(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】免疫調節性M2単球を選択的に低減することによってがんを治療し、治療的免疫を増強するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20240130BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240130BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240130BHJP
A61K 31/7125 20060101ALI20240130BHJP
A61K 35/13 20150101ALI20240130BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240130BHJP
C12N 15/113 20100101ALN20240130BHJP
【FI】
A61K48/00
A61P35/00
A61P43/00 105
A61K31/7125 ZNA
A61K35/13
A61P37/04
C12N15/113 Z
(21)【出願番号】P 2021158687
(22)【出願日】2021-09-29
(62)【分割の表示】P 2018504082の分割
【原出願日】2016-04-11
【審査請求日】2021-10-27
(32)【優先日】2015-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516241599
【氏名又は名称】トーマス・ジェファーソン・ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】アンドリューズ、デビッド ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】フーパー、ダグラス シー.
【審査官】佐々木 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06331526(US,B1)
【文献】特表2002-522506(JP,A)
【文献】Cancer Research, 1994, Vol.54, No.18, pp.4848-4850
【文献】Cancer Immunol. Immunother. 2015.03, Vol.64, No.3, pp.299-309
【文献】J. Clin. Oncol., 2001,Vol.19, pp.2189-2200
【文献】Am. J. Cancer Res., 2013, Vol.3, No.1, pp.21-33
【文献】Cancer immunology, immunotherapy, 2015.04, Vol.64, No.4, pp.447-457, Epub.2015.01.13
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 48/00
A61K 35/00-35/768
A61K 31/33-33/44
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経膠芽腫を患う対象におけるM2細胞の選択的低減における使用のための医薬組成物であって、インスリン様成長因子1受容体アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)を含み、前記IGF-1R AS ODNが配列番号1の配列を有し、
前記IGF-1R AS ODNが、約0.025g/kg~約0.2g/kgの範囲の用量で前記対象に投与され、
a)前記M2細胞が、CD11b、CD14、CD15、CD23、CD64、CD68、CD163、CD204およびCD206からなる群から選択される1つ以上の細胞表面マーカを発現するM2マクロファージまたはM2単球である、または
b)前記対象が循環中のM2細胞、腫瘍微小環境中のM2細胞、または、未分化単球をM2細胞へと極性化する血清を有する、医薬組成物。
【請求項2】
前記対象における前記M2細胞が、FACSによる測定によると、前記医薬組成物の前記対象への投与から約24時間以内に少なくとも約40%減少する、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項3】
前記医薬組成物の投与が前記対象におけるM1細胞の数に影響しない、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項4】
前記IGF-1R AS ODNが1つ以上のホスホロチオエート結合を含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項5】
前記IGF-1R AS ODNが、修飾されたリン酸骨格を含む、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項6】
前記IGF-1R AS ODNが、約0.025g/kg、約0.05g/kg、約0.1g/kg、約0.15g/kg、または約0.2g/kgの用量で前記対象に投与される、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項7】
前記医薬組成物が前記対象における1型免疫を回復させる、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項8】
前記IGF-1R AS ODNが約37℃でヘアピンループ構造を形成しない、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項9】
前記M2細胞が、CD11b、CD14、CD15、CD23、CD64、CD68、CD163、CD204およびCD206からなる群から選択される1つ以上の細胞表面マーカを発現するM2マクロファージである、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項10】
前記M2細胞が、CD11b、CD14、CD15、CD23、CD64、CD68、CD163、CD204およびCD206からなる群から選択される1つ以上の細胞表面マーカを発現するM2単球である、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項11】
前記M2細胞が、CD163を発現するM2マクロファージまたはM2単球である、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項12】
前記対象が循環中のM2細胞、腫瘍微小環境中のM2細胞、または、未分化単球をM2細胞へと極性化する血清を有する、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項13】
前記対象における
前記神経膠芽腫の退縮を誘導する、請求項
1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項14】
前記対象における
前記神経膠芽腫の産生の低下を引き起こす、請求項
13に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項15】
前記対象における
前記神経膠芽腫の産生の除去を引き起こす、請求項
14に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項16】
経口、腹腔内、または静脈内投与のために製剤化される、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物が、前記対象に全身投与されるものであり、
前記医薬組成物が、前記対象におけるM2細胞を選択的に除去する、請求項1に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項18】
対象のがん治療における使用のための医薬組成物であって、第1のインスリン様成長因子1受容体アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)を含み、前記第1のIGF-1R AS ODNが配列番号1の配列を有するとともに修飾されたリン酸骨格を
有し、
少なくとも1つの拡散チャンバが前記対象にさらに投与され、
前記拡散チャンバが、腫瘍細胞と、第2のインスリン様成長因子1受容体アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)とを含み、前記第2のIGF-1R AS ODNが、配列番号1の配列を有するとともに修飾されたリン酸骨格を
有し、
前記医薬組成物が、前記対象に全身投与される
ものである、医薬組成物。
【請求項19】
放射線療法が、前記医薬組成物の投与後に前記対象にさらに施される、請求項
18に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項20】
前記放射線療法は、内部源放射線療法、外部ビーム放射線療法、および全身ラジオアイソトープ放射線療法からなる群から選択される、請求項
19に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項21】
前記放射線療法が外部ビーム放射線療法である、請求項
20に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項22】
前記外部ビーム放射線療法が、γ線療法、X線療法、強度変調放射線療法(IMRT)、および画像誘導放射線療法(IGRT)からなる群から選択される、請求項
21に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項23】
前記外部ビーム放射線療法がγ線療法である、請求項
22に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項24】
前記腫瘍細胞が、照射された腫瘍細胞である、請求項
18に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項25】
