4,4を介して取り付けられている。
【0020】
手摺本体2は、従来周知のものを採用することができ、その材質は問わない。なお、握り易さの点から、例えば、断面が円形又は楕円など丸みを帯びた形状のものが適している。壁面Wへの取り付け高さは、使用者の体格や歩行姿勢等に応じて適宜決定すればよい。また、多人数が使用する例えば介護施設などでは、複数本の手摺1を上下方向にずらせて壁面Wに取り付けてもよい。
【0021】
注意喚起部3は、高齢者や要介護支援者等の使用者に対してその者の手が手摺本体2の端部に達しているとの注意を喚起するためのものである。より具体的には、手摺本体2の端部に達していることを使用者に知らせて、手摺本体2の端部で一旦歩行動作を止めてもらい、次の動作、例えばドアのノブやレバーを掴んでドアを開ける、車椅子に移る、他の補助具に持ち替えるといった、これまでの歩行動作とは異なる動作へ落ち着いて移ってもらうようにするためのものである。すなわち、仮に注意喚起部3がない場合、使用者は上記したような次の動作に移ることに注意がいってしまい、手元の状態、つまり手が手摺本体2の端部に達していることに気付かず、まだ手摺1が続いていると勝手に思い込んで歩行を続けてしまう。そうすると、手摺1はもう続いていないため、まだ手摺1があると思い込んでいる使用者の手は空を掴むことになり、その結果使用者は、手摺1に体重をかけている分大きく転倒してしまう。そして、最悪の場合は骨折などの大怪我を負う虞がある。しかし、注意喚起部3が手摺本体2の端部にあると、使用者は手摺1がもう続かないことに気付き、そこで一旦立ち止まって手元を確認するので、上記したような転倒事故は生じず、使用者は落ち着いて次の動作に安全に移ることができることになる。
【0022】
また、注意喚起部3は、上記したように使用者に対してその者の手が手摺本体2の端部に達しているとの注意を喚起するためのものであって、使用者を驚かせるような形態のものであってはならない。つまり、使用者は体重を手摺1に預けるようにして専ら足元に注意を注いだまま手摺本体2に手を伝わせてくるので、注意喚起部3が手摺本体2とは感触が極端に異なるようなものであると、使用者はそのような注意喚起部3に手を触れるや否やあまりの感触の変化に驚いて手を手摺1から離してしまい、その結果転倒事故に繋がる虞が多分にある。そこで、注意喚起部3の形態としては、
図1に示すように、手摺本体2の上辺から緩やかな曲面を描いて立ち上がる立ち上がり部30及びこの立ち上がり部30から滑らかに連続する丸みを帯びた頂部31から構成される膨出部32と、この膨出部32の頂部31から滑らかに連続する鉛直面部33から構成されている。また、このようになる注意喚起部3の高さ、つまり膨出部32の高さは、使用者の手が手摺本体2の端部から滑落するのを防止し得るとともに使用者に急な違和感を覚えさせないような高さとされている。具体的には、膨出部32の高さ(手摺本体2の上縁から膨出部32の頂点までの高さ)は、6.5mm以上12.5mm以下であるのが好ましい。当該高さが6.5mm未満であると、使用者が注意喚起部3に触れてもそれが注意喚起部3であると使用者に認識されない虞がある、また、当該高さが12.5mmを超えると、使用者に急な違和感を覚えさせてしまい、その結果使用者が驚いて手を手摺1から離してしまい、転倒事故を招来する虞がある。注意喚起部3がこのような形態であると、使用者は手摺本体2を伝ってきて注意喚起部3に手が触れても驚くようなことはなく、また、膨出部32を抵抗なく掴むことができる。この結果、使用者は自分の手が手摺1の端部に達したことに気付き、この先は手摺1が続かないことを理解し、ここで一旦立ち止まって手元を確認する。そして、次に自分がどのような動作に移るのかを理解したうえで、落ち着いて次の動作に入る。したがって、転倒事故は発生しない。
【0023】
また、注意喚起部3は、本実施形態では、手摺本体2と別部材で構成し、手摺本体2の両端部に外嵌固定している。注意喚起部3の材質としては、成形性の点から、合成樹脂が適しているが、手摺本体2の両端部自体を上記したような形態に加工してもよい。すなわち、手摺本体2の両端部自体を加工する場合、例えば手摺本体2が木製であると、切削加工により注意喚起部3を手摺本体2の両端部に形成することが想定される。また、手摺本体2が金属製パイプであると、その両端部を例えば膨出させるべく成形加工を施すことで注意喚起部3を形成することが想定される。ここで、注意喚起部3を手摺本体2の端部に外嵌固定する場合は、注意喚起部3の立ち上がり部30の始端に当たる飲み込み部34の外径と手摺本体2の外径との差が極力小さくなるように飲み込み部34の肉厚を薄くするのが望ましい。或いは、注意喚起部3の飲み込み部34の外径を手摺本体2の外径と等しくするとともに、手摺本体2の端部の外周面を飲み込み部34の肉厚分だけ削り、注意喚起部3を手摺本体2の端部に外嵌したときに手摺本体2の表面と飲み込み部34とが平滑に連なるようにしてもよい。
