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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】面状採暖具の製造方法および面状採暖具
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/20 20060101AFI20240130BHJP
   H05B 3/34 20060101ALI20240130BHJP
   A47G 27/02 20060101ALI20240130BHJP
   H05B 3/10 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H05B3/20 351
H05B3/34
A47G27/02 F
H05B3/10 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020028182
(22)【出願日】2020-02-21
(65)【公開番号】P2021132015
(43)【公開日】2021-09-09
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】396016973
【氏名又は名称】株式会社広電
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】石川 広
【審査官】柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】実公昭50-016263(JP,Y1)
【文献】特開昭58-152390(JP,A)
【文献】登録実用新案第45275(JP,Z1)
【文献】英国特許出願公告第00272527(GB,A)
【文献】特開昭61-126793(JP,A)
【文献】実開昭58-133292(JP,U)
【文献】特開2012-164547(JP,A)
【文献】実開昭50-009221(JP,U)
【文献】米国特許第01994759(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/10
H05B 3/20
H05B 3/34
A47G 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状の上部材および下部材と、
発熱線と、を備える面状採暖具の製造方法であって、
略平行に並ぶ直線部と該直線部同士を該直線部の直線方向の一方側で連結する第1の折り返し部と、該直線部同士を該直線部の直線方向の他方側で連結する第2の折り返し部を形成した前記発熱線を前記下部材と前記上部材との間に配設する工程と、
前記発熱線の前記直線部を挟んだ両側の位置で、間隔が3.0cm以下の第1の接合部を形成して前記上部材と前記下部材とを接合する第1の接合工程と、
前記第1の接合工程の後に、前記第1の折り返し部の側および前記第2の折り返し部の側のそれぞれに対して前記直線部の側とは反対側の位置で、前記直線部の直線方向と略直交する方向に沿って第2の接合部を形成して前記上部材と前記下部材とを接合する第2の接合工程と、
前記第2の接合工程の後に、前記上部材および前記下部材の外周縁に沿って、前記上部材と前記下部材とを接合する第3の接合工程とを有し、
前記第1の接合工程では、
前記直線部を挟んだ両側のうち一方側に位置する前記第1の接合部が前記第2の折り返し部を超えず、前記第1の折り返し部を超えて形成され、
前記直線部を挟んだ両側のうち他方側に位置する前記第1の接合部が前記第1の折り返し部を超えず、前記第2の折り返し部を超えて形成され、
前記第2の接合工程では、
前記第1の折り返し部の側において、前記第1の接合工程により形成された前記第1の折り返し部を超えた前記第1の接合部と十字状に交差するように前記第2の接合部が形成され、
前記第2の折り返し部の側において、前記第1の接合工程により形成された前記第2の折り返し部を超えた前記第1の接合部と十字状に交差するように前記第2の接合部が形成されることを特徴とする面状採暖具の製造方法。
【請求項2】
前記第1の接合部のうち前記第1の折り返し部を超えて形成された接合部は、前記第1の折り返し部の側に形成された前記第2の接合部を該面状採暖具の外側に向かって前記間隔の距離よりも長くはみ出し、
前記第1の接合部のうち前記第2の折り返し部を超えて形成された接合部は、前記第2の折り返し部の側に形成された前記第2の接合部を該面状採暖具の外側に向かって前記間隔の距離よりも長くはみ出して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の面状採暖具の製造方法。
【請求項3】
前記発熱線は前記第2の折り返し部の側において該直線部から連続して該直線部の直線方向に対して略直交する方向に延びる延出部が形成され、
