(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】レドックスフロー電池を用いた蓄電システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20240130BHJP
H01M 8/2475 20160101ALI20240130BHJP
H01M 8/04186 20160101ALI20240130BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/2475
H01M8/04 M
(21)【出願番号】P 2019168620
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-07-01
(73)【特許権者】
【識別番号】514272391
【氏名又は名称】マテリアルワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100150898
【氏名又は名称】祐成 篤哉
(72)【発明者】
【氏名】瀧野 浩
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勇治
(72)【発明者】
【氏名】後藤 文寿
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/183289(WO,A1)
【文献】特表2020-516035(JP,A)
【文献】特開2007-188731(JP,A)
【文献】特開2002-289233(JP,A)
【文献】特開2012-164530(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123964(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
H01M 8/24
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極電極、負極電極、及び前記正極電極と前記負極電極との間に挟まれた隔膜を有する少なくとも1層の電池セルを備えるセルスタックと、
正極側と負極側とに、それぞれ、
電解液を貯蔵する電解液タンクと、
前記電解液タンクと前記セルスタックとの間で前記電解液を循環させる循環ポンプと、
前記電解液タンクと前記セルスタックとの間を連結し、前記電解液タンクから前記セルスタックへと前記電解液を供給する供給パイプと、
前記電解液タンクと前記セルスタックとの間を連結し、前記セルスタックから前記電解液タンクへと前記電解液を排出する排出パイプと、
を備え、
前記循環ポンプが地中に埋設されている、
前記電解液タンクが、地中に埋設されている、レドックスフロー電池を用いた蓄電システム。
【請求項2】
前記セルスタックが地中に埋設されている、
請求項
1に記載のレドックスフロー電池を用いた蓄電システム。
【請求項3】
前記供給パイプ及び前記排出パイプが地中に埋設されている、
請求項1
又は2に記載の、レドックスフロー電池を用いた蓄電システム。
【請求項4】
前記セルスタックから発生したガスを地上部に逃す排気構造を備える、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の、レドックスフロー電池を用いた蓄電システム。
【請求項5】
前記レドックスフロー電池における、地中に埋設されている部分が、筐体に覆われている、
請求項1から
4のいずれか1項に記載の、レドックスフロー電池を用いた蓄電システム。
【請求項6】
前記筐体が、絶縁体で製造されている、
請求項
5に記載の、レドックスフロー電池を用いた蓄電システム。
【請求項7】
前記筐体が、断熱材で製造されている、
請求項
5又は
6に記載の、レドックスフロー電池を用いた蓄電システム。
【請求項8】
前記筐体が、耐酸性材料で製造されている、
請求項
5から
7のいずれか1項に記載の、レドックスフロー電池を用いた蓄電システム。
【請求項9】
前記レドックスフロー電池の出力電力が1kWから30kW、及び蓄電容量が1kWhから30kWhである、
請求項1から
