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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】制振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20240130BHJP
   F16F 15/126 20060101ALI20240130BHJP
   F16F 15/121 20060101ALI20240130BHJP
   F16F 7/10 20060101ALI20240130BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
F16F15/02 C
F16F15/126 Z
F16F15/121 Z
F16F7/10
E04H9/02 341C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020050016
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021148235
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 公開日 令和1年12月15日 https://sites.google.com/site/ikagolab/公開実験のご案内 試験日 令和2年1月9日 東北大学工学部建築附属実験所にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】506122246
【氏名又は名称】エム・エムブリッジ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504242342
【氏名又は名称】株式会社免制震ディバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平井 潤
(72)【発明者】
【氏名】五十子 幸樹
(72)【発明者】
【氏名】木田 英範
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-080543(JP,A)
【文献】特開2012-007635(JP,A)
【文献】特開2018-071599(JP,A)
【文献】特開2016-098966(JP,A)
【文献】特開2018-173138(JP,A)
【文献】特開2010-242971(JP,A)
【文献】特表2008-520931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02
F16F 15/126
F16F 15/121
F16F 7/10
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制震対象物に固定され前記制震対象物の振動と一体で移動可能なナットと、ベース部に回転可能に支持され前記ナットとネジ接合されて前記ナットの移動に伴って回転可能なネジ軸と、を有する慣性接続機構と、
前記ネジ軸の回転に伴って回転する入力軸と、前記入力軸と同軸に配置される出力軸と、前記入力軸の回転量を増幅して前記出力軸に伝達する回転伝達部と、を有する回転量増幅機構と、
前記出力軸の回転に従動して運動エネルギーを吸収する減衰機構と
を備える制振装置。
【請求項2】
前記回転伝達部は、前記入力軸と前記出力軸との間に接続され前記入力軸及び前記出力軸の回転方向にねじれるように弾性変形可能な弾性部材を有する
請求項1に記載の制振装置。
【請求項3】
前記入力軸の回転方向への振動に対して前記出力軸が共振して回転するように、前記弾性部材のねじれ剛性と前記出力軸の慣性モーメントとが調整される
請求項2に記載の制振装置。
【請求項4】
前記出力軸に設けられ、前記出力軸と一体で回転し、前記出力軸の慣性モーメントを調整するフライホイールを備える
請求項3に記載の制振装置。
【請求項5】
前記回転伝達部は、前記入力軸と一体で回転する第1ホルダと、前記出力軸と一体で連結する第2ホルダとを有し、
前記弾性部材は、線状であり、前記第1ホルダと前記第2ホルダとの間に張り渡され、前記入力軸及び前記出力軸の回転方向に沿って複数並んだ状態で配置される
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の制振装置。
