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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】枕
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/10 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
A47G9/10 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020008715
(22)【出願日】2020-01-22
(65)【公開番号】P2021115115
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ウェブサイトの掲載日 令和1年11月20日 ウェブサイトのアドレス https://www.airsleep.jp/pdf/20191120_01.pdf https://www.airsleep.jp/lineup/pillow.html https://www.nishikawasangyo.co.jp/categories/pillow/6356/ 〔刊行物等〕 ウェブサイトの掲載日 令和1年12月5日 ウェブサイトのアドレス https://shop.nishikawa1566.com/shop/g/gEH90135078GR/ https://shop.nishikawa1566.com/shop/g/gEH90135078B/ 〔刊行物等〕 発行日 令和1年11月27日 刊行物 西川株式会社「AiR CONDITIONING GEAR LINE UP CATALOG」第18頁 〔刊行物等〕 展示日 令和1年10月9日 展示会名、開催場所 春夏新作発表会 西川ホームファッションフェア2020 東京都中央区日本橋富沢町8-8 西川株式会社 東京オフィス ショウルーム 〔刊行物等〕 販売日又は配布日 令和1年11月18日 販売場所又は配布場所 日本橋西川(東京都中央区日本橋1-5-3)
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000196129
【氏名又は名称】西川株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】田井中 誠治
(72)【発明者】
【氏名】山田 志奈乃
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-038742(JP,U)
【文献】特開2011-110266(JP,A)
【文献】特開2002-034758(JP,A)
【文献】登録実用新案第3180755(JP,U)
【文献】特開2005-052406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向、及び前記第1方向に交差する第2方向に延びると共に、前記第1方向及び前記第2方向の双方に交差する第3方向に厚みを有する柔軟性素材によって構成された枕であって、
前記第1方向の中央に位置する中央部と、
前記中央部の前記第1方向の両側に位置する両側部と、
を備え、
前記中央部は、前記中央部を前記第3方向に貫通する貫通穴を有し、
前記両側部は、前記両側部のそれぞれにおいて前記第3方向に窪む非貫通穴を有し、
前記中央部は、鉛直上方に向けられる表面層と、前記表面層の下側に設けられる底面層とを含んでおり、
前記両側部は、前記表面層と、前記表面層の下側に設けられる通気弾性層と、前記通気弾性層の下側に設けられる前記底面層とを含んでおり、
前記底面層は、前記底面層の前記通気弾性層との接触面に形成された薄膜状のフィルムと、前記フィルムの内部に位置するウレタン部とを有し、
前記フィルムは、前記ウレタン部と比較して通気性が低い材料によって構成されている、
枕。
【請求項2】
放射状に配列された複数の前記貫通穴と、放射状に配列された複数の前記非貫通穴とを有する、
請求項1に記載の枕。
【請求項3】
前記両側部は、鉛直上方に向けられる第1両側凸部を含んでおり、
前記中央部は、鉛直上方に向けられる中央側凸部を含んでおり、
前記第1両側凸部の高さは、前記中央側凸部の高さよりも高い、
請求項1又は2に記載の枕。
【請求項4】