前記第2の接合工程の後であって、前記第3の接合工程の前に、前記上部材および前記下部材の外周縁と、前記延出部との間の位置で、該直線部の直線方向に対して略直交する方向に沿って、前記上部材と前記下部材とを接合する接合工程を有することを特徴とする請求項1または2に記載の面状採暖具の製造方法。
【請求項4】
面状の上部材および下部材と、
発熱線と、を備える面状採暖具であって、
前記発熱線は、前記下部材と前記上部材との間に配設される略平行に並ぶ直線部と該直線部同士を該直線部の直線方向の一方側で連結する第1の折り返し部と、該直線部同士を該直線部の直線方向の他方側で連結する第2の折り返し部とを有し、
該面状採暖具は、
前記発熱線の前記直線部を挟んだ両側の位置で、間隔が3.0cm以下である、前記直線部と平行な方向に沿って連続して長い、前記上部材と前記下部材とを接合する第1の接合部と、
複数の前記第1の折り返し部の側および複数の前記第2の折り返し部の側のそれぞれに対して前記直線部の側とは反対側の位置で、前記直線部の直線方向と略直交する方向に沿って連続して長い、前記上部材と前記下部材とを接合する第2の接合部と、
前記上部材および前記下部材の外周縁に沿って、前記上部材と前記下部材とを接合する接合部とを有し、
前記第1の接合部は、
前記直線部を挟んだ両側のうち一方側に位置する接合部が前記第2の折り返し部を超えず、前記第1の折り返し部を超えて形成され、
前記直線部を挟んだ両側のうち他方側に位置する接合部が前記第1の折り返し部を超えず、前記第2の折り返し部を超えて形成され、
前記第2の接合部は、
前記第1の折り返し部の側では、前記第1の折り返し部を超えて形成された前記第1の接合部と十字状に交差するように形成され、
前記第2の折り返し部の側では、前記第2の折り返し部を超えて形成された前記第1の接合部と十字状に交差するように形成されていることを特徴とする面状採暖具。
【請求項5】
前記第1の接合部のうち前記第1の折り返し部を超えて形成された接合部は、前記第1の折り返し部の側に形成された前記第2の接合部を該面状採暖具の外側に向かって前記間隔の距離よりも長くはみ出し、
前記第1の接合部のうち前記第2の折り返し部を超えて形成された接合部は、前記第2の折り返し部の側に形成された前記第2の接合部を該面状採暖具の外側に向かって前記間隔の距離よりも長くはみ出して形成されていることを特徴とする請求項4に記載の面状採暖具。
【請求項6】
前記発熱線は前記第2の折り返し部の側において該直線部から連続して該直線部の直線方向に対して略直交する方向に延びる延出部が形成され、
該面状採暖具は、
前記上部材および前記下部材の外周縁と、前記延出部との間の位置で、該直線部の直線方向に対して略直交する方向に沿って、前記上部材と前記下部材とを接合する接合部を有することを特徴とする請求項4または5に記載の面状採暖具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面状採暖具の製造方法および面状採暖具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、面状採暖具として特許文献1の電気毛布などが知られている。このような面状採暖具は、一般的に、電熱線などからなる発熱線が、面状の上部材および下部材の間に挟まれるように配設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-21069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような面状採暖具を製造する場合には、まず、重ね合わせた上部材と下部材とを縫製などにより接合させることで、上部材と下部材との間に発熱線を配線するための配線方向に沿った複数の空間を形成する。次に、発熱線が巻き付けられた通線棒を上部材と下部材との間に形成された空間に挿通させることで配線する。
【0005】
しかしながら、発熱線が巻き付けられた通線棒を挿通させるには空間を大きくする必要がある。空間を大きくした場合には通線棒を挿通させやすくなる一方、発熱線が配線された後では、発熱線に対して空間が大きすぎてしまう。したがって、面状採暖具を使用しているうちに発熱線が空間内を自由に移動してしまい、空間内で発熱線が環状となるループが発生してしまうことがある。