【請求項6】
それぞれの前記弾性部材は、一端が前記第1ホルダに固定され、他端が前記第2ホルダに固定される
請求項5に記載の制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マスダンパを用いた制振装置として、例えば回転慣性型マスダンパを用いた構成が知られている(例えば、特許文献1等参照)。このような回転慣性型マスダンパは、対象構造とベース部との間にばね要素を介して接続されたナット及びネジ軸(慣性接続要素)と、ネジ軸の一端に配されるマス要素に相当するフライホイールと、ネジ軸の回転動に従動して運動エネルギーを吸収する減衰要素とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5023129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成では、慣性接続要素により対象構造の直線方向への振動を増幅させた後、増幅させた振動を回転方向に変換して、運動エネルギーを吸収する構成である。この場合、ネジ軸は、増幅された振動によりナットが移動する範囲をカバーできる寸法とする必要、つまり、ネジ軸のストロークを大きくする必要がある。許容速度や強度等の観点から、このような条件のネジ軸・ナットを設計することは困難であった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、慣性接続要素を容易に設計することが可能な制振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る制振装置は、制震対象物に固定され前記制震対象物の振動と一体で移動可能なナットと、直線方向に延び前記直線方向への移動が規制された状態でベース部に回転可能に支持され前記ナットとネジ接合されて前記ナットの移動に伴って回転可能なネジ軸と、を有する慣性接続要素と、前記ネジ軸の回転に伴って回転する入力軸と、前記入力軸と同軸に配置される出力軸と、前記入力軸の回転量を増幅して前記出力軸に伝達する増幅部と、を有する回転量増幅機構と、前記出力軸の回転に従動して運動エネルギーを吸収する減衰機構とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ネジ軸のストロークを短く設定できるので、許容速度以内、座屈荷重以内に抑えることができ、慣性接続要素を容易に設計することが可能な制振装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態に係る制振装置の一例を示す図である。
図2図2は、回転量増幅機構の一例を示す図である。
図3図3は、中心軸の軸線方向の外側から回転量増幅機構を見た場合の一例を示す図である。
図4図4は、図3に示す回転量増幅機構の一部の構成を拡大して示す断面図である。
図5図5は、制振装置の動作の一例を示す図である。
図6図6は、回転量増幅機構における動作の一例を示す図である。
図7図7は、変形例に係る制振装置の構成を示す図である。
図8図8は、変形例に係る制振装置の他の構成を示す図である。
図9図9は、変形例に係る制振装置の他の構成を示す図である。
図10図10は、変形例に係る制振装置の他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る制振装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
図1は、本実施形態に係る制振装置100の一例を示す図である。図1に示す制振装置100は、いわゆる回転慣性型マスダンパを用いた構成である。制振装置100は、例えば橋梁、ビル等の建築物に設置され、地震等による建築物の振動を抑制する。制振装置100は、1つの建築物に対して1つ又は複数設置することができる。
【0011】
図1に示すように、制振装置100は、慣性接続要素10と、回転量増幅機構20と、フライホイール30と、減衰機構40とを備える。
【0012】
慣性接続要素10は、制震対象物50の振動のうち直線方向の成分を回転方向への振動に変換して増速させる。制震対象物50は、例えば建築物の一部である。慣性接続要素10は、ナット11及びネジ軸12を有する。ナット11は、固定部材51を介して制震対象物50に固定される。ナット11は、制震対象物50の振動と一体で移動可能である。ナット11は、環状であり、内周面にネジ山が形成される。