【0025】
-手摺装置-
次に、本発明に係る手摺装置の一実施形態について、
図2乃至
図4を参照して説明する。
図2は、手摺装置を示す斜視図、
図3は、手摺装置を底面側から視た斜視図、
図4は、手摺装置の支柱の基端部における縦断面図である。
【0026】
この手摺装置5は、ベース部50と、このベース部50に立設された一対の支柱部51,51と、この支柱部51,51により支持された手摺1と、支柱部51,51の上端寄りに架設された横桟52と、ベース部50の裏面に取り付けられた板状の重錘53とを備えたものである。以下、これら主要部について説明する。
【0027】
ベース部50は、手摺装置5を床面に定着させる機能を有する。本実施形態のベース部50の周端部には床面の方向に向かう傾斜面50aが設けられており、これによってベース部50の中央部を床面から浮かせることで、
図4に示すように、重錘53や、後述するボルト51eや裏フランジ51g等の支柱固定部材等をベース部50の裏面に取り付けるスペースが確保されている。このようになるベース部50は、手摺装置5の転倒による事故を回避するために、重心が低く床面との接触面積が大きくされている。このベース部50を構成するベース板54としては、金属製の板や強度の高い合成樹脂製の板を用いることができる。本実施形態では、
図4に示すように、金属製のベース板54の表面全域と、裏面のうち重錘53と重ならない領域とにウレタン塗装54aと化粧塗装54bとを施している。また、上記した傾斜面50aの周端縁部には、さらに、例えばゴム製や合成樹脂製の緩衝材が装着されていてもよく、その場合、床面の傷の発生防止と使用者の安全確保とを図ることができる。このようになるベース部50の四隅には、床面の不陸に対応するためのアジャスタ55が配設されている。このアジャスタ55は、
図4に示すように、ベース部50に埋め込まれたナット55aと、このナット55aと螺合するボルト55bとから構成され、ボルト55bの頭部に凹設された六角孔55cにこれと合致する六角レンチを差し込んでいずれかの方向にボルト55bを回すことで、ボルト55bの下方向への突出長さを変化させ、これによりベース部50の不陸調整が容易にできるようになっている。
【0028】
支柱部51は、その基端部が、ベース部50の長手方向一端部寄りに立設された金属製で筒状のホルダ部51aに差し込まれるとともにベース部50の上端部においてネジ51bにより固定されている。ホルダ部51aはその下端に金属製の取付基盤51cが溶接により取り付けられており、この取付基盤51cに設けられたネジ孔51dに、
図4に示すように、重錘53の外側から差し込まれるボルト51eが螺入されることによりベース部50にホルダ部51aが固定されるようになっている。また、ボルト51eの頭部51fは、重錘53側に添設された裏フランジ51gに係止されている。このようになる支柱部51の上端寄りには横桟52がエルボ部材56を介して両支柱部51,51間に架設されており、上端には手摺1が取り付けられている。
【0029】
手摺1は、
図1を用いて説明した手摺1と同様のものであるが、注意喚起部3の構成が若干相違している。すなわち、手摺装置5における手摺1の注意喚起部3は、支柱部51と手摺1とを接続するための接続部材としても機能するものであるため、膨出部32の膨出方向とは反対側に、支柱部51の先端部が嵌入される支柱嵌入部35が一体的に形成されている。その余の点は、
図1で示した手摺1と同じであるので、重複して説明しない。
【0030】
このようになる手摺装置5においても、手摺1の端部に達していることを使用者に知らせて、手摺1の端部で一旦歩行動作を止めてもらい、次の動作、例えばドアのノブやレバーを掴んでドアを開ける、車椅子に移る、他の補助具に持ち替えるといった、これまでの歩行動作とは異なる動作へ落ち着いて移ってもらうようにすることができる。
【0031】
なお、手摺装置5は、図示例の形態のもの以外にも、例えば、ベース部50を長尺としてその長手方向に沿って複数本の支柱部51を立設し、これら支柱部51上に長尺の手摺1を支持させたものであってもよい。
【0032】
-手摺装置の変形例-
図5乃至
図7は、上記手摺装置5の変形例を示し、
図5は、手摺装置の斜視図、
図6は、手摺装置を底面側から視た拡大斜視図、
図7は、手摺装置の部分縦断面図である。なお、以下では、上記
図2乃至
図4に示した手摺装置5と異なる点についてのみ説明し、上記
図2乃至
図4に示した手摺装置5と同一構成要素には同一符号を付しその説明を省略する。
【0033】
この例では、ベース部50の不陸調整のために、上記のアジャスタ55に代えて弾性シート57を用いている。以下、詳述する。
【0034】
図6及び
図7に示すように、弾性シート57は帯状とされ、ベース部50の傾斜面50aの裏面に添設されている。弾性シート57の先端縁57aは、
