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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】活性炭
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/30 20170101AFI20240130BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20240130BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20240130BHJP
   B01D 53/02 20060101ALI20240130BHJP
   C01B 32/306 20170101ALI20240130BHJP
【FI】
C01B32/30
B01J20/20 B
B01J20/28 Z
B01D53/02
C01B32/306
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020042335
(22)【出願日】2020-03-11
(62)【分割の表示】P 2019563309の分割
【原出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2020111505
(43)【公開日】2020-07-27
【審査請求日】2022-06-10
(31)【優先権主張番号】P 2018116189
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】391034167
【氏名又は名称】株式会社アドール
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591147694
【氏名又は名称】大阪ガスケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】中野 智康
(72)【発明者】
【氏名】清水 弘和
(72)【発明者】
【氏名】堺 啓二
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-182511(JP,A)
【文献】特開2017-179616(JP,A)
【文献】特開2017-178635(JP,A)
【文献】特開平10-328563(JP,A)
【文献】特開2005-001968(JP,A)
【文献】特開2018-039685(JP,A)
【文献】国際公開第2017/213057(WO,A1)
【文献】特開2000-203823(JP,A)
【文献】特開2000-157863(JP,A)
【文献】特開平08-281099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
B01J 20/20-20/28
B01J 20/30-20/34
B01D 53/02
D01F 9/08-9/32
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.4cc/g以上、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.2cc/g以上、且つ、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積C(cc/g)に対する、前記細孔容積B(cc/g)の割合(細孔容積B/細孔容積C)が0.880~0.985である、活性炭であって、
ジクロロメタン平衡吸着量が40質量%以上である、活性炭。
【請求項2】
前記細孔容積C(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(細孔容積A/細孔容積C)が0.5~0.94である、請求項1に記載の活性炭。
【請求項3】
前記細孔容積C(cc/g)に対する前記細孔容積B(cc/g)の割合(細孔容積B/細孔容積C)が0.90~0.99である、請求項1又は2に記載の活性炭。
【請求項4】
前記活性炭が繊維状活性炭である、請求項1~3のいずれか1項に記載の活性炭。
【請求項5】
前記ジクロロメタン平衡吸着量が45質量%以上である、請求項1~4のいずれか1項に記載の活性炭。
【請求項6】
気相中のジクロロメタンを吸着させるために用いられる、請求項1~5のいずれか1項に記載の活性炭。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載の活性炭を含む、ジクロロメタンの吸着剤。
【請求項8】
請求項1~6のいずれかに記載の活性炭を用いる、ジクロロメタンの吸着除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性炭及びその製造方法に関し、特に気相中のジクロロメタンを吸着させるのに好適な、活性炭及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、気相中又は液相中に存在する成分を活性炭によって吸着させ、これらの成分を除去する吸着除去技術が知られている。また、従来、活性炭による吸着除去技術は、有機溶剤を含むガスからの溶剤回収にも用いられている。
【0003】
ジクロロメタン等の有機化合物に対し特に優れた吸着性能を有する活性炭繊維として、例えば、BET比表面積が700~1500m2/g、全細孔容積が0.3~0.7cc/g、細孔直径1nm以下のマイクロポア細孔(ミクロ孔)容積が全マイクロポア細孔容積の95%以上であり、かつ、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が15%以下である、活性炭繊維が知られている(例えば、特許文献1参照)。該文献には、BET比表面積が700m2/g未満である場合には、吸着面積が小さすぎて、沸点が-30~70℃の範囲内のたとえばジクロロメタンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合があり、1500m2/gを超える場合、細孔が大きくなるため、沸点が-30~70℃の範囲内のたとえばジクロロメタンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合があることが記載されている。また、該文献には、細孔直径1nm以下のミクロ孔容積が全ミクロ孔容積の95%未満である場合には、細孔が大きくなりすぎて、沸点が-30~70℃の範囲内のたとえばジクロロメタンなどの有機化合物が十分に吸着されないという不具合があることが記載されている。さらに、該文献には、温度25℃、相対湿度52%における水分吸着率が15%を超える場合には、細孔周辺に先に水分子が吸着されるため、その細孔には有機化合物の吸着量が吸着されず、その分低下してしまうという不具合があることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-106051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された活性炭において、ジクロロメタンの平衡吸着量が不十分であるという問題があった。本発明は、上記問題を解決し、ジクロロメタンの平衡吸着量に優れた、活性炭の提供を主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明者等はジクロロメタン等の低沸点有機化合物の吸着に適する細孔構造の実現を検討した。具体的には、ジクロロメタン等の低沸点有機化合物の吸着に適すると考えられる細孔直径1nm以下のミクロ孔容量を維持或いは増大し、なお且つ共存する水分の影響を受けにくいよう、これより大きな細孔を適量備えさせることが有効であると考えた。
【0007】
また、このような比較的大きな細孔を適度に発達させることは、ジクロロメタン分子の細孔内拡散を補助する役割を果たすとも考えられ、平衡吸着だけではなく、通気処理においても有効であると考えた。
【0008】
そこで、本発明者等がさらに鋭意検討した結果、活性炭前駆体としてイットリウム化合物及び/又はバナジウム化合物を特定量含有させたものとし、賦活ガスを二酸化炭素として賦活をおこなうことにより、初めて、1nm以下の細孔の容積を維持しつつ、1nmを超える比較的大きな細孔径の別の細孔を適量備えさせることに成功した。さらに、検討を重ね、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)及び0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)を特定範囲とし、且つ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、上記1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Bの割合(B/C)を特定範囲となるように制御し得られる活性炭が、ジクロロメタンの平衡吸着量に優れることを見出した。
