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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】固定用金具
(51)【国際特許分類】
   A63B 67/04 20060101AFI20240130BHJP
   A47B 3/083 20060101ALI20240130BHJP
   A63B 69/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A63B67/04 Z
A47B3/083 A
A63B69/00 506
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021132364
(22)【出願日】2021-08-16
(65)【公開番号】P2023026917
(43)【公開日】2023-03-01
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390015141
【氏名又は名称】日本卓球株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000152169
【氏名又は名称】株式会社栃木屋
(74)【代理人】
【識別番号】110002882
【氏名又は名称】弁理士法人白浜国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 哲
(72)【発明者】
【氏名】高倉 浩
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3155260(JP,U)
【文献】特開2000-116440(JP,A)
【文献】特開2015-126770(JP,A)
【文献】特開2007-275215(JP,A)
【文献】実開昭57-093222(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0094076(US,A1)
【文献】特開2018-166677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B67/00
A47B3/00
A63B69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する長さ方向と径方向とを有していて前記径方向において往復旋回運動する丸棒部材の周面に前記径方向の外側から離脱可能に当接して前記往復旋回運動を阻止することによって前記丸棒部材を一時的に固定した状態に置くことが可能である前記丸棒部材に対しての固定用金具であって、
前記固定用金具は、平坦面を有する基板部材と、前記固定した状態に置いた前記丸棒部材と交差する方向へ長さ方向が延びるレバー部材と、前記基板部材に固定されて前記レバー部材を部分的に覆うカバー部材とを含み、前記レバー部材は、前記長さ方向において対向する軸支端部と操作端部とを有する一方、前記カバー部材は、前記レバー部材の前記軸支端部の一部分を覆うように形成されており、
前記カバー部材はさらに、前記固定した状態にある前記丸棒部材に平行して延びる軸部を有し、前記軸部が前記レバー部材の前記軸支端部を貫通して前記レバー部材を往復旋回運動可能に支持するとともに、前記レバー部材の前記操作端部を前記カバー部材から延出させ、
前記レバー部材と前記基板部材との間にはスプリング部材を介在させて、前記往復旋回運動をする前記レバー部材の前記操作端部を前記基板部材から離隔する方向へ付勢し、前記離隔する方向に前記旋回運動をしたときの前記レバー部材は前記カバー部材の所要部位に当接させることによって前記旋回運動を停止させ、
前記レバー部材と前記カバー部材とではまた、前記往復旋回運動する前記丸棒部材の前記径方向における進入と退出とが可能な第1凹欠部を前記カバー部材に形成するとともに、前記丸棒部材の長さ方向において前記第1凹欠部と部分的に重なる状態にあって、前記レバー部材の前記往復旋回運動に伴って前記重なる状態を変化させることが可能な第2凹欠部を前記レバー部材に形成し、前記第1凹欠部と前記第2凹欠部との前記重なる状態の変化によって前記丸棒部材の前記第1凹欠部に対する進入と、退出と、前記進入の後における固定状態の維持とが可能に形成され、