8のいずれか1項に記載の、レドックスフロー電池を用いた蓄電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はレドックスフロー電池を用いた蓄電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化に影響を与えない再生可能エネルギーによる発電の重要性も高まりつつある。しかし、再生可能エネルギーによる発電は不安定であり、これによる電力を有効に利用するためには、大容量の蓄電池が必須となる。
【0003】
大容量の蓄電池の一つにレドックスフロー電池がある。レドックスフロー電池は、正極電極と負極電極との間に隔膜を挟んだ構造を有する電池セル又は電池セルが積層されたセルスタックに、正極電解液と負極電解液をそれぞれ供給することにより充放電を行う二次電池である。レドックスフロー電池はその構成物質の化学変化による蓄電容量の劣化が無いため、10年以上の長期間にわたって使用される定置用蓄電池として最適な電池の一つである。
【0004】
しかし、レドックスフロー電池は、電解液の動作保証温度範囲が0℃から40℃程度である。電池セル又はセルスタックの温度が、例えば40℃以上では電解液の消散の可能性が高まり、50℃を超えると熱可塑性樹脂を用いているセルスタックにおいてクリープによる変形による流路抵抗の増加や電解液漏洩の可能性が高まる。加えて、熱可塑性樹脂の劣化が早まり、セルスタックの寿命が短くなる。一方、電池セル又はセルスタックの温度が低いと、電解液の粘度が高まり電池セルの内部抵抗が高くなるため、電池セルの起電力が低下し蓄電容量が低下する。
【0005】
このため、電解液の温度が、動作保証温度範囲の0℃から40℃を逸脱した場合、寿命保証の観点からレドックスフロー電池の充放電を停止するか、或は充放電量を大きく抑制することが必要となる。
【0006】
このようなレドックスフロー電池の充放電の停止や抑制を防止して効率のよい充放電を実現するため、屋外に設置されたレドックスフロー電池において、電解液の温度制御装置が設けられているものがある(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、温度制御装置を設けると、蓄電装置であるにもかかわらず、温度制御装置を動作させるためのかなりの電力が必要となる。
本発明は、温度制御装置を設けることなく、適正温度範囲内で動作可能なレドックスフロー電池を用いた蓄電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、正極電極、負極電極、及び前記正極電極と前記負極電極との間に挟まれた隔膜を有する少なくとも1層の電池セルを備えるセルスタックと、正極側と負極側とに、それぞれ、電解液を貯蔵する電解液タンクと、前記電解液タンクと前記セルスタックとの間で前記電解液を循環させる循環ポンプと、前記電解液タンクと前記セルスタックとの間を連結し、前記電解液タンクから前記セルスタックへと前記電解液を供給する供給パイプと、前記電解液タンクと前記セルスタックとの間を連結し、前記セルスタックから前記電解液タンクへと前記電解液を排出する排出パイプと、を備えるレドックスフロー電池を具備する蓄電システムにおいて、前記電解液タンクが、地中に埋設されている、蓄電システムを提供する。
【0010】
前記循環ポンプが地中に埋設されていてもよい。
【0011】
前記セルスタックが地中に埋設されていてもよい。
【0012】
前記供給パイプ及び前記排出パイプが地中に埋設されていてもよい。
【0013】
前記セルスタックから発生したガスを地上部に逃す排気構造を備えていてもよい。
【0014】
前記レドックスフロー電池における、地中に埋設されている部分が、筐体に覆われていてもよい。
【0015】
前記筐体が、絶縁体で製造されていてもよい。
【0016】
前記筐体が、断熱材で製造されていてもよい。
【0017】
前記筐体が、耐酸性材料で製造されていてもよい。
【0018】
前記レドックスフロー電池の出力電力が1kWから30kW、及び蓄電容量が1kWhから30kWhであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
温度制御装置を設けることなく、適正温度範囲内で動作可能なレドックスフロー電池を用いた蓄電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態のレドックスフロー電池1を用いた蓄電システム100を説明する図である。
【
図3】第2実施形態のレドックスフロー電池1を用いた蓄電システム200を説明する図である。