前記拡散チャンバが、前記医薬組成物の全身投与の前に前記対象に投与される、請求項
18に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項26】
前記拡散チャンバが、前記医薬組成物の全身投与の後に前記対象に投与される、請求項
18に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項27】
前記腫瘍細胞および前記第2のIGF-1R AS ODNが、それぞれ照射されている、請求項
18に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項28】
前記拡散チャンバが、治療的に有効な期間、前記対象の腹直筋鞘に外科的に移植される、請求項
18に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項29】
前記修飾されたリン酸骨格が、前記少なくとも1つのIGF-1R AS ODNをヌクレアーゼ分解に対して耐性にする、請求項
18に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項30】
少なくとも1つのIGF-1R AS ODNが、1つ以上のホスホロチオエート結合を含む、請求項
18に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項31】
前記がんが、神経膠腫、神経膠芽腫、星状細胞腫、乳がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、乳頭状腎細胞がんタイプ2、肺がん、膵がん、胆嚢がん、直腸がん、古典的ホジキンリンパ腫、卵巣がん、および結腸直腸がんからなる群から選択される、請求項
18に記載の使用のための医薬組成物。
【請求項32】
前記がんが神経膠腫である、請求項
31に記載の使用のための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、M2細胞を、インスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)に特異的なアンチセンス核酸で標的化することによって選択的に低減することにより、がんを治療し、治療的免疫を増強するための方法および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
単球は、骨髄における骨髄前駆細胞に由来する白血球の1種である。単球は骨髄から末梢血流に侵入し、後に組織へ遊走する。組織内で局所成長因子、炎症促進性サイトカイン、および微生物化合物への曝露後、単球はマクロファージおよび樹状細胞に分化する。単球前駆物質由来のマクロファージは、古典的に極性化された(M1)マクロファージおよび非古典的に活性化された(M2)マクロファージへの特異的分化を経る。通常、マクロファージは免疫系における3つの主な機能を果たす。これらは、食作用、抗原提示、およびサイトカイン提示である。さらに、特定タイプのがん(例えば、乳がん、星状細胞腫、頭頸部扁平上皮細胞がん、乳頭状腎細胞がんタイプII、肺がん、膵がん、胆嚢がん、直腸がん、神経膠腫、古典的ホジキンリンパ腫、卵巣がん、および結腸直腸がんなど)は、腫瘍内部のM2様マクロファージおよび末梢において循環する類似のM2単球のレベル上昇を呈する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
がん治療における進歩にもかかわらず、これらのがんにおける予後は不良のままであり、例えば、化学療法、外部ビーム放射線、および密封小線源治療などの従来治療を用いてのこれらのがんを治療する試みは、無進行生存および全生存において周辺的な改善をもたらしているに過ぎない。したがって、当該技術分野ではかかるがんに対する新たな改善された治療を得る必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
一部の態様では、本開示は、有効量のインスリン様成長因子1受容体アンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)を含む医薬組成物を提供し、対象の循環中のM2細胞、腫瘍微小環境中のM2細胞、または未分化単球をM2細胞へと極性化する血清を有する対象に医薬組成物を投与することにより、対象におけるM2細胞の数が低減される。
【0005】
他の態様では、本開示は、対象におけるM2細胞の選択的除去のための方法であって、対象に医薬組成物を有効量で全身投与するステップを含む、方法を提供する。
他の実施形態では、本開示は、M2細胞の数を低減することによってがんを治療する方法であって、がんを患う対象に医薬組成物を有効量で全身投与するステップを含む、方法を提供する。
【0006】
さらに他の実施形態では、本開示は、対象における免疫応答を増強するための方法であって、対象に医薬組成物を有効量で全身投与するステップを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】神経膠腫を有する患者の末梢におけるCD163+細胞の発現を示す図。単球のこのサブセットは腫瘍の存在によって開始され、この亜集団はその血管新生および免疫抑制性の性質に起因して腫瘍の成長および浸潤を支持する。神経膠腫のグレードは、M2単球マーカを有する細胞の蓄積および活性に関連する。この集団の腫瘍内部でのM2様CD163+マクロファージおよび循環する末梢における類似のM2単球の存在はまた、任意の炎症促進性抗腫瘍ワクチンの方策を無効にする。a.WHOグレードIII星状細胞腫内でのCD14+細胞における増加を反映するフローサイトメトリーが示されている。b.WHOグレードに従ってCD163+細胞のレベルを比較するグラフ表示。グレードIIIおよびグレードIVの腫瘍は、正常対象またはWHOグレードII星状細胞腫のいずれかと比べると、PMBCにおける有意に異なる%単球を示す。
【
図2a】細胞型による、インスリン様成長因子1受容体に特異的な標識されたアンチセンス核酸(IFG-1R AS ODN)の取り込みを示す図。神経膠腫患者における腫瘍および対応血液試料に由来するマクロファージ(CD14+)は、インスリン様成長因子1型受容体に特異的なアンチセンス(IGF-1R AS ODN)を貪欲に取り込む。
【
図2b】免疫型による、インスリン様成長因子1受容体に特異的な標識されたアンチセンス核酸(IFG-1R AS ODN)の取り込みを示す図。神経膠腫患者における腫瘍および対応血液試料に由来するマクロファージ(CD14+)は、インスリン様成長因子1型受容体に特異的なアンチセンス(IGF-1R AS ODN)を貪欲に取り込む。
【
図3a】インスリン様成長因子1受容体(IFG-1R)の発現を伴う細胞のフローサイトメトリーを示す図。インビトロでM2細胞に極性化される正常な末梢単球は、IGF-1Rを、M1極性化に誘導されるマクロファージと比べて過剰発現する。さらに、IGF-1R AS ODNは、用量依存的にM2亜集団における細胞死を選択的に誘導する。
図3aは、IGF-1R AS ODNが、M2マクロファージの除去を、これらの細胞が優勢な状況下でそれらの腫瘍促進効果が除去され得るとともに治療的なTh1免疫が救済され得るように、選択的に標的化することを詳述する。白丸は分化された刺激されていない細胞を表し、黒丸は分化され、刺激された細胞を表す。
【
図3b】インスリン様成長因子1受容体(IFG-1R)の発現を伴う細胞のフローサイトメトリーを示す図。インビトロでM2細胞に極性化される正常な末梢単球は、IGF-1Rを、M1極性化に誘導されるマクロファージと比べて過剰発現する。さらに、IGF-1R AS ODNは、用量依存的にM2亜集団における細胞死を選択的に誘導する。
図3bは、マクロファージの極性化による、IGF-1R AS ODNで治療後での単球サブセット分布における差異を示す。
【
図4】治療経過全体を通じての患者における腫瘍に関連したCD163+細胞の定量化を示す図。5400倍視野の平均および標準偏差がアペリオ(Aperio)定量化によって測定された。1回目の手術、1回目の再発、2回目の再発、および剖検の4つの時点と、y軸上にアペリオ(Aperio)CD163+細胞が提供される。
図4は、本明細書に開示される方法が、標準治療が奏効していない患者においてCD163+細胞を低減するのに有効であることを示す。
【
図5】6つの継続的な多形神経膠芽腫標本におけるIGF-1Rについての免疫組織化学を示す図。すべての腫瘍がIGF-1Rの免疫反応性を示した。IGF-1Rの免疫反応性は、腫瘍微小環境中での1つ以上のIGF-1Rを発現する細胞の存在を示し、がん治療における標的としてIGF-1Rを識別する。
【
図6】IGF-1R AS ODNの2つの異なる配列ロットの質量分析を示す図。a-c:DWA配列のアヴェシア(Avecia)ロット産物;d-f:ノーベル(NOBEL)配列のGirindusロット産物;a,d:凍結乾燥粉末形態でのAS ODNの安定性;b,e:滅菌生理食塩水中の製剤;c,f:滅菌生理食塩水中の製剤。IMV118ロット番号GAI-08-060-S3-B1の安定性結果は、最小の分解生成物が約300Daであることを示し、それ故、測定された質量スペクトルが5709±300Daの要件およびロット放出から現在までの貯蔵における許容できる安定性を満たす。アヴェシア(Avecia)配列(DWA)は、9年間にわたる安定性を示す。
【