前記両側部は、鉛直上方に向けられる第2両側凸部を含んでおり、
前記第2両側凸部の高さは、前記第1両側凸部の高さよりも低い、
請求項3に記載の枕。
【請求項5】
前記両側部の前記非貫通穴の面積は、前記中央部の前記貫通穴の面積よりも広い、
請求項1~4のいずれか一項に記載の枕。
【請求項6】
前記両側部の前記非貫通穴は長円状を呈し、前記中央部の前記貫通穴は円形状を呈する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の枕。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、使用者の頭部が載せられる枕に関する。
【背景技術】
【0002】
枕としては従来から種々のものが知られている。特開2011-110266号公報には、枕として用いられる高通気性枕内包材が記載されている。高通気性枕内包材は、内包材本体を備える。内包材本体は、汎用軟質ポリウレタンフォームから構成された上層部と、無膜軟質ポリウレタンフォームから構成された板状の下層部との2層構造を有する。内包材本体は、上層部の下面が下層部の上面に接着されて一体構造を成している。
【0003】
上層部は、その上面側にプロファイル加工によって形成された凹部及び凸部を有し、凹部には、上層部から下層部の上面まで延びるスリットが形成されている。スリットは、上層部の凹部及び凸部に籠もった熱及び湿気を下層部に放出するために形成されている。下層部は、スリットを介して上層部から放出された熱及び湿気を吸収する。下層部は、吸収した熱及び湿気を無膜軟質ポリウレタンフォームの拡散放出作用によって緩やかに放熱及び放湿させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-110266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した高通気性枕内包材では、上層部がスリットを有することにより、上層部の通気性を確保することは可能である。下層部は、無膜ポリウレタンフォームで構成されていることにより、上層部のスリットからの熱及び湿気を緩やかには放出することが可能である。しかしながら、下層部は、板状に形成されているため、熱及び湿気を速やかには放出できないという現状がある。従って、通気性の点において改善の余地がある。
【0006】
本開示は、通気性を向上させることができる枕を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る枕は、第1方向、及び第1方向に交差する第2方向に延びると共に、第1方向及び第2方向の双方に交差する第3方向に厚みを有する柔軟性素材によって構成された枕であって、第1方向の中央に位置する中央部と、中央部の第1方向の両側に位置する両側部と、を備え、中央部は、中央部を第3方向に貫通する貫通穴を有し、両側部は、両側部のそれぞれにおいて第3方向に窪む非貫通穴を有し、中央部は、鉛直上方に向けられる表面層と、表面層の下側に設けられる底面層とを含んでおり、両側部は、表面層と、表面層の下側に設けられる通気弾性層と、通気弾性層の下側に設けられる底面層とを含んでおり、底面層は、底面層の通気弾性層との接触面に形成された薄膜状のフィルムと、フィルムの内部に位置するウレタン部とを有し、フィルムは、ウレタン部と比較して通気性が低い材料によって構成されている。
枕は、放射状に配列された複数の貫通穴と、放射状に配列された複数の非貫通穴とを有してもよい。
【0008】
この枕は、第1方向の中央に位置する中央部と、中央部の第1方向の両側のそれぞれに設けられる両側部とを有し、中央部及び両側部のそれぞれは柔軟性素材によって構成されている。従って、仰向け寝をする使用者の頭部を中央部で柔らかく支えることができると共に、寝返りを打って横向き寝をする使用者の側頭部及び頬を両側部のそれぞれで柔らかく支えることができる。両側部のそれぞれには第3方向に窪む非貫通穴が形成されている。よって、横向き寝をした使用者の側頭部及び頬の過度な沈み込みを抑制すると共に非貫通穴に空気が流れ込むことによって通気性を高めることができる。従って、高弾性、及び通気性の向上を実現できるので、心地良い横向き寝を実現させることができ寝返り性を高めることができる。中央部には、枕を第3方向に貫通する貫通穴が形成されている。従って、仰向け寝をする使用者の後頭部が載せられる中央部に貫通穴が形成されていることにより、仰向き寝をする使用者の後頭部に対する枕の通気性を高めることができる。