前記レバー部材と前記基板部材との間には、前記往復旋回運動をして前記レバー部材の前記操作端部が前記基板部材に接近したときに対向する前記操作端部における第1部位と前記基板部材における第2部位とが、これら第1部位と第2部位との間に作用する磁力によって分離可能に密着して、前記レバー部材の一時的な固定状態の維持が可能であることを特徴とする前記固定用金具。
【請求項2】
前記カバー部材における前記第1凹欠部は、前記丸棒部材が前記往復旋回運動をするときに、自由に進入・退出できる形状に形成される一方、前記レバー部材における前記第2凹欠部は、前記第2凹欠部を画成する第1周壁部とそれにつながる第2周壁部とを有し、前記第1周壁部は、前記レバー部材の前記操作端部における前記第1部位が前記基板部材の前記第2部位に密着していると、前記カバー部材の前記第1凹欠部とは重なることのない状態にある一方、前記レバー部材の前記第1部位が前記基板部材の前記第2部位から離隔して前記カバー部材の前記所要部位に当接しているときには、前記丸棒部材の前記長さ方向で見たときに、前記第1凹欠部の一部分に重なって、前記第1凹欠部に進入している前記丸棒部材の前記第1凹欠部からの退出を阻止するように作用する部位であり、前記第2周壁部は、前記レバー部材の前記第1部位が前記基板部材の第2部位に密着しているときに、前記丸棒部材の長さ方向で見ると、前記第1凹欠部の一部分に重なっていて、前記第1凹欠部から退出しようとする前記丸棒部材が圧接することによって、前記レバー部材の前記第1部位前記基板部材の前記第2部位から離脱させるように作用する部位である請求項1記載の固定用金具。
【請求項3】
前記磁力は、前記レバー部材の前記第1部位および前記基板部材の前記第2部位のいずれか一方に位置する永久磁石によるものであり、前記いずれか一方に対するもう一方は、前記磁力が作用する磁性体である請求項1又は2記載の固定用金具。
【請求項4】
前記丸棒部材の前記第1凹欠部への進入前後における前記レバー部材は、前記第1周壁部が前記第1凹欠部と重なる状態にあって、前記丸棒部材が前記第1凹欠部に進入するときには、前記第1凹欠部の外側から前記第1周壁部を押圧することによって、前記レバー部材を前記付勢に抗して前記基板部材に接近する方向へ旋回させながら進入し、前記丸棒部材が前記第1凹欠部に進入した後には、前記レバー部材が前記付勢によって前記丸棒部材が進入する前の状態に復帰して、前記丸棒部材の前記第1凹欠部からの退出が実質的に不可能な状態である前記丸棒部材に対しての第1ロック状態となる請求項に記載の固定用金具。
【請求項5】
前記丸棒部材が前記第1凹欠部に進入している前記固定用金具では、前記レバー部材を時計方向へ旋回させて、前記磁力の作用下に前記第1部位と前記第2部位とを密着させると、前記レバー部材の前記第2周壁部が前記第1凹欠部に進入して、前記第1凹欠部から退出しようとする前記丸棒部材が前記第1凹欠部の内側からその第2周壁部に圧接可能な状態にあって、圧接したときには前記第1部位を前記第2部位から離間させることが可能である前記丸棒部材に対しての第2のロック状態となる請求項に記載の固定用金具。
【請求項6】
前記第2のロック状態にある前記固定用金具では、前記丸棒部材を前記第1凹欠部から退出する方向へ移動させると、前記丸棒部材が前記第1凹欠部の内側から前記レバー部材における前記第2周壁部を押圧して、前記レバー部材における前記第1部位が前記基板部材における前記第2部位から離間するように前記レバー部材を反時計方向へ旋回させることによって、前記レバー部材における前記第2周壁部が前記第1凹欠部から退却して、前記丸棒部材の前記第1凹欠部からの退出が可能になる請求項に記載の固定用金具。
【請求項7】
