(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】断熱構造体の装着方法及び取り外し方法
(51)【国際特許分類】
F16L 59/14 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
F16L59/14
(21)【出願番号】P 2022512995
(86)(22)【出願日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2020014818
(87)【国際公開番号】W WO2021199285
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592246613
【氏名又は名称】旭興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】隅田 幸一
(72)【発明者】
【氏名】千葉 秀之
(72)【発明者】
【氏名】中村 日出雄
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/098320(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/098319(WO,A1)
【文献】特開2019-015357(JP,A)
【文献】特開2016-194368(JP,A)
【文献】実開平04-054676(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 59/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温流体により冷却される円筒状又は中空球状の断熱対象物の周方向に複数の断熱部材を並設して、前記複数の断熱部材により前記断熱対象物の外周を覆う状態で前記断熱対象物を断熱する断熱構造体の装着方法であって、
前記断熱部材の前記周方向に隣接する他の断熱部材に対向する端面に、当該対向端面から前記周方向に凹入する凹入溝部が、当該断熱部材の長手方向に沿う溝状で、且つ、入口部の前記断熱部材の厚さ方向に沿う開口幅より前記厚さ方向において広幅となる広幅部を前記周方向に沿う奥部側に備える状態に予め形成され、
前記断熱部材の長手方向に沿う長尺状の接続部材が、前記周方向に隣接する前記断熱部材夫々の前記凹入溝部に係合する一対の係合部を前記周方向に沿って備える状態に予め形成され、
前記断熱部材を前記断熱対象物に装着する際に、前記周方向に隣接させる前記断熱部材を、前記対向端面同士を突き合せた状態で前記断熱対象物の外周部に配置する配置工程、及び、隣接する前記断熱部材夫々の前記凹入溝部に対して前記接続部材を挿入する挿入工程を順次行い、
前記挿入工程を行う前に、隣接する前記断熱部材夫々の前記凹入溝部に対して前記接続部材を挿入する整形工程を行う断熱構造体の装着方法。
【請求項2】
前記断熱対象物が内部に前記低温流体が通流する円筒管であり、
前記断熱部材が、前記円筒管の軸心方向に沿って伸びる板状でかつ前記軸心方向視にて円弧状の湾曲板状である請求項1に記載の断熱構造体の装着方法。
【請求項3】
前記断熱部材が、前記周方向に沿って3つ以上並ぶ状態で設けられ、
前記断熱部材を前記円筒管に装着する前に、複数の前記断熱部材のうちの一部の断熱部材について、前記周方向に隣接させる前記断熱部材を、前記対向端面同士を突き合せた状態に位置させて、隣接する前記断熱部材夫々の前記凹入溝部に対して前記接続部材を挿入する事前組付工程を行い、当該事前組付工程に組付けられた前記断熱部材の組を前記配置工程において配置する請求項2に記載の断熱構造体の装着方法。
【請求項4】
前記断熱部材として、先に装着された前記断熱部材の外周部に別の前記断熱部材を装着する形態で前記円筒管の径方向に複数の断熱層を形成すべく、曲率半径が異なる複数種の断熱部材が設けられ、
前記断熱部材を前記断熱対象物に装着する際に、前記断熱部材のうちの前記曲率半径が小さな断熱部材ほど先に装着する形態で複数種の前記断熱部材を装着する請求項2又は3に記載の断熱構造体の装着方法。
【請求項5】
前記複数の断熱層のうちの内方側の断熱層の少なくとも一部について、前記凹入溝部を形成せずに、前記凹入溝部に前記接続部材を挿入しないで前記断熱部材を配置する請求項4に記載の断熱構造体の装着方法。
【請求項6】
前記周方向に隣接させる前記断熱部材の前記対向端面同士を突き合せた状態に位置させる対向箇所を、前記複数の断熱層のうちの前記径方向に隣接する断熱層において前記周方向の位相を異ならせるように、前記断熱部材を配置する請求項4又は5に記載の断熱構造体の装着方法。
【請求項7】
前記凹入溝部が、前記入口部から前記周方向に沿って凹入する周方向凹入部分と、当該周方向凹入部分の端部から前記広幅部として前記
円筒管の径方向外方に向けて凹入する径方向凹入部分とを備える形態であり、
前記接続部材を挿入しないときには、前記
断熱部材の端面部における前記凹入溝部の
、前記
円筒管の径方向内方側に位置する部分を切除して、当該切除部の前記径方向外方側部に前記径方向外方に凹入する係止用凹部を形成し、
前記断熱部材の長手方向に沿う長尺状の連結部材が、前記周方向に隣接する前記断熱部材夫々の前記係止用凹部に係合する一対の係止凸部を前記周方向に沿って備える状態に予め形成され、
前記周方向に隣接させる前記断熱部材を、前記対向端面同士を突き合せた状態に配置する際に、予め配置した前記連結部材に対して前記係止用凹部を係合させるようにする請求項2~6のいずれか1項に記載の断熱構造体の装着方法。
【請求項8】
低温流体により冷却される円筒状又は中空球状の断熱対象物の周方向に複数の断熱部材を並設して、前記複数の断熱部材により前記断熱対象物の外周を覆う状態で前記断熱対象物を断熱する断熱構造体の取り外し方法であって、
前記断熱部材の前記周方向に隣接する他の断熱部材に対向する端面に、当該対向端面から前記周方向に凹入する凹入溝部が、当該断熱部材の長手方向に沿う溝状で、且つ、入口部の前記断熱部材の厚さ方向に沿う開口幅より前記厚さ方向において広幅となる広幅部を前記周方向に沿う奥部側に備える状態に形成され、
前記断熱部材の長手方向に沿う長尺状で、且つ、前記周方向に隣接する前記断熱部材夫々の前記凹入溝部に係合する一対の係合部を前記周方向に沿って備える状態に形成された接続部材が設けられ、