【
図4】第3実施形態のレドックスフロー電池1を用いた蓄電システム300を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態のレドックスフロー電池1を用いた蓄電システム100を説明する図である。蓄電システム100は、一般の電力会社の発電部101により発生された系統電力を需要家等の負荷102へ送電する電力線103に接続されている。
【0022】
蓄電システム100は、レドックスフロー電池1と、レドックスフロー電池1に電力を供給及びレドックスフロー電池1から電力が供給される制御装置50と、を備える。
【0023】
(制御装置)
図2は制御装置50を含むブロック図である。制御装置50には、レドックスフロー電池1と、電力線103と、太陽電池や風力発電機などの発電機105とが接続されている。
制御装置50は、レドックスフロー電池1や発電機105で発電した電力を変換するためのコンバータA51と、系統連携インバータ52と、レドックスフロー電池1の充放電を制御するコンバータB53と、コントローラ54とを備える。コンバータA51と、コンバータB53と、系統連携インバータ52とはコントローラ54に接続されている。コントローラ54は、LAN55を通じて受信した指令信号に基づいて発電機105の発電制御、レドックスフロー電池1の充電又は放電の制御を行う。
【0024】
発電機105やレドックスフロー電池1から送られる電力は、コントローラ54の制御によってそれぞれコンバータA51、コンバータB53を介して、直流として系統連携インバータ52に送られ、系統連携インバータ52によって交流に変換されて電力線103へと送電される。
【0025】
コントローラ54は、例えば、夜間(深夜)においては、電力線103より供給される系統電力によりレドックスフロー電池1を充電させる。
昼間は、太陽光発電などの発電機105で発生した電力を負荷102での使用のために優先して電力線103に出力させる。そして、発電機105で発生した電力に余剰がある場合は、レドックスフロー電池1を充電させる。負荷102での使用量が、発電機105での発電量で十分でない場合、レドックスフロー電池1の電力を電力線103に出力させる。そして、系統電力は、太陽光も蓄電池も電力がない場合のみ使用するように制御する。
【0026】
(レドックスフロー電池)
図1に戻り、レドックスフロー電池1は、セルスタック12Aと、正極電解液タンク14a、正極供給パイプ15a、正極排出パイプ16a、正極循環ポンプ17aと、負極電解液タンク14b、負極供給パイプ15b、負極排出パイプ16b、負極循環ポンプ17bとを備える。
なお、以下、正極側と負極側とを区別する必要のない場合、正極側と負極側とを合わせて電解液タンク14、供給パイプ15、排出パイプ16、循環ポンプ17として説明する。
【0027】
セルスタック12Aは、所定の電圧を確保するために積層された複数の電池セル12の積層体である。なお、
図1においては1層の電池セル12のみ示す。また、セルスタック12A内のそれぞれの電池セル12は同様の構成を有するので、以下、一つの電池セル12の構成のみ説明する。
【0028】
電池セル12は、水素イオンを透過させる隔膜11で正極電池セル12aと負極電池セル12bとに分離されている。電池セル12の正極電池セル12aの内部には正極電極13aが配置され、正極電池セル12aには正極電解液を貯留する正極電解液タンク14aが正極供給パイプ15aと正極排出パイプ16aとを介して接続されている。正極供給パイプ15aには、正極循環ポンプ17aが配置されている。
正極循環ポンプ17aが作動すると、正極電解液は正極供給パイプ15aを通って正極電池セル12aに供給され、正極電池セル12aから正極排出パイプ16aを通って正極電解液タンク14aに排出される。
【0029】
負極側においても正極側と同様に、負極電池セル12bの内部には負極電極13bが配置され、負極電池セル12bには負極電解液を貯留する負極電解液タンク14bが負極供給パイプ15bと負極排出パイプ16bとを介して接続されている。負極供給パイプ15bには、負極循環ポンプ17bが配置されている。
そして、負極循環ポンプ17bが作動すると、負極電解液は負極供給パイプ15bを通って負極電池セル12bに供給され、負極電池セル12bから負極排出パイプ16bを通って負極電解液タンク14bに排出される。