図7に示すように、傾斜面50aの端縁に沿わされており、床面にベース部50が置かれた際、弾性シート57の先端縁57aが床面と直接接するように図られている。これにより、床面に多少の不陸があった場合でも、弾性シート57がその先端縁57aでこれを吸収し、ベース部50の不陸調整が可能となっている。弾性シート57としては、例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)が、反発弾性、耐老化性、耐寒性等の点で優れていることから、好適であるが、床面の不陸を吸収し得る弾性を有するものであれば、材質は問わない。
【0035】
なお、図中の符号59は化粧キャップを示し、この化粧キャップ59は、ベース部50におけるボルト51e用の挿通孔のうち、使用しない箇所(支柱部51を取り付けない箇所)の挿通孔を塞ぐためのものであり、
図7に示すように、キャップ本体59aと、前記挿通孔に嵌入されて係止される複数本の係止爪59bとから構成されている。
【0036】
-手摺システム-
次に、本発明に係る手摺システムの一実施形態について、図8及び図9を参照して説明する。図8は、手摺システムの一実施形態を示す斜視図、図9は、手摺システムの部分拡大正面図である。なお、本実施形態における手摺システムは、上記の各実施形態で説明した手摺1や手摺装置5と原理的に同じであるから、以下では上記の各実施形態と異なる点についてのみ説明する。
【0037】
この手摺システム6は、上記した手摺1と手摺装置5とを組み合わせたものであり、2台の手摺装置5,5と、これら手摺装置5,5の間に架設された連結手摺10とから構成されたものである。但し、一方の手摺装置5にあっては、支柱部51はベース部50の長手方向中央部に設けられている。
【0038】
本実施形態では、手摺装置5の手摺1にも注意喚起部3が設けられており、連結手摺10の両端部にも注意喚起部3が設けられている。
【0039】
連結手摺10は、手摺本体2と、この手摺本体2の両端部に取り付けられた連結部材11と、この連結部材11と枢着された注意喚起部3と、注意喚起部3と接続された支柱把持部12とを備えている。そして、このようになる連結手摺10は、支柱把持部12が、支柱部51の手摺1と横桟52との間を把持することにより支柱部51に架設されている。また、手摺本体2の両端部の連結部材11と注意喚起部3とが枢着されていることにより、2台の手摺装置5間に、図8に示すような高低差があっても対応できるようになっている。したがって、例えば、玄関の上がり框など、段差のある箇所に容易に設置することができる。連結部材11及び支柱把持部12の構成としては、例えば、本願の出願人の出願に係る特開2013-92034号公報に開示されているような構成を採用することができる。
【0040】
なお、本実施形態では、手摺装置5は2台の例を示しているが、これに限らず、3台以上とし、これら手摺装置5間にそれぞれ連結手摺10を架設してもよい。
【0041】
このようになる手摺システム6においても、手摺1の端部に達していることを使用者に知らせて、手摺1の端部で一旦歩行動作を止めてもらい、次の動作へ落ち着いて移ってもらうようにすることができ、転倒事故を防止することができる。具体的には、手摺装置5の、連結手摺10が無い方の端部に使用者が進んだときは、手摺装置5の手摺1の注意喚起部3により、ここで手摺1が終わることを使用者に知らせて一旦立ち止まらせることができる。また、手摺装置5の、連結手摺が有る方の端部に使用者が進んだときは、手摺装置5の手摺1の注意喚起部3により当該手摺1が終わることを使用者に知らせて一旦立ち止まらせ、ここから先はこれまでとは違って傾斜のある手摺1に変わることを使用者に確実に認識させることができる。さらに、連結手摺10を伝って使用者が進み、その端部に至ったとき、連結手摺10の注意喚起部3に手が触れることで、使用者にここで連結手摺10が終わることを知らせて一旦立ち止まらせ、ここから先はこれまでとは違って水平な手摺装置5の手摺1に変わることを使用者に認識させることができる。したがって、手摺装置5と連結手摺10との接続箇所で上記したように使用者を一旦立ち止まらせることができるため、手摺装置5の手摺1と連結手摺10との間で傾斜度合いが変わることに使用者が驚くようなことがなく、使用者に落ち着いて次の動作に移ってもらうことができる。
【0042】
なお、本発明は、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲の記載によって示すものであって、明細書本文及び図面の記載にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0043】
1 手摺
2 手摺本体
3 注意喚起部
5 手摺装置
6 手摺システム
10 連結手摺