前記固定用金具は、折り畳み式の一対の天板を有する卓球台に使用されるものであって、折り畳む前の前記天板のそれぞれは、競技中の使用面である上面とその反対面である下面とを有するとともに、前記天板にセットされるネットに沿って延びる横方向と、前記横方向に直交するとともに前記上面に沿って延びる縦方向と、前記横方向と前記縦方向とに直交する上下方向とを有し、前記天板の少なくとも一方における前記下面には、前記横方向において対を成す折り畳み式の脚部の複数対が形成されていて、少なくとも一対の前記脚部は、前記横方向へ延びる棒状連結部材によって継がれており、前記棒状連結部材は前記丸棒部材であるか、前記丸棒部材が取付けられているもののいずれかであって、前記天板が折り畳まれると、前記脚部は前記棒状連結部材とともに前記天板の前記下面に接近するように折り畳まれて、前記丸棒部材である前記棒状連結部材および前記棒状連結部材に取り付けられている前記丸棒部材のいずれかが前記下面に取り付けられている前記固用金具の前記第1凹欠部に進入して、前記固定状態に置かれ、一対の前記天板の折り畳まれた状態が維持される請求項1-6のいずれかに記載の固定用金具。
【請求項8】
前記折り畳まれた状態にある一対の前記天板が使用状態にまで広げられるとともに、折り畳まれていた前記複数対の支脚が使用可能な状態にまで復帰する過程において、前記丸棒部材である前記棒状連結部材および前記棒状連結部材に取り付けられた前記丸棒部材のいずれかが前記固定用金具の前記第1凹欠部から退出する請求項7記載の固定用金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定用金具に関し、より詳しくは、往復旋回運動する丸棒部材を一時的に固定しておくために使用するのに好適な固定用金具に関する。
【背景技術】
【0002】
開閉する一対の天板を有する折り畳み式の卓球台は周知である。また、その卓球台において、一対の天板を閉じた状態に保持するための手段は公知である。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の卓球台は、一対の天板を垂直姿勢に保持するストッパーを有するもので、ストッパーは卓球台における支持脚側と天板側とのいずれか一方に設けられた永久磁石と、もう一方に設けられて永久磁石に吸着される磁性体とによって構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-162129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記公知の手段では、永久磁石と磁性体とが接触する直前には一対の天板が急激に閉じる方向へ動き、接触していた永久磁石と磁性体とが離間する時には一対の天板が急激に開く方向へ動くというように、一対の天板の動き方が急激に変化するという扱いにくさが生じることを避け難い。このような扱いにくさは、磁力が永久磁石と磁性体との離間距離に対応して急激に変化することに起因している。
【0006】
そこで、本発明では、例えば開閉可能な一対の天板を有する卓球台に使用した場合に、一対の天板がゆるやかに開閉することを可能にする天板に対しての固定用金具の提供を課題にしている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明が対象とするのは、互いに直交する長さ方向と径方向とを有していて前記径方向において往復旋回運動する丸棒部材の周面に、前記径方向の外側から離脱可能に当接して前記往復旋回運動を阻止することにより前記丸棒部材を一時的に固定した状態に置くことが可能である前記丸棒部材に対しての固定用金具である。
【0008】
かかる固定用金具において、本発明が特徴とするところは、次のとおりである。すなわち、前記固定用金具は、平坦面を有する基板部材と、前記固定した状態に置いた前記丸棒部材と交差する方向へ長さ方向が延びるレバー部材と、前記基板部材に固定されて前記レバー部材を部分的に覆うカバー部材とを含む。前記レバー部材は、前記長さ方向において対向する軸支端部と操作端部とを有する一方、前記カバー部材は、前記レバー部材の前記軸支端部の一部分を覆うように形成されている。前記カバー部材はさらに、前記固定した状態にある前記丸棒部材に平行して延びる軸部を有し、前記軸部が前記レバー部材の前記軸支端部を貫通して前記レバー部材を往復旋回運動可能に支持するとともに、前記レバー部材の前記操作端部を前記カバー部材から延出させる。前記レバー部材と前記基板部材との間にはスプリング部材を介在させて、前記往復旋回運動をする前記レバー部材の前記操作端部を前記基板部材から離隔する方向へ付勢し、前記離隔する方向に前記旋回運動をしたときの前記レバー部材は前記カバー部材の所要部位に当接させることによって前記旋回運動を停止させる。