【0009】
本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0010】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.4cc/g以上、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.2cc/g以上、且つ、
QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.880~0.985である、活性炭。
項2. 前記細孔容積C(cc/g)に対する、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積A(cc/g)の割合(細孔容積A/細孔容積C)が0.5~0.94である、項1に記載の活性炭。
項3. 前記細孔容積Cに対する前記細孔容積Bの割合(細孔容積B/細孔容積C)が0.90~0.99である、項1又は2に記載の活性炭。
項4. 前記活性炭が繊維状活性炭である、項1~3のいずれか1項に記載の活性炭。
項5. ジクロロメタン平衡吸着量が40質量%以上である、項1~4のいずれか1項に記載の活性炭。
項6. 気相中のジクロロメタンを吸着させるために用いられる、項1~5のいずれか1項に記載の活性炭。
項7. 項1~6のいずれかに記載の活性炭を含む、ジクロロメタンの吸着剤。
項8. 項1~6のいずれかに記載の活性炭を用いる、ジクロロメタンの吸着除去方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の活性炭によれば、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.4cc/g以上、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.2cc/g以上、且つ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.880~0.985であることから、ジクロロメタンの平衡吸着量に優れたものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図2】実施例2の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図3】実施例3の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図4】実施例4の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図5】実施例5の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図6】実施例6の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図7】実施例7の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図8】実施例8の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図9】実施例9の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図10】実施例10の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図11】実施例11の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図12】実施例12の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図13】実施例13の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図14】実施例14の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図15】実施例15の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図16】実施例16の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図17】実施例17の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図18】実施例18の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図19】比較例1の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図20】比較例2の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図21】比較例3の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図22】比較例4の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図23】比較例5の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図24】比較例6の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
図25】比較例7の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の活性炭について詳細に説明する。
【0014】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.4cc/g以上、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.2cc/g以上、且つ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.880~0.985である。
【0015】
本明細書おいて、細孔容積とは、QSDFT法(急冷固体密度汎関数法)によって算出される細孔容積をいう。QSDFT法とは、幾何学的・化学的に不規則なミクロポーラス・メソポーラスな炭素の細孔径解析を対象とした、約0.5nm~約40nmまでの細孔径分布の計算ができる解析手法である。QSDFT法では、細孔表面の粗さと不均一性による影響が明瞭に考慮されているため、細孔径分布解析の正確さが大幅に向上した手法である。本発明においては、Quantachrome社製「AUTOSORB-1-MP」を用いて窒素吸着等温線の測定、及びQSDFT法による細孔径分布解析をおこなう。77Kの温度において測定した窒素の脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔径分布を計算することで、特定の細孔径範囲の細孔容積を算出することができる。
【0016】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.4cc/g以上であり、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、当該細孔容積Bは0.525cc/g以上が好ましく、0.535cc/g以上がより好ましい。当該細孔容積Bの上限値については特に制限されないが、例えば、1.0cc/g以下が挙げられ、0.7cc/g以下が好ましく挙げられる。
【0017】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以下の範囲の細孔径の細孔容積は、0.10cc/g以上0.40cc/g以下が挙げられ、好ましくは0.10cc/g以上0.28cc/g以下、より好ましくは0.15cc/g以上0.25cc/g以下、さらに好ましくは0.17cc/g以上0.20cc/g以下、特に好ましくは0.17cc/g以上0.195cc/g以下、が挙げられる。また、上記0.65nm以下の範囲の細孔径の細孔容積は、0.10cc/g以上0.40cc/g以下(ただし、0.15cc/g以上0.166以下の範囲を除く。)、0.10cc/g以上0.28cc/g以下(ただし、0.15cc/g以上0.166以下の範囲を除く。)、0.170cc/g以上0.25cc/g以下、又は0.170cc/g以上0.195cc/g以下、とすることもできる。
【0018】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積は、0.20cc/g以上0.50cc/g以下が挙げられ、好ましくは0.20cc/g以上0.40cc/g以下、より好ましくは0.21cc/g以上0.40cc/g以下が挙げられる。