【0009】
の場合、中央部が表面層及び底面層を有する2層構造とされており、両側部が表面層、通気弾性層及び底面層を有する3層構造とされている。従って、中央部においてより高い通気性を維持すると共に、両側部は通気弾性層を更に備えることによって高い通気性及び高い弾性を発揮できる。よって、両側部では、横向き寝時における使用者の頬等に対する弾性を高めて、寝返り性をより向上させることができる。
【0010】
両側部は、鉛直上方に向けられる第1両側凸部を含んでおり、中央部は、鉛直上方に向けられる中央側凸部を含んでおり、第1両側凸部の高さは、中央側凸部の高さよりも高くてもよい。この場合、両側部の第1両側凸部の高さが中央部の中央側凸部の高さよりも高いことにより、横向き寝時における使用者の頬等に対する弾性を高めることができる。従って、寝返り性の更なる向上に寄与する。
【0011】
両側部は、鉛直上方に向けられる第2両側凸部を含んでおり、第2両側凸部の高さは、第1両側凸部の高さよりも低くてもよい。この場合、両側部は、第1両側凸部と第2両側凸部の2種類の凸部を含んでおり、第2両側凸部の高さが第1両側凸部の高さよりも低い。従って、横向き寝時において、使用者の頬等は第1両側凸部及び第2両側凸部に対し2段階にわたって接触する。よって、互いに高さが異なる第1両側凸部及び第2両側凸部が使用者の頬等に当たることにより、寝返り性を一層向上させることができる。
【0012】
両側部の非貫通穴の面積は、中央部の貫通穴の面積よりも広くてもよい。この場合、両側部の非貫通穴の面積が中央部の貫通穴の面積より広いことにより、両側部における通気性をより向上させることができる。従って、両側部において高い寝返り性を実現しつつ更に高い通気性を発揮することができる。
【0013】
両側部の非貫通穴は長円状を呈し、中央部の貫通穴は円形状を呈してもよい。この場合、非貫通穴及び貫通穴のそれぞれの形状を簡易にすることができるので、非貫通穴及び貫通穴の形成を容易に行うことができる。また、非貫通穴又は貫通穴の形状が角形である場合、角(エッジ)の部分から非貫通穴又は貫通穴の裂けが生じる可能性がある。これに対し、非貫通穴が長円状に形成されており、貫通孔が円形状とされている場合、各穴を角を有しないようにすることができるので、上記の裂けが生じる可能性を低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、通気性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、実施形態に係る枕を示す斜視図である。
図2図2は、図1の枕の底面図である。
図3図3は、図1の枕の平面図である。
図4図4は、図1の枕の両側部を拡大した状態を模式的に示す平面図である。
図5図5は、図1の枕の中央部を拡大した状態を模式的に示す平面図である。
図6図6(a)は、図3の両側部の非貫通穴を示す平面図である。図6(b)は、図5の中央部の貫通穴を示す平面図である。
図7図7(a)は、図3のA-A線に沿った断面を模式的に示す線断面図である。図7(b)は、図3のB-B線に沿った断面を模式的に示す線断面図である。
図8図8は、図7(b)を拡大した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下では、図面を参照しながら本開示に係る枕の実施形態について説明する。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0017】
図1は、実施形態に係る枕1を示す斜視図である。図1に示されるように、枕1は、第1方向D1に延びる一対の長辺1b、及び第1方向D1に交差する第2方向D2に延びる一対の短辺1cを有する。枕1は、第1方向D1及び第2方向D2の双方に交差する第3方向D3に厚みを有する。
【0018】
例えば、枕1は、平面視の中央において窪む凹部1hを有し、凹部1hによって使用者の頭部を枕1に納めやすくすることができる。第1方向D1は、例えば、枕1の長手方向であり、第2方向D2は枕1の短手方向である。一例として、第1方向D1及び第2方向D2は互いに直交する。第3方向D3は、例えば、鉛直方向である。
【0019】