【0030】
レドックスフロー電池1においては、このように正極電解液と負極電解液とが循環することで、正極電解液に含まれるイオンと負極電解液に含まれるイオンとの間の酸化還元電位の差を利用して充放電が行われる。
【0031】
実施形態のレドックスフロー電池1は、電解液としてバナジウム系電解液を用い、電解液のタンク総容量は50リットルから1500リットルであり、蓄電容量は1kWhから30kWhである。すなわちレドックスフロー電池1としては比較的小型な一般家庭用である。
【0032】
ここで、レドックスフロー電池が、本実施形態と異なり、例えば工場用の大型のレドックスフロー電池である場合、タンク総容量は、1500リットルよりかなり大きくなる。この場合、電解液の流量が大きいので、外部の温度にあまり影響されない。
【0033】
しかし、実施形態のレドックスフロー電池1のような電解液のタンク総容量が50リットルから1500リットルで、蓄電容量が1kWhから30kWhの場合、容量が小さいのでレドックスフロー電池1の外部の温度の影響を受けやすくなる。
レドックスフロー電池1は、電解液の動作保証温度範囲が0℃から40℃程度である。電池セル12の温度が40℃以上になると電解液の消散の可能性が高まり、50℃を超えると熱可塑性樹脂を用いている電池セル12においてクリープによる変形による流路抵抗の増加や電解液漏洩の可能性が高まる。加えて、熱可塑性樹脂の劣化が早まり、電池セル12の寿命が短くなる。一方、電池セル12の温度が低くなると、電解液の粘度が高まり電池セル12の内部抵抗が高くなるため、電池セル12の起電力が低下し蓄電容量が低下する。
【0034】
ここで、一般に深さ10mくらいの地中の温度は、年平均気温と略等しい。例えば四国・九州の南部では20℃、北海道で10℃、東京や大阪では17℃程度である。10mより浅い場合であっても、地中であれば大気の温度と比べて温度変化が小さく、地表であっても、0℃から30℃程度である。すなわち、地表も含めて地中温度は、年間を通じて電解液の動作保証温度範囲である0℃から40℃の範囲内である。
【0035】
そこで、第1実施形態において、
図1に示すように、レドックスフロー電池1は筐体20内に配置され、筐体20ごと地中に埋設されている。筐体20は、断熱性、絶縁性及び/又は耐酸性を有する材料で製造されていることが好ましい。
【0036】
(地中埋設の効果1)
レドックスフロー電池1は、電解液が最も長く滞在する電解液タンク14、外部と接する面積が大きい供給パイプ15及び排出パイプ16、発熱する可能性のあるセルスタック12A、及び循環ポンプ17を含む、レドックスフロー電池1の全てが地中に埋設されているので、外部環境の温度変化が少ない。したがって、別途、温度制御装置を設けなくても、電解液の温度を、動作保証温度範囲である0℃から40℃の範囲内に保つことができる。
ゆえに、温度制御装置を動作させるための余分な電力を使用することなく電解液の動作保証温度範囲である0℃から40℃の範囲内に保つことができる。
さらに、温度制御装置が配置されていないので、温度制御装置の故障がなく、従来のリチウムイオン電池等を用いた定置用蓄電池では実現が困難な20年以上という長寿命な定置用の蓄電池(レドックスフロー電池1)の実現が可能となる。
【0037】
(地中埋設の効果2)
レドックスフロー電池1を用いた蓄電システム100は、電解液タンク14が大型で重量も大きいため、一般家庭等に設置する場合、スペースが問題となる。しかし、レドックスフロー電池1は地中に埋設され、地上には制御装置50のみが配置される。制御装置50のサイズはレドックスフロー電池1と比べると小さいので、地上のスペースを大量に占拠することがない。
【0038】
(地中埋設の効果3)
住宅地等に屋外設置されたレドックスフロー電池1においては周囲環境への騒音をおよそ45dB以下に抑制することが必要である。循環ポンプ17は騒音源となるため、循環ポンプが地上に配置されている場合、騒音を抑制する防音機構が必要となる。そうすると、防音機構を配置するスペースが必要となり、さらにコストもかかる。
しかし、レドックスフロー電池1は筐体20内に配置され、さらに地中に埋設されているので、循環ポンプ17が発する騒音の周囲環境への伝搬を抑制することができる。
【0039】
(筐体内配置の効果)