【0013】
ネジ軸12は、軸受14、15を介してベース部60に支持される。ベース部60は、例えば建築物が建築される地面、土台等である。軸受14、15には、不図示のボールが設けられ、ネジ軸12を回転可能に支持する。ネジ軸12は、直線方向に延びた円柱状であり、外周面にネジ山が形成される。
【0014】
ネジ軸12は、ナット11とネジ接合される。ネジ軸12は、ナット11の移動に伴って、中心軸AXを中心として回転可能である。慣性接続要素10は、制震対象物50の振動のうち、ネジ軸12の中心軸AXに沿った方向の成分を回転方向への振動に変換する。ネジ軸12は、中心軸AXの軸線方向への移動が規制される。
【0015】
なお、1つの建築物に対して複数の制振装置100を設置する場合、少なくとも1つの制振装置100のネジ軸12の中心軸AXの軸線方向が他の制振装置100とは異なるように配置してもよい。この場合、ネジ軸12の中心軸AXの軸線方向が水平面に沿うように配置してもよいし、ネジ軸12の中心軸AXの軸線方向が水平面に交差するように配置してもよい。
【0016】
回転量増幅機構20は、ネジ軸12の回転量を増幅させる。図2は、回転量増幅機構20の一例を示す図である。図2に示すように、回転量増幅機構20は、入力軸21と、出力軸22と、回転伝達部23とを備える。
【0017】
入力軸21は、ネジ軸12に連結され、ネジ軸12の回転に伴って回転する。本実施形態において、入力軸21は、ネジ軸12の中心軸AXを中心として回転する。入力軸21は、軸受15によって回転可能に支持される。
【0018】
出力軸22は、入力軸21と同軸に配置される。つまり、出力軸22は、ネジ軸12の中心軸AXを中心として回転する。出力軸22は、軸受16によって回転可能に支持される。
【0019】
回転伝達部23は、入力軸21の回転量を増幅して出力軸22に伝達する。回転伝達部23は、第1ホルダ24と、第2ホルダ25と、複数の弾性部材26とを有する。第1ホルダ24は、例えば円板状であり、入力軸21に連結され、入力軸21と一体で回転する。第2ホルダ25は、例えば円板状であり、出力軸22に連結され、出力軸22と一体で回転する。
【0020】
弾性部材26は、例えば線状又はひも状であり、第1ホルダ24と第2ホルダ25との間に張り渡される。弾性部材26は、例えばゴム、エラストマ等の樹脂材料を用いて形成することができる。なお、弾性部材26は、上記の形状及び材料に限定されず、例えばバネ状、ぜんまい状、棒状等のような他の形状であってもよいし、金属材料等のような他の材料を用いて形成されてもよい。
【0021】
弾性部材26は、入力軸21及び出力軸22の回転方向、つまり、中心軸AXを中心とした回転方向に平行又は略平行に複数並んだ状態で配置される。複数の弾性部材26は、例えば中心軸AXを中心とした回転方向に等ピッチで配置される(図3等参照)。なお、複数の弾性部材26の配置は上記に限定されない。
【0022】
複数の弾性部材26は、第1ホルダ24と第2ホルダ25とが中心軸AXを中心として相対的に回転することにより、回転方向にねじれて縒り合わさるように弾性変形可能である。複数の弾性部材26が弾性変形した場合、縒りが解ける方向に復元トルクが生じる。例えば、入力軸21が回転する場合、第1ホルダ24が入力軸21と一体で回転する。第1ホルダ24の回転により、複数の弾性部材26が回転方向にねじれて縒り合わさるように弾性変形する。複数の弾性部材26が弾性変形する場合、発生した復元トルクは第2ホルダ25に作用する。この場合、第2ホルダ25は、複数の弾性部材26の復元トルクにより回転する。
【0023】
複数の弾性部材26が中心軸AXを中心とした回転方向に縒り合わさる場合、個々の弾性部材26は、当該個々の弾性部材26の中心軸を中心としてねじれた状態となる。複数の弾性部材26は、回転方向に縒り合わさることに加えて、個々の弾性部材26の当該ねじれにより、効率的に弾性力を得ることができる。
【0024】
複数の弾性部材26は、このような個々にねじれが生じる方向への摺動が規制されるように、一方の端部26a(図3参照)が第1ホルダ24に固定され、他方の端部26b(図3参照)が第2ホルダ25に固定される。この構成により、個々の弾性部材26のねじれが端部において解けることを防止できるため、弾性力の損失を抑制できる。
【0025】