このようなループが発生してしまうと発熱線が一部で重なり合うために他の部分よりも高温になってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、発熱線の重なりを抑制できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、面状の上部材および下部材と、発熱線と、を備える面状採暖具の製造方法であって、略平行に並ぶ直線部と該直線部同士を該直線部の直線方向の一方側で連結する第1の折り返し部と、該直線部同士を該直線部の直線方向の他方側で連結する第2の折り返し部を形成した前記発熱線を前記下部材と前記上部材との間に配設する工程と、前記発熱線の前記直線部を挟んだ両側の位置で、間隔が3.0cm以下の第1の接合部を形成して前記上部材と前記下部材とを接合する第1の接合工程と、前記第1の接合工程の後に、前記第1の折り返し部の側および前記第2の折り返し部の側のそれぞれに対して前記直線部の側とは反対側の位置で、前記直線部の直線方向と略直交する方向に沿って第2の接合部を形成して前記上部材と前記下部材とを接合する第2の接合工程と、前記第2の接合工程の後に、前記上部材および前記下部材の外周縁に沿って、前記上部材と前記下部材とを接合する第3の接合工程とを有し、前記第1の接合工程では、前記直線部を挟んだ両側のうち一方側に位置する前記第1の接合部が前記第2の折り返し部を超えず、前記第1の折り返し部を超えて形成され、前記直線部を挟んだ両側のうち他方側に位置する前記第1の接合部が前記第1の折り返し部を超えず、前記第2の折り返し部を超えて形成され、前記第2の接合工程では、前記第1の折り返し部の側において、前記第1の接合工程により形成された前記第1の折り返し部を超えた前記第1の接合部と十字状に交差するように前記第2の接合部が形成され、前記第2の折り返し部の側において、前記第1の接合工程により形成された前記第2の折り返し部を超えた前記第1の接合部と十字状に交差するように前記第2の接合部が形成されることを特徴とする。
本発明は、面状の上部材および下部材と、発熱線と、を備える面状採暖具であって、前記発熱線は、前記下部材と前記上部材との間に配設される略平行に並ぶ直線部と該直線部同士を該直線部の直線方向の一方側で連結する第1の折り返し部と、該直線部同士を該直線部の直線方向の他方側で連結する第2の折り返し部とを有し、該面状採暖具は、前記発熱線の前記直線部を挟んだ両側の位置で、間隔が3.0cm以下である、前記直線部と平行な方向に沿って連続して長い、前記上部材と前記下部材とを接合する第1の接合部と、複数の前記第1の折り返し部の側および複数の前記第2の折り返し部の側のそれぞれに対して前記直線部の側とは反対側の位置で、前記直線部の直線方向と略直交する方向に沿って連続して長い、前記上部材と前記下部材とを接合する第2の接合部と、前記上部材および前記下部材の外周縁に沿って、前記上部材と前記下部材とを接合する接合部とを有し、前記第1の接合部は、前記直線部を挟んだ両側のうち一方側に位置する接合部が前記第2の折り返し部を超えず、前記第1の折り返し部を超えて形成され、前記直線部を挟んだ両側のうち他方側に位置する接合部が前記第1の折り返し部を超えず、前記第2の折り返し部を超えて形成され、前記第2の接合部は、前記第1の折り返し部の側では、前記第1の折り返し部を超えて形成された前記第1の接合部と十字状に交差するように形成され、前記第2の折り返し部の側では、前記第2の折り返し部を超えて形成された前記第1の接合部と十字状に交差するように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発熱線の重なりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】面状採暖具の構成の一例を模式的に示す分解斜視図である。
図2】発熱部の構成の一例を示す平面図である。
図3図2に示すA1部分を拡大した拡大図である。
図4図2に示すA2部分を拡大した拡大図である。
図5図3に示すI-I線を切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る面状採暖具およびその製造方法について図面を参照して説明する。なお、説明を容易にするために、各図には必要に応じて、上側をUp、下側をLo、右側をRi、左側をLe、前側をFr、後側をRrとして示している。
【0011】
[面状採暖具の構成]
図1は、面状採暖具100の構成の一例を模式的に示す分解斜視図である。図2は、発熱部110の構成の一例を示す平面図である。本実施形態の面状採暖具100は、電気毛布であるものとして説明する。
【0012】
面状採暖具100は、発熱部110と、外部カバー部140とを備える。
発熱部110は、面状採暖具100のうち発熱する部分である。発熱部110は、上側から見て前後方向または左右方向に長い略矩形状であり、1.0cm以下の厚さである。また、発熱部110は、上側の外部カバー部140と下側の外部カバー部140との間に配設される。
【0013】
発熱部110は、上部材111と、下部材112と、発熱線120とを有する。
上部材111と下部材112は、上側と下側から発熱線120を挟み込むことで間に発熱線120を配設する。また、上部材111と下部材112は、発熱線120を挟み込むことから略同一サイズ、すなわち長辺の長さが略同一であり、短辺の長さが略同一である。上部材111と下部材112は、面状であり、例えば、フェルト状のシート等の不織布が用いられる。