図7】循環CD68+CD163+細胞が、動物において、GL261の中枢神経系への移植後に1用量のノーベル(NOBEL)(配列番号1)の全身(腹腔内)投与を受けてから少なくとも14日目に減少することを示す図。ノーベル(NOBEL)は、開始メチオニンコドンから下流の6つのヌクレオチドで始まる、18-merのホスホロチオエートオリゴデオキシヌクレオチドのIGF1-Rアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS ODN)である。ノーベル(NOBEL)は、フロースルー技術を用いての閉じた化学的カラム反応器を備えたシンセサイザー内で、十分に確立された方法論を用いることによる固相有機合成によって作製される。固体支持体上の各合成サイクルシークエンスは複数のステップからなり、それらは完全長オリゴヌクレオチドが確立されるまで順次実施される。次に、ノーベル(NOBEL)は凍結乾燥され、スクリューキャップを有するHDPE容器内にパッケージされ、次に-80℃で貯蔵するため、5mLのマイラー(Mylar)パウチ内部で真空ヒートシールされる。使用前、凍結乾燥粉末は100mg/mLの溶液が得られるまで生理食塩水に溶解される。得られた溶液は、0.22μmの膜フィルターを通して滅菌濾過される。-80℃での貯蔵前、1mLのアリコートがUSPタイプ1(USP Type 1)ガラスバイアル内に満たされ、適切なゴム栓とアルミニウムキャップで密封される。 この実験においては、白血球がビオチン化抗マウスCD163(ビオバイト(Biorbyt))で染色され、洗浄され、二次ストレプトアビジン-APCが添加された。2回の洗浄および固定の後、細胞は、透過処理され、抗マウスCD68-PEで細胞内染色され、続いて、膜を閉じるため、パームバッファ(perm-buffer)で2回洗浄され、最終PBS洗浄が行われた。試料は、ミリポアグアバ(Millipore Guava)フローサイトメータ上を流れ、フロウジョ(FlowJo)を用いて分析された。屠殺時に採取された試料は、ノーベル(NOBEL)の腹腔内投与後のWBC集団における相当な変化を示す。a.PBS腹腔内注射対照;b.ノーベル(NOBEL)腹腔内注射。
【
図8】腫瘍産生前でのノーベル(NOBEL)(配列番号1)単独の投与がGL261細胞成長の開始を遅延させる上で有効であることを示す図。溶媒の腹腔内投与(PBS)を受けたC57およびTbetノックアウト動物のそれぞれ60%および100%が腫瘍を発生させるのに対し、ノーベル(NOBEL)の腹腔内投与後ではC57およびTbetノックアウトマウスのそれぞれ20%および50%が腫瘍を発生させる。有意性はログランク検定を用いて評価された(
*=p<0.05)。
【
図9】シトシン-ホスホロチオエート-グアノシン-DNAがB細胞および形質細胞様樹状細胞(DC)上に発現されるTLR9を活性化することを示す図。
【
図10】抗原提示細胞がAS ODNを取り込み、増加した同時刺激分子を発現し、AS ODN治療の前および後にPBMCにおいて諸レベルのCD80/83/86を発現することを示す図(mDC、骨髄樹状細胞;pDC、形質細胞様樹状細胞)。
【
図11】ノーベル(NOBEL)(配列番号1)が、中央値蛍光強度の低下によって判定される通り、単球由来樹状細胞(DC)を活性化することを示す図。未熟DCは大量の蛍光タンパク質を貪食し、(より大きいバーによって示される)より高い蛍光強度をもたらす。(活性化された)成熟DCは、エンドサイトーシスを下方制御し、結果として、取り込む蛍光タンパク質が減少し、(より小さいバーによって示される)低い蛍光強度を有する。単球由来樹状細胞のIGF-1R AS ODNによる治療は、著しい用量依存性の成熟応答を示す。
【
図12】CpGモチーフ、5’G*Gモチーフ、およびホスホロチオエート結合のすべてが樹状細胞にさらなる成熟刺激をもたらすことを示す図。a:未熟DCは高度にエンドサイトーシスが亢進し、大量の蛍光タンパク質を貪食し(上パネル)、より高い蛍光強度をもたらす。b:単球由来DCが様々なIGF-1R/AS ODN(1μg/ml)の存在下で24時間インキュベートされた。LPSで治療されたDC(1μg/ml)は、成熟における正の対照として機能した。未熟DCは、大量の蛍光タンパク質を貪食し、(より大きいバーによって示される)より高い蛍光強度をもたらした。(活性化された)成熟DCは、エンドサイトーシスを下方制御し、結果として、取り込む蛍光タンパク質が減少し、(より小さいバーによって示される)低い蛍光強度を有する。IGF-1R/AS ODN中に含まれるCpGモチーフもまた、DCに成熟刺激をもたらす(対照およびLNA DCを参照)。ホスホロチオエート結合は、DCにさらなる成熟刺激をもたらす(ノーベル(NOBEL)DC)。5’G*Gモチーフは、DCに第3の成熟刺激をもたらす(DWA PT DCを参照)。試験されたオリゴマーは、配列番号1(ノーベル(NOBEL))、配列番号11(IDT1220ホスホロチオエートAS ODN(IDT1220))、配列番号15(DWAホスホロチオエートAS ODN(DWA PT))、配列番号16(DWA固定化核酸AS ODN(LNA))、および配列番号17(DWAホスホジエステルAS ODN(DWA対照))を含んだ。
【
図13】a.DWA配列が、5’側のヘアピンループ二次構造(影付きの挿入図)を37℃で維持し、おそらくは標的化されたmRNA配列との塩基対合に影響すること、b.ノーベル(NOBEL)(配列番号1)配列が、18℃でMPを有する2つの交互の二次構造に対するCpGモチーフの5’側のヘアピンループ(影付きの挿入図)を37℃で有さず、標的化された塩基対合、ひいてはCpGの可能性の増加を許容することを示す図。
【
図14】GL261におけるノーベル(NOBEL)(配列番号1)適定を示す図。細胞は増殖培地を有する96ウェルプレート内に20k/ウェルで蒔かれ、4時間インキュベートされ(37℃、5%CO
2加湿);増殖培地は除去され、所望されるAS ODN濃度を有する無血清オプティ-メム(Opti-MEM)(100μL)が各ウェルに添加された。細胞はさらに24時間培養液に戻された。a.GL261細胞内でのIGF-1Rの発現に対するノーベル(NOBEL)適定の効果。IGF-1Rコピー数に対するマイクロタイタープレート内の最終mg/ウェル(またはmg/20k細胞)。細胞が蒔かれた。分散分析を用いて有意性が判定された(
*=P<0.05;
**=P<0.001)。b.細胞が収集され、マウスIGF-1Rに特異的な抗体で染色され、フローサイトメータで分析された。中央値蛍光強度が最終AS ODN濃度(mg/20k細胞)に対してプロットされる。IGF-1Rの発現は、1mgのノーベル(NOBEL) AS ODN/ウェルで治療されたGL261細胞内(P<0.001)、および0.1mgのノーベル(NOBEL) AS ODN/ウェルで治療された細胞内(P<0.05)で有意に低下した。
【
図15】ヘキソキナーゼアイソタイプ2 mRNAの下流での下方制御を評価するための定量RT-PCRの結果を示す図。ヒト神経膠腫株U118のノーベル(NOBEL)(配列番号1)で治療された細胞内でのL13、IGF-1RおよびHexII遺伝子の発現が線形に相関する。異なる濃度でのノーベル(NOBEL)で治療された、個別の培養下で検出されたIGF-1Rコピー数に対してプロットされるハウスキーピング遺伝子L13(▼)およびヘキソキナーゼ2[HEX](■)に特異的なmRNAコピー数が示される。実線はL13とIGF-1Rとの間の最良適合直線回帰線を表し、点線はHex-IIとIGF-1Rとの間の最良適合直線回帰線を表し、ここでr
2は(1.0からの)直線性の度合い、Pは勾配の有意性を表す。
【
図16】AS ODN治療から2週間後、10
6個のGL261細胞が注射されたC57/B6マウスにおける累積的な腫瘍成長を示す図。AS ODN群におけるすべてのマウスに、10
6個のノーベル(NOBEL)(配列番号1)で治療されたGL261(一晩のAS ODN治療、20mg/5×10
6個のGL261)が側腹に1回注射され、治療から2週間後、WT GL261が反対側の側腹に負荷された;AS ODN/GL261混合群におけるマウスに、注射直前に非治療GL261細胞と混合されたノーベル(NOBEL)(20mg/5×10
6個のGL261)が側腹に1回注射され、治療から2週間後、WT GL261が反対側の側腹に負荷された。腫瘍が治療後負荷(WT GL261)から発生した。
【
図17】投与部位でのGL261細胞とノーベル(NOBEL)(配列番号1)との組み合わせが皮下モデルにおいて腫瘍形成を阻害することを示す図。
【
図18】ノーベル(NOBEL)(配列番号1)が放射線増感を誘導することを示す図。
【
図19】安全性評価試験を示す図。a.試験における患者の全生存;b.手術間の間隔に対する全生存;c.2つの生存コホートでの生存プロトコル。患者9名が疾患進行で死亡した一方、1名が脳内出血、2名が敗血症で死亡した。全生存プロトコルは、より長期(N=4)および短期(N=8)の生存コホートに対して各々、48.2週および9.2週であった(ログランク=0.0025)。c.原因が疾患進行でない死亡を除外し、中央値生存は、より長期のコホート(N=4)および短期コホート(N=5)に対して各々、48.2週および10週であった(ログランク=0.0049);d.1つの異常値(長期コホート)を除外し、直線回帰は、生存プロトコルと登録時のリンパ球数との間で高い相関を示した(R2=0.8,p=0.0028)。
【
図20a】解剖学的腫瘍のX線応答を示す図であり、短期生存コホートの例。T12:A-D;TJ10:E-H;A,E:手術前のT1ガドリニウム増強された軸方向画像;G:T1-ガドリニウム増強された冠状画像;C:手術前の軸方向FLAIR画像;B,D,F,H:各々の手術後3か月目の画像。
【
図20b】解剖学的腫瘍のX線応答を示す図であり、より長期の生存コホートの例。TJ06:A-D;TJ09:E-H。A,E:手術前のT1ガドリニウム増強された軸方向画像;C,F:手術前の軸方向FLAIR画像;B,D,F,H:各々の手術後3か月目の画像。
【
図20c】解剖学的腫瘍のX線応答を示す図であり、短期生存コホートにおける腫瘍内の相対的脳血液量に対する見かけの拡散係数の関係。
【
図20d】解剖学的腫瘍のX線応答を示す図であり、より長期の生存コホート。見かけの拡散係数(ADC)と相対的脳血液量(rCBV)との間に高い相関がある(R2=0.96,p=0.0005)。
【
図20e】解剖学的腫瘍のX線応答を示す図であり、より長期の生存コホートにおけるサイトカイン応答の概要(N=3)。
【
図20f】患者TJ06において経時的にrCBVおよびADCに関連するときのCD163+細胞の減少の例を示す図。さらにrCBVに関連するときの、血清硝酸塩レベルとして反映される充血の薬剤である活性化一酸化窒素シンテターゼのアッセイ(Greissアッセイ)。
【