前記周方向に隣接させる前記断熱部材が、前記対向端面同士を突き合せた状態に前記断熱対象物の外周部に配置され、且つ、前記接続部材を隣接する前記断熱部材夫々の前記凹入溝部に対して挿入させた形態で装着され、
前記断熱部材を前記断熱対象物から取り外す際に、前記接続部材における前記一対の係合部を接続する部分を前記対向端面に沿って切断する切断工程、及び、前記断熱部材を前記断熱対象物から離脱させる離脱工程を順次行う断熱構造体の取り外し方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温流体により冷却される円筒状又は中空球状の断熱対象物の周方向に複数の断熱部材を並設して、前記複数の断熱部材により前記断熱対象物の外周を覆う状態で前記断熱対象物を断熱する断熱構造体の装着方法及び断熱構造体の取り外し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
断熱構造体は、LNG等の低温流体を貯留する中空球状の貯留槽又はLNG等の低温流体が流れる円筒状の配管(円筒管)を断熱対象物として、当該断熱対象物の外周を覆う状態で断熱部材を並設して、断熱対象物を断熱するものである。つまり、低温流体が内部に存在することにより冷却される断熱対象物の外周部を断熱するものである。
【0003】
かかる断熱構造体の従来例として、断熱対象物としての円筒状配管の外周を一対の半円筒状断熱部材によって被覆し、一対の半円筒状断熱部材の接合部分にウレタンフォーム発泡剤を充填して発泡固化させて半円筒状断熱部材同士を接合するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の断熱構造体においては、半円筒状断熱部材を配管に装着する(取付ける)際には、一対の半円筒状断熱部材の接合部分にウレタンフォーム発泡剤を充填して半円筒状断熱部材同士を接合することになる。
また、半円筒状断熱部材を配管から取外す際には、ウレタンフォーム発泡剤にて接合されている状態の一対の半円筒状断熱部材の適当箇所を切断することにより、配管から取り外すことが必要となる。
【0006】
したがって、面倒なウレタンフォーム発泡剤の充填作業を行いながら半円筒状断熱部材を装着することになるため、半円筒状断熱部材の装着作業が手間の掛かる面倒な作業となり、また、断熱のために厚さが厚い半円筒状断熱部材を切断しなければならないため、半円筒状断熱部材の取り外し作業に手間の掛かる面倒な作業となるものであった。
しかも、半円筒状断熱部材を切断して取り外すものであるから、半円筒状断熱部材を再使用することが困難となるものであった。
【0007】
尚、半円筒状断熱部材の取付け及び取り外し作業の容易化、並びに、取り外した後の半円筒状断熱部材の再使用を可能にするため、一対の半円筒状断熱部材の接続部分をウレタンフォーム発泡剤で接合しないことが考えられるが、この場合、一対の半円筒状断熱部材の間に隙間が形成されることとなるので、この隙間部分において配管を良好に断熱することができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、断熱対象物を良好に断熱することができ、しかも、断熱部材の装着作業の容易化を図ることができる断熱部材の装着方法を提供する点にある。
また、本発明の他の目的は、断熱部材の取り外し作業の容易化を図ることができ、しかも、断熱部材を再使用できる断熱部材の取り外し方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の断熱構造体の装着方法は、低温流体により冷却される円筒状又は中空球状の断熱対象物の周方向に複数の断熱部材を並設して、前記複数の断熱部材により前記断熱対象物の外周を覆う状態で前記断熱対象物を断熱する断熱構造体の装着方法であって、その特徴構成は、
前記断熱部材の前記周方向に隣接する他の断熱部材に対向する端面に、当該対向端面から前記周方向に凹入する凹入溝部が、当該断熱部材の長手方向に沿う溝状で、且つ、入口部の前記断熱部材の厚さ方向に沿う開口幅より前記厚さ方向において広幅となる広幅部を前記周方向に沿う奥部側に備える状態に予め形成され、
前記断熱部材の長手方向に沿う長尺状の接続部材が、前記周方向に隣接する前記断熱部材夫々の前記凹入溝部に係合する一対の係合部を前記周方向に沿って備える状態に予め形成され、
前記断熱部材を前記断熱対象物に装着する際に、前記周方向に隣接させる前記断熱部材を、前記対向端面同士を突き合せた状態で前記断熱対象物の外周部に配置する配置工程、及び、隣接する前記断熱部材夫々の前記凹入溝部に対して前記接続部材を挿入する挿入工程を順次行い、
前記挿入工程を行う前に、隣接する前記断熱部材夫々の前記凹入溝部に対して前記接続部材を挿入する整形工程を行う点にある。
【0010】
すなわち、断熱対象物の周方向に隣接する断熱部材に対向する端面に、当該対向端面から断熱対象物の周方向に凹入する凹入溝部が、当該断熱部材の長手方向に沿う溝状で、且つ、入口部の断熱部材の厚さ方向に沿う開口幅より厚さ方向において広幅となる広幅部を周方向に沿う奥部側に備える状態に予め形成される。
また、断熱部材の長手方向に沿う長尺状の接続部材が、断熱対象物の周方向に隣接する断熱部材夫々の凹入溝部に係合する一対の係合部を周方向に沿って備える状態に予め形成される。
【0011】
そして、断熱部材を断熱対象物に装着する際には、断熱対象物の周方向に隣接させる断熱部材を、対向端面同士を突き合せた状態で断熱対象物の外周部に配置する配置工程、及び、隣接する断熱部材夫々の凹入溝部に対して接続部材を挿入する挿入工程を順次行うことになる。
【0012】
断熱部材が断熱対象物の外周部に装着された状態においては、断熱対象物の周方向に隣接する断熱部材が接続部材にて接続された状態となり、かつ、隣接する断熱部材の対向端面の間に接続部材が位置することになるから、隣接する断熱部材同士の間に隙間が形成されることを回避できるため、断熱対象物を良好に断熱することができる。
【0013】
しかも、断熱部材を断熱対象物に装着することが、断熱対象物の外周部に配置した断熱部材の凹入溝部に対して接続部材を挿入することによって行われるため、断熱部材の装着作業の容易化を図ることができる。
また、接続部材を隣接する断熱部材夫々の凹入溝部に対して挿入する挿入工程を行う前に、隣接する断熱部材夫々の凹入溝部に対して接続部材を挿入する整形工程を行うことにより、接続部材を隣接する断熱部材夫々の凹入溝部に対して良好に挿入することができる。