【0019】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Aは、0.35cc/g以上0.55cc/g以下が挙げられ、好ましくは0.35cc/g以上0.48cc/g以下、より好ましくは0.40cc/g以上0.48cc/g以下が挙げられる。
【0020】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cは、0.25cc/g以上0.85cc/g以下が挙げられ、好ましくは0.45cc/g以上0.80cc/g以下、より好ましくは0.45cc/g以上0.80cc/g以下、特に好ましくは0.555cc/g以上0.77cc/g以下が挙げられる。
【0021】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以上の範囲の細孔径の細孔容積は、0.10cc/g以下が挙げられ、好ましくは0.05cc/g以下、より好ましくは0.001cc/g以上0.05cc/g以下が挙げられる。
【0022】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)は、0.2cc/g以上であり、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、当該細孔容積Eは、0.21cc/g以上が好ましく、0.23cc/g以上がより好ましい。当該細孔容積Eの上限値については特に制限されないが、例えば、0.4cc/g以下が挙げられ、0.33cc/g以下が好ましく挙げられる。
【0023】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積は、0.01cc/g以上0.3cc/g以下が挙げられ、好ましくは0.04cc/g以上0.3cc/g以下、より好ましくは0.04cc/g以上0.3cc/g以下、さらに好ましくは0.08cc/g以上0.25cc/g以下、特に好ましくは0.125cc/g以上0.25cc/g以下が挙げられる。
【0024】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.0nm以上2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積は、0.01cc/g以上0.35cc/g以下が挙げられ、好ましくは0.05cc/g以上0.35cc/g以下、より好ましくは0.10cc/g以上0.35cc/g以下、特に好ましくは0.21cc/g以上0.35cc/g以下が挙げられる。
【0025】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積は、0.05cc/g以上0.18cc/g以下が好ましく、0.1cc/g以上0.15cc/g以下がより好ましい。
【0026】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.8nm以上1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積は、0.08cc/g以上0.60cc/g以下が挙げられ、好ましくは0.12cc/g以上0.50cc/g以下、より好ましくは0.18cc/g以上0.50cc/g以下、特に好ましくは0.20cc/g以上0.50cc/g以下が挙げられる。
【0027】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以上2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Dは、0.01cc/g以上0.1cc/g以下が好ましく、0.013cc/g以上0.065cc/g以下がより好ましい。
【0028】
本発明の活性炭は、活性炭の比表面積(窒素を被吸着物質として用いたBET法(1点法)により測定される値)としては、1000~2000m2/g程度が挙げられ、好ましくは1300~1900m2/g程度、より好ましくは1400~1900m2/g程度が挙げられる。また、QSDFT法によって算出される活性炭の全細孔容積としては、0.35~1.00cc/g程度が挙げられ、好ましくは0.40~1.00cc/g程度、より好ましくは0.50~0.80cc/g程度、さらに好ましくは0.55~0.80cc/g程度が挙げられる。
【0029】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.880~0.985であり、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、当該割合は、0.880~0.965が好ましい。上記B/Cの上限値を設定していることは、本発明の活性炭が、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以上2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔が適度に分布することが必要であることを示している。当該1.5nm以上2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔が被吸着物質の細孔内拡散を補助し、これらをB/Cが特定範囲となるようにすることにより、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させると考えられる。
【0030】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、前記細孔容積Aと前記細孔容積Bの比(細孔容積A/細孔容積B)は、0.600~0.900が挙げられ、0.600~0.830が好ましく挙げられる。
【0031】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、前記細孔容積Aと前記細孔容積Cの比(細孔容積A/細孔容積C)は、0.560~0.890が挙げられ、0.560~0.820が好ましく挙げられ、0.560~0.795がより好ましく挙げられる。
【0032】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、前記細孔容積Aと前記細孔容積Dの比(細孔容積D/細孔容積A)は、0.010~0.220が挙げられ、0.030~0.220が好ましく挙げられ、0.05~0.220がより好ましく挙げられる。
【0033】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、前記全細孔容積に対する前記細孔容積Aの割合(細孔容積A/全細孔容積)は、0.530~0.900が挙げられ、0.530~0.800が好ましく挙げられ、0.530~0.789がより好ましく挙げられる。
【0034】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、前記全細孔容積に対する前記細孔容積Bの割合(細孔容積B/全細孔容積)は、0.800~0.990が挙げられ、0.800~0.970が好ましく挙げられ、0.800~0.955がより好ましく挙げられる。
【0035】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、前記全細孔容積に対する前記細孔容積Cの割合(細孔容積C/全細孔容積)は、0.930~1.000が挙げられ、0.930~0.998が好ましく挙げられる。
【0036】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、前記全細孔容積に対する前記細孔容積Dの割合(細孔容積D/全細孔容積)は、0.010~0.130が挙げられ、0.030~0.130が好ましく挙げられ、0.035~0.130がより好ましく挙げられる。
【0037】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、前記全細孔容積に対するQSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以下の範囲の細孔径の細孔容積の割合(0.65nm以下の範囲の細孔径の細孔容積/全細孔容積)は、0.120~0.520が挙げられる。
【0038】
本発明の活性炭は、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる観点から、前記全細孔容積に対するQSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積の割合(0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積/全細孔容積)は、0.200~0.800が挙げられ、0.350~0.650が好ましく挙げられ、0.200~0.590がより好ましく挙げられる。