図21a】外植されたチャンバおよび病理学的標本の検査を示す図であり、TJ09からチャンバ外植されたチャンバの光学顕微鏡合成写真。左カラム:PBSチャンバ;右カラム:ワクチンチャンバ;上の行:膜外表面のH&E染色;下の行:膜外表面のCD163+免疫染色。
【
図21b】外植されたチャンバおよび病理学的標本の検査を示す図であり、CD163における免疫蛍光染色(赤)。a.初期切除時の患者TJ14の腫瘍内のCD163+TAM;b.ワクチン接種前の再発時の患者TJ14の腫瘍内のCD163+TAM;CD163+TAMは増加した;c.2回目再発時の患者TJ14の腫瘍内のCD163+TAM;腫瘍微小環境下でのTAMの減少が認められ、CD163 TAMは血管のみと関連することが見出された;d,e,f.各々、倍率を上げたもの。
【
図21c】外植されたチャンバおよび病理学的標本の検査を示す図。治療ステージに応じたCD163+TAMのアペリオ(Aperio)免疫染色定量化(左2つのパネル);両方の第I相試験では類似レベルであるが、剖検を受けた非診断・非処理患者では有意により低いレベルがさらに認められた(右パネル)。
【
図22】治療後期間におけるワクチン接種誘発後の免疫エフェクター細胞変化およびサイトカイン/ケモカイン変化の連続的な測定を示す図;より長期の生存コホート(患者TJ03、TJ14、TJ06、TJ09);短期生存コホートの例(他のすべての短期生存コホートについては患者TJ13、
図25を参照)。行:a.PBMC中のWBCの相対量と比べてのCD4およびCD8の絶対数;b.CCL21およびCXCL12のレベル;c.相対T細胞数およびマクロファージ数の関係;d.CD14+CD16-マクロファージのCCR2およびMCP-1(CCL2)との相対的割合の関係;e.ワクチン接種後の推定上のTh-1サイトカイン応答。
【
図23】生存コホートによるPMA/イオノマイシン刺激後のa.推定上のTh-1サイトカイン;b.Th-2に関連したサイトカインにおける14日目のサイトカインレベル(pg/ml)の概要を示す図。平均(チューキ)と独立t検定の比較。p<.05での有意性。TJ03は一貫して95%CIの外側の値を有する異常値として除外された。
【
図24】解剖学的腫瘍のX線応答を示す図。aおよびc:軸方向ガドリニウム増強T-1W画像;パネルaおよびb:患者TJ06、パネル4cおよびd、患者TJ07;bおよびd:同じ軸方向のレジストレーションでの遅延PET/CT画像。パネルbでは、左側頭葉の大脳皮質リボンの右側頭葉と比べての正常な代謝亢進の欠如;前外側側頭葉における代謝亢進の小部分を含むフォトペニア(photopenia)に注目のこと。(パネルa)における増強の大部分は炎症として解釈される。dでは、代謝亢進と疾患進行として解釈されるパネルcにおける増強の対応する容積の明確な相関に注目のこと。
【
図25】供給源による平均サイトカインレベル(pg/ml)の比較を示す図(C-p、PBSチャンバ;C-v、ワクチンチャンバ;血清;SN、自家腫瘍細胞上清)。CCL21はワクチンチャンバにおいてC-pと血清の双方と比べて有意に上昇する。CCL20はC-vおよびC-pにおいて血清に対して有意に上昇し、CCL19はC-vにおいてC-pまたは血清に対して有意に上昇した。HSP-70は血清と比べて有意に上昇し、CCL2は血清と比べて有意に上昇し、CXCL12は血清においてC-pに対して有意に上昇した唯一のサイトカインである(
*p<0.035,
**p<0.025,
***p<0.015,†p<0.004,††p<0.0002,†††p<0.0001)。
【
図26a】外植されたチャンバおよび病理学的標本の検査を示す図であり、左パネル:初期診断時とワクチン接種前の再発時とにおける免疫陽性細胞/400倍視野、CD163 TAMの数の平均の比較;右パネル:マッチドペア比較の平均差-19.2%の増加、p<0.0001。
【
図26b】外植されたチャンバおよび病理学的標本の検査を示す図であり、左パネル:ワクチン接種前の再発時と剖検時とにおけるCD163 TAMの数の平均の比較;右パネル:マッチドペア比較の平均差-26.35%の低下、p<0.0001。
【
図26c】外植されたチャンバおよび病理学的標本の検査を示す図であり、初期試験および現行試験からのパラフィン試料中と、非診断且つ非治療の神経膠芽腫から得られた6つの剖検標本中とにおけるCD163 TAMの遡及的比較。
【
図26d】外植されたチャンバおよび病理学的標本の検査を示す図であり、初期診断時、ワクチン接種前の再発時、および剖検時に得られたパラフィン切片中のIGF-1R+細胞の評価。
【
図27a】生存コホートによる免疫陽性細胞/400倍視野検出CD163細胞の数の平均の比較;左パネル:診断時、長期対短期、p<0.0002;右パネル:ワクチン接種誘発前の腫瘍切除時、長期対短期、p<0.0127。
【
図27b】末梢と腫瘍関連マクロファージとの間の関係の直線回帰(R
2=0.96,p=0.004)。
【
図28-1】短期生存コホート(各々、患者TJ01、TJ02、TJ07、TJ08、TJ10、TJ11、およびTJ12)に対する治療後期間におけるワクチン接種誘発後の免疫エフェクター細胞変化およびサイトカイン/ケモカイン変化の連続的な測定を示す図。行:a.PBMC中のWBCの相対量と比べてのCD4およびCD8の絶対数;b.CCL21およびCXCL12のレベル;c.相対T細胞数およびマクロファージ数の関係。
【
図28-2】短期生存コホート(各々、患者TJ01、TJ02、TJ07、TJ08、TJ10、TJ11、およびTJ12)に対する治療後期間におけるワクチン接種誘発後の免疫エフェクター細胞変化およびサイトカイン/ケモカイン変化の連続的な測定を示す図。行:d.CD14+CD16-マクロファージのCCR2およびMCP-1(CCL2)との相対的割合の関係;e.ワクチン接種後の推定上のTh-1サイトカイン応答。
【
図29A】大多数のIGF-1R AS ODNの取り込みが単球および好中球で生じることを示す図。
【
図29B】IGF-1R AS ODNの取り込みはM1およびM2細胞において同様であるにもかかわらず、IGF-1R AS ODNの濃度を増加させると、IGF-1Rの上方制御を伴うM2 CD163+細胞のみの選択的除去を標的化することを示す図。
【
図29C】CD163+細胞のアポトーシス細胞死の速度がIGF-1R AS ODNの濃度と直接的に関係することを示す図。
【
図30】がん患者血清中の正常な単球のインキュベーションによる単球のM2細胞への極性化を示す図。a.CD163+マクロファージのIGF-1R AS ODN(ノーベル(NOBEL)、250μg)治療に対するPBS対照における平均の比較;b.マッチドペア分析はM2細胞集団における高度に有意な減少を示す。
【
図31】異なるがんを有する患者からの血清を用いる治療によりM2 CD163+表現型へ極性化される単球がCD163とPDL-1の双方の上方制御を示し、双方の症例にてAS ODNによる治療がCD163とPDL-1の双方をこの細胞集団を選択的に標的化することによってノックダウンすることを示す図。a.PDL-1を発現するCD163+マクロファージのIGF-1R AS ODN(ノーベル(NOBEL)、250μg)治療に対するPBS対照における平均の比較;b.マッチドペア分析は、PDL-1の有意な減少として反映されるこの細胞集団における高度に有意な減少を示す。
【
図32】IL-10を用いる治療によりM2へ極性化される単球が、LPS/IFNγを用いる治療によりM1へ極性化される単球よりも大幅に多くのグルタミン(gln)を産生し、それ故、腫瘍細胞の成長を促進する可能性がより高いことを示す図。正常なヒト単球は、LPS/IFNγによる治療によりインビトロでM1に極性化され、MCSFまたはIL10を用いる治療によりインビトロでM2に極性化された。a.は様々な時点で培地中に蓄積するグルタミンのレベル;b.は24時間の培養後に評価された細胞内グルタミンレベルを示す。
【
図33】正常な個体と星状細胞腫患者との間での循環CD163+単球における差異を示す図。パネルA:循環中に約6%のCD14+単球とともに中間レベルのCD163を有する正常な個体。がん患者において、単球の数が増加しかつ単球はより高レベルのCD163を有するという2つの変化が認められる。他の細胞(赤ボックス)はCD163を全く有しない。パネルB:正常な個体は感染などに起因して広範囲の単球を有し得る(パネルB、CD11b+CD14が陽性の細胞)が、これらは悪性星状細胞腫を有する患者において上昇する。パネルCにおけるヒストグラムは、がん患者由来の単球がそのCD14単球上に対照細胞(赤色ヒストグラム)よりも高レベルのCD163を有することを示す。
【
図34-1】腫瘍浸潤性M2単球、野生型IDH1状態、および未分化星状細胞腫患者におけるMRIによるガドリニウム増強が、予後不良に関連したより侵襲性の腫瘍を明確にすることを示す図。IDHR1の突然変異R132H(A)およびCD163(B)について、ホルマリン固定されたパラフィン包埋組織が染色された。
【
図34-2】FLAIR(CおよびD、左パネル)およびガドリニウム増強されたT1荷重軸方向MRI(CおよびD、右パネル)における代表的画像が、非増強でのAIII(IDH1 R132H突然変異体グレードIII)腫瘍(C)、および増強でのAIII-G(多形神経膠芽腫の特徴を有するIDH1野生型グレードIII)腫瘍(D)について示される。
【
図34-3】腫瘍浸潤性M2単球、野生型IDH1状態、および未分化星状細胞患者におけるMRIによるガドリニウム増強が、予後不良に関連したより侵襲性の腫瘍を明確にすることを示す図。患者は、こうした3つの上記パラメータ(A-D)、特に、より侵襲性のGBMに類似するAIIIおよびAIII-Gに基づいて、複数群に分割された(E、F、およびG)。パネルEには、無作為に選択された増強MRIおよび非増強MRIでのAA患者38名におけるIDH1突然変異の存在(R132H+)または不在(R132H-)についての結果が示される(ここでn.d.は何も検出されないことを表す)。パネルFには、切除された腫瘍標本におけるCD163+細胞含有物が、自動化細胞数計測システムを用いて数え上げられた上で、増強によって分別されたAA標本について提示される。箱髭図が75、50、および25パーセンタイルを示す一方、最大および最小データ値は上髭および下髭によって表される。群間の差の統計学的有意性は、マン・ホイットニー検定(