【0014】
また、図2に示すように、上部材111と下部材112とは、上部材111と下部材112とが接合される複数の接合部130を有する。なお、図2では接合部130を破線で示している。接合部130は、上部材111と下部材112とを一体させる機能を有する。また、接合部130は、上部材111と下部材112との間に配設された発熱線120にループが発生して発熱線120が重なり合うのを抑制する機能を有する。接合部130についての詳細は後述する。
【0015】
発熱線120は、電流を流すことによって発熱する。発熱線120は、ヒータ線と、ヒータ線を被覆する第1の被覆材と、第1の被覆材の外側を覆うように設けられる温度検出線と、温度検出線の外側を被覆する第2の被覆材とを含み、これらが同軸状に設けられる構成を有する。また、発熱線120は、何れの部位でも撓むことができるような可撓性を有する。本実施形態の発熱線120の直径が略2.1mmである。
【0016】
また、発熱線120の両端には外部から電力の供給を受けるための電気コネクタ127が電気的に接続される。また、電気コネクタ127は、発熱線120の発熱量を変化させるため、電熱線に電流を流すための回路や、発熱線120の温度を検出するための回路や、その他保護回路などが設けられたコントールユニットに接続しても良いし、直接電気供給をするためにコンセントを代わりに取り付けても良い。また、電気コネクタ127、コントロールユニットなどは従来公知の構成が適用できるため、詳細な説明は省略する。
【0017】
ヒータ線は、発熱体であり、例えば、銅線等が適用できる。第1の被覆材は、電気的な絶縁性を有し、所定の温度で溶融する材料により形成される。第1の被覆材には、例えば、ナイロンなどが適用できる。温度検出線は、温度に応じて電気抵抗が変化する材料によって形成される。そして、温度検出線の抵抗値を検出することによって、発熱線120の温度を検出することができる。温度検出線には、例えば、ニッケルなどが適用できる。発熱線120が所定の範囲よりも高い温度となると、第1の被覆材が溶融して電熱線と温度検出線とが短絡する。したがって、電熱線と温度検出線の短絡を監視することにより、発熱線120が所定の範囲以下の温度にあるか否かを判定できる。第2の被覆材は、電気的な絶縁性を有する材料により形成される。第2の被覆材には、例えば、塩化ビニルなどが適用できる。
【0018】
発熱線120は上部材111と下部材112との間に配設された状態で、上部材111と下部材112の面方向に亘って配線される。なお、図2では上部材111を透過させた状態で発熱線120を図示しており、発熱線120を実線で示している。発熱線120の配線構造は、発熱線120が蛇行することによって配線される蛇行部121と、発熱線120を外部と接続するために蛇行部121から連続して配線される外部連絡部124とを有する。
【0019】
図3は、図2に示すA1部分を拡大した拡大図である。図4は、図2に示すA2部分を拡大した拡大図である。
図3に示すように、蛇行部121は、直線部122と折り返し部123とが交互に形成される。直線部122は、発熱線120が略直線状に配線される部位である。隣り合う直線部122は略平行に並んでいる。本実施形態の直線部122は、前後方向に略平行である。折り返し部123は、発熱線120のうち隣接する直線部122同士が連結される部位である。折り返し部123は、直線部122が折り返される部位である。また、折り返し部123は、直線部122の左側に位置した次に直線部122の右側に位置するように左右方向に間隔を空けて前後に交互に表れる。本実施形態の折り返し部123は、湾曲形状であり、例えば、略U字状あるいは略ヘアピンカーブ状である。
【0020】
図2に示すように、蛇行部121では、右側から左側に向かうにしたがって直線部122同士の左右の間隔が広くなる。したがって、蛇行部121のうち右側と左側とで単位面積あたりの発熱線120の密度が異なる。発熱線120の密度を高くすることで発熱量を大きくなり、発熱線120の密度を小さくすることで発熱量を小さくなる。したがって、面状採暖具100を電気毛布に用いた場合には使用者の頭側よりも足側を温める、いわゆる頭寒足熱を実現することができる。なお、直線部122同士の左右の間隔が広くなることで折り返し部123の曲率半径も大きくなる。
【0021】
図2に示すように、外部連絡部124は、蛇行部121の一端および他端からそれぞれ左右方向の中央側に向かって延出する延出部125と、延出部125から発熱部110の外部に向かう連絡部126とを有する。なお、連絡部126のうち外側に位置する端部には電気コネクタ127が接続される。
このように、発熱線120により蛇行部121を構成することで、発熱部110全体に亘って発熱線120を満遍なく配線することができる。また、蛇行部121から連続する外部連絡部124を構成することで、外部連絡部124に電気コネクタ127を接続することがでるために外部から電力の供給を受けることができる。