前記レバー部材と前記カバー部材とではまた、前記往復旋回運動する前記丸棒部材の前記径方向における進入と退出とが可能な第1凹欠部を前記カバー部材に形成するとともに、前記丸棒部材の長さ方向において前記第1凹欠部と部分的に重なる状態にあって、前記レバー部材の前記往復旋回運動に伴って前記重なる状態を変化させることが可能な第2凹欠部を前記レバー部材に形成し、前記第1凹欠部と前記第2凹欠部との前記重なる状態の変化によって前記丸棒部材の前記第1凹欠部に対する進入と、退出と、前記進入の後における固定状態の維持とが可能に形成される。前記レバー部材と前記基板部材との間には、前記往復旋回運動をして前記レバー部材の前記操作端部が前記基板部材に接近したときに対向する前記操作端部における第1部位と前記基板部材における第2部位とが、これら第1部位と第2部位との間に作用する磁力によって分離可能に密着し、前記レバー部材の一時的な固定状態の維持が可能である。
【0009】
本発明の実施態様の一つにおいて、前記カバー部材における前記第1凹欠部は、前記丸棒部材が前記往復旋回運動をするときに、自由に進入・退出できる形状に形成される一方、前記レバー部材における前記第2凹欠部は、前記第2凹欠部を画成する第1周壁部とそれにつながる第2周壁部とを有し、前記第1周壁部は、前記レバー部材の前記操作端部における前記第1部位が前記基板部材の前記第2部位に密着していると、前記カバー部材の前記第1凹欠部とは重なることのない状態にある一方、前記レバー部材の前記第1部位が前記基板部材の前記第2部位から離隔して前記カバー部材の前記所要部位に当接しているときには、前記丸棒部材の前記長さ方向で見たときに、前記第1凹欠部の一部分に重なって、前記第1凹欠部に進入している前記丸棒部材の前記第1凹欠部からの退出を阻止するように作用する部位であり、前記第2周壁部は、前記レバー部材の前記第1部位が前記基板部材の第2部位に密着しているときに、前記丸棒部材の長さ方向で見ると、前記第1凹欠部の一部分に重なっていて、前記第1凹欠部から退出しようとする前記丸棒部材が圧接することによって、前記レバー部材の前記第1部位を前記基板部材の前記第2部位から離脱させるように作用する部位である。
【0010】
本発明の実施態様の他の一つにおいて、前記磁力は、前記レバー部材の前記第1部位および前記基板部材の前記第2部位のいずれか一方に位置する永久磁石によるものであり、前記いずれか一方に対するもう一方は、前記磁力が作用する磁性体である。
【0011】
本発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記丸棒部材の前記第1凹欠部への進入前後における前記レバー部材は、前記第1周壁部が前記第1凹欠部と重なる状態にあって、前記丸棒部材が前記第1凹欠部に進入するときには、前記第1凹欠部の外側から前記第1周壁部を押圧することによって、前記レバー部材を前記付勢に抗して前記基板部材に接近する方向へ旋回させながら進入し、前記丸棒部材が前記第1凹欠部に進入した後には、前記レバー部材が前記付勢によって前記丸棒部材が進入する前の状態に復帰して、前記丸棒部材の前記第1凹欠部からの退出が実質的に不可能な状態である前記丸棒部材に対しての第1のロック状態となる。
【0012】
本発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記丸棒部材が前記第1凹欠部に進入している前記固定用金具では、前記レバー部材を時計方向へ旋回させて前記磁力の作用下に前記第1部位と前記第2部位とを密着させると、前記レバー部材の前記第2周壁部が前記第1凹欠部に進入して、前記第1凹欠部から退出しようとする前記丸棒部材が前記第1凹欠部の内側からその第2周壁部に圧接可能な状態にあって、圧接したときには前記第1部位を前記第2部位から離間させることが可能である前記丸棒部材に対しての第2のロック状態となる。
【0013】
本発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記第2のロック状態にある前記固定用金具では、前記丸棒部材を前記第1凹欠部から退出する方向へ移動させると、前記丸棒部材が前記第1凹欠部の内側から前記レバー部材における前記第2周壁部を押圧して、前記レバー部材における前記第1部位が前記基板部材における前記第2部位から離間するように前記レバー部材を反時計方向へ旋回させることによって、前記レバー部材における前記第2周壁部が前記第1凹欠部から退却して、前記丸棒部材の前記第1凹欠部からの退出が可能になる。