また、レドックスフロー電池1は、筐体20内で配置されている。例えば、レドックスフロー電池1が筐体20内に配置されずに、そのまま地中に配置されていた場合、雨水や地下水などがレドックスフロー電池1の周囲に溜まる可能性がある。そうすると、レドックスフロー電池1において発生された電力が外部に漏電する可能性がある。
しかし、実施形態でレドックスフロー電池1は筐体20内に設置されているので、雨水や地下水などがレドックスフロー電池1の周囲に溜まることがなく、レドックスフロー電池1において発生された電力が外部に漏電することがない。
【0040】
(筐体が断熱材である効果)
筐体20が断熱性を有する場合、筐体20内の温度を、より一定に保つことができる。したがって、電解液の温度をより一定に保つことができる。
【0041】
(筐体が絶縁材である効果)
また、レドックスフロー電池1においては、電解液中をシャント電流が流れている。電解液の漏洩等によって、シャント電流が外部に流れると漏電となる。特に循環ポンプ17が絶縁されていない場合、シャント電流が外に流れる可能性が高くなる。また、レドックスフロー電池1において蓄電容量が4800Ah・セル(約10kWh)以上となる場合には、火災予防条例により電解液の主成分である希硫酸の流出防止工ことが必須となる。
筐体20を、絶縁性を有する材料で製造した場合、筐体20の外部へのシャント電流の漏電を防止することができる。
【0042】
(筐体が耐酸性材である効果)
筐体20が耐酸性材料で製造されている場合、例えば地震などの災害時にタンクやパイプが破壊されて電解液が漏洩した場合においても、電解液が筐体20外部に流出することを防止することができ、環境破壊が防止される。
【0043】
また、
図1に示すように、セルスタック12Aから負極電解液タンク14bへ延びる負極排出パイプ16bに、筐体20の外部への排気構造として、地上に向かって延びる排気パイプ21が設けられている。排気パイプ21における地上部には逆止弁22が設けられ、さらに排気パイプ21の上端は、気体の流入を防止並びに気化した電解液の流出を防止するように、水中に開口されている。
【0044】
(排気構造の効果)
レドックスフロー電池1の充放電制御に異常が生じて水素ガスが発生する場合がある。セルスタック12Aが地下に埋設されていると、セルスタック12Aで発生した水素ガスが、セルスタック12Aや、筐体20の天井部に溜まる可能性がある。
しかし、排気パイプ21が設けられているので、水素ガスを、排気パイプ21によって地上に放出することができる。
なお、実施形態では排気構造をセルスタック12Aから負極電解液タンク14bへ延びる負極排出パイプ16bに排気パイプ21を設けたが、これに限らず、排気パイプ21はセルスタック12Aに設けてもよく、また負極電解液タンク14bに設けてもよい。
【0045】
(組み立て方法)
レドックスフロー電池1は、地中に埋設する前に、地上において筐体20内で組み立てられて配置されている。すなわち、筐体20が地上にある状態で、セルスタック12A(電池セル12)、電極13、電解液タンク14、供給パイプ15、排出パイプ16、循環ポンプ17が組み立てられる。電解液のみ、筐体20を地中に埋設した後に電解液タンク14内に充填される。
【0046】
(組み立ての効果)
すなわち、筐体20内にレドックスフロー電池1を配置するところまで、工場で行うことが可能である。そして、レドックスフロー電池1が内部に配置された筐体20を、設置場所である例えば個人宅の庭等まで運搬する。そして、庭に掘られた穴の中に、レドックスフロー電池1を筐体20ごと埋設する。
このようにすることで、レドックスフロー電池1の筐体20内への設置を、設備の整った工場内で行うことができる。したがって、レドックスフロー電池1の設置を容易且つ正確に行うことができる。また、個人宅の庭等での設置工事を簡略化することができる。ただし、これに限らず、筐体20を用いずに例えば個人宅の庭等の地中に地下室を形成した後にレドックスフロー電池1をその地下室に設置するようにしてもよい。
また、最も重量の重い電解液は筐体20を地中に埋設した後に電解液タンク14に充填する。したがって、筐体20の地中への埋設時において筐体20とレドックスフロー電池1との重量はそれほど重くないので、設置が容易になる。
【0047】
(第2実施形態)