本実施形態において、入力軸21の回転方向への振動に対して出力軸22が共振して回転するように、複数の弾性部材26のねじれ剛性と出力軸22の慣性モーメントとが調整される。したがって、入力軸21が回転方向に振動する場合、複数の弾性部材26により、出力軸22が回転方向に共振した状態で振動する。このため、入力軸21の振動を出力軸22に伝達する際、共振により効率的に振動を増幅して伝達することができる。
【0026】
図3は、中心軸AXの軸線方向の外側から回転量増幅機構20を見た場合の一例を示す図である。図4は、図3に示す回転量増幅機構20の一部の構成を拡大して示す断面図である。図3では、第1ホルダ24又は第2ホルダ25に弾性部材26が固定される状態を示している。図4では、第2ホルダ25側の構成を例に挙げて示しているが、第1ホルダ24側においても同様の構成となっている。
【0027】
図3及び図4に示すように、弾性部材26は、押さえ部材27及び締結部材28により、一方の端部26aが第1ホルダ24に固定され、他方の端部26bが第2ホルダ25に固定される。弾性部材26の端部26a、26bは、第1ホルダ24、第2ホルダ25にそれぞれ設けられる貫通孔24a、25aを貫通し、中心軸AXの軸線方向の外側に突出した状態で設けられる。
【0028】
押さえ部材27は、第1ホルダ24、第2ホルダ25から突出した端部26a、26bを当該第1ホルダ24、第2ホルダ25に押さえつける。締結部材28は、押さえ部材27を第1ホルダ24、第2ホルダ25に締結する。なお、弾性部材26の端部26a、26bを固定する構成は、押さえ部材27及び締結部材28を用いる構成に限定されず、他の構成であってもよい。
【0029】
フライホイール30は、出力軸22に設けられ、出力軸22と一体で回転する。フライホイール30は、出力軸22の慣性モーメントを増加させる。フライホイール30が設けられることにより、出力軸22の慣性モーメントを容易に調整することができる。
【0030】
減衰機構40は、出力軸22の回転に従動して運動エネルギーを吸収する。減衰機構40としては、例えば回転型ダンパー等を用いることができる。減衰機構40は、ケース41と、ロータ42と、オイル43とを有する。
【0031】
ケース41は、ロータ42及びオイル43を収容し、出力軸22を回転可能に支持する。ロータ42は、出力軸42の回転に従動して回転する。本実施形態において、ロータ42は、例えば出力軸22に固定され、出力軸22と一体で回転する。オイル43は、粘性抵抗によりロータ42の回転運動を制動する。減衰機構40は、オイル43によりロータ42の回転運動を制動することにより、回転の運動エネルギーを吸収することができる。
【0032】
次に、上記のように構成された制振装置100の動作の一例を説明する。図5は、制振装置100の動作の一例を示す図である。図5に示すように、地震等の振動が制震対象物50に伝達され、制震対象物50が振動した場合、当該振動のうち中心軸AXに平行な成分により固定部材51及びナット11が中心軸AXに平行な方向に移動する。ナット11の移動により、ネジ軸12が中心軸AXを中心として回転する。ネジ軸12の回転は、回転量増幅機構20に伝達される。
【0033】
図6は、回転量増幅機構20における動作の一例を示す図である。図6に示すように、ネジ軸12の回転により、回転量増幅機構20の入力軸21が当該ネジ軸12の回転に伴って回転する。入力軸21の回転により、当該入力軸21の回転と一体で第1ホルダ24が回転する。第1ホルダ24の回転により、複数の弾性部材26が回転方向にねじれて縒り合わさるように弾性変形する。
【0034】
複数の弾性部材26の弾性変形により、縒りが解ける方向に復元トルクが生じる。発生した復元トルクは、第2ホルダ25及び出力軸22に作用する。第2ホルダ25及び出力軸22は、複数の弾性部材26の復元トルクにより回転する。本実施形態では、回転量増幅機構20において入力軸21の回転量が増幅されて出力軸22に伝達される。
【0035】
出力軸22の回転により、図5に示すように、減衰機構40においてロータ42が回転する。ロータ42が回転すると、オイル43による粘性抵抗を受け、運動エネルギーが吸収されて回転が減衰する。これにより、制震対象物50の振動を減衰することができる。
【0036】