【0014】
本発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記固定用金具は、折り畳み式の一対の天板を有する卓球台に使用されるものであって、折り畳む前の前記天板のそれぞれは、競技中の使用面である上面とその反対面である下面とを有するとともに、前記天板にセットされるネットに沿って延びる横方向と、前記横方向に直交するとともに前記上面に沿って延びる縦方向と、前記横方向と前記縦方向とに直交する上下方向とを有し、前記天板の少なくとも一方における前記下面には、前記横方向において対を成す折り畳み式の脚部の複数対が形成されていて、少なくとも一対の前記脚部は、前記横方向へ延びる棒状連結部材によって継がれており、前記棒状連結部材は前記丸棒部材であるか、前記丸棒部材が取付けられているもののいずれかであって、前記天板が折り畳まれると、前記脚部は前記棒状連結部材とともに前記天板の前記下面に接近するように折り畳まれて、前記丸棒部材である前記棒状連結部材および前記棒状連結部材に取り付けられている前記丸棒部材のいずれかが前記下面に取り付けられている前記固用金具の前記第1凹欠部に進入して、前記固定状態に置かれ、一対の前記天板の折り畳まれた状態が維持される。
【0015】
本発明の実施態様のさらに他の一つにおいて、前記折り畳まれた状態にある一対の前記天板が使用状態にまで広げられるとともに、折り畳まれていた前記複数対の支脚が使用可能な状態にまで復帰する過程において、前記丸棒部材である前記棒状連結部材および前記棒状連結部材に取り付けられた前記丸棒部材のいずれかが前記固定用金具の前記第1凹欠部から退出する。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る固定用金具では、径方向において往復旋回運動する丸棒部材を一時的に固定した状態に置くために、その固定を可能にするカバー部材とレバー部材とを使用し、カバー部材には丸棒部材の進入と退出とが可能な第1凹欠部を形成し、レバー部材はバネ付勢下にあって旋回運動し、レバー部材の第2凹欠部は第1凹欠部に重なる状態を変化させることができるようにしてあり、丸棒部材の第1凹欠部に対する進入と退出とは、旋回運動するレバー部材と接触した状態で進行するから、この固定用金具を折り畳み式の卓球台に使用したときには、閉じた状態にある一対の天板が急激に開くということを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】折り畳み式の卓球台の斜視図。
図2】折り畳まれる過程にある卓球台の斜視図。
図3】折り畳まれた卓球台が第1のロック状態にあるときの卓球台の斜視図。
図4】折り畳まれた卓球台が第2のロック状態にあるときの卓球台の斜視図。
図5】(a)は、第1のロック状態にあるときの固定用金具とロック用金具の斜視図、(b)はカバー部材が外してあるときの(a)と同様な図。
図6】(a)~(c)によって、レバー部材の動きの一例を示す図。
図7】(a)~(c)によって、レバー部材についての、図6とは異なる態様の動きを例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付の図面を参照して本発明に係る固定用金具の詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0019】
図1は、本発明に係る固定用金具10(図2参照)が使用されている卓球台100の斜視図である。卓球台100は、互いに直交する縦方向Xと上下方向Yと横方向Zとを有し、縦方向Xに一対の天板101が並んだ状態にあり、ネット(図示せず)を横方向Zに延びるようにセットすることができる。天板101のそれぞれは、上面102と下面103とを有し、下面103からは一対の直状の脚部106と、一対のキャスター付きの脚部107とが床面(図示せず)にまで延びている。卓球台100は、折り畳み式のもので、一対の天板101がほぼ垂直になるような状態(後記図3参照)に折り畳むことができる。天板101のそれぞれにおいて、一対の脚部106の間には補強用角材113が延び、一対の脚部107の間には補強用角材114が延びている。図示された2本の補強用角材114のうちの少なくとも一方には、本発明に係る固定用金具10に作用するロック用金具50が取り付けられている。