つまり、製作誤差等により凹入溝部の形状が正常な形状とは少し異なっている等のために、接続部材を隣接する断熱部材夫々の凹入溝部に対して挿入し難い状態となる虞があるが、整形工程を行うことにより、接続部材を隣接する断熱部材夫々の凹入溝部に対して良好に挿入することができる。
尚、整形工程は、挿入工程を行う前に、必ず行うようにしてもよいが、挿入工程を行ったときに、隣接する断熱部材の凹入溝部に対して接続部材を挿入し難い場合において、整形工程を行うようにする手順で実施してもよい。
【0014】
要するに、本発明の断熱構造体の装着方法によれば、断熱対象物を良好に断熱することができ、しかも、断熱部材の装着作業の容易化を図ることができる。
更に、断熱部材の凹入溝部に対して接続部材を良好に挿入することができる。
【0015】
本発明の断熱構造体の装着方法の更なる特徴構成は、前記断熱対象物が内部に前記低温流体が通流する円筒管であり、
前記断熱部材が、前記円筒管の軸心方向に沿って伸びる板状でかつ前記軸心方向視にて円弧状の湾曲板状である点にある。
【0016】
すなわち、円筒管の軸心方向に沿って伸びる板状でかつ軸心方向視にて円弧状の湾曲板状である複数の断熱部材を、断熱対象物としての円筒管の外周部に並べることにより、円筒管の外周部の全体を複数の断熱部材にて適切に覆うことができる。
したがって、円筒管の外周部の全体を複数の断熱部材にて適切に覆うことができるため、円筒管を良好に断熱することができる。
【0017】
要するに、本発明の断熱構造体の装着方法の更なる特徴構成によれば、断熱対象物としての円筒管を良好に断熱することができる。
【0018】
本発明の断熱構造体の装着方法の更なる特徴構成は、前記断熱部材が、前記周方向に沿って3つ以上並ぶ状態で設けられ、
前記断熱部材を前記円筒管に装着する前に、複数の前記断熱部材のうちの一部の断熱部材について、前記周方向に隣接させる前記断熱部材を、前記対向端面同士を突き合せた状態に位置させて、隣接する前記断熱部材夫々の前記凹入溝部に対して前記接続部材を挿入する事前組付工程を行い、当該事前組付工程に組付けられた前記断熱部材の組を前記配置工程において配置する点にある。
【0019】
すなわち、円筒管が大径である場合等において、断熱部材が、周方向に沿って3つ以上並ぶ状態で設けられる。
そして、このように断熱部材が、周方向に沿って3つ以上並ぶ状態で設けられる場合において、断熱部材を円筒管に装着する前に、複数の断熱部材のうちの一部の断熱部材について、周方向に隣接させる断熱部材を、対向端面同士を突き合せた状態に位置させて、隣接する断熱部材夫々の前記凹入溝部に対して接続部材を挿入する事前組付工程を行うことになる。
【0020】
ちなみに、事前組付工程は、例えば、周方向に隣接させる断熱部材を、地面等の載置面に立ち姿勢で載置し、それらの断熱部材の凹入溝部に対して接続部材を上方より挿入させるようにする等により、簡易な作業として行うことができる。
【0021】
したがって、周方向に沿って3つ以上並ぶ状態で設けられる断熱部材のうちには、事前組付工程にて予め接続部材にて接続されている断熱部材の組が存在することになるから、この断熱部材の組を上述の配置工程で円筒管の外周部に配置して、断熱部材を周方向に沿って3つ以上並ぶ状態で装着することができるため、装着作業の容易化を図ることができる。
【0022】
つまり、事前組付工程にて予め接続部材にて接続されている断熱部材の組が存在するから、その組を円筒管の外周部に配置するようにしながら、周方向に沿って3つ以上並ぶ状態で設けられる断熱部材を円筒管の外周部に装着することにより、断熱部材を周方向に沿って3つ以上並ぶ状態で装着する装着作業の容易化を図ることができる。
【0023】
要するに、本発明の断熱構造体の装着方法の更なる特徴構成によれば、断熱部材を周方向に沿って3つ以上並ぶ状態で装着する装着作業の容易化を図ることができる。
【0024】
本発明の断熱構造体の装着方法の更なる特徴構成は、前記断熱部材として、先に装着された前記断熱部材の外周部に別の前記断熱部材を装着する形態で前記円筒管の径方向に複数の断熱層を形成すべく、曲率半径が異なる複数種の断熱部材が設けられ、
前記断熱部材を前記断熱対象物に装着する際に、前記断熱部材のうちの前記曲率半径が小さな断熱部材ほど先に装着する形態で複数種の前記断熱部材を装着する点にある。
【0025】
すなわち、断熱部材として、先に装着された断熱部材の外周部に別の断熱部材を装着する形態で円筒管の径方向に複数の断熱層を形成すべく、曲率半径が異なる複数種の断熱部材が設けられている。
【0026】
そして、断熱部材を断熱対象物に装着する際に、断熱部材のうちの曲率半径が小さな断熱部材ほど先に装着する形態で複数種の断熱部材を装着することにより、複数の断熱層を形成することができる。
したがって、円筒管を複数の断熱層にて覆うことができるから、円筒管を一層適切に断熱することができる。
【0027】
要するに、本発明の断熱構造体の装着方法の更なる特徴構成によれば、円筒管を一層適切に断熱することができる。
【0028】
本発明の断熱構造体の装着方法の更なる特徴構成は、前記複数の断熱層のうちの内方側の断熱層の少なくとも一部について、前記凹入溝部を形成せずに、前記凹入溝部に前記接続部材を挿入しないで前記断熱部材を配置する点にある。
【0029】
すなわち、円筒管を複数の断熱層にて覆う場合において、複数の断熱層のうちの内方側の断熱層の少なくとも一部について、凹入溝部を形成せずに、凹入溝部に接続部材を挿入しないで断熱部材を配置する。
つまり、複数の断熱層のうちの内方側の断熱層は、外方側の断熱層にて覆われて、適切な姿勢に保持されることに鑑みて、複数の断熱層のうちの内方側の断熱層の少なくとも一部について、凹入溝部を形成せずに、凹入溝部に接続部材を挿入しないで断熱部材を配置することになる。
【0030】
したがって、複数の断熱層のうちの内方側の断熱層の少なくとも一部については、凹入溝部を形成せずに、凹入溝部に接続部材を挿入しないものとなるから、凹入溝部を形成する手間を省き、また、接続部材の消費量を減少させることができ、断熱構造の簡素化及び低廉化を図ることができる。
【0031】
要するに、本発明の断熱構造体の装着方法の更なる特徴構成によれば、断熱構造の簡素化及び低廉化を図ることができる。