以上のように、本実施形態に係る制振装置100は、制震対象物50に固定され制震対象物50の振動と一体で移動可能なナット11と、ベース部60に回転可能に支持されナット11とネジ接合されてナット11の移動に伴って回転可能なネジ軸12と、を有する慣性接続要素10と、ネジ軸12の回転に伴って回転する入力軸21と、入力軸21と同軸に配置される出力軸22と、入力軸21の回転量を増幅して出力軸22に伝達する回転伝達部23と、を有する回転量増幅機構20と、出力軸22の回転に従動して運動エネルギーを吸収する減衰機構40とを備える。
【0037】
この制振装置100は、制震対象物50の振動を回転方向の振動に変換し、複数の弾性部材26の共振により回転量を増幅し、増幅した回転量で回転する出力軸22の回転を減衰する構成であるため、大きな運動エネルギーを吸収することができる。このため、制震対象物50の振動を効率的に減衰することができる。また、制振装置100は、制震対象物50の振動方向を直線方向から回転方向に変更した後、回転量を増幅させることで振動を増幅させる構成であるため、直線方向の振動を増幅させる構成に比べて、直線方向におけるナット11の移動量を抑制できる。これにより、ネジ軸12の寸法を抑えることができるため、ネジ軸12を含む慣性接続要素10を容易に設計することができる。
【0038】
本実施形態に係る制振装置100において、回転伝達部23は、入力軸21と出力軸22との間に接続され入力軸21及び出力軸22の回転方向にねじれるように弾性変形可能な弾性部材26を有する。
【0039】
従って、弾性部材26の弾性力を用いることにより、入力軸21から出力軸22に対して回転を容易かつ確実に伝達可能となる。
【0040】
本実施形態に係る制振装置100において、入力軸21の回転方向への振動に対して出力軸22が共振して回転するように、弾性部材26のねじれ剛性とフライホイール30の慣性モーメントとが調整される。
【0041】
従って、共振により入力軸21の回転を効率的に増幅させて出力軸22に伝達することができる。
【0042】
出力軸22に設けられ、出力軸22と一体で回転し、出力軸22の慣性モーメントを調整するフライホイール30を備える。
【0043】
従って、出力軸22の慣性モーメントを容易に調整することができる。
【0044】
本実施形態に係る制振装置100において、回転伝達部23は、入力軸21と一体で回転する第1ホルダ24と、出力軸22と一体で連結する第2ホルダ25とを有し、弾性部材26は、線状であり、第1ホルダ24と第2ホルダ25との間に張り渡され、入力軸21及び出力軸22の回転方向に沿って複数並んだ状態で配置される。
【0045】
従って、複数の弾性部材26が縒り合わさるようにねじれた状態を形成すると共に、個々の弾性部材26がねじれた状態を形成できる。これにより、効率的に復元トルクを発生させることができる。
【0046】
本実施形態に係る制振装置100において、それぞれの弾性部材26は、一端が第1ホルダ24に固定され、他端が第2ホルダ25に固定される。
【0047】
従って、個々の弾性部材26のねじれが端部において解けることを防止できるため、ねじれによる弾性力の損失を抑制できる。
【0048】
本開示の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態において、各弾性部材26は、端部26aが第1ホルダ24に固定され、端部26bが第2ホルダ25に固定される構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、端部26a、26bの一方又は両方が固定されない状態で接続された構成であってもよい。
【0049】
また、上記実施形態において、出力軸22にフライホイール30が設けられた構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、フライホイール30が設けられない構成であってもよい。この場合、例えば、出力軸22の形状、寸法、材料等を調整することで出力軸22の慣性モーメントを調整することができる。
【0050】