【0020】
図2は、折り畳まれる過程にある卓球台100の斜視図とその部分拡大図である。詳細な説明は省略するが、卓球台100では、リンク機構111,112(図1参照)を作用させながら一対の天板101のそれぞれがほぼ垂直となるように互いに接近し、脚部106が天板101の下面103に向かって折り畳まれる一方、脚部107がキャスター107aを床面(図示せず)に接触させた状態で起立し、垂直となる天板101を支えている。脚部107はまた、直状部107bが天板101の下面103に接近するように動くとともに、補強用角材114も下面103に接近するように動いている。その補強用角材114を部分的に破断することによって示されているように、補強用角材114に取り付けられたロック用金具50が天板101の下面103に取り付けられた固定用金具10に接近している(図2の部分拡大図参照)。図示例のロック用金具50は、丸棒の曲げ加工品であって、図1における補強用角材114から水平に延びる一対の脚部51と、一対の脚部51をつなぐように横方向Zへ延びる係合部52とを有する。
【0021】
図3は、図2における一対の天板101がさらに接近してほぼ垂直に立った状態にあるときの卓球台100の斜視図と、その斜視図の部分拡大図である。補強用角材114が部分的に破断された状態にあることによって明らかなように、図2のロック用金具50は、固定用金具10にさらに接近して、図示の如く互いに係合した状態となる。固定用金具10とロック用金具50とが、一対の天板101のそれぞれに使用されている場合(図1参照)には、図3では下面103の見えない天板101においても、固定用金具10とロック用金具50とが係合した状態にある。図示の状態にある卓球台100では、後記するように脚部107が縦方向Xへ動くことによって、一対の天板101が矢印Aで示す方向と矢印Bで示す方向とに動いて、図2図1の状態にまで開くことができないという折り畳み状態にあり、本発明では固定用金具10とロック用金具50とのこのような状態を第1のロック状態にあるという。一対の天板100を図3の如くに折り畳むことのできる卓球台100は、内折一体式の卓球台と呼ばれることがある。
【0022】
図4は、図3の卓球台100において固定用金具10の後記レバー部材12を手操作によって後記基板部材11に向かって旋回させたときの状態を示す図3と同様な卓球台100の斜視図である。かかる状態にある固定用金具10とロック用金具50とは、本発明においての第2のロック状態にあるという。第2のロック状態については、後記図6を使用して説明する。
【0023】
図5の(a),(b)において、(a)は図3における固定用金具10と、これに係合しているロック用金具50との拡大図であり、(b)は後記カバー部材12が外された状態にあるときの図5(a)と同様な図である。固定用金具10は、天板101の下面103に止めねじ40を介して固定される基板部材11と、基板部材11に小ねじ41を介して取り付けられているカバー部材12と、カバー部材12にボルト42とナット43(図5(a)参照)とを介して取り付けられているレバー部材13とを有する。カバー部材12は、レバー部材13に対する収容凹部16を形成する一対の側壁17と、側壁17どうしをつなぐ頂壁18とを有し、側壁17のそれぞれと頂壁18とにはロック用金具50が進入・退出する第1凹欠部19が形成されている。レバー部材13は、後記図6(a)を併せて参照すると明らかなように、カバー部材12の一対の側壁17の間に延びるボルト42に対して回転可能に取り付けられた軸支端部21と、軸支端部21の反対端部である操作端部22とを有する。ボルト42には、付勢ばね23が取り付けられている。付勢ばね23は、一端部23aが基板部材11に圧接し、一端部23aの反対端部23bがレバー部材13の軸支端部21に圧接することによって、レバー部材13を図においての反時計方向Dへ付勢し、レバー部材13がカバー部材12の頂壁18に当接している。
【0024】