【0039】
後述の通り、本発明の製造方法において、活性炭前駆体の主原料(すなわち、本発明の活性炭の由来となる原料)としては、特に制限されず、例えば、不融化或いは炭素化した有機質材料、フェノール樹脂等の不融性樹脂等が挙げられ、該有機質材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ピッチ、ポリビニルアルコール、セルロース等が挙げられる。これらの中でも、本発明の活性炭は、ピッチに由来することが好ましく、石炭ピッチに由来することがより好ましい。
【0040】
本発明の活性炭は、上記特定の細孔径分布とするために、活性炭前駆体としてイットリウム化合物及び/又はバナジウム化合物を含むものを用いる。そして、本発明の活性炭は、活性炭前駆体に含まれるイットリウム化合物及び/又はバナジウム化合物に由来する、イットリウム単体、イットリウム化合物、バナジウム単体及びバナジウム化合物からなる群より選ばれる1種以上を含むものであってもよい。本発明の活性炭の総質量における、該活性炭に含有される、イットリウム単体、イットリウム化合物、バナジウム単体及びバナジウム化合物の質量の割合(合計)としては、例えば、0.001~5.0質量%が挙げられ、0.001~3.0質量%が好ましく挙げられ、0.001~0.35質量%が特に好ましく挙げられる。上記割合は、ICP発光分光分析装置(Varian社製型式715-ES)により測定されるイットリウム元素換算及びバナジウム元素換算の割合(すなわち、イットリウム及びバナジウムの含有量)である。中でも、本発明の活性炭は、イットリウム化合物及びバナジウム化合物を含むものとすると、バナジウムの効果により1nm以下のミクロ孔容量を大きく維持し、尚且つイットリウムの効果により、やや大きな細孔も適度に分布させることができ、これらのやや大きな細孔が被吸着物質の細孔内拡散を補助するため、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる点で好ましい。この場合、本発明の活性炭の総質量における、該活性炭に含有される、イットリウム単体及びイットリウム化合物の含有量の合計と、バナジウム単体及びバナジウム化合物の含有量の合計との比(バナジウム単体及びバナジウム化合物の含有量の合計/イットリウム単体及びイットリウム化合物の含有量の合計)としては、4~16が挙げられる。
【0041】
本発明の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.4cc/g以上、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.2cc/g以上、且つ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.880~0.985であることから、ジクロロメタンの平衡吸着量に優れる。具体的に、本発明の活性炭が備えるジクロロメタン平衡吸着量(質量%)としては、例えば、40質量%以上が挙げられ、好ましくは45質量%以上が挙げられ、より好ましくは50質量%以上が挙げられる。上限値としては特に限定されないが、例えば、70質量%以下、又は60質量%以下が挙げられる。なお、本発明において、ジクロロメタン吸着性能は、以下のように測定されるものである。すなわち、活性炭サンプルを110℃の乾燥機で1晩乾燥し、デシケーターで冷却後、速やかに3.14gを量りとり試験カラム(Φ20×H100)に充填する。次に、濃度10000ppm、25℃に調整したジクロロメタンガスを流量2.0L/minで試験カラムに通気し、吸着操作を行う。活性炭の質量増加が止まった時点を平衡状態とし、平衡吸着量を算出する。
平衡吸着量(%)=質量増加分/活性炭質量×100
【0042】
本発明の活性炭の形態は特に限定されないが、例えば、粒状活性炭、粉末状活性炭、繊維状活性炭等が挙げられる。ジクロロメタンの吸着速度をより向上させるという観点から繊維状である繊維状活性炭とすることがより好ましい。繊維状活性炭の平均繊維径としては、好ましくは30μm以下、より好ましくは5~20μm程度が挙げられる。なお、本発明における平均繊維径は、画像処理繊維径測定装置(JIS K 1477に準拠)により測定した値である。また、粒状活性炭及び粉末状活性炭の粒径としては、レーザー回折/散乱式法で測定した積算体積百分率D50が0.01~5mmが挙げられる。
【0043】
本発明の活性炭は、気相中または液相中のいずれでも使用することができる。特に、本発明の活性炭は、気相中のジクロロメタンを吸着させるために好適に用いられる。
【0044】
次に、本発明の活性炭の製造方法について詳細に説明する。
【0045】
本発明の活性炭の製造方法は、イットリウム化合物及び/又はバナジウム化合物を含む活性炭前駆体を、CO2濃度が90容積%以上の雰囲気下、温度600~1200℃で賦活する工程を含む。これにより、初めて、1nm以下の細孔の容積、特に0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E及び1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)を維持しつつ、さらに比較的大きい細孔径1.5nm以上2.0nm以下の細孔を適量備えさせることができ、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)を特定範囲とすることができ、発明の活性炭を得ることができる。一方、賦活ガスを従来広く用いられている水蒸気とした場合は、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E及び1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)を維持しつつ、さらに比較的大きい細孔径1.5nm以上2.0nm以下の細孔を適量備えさせることが困難となる。また、活性炭前駆体がイットリウム化合物及び/又はバナジウム化合物を含まないものとした場合も、上記本発明の活性炭が備える細孔分布とすることが困難となる。
【0046】
本発明の活性炭の製造方法において、活性炭前駆体の主原料としては、特に制限されない。例えば、不融化又は炭素化した有機質材料、フェノール樹脂等の不融性樹脂等が挙げられ、該有機質材料としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ピッチ、ポリビニルアルコール、セルロース等が挙げられる。炭素化時の理論炭素化収率の点で、ピッチが好ましく、ピッチの中でも特に石炭ピッチが好ましい。
【0047】
本発明の活性炭の製造方法において、活性炭前駆体のイットリウム及びバナジウムの含有量の合計としては、好ましくは0.01~5.0質量%、より好ましくは0.03~1.0質量%、さらに好ましくは0.03~0.3質量%が挙げられる。イットリウムは、イットリウム単体或いはイットリウム化合物を原料と混合することにより含有させることができる。イットリウム化合物としては、イットリウムを構成金属元素とする、金属酸化物、金属水酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩等の無機金属化合物、酢酸等の有機酸と金属との塩、有機金属化合物などが挙げられる。有機金属化合物としては、金属アセチルアセトナート、芳香族金属化合物等が挙げられる。また、バナジウムは、バナジウム単体或いはバナジウム化合物を原料と混合することにより含有させることができる。バナジウム化合物としては、バナジウムを構成金属元素とする、金属酸化物、金属水酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩等の無機金属化合物、酢酸等の有機酸と金属との塩、有機金属化合物などが挙げられる。イットリウム化合物及び/又はバナジウム化合物において、中でも、活性炭前駆体中に金属を高分散させる観点から、有機金属化合物とすることが好ましく、有機金属化合物としては、β-ジケトン型化合物を配位子とする金属錯体がより好ましく挙げられる。β-ジケトン型化合物としては、下記式(1)~(3)に示す構造を有するものが挙げられ、具体的にはアセチルアセトン等が挙げられる。なお、本発明の活性炭において、さらにイットリウム単体及び/又はイットリウム化合物をさらに含むものとする場合は、バナジウム単体或いはバナジウム化合物と、イットリウム単体及び/又はイットリウム化合物を、活性炭前駆体の主原料と混合することにより含有させればよい。また、活性炭前駆体の主原料に混合するイットリウム化合物としては、バナジウム化合物と同様、イットリウムを構成金属元素とする、金属酸化物、金属水酸化物、金属ハロゲン化物、金属硫酸塩等の無機金属化合物、酢酸等の有機酸と金属との塩、有機金属化合物などが挙げられる。有機金属化合物としては、金属アセチルアセトナート、芳香族金属化合物等が挙げられる。中でも、活性炭前駆体中に金属を高分散させる観点から、有機金属化合物とすることが好ましく、有機金属化合物としては、β-ジケトン型化合物を配位子とする金属錯体がより好ましく挙げられる。β-ジケトン型化合物としては、下記式(1)~(3)に示す構造を有するものが挙げられ、具体的にはアセチルアセトン等が挙げられる。