***,p<0.001)によって評価された。
【
図34-4】腫瘍浸潤性M2単球、野生型IDH1状態、および未分化星状細胞腫患者におけるMRIによるガドリニウム増強が、予後不良に関連したより侵襲性の腫瘍を明確にすることを示す図。パネルGには、患者のカプラン・マイヤー生存曲線が、それらの腫瘍の侵襲性に基づいて分別されて提示される。群間の統計学的に有意な生存差(
**)は、ログランク(p=0.0019)およびウィルコクソン検定(p=0.0088)によって判定された。結果によると、IDH R132H突然変異体グレードIII星状細胞腫がガドリニウムで増強されることはまれであり、腫瘍組織内でのCD163+M2細胞の蓄積が血管完全性の損失に関連することが示される。
【
図35】循環単球の数がAIIIおよびAIII-G患者において上昇し、M2マーカCD163を上昇レベルで発現することを示す図。無作為に選択された未分化星状細胞腫(AA)患者(すなわち、WHO組織学的判定基準により形態学的にグレードIIIであると特徴づけられた星状細胞腫を有する患者)18名および正常ドナー24名から得られたPBMCがCD11b、CD14、およびCD163に特異的な抗体で染色され、フローサイトメトリーによって評価された。フォワードスキャッター(FSC)およびサイドスキャッター(SSC)の特性がライブゲートを確立するために用いられ、単球がCD11bおよびCD14を発現する生細胞として規定された(パネルA)。ライブゲートにおける代表的な等高線図ならびに正常およびAAドナーから得られたPBMCにおけるCD11bおよびCD14陽性の分析がパネルAに示され、ここで軸はログスケールで示され、数はゲートされた細胞の頻度を示す。パネルBは、フローサイトメトリーによって測定された、AIIIを有する患者12名、AIII-Gを有する患者6名、および正常な個体24名から得られたPBMCにおけるCD11b+CD14+単球の頻度を示す概要チャートである。正常な個体とAA患者サブセットとの間の細胞百分率における差の統計学的有意性がスチューデントt検定によって評価された(
**,p<0.01)。CD11b+CD14+のゲートされた単球のCD163染色における中央値蛍光強度(MFI)が、パネルCにおいてAIII、AIII-G、および正常血液標本の代表的なヒストグラムプロットから重ねてある。軸はログスケールとして示される。異なるドナー群から得られたPBMC試料中のゲートされた単球サブセットのCD163染色におけるMFIがパネルDに示される。
【
図36】星状細胞腫エキソソーム上の共通抗原に結合する、AIIIおよびAIII-G患者血清中に存在する抗体が、アイソタイプ特性が異なることを示す図。3つの星状細胞腫患者の原発性腫瘍細胞株から単離されたエキソソームが96ウェルプレート上にコーティングされ、初期手術前に収集された患者血清(13AIII、8AIII-G)および正常対照血清(4)とともにインキュベートされた。結合抗体が蛍光結合全IgG(パネルA)またはIgGアイソタイプに特異的な二次抗体(パネルB)で検出され、抗体結合の程度がMFIとして測定された。
【
図37】Th1およびTh2免疫に一般に関連する可溶性因子がAIIIおよびAIII-G患者の血清中で各々上昇することを示す図。
【
図38】白血球表現型マーカ、サイトカインおよびケモカイン受容体ならびにそれらのリガンドをコードする遺伝子のPBMCにおける発現のレベルがAIII患者とAIII-G患者との間で異なることを示す図。任意抽出されたAA患者17名から得られたPBMCにおける単球表現型マーカ(A)、インターロイキン(B)、インターロイキン受容体(C)、CCケモカイン(D)および受容体(E)、ならびにCXCケモカイン(F)および受容体(G)における遺伝子のコピー数は、高スループット定量RT-PCRによって評価され、各試料中に存在するハウスキーピング遺伝子L13aのコピー数に正規化された。
【
図39】AIIIおよびAIII-G患者サブセットが、PBMCにおける選択された免疫学的関連遺伝子の発現によって正確に区別され得ることを示す図。最初に、AIIIおよびAIII-G患者のPBMCを最良に分別する遺伝子発現データを同定するため、判別分析が用いられた(パネルA)。次に、これらの遺伝子CCL3、CCR4、CCR5、CCR7、CXCL7、IL-15、IL-32、IL-15R、IL-21R、IL-23R、IL-31RA、およびCD163のいずれが2つの患者コホートを区別するのに最も有効であるかを判定するため、主成分分析が用いられた(パネルB)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示は、M1細胞とM2細胞との間の決定的差異が、M2亜集団がM1亜集団よりも高レベルのインスリン様成長因子1型受容体(IGF-1R)を産生する点であることを初めて示す。これはIGF-1RがM2細胞の極性化および生存において重要な役割を果たすことを示す。当然のことながら、本開示は、M1細胞とM2細胞の双方がIGF-1Rに特異的なアンチセンス核酸(IGF-1R AS ODN)を貪欲に取り込むが、IGF-1R AS ODNが用量依存的にがん患者由来のM2細胞におけるM1細胞を上回る選択的低減を誘導することを示す。より重要なことには、本開示は、M2細胞の選択的低減がこれらの患者におけるがんの退縮をもたらすことを示す。したがって、本明細書は、IGF-1R AS ODNを全身投与することによって、患者におけるM2細胞の数を選択的に低減することにより、実行可能で効率的な特定のがんを治療する機構を初めて提供する。
【0009】
加えて、限定はされないが、神経膠腫、星状細胞腫、乳がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、乳頭状腎細胞がんタイプII、肺がん、膵がん、胆嚢がん、直腸がん、古典的ホジキンリンパ腫、卵巣がん、および結腸直腸がんを含む特定タイプのがんを患う患者では、M2細胞は、腫瘍環境を2型免疫に対して免疫調節性にする。これは、1型免疫を抑制し、免疫療法的方策を退ける。それにより、M2細胞は治療的な抗腫瘍免疫の誘導を減弱させる。その結果、Th1免疫を改善するように努める治療は、これらの患者の中に存在するM2細胞の観点で奏効しないかまたは有効性を低下させている。本開示は、M2亜集団を低減することがまた、がん患者における1型免疫を促進することを初めて示す。本開示は、M2細胞集団を標的化し、中和することにより、がん患者における1型の保護的な抗腫瘍免疫を生成する能力が回復され、それにより免疫療法的方策を用いる治療が促進されることを示す。
【0010】
さらにより重要なことには、本開示は、IGF-1R AS ODNの投与によるM2細胞の選択的低減が、がんの発症を遅延させるかまたはさらに対象におけるがんを予防するための機構をもたらすことを示す。したがって、M2細胞を選択的にノックダウンするためにIGF-1R AS ODNを用いることは、がん患者におけるがんの治療および予防のため、ならびに治療的免疫を増強するための新たな重要な免疫療法的手法を提供する。したがって、本開示は、免疫系についての新たな情報を提供し、種々のがんを有する患者における予後不良に関連する標的化されたM2細胞の除去を含む治療的介入を支持する。
【0011】
したがって、本開示は、M2細胞内でのIGF-1Rの発現を標的化する能力がある核酸を含む医薬組成物を提供する。本開示はまた、これらの細胞内でのIGF-1Rの発現を標的化することによるM2細胞の選択的低減のための方法を提供する。本開示は、患者におけるM2細胞内でのIGF-1Rの発現を標的化することによるがんを治療するための方法をさらに提供する。重要なことには、本発明の医薬組成物は、それを必要とする対象に全身投与されるときに有効である。医薬組成物の投与の容易性は、治療を促進し、患者コンプライアンスを高める。
【0012】
用語「選択的は、本明細書で用いられるとき、M2細胞に影響するがM1細胞に影響しない効果を指す。あるいは、それはM1細胞と比べてより広範囲までM2細胞に影響する効果を指してもよい。例えば、M2細胞の数における選択的低減は、M1細胞の数に影響しないか、またはM1細胞の数における低減と比べてより大きなM2細胞の数における低減を引き起こす。
【0013】
用語「IGF-1Rの発現を標的化すること」または「IGF-1Rの発現を標的化する」は、本明細書で用いられるとき、IGF-1Rに結合するように設計された配列を有する核酸を投与することを指す。
【0014】
用語「M2細胞」は、本明細書で用いられるとき、対象の腫瘍内部に存在するM2マクロファージおよび/または対象の末梢において循環するM2単球を包含する。
用語「M1細胞」は、本明細書で用いられるとき、対象の組織内部に存在するM1マクロファージおよび/または対象の末梢において循環するM1単球を包含する。
【0015】
本明細書で用いられるとき、「a」、「an」および「the」などの用語は、文脈上特に明示されない限り、単数および複数の参照対象を含む。
本明細書で用いられるとき、用語「約」は、数値に先行するとき、10%の範囲を足した値または引いた値を示す。例えば、「約100」は90および110を包含する。
【0016】
一部の実施形態では、本開示は、M2細胞内でのIGF-1Rの発現を標的化する核酸を有効量で含む医薬組成物を提供し、ここでがんを患う患者に医薬組成物を投与することにより、M2細胞の低減が引き起こされる。
【0017】
特定の実施形態では、本開示は、M2細胞内でのIGF-1Rの発現を標的化する能力がある核酸を有効量で含む医薬組成物を提供し、ここでがんを患う患者に医薬組成物を投与することにより、M2細胞内でのIGF-1Rの発現の下方制御が引き起こされる。他の実施形態では、本開示は、M2細胞内でのIGF-1Rの発現を標的化する能力がある核酸を有効量で含む医薬組成物を提供し、ここでがんを患う患者に医薬組成物を投与することにより、M2細胞内でのIGF-1R以外の遺伝子の発現の下方制御が引き起こされる。
【0018】
一部の実施形態では、核酸は細胞内でのIGF-1R経路下流の遺伝子の発現を下方制御する。特定の態様では、下流遺伝子はヘキソキナーゼ(HexII)である。一部の実施形態では、核酸は細胞内でのハウスキーピング遺伝子の発現を下方制御する。一部の態様では、ハウスキーピング遺伝子はL13である。