さらに、図5(a)においてカバー部材12の第1凹欠部19に進入していたロック用金具50の係合部52は、図5(b)に示されているとおり、レバー部材13の軸支端部21から延びた第1周壁部21aと第2周壁部21bとが画成する第2凹欠部20にも進入している。
【0025】
図6(a),(b),(c)は、図5(a)のVI-VI線矢視図を使用して、ロック用金具50における係合部52が固定用金具10に係合する過程を示している。図6(a)において、カバー部材12における第1凹欠部19と、レバー部材13における第2凹欠部20とは、部分的に重なり合い、横方向Z(図5参照)へ延びる空隙30を形成するとともに、レバー部材13の第1周壁部21aの一部分がカバー部材12の第1凹欠部19へ進入して、ロック用金具50の係合部52の径よりも幅が小さい導入路31を形成している。その係合部52は、カバー部材12の内側に向かって、換言すると、空隙30に向かってレバー部材13の第1周壁部21aに圧接すると、図6(b)に示すように、その第1周壁部21aを強く押圧して、レバー部材13を時計方向Eへ旋回させるので、導入路31が拡開し、第1凹欠部19への進入が可能になる。ここで係合部52が第1周壁部21aを強く押圧するということは、図2における一対の天板101が閉じる方向へ動くこと、すなわち図3における状態へと変化する過程にあることを意味している。
【0026】
図6(c)において、ロック用金具50の係合部52が第1凹欠部19に進入すると、レバー部材13が付勢ばね23の作用によって反時計方向Dへ旋回して、レバー部材13の第1周壁部21aがカバー部材12における第1凹欠部19の入口部分19aに進出し、ロック用金具50が第1凹欠部19から退出することを防ぐ。第1周壁部21aでは、第1凹欠部19から退出しようとするロック用金具50の係合部52と接触する部位が第1凹欠部19の内側から係合部52によって押圧されても、レバー部材13を時計方向Eへ旋回させるようなトルクの生じ難い形状を有している。それゆえ、図3における一対の天板101は矢印A,Bで示す開く方向へ動くことがなく、卓球台100は、安定的に閉じた状態を維持している。本発明では、この状態を第1のロック状態という。第1のロック状態では、図3の一対の天板101が矢印A,Bで示す方向へ開くように天板101を介してロック用金具50に力を加え、ロック用金具50が第1凹欠部19の内側からレバー部材13を時計方向Dへ無理に旋回させない限り、固定用金具10とロック用金具50との係合が解けて、天板101が開いた状態になるということがない。このように、第1のロック状態では、丸棒部材であるロック用金具50が、実質的な意味において、固定用金具10の第1凹欠部19から退出することができない。
【0027】
図7(a),(b),(c)は、図6(c)の状態にあるレバー部材13のさらなる動きを示すために用意された固定用金具10の図6と同様な断面図である。
まず、図7(a)についてみると、図6(c)の状態にあったレバー部材13は、手操作によって、バネ23の付勢に抗して操作端部22を時計方向Eへ旋回させると、操作端部22に取り付けられている永久磁石35によって形成される第1部位61が、鉄などの磁性体で形成されていて第1部位61と対向することとなる基板部材11においての第2部位62に密着し、図7(a)の状態になる。その図7(a)におけるレバー部材13の軸支端部21では、第1周壁部21aが時計方向へ旋回して、カバー部材12の第1凹欠部19の外へ移動する一方、第2周壁部21bが第1凹欠部19に進入して第1凹欠部19の入り口部分19aを図示の如く塞ぐ。このような状態にあるレバー部材13の第1部位61と第2周壁部21bとは、ロック用金具50が第1凹欠部19から簡単には退出することがないように作用する。すなわち、図7(a)の状態にある固定用金具10は、操作端部22の第1部位61が磁力の作用下に基板部材11の第2部位62に密着する。そのときの第2周壁部21bは、退出しようとするロック用金具50が当接する位置にあって、その退出を妨げるように作用している。ただし、第2周壁部21bにおいて、ロック用金具50が当接する部位の形状は、その当接によって、レバー部材13を反時計方向Dへ旋回させることができるトルクを生じるように形成されている。このような状態に置かれているロック用金具50は、本発明においての第2のロック状態にあるという。