【0048】
【化1】
【0049】
中でも、活性炭前駆体に、イットリウム化合物及びバナジウム化合物を含有させる場合は、バナジウムの効果により1nm以下のミクロ孔容量を大きく維持し、尚且つイットリウムの効果により、やや大きな細孔も適度に分布させることができ、これらのやや大きな細孔が被吸着物質の細孔内拡散を補助するため、ジクロロメタンの平衡吸着量をより向上させる点で好ましい。活性炭前駆体に、イットリウム化合物及びバナジウム化合物を含有させる場合、活性炭前駆体中における、イットリウム化合物の含有量とバナジウム化合物の含有量の比(バナジウム化合物の含有量/イットリウム化合物の含有量)としては、4~15が好ましく挙げられる。
【0050】
本発明の活性炭の製造方法において、賦活の雰囲気は、CO2濃度が90容積%以上であり、好ましくは95容積%以上、より好ましくは99容積%以上である。
【0051】
賦活の雰囲気において、CO2以外の他の成分としては、N2、O2、H2、H2O、COが挙げられる。
【0052】
本発明の製造方法において、賦活の雰囲気温度は通常600~1200℃程度であり、好ましくは800~1000℃程度、より好ましくは900~1000℃程度である。また、賦活時間としては、活性炭前駆体の主原料に応じ、所定の細孔径分布となるよう調整すればよい。例えば、活性炭前駆体の主原料として軟化点が275℃~288℃のピッチを用いた場合は、賦活の雰囲気温度は900~1000℃、賦活時間は10~80分、より好ましくは、30~80分として賦活をすることが挙げられる。
【実施例
【0053】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0054】
各実施例及び比較例につき、以下の方法により評価した。
(1)活性炭前駆体(不融化したピッチ繊維)のバナジウム含有量及びイットリウム含有量(質量%)
ピッチ繊維を灰化処理し、灰分を酸に溶解しICP発光分光分析装置(Varian社製型式715-ES)により測定される、バナジウム元素換算の割合及びイットリウム元素換算の割合をそれぞれバナジウム含有量及びイットリウム含有量とした。
【0055】
(2)活性炭の金属含有量(質量%)
繊維状活性炭を灰化処理し、灰分を酸に溶解しICP発光分光分析装置(Varian社製型式715-ES)により測定されるバナジウム元素換算の割合及びイットリウム元素換算の割合をそれぞれバナジウム含有量及びイットリウム含有量とした。
【0056】
(3)細孔容積(cc/g)、比表面積(m2/g)、繊維状活性炭の繊維径(μm)
細孔物性値は、Quantachrome社製「AUTOSORB-1-MP」を用いて77Kにおける窒素吸着等温線より測定した。比表面積はBET法によって相対圧0.1の測定点から計算した。全細孔容積及び表1に記載した各細孔径範囲における細孔容積は、測定した窒素脱着等温線に対し、Calculation modelとしてN2 at 77K on carbon[slit pore,QSDFT equilibrium model]を適用して細孔径分布を計算することで、解析した。具体的に、表1に記載した各細孔径範囲における細孔容積は、図1~20に示した細孔径分布を示すグラフの読み取り値又は該読み取り値から計算される値である。より具体的に、細孔径0.65nm以下の細孔容積は、細孔径分布図の横軸Pore Widthが0.65nmにおけるCumulative Pore Volume(cc/g)の読み取り値である。同様にして、細孔径0.8nm以下の細孔容積、細孔径1.0nm以下の細孔容積A、細孔径1.5nm以下の細孔容積B、細孔径2.0nm以下の細孔容積Cを得た。細孔径2.0nm以上の細孔容積は、QSDFT法により得られる全細孔容積から上記細孔径2.0nm以下の細孔容積Cを減ずることで計算した。細孔径1.0nm以上1.5nm以下の範囲の細孔容積は、上記細孔径1.5nm以下の細孔容積Bから上記細孔径1.0nm以下の細孔容積Aを減ずることで計算した。細孔径1.0nm以上2.0nm以下の範囲の細孔容積は、上記細孔径2.0nm以下の細孔容積Cから上記細孔径1.0nm以下の細孔容積Aを減ずることで計算した。0.65nm以上0.8nm以下の範囲の細孔径の細孔容積は、上記細孔径0.8nm以下の細孔容積から上記細孔径0.65nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Eは、上記細孔径1.0nm以下の細孔容積Aから上記細孔径0.65nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。0.8nm以上1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積は、上記細孔径1.5nm以下の細孔容積Bから上記細孔径0.8nm以下の細孔容積を減ずることで計算した。1.5nm以上2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積は、上記細孔径2.0nm以下の細孔容積Cから上記細孔径1.5nm以下の細孔容積Bを減ずることで計算した。
【0057】
(4)繊維状活性炭の繊維径(μm)
画像処理繊維径測定装置(JIS K 1477に準拠)により測定した。
【0058】
(5)ジクロロメタン平衡吸着量
活性炭サンプルを110℃の乾燥機で1晩乾燥し、デシケーターで冷却後、速やかに3.14gを量りとり試験カラム(Φ20×H100)に充填した。次に、濃度10000ppm、25℃に調整したジクロロメタンガスを流量2.0L/minで試験カラムに通気し、吸着操作を行った。活性炭の質量増加が止まった時点を平衡状態とし、平衡吸着量を算出した。
平衡吸着量(%)=質量増加分/活性炭質量×100
40質量%以上を合格とした。
【0059】
(実施例1)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対して、ビス(2,4-ペンタンジオナト)バナジウム(IV)オキシド(CAS番号:3153-26-2)0.6質量部、及びトリスアセチルアセトナトイットリウム(CAS番号:15554-47-9)0.1質量部と、を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、バナジウムの含有量は0.11質量%、イットリウムの含有量は0.022質量%であった。
【0060】
得られた活性炭前駆体をCO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で32分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例1の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.456cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.216cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.970、バナジウムの含有量は0.220質量%、イットリウムの含有量は0.040質量%、平均繊維径は13.5μmであった。
【0061】
(実施例2)
賦活時間を40分とした以外は、実施例1と同様にし、実施例2の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.558cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.256cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.947、バナジウムの含有量は0.270質量%、イットリウムの含有量は0.050質量%、平均繊維径は13.3μmであった。
【0062】
(実施例3)
賦活時間を45分とした以外は、実施例1と同様にし、実施例3の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.621cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.274cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.917、バナジウムの含有量は0.310質量%、イットリウムの含有量は0.060質量%、平均繊維径は13.5μmであった。