【0032】
本発明の断熱構造体の装着方法の更なる特徴構成は、前記周方向に隣接させる前記断熱部材の前記対向端面同士を突き合せた状態に位置させる対向箇所を、前記複数の断熱層のうちの前記径方向に隣接する断熱層において前記周方向の位相を異ならせるように、前記断熱部材を配置する点にある。
【0033】
すなわち、円筒管を複数の断熱層にて覆う場合において、周方向に隣接させる断熱部材の対向端面同士を突き合せた状態に位置させる対向箇所を、複数の断熱層のうちの径方向に隣接する断熱層において周方向の位相を異ならせるように、断熱部材を配置することになる。
【0034】
したがって、複数の断熱層のうちの径方向に隣接する断熱層においては、周方向に隣接させる断熱部材の対向端面同士を突き合せた状態に位置させる対向箇所が周方向の位相を異ならせることになるから、周方向に隣接する断熱部材の対向箇所には、他の断熱層の断熱部材における対向箇所でない部分が位置することになるため、周方向に隣接する断熱部材の対向箇所における断熱性を適切に確保できる。
【0035】
つまり、複数の断熱層のうちの径方向に隣接する断熱層において、周方向に隣接させる断熱部材の対向端面同士を突き合せた状態に位置させる対向箇所の周方向の位相を同じ位相にすると、周方向に隣接する断熱部材の対向箇所における断熱性が低下する虞があるが、複数の断熱層のうちの径方向に隣接する断熱層において、周方向に隣接させる断熱部材の対向端面同士を突き合せた状態に位置させる対向箇所の周方向の位相を異ならせることにより、周方向に隣接する断熱部材の対向箇所における断熱性を適切に確保できるのである。
【0036】
要するに、本発明の断熱構造体の装着方法の更なる特徴構成によれば、周方向に隣接する断熱部材の対向箇所における断熱性を適切に確保できる。
【0037】
本発明の断熱構造体の装着方法の更なる特徴構成は、前記凹入溝部が、前記入口部から前記周方向に沿って凹入する周方向凹入部分と、当該周方向凹入部分の端部から前記広幅部として前記円筒管の径方向外方に向けて凹入する径方向凹入部分とを備える形態であり、
前記接続部材を挿入しないときには、前記断熱部材の端面部における前記凹入溝部の、前記円筒管の径方向内方側に位置する部分を切除して、当該切除部の前記径方向外方側部に前記径方向外方に凹入する係止用凹部を形成し、
前記断熱部材の長手方向に沿う長尺状の連結部材が、前記周方向に隣接する前記断熱部材夫々の前記係止用凹部に係合する一対の係止凸部を前記周方向に沿って備える状態に予め形成され、
前記周方向に隣接させる前記断熱部材を、前記対向端面同士を突き合せた状態に配置する際に、予め配置した前記連結部材に対して前記係止用凹部を係合させるようにする点にある。
【0038】
すなわち、凹入溝部が、入口部から周方向に沿って凹入する周方向凹入部分と、当該周方向凹入部分の端部から広幅部として径方向外方に向けて凹入する径方向凹入部分とを備える形態に形成される。
【0039】
そして、円筒管を接続するフランジが位置する等により、接続部材を挿入しないとき、換言すれば、接続部材を挿入できないときには、端面部における凹入溝部の径方向内方側に位置する部分を切除して、当該切除部の径方向外方側部に径方向外方に凹入する係止用凹部を形成する。
加えて、断熱部材の長手方向に沿う長尺状の連結部材が、周方向に隣接する断熱部材夫々の前記係止用凹部に係合する一対の係止凸部を周方向に沿って備える状態に予め形成される。
【0040】
したがって、接続部材を挿入しないときに、周方向に隣接させる断熱部材を、対向端面同士を突き合せた状態に装着するには、予め配置した連結部材に対して断熱部材の係止用凹部を係合させるようにして、周方向に隣接させる断熱部材を、対向端面同士を突き合せた状態に装着する。
つまり、円筒管を接続するフランジが位置する等により、接続部材を挿入できないときにおいても、係止用凹部が形成されている断熱部材を円筒管の外周部に装着して、円筒管を断熱することができる。
【0041】
要するに、本発明の断熱構造体の装着方法の更なる特徴構成によれば、接続部材を挿入できないときにおいても、凹入溝部が形成されている断熱部材を利用しながら、円筒管の外周部に断熱部材を装着して、円筒管を断熱することができる。
【0047】
本発明の断熱構造体の取り外し方法は、低温流体により冷却される円筒状又は中空球状の断熱対象物の周方向に複数の断熱部材を並設して、前記複数の断熱部材により前記断熱対象物の外周を覆う状態で前記断熱対象物を断熱する断熱構造体の取り外し方法であって、その特徴構成は、
前記断熱部材の前記周方向に隣接する他の断熱部材に対向する端面に、当該対向端面から前記周方向に凹入する凹入溝部が、当該断熱部材の長手方向に沿う溝状で、且つ、入口部の前記断熱部材の厚さ方向に沿う開口幅より前記厚さ方向において広幅となる広幅部を前記周方向に沿う奥部側に備える状態に形成され、
前記断熱部材の長手方向に沿う長尺状で、且つ、前記周方向に隣接する前記断熱部材夫々の前記凹入溝部に係合する一対の係合部を前記周方向に沿って備える状態に形成された接続部材が設けられ、
前記周方向に隣接させる前記断熱部材が、前記対向端面同士を突き合せた状態に前記断熱対象物の外周部に配置され、且つ、前記接続部材を隣接する前記断熱部材夫々の前記凹入溝部に対して挿入させた形態で装着され、
前記断熱部材を前記断熱対象物から取り外す際に、前記接続部材における前記一対の係合部を接続する部分を前記対向端面に沿って切断する切断工程、及び、前記断熱部材を前記断熱対象物から離脱させる離脱工程を順次行う点にある。
【0048】
すなわち、断熱部材の周方向に隣接する他の断熱部材に対向する端面に、当該対向端面から断熱対象物の周方向に凹入する凹入溝部が、当該断熱部材の長手方向に沿う溝状で、且つ、入口部の断熱部材の厚さ方向に沿う開口幅より厚さ方向において広幅となる広幅部を周方向に沿う奥部側に備える状態に形成される。
また、断熱部材の長手方向に沿う長尺状の接続部材が、断熱対象物の周方向に隣接する断熱部材夫々の凹入溝部に係合する一対の係合部を周方向に沿って備える状態に形成される。
【0049】
断熱部材を断熱対象物に装着する形態は、周方向に隣接させる断熱部材が、対向端面同士を突き合せた状態に断熱対象物の外周部に配置され、且つ、接続部材を隣接する断熱部材の凹入溝部に対して挿入させた形態となる。