枕1は、例えば、汚れ防止のためのカバーに収容されて使用される。枕1は、枕1の第2方向D2の中央であって第1方向D1に延びる基準線L1に対して対称な形状とされている。このように、枕1が基準線L1に対して対称な形状とされていることにより、第2方向D2への向きを反対にして枕1を使用しても、反対にする前と同様に枕1を使用することができる。例えば、凹部1hの第2方向D2の一方側の高さが、凹部1hの第2方向D2の他方側の高さと異なっていてもよい。この場合、使用者の頸部の形に適するように第2方向D2への枕1の向きを変更することができる。
【0020】
枕1は、例えば、枕1の第1方向D1の中央であって第2方向D2に延びる基準線L2に対して対称な形状とされている。枕1は、例えば、平面視において蝶形を呈する。すなわち、枕1の長辺1bは、第1方向D1の両端側に向かうに従って基準線L1から離間する方向に第1方向D1に対して湾曲しながら傾斜している。
【0021】
枕1は、例えば、第1方向D1の中央に位置する中央部2と、中央部2の第1方向D1の両端側のそれぞれに位置する一対の両側部3とを備える。一対の両側部3は、例えば、基準線L2に対して互いに対称な形状とされている。中央部2は、例えば、仰向けとなる使用者の頸部及び後頭部が載せられる部位であり、両側部3は、横向き寝をする使用者の側頭部及び頬が載せられる部位である。
【0022】
図2は、枕1の底面部を示している。図1及び図2に示されるように、枕1は、鉛直上方に向けられる表面層10と、鉛直下方に向けられる底面層20と、表面層10及び底面層20の間に介在する一対の通気弾性層30とを備える。表面層10は、例えば、底面層20の上面全体を覆うと共に底面層20の第1方向D1及び第2方向D2のそれぞれを向く側面26の外側を囲んだ状態で底面層20に貼り付けられている。
【0023】
枕1では、底面層20の底面20b以外の部位が表面層10に囲まれている。表面層10は、例えば、底面層20に接着されている。一例として、表面層10と底面層20との境界部分の全体が接着されていてもよい。この場合、底面層20に対する表面層10のずれをより確実に抑制することができる。
【0024】
表面層10、底面層20及び通気弾性層30は、共に柔軟性素材によって構成されている。一例として、表面層10は軟質ウレタンフォームによって構成されており、底面層20はモールドウレタンフォームによって構成されており、通気弾性層30は無膜ウレタンフォームによって構成されている。
【0025】
図1では、表面層10の鉛直下方に位置する通気弾性層30の図示を破線にて示している。両側部3において通気弾性層30が表面層10と底面層20との間に配置されることにより、寝返り時の通気性を確保できると共に使用者の側頭部及び頬を良好にサポートすることができ、更に頭部を動かしやすくすることができる。枕1は、第1方向D1に沿って並ぶ一対の通気弾性層30を備えており、一対の通気弾性層30のそれぞれは両側部3に配置されている。通気弾性層30は、後に詳述する両側部3の非貫通穴3bの鉛直下方に配置されている。
【0026】
図3は、枕1を示す平面図である。例えば、通気弾性層30は、複数の非貫通穴3bを含む穴形成領域Rの下方に配置されていてもよい。この場合、寝返り時(横向き寝時)における両側部3の通気性を確保することができると共に弾性が高められるので心地良い寝返りを使用者に提供でき、寝返り性の向上に寄与する。通気弾性層30の一部は、後に詳述する表面層10の非貫通穴3bを介して鉛直上方から視認可能とされている。
【0027】
本開示において、「非貫通穴」とは、貫通していない穴を示しており、ある物の表面から窪んでいる有底の穴を示している。「貫通穴」とは、ある方向に貫通している穴を示しており、ある物の一方の表面から当該一方の表面の反対側を向く面まで貫通している穴を示している。
【0028】
一対の通気弾性層30のそれぞれは、例えば、両側部3のみに設けられており、中央部2には設けられていない。すなわち、中央部2は表面層10及び底面層20の2層構造を有し、両側部3は表面層10、通気弾性層30及び底面層20の3層構造を有する。例えば、表面層10、底面層20及び通気弾性層30のうち、表面層10が最も柔らかく、底面層20が最も硬い。底面層20が表面層10よりも硬いことにより、柔らかい表面層10を底面層20によってしっかりとサポートすることができる。通気弾性層30は、高い通気性、及び高い弾性を有する。