【0063】
(実施例4)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対して、ビス(2,4-ペンタンジオナト)バナジウム(IV)オキシド(CAS番号:3153-26-2)0.6質量部、及びトリスアセチルアセトナトイットリウム(CAS番号:15554-47-9)0.06質量部と、を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、バナジウムの含有量は0.09質量%、イットリウムの含有量は0.01質量%であった。
【0064】
得られた活性炭前駆体をCO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で38分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例4の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.482cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.204cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.980、バナジウムの含有量は0.190質量%、イットリウムの含有量は0.020質量%、平均繊維径は13.1μmであった。
【0065】
(実施例5)
賦活時間を44分とした以外は、実施例4と同様にし、実施例5の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.535cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.239cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.961、バナジウムの含有量は0.220質量%、イットリウムの含有量は0.030質量%、平均繊維径は13.0μmであった。
【0066】
(実施例6)
賦活時間を50分とした以外は、実施例4と同様にし、実施例6の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.600cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.262cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.932、バナジウムの含有量は0.250質量%、イットリウムの含有量は0.030質量%、平均繊維径は13.2μmであった。
【0067】
(実施例7)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対して、ビス(2,4-ペンタンジオナト)バナジウム(IV)オキシド(CAS番号:3153-26-2)0.6質量部、及びトリスアセチルアセトナトイットリウム(CAS番号:15554-47-9)0.03質量部と、を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、バナジウムの含有量は0.095質量%、イットリウムの含有量は0.007質量%であった。
【0068】
得られた活性炭前駆体をCO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で37分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例7の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.517cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.211cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.981、バナジウムの含有量は0.210質量%、イットリウムの含有量は0.020質量%、平均繊維径は13.5μmであった。
【0069】
(実施例8)
賦活時間を40分とした以外は、実施例7と同様にし、実施例8の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.548cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.233cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.945、バナジウムの含有量は0.230質量%、イットリウムの含有量は0.020質量%、平均繊維径は13.0μmであった。
【0070】
(実施例9)
賦活時間を50分とした以外は、実施例7と同様にし、実施例9の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.641cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.277cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.926、バナジウムの含有量は0.290質量%、イットリウムの含有量は0.020質量%、平均繊維径は13.2μmであった。
【0071】
(実施例10)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム(CAS番号:15554-47-9)0.3質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量は0.06質量%であった。
【0072】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で67分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例10の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.613cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.262cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.890、イットリウムの含有量は0.170質量%、平均繊維径は16.8μmであった。
【0073】
(実施例11)
賦活時間を70分とした以外は、実施例10と同様にし、実施例11の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.636cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.269cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.880、イットリウムの含有量は0.180質量%、平均繊維径は16.8μmであった。
【0074】
(実施例12)
賦活時間を65分とした以外は、実施例10と同様にし、実施例12の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.594cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.256cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.907、イットリウムの含有量は0.150質量%、平均繊維径は18.2μmであった。
【0075】
(実施例13)
賦活時間を55分とした以外は、実施例10と同様にし、実施例13の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.532cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.241cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.942、イットリウムの含有量は0.140質量%、平均繊維径は18.4μmであった。
【0076】
(実施例14)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対して、ビス(2,4-ペンタンジオナト)バナジウム(IV)オキシド(CAS番号:3153-26-2)0.6質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度325℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中355℃まで段階的に昇温し、合計87分間保持することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、バナジウムの含有量は0.076質量%であった。