つまり、対向端面同士を突き合せた状態に断熱対象物の外周部に配置され、且つ、接続部材を隣接する断熱部材の凹入溝部に対して挿入させた形態で装着される断熱部材によって、断熱対象物が断熱されることになる。
【0050】
そして、断熱部材を断熱対象物から取り外す際には、接続部材における一対の係合部を接続する部分を対向端面に沿って切断する切断工程、及び、断熱部材を断熱対象物から離脱させる離脱工程を順次行うことになる。
【0051】
切断工程としては、周方向に隣接する断熱部材の対向端面の間にカッターを挿入して、カッターを対向端面に沿って移動させることにより、接続部材における一対の係合部を接続する部分を対向端面に沿って切断する工程とすることができるものであり、断熱部材よりも厚さが薄い接続部材はカッターにて切断し易く、また、対向端面にてカッターを案内できる等により、カッターを対向端面に沿って良好に移動させることができるものであるため、切断工程を容易に行うことができる。
【0052】
そして、接続部材における一対の係合部を接続する部分を対向端面に沿って切断すれば、接続部材が2分割されることになり、周方向に隣接する断熱部材に対する接続部材による接続が解除されるから、断熱部材を断熱対象物から取り外す離脱工程を容易に行うことができる。
【0053】
断熱対象物から離脱させた断熱部材には、切断された接続部材が残存することになるが、この接続部材の残存物は、例えば、凹入溝部の入口部を通して凹入溝部の内部に挿入した押圧具にて押し出す等、凹入溝部の入口部を通して扱うようにしながら、断熱部材を損傷することなく、断熱部材から容易に外すことができ、その結果、断熱部材を再利用することができる。
【0054】
要するに、本発明の断熱構造体の取り外し方法によれば、断熱部材の取り外し作業の容易化を図ることができ、しかも、断熱部材を再使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】断熱部材の装着状態を示す縦断側面図である。
【
図2】断熱部材及び端部用断熱部材の装着状態を示す切欠斜視図である。
【
図3】断熱部材の装着状態を示す切欠斜視図である。
【
図5】接続部材と断熱部材との関係を示す分解斜視図である。
【
図6】断熱部材における凹入溝部を示す正面図である。
【
図8】第1図におけるVIII‐VIII線矢視図である。
【
図9】端部用断熱部材の装着手順を示す正面図である。
【
図11】接続部材と整形用冶具との関係を示す斜視図である。
【
図12】断熱部材の取り外し手順を示す正面図である。
【
図13】別実施形態の断熱部材の装着状態を示す正面図である。
【
図14】更なる別実施形態の断熱部材の装着状態を示す正面図である。
【
図15】更なる別実施形態の端部用断熱部材の装着状態を示す正面図である。
【
図17】凹入溝部の更なる別形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
〔実施形態〕
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(断熱構造の全体構成)
図1及び
図2に示すように、LNGやLPG等の低温流体が通流して冷却される円筒状の円筒管1(断熱対象物の一例)が設けられ、円筒管1の外周部に、ウレタン樹脂を発泡させたウレタンフォーム製の複数の断熱部材Pが、円筒管1の周方向及び軸心方向に並ぶ状態で装着されている。
【0057】
複数の断熱部材Pは、円筒管1の軸心方向に沿って伸びる所定長さの板状でかつ円筒管1の軸心方向視にて円弧状の湾曲板状である。
つまり、断熱部材Pは、円筒管1の径方向に一定の厚みを有する状態で円筒管1の周方向に沿って円弧状(本実施形態では半円状)で且つ円筒管1の軸心方向の長さが長い長尺状に形成される母材を、円筒管1の軸心方向において所定の長さに切断したものである。
【0058】
図5に示すように、以下の記載において、断熱部材Pの径方向外方側の面を外面3とし、径方向内方側の面を内面4とし、周方向の両端の面を対向端面5とし、さらに、軸心方向の両側の面を側面6とする。
尚、周方向の両端の面を対向端面5と呼称する理由は、円筒管1の周方向に隣接する一対の断熱部材Pの周方向の両端の面が突き合せた状態で断熱部材Pが配置されるからである。
【0059】
本実施形態においては、断熱部材Pとして、先に装着された断熱部材Pの外周部に別の断熱部材Pを装着する形態で円筒管1の径方向に複数(本実施形態では3層)の断熱層を形成すべく、曲率半径が異なる複数種の断熱部材Pが設けられている。そして、断熱部材Pが、円筒管1の径方向に沿って3層の断熱層を形成するように装着されている。
つまり、曲率半径が異なる複数種(本実施形態では3種)の断熱部材Pとして、最も大径の大径断熱部材PL、中間の径の中間径断熱部材PM、及び、最も小径の小径断熱部材PSが設けられている(
図3、
図4参照)。
【0060】
ちなみに、断熱部材Pを積層した状態においては、大径断熱部材PLの外面3が最も外方側に位置し、大径断熱部材PLの内面4と中間径断熱部材PMの外面3とが同径状に並び、中間径断熱部材PMの内面4と小径断熱部材PSの外面3とが同径状に並び、小径断熱部材PSの内面4が、円筒管1の外周面と同径状に並ぶことになる。
【0061】
図1に示すように、円筒管1の両端部には、フランジFが設けられ、隣接する円筒管1のフランジFがボルトを用いて連結されることにより、低温流体を流動させる流路が形成されることになる。
複数の断熱部材Pは、円筒管1の一端部(
図1では左端部)から他端部(
図1では右端部)に向かって順次装着される形態で、円筒管1の一端部に隣接する箇所、円筒管1の他端部に隣接する箇所、及び、それらの間に相当する箇所に装着されることになる。
【0062】
断熱部材Pを円筒管1の軸心方向に並べる形態は、最も小径の小径断熱部材PSを並べる形態と最も大径の大径断熱部材PLを並べる形態が同じで、これに対して、中間の径の中間径断熱部材PMを並べる形態が異なる。
すなわち、小径断熱部材PS、中間径断熱部材PM及び大径断熱部材PLが、円筒管1の軸心方向に沿う長さを基本長さ(例えば、1m)となるように形成されている。
【0063】
そして、小径断熱部材PS及び大径断熱部材PLについては、基本長さの断熱部材Pを円筒管1の一端部から他端部に向かって並べるのに対して、中間径断熱部材PMについては、基本長さの半分(例えば、0.5m)の長さの断熱部材Pを、円筒管1の一端部に並べてから、基本的長さの断熱部材Pを円筒管1の他端部に向かって並べるように構成されている(