【0029】
図2及び図3に示されるように、枕1は、中央部2に形成された貫通穴2bと、両側部3の上面3cに開口する非貫通穴3bと、両側部3の下面3dに開口する下面非貫通穴3fとを有する。例えば、非貫通穴3bは表面層10のみを貫通しており、下面非貫通穴3fは底面層20のみを貫通している。しかしながら、非貫通穴3b及び下面非貫通穴3fは、例えば、シート状の通気弾性層30が介在することによって枕1の全体を貫通していない。
【0030】
中央部2は、複数の貫通穴2bを有する。例えば、各貫通穴2bは表面層10及び底面層20を第3方向D3に貫通している。例えば、複数の貫通穴2bは枕1において放射状に配列されている。本開示において、「放射状」とは、例えば、枕1の平面視における中央1dを起点とする複数の仮想直線のそれぞれに沿って、ある物が並ぶように配置されている状態、又は当該仮想直線に沿ってある物が延びている状態を示している。「中央」は、中心を含む一定の領域を示している。
【0031】
中央部2の貫通穴2bは、中央1dに位置する複数の貫通穴2bのそれぞれから4方向のそれぞれに放射状に連続して配置されている。貫通穴2bの形状は、例えば、円形状である。中央部2の貫通穴2bの数は、例えば、両側部3の非貫通穴3bの数よりも多い。これにより、中央部2における使用者の後頭部の沈み込みを適度に行えると共に良好な通気性を確保できる。貫通穴2bの数は、一例として、26である。
【0032】
例えば、中央1dから延びる複数の放射線L3のそれぞれに沿って複数の貫通穴2bが配置されている。中央部2は、中央1dから見て、第1方向D1の一方側、第1方向D1の他方側、第2方向D2の一方側、及び第2方向D2の他方側、のそれぞれに複数の貫通穴2bを含む貫通穴群2cを有する。
【0033】
中央部2は、例えば、4つの貫通穴群2cを有し、4つの貫通穴群2cは平面視において中央1dの上下左右のそれぞれに配置されている。貫通穴群2cは、例えば、3つの貫通穴2bを含む。当該3つの貫通穴2bは、例えば、三角形状を成すように配列されており、3つの角のうちの1つが中央1d側を向いている。
【0034】
非貫通穴3bは、例えば、両側部3において放射状に配列されている。非貫通穴3bの数は、一例として、22である。例えば、各非貫通穴3bは中央1dの反対側に長く延びる長円状とされている。非貫通穴3bは、一例として、基準線L1に沿って延びる第1延在穴3hと、基準線L1に対して斜めに延びる第2延在穴3jとを含む。
【0035】
一例として、枕1は、一対の第1延在穴3hを有し、一対の第1延在穴3hは基準線L2に対して互いに対称となるように配置されている。両側部3は、複数の第2延在穴3jを含む複数の延在穴群3kを有していてもよい。各延在穴群3kには、例えば、互いに同一の方向に延びる複数の第2延在穴3jが含まれている。
【0036】
例えば、各延在穴群3kは、第2方向D2の中央側に位置する3個の第2延在穴3jと、両側部3の第2方向D2の端部側に位置する2個の第2延在穴3jとを有する。この場合、各延在穴群3kの第2延在穴3jの数は5である。また、延在穴群3kにおいて複数の第2延在穴3jがコの字状に配列されていてもよい。
【0037】
下面非貫通穴3fは、底面層20の中央1fから延びる複数の放射線L4のそれぞれに沿って並ぶように配列されている。下面非貫通穴3fの形状は、一例として、円形状である。複数の放射線L4は、例えば、第1方向D1に沿って延びる2本の放射線L4、第1方向D1から第2方向D2の一方側に斜めに延びる2本の放射線L4、及び、第1方向D1から第2方向D2の他方側に斜めに延びる2本の放射線L4、を含んでいる。各放射線L4に沿って、例えば、3つの下面非貫通穴3fが形成されている。下面非貫通穴3fの数は、例えば、18である。
【0038】
表面層10は、プロファイル加工によって形成されている。これにより、体圧分散性が高い表面層10とされている。表面層10は、縦横に並ぶ複数の凹凸を有する。図4は、両側部3における表面層10の凹凸を模式的に示す図である。図5は、中央部2における表面層10の凹凸を模式的に示す図である。図4及び図5では、上方に突出する突出量が多い(高い)凸部を濃いグレーで示しており、突出量が少ない(低い)凸部を薄いグレーで示している。
【0039】