図7は、変形例に係る制振装置の構成を示す図である。図7に示す制振装置200のように、慣性接続要素10のナット11の両側に、回転量増幅機構20、120と、フライホイール30、130と、減衰機構40、140とを備える構成としてもよい。回転量増幅機構120、フライホイール130及び減衰機構140の各構成は、上記実施形態に記載の回転量増幅機構20、フライホイール30及び減衰機構40と同様とすることができる。図7において、回転量増幅機構120、フライホイール130及び減衰機構140の各構成要素を示す符号は、上記実施形態に記載の回転量増幅機構20、フライホイール30及び減衰機構40の構成要素の符号と対応して記載している。制振装置200は、図7の一方(ナット11の右側)の機構における固有振動数faと、他方(ナット11の左側)の機構における固有振動数fbとを異なるように設定することが可能である。例えば、図7に示すように、回転量増幅機構120の第1ホルダ124と第2ホルダ125との間隔を、回転量増幅機構20の第1ホルダ24と第2ホルダ25との間隔と異なるように設定してもよい。
【0051】
図8は、変形例に係る制振装置の他の構成を示す図である。図8に示す制振装置300のように、回転量増幅機構20に第1ギア224A及び第2ギア224Bを設けて、ネジ軸12の回転を第1ギア224A及び第2ギア224Bにより増速させながらトルクを伝達させる構成としてもよい。この構成では、ネジ軸12を支持する第1軸受15Aと、入力軸221Bを支持する第2軸受15Bとが別個に設けられる。具体的には、第1ギア224Aを支持する第1軸受15Aがネジ軸12を支持する。また、第1ギア224Aと噛み合う第2ギア224Bを支持する第2軸受15Bが入力軸221Bを支持する。
【0052】
図9は、変形例に係る制振装置の他の構成を示す図である。図9に示す制振装置400では、図8に示す制振装置300のうち軸受14、ナット11、ネジ軸12及び第1軸受15Aを含む構成が、第1ギア15Aを基準として左右対称に配置されている。これにより、軸受14、ナット11、ネジ軸12及び第1軸受15Aを含む構成と、回転量増幅機構20、フライホイール30及び減衰機構40とが左右の同一側に配置されることになる。したがって、左右方向の全長を短くすることができる。
【0053】
図10は、変形例に係る制振装置の他の構成を示す図である。図10に示す制振装置500では、図8に示す制振装置300に対して、回転量増幅機構520、フライホイール530及び減衰機構540の構成を追加した構成となっている。図10において、回転量増幅機構520、フライホイール530及び減衰機構540の各構成要素を示す符号は、上記実施形態に記載の回転量増幅機構20、フライホイール30及び減衰機構40の構成要素の符号と対応して記載している。この構成では、第1軸受15Aにはネジ軸12と一体で回転する第1ギア524Aが設けられる。回転量増幅機構20は、第2軸受15Bに入力軸22が支持され、第1ホルダ24に第2ギア524Bが固定される。回転量増幅機構520は、第3軸受15Cに入力軸522が支持され、第1ホルダ524に第3ギア524Cが固定される。制振装置500は、ネジ軸12の回転と共に第1ギア524Aが一体で回転し、第1ギア524Aの回転により第2ギア524B及び第3ギア524Cが連動して回転する。第2ギア524B及び第3ギア524Cの回転により、回転量増幅機構20及び回転量増幅機構520に対して回転が伝達される。制振装置500は、回転量増幅機構20、フライホイール30及び減衰機構40を含む機構における固有振動数faと、回転量増幅機構520、フライホイール530及び減衰機構540を含む機構における固有振動数fcとを異なるように設定することが可能である。例えば、図10に示すように、回転量増幅機構520の第1ホルダ524と第2ホルダ525との間隔を、回転量増幅機構20の第1ホルダ24と第2ホルダ25との間隔と異なるように設定してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 慣性接続要素
11 ナット
12 ネジ軸
14,15,16 軸受
15A 第1軸受
15B 第2軸受
15C 第3軸受
20,120,220,520 回転量増幅機構
21 入力軸
22 出力軸
23 回転伝達部
24 第1ホルダ
24a,25a 貫通孔
25 第2ホルダ
26 弾性部材
26a,26b 端部
27 部材
28 締結部材
30,130,230,530 フライホイール
40,140,240,540 減衰機構
41 ケース
42 ロータ
43 オイル
50 制震対象物
51 固定部材
60 ベース部
100 制振装置
124,524 第1ホルダ
125,525 第2ホルダ
224A,524A 第1ギア
224B,524B 第2ギア
524C 第3ギア
AX 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10