図1参照)。
【0064】
円筒管1の他端部に隣接する箇所においては、小径断熱部材PS、中間径断熱部材PM及び大径断熱部材PLの軸心方向の長さが、円筒管1の軸心方向の長さに合わせて適宜定められることになる。
但し、円筒管1の他端部に隣接する箇所に装着する小径断熱部材PS、中間径断熱部材PM及び大径断熱部材PLの軸心方向の長さが、後述する接続部材7を装着する空間を形成するために、フランジFとの間に1m以上の長さを確保する長さとなるように構成されている。
【0065】
また、中間径断熱部材PMについては、基本長さの半分(例えば、0.5m)の長さの中間径断熱部材PMを円筒管1の一端部に隣接する箇所に設置するため、円筒管1の他端部に隣接する箇所において、中間径断熱部材PMの軸心方向の長さが、小径断熱部材PS及び大径断熱部材PLの軸心方向の長さとは異なることになる。
本実施形態においては、中間径断熱部材PMの軸心方向の長さを、小径断熱部材PS及び大径断熱部材PLの軸心方向の長さに基本長さの半分(例えば、0.5m)の長さを加えた長さにしてある。
【0066】
さらに、円筒管1の一端部に隣接する箇所及び円筒管1の他端部に隣接する箇所を除いた中間箇所において、断熱部材Pを円筒管1の周方向に並べて装着する構成(以下、基本装着構成と略称)は同じであるが、円筒管1の他端部に隣接する箇所において断熱部材Pを円筒管1の周方向に並べて装着する構成(以下、端部装着構成と略称)は、基本装着構成とは異なる構成である。
【0067】
つまり、円筒管1の一端部から上述したフランジFから1m以上離れる区間においては、後述する接続部材7を用いた基本装着構成にて断熱部材Pが装着され、円筒管1の他端部に隣接する箇所においては、後述する連結部材Bを用いた端部装着構成にて断熱部材Pが装着されることになる。次に、基本装着構成と端部装着構成とを順次説明する。
【0068】
ちなみに、円筒管1のフランジFと断熱部材Pとの間の箇所には、グラスウール等の断熱材Dが充填され、また、円筒管1のフランジFの上部に相当する箇所には、基本装着構成と同様な構成にて、円弧状のフランジ用断熱部材Qが2層状に設置される。
【0069】
(基本装着構成)
図6に示すように、断熱部材Pにおける円筒管1の周方向に隣接する他の断熱部材Pに対向する端面部に、当該対向端面5から周方向に凹入する凹入溝部8が、当該断熱部材Pの長手方向に沿う溝状で、且つ、入口部8nの断熱部材Pの厚さ方向に沿う開口幅Hnより厚さ方向において広幅となる広幅部8wを周方向に沿う奥部側に備える状態に予め形成されている。
ちなみに、断熱部材Pの厚さ方向は、円筒管1の径方向に相当することになり、以下、厚さ方向を径方向と呼称する。
また、断熱部材Pの長手方向とは、円筒管1の軸心方向に相当する方向である。
【0070】
本実施形態においては、凹入溝部8が、入口部8nから周方向に沿って直線状に凹入する周方向凹入部分8uと、当該周方向凹入部分8uの端部から広幅部8wを形成するために径方向外方に向けて直線状に凹入する径方向凹入部分8aとを備える形態に形成されている。つまり、本実施形態においては、凹入溝部8が、L字状を呈する形態に形成されている。
ちなみに、上述の記載中において、円筒管1の周方向とは、正確には、断熱部材Pの対向端面5における接線方向を意味することになり、以下の記載においても同様である。
【0071】
尚、凹入溝部8の形状としては、L字状に代えて、周方向凹入部分8uと径方向凹入部分8aとを全体的に湾曲させてC字状を呈する形態に形成する等、種々の形状が考えられるものである。尚、凹入溝部8の別の形態は後述する。
【0072】
図5及び
図7に示すように、断熱部材Pの長手方向に沿う長尺状の接続部材7が、周方向に延びる本体部7A、及び、周方向に隣接する断熱部材P夫々の凹入溝部8に係合する一対の係合部7aを周方向に沿って備える状態に予め形成されている。
ちなみに、接続部材7の長さは、断熱部材Pの軸心方向の長さと同じ長さに形成され、また、接続部材7は、断熱部材Pと同様に、ウレタン樹脂製である。
【0073】
したがって、基本装着構成においては、
図4に示すように、円筒管1の周方向に複数(本実施形態では2つ)に分割された円弧状(本実施形態は半円状)の断熱部材Pが、対向端面5同士を突き合せた状態に配置され、そして、円筒管1の周方向に位置する複数(本実施形態では2つ)の対向端面5の対向箇所の夫々において、隣接する一対の断熱部材Pの対向端部同士を円筒管1の軸心方向に沿って長尺な接続部材7にて接続することにより、断熱部材Pが円筒管1の外周部に装着されている。
【0074】
つまり、基本装着構成においては、断熱部材Pを円筒管1の外周部に装着する際に、
図4に示すように、周方向に隣接させる断熱部材Pを、対向端面同士を突き合せた状態で円筒管1の外周部に配置する配置工程、及び、隣接する断熱部材P夫々の凹入溝部8に対して接続部材7を挿入する挿入工程を順次行うことになる。
また、断熱部材Pを円筒管1の外周部に装着する際に、断熱部材Pのうちの曲率半径が小さな断熱部材Pほど先に装着する形態で複数種の断熱部材Pを装着することになる。
【0075】
詳しくは、先ず、小径断熱部材PSを円筒管1の外周面に装着し、次に、中間径断熱部材PMを、小径断熱部材PSの外周面に装着し、最後に、大径断熱部材PLを、中間径断熱部材PMの外周面に装着することになる。
このように、小径断熱部材PS、中間径断熱部材PM及び大径断熱部材PLを装着した状態においては、円筒管1の外周部に、接続部材7にて連結される複数の円弧状(2つの半円状)の断熱部材Pにて円筒状で且つ径が異なる状態に形成される複数(3つ)の断熱層が形成されることになる。
【0076】
また、小径断熱部材PSにおける対向端面同士を突き合せた状態の対向箇所と、中間径断熱部材PMにおける対向端面同士を突き合せた状態の対向箇所とが、円筒管1の周方向における位相を90度異ならせ、同様に、中間径断熱部材PMにおける対向端面同士を突き合せた状態の対向箇所と、大径断熱部材PLにおける対向端面同士を付き合わせた状態の対向箇所とが、円筒管1の周方向における位相を90度異ならせる形態で、小径断熱部材PS、中間径断熱部材PM及び大径断熱部材PLが装着されるように構成されている。
【0077】