【0077】
得られた活性炭前駆体をCO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で50分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例14の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.581cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.245cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.965、バナジウムの含有量は0.230質量%、平均繊維径は13.2μmであった。
【0078】
(実施例15)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対して、ビス(2,4-ペンタンジオナト)バナジウム(IV)オキシド(CAS番号:3153-26-2)0.6質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度325℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中335℃まで段階的に昇温し、合計87分間保持することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、バナジウムの含有量は0.076質量%であった。
【0079】
得られた活性炭前駆体をCO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で50分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例15の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.565cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.287cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.958、バナジウムの含有量は0.281質量%、平均繊維径は13.7μmであった。
【0080】
(実施例16)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対して、ビス(2,4-ペンタンジオナト)バナジウム(IV)オキシド(CAS番号:3153-26-2)0.6質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度325℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中364℃まで段階的に昇温し、合計87分間保持することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、バナジウムの含有量は0.100質量%であった。
【0081】
得られた活性炭前駆体をCO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で50分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例17の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.553cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.280cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.955、バナジウムの含有量は0.286質量%、平均繊維径は13.8μmであった。
【0082】
(実施例17)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対して、ビス(2,4-ペンタンジオナト)バナジウム(IV)オキシド(CAS番号:3153-26-2)0.6質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度325℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中333℃まで段階的に昇温し、合計87分保持することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、バナジウムの含有量は0.095質量%であった。
【0083】
得られた活性炭前駆体をCO2濃度が63容量%、N2濃度が37容量%の混合ガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で50分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例18の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.462cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.227cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.996、バナジウムの含有量は0.257質量%、平均繊維径は13.9μmであった。
【0084】
(実施例18)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対して、ビス(2,4-ペンタンジオナト)バナジウム(IV)オキシド(CAS番号:3153-26-2)0.6質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度325℃で溶融混合し、吐出量16g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中339℃まで段階的に昇温し、合計87分間保持することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、バナジウムの含有量は0.093質量%であった。
【0085】
得られた活性炭前駆体をCO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で50分間熱処理することにより賦活をおこない、実施例19の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.556cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.287cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.954、バナジウムの含有量は0.344質量%、平均繊維径は13.6μmであった。
【0086】
(比較例1)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、バナジウム及びイットリウムの含有量は0質量%であった。
【0087】
得られた活性炭前駆体を、H2O濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度875℃で25分間熱処理することにより賦活をおこない、比較例1の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.314cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.112cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.997、イットリウム及びバナジウムの含有量は0.00質量%、平均繊維径は16.8μmであった。
【0088】
(比較例2)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、バナジウム及びイットリウムの含有量は0質量%であった。
【0089】
得られた活性炭前駆体を、H2O濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度875℃で40分間熱処理することにより賦活をおこない、比較例2の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.465cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.180cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.977、イットリウム及びバナジウムの含有量は0.00質量%、平均繊維径は16.7μmであった。