表面層10の凹凸は、例えば、2次元正弦波状に配列されている。図4に示されるように、両側部3は、鉛直上方に向けられる第1両側凸部11と、鉛直上方に向けられると共に第1両側凸部11より高さが低い第2両側凸部12と、鉛直下方に窪む両側凹部13とを有する。
【0040】
第1両側凸部11、第2両側凸部12及び両側凹部13のそれぞれは、例えば、格子状に配列されている。長方形状に配列された4つの第1両側凸部11の間に第2両側凸部12が配置され、長方形状に配列された4つの第2両側凸部12の間に第1両側凸部11が配置されている。
【0041】
例えば、平面視における第1両側凸部11の幅(一例として格子の一辺の長さ)は、平面視における第2両側凸部12の幅よりも広い。すなわち、第1両側凸部11の高さ及び幅は、第2両側凸部12の高さ及び幅よりも大きい。このように、両側部3は、大小2種類の凸部を有する。なお、両側凹部13も、第1両側凸部11及び第2両側凸部12と同様、大小2種類の凹部を含んでいる。
【0042】
前述した両側部3の非貫通穴3bは、2つの第1両側凸部11の間であって且つ2つの第2両側凸部12の間に配置されている。非貫通穴3bは両側凹部13に配置されていてもよい。例えば、第2方向D2に沿って並ぶ2つの第1両側凸部11の間であって、第1方向D1に沿って並ぶ2つの第2両側凸部12の間に非貫通穴3bが配置されている。
【0043】
図5は、説明の容易のため、中央部2の貫通穴2bの図示を省略している。図5に示されるように、中央部2は、例えば、両側部3より細かいプロファイルとされている。これにより、使用者の後頭部が当たる中央部2を柔らかくし、後頭部を適度に沈み込ませて中央部2と頸椎部分との隙間を無くして自然な寝姿勢を維持することが可能となる。
【0044】
中央部2は、鉛直上方に向けられる中央側凸部21と、鉛直下方に窪む中央側凹部22とを有する。中央側凸部21及び中央側凹部22のそれぞれは、格子状に配列されている。十字状に配置された4つの中央側凸部21の間に中央側凹部22が配置されており、十字状に配置された4つの中央側凹部22の間に中央側凸部21が配置されている。
【0045】
平面視において、例えば、中央側凸部21の幅は、中央側凹部22の幅と同一であってもよい。中央側凸部21の幅は、例えば、前述した第1両側凸部11の幅より狭くてもよいし、第2両側凸部12の幅と同一であってもよい。同様に、中央側凸部21の高さは、第1両側凸部11の高さより低くてもよいし、第2両側凸部12の高さと同一であってもよい。以上のように、中央部2は、例えば1種類のみの凹凸部を含んでいる。
【0046】
図6(a)は、両側部3の非貫通穴3bを拡大した図である。図6(b)は、中央部2の貫通穴2bを拡大した図である。図6(a)及び図6(b)に示されるように、例えば、長円状の非貫通穴3bの面積は、円形状の貫通穴2bの面積よりも広い。例えば、非貫通穴3bの長手方向の長さAは、貫通穴2bの直径Cよりも長い。一例として、非貫通穴3bの短手方向の幅Bは、貫通穴2bの直径Cと同一である。前述した下面非貫通穴3fの直径は、貫通穴2bの直径Cより大きくてもよいし、貫通穴2bの直径Cと同一であってもよい。
【0047】
長さAの値は、例えば、10mm以上且つ50mm以下であってもよいし、15mm以上且つ30mm以下であってもよいし、一例として20mmである。幅Bの値は、例えば、2mm以上且つ20mm以下であってもよいし、5mm以上且つ15mm以下であってもよいし、一例として8mmである。
【0048】
図7(a)は、枕1の中央部2を示す図3のA-A線断面図である。図7(b)は、枕1の両側部3を示す図3のB-B線断面図である。図7(a)及び図7(b)では表面層10の形状を簡略化して示している。図7(a)及び図7(b)に示されるように、両側部3の高さH1は、中央部2の高さH2よりも高い。例えば、中央部2から両側部3に向かうに従って徐々に高さが高くなっていてもよい。
【0049】
このように、両側部3の高さH1が中央部2の高さH2より高いことにより、使用者の頭部が中央部2の凹部1hに収まったときに使用者の側頭部及び頬に対する両側部3のフィット感を良好にすることができ、横向き寝時における両側部3の高さH1を確保して頭部と肩との距離を保持することが可能となる。
【0050】