【0019】
一部の実施形態では、核酸は天然に存在する核酸である。他の実施形態では、核酸は天然に存在しない核酸である。特定の態様では、核酸は組換え的に作製される。一部の実施形態では、核酸は微生物内で組換え的に作製される。一部の態様では、核酸は細菌内で組換え的に作製される。他の実施形態では、核酸は哺乳類細胞株中で組換え的に作製される。さらに他の実施形態では、核酸は昆虫細胞株中で組換え的に作製される。
【0020】
特定の態様では、核酸は化学的に合成される。特定の実施形態では、核酸は固相有機合成により作製される。一部の態様では、核酸の合成は、フロースルー技術を用いて閉じた化学的カラムリアクターを備えたシンセサイザー内で行われる。一部の実施形態では、固体支持体上での各合成サイクルシーケンスは複数のステップからなり、それらは完全長核酸が得られるまで順次実施される。特定の実施形態では、核酸は液体形態で貯蔵される。他の実施形態では、核酸は貯蔵に先立ち凍結乾燥される。一部の態様では、凍結乾燥核酸は使用前に水に溶解される。他の実施形態では、凍結乾燥核酸は使用前に有機溶媒に溶解される。さらに他の実施形態では、凍結乾燥核酸は医薬組成物に製剤化される。一部の態様では、医薬組成物は液体医薬組成物である。他の態様では、医薬組成物は固体医薬組成物である。
【0021】
一部の実施形態では、核酸はRNAである。他の実施形態では、核酸はDNAである。さらに他の実施形態では、核酸はRNAi分子である。さらなる実施形態では、核酸はオリゴヌクレオチドである。
【0022】
特定の実施形態では、核酸はアンチセンスオリゴマーである。一部の態様では、核酸はアンチセンスオリゴデオキシヌクレオチド(AS ODN)である。アンチセンスオリゴマーは、ワトソン・クリック塩基対律により標的化されたmRNAの相補配列に結合することによって、分子レベルで機能する。標的mRNAの翻訳は、相補的らせんの間にハイブリダイゼーションが生じるとき、能動的機構および/または受動的機構により阻害される。受動的機構では、mRNAと外因性ヌクレオチド配列との間のハイブリダイゼーションは、リボソーム複合体がメッセージを読み取ることを阻止する二本鎖形成をもたらす。能動的機構では、ハイブリダイゼーションがリボヌクレアーゼHの結合を促進し、RNAを破壊するが、別の相補的mRNA標的とハイブリダイズするようにAS ODNを無傷のままにする。一方もしくは双方の機構は、悪性表現型に寄与するかまたはそれを持続させるタンパク質の翻訳を阻害する。治療薬として、それらははるかにより選択的であり、結果として従来薬よりも有効かつ低毒性である。1つ以上のホスホロチオエート修飾の存在は、ヌクレアーゼ耐性を与えることによりオリゴマーを安定化させ、それによりその半減期を延長する。
【0023】
一部の実施形態では、核酸は修飾されたリン酸骨格を含む。特定の態様では、リン酸骨格修飾は、核酸をヌクレアーゼ分解に対してより耐性にする。特定の実施形態では、修飾は固定化核酸修飾である。他の実施形態では、修飾はホスホロチオエート結合である。特定の態様では、核酸は1つ以上のホスホロチオエート結合を含む。特定の実施形態では、ホスホロチオエート結合は、核酸をヌクレアーゼ切断に対してより耐性にする。一部の実施形態では、核酸は部分的にホスホロチオエート結合されてもよい。例えば、核酸の最大約1%、最大約3%、最大約5%、最大約10%、最大約20%、最大約30%、最大約40%、最大約50%、最大約60%、最大約70%、最大約80%、最大約90%、最大約95%、または最大約99%がホスホロチオエート結合されてもよい。一部の実施形態では、核酸は完全にホスホロチオエート結合される。他の実施形態では、ホスホロチオエート結合はホスホジエステル結合と交替してもよい。特定の実施形態では、核酸は少なくとも1つの末端ホスホロチオエート一リン酸を有する。
【0024】
一部の実施形態では、核酸は1つ以上のCpGモチーフを含む。他の実施形態では、核酸はCpGモチーフを含まない。特定の態様では、1つ以上のCpGモチーフがメチル化される。他の態様では、1つ以上のCpGモチーフがメチル化されない。特定の実施形態では、核酸が対象に投与されるとき、1つ以上の非メチル化CpGモチーフが自然免疫応答を誘導する。一部の態様では、自然免疫応答は、非メチル化CpG含有核酸のToll様受容体(TLR)への結合によって媒介される。一部の態様では、TLRはTLR9である。他の態様では、TLRの非メチル化CpG含有核酸への結合がTLR9の活性化を引き起こす。特定の態様では、活性化されたTLR9がB細胞上で発現される。他の態様では、活性化されたTLRが形質細胞様樹状細胞上で発現される。特定の態様では、TLR9の活性化は、B細胞によるサイトカインの分泌により測定されてもよい。一態様では、サイトカインはIL-6である。別の態様では、サイトカインはIL-10である。他の態様では、TLR9の活性化は、形質細胞様樹状細胞によるサイトカインの分泌により測定されてもよい。一態様では、サイトカインはIFNαである。別の態様では、サイトカインはIFNβである。さらに別の態様では、サイトカインはTNFαである。
【0025】
特定の実施形態では、核酸は少なくとも1つの末端修飾すなわち「キャップ」を含む。キャップは、5’および/または3’キャップ構造であってもよい。用語「キャップ」または「エンドキャップ」は、(末端リボヌクレオチドに対する)オリゴヌクレオチドのいずれかの末端に化学修飾を含み、かつ5’末端上の最後の2つのヌクレオチドと3’末端上の最後の2つのヌクレオチドとの間の結合における修飾を含む。キャップ構造は、標的配列または細胞機構との分子相互作用を損なうことなく、核酸のエキソヌクレアーゼに対する耐性を高めることがある。かかる修飾は、インビトロまたはインビボでのその増強される効力に基づいて選択されてもよい。キャップは、5’末端(5’キャップ)または3’末端(3’キャップ)に存在し得るかまたは両末端に存在し得る。特定の実施形態では、5’キャップおよび/または3’キャップは、ホスホロチオエート一リン酸、脱塩基残基(部分)、ホスホロチオエート結合、4’-チオヌクレオチド、炭素環式ヌクレオチド、ホスホロジチオエート結合、反転ヌクレオチドもしくは反転脱塩基部分(2’-3’もしくは3’-3’)、ホスホロジチオエート一リン酸、およびメチルホスホン酸部分から独立的に選択される。ホスホロチオエートまたはホスホロジチオエート結合(複数可)は、キャップ構造の一部である場合、一般に5’末端上の2つの末端ヌクレオチドと3’末端上の2つの末端ヌクレオチドとの間に位置づけられる。
【0026】
特定の実施形態では、核酸は細胞内での特異的遺伝子の発現を標的にする。一部の実施形態では、核酸は細胞内での1つ以上の成長因子の発現を標的にする。一部の実施形態では、成長因子はインスリン様成長因子1受容体(IGF-1R)である。IGF-1Rは、インスリン受容体と70%の相同性を共有するチロシンキナーゼ細胞表面受容体である。IGF-1Rは、そのリガンド(IGF-I、IGF-IIおよびインスリン)によって活性化されるとき、増殖、形質転換および細胞生存を含む広範な細胞機能を制御する。IGF-1Rは、正常な増殖にとっての絶対条件ではないが、悪性組織内で生じることがある足場非依存性条件下での増殖にとって必須である。腫瘍におけるIGF-IRの役割についてのレビューが、バセルガ(Baserga)ら著、「ビタミンおよびホルモン(Vitamins and Hormones)」、1997年、53、p.65-98(その全体が参照により本明細書中に援用される)に提供されている。
【0027】
特定の実施形態では、核酸は、成長因子または成長因子受容体、例えばIGF-IRなどのDNAまたはRNAに特異的なオリゴヌクレオチドである。
特定の実施形態では、細胞は哺乳類細胞である。他の実施形態では、細胞は、限定はされないが、単球、好中球、好酸球、好塩基球、白血球、ナチュラルキラー(NK)細胞、リンパ球、T細胞、B細胞、樹状細胞、肥満細胞、およびマクロファージを含む、免疫系の細胞である。
【0028】
特定の実施形態では、細胞はマクロファージである。特定の態様では、マクロファージはM2マクロファージである。特定の態様では、M2マクロファージは、限定はされないが、CD11b、CD14、CD15、CD23、CD64、CD68、CD163、CD204、CD206、および/または一般に当該技術分野で公知の他のM2マクロファージマーカを含む、1つ以上の細胞表面マーカを発現する。
【0029】
他の実施形態では、細胞は単球である。特定の態様では、単球はM2単球である。特定の態様では、M2単球は、限定はされないが、CD11b、CD14、CD15、CD23、CD64、CD68、CD163、CD204、CD206、および/または一般に当該技術分野で公知の他のM2単球マーカを含む、1つ以上の細胞表面マーカを発現する。
【0030】
特定の実施形態では、核酸は、任意の細胞内でのIGF-1Rの発現を下方制御する。他の実施形態では、核酸は、M2細胞内でのIGF-1Rの発現を下方制御する。特定の実施形態では、M2細胞内でのIGF-1Rの発現は、核酸で処理されていないM2細胞と比べて、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%下方制御される。M2細胞内でのIGF-1Rの発現は、定量RT-PCRにより測定されてもよい。
【0031】
特定の態様では、M2細胞内でのIGF-1Rの発現は、核酸の対象への投与後、約10分、約20分、約30分、約40分、約50分、約1時間、約2時間、約3時間、約6時間、約12時間、約24時間、約48時間、または約72時間以内に下方制御される。
【0032】
一部の実施形態では、M2細胞内でのIGF-1Rの発現は、対象において、1用量の核酸の投与を受けてから、少なくとも約1日間、少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、または少なくとも約6週間、下方制御が維持される。
【0033】
一部の態様では、M2細胞内でのIGF-1Rの発現の下方制御は、対象においてM1細胞と比べてのM2細胞の選択的低減を引き起こす。特定の態様では、M2細胞内でのIGF-1Rの発現を標的化することにより、対象においてM1細胞と比べてのM2細胞の選択的低減が引き起こされる。