【0028】
固定用金具10とロック用金具50とが図7(a)の状態、すなわち第2のロック状態にあるときの卓球台100は、図4に示されるように、一対の天板101が折り畳まれた状態にはあるが、開く方向A,Bへの力が作用すると、一対の天板101はスムーズに開くことができるというものである。換言すると、ロック用金具50が後記図7(b)に示されているように第2周壁部21bを図の下方から押圧して、レバー部材13と基板部材11との密着を解くことができるので、折り畳まれていた一対の天板101は、スムーズに開くことができるという状態にある。
【0029】
図7(b)における固定用金具10では、図7(a)におけるレバー部材13の第2周壁部21bにロック用金具50が作用するか、またはレバー部材13の摘持用端部22に指(図示せず)を当てて、その第1部位61を基板部材11の第2部位62から離間させて、レバー部材13を付勢ばね23の作用下に反時計方向Dへ旋回させるときの状態を示している。レバー部材13では、摘持用端部22の反時計方向Dへの旋回に伴って、軸支端部21も反時計方向Dへ動き、第2周壁部21bがカバー部材12の第1凹欠部19から退出して、第1凹欠部19の入り口部分19aが開放状態となり、ロック用金具50の第1凹欠部19からの退出が可能になる。換言すると、一対の天板101が図1の状態にまで戻ることができるようになる。
【0030】
図7(c)における固定用金具10では、反時計方向Dへ旋回運動したレバー部材13の摘持用端部22がカバー部材12に衝接して、その旋回運動を止めた状態、すなわち図6(a)の状態と同じ状態にある。ただし、ロック用金具50の係合部52は、カバー部材12の第1凹欠部19から退出して、固定用金具10との係合を解いた状態にある。
【0031】
固定用金具10とロック用金具50とが図7(c)の状態にあるときの卓球台100は、図2の状態にあるときのものである。その卓球台100は、二人または三人の作業者(図示せず)が声を掛け合いながら協同して操作することによって、一対の天板101を図1の状態にまで戻すことが好ましい。固定用金具10に対して係合状態にあるロック用金具50は、その係合状態を解くときに、係合部52がレバー部材13における第1周壁部21aまたは第2周壁部21bに接触しながらカバー部材12の第1凹欠部19から退出するから、閉じた状態にある一対の天板101が急激に開く方向へ動くということがない。
【0032】
図示例の如くに作用する固定用金具10は、その用途が卓球台である場合、その卓球台は卓球台100の如き内折一体式のものに限られるわけではなく、一対の天板を個々別々に分離してほぼ垂直に立てた状態で保管することのできるセパレート型の卓球台に対しても使用することができる。また、固定用金具10の相手方となるロック用金具50における係合部52は、図示例の如く、径方向の断面形状が円形であることが好ましいが、固定用金具10に対しての係合が可能であるならば、円形に準じる断面形状のものであってもよい。図示例においてレバー部材13に取り付けられて第1部位61を形成している永久磁石35は、基板部材11に取り付けられて基板部材11の第2部位62を形成するものであってもよい。さらにはまた、固定用金具10の組み立てや取り付けのために使用される手段、例えば小ねじ41やボルト42、ナット43等は、スポット溶接、リベットの使用、カシメ加工等の適宜の手段に変更することができる。
【符号の説明】
【0033】
10 固定用金具
11 基板部材
12 カバー部材
13 レバー部材
16 収容凹部
17 側壁
18 頂壁
19 第1凹欠部
19a 入り口部分
20 第2凹欠部
21 軸支端部
22 操作端部
23 付勢ばね
23a 一端部
30 空隙
31 導入路
35 永久磁石
50 ロック用金具
52 丸棒部材(ロック用金具の係合部)
61 第1部位
62 第2部位
100 卓球台
101 天板
102 上面
103 下面
106 脚部
107 脚部
113 棒状連結部材(補強部材)
114 棒状連結部材(補強部材)
D 反時計方向
E 時計方向
L 丸棒部材の長さ方向
M 丸棒部材の径方向
X 縦方向
Y 上下方向
Z 横方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7