【0022】
また、上述したように配線された発熱線120は、上部材111、下部材112、および接合部130により形成される空間内に位置することで自由な移動が規制される。接合部130は、上部材111と下部材112とを連続的に接合することで形成される。
【0023】
接合部130は、前後方向に沿って連続する第1の前後接合部131aおよび第2の前後接合部131bと、左右方向に沿って連続する左右接合部132と、延出接合部134と、外周接合部136とを有する。本実施形態では、第1の前後接合部131a、第2の前後接合部131b、左右接合部132、延出接合部134、外周接合部136は縫製によって形成される。
【0024】
まず、第1の前後接合部131aについて説明する。
第1の前後接合部131aは、発熱線120のうち直線部122の移動を規制すると共に、直線部122がループして重なり合うのを抑制する。図3に示すように、第1の前後接合部131aは、直線部122を挟んだ両側の位置で、上部材111と下部材112とを接合する。第1の前後接合部131aは、発熱線120の直線部122と略平行に連続して形成される。また、第1の前後接合部131aは、発熱線120の折り返し部123の内側の位置から前後方向に沿って左右接合部132を超えた位置まで連続して形成される。
【0025】
図5は、図3に示す発熱部110のうちI-I線に沿って切断して矢印方向から見た断面図である。図5に示すように、隣接する第1の前後接合部131a同士の間と、上部材111および下部材112とにより囲まれた空間に発熱線120が配線される。ここで、隣接する第1の前後接合部131a同士の間隔を距離L1とすると、距離L1を小さくすることで空間を狭くすることができる。空間を狭くすることで発熱線120の自由な移動が規制されるために、空間内で発熱線120がループしてしまい重なり合うことが抑制される。
【0026】
本実施形態では、発熱線120の直径が略2.1mmであるのに対して、距離L1を略2.5cmに設定している。なお、発熱線120を空間内に配線するために、距離L1は発熱線120の直径よりも大きくする必要がある。一方、距離L1が大きいと、発熱線120が空間内でループしてしまい重なり合ってしまうことから、距離L1は3.0cm以下であることが好ましく更には2.5cm以下であることが好ましい。面状採暖具100が電気毛布の場合には、電気毛布を洗濯機で洗濯したときに空間内で発熱線120のループが発生しやすい。そのため、実際に距離L1を変えた電気毛布を洗濯したときのループの発生を検証した結果、距離L1が3.0cm以下ではループが発生し難くなり、距離L1が2.5cm以下ではループが発生しなかった。
【0027】
次に、第2の前後接合部131bについて説明する。
第2の前後接合部131bは、発熱線120のうち折り返し部123の移動を規制すると共に、折り返し部123がループして重なり合うのを抑制する。第2の前後接合部131bは、略平行な2つの第1の前後接合部131aの間の位置で、上部材111と下部材112とを接合する。第2の前後接合部131bは、発熱線120の直線部122と略平行に連続して形成される。また、第2の前後接合部131bは、発熱線120の折り返し部123の内側の位置から前後方向に沿って左右接合部132を超えた位置まで連続して形成される。本実施形態の第2の前後接合部131bの前後方向の長さは、左右に隣接する第1の前後接合部131aの長さと略同一である。
【0028】
図4の二点鎖線で示すループR1は、第2の前後接合部131bがない場合に発熱線120の折り返し部123で発生する可能性があるループの一例である。ループR1は、2つの第1の前後接合部131aの間に位置する。したがって、2つの第1の前後接合部131aの間に第2の前後接合部131bを形成することで、発熱線120の折り返し部123にループR1が生じるような力が作用としたとしても、第2の前後接合部131bが発熱線120と干渉することで、ループR1の発生を抑制することができる。
【0029】
なお、図2に示すように、右側から左側に向かうにしたがって発熱線120の直線部122同士の左右の間隔が広くなることから、右側よりも左側の方が2つの第1の前後接合部131aの間に形成される第2の前後接合部131bの数が増加する。具体的には、発熱部110の右側では2つの第1の前後接合部131aの間に1つの第2の前後接合部131bが形成され、発熱部110の略中央では2つの第2の前後接合部131bが形成され、左側では3つの第2の前後接合部131bが形成される。このように、2つの第1の前後接合部131aの間の距離が大きくなったとしても、2つの第1の前後接合部131aの間に配置する第2の前後接合部131bの数を増加させることで、2つの第1の前後接合部131aの間にループR1が発生するのを抑制することができる。