【0034】
特定の実施形態では、対象におけるM2細胞は、M2細胞内でのIGF-1Rの発現を標的化する核酸での治療を必要とする対象、例えば治療前の対象と比べて、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%低減される。一部の実施形態では、対象におけるM2細胞は、少なくとも約40%低減される。他の態様では、M2細胞集団は除去される。例えば、本発明の医薬組成物の投与後、M2細胞集団は、医薬組成物の投与前の集団の約1%、約2%、約5%、または約10%であってもよい。対象におけるM2細胞は、FACSを用いて測定されてもよい。特定の態様では、治療後、M2細胞は除去される、すなわちFACSにより検出不能である。
【0035】
特定の態様では、M2細胞の低減は、核酸の患者への投与後、約10分以内、約20分以内、約30分以内、約40分以内、約50分以内、約1時間以内、約2時間以内、約3時間以内、約6時間以内、約12時間以内、約24時間以内、約48時間後、または約72時間後、認められる。
【0036】
一部の実施形態では、対象におけるM2細胞の低減は、1用量の核酸の投与を受けてから、少なくとも約1日間、少なくとも約2日間、少なくとも約3日間、少なくとも約4日間、少なくとも約5日間、少なくとも約6日間、少なくとも約7日間、少なくとも約8日間、少なくとも約9日間、少なくとも約10日間、少なくとも約11日間、少なくとも約12日間、少なくとも約13日間、少なくとも約14日間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、または少なくとも約6週間持続される。
【0037】
一部の実施形態では、IGF-1Rの発現を標的化することにより、未分化単球がM2細胞に極性化されることが阻止される。他の実施形態では、M2細胞内でのIGF-1Rの発現を標的化することは、M2細胞がそのM2表現型および機能特性を失うか、または細胞死を経る原因になる。特定の実施形態では、細胞死は壊死である。他の実施形態では、細胞死はアポトーシスである。アポトーシスは、本発明の目的において、プログラム細胞死と規定され、限定はされないが原発性腫瘍および転移性腫瘍の退縮を含む。アポトーシスは、無数の生理学的過程および病理学的過程において重要な役割を果たす広範な現象であるプログラム細胞死である。それに対して、壊死は、種々の有害な条件および有毒物質に対する細胞の応答である偶発的な細胞死である。さらに他の実施形態では、M2細胞内でのIGF-1Rの発現を標的化することは、M2細胞が細胞周期停止を経る原因になる。
【0038】
特定の実施形態では、本発明の核酸は、IGF-1Rに特異的なアンチセンスデオキシヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)である。IGF-1Rの完全長コード配列は配列番号19で示される。特定の態様では、核酸は、IGF-1R AS ODNに対して少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約98%、または100%の同一性を有してもよい。百分率同一性は、デフォルトパラメータを用いるwww.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalw2/で利用可能なアライメントプログラムClustalW2を用いて算出され得る。
【0039】
特定の実施形態では、核酸は、RNAまたはDNAのいずれかを含む、IGF-1Rシグナル配列に相補的なヌクレオチド配列を含む。IGF-1Rのシグナル配列は30アミノ酸配列である。他の実施形態では、核酸は、RNAまたはDNAのいずれかを含む、IGF-1Rシグナル配列の一部に相補的なヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、核酸は、RNAまたはDNAのいずれかを含む、IGF-1Rのコドン1~309に相補的なヌクレオチド配列を含む。他の実施形態では、核酸は、RNAまたはDNAのいずれかを含む、IGF-1Rのコドン1~309の一部に相補的なヌクレオチド配列を含む。
【0040】
特定の実施形態では、核酸は、少なくとも約5ヌクレオチド長、少なくとも約10ヌクレオチド長、少なくとも約15ヌクレオチド長、少なくとも約20ヌクレオチド長、少なくとも約25ヌクレオチド長、少なくとも約30ヌクレオチド長、少なくとも約35ヌクレオチド長、少なくとも約40ヌクレオチド長、少なくとも約45ヌクレオチド長、または少なくとも約50ヌクレオチド長である。一部の実施形態では、核酸は約15ヌクレオチド長~約22ヌクレオチド長である。特定の態様では、核酸は約18ヌクレオチド長である。
【0041】
特定の実施形態では、核酸は、18℃で二次構造を形成するが、約37℃で二次構造を形成しない。他の実施形態では、核酸は、約18℃または約37℃で二次構造を形成しない。さらに他の実施形態では、核酸は、任意の温度で二次構造を形成しない。他の実施形態では、核酸は、37℃で二次構造を形成しない。特定の実施形態では、二次構造はヘアピンループ構造である。
【0042】
一部の態様では、核酸は、配列番号1~14のいずれか、またはその断片を含む。特定の実施形態では、核酸は、配列番号1~14のいずれか、またはその断片に対して、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約98%、または100%の同一性を有してもよい。
【0043】
一部の態様では、核酸は、配列番号1~14のいずれかからなる。特定の態様では、核酸は配列番号1である。配列番号1はノーベル(NOBEL)と称される。ノーベル(NOBEL)は、ホスホロチオエート骨格を有する18-merオリゴデオキシヌクレオチドであり、IGF-1R遺伝子におけるコドン2~7に相補的な配列である。したがって、ノーベル(NOBEL)はIGF-1Rに特異的なアンチセンスオリゴヌクレオチド(IGF-1R AS ODN)である。5’末端でのIGF-1R遺伝子の相補配列として誘導されるノーベル(NOBEL)配列は、
5’-TCCTCCGGAGCCAGACTT-3’
である。
【0044】
ノーベル(NOBEL)は、安定な有効期間を有し、そのホスホロチオエート骨格に起因し、ヌクレアーゼ分解に対して耐性がある。ノーベル(NOBEL)の投与は、当業者に公知のオリゴデオキシヌクレオチドの導入に関連した標準的方法のいずれかにおいて提供され得る。有利にも、ノーベル(NOBEL)を含む本明細書で開示されるAS ODNは、毒性をほとんどかまたは全く伴わずに投与され得る。マウス試験(尾静脈に40μg)に基づいて(調整された)約2g/kgのレベルであっても、毒性上の課題を示さなかった。ノーベル(NOBEL)は、当業者に公知の通常の手順に従って作製され得る。
【0045】
本明細書で開示される医薬組成物は、薬学的に許容できる担体または希釈剤に加えて核酸を含有し、例えば組成物は生理食塩水(0.9%塩化ナトリウム)を含有してもよい。
ヒト対象における核酸の用量は、約0.025g/kg、約0.05g/kg、約0.1g/kg、約0.15g/kg、または約0.2g/kgであってもよい。特定の態様では、核酸は、凍結乾燥粉末として供給され、投与前に再懸濁される。再懸濁されるとき、核酸の濃度は、約50mg/ml、約100mg/ml、約200mg/ml、約500mg/ml、約1000mg/ml、またはそれらの量の間の範囲であってもよい。
【0046】
特定の実施形態では、対象は動物である。他の態様では、対象はヒトである。一部の実施形態では、対象は疾患を患う。特定の態様では、疾患はがんである。特定の実施形態では、がんは、限定はされないが、乳がん、星状細胞腫、頭頸部扁平上皮細胞がん、乳頭状腎細胞がんタイプII、肺がん、膵がん、胆嚢がん、直腸がん、神経膠腫、古典的ホジキンリンパ腫、卵巣がん、および結腸直腸がんを含む。特定の態様では、がんは神経膠腫である。特定の態様では、患者は悪性神経膠腫を有する。特定の態様では、悪性神経膠腫は再発性悪性神経膠腫である。
【0047】
特定の実施形態では、核酸を用いる治療用の候補である対象は、その血液中の循環単球のレベルを測定することによって同定される。一部の実施形態では、候補は、健常対象と比べて増加した数の循環単球を有する。本明細書で用いられるとき、用語「健常対象」は、がんまたは任意の他の疾患を患っておらず、また本発明の核酸を用いる治療を必要としない対象を指す。一部の態様では、循環単球は、限定はされないが、CD11b+、CD14+、CD15+、CD23+、CD64+、CD68+、CD163+、CD204+、またはCD206+単球を含む。特定の態様では、1つ以上の循環単球のレベルは、健常対象と比べて、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、または少なくとも約100倍上昇する。特定の実施形態では、1つ以上の循環単球のレベルは、健常対象と比べて約2倍上昇する。対象における循環単球のレベルは、蛍光標示式細胞分取器(FACS)を用いて測定されてもよい。
【0048】
特定の態様では、対象は、健常対象と比べて増加した数の循環CD14+単球を有する。特定の態様では、循環CD14+単球のレベルは、健常対象と比べて、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、または少なくとも約100倍上昇する。特定の実施形態では、循環CD14+単球のレベルは健常対象と比べて約2倍上昇する。
【0049】
特定の実施形態では、循環CD14+単球は、健常対象と比べて上昇したレベルのCD163を有する。一部の態様では、循環CD14+単球に対するCD163のレベルは、健常対象と比べて、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、または少なくとも約100倍上昇する。特定の実施形態では、循環CD14+単球に対するCD163のレベルは、健常対象と比べて約2倍上昇する。
【0050】