前述したように、中央部2の貫通穴2bは、枕1を第3方向D3に貫通している。これに対し、両側部3の非貫通穴3b及び下面非貫通穴3fのそれぞれは、枕1を第3方向D3に貫通していない。例えば、第3方向D3から見たときにおける非貫通穴3bの位置は、第3方向D3から見たときにおける下面非貫通穴3fの位置と異なっている。
【0051】
図8は、図7(b)の表面層10、底面層20及び通気弾性層30を拡大した断面図である。図8に示されるように、例えば、底面層20は、表面に形成された薄膜状のフィルム23と、フィルム23の内部に位置するウレタン部24とを有する。ウレタン部24は、例えば、ウレタンフォームによって構成された部位を示している。底面層20の通気弾性層30との接触面25にはフィルム23が形成されている。
【0052】
底面層20の下面非貫通穴3fは、ウレタン部24が露出する内壁面3pを有する。内壁面3pは、フィルム23が形成されていない部位である。フィルム23は、ウレタン部24と比較して通気性が低い材料によって構成されている。従って、両側部3では、底面層20の下面非貫通穴3f、通気弾性層30、及び表面層10の非貫通穴3bを通る空気流路Eが形成される。
【0053】
よって、使用者が横向き寝をして両側部3が荷重を受けると、表面層10、通気弾性層30及び底面層20の凹みと共に空気流路Eを流れる空気によってシュッという音が発生する。例えば、本実施形態に係る枕1は、高い通気性及び弾性を有すると共に、音が発生する枕である。
【0054】
次に、本実施形態に係る枕1から得られる作用効果について説明する。図1に示されるように、枕1は、第1方向D1の中央に位置する中央部2と、中央部2の第1方向D1の両側に設けられる両側部3とを有し、中央部2及び両側部3のそれぞれは柔軟性素材によって構成されている。従って、仰向け寝をする使用者の頭部を中央部2で柔らかく支えることができると共に、寝返りを打って横向き寝をする使用者の側頭部及び頬を両側部3のそれぞれで柔らかく支えることができる。
【0055】
両側部3のそれぞれには第3方向D3に窪む非貫通穴3bが形成されている。よって、横向き寝をした使用者の側頭部及び頬の過度な沈み込みを抑制すると共に非貫通穴3bに空気が流れ込む(例えば、前述した空気流路Eに空気が流れ込む)ことによって通気性を高めることができる。
【0056】
従って、高弾性、及び通気性の向上を実現できるので、心地良い横向き寝を実現させることができ寝返り性を高めることができる。中央部2には、枕1を第3方向D3に貫通する貫通穴2bが形成されている。従って、仰向け寝をする使用者の後頭部が載せられる中央部2に貫通穴2bが形成されていることにより、仰向き寝をする使用者の後頭部に対する枕1の通気性を高めることができる。
【0057】
図7(a)及び図7(b)に示されるように、中央部2は、鉛直上方に向けられる表面層10と、表面層10の下側に位置する底面層20とを含んでおり、両側部3は、表面層10と、表面層10の下側に設けられる通気弾性層30と、通気弾性層30の下側に設けられる底面層20とを含んでいてもよい。この場合、中央部2が表面層10及び底面層20を有する2層構造とされており、両側部3が表面層10、通気弾性層30及び底面層20を有する3層構造とされている。
【0058】
従って、中央部2においてより高い通気性を維持すると共に、両側部3は通気弾性層30を更に備えることによって高い通気性及び高い弾性を発揮できる。よって、両側部3では、横向き寝時における使用者の頬等に対する弾性を高めて頬等をしっかりと支えることができるので、寝返り性をより向上させることができる。
【0059】
図4及び図5に示されるように、両側部3は、鉛直上方に向けられる第1両側凸部11を含んでおり、中央部2は、鉛直上方に向けられる中央側凸部21を含んでおり、第1両側凸部11の高さは、中央側凸部21の高さよりも高くてもよい。この場合、両側部3の第1両側凸部11の高さが中央部2の中央側凸部21の高さよりも高いことにより、横向き寝時における使用者の頬等をよりしっかりと支えることができる。従って、寝返り性の更なる向上に寄与する。
【0060】
両側部3は、鉛直上方に向けられる第2両側凸部12を含んでおり、第2両側凸部12の高さは、第1両側凸部11の高さよりも低くてもよい。この場合、両側部3は、第1両側凸部11と第2両側凸部12の2種類の凸部を含んでおり、第2両側凸部12の高さが第1両側凸部11の高さよりも低い。従って、横向き寝時において、使用者の頬等は第1両側凸部11及び第2両側凸部12に対し2段階にわたって接触する。よって、互いに高さが異なる第1両側凸部11及び第2両側凸部12が使用者の頬等に当たることにより、寝返り性を一層向上させることができる。