【0030】
また、隣接する前後接合部131a,131bの間の距離が略同一である。すなわち、上述したように前後接合部131a同士が距離L1である場合には、何れの前後接合部131a,131bの間も距離L1である。このように、第1の前後接合部131aであるか、第2の前後接合部131bであるかによらず、隣接する前後接合部131a,131bの間の距離を略同一にすることで距離を変更する場合に比べて製造コストを削減することができる。
【0031】
次に、左右接合部132について説明する。
左右接合部132は、発熱線120のうち折り返し部123の移動を規制すると共に、折り返し部123がループして重なり合うのを抑制する。図4に示すように、左右接合部132は、発熱線120の折り返し部123に対して直線部122の側とは反対側の位置で、直線部122の直線方向と略直交する方向に沿って上部材111と下部材112とを接合する。左右接合部132は、発熱部110の前側寄りおよび後側寄りにそれぞれ、直線部122の直線方向と略直交する方向に沿って連続して形成される。また、2つの左右接合部132は、発熱線120の蛇行部121を前後から挟むように形成される。
【0032】
図4の二点鎖線で示すループR2は、左右接合部132がない場合に発熱線120の折り返し部123で発生する可能性があるループの一例である。ループR2は、発熱線120の折り返し部123に対して直線部122の側とは反対側に位置する。したがって、折り返し部123に対して直線部122の側とは反対側に左右接合部132を形成することで、発熱線120の折り返し部123にループR2が生じるような力が作用としたとしても、左右接合部132が発熱線120と干渉することで、ループR2の発生を抑制することができる。
【0033】
ここで、図4に示すように、第1の前後接合部131aの端部から左右接合部132までを距離L2とすると、距離L2を小さくすることで発熱線120の折り返し部123が配置される空間を狭くすることができる。空間を狭くすることで発熱線120の自由な移動が規制されるために、空間内で発熱線120がループしてしまい重なり合うことが抑制される。
【0034】
本実施形態では、発熱線120の直径が略2.1mmであるのに対して、距離L2を略1.5cmに設定している。なお、発熱線120を空間内に配線するために、距離L2は発熱線120の直径よりも大きくする必要がある。一方、距離L2が大きいと、発熱線120が空間内でループしてしまい重なり合ってしまうことから、距離L2は3.0cm以下であることが好ましく更には2.5cm以下であることが好ましく更には1.5cm以下であることがより好ましい。上述した距離L1の検証と同様に、距離L2が3.0cm以下ではループが発生し難くなり、距離L2が2.5cm以下ではループが発生しなかった。また、距離L2が1.5cm以下では、発熱線120の移動をより規制することができる。なお、第2の前後接合部131bの端部の位置を、第1の前後接合部131aの端部の位置よりも、左右接合部132に近づけて距離L1よりも小さくすることで、発熱線120の移動をより規制することができる。
【0035】
次に、延出接合部134について説明する。
延出接合部134は、発熱線120のうち延出部125がループして重なり合うのを抑制する。図2に示すように、延出接合部134は、発熱部110の後側寄りであって、発熱線120の延出部125に対して蛇行部121の側とは反対側の位置で、直線部122の直線方向と略直交する方向に沿って上部材111と下部材112とを接合する。なお、延出接合部134は、途中で発熱線120の連絡部126を挿通させるために非接合部135を有する。
次に、外周接合部136について説明する。
外周接合部136は、上部材111と下部材112とを一体化する。図2に示すように、外周接合部136は、上部材111と下部材112のそれぞれ外周縁で上部材111と下部材112とを接合する。
【0036】
図1の面状採暖具100の説明に戻り、外部カバー部140は、空気層を有することで電気毛布内の温度を保温させたり、発熱部110を保護したりする。外部カバー部140は、上部と下部に分けて、発熱部110を挟み込んで保護する。ただし、外部カバー部140は、例えば、袋状に構成して、袋の開口から発熱部110を挿入するようにしてもよい。また、外部カバー部140は、布状の素材である。ただし、外部カバー部140は、上部材111と下部材112と同様に不織布であってもよい。また、外部カバー部140は、例えば、外部に刺繍などの装飾や、色による模様などがあってもよい。更に、外部カバー部140は、発熱部110を覆って保護するために発熱部110よりも大きいサイズである。
【0037】
また、外部カバー部140は、外部に上述した電気コネクタ127を外部に挿通させるための孔を有していてもよい。また、外部カバー部140は、内部に配置した発熱部110を留めるための機構、例えば、発熱部110の四隅と外部カバー部140の内部の四隅を留めるための止め紐などを有していてもよい。