他の実施形態では、核酸を用いる治療用の候補である対象は、未分化単球をM2細胞へと極性化する血清を有する。特定の態様では、対象の血清と未分化単球とのインキュベーションにより、限定はされないが、CD11b、CD14、CD15、CD23、CD64、CD68、CD163、CD204、および/またはCD206を含む、単球上の1つ以上の細胞表面マーカの発現が誘導される。他の態様では、対象の血清と未分化単球とのインキュベーションにより、単球上の1つ以上の細胞表面マーカの発現が、対象の血清とともにインキュベートされない単球と比べて増加する。特定の態様では、細胞表面マーカは、限定はされないが、CD11b、CD14、CD15、CD23、CD64、CD68、CD163、CD204、および/またはCD206を含む。一部の態様では、1つ以上の表面マーカのレベルは、対象の血清とともにインキュベートされない未分化単球と比べて、少なくとも約1.3倍、少なくとも約1.5倍、少なくとも約1.8倍、少なくとも約2倍、少なくとも約3倍、少なくとも約4倍、少なくとも約5倍、少なくとも約10倍、少なくとも約20倍、少なくとも約30倍、少なくとも約40倍、少なくとも約50倍、少なくとも約60倍、少なくとも約70倍、少なくとも約80倍、少なくとも約90倍、または少なくとも約100倍上昇する。特定の実施形態では、1つ以上の表面マーカのレベルは、対象の血清とともにインキュベートされない未分化単球と比べて約2倍上昇する。対象の血清によって極性化される単球は、FACSを用いて測定されてもよい。
【0051】
さらに他の実施形態では、核酸を用いる治療用の候補である対象は、対象に対して腫瘍生検を実施することによって同定される。一部の実施形態では、対象由来の腫瘍は、単球の存在についてアッセイされる。特定の態様では、単球は、限定はされないが、CD11b+、CD14+、CD15+、CD23+、CD64+、CD68+、CD163+、CD204+、またはCD206+単球を含む。腫瘍における単球の存在は、免疫組織化学を用いてアッセイされてもよい。
【0052】
特定の実施形態では、核酸を用いる治療用の候補である対象は、対象の全末梢血単核球(PBMC)の約10%超、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、または約50%のCD163+M2細胞を示す。特定の態様では、対象は、対象の全PBMCの約20%を超えるCD163+M2細胞を示す。
【0053】
特定の実施形態では、核酸を用いる治療用の候補である対象は、WHOグレードII、WHOグレードIII、またはWHOグレードIV腫瘍を患う。特定の態様では、対象は、WHOグレードII腫瘍を患う。一部の態様では、腫瘍は星状細胞腫である。特定の実施形態では、腫瘍は、グレードII星状細胞腫、AIII(IDH1 R132H突然変異体グレードIII星状細胞腫)、AIII-G(多形神経膠芽腫・星状細胞腫の特徴を有するIDH1野生型グレードIII)、またはグレードIV星状細胞腫から選択される。一部の態様では、グレードIV星状細胞腫は、多形神経膠芽腫である。
【0054】
一部の実施形態では、核酸を用いる治療用の候補である対象は、特異的サイトカインセットのレベルを測定することによって同定される。一部の実施形態では、対象は、健常対象と比べて上昇したレベルのこれらのサイトカインを有する。他の実施形態では、対象は、腫瘍内に存在する特異的マイクロRNA(miRNA)を検出することによって同定される。特定の実施形態では、対象は、健常対象と比べて上昇したレベルのこれらのmiRNAを有する。
【0055】
一部の実施形態では、核酸は患者におけるがんの退縮を誘導する。他の実施形態では、核酸は患者におけるがんの縮小を誘導する。さらに他の実施形態では、核酸は患者におけるがんの除去を誘導する。
【0056】
一部の実施形態では、核酸は患者における神経膠腫腫瘍の退縮を誘導する。他の実施形態では、核酸は患者における神経膠腫腫瘍の縮小を誘導する。さらに他の実施形態では、核酸は患者における神経膠腫腫瘍の除去を誘導する。
【0057】
特定の実施形態では、核酸は医薬組成物に製剤化される。一部の態様では、医薬組成物は液体形態で製剤化される。他の態様では、医薬組成物は固体形態で製剤化される。特定の態様では、医薬組成物は経口投与用に製剤化される。特定の実施形態では、医薬組成物はカプセル剤の形態である。他の実施形態では、医薬組成物は錠剤の形態である。一部の態様では、錠剤は急速放出錠である。他の態様では、錠剤は徐放錠である。他の態様では、医薬組成物は腹腔内投与用に製剤化される。さらに他の態様では、医薬組成物は静脈内投与用に製剤化される。さらなる態様では、医薬組成物は筋肉内投与用に製剤化される。
【0058】
特定の実施形態では、医薬組成物は拡散チャンバ内に導入され、拡散チャンバは、治療的に有効な期間、対象の腹直筋鞘に外科的に移植される(例えば、米国特許第6,541,036号明細書を参照(その全体が参照により本明細書中に援用される))。
【0059】
考察の通り、本開示は、M2細胞(M1細胞でない)がIGF-1Rに特異的なアンチセンス核酸(IGF-1R AS ODN)を貪欲に取り込み、IGF-1R AS ODNが用量依存的にがん患者由来のM2細胞におけるM1細胞を上回る選択的低減を誘導することを示す。より重要なことには、本開示は、M2細胞の選択的低減がこれらの患者におけるがんの退縮をもたらすことを示す。
【0060】
したがって、特定の実施形態では、がんを患う患者におけるM2細胞の選択的除去のための方法であって、患者に有効量の医薬組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。
【0061】
他の実施形態では、M2細胞内でのIGF-1Rの発現を標的化することによってがんを治療する方法であって、がんを患う患者に有効量の医薬組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。
【0062】
特定の実施形態では、がんを治療する方法は、併用療法をさらに含む。一部の実施形態では、併用療法は放射線療法を含む。他の実施形態では、併用療法は化学療法を含む。特定の態様では、放射線療法または化学療法は、患者に、医薬組成物の投与後に施される。特定の実施形態では、放射線療法または化学療法は、患者に、医薬組成物の投与から、少なくとも約1時間後、少なくとも約2時間後、少なくとも約3時間後、少なくとも約6時間後、少なくとも約12時間後、少なくとも約24時間後、少なくとも約48時間後、少なくとも約72時間後、少なくとも約4日後、少なくとも約5日後、少なくとも約6日後、少なくとも約7日後、少なくとも約8日後、少なくとも約9日後、少なくとも約10日後、少なくとも約11日後、少なくとも約12日後、少なくとも約13日後、少なくとも約14日後、少なくとも約3週間後、少なくとも約4週間後、少なくとも約5週間後、または少なくとも約6週間後、施される。
【0063】
特定の態様では、医薬組成物は、放射線療法または化学療法の実施後、患者に投与される。特定の実施形態では、医薬組成物は、放射線療法または化学療法の実施から、少なくとも約1時間後、少なくとも約2時間後、少なくとも約3時間後、少なくとも約6時間後、少なくとも約12時間後、少なくとも約24時間後、少なくとも約48時間後、少なくとも約72時間後、少なくとも約4日後、少なくとも約5日後、少なくとも約6日後、少なくとも約7日後、少なくとも約8日後、少なくとも約9日後、少なくとも約10日後、少なくとも約11日後、少なくとも約12日後、少なくとも約13日後、少なくとも約14日後、少なくとも約3週間後、少なくとも約4週間後、少なくとも約5週間後、または少なくとも約6週間後、患者に投与される。
【0064】
特定の実施形態では、放射線療法は、限定はされないが、内部源放射線療法、外部ビーム放射線療法、および全身放射性同位体放射線療法を含む。特定の態様では、放射線療法は外部ビーム放射線療法である。一部の実施形態では、外部ビーム放射線療法は、限定はされないが、γ線療法、X線療法、強度変調放射線療法(IMRT)、および画像誘導放射線療法(IGRT)を含む。特定の実施形態では、外部ビーム放射線療法はγ線療法である。
【0065】
特定の実施形態では、AS ODNは、手術前、例えば腫瘍量を低減するための手術前に投与されてもよい。例えば、AS ODNは、手術前24時間以内、36時間以内、48時間以内または72時間以内に投与されてもよい。特定の態様では、医薬組成物は、手術前の約48~約72時間に投与されてもよい。典型的には、かかる環境下で、投与は静脈内ボーラスを介する。
【0066】
考察の通り、限定はされないが、神経膠腫、星状細胞腫、乳がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、乳頭状腎細胞がんタイプII、肺がん、膵がん、胆嚢がん、直腸がん、古典的ホジキンリンパ腫、卵巣がん、および結腸直腸がんを含む特定のがんを患う患者では、M2細胞は、腫瘍環境を2型免疫に対して免疫調節性にし、1型免疫を抑制する。それにより、M2細胞は治療的な抗腫瘍免疫の誘導を減弱させる。例えば、下の表1は、少なくとも一部には神経膠腫内のM2細胞によって引き起こされ得る、神経膠腫に起因した考えられる免疫調節をまとめる。
【0067】
【表1】
本発明の核酸を用いるかかるがん患者の治療の場合、M2細胞を除去または修飾することになり、それが腫瘍成長に対する直接的な阻害結果を有するとともに、免疫応答を促進することになる。さらに、特定の実施形態では、免疫を促進するため、核酸とワクチン接種を組み合わせてかかる患者を治療することが優先事項になる。したがって、特定の実施形態では、M2細胞を選択的に標的化するため、核酸が単独でまたはさらなる薬剤と組み合わせて提供されるような治療方法を提供することは有利である。これらの細胞の除去を通じて、腫瘍の発生および促進が軽減され、低減され、さらに免疫調節因子が修飾される。
【0068】
したがって、特定の実施形態では、がんを患う患者におけるM2細胞内でのIGF-1Rの発現を標的化することにより免疫応答を増強するための方法であって、有効量の医薬組成物を、がんを患う患者に投与するステップを含む、方法が提供される。
【0069】
併用療法
M2細胞における低減は、本明細書中でワクチン接種療法と称される抗腫瘍免疫応答の刺激に従って