つまり、断熱部材Pを円筒管1の外周部に装着する際に、周方向に隣接させる断熱部材Pの対向端面同士を突き合せた状態に位置させる対向箇所を、複数(3つ)の断熱層のうちの径方向に隣接する断熱層において周方向の位相を異ならせるように、断熱部材Pを配置することになる。
【0078】
ちなみに、図示は省略するが、積層された断熱部材Pの外周を覆うシートが装着されて、積層された断熱部材Pの補強や断熱性の向上が図られる。
【0079】
(端部装着構成)
端部装着構成においては、
図8に示すように、円筒管1の周方向に2分割された状態となる上述の半円状の断熱部材Pを、円筒管1の周方向に2分割された端部用断熱部材PAとして用いることになる。
すなわち、
図9に示すように、接続部材7を挿入しないときには、断熱部材Pの端面部における凹入溝部8の径方向内方側に位置する部分を切除して、当該切除部Jの径方向外方側部に径方向外方に凹入する係止用凹部Vを形成する。
つまり、凹入溝部8における径方向凹入部分8aを利用しながら、径方向外方に凹入する係止用凹部Vが形成される。
【0080】
図10に示すように、断熱部材Pの長手方向に沿う長尺状の連結部材Bが、周方向に隣接する断熱部材P夫々の係止用凹部Vに係合する一対の係止凸部Baを周方向に沿って備える状態に予め設けられている。
ちなみに、連結部材Bの長さは、断熱部材Pの軸心方向の長さと同じ長さに形成され、また、連結部材Bは、断熱部材Pと同様に、ウレタン樹脂製である。
【0081】
そして、周方向に隣接させる断熱部材P(端部用断熱部材PA)を、対向端面5同士を突き合せた状態に配置する際に、断熱部材P(端部用断熱部材PA)を少し弾性変形させながら、予め配置した連結部材Bに対して係止用凹部Vを係合させるようにする。
【0082】
詳しくは、先ず、円筒管1の外周面に配置した連結部材Bに係止用凹部Vに係合させながら、小径断熱部材PS(端部用断熱部材PA)を円筒管1の外周面に装着し、次に、小径断熱部材PSの外面3に配置した連結部材Bに係止用凹部Vに係合させながら、中間径断熱部材PM(端部用断熱部材PA)を、小径断熱部材PSの外面3に装着し、最後に、中間径断熱部材PMの外面3に配置した連結部材Bに係止用凹部Vに係合させながら、大径断熱部材PL(端部用断熱部材PA)を、中間径断熱部材PMの外面3に装着することになる。
【0083】
尚、連結部材Bを円筒管1の外周面や先に積層した断熱部材Pの外面3に配置するにあたり、連結部材Bの円筒管1の外周面や断熱部材Pの外面3に接触する底面を、円筒管1の外周面や断熱部材Pの外面3に沿う形状に削り加工することになる。
また、連結部材Bを円筒管1の外周面や先に積層した断熱部材Pの外面3に配置するにあたり、連結部材Bの配置箇所が、円筒管1の外周面や先に積層した断熱部材Pの外面3における横側位置や下方位置になる場合等においては、糊剤を用いて、連結部材Bを仮止めするとよい。
【0084】
このように、端部用断熱部材PAとしての、小径断熱部材PS、中間径断熱部材PM及び大径断熱部材PLを装着した状態においては、円筒管1の外周部に、接続部材7にて連結される複数の円弧状(2つの半円状)の断熱部材Pにて円筒状で且つ径が異なる状態に形成される複数(3つ)の断熱層が形成される状態で設けられることになる。
【0085】
ちなみに、図示は省略するが、積層された断熱部材Pの外周を覆うシートが装着されて、積層された断熱部材Pの補強や断熱性の向上が図られる。
【0086】
(整形用冶具について)
図11に示すように、断面形状が接続部材7と同じ形状で、接続部材7よりも長く、少なくとも表面が接続部材7の表面よりも硬い整形用冶具Rが設けられている。
本実施形態においては、接続部材7や断熱部材Pを製作するウレタン樹脂よりも硬質性を備える硬質性のウレタン樹脂を用いて整形用冶具Rを形成して、整形用冶具Rの全体が接続部材7よりも硬く構成されている。
【0087】
そして、接続部材7を隣接する断熱部材P夫々の凹入溝部8に対して挿入する挿入工程を行う前に、
図11に示す如く、隣接する断熱部材P夫々の凹入溝部8に対して接続部材7又は整形用冶具Rを挿入する整形工程を行うように構成されている。
【0088】
ちなみに、この整形工程は、接続部材7を挿入する挿入工程を行う前に、必ず行うようにしてもよいが、挿入工程を行った際に、接続部材7を挿入し難い場合において、当該整形工程を行う手順で行うようにしてもよい。
【0089】
(断熱部材の取り外しについて)
周方向に隣接させる断熱部材Pが、対向端面同士を突き合せた状態に円筒管1の外周部に配置され、且つ、接続部材7を隣接する断熱部材P夫々の凹入溝部8に対して挿入させた形態で装着されている状態において、断熱部材Pを円筒管1から取り外す際には、次の手順にて行うことになる。
【0090】
すなわち、
図12に示すように、接続部材7における一対の係合部7aを接続する部分を対向端面に沿って切断する切断工程(図中実線で示す)、及び、断熱部材Pを円筒管1から離脱させる離脱工程(図中仮想線で示す)を順次行うことになる。
具体的には、隣接する断熱部材Pの対向端面5の間を通してカッター10を挿入し、隣接する断熱部材Pの対向端面5の間を通して、カッター10を円筒管1の軸心方向に移動させることにより、切断工程が行われ、当該切断工程により、接続部材7による接続が解除された断熱部材Pを円筒管1から離脱させる離脱工程が行われることになる。
【0091】
本実施形態においては、小径断熱部材PS、中間径断熱部材PM及び大径断熱部材PLが装着されているから、先ず、
図12に示すように、大径断熱部材PLについての2つの接続部材7を対向端面5に沿って切断して、大径断熱部材PLを取り外し、次に、図示は省略するが、中間径断熱部材PMについての2つの接続部材7を対向端面5に沿って切断して、中間径断熱部材PMを取り外し、最後に、図示は省略するが、小径断熱部材PSについての2つの接続部材7を対向端面5に沿って切断して、小径断熱部材PSを取り外すことになる。
【0092】
ちなみに、取り外した断熱部材Pの夫々には、切断された接続部材7の半分に相当する残存部分Zが存在することになるが、例えば、残存部分Zを押し出す押出具を、凹入溝部8の入口部8nを通して移動させるようにしながら残存部分Zを取り外す等、凹入溝部8の入口部8nを通して残存部分Zを扱うようにしながら、残存部分Zを取り外すようにすればよい。
【0093】