【0038】
[面状採暖具の製造方法]
次に、本実施形態の面状採暖具100の製造方法について説明する。本実施形態では、上述したような第1の前後接合部131a同士の間隔である距離L1を小さくするために、発熱線120を下部材112と上部材111との間に配設した後に、第1の前後接合部131aを形成する。
【0039】
第1の工程として、発熱線120を配設する工程について説明する。この工程では、略平行に並ぶ直線部122と該直線部122同士を連結する折り返し部123とを形成した発熱線120を下部材112と上部材111との間に配設する工程が含まれる。
【0040】
具体的には、まず下部材112を平面状に広げる。次に、図2に示すように、発熱線120を蛇行部121および外部連絡部124を有する配線構造となるように、下部材112の上に発熱線120を配線する。なお、必要に応じて下部材112と発熱線120とを仮止めしてもよい。次に、下部材112に配線した発熱線120上に上部材111を平面状に広げ、下部材112と上部材111とを重ね合わせる。上部材111と下部材112とは略同一サイズであることから、対応する頂点と頂点とを一致させるように重ね合わせることで、上部材111と下部材112とが重なり合わない部分がないように重ね合わせることができる。このように、上部材111と下部材112とを重ね合わせることで、直線部122と該直線部122同士を連結する折り返し部123とを形成した発熱線120を下部材112と上部材111との間に配設することができる。なお、発熱線120の配線構造を維持するために、複数の直線部122および複数の折り返し部123の必要な位置で仮止めする。例えば、上部材111と下部材112と発熱線120とを共に縫製することで仮止めする。
【0041】
第2の工程として、上部材111と下部材112とを縫製により接合し、接合部130を形成する工程について説明する。この工程では、発熱線120の直線部122を挟んだ両側の位置で、上部材111と下部材112とを接合する工程が含まれる。また、この工程では、折り返し部123に対して直線部122の側とは反対側に離れた位置で、直線部122の直線方向と略直交する方向に沿って上部材111と下部材112とを接合する工程が含まれる。
【0042】
具体的には、まず、前後方向に沿って第1の前後接合部131aを形成することで、発熱線120の直線部122を挟んだ両側の位置で、上部材111と下部材112とを接合する。このとき、隣接する第1の前後接合部131a同士の距離L1を略2.5cmに設定する。次に、前後方向に沿って第2の前後接合部131bを形成することで、略平行な2つの第1の前後接合部131aの間の位置で、上部材111と下部材112とを接合する。このとき、隣接する何れの前後接合部131a,131b同士の距離L1を略2.5cmに設定する。次に、左右方向に沿って左右接合部132を形成することで、発熱線120の折り返し部123に対して直線部122の側とは反対側の位置で、直線部122の直線方向と略直交する方向に沿って上部材111と下部材112とを接合する。このとき、第1の前後接合部131aの端部から左右接合部132までの距離L2を略1.5cmに設定する。次に、左右方向に沿って延出接合部134を形成して、発熱線120の延出部125に対して蛇行部121の側とは反対側の位置で、直線部122の直線方向と略直交する方向に沿って上部材111と下部材112とを接合する。次に、外周接合部136を形成することで、外周縁に沿って上部材111と下部材112とを接合する。
【0043】
なお、本実施形態では、上部材111と下部材112とを縫製により接合するが、縫製に限られず、超音波溶着、高周波溶着、レーザ溶着などの異なる種類の接合手段を用いてもよい。また、第1の前後接合部131a、第2の前後接合部131b、左右接合部132、延出接合部134、外周接合部136を形成する順番は、上述した順番に限られず適宜、順番を変更してもよい。また、第1の前後接合部131a、第2の前後接合部131b、左右接合部132、延出接合部134、外周接合部136は、同じ種類の接合手段で接合する場合に限られず、少なくとも1つ以上の接合部で異なる種類の接合手段を用いて接合してもよい。
また、左右接合部132、延出接合部134、外周接合部136を縫製する前に、上部材111と下部材112と第1の前後接合部131aとで構成された空間に通すことができる通線棒を使用し、発熱線120を通線後、左右接合部132、延出接合部134、外周接合部136を縫製してもよい。
【0044】