【0090】
(比較例3)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム(CAS番号:15554-47-9)1.3質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量(イットリウム元素換算)は0.25質量部であった。
【0091】
得られた活性炭前駆体を、H2O濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度900℃で20分間熱処理することにより賦活をおこない、比較例3の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.339cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.166cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.827、イットリウムの含有量は0.66質量%、平均繊維径は16.5μmであった。
【0092】
(比較例4)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチ100質量部に対してトリスアセチルアセトナトイットリウム(CAS番号:15554-47-9)1.3質量部を混合したものを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、イットリウムの含有量(イットリウム元素換算)は0.25質量部であった。
【0093】
得られた活性炭前駆体を、H2O濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度900℃で25分間熱処理することにより賦活をおこない、比較例4の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.312cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.137cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.790、イットリウムの含有量は0.83質量%、平均繊維径は15.8μmであった。
【0094】
(比較例5)
有機質材料として、軟化点が280℃の粒状石炭ピッチを、溶融押出機に供給し、溶融温度320℃で溶融混合し、吐出量20g/minで紡糸することによりピッチ繊維を得た。得られたピッチ繊維を空気中常温から354℃まで1~30℃/分の割合で54分間昇温することにより不融化処理をおこない、不融化されたピッチ繊維である活性炭前駆体を得た。該活性炭前駆体において、バナジウム及びイットリウムの含有量は0.00質量%であった。
【0095】
得られた活性炭前駆体を、CO2濃度が100容量%のガスを賦活炉内に連続的に導入し、雰囲気温度950℃で90分間熱処理することにより賦活をおこない、比較例5の活性炭を得た。得られた活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.496cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.223cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.998、バナジウム及びイットリウムの含有量は0.00質量%、平均繊維径は18.1μmであった。
【0096】
(比較例6)
活性炭として、市販のフェノール系活性炭を用いた。当該活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.364cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.110cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が1.000、バナジウム及びイットリウムの含有量は0.00質量%、平均繊維径は12.6μmであった。
【0097】
(比較例7)
活性炭として、市販のフェノール系活性炭を用いた。当該活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.542cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.167cc/g、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.989、バナジウム及びイットリウムの含有量は0.00質量%、平均繊維径は12.8μmであった。
【0098】
得られた活性炭の物性を表1及び表2に示す。また、図1~25に、実施例1~18、比較例1~7の活性炭のQSDFT法によって算出される細孔径分布図を示す。
【0099】
【表1】
【表2】
【0100】
実施例1~18の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.4cc/g以上、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.2cc/g以上、且つ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.880~0.985であることから、ジクロロメタンの平衡吸着量に優れたものであった。
【0101】
比較例1の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.4cc/g未満であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.2cc/g未満であり、且つ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.985を超えるものであることから、ジクロロメタンの平衡吸着量に劣るものであった。
【0102】
比較例2の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.2cc/g未満であることから、ジクロロメタンの平衡吸着量に劣るものであった。
【0103】
比較例3及び4の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.4cc/g未満であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.2cc/g未満であり、且つ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.880未満であることから、ジクロロメタンの平衡吸着量に劣るものであった。
【0104】
比較例5の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.985を超えるものであることから、ジクロロメタンの平衡吸着量に劣るものであった。
【0105】
比較例6の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、1.5nm以下の範囲の細孔径の細孔容積B(cc/g)が0.4cc/g未満であり、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.2cc/g未満であり、且つ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.985を超えるものであることから、ジクロロメタンの平衡吸着量に劣るものであった。
【0106】
比較例7の活性炭は、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、0.65nm以上1.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積E(cc/g)が0.2cc/g未満であり、且つ、QSDFT法によって算出される細孔容積のうち、2.0nm以下の範囲の細孔径の細孔容積Cに対する、前記細孔容積Bの割合(B/C)が0.985を超えるものであることから、ジクロロメタンの平衡吸着量に劣るものであった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
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図21
図22
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