尚、残存部分を取り外す際に、断熱部材Pの端面部における凹入溝部8の径方向内方側に位置する部分を切除してもよく、この場合には、上述の如く、当該切除部Jの径方向外方側部に径方向外方に凹入する係止用凹部Vが形成されるから、断熱部材Pを、端部用断熱部材PAとして用いることになる。
【0094】
(別実施形態)
上述した実施形態においては、3層の断熱層を形成するにあたり、各断熱層夫々を構成する隣接する断熱部材Pに対して接続部材7を挿入して、隣接する断熱部材Pを接続させるように構成した。
これに代えて、
図13に示すように、3層の断熱層を形成するにあたり、例えば、最も内方側の断熱層については、隣接する小径断熱部材PSに対して接続部材7を挿入せずに、隣接する小径断熱部材PSを接続しない形態と構成してもよい。
【0095】
つまり、複数の断熱層のうちの内方側の断熱層の少なくとも一部について、凹入溝部8を形成せずに、凹入溝部8に接続部材7を挿入しないで断熱部材Pを配置する。
【0096】
(更なる別実施形態)
上述した実施形態においては、3層の断熱層を形成するにあたり、各断熱層夫々を構成する断熱部材Pが周方向において半円状に形成する場合を例示した。
これに代えて、円筒管1が大径の場合等においては、
図14に示すように、各断熱層夫々を構成する断熱部材Pを、周方向に90度の円弧状に形成して、周方向に隣接する断熱部材Pに対して接続部材7を挿入して、隣接する断熱部材Pを接続させるように構成する等、断熱部材Pを周方向に沿って3つ以上並べる状態で設けるようにしてもよい。
【0097】
つまり、上述の実施形態においては、例えば、円筒管1の外径が30mm程度であるのに対して、この更なる別実施形態においては、例えば、円筒管1の外径が300mm程度の大径であるため、断熱部材Pが、90度の円弧状に形成されている。
【0098】
このように、断熱部材Pを周方向に沿って3つ以上並べる状態で設ける場合においては、断熱部材Pを円筒管1に装着する前に、複数の断熱部材Pのうちの一部の断熱部材Pについて、周方向に隣接させる断熱部材Pを、対向端面同士を突き合せた状態に位置させて、隣接する断熱部材P夫々の凹入溝部8に対して接続部材7を挿入する事前組付工程を行うようにしてもよい。
【0099】
つまり、例えば、
図14に示すように、周方向に4つの断熱部材Pを並べる場合には、事前組付工程により、4つの断熱部材Pのうちの2つずつを予め組付け、その後、予め組み付けられた2組の断熱部材Pを円筒管1の外周部に配置する配置工程、接続部材7を挿入する挿入工程を順次行うようにしてもよい。
【0100】
このように事前組付工程を行う場合には、
図15に示すように、周方向に4つの端部用断熱部材PAを並べる形態で端部装着構成を行う場合において、4つの端部用断熱部材PAのうちの2つずつを予め組付け、その後、予め組み付けられた2組の端部用断熱部材PAを、連結部材Bに対して組み付けるようにしてもよい。
【0101】
(凹入溝部の別形態及び更なる別形態)
凹入溝部8を、当該断熱部材Pの長手方向に沿う溝状で、且つ、入口部8nの断熱部材Pの厚さ方向に沿う開口幅Hnより厚さ方向において広幅となる広幅部8wを周方向に沿う形態に構成するにあたり、
図16に示す別形態や、
図17に示す更なる別形態に構成してもよい。
【0102】
図16に示す別形態や
図17に示す更なる別形態では、凹入溝部8が、入口部8nから周方向に沿って凹入する周方向凹入部分8uと、当該周方向凹入部分8uの端部から広幅部8wを形成するために径方向外方及び径方向内方に向けて凹入する2つの径方向凹入部分8aとを備える形態に形成されている。
【0103】
但し、
図16に示す別形態では、2つの径方向凹入部分8aが三角状であり、
図17に示す更なる別形態では、2つの径方向凹入部分8aが円状である。
ちなみに、
図16に示す別形態や
図17に示す更なる別形態では、凹入溝部8は、広幅部8wを形成するために、径方向外方に向けて凹入する径方向凹入部分8aを備えるものであるから、接続部材7を挿入しないときには、断熱部材Pの端面部における凹入溝部8の径方向内方側に位置する部分を切除して、当該切除部Jの径方向外方側部に径方向外方に凹入する係止用凹部Vを形成することができるものである。
【0104】
(接続部材の別形態)
接続部材7を、周方向に延びる本体部7A及び径方向凹入部分8aに係合する一対の係合部7aを備える状態に形成するにあたり、
図18に示すように、凹入溝部8を別形態に形成する場合には、径方向凹入部分8aが三角状となり、更なる別形態に形成する場合には、径方向凹入部分8aが円状になる。
【0105】
尚、
図18は、半円状の断熱部材Pを用いて2層の断熱層を形成する状態で設けるにあたり、内方側の層について、更なる別形態を適用し、外方側の層について、別形態を適用した状態を示すものである。
【0106】
〔別実施形態〕
以下、別実施形態を列記する。
(1)上記実施形態においては、断熱部材Pが、円筒管1の周方向に沿って2分割した半円状の場合や4分割した場合を例示したが、これに限らず、断熱部材Pを、円筒管1の周方向に沿って3分割や5分割以上に分割してもよい。
【0107】
(2)上記実施形態においては、断熱部材Pと接続部材7及び連結部材B及とを同じ材質で形成したが、これに限らず、連結部材B及び接続部材7と断熱部材Pとを異なる材質で形成してもよい。
【0108】
(3)上記実施形態においては、断熱部材Pの材質をウレタン樹脂としたが、断熱部材Pの材質はこれに限るものではない。例えば、断熱部材Pの材質をポリエチレン樹脂や(ポリイソシナヌレート(PIR)等としてもよい。
【0109】
(4)上記実施形態においては、円筒管1の外周部に、複数層の断熱層として、3層の断熱層を形成する場合を例示したが、2層の断熱層を形成する形態で実施してもよく、さらには、4層以上の断熱層を形成してもよい。
【0110】
(5)上記実施形態においては、断熱対象物を円筒管1としたが、断熱対象物はこれに限定されるものではない。例えば、断熱対象物を内部にLNG等の低温流体Wを貯留する中空球状の貯留タンクで構成してもよい。
【0111】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 円筒管(断熱対象物)
5 対向端面
7 接続部材
7a 係合部
8 凹入溝部
8a 径方向凹入部分
8n 入口部
8u 周方向凹入部分
B 連結部材
Ba 係止凸部
Hn 開口幅
Hw 広幅部
J 切除部
P 断熱部材
V 係止用凹部