【0061】
図6に示されるように、両側部3の非貫通穴3bの面積は、中央部2の貫通穴2bの面積よりも広くてもよい。この場合、両側部3の非貫通穴3bの面積が中央部2の貫通穴2bの面積より広いことにより、両側部3における通気性をより向上させることができる。従って、両側部3において高い寝返り性を実現しつつ更に高い通気性を発揮することができる。
【0062】
両側部3の非貫通穴3bは長円状を呈し、中央部2の貫通穴2bは円形状を呈してもよい。この場合、非貫通穴3b及び貫通穴2bのそれぞれの形状を簡易にすることができるので、非貫通穴3b及び貫通穴2bの形成を容易に行うことができる。また、非貫通穴又は貫通穴の形状が角形である場合、角(エッジ)の部分から非貫通穴又は貫通穴に裂けが生じる可能性がある。これに対し、非貫通穴3bが長円状に形成されており、貫通穴2bが円形状とされている場合、各穴を角を有しないようにすることができるので、上記の裂けが生じる可能性を低減することができる。
【0063】
本実施形態において、枕1は、放射状に配列された複数の貫通穴2bと、放射状に配列にされた複数の非貫通穴3bとを有する。従って、枕1に仰向き寝をしている使用者が寝返りを打つときに中央1dに近い貫通穴2b及び非貫通穴3bから遠い貫通穴2b及び非貫通穴3bに向かって徐々に頭部の荷重をかけることができる。その結果、放射状に並ぶ複数の貫通穴2b及び複数の非貫通穴3bのそれぞれから徐々に通気させることができるので、更に通気性が高い枕1とされている。
【0064】
以上、本開示に係る枕の実施形態について説明した。しかしながら、本開示に係る枕は、前述した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲において変形されたものであってもよい。すなわち、枕の各部の形状、大きさ、数、材料及び配置態様は、上記の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0065】
例えば、前述の実施形態では、蝶形を呈する枕1について説明した。しかしながら、枕の外形は、例えば直方体状等、蝶形以外の形状であってもよい。また、前述の実施形態では、2次元正弦波状の凹凸を有する枕1について説明した。しかしながら、枕の凹凸の形状は、2次元正弦波状に限られず適宜変更可能である。また、凹凸の大きさ、数及び配置態様も前述の実施形態に限られず適宜変更可能である。更に、凹凸を有しない枕であってもよい。
【0066】
また、前述の実施形態では、表面層10は軟質ウレタンフォームによって構成されており、底面層20はモールドウレタンフォームによって構成されており、通気弾性層30は無膜ウレタンフォームによって構成されている枕1について例示した。しかしながら、表面層、底面層及び通気弾性層の材料は上記の例に限られず適宜変更可能である。また、表面層、底面層及び通気弾性層の少なくともいずれかが省略された枕であってもよい。
【0067】
また、前述の実施形態では、長円状の非貫通穴3b、及び円形状の貫通穴2bを有する枕1について例示した。しかしながら、非貫通穴及び貫通穴の形状は上記の例に限られず適宜変更可能である。更に、非貫通穴及び貫通穴の大きさ、数及び配置態様も前述の実施形態に限られず適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0068】
1…枕、1b…長辺、1c…短辺、1d,1f…中央、1h…凹部、2…中央部、2b…貫通穴、2c…貫通穴群、3…両側部、3b…非貫通穴、3c…上面、3d…下面、3f…下面非貫通穴、3h…第1延在穴、3j…第2延在穴、3k…延在穴群、3p…内壁面、10…表面層、11…第1両側凸部、12…第2両側凸部、13…両側凹部、20…底面層、20b…底面、21…中央側凸部、22…中央側凹部、23…フィルム、24…ウレタン部、25…接触面、26…側面、30…通気弾性層、B…幅、C…直径、D1…第1方向、D2…第2方向、D3…第3方向、E…空気流路、L1,L2…基準線、L3,L4…放射線、R…穴形成領域。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8