図3は本発明の第2実施形態のレドックスフロー電池1を用いた蓄電システム200を説明する図である。第1実施形態では、レドックスフロー電池1の全体が地中に埋設されている形態について説明した。ただし、本発明はこれに限らず、レドックスフロー電池1の全体が地中になくても、少なくとも電解液タンク14が地中に埋設されていればよい。第2実施形態において、セルスタック12Aは地上に配置されている。なお、それ以外の構成については第1実施形態と同様であるので同一の符号を付してその説明を省略する。
【0048】
上述のように、電解液としてバナジウム系電解液を用いた場合、電解液のタンク総容量は50リットルから1500リットルであり、蓄電容量が1kWhから30kWhである。例えば、Volterion(TM)製のセルスタック12Aを搭載したレドックスフロー電池1で、蓄電容量10kWhの場合、電解液量は合計300リットル程度である。そして、電解液は、セルスタック12Aに20リットル、電解液タンク14に250リットル、供給パイプ15、排出パイプ16及び循環ポンプ17に30リットル程度含まれる。
【0049】
また、Volterion(TM)製のセルスタック12Aの場合、流量は3リットル/minから15リットル/minである。従って、稼働時に温度上昇するセルスタック12Aに電解液が滞留する時間は、最長で20リットル÷3リットル/分=6.7分、最短で20リットル÷15リットル/分=1.3分となる。
一方、電解液タンク14に電解液が滞留する時間は、最長で250リットル÷3リットル/分=83.3分、最短で250リットル÷15リットル/分=16.7分となる。
また、供給パイプ15、排出パイプ16及び循環ポンプ17に電解液が滞留する時間は、最長で30リットル÷3リットル/分=10分、最短で30リットル÷15リットル/分=2分となる。すなわち、電解液が電解液タンク14に滞在している時間が最も長い。
【0050】
したがって、第2実施形態及び次に述べる第3実施形態のように、少なくとも電解液タンク14が地中に埋設されていれば、温度制御装置を設けなくても、電解液の温度を、動作保証温度範囲である0℃から40℃の範囲内に保つという第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、その他の効果も第1実施形態と同様である。なお、第2実施形態及び次に述べる第3実施形態では、セルスタック12Aが地上に設けられているため、水素ガスを筐体20外に排気するための排気パイプ21を例えば負極排出パイプ16bの地上部に取り付けてもよい。
【0051】
(第3実施形態)
図4は本発明の第3実施形態のレドックスフロー電池1を用いた蓄電システム300を説明する図である。
上述したように、レドックスフロー電池1の全体が地中になくても、少なくとも電解液タンク14が地中に埋設されていればよく。第3実施形態において、セルスタック12Aと循環ポンプ17が地上に配置されている。なお、それ以外の構成については第1実施形態と同様であるので同一の符号を付してその説明を省略する。
【0052】
第3実施形態においてが、循環ポンプ17が地上に配置されているため騒音対策が必要となるが、他の効果については第1実施形態と同様である。
【0053】
(変形形態)
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、種々の変更が可能である。
【0054】
例えば、筐体20の上部を開閉可能とすることができる。この場合、レドックスフロー電池1において、最初の設置後の新たなタンク増設による蓄電容量アップも可能であり、電力需要の増加に合わせた蓄電容量の確保が容易となり、加えて循環ポンプ、タンク、パイプ等のメンテナンスが容易となる。
【0055】
また、第2実施形態及び第3実施形態で地上に配置されている部分も、断熱性や絶縁性を有する材料で覆うことができる。これにより、地上部に配置されているセルスタック12Aの外気からの影響を低減することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 レドックスフロー電池
11 隔膜
12 電池セル
12A セルスタック
13 電極
14 電解液タンク
15 供給パイプ
16 排出パイプ
17 循環ポンプ
20 筐体
21 排気パイプ
22 逆止弁
50 制御装置
51 コンバータA
52 系統連携インバータ
53 コンバータB
54 コントローラ
100,200,300 蓄電システム