第3の工程として、外部カバー部140で発熱部110を保護する工程について説明する。具体的には、外部カバー部140で発熱部110を挟み込むことで発熱部110を上下から覆う。なお、外部カバー部140が止め紐などを有する場合には、外部カバー部140の内部に配置した発熱部110を止め紐などで留める。また、外部カバー部140が電気コネクタ127を外部に挿通させるための孔を有する場合には、発熱線120に接続された電気コネクタ127を外部カバー部140の孔に挿通して外部に露出させる。
以上の工程を経て、面状採暖具100を製造することができる。
【0045】
このように、本実施形態の面状採暖具100の製造方法によれば、略平行に並ぶ直線部122と該直線部同士を連結する折り返し部123とを形成した発熱線120を下部材112と上部材111との間に配設する工程と、発熱線120の直線部122を挟んだ両側の位置で、上部材111と下部材112とを接合する工程と、を含む。このように、発熱線120を配設した後に、直線部122を挟んだ両側の位置で上部材111と下部材112とを接合することで、従来のように通電棒を挿通させるほどの広い空間を必要としないために、発熱線120が自由に移動することができる空間を狭くすることができる。空間を狭くすることで発熱線120の自由な移動が規制されるために、空間内における発熱線120の重なりを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態の面状採暖具100によれば、折り返し部123に対して直線部122の側とは反対側の位置で、直線部122の直線方向と略直交する方向に沿って上部材111と下部材112とが接合されている。したがって、発熱線120の折り返し部123にループが生じるような力が作用としたとしても、直線部122の側とは反対側の位置で、上部材111と下部材112とが接合された部位が発熱線120と干渉することで、ループの発生を抑制することができるので、発熱線120の重なりを抑制することができる。
【0047】
以上、本発明を上述した実施形態を用いて説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更等が可能であり、変形例を適宜、組み合わせてもよい。
【0048】
上述した実施形態では、接合部130は、上部材111と下部材112とを連続的に接合することで形成する場合について説明したが、この場合に限られず、接合部130は、断続的に接合することで形成してもよい。ただし、断続的に接合する場合には、断続的に接合した隙間から発熱線120の一部がはみ出すことでループが発生しないように、断続的に接合するときの隙間はループが発生しない距離(例えば上述した距離L1参照)にする。
【0049】
また、上述した実施形態の面状採暖具100は、発熱線120の直線部122を挟んだ両側の位置で、上部材111と下部材112とを接合し、かつ折り返し部123に対して直線部122の側とは反対側の位置で、直線部122の直線方向と略直交する方向に沿って上部材111と下部材112とを接合する場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、発熱線120の直線部122を挟んだ両側の位置で、上部材111と下部材112とを接合しなくてもよい。また、例えば、折り返し部123に対して直線部122の側とは反対側の位置で、直線部122の直線方向と略直交する方向に沿って上部材111と下部材112とを接合しなくてもよい。
【0050】
また、上述した実施形態の面状採暖具100は、前後方向が短手方向であり、左右方向が長手方向である場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、面状採暖具100は、前後方向が長手方向であり、左右方向が短手方向であってもよい。
上述した実施形態の面状採暖具100は、発熱線120のうち直線部122の長さが各直線部122で略同一である場合について説明したが、この場合に限られず、異なる長さであってもよい。
【0051】
また、上述した実施形態の面状採暖具100は、外部カバー部140を備える場合について説明したが、外部カバー部140を備えない構成であってもよい。
また、上述した実施形態の面状採暖具100は、電気毛布に適用する場合について説明したが、この場合に限られず、電気カーペット、電気マット、電気座布団、電気ソフトアンカなどにも適用することができる。
また、上述した実施形態では、発熱線120の直径が略2.1mmである場合について説明したが、この場合に限られず、発熱線120の直径が2.0mm~2.5mm、あるいは2.1mm~2.3mmの場合にも適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
100:面状採暖具 110:発熱部 111:上部材 112:下部材 120:発熱線 122:直線部 123:折り返し部 127:電気コネクタ 130:接合部 131a:第1の前後接合部 131b:第2の前後接合部 132:左右接合部 140:外部カバー部
図1
図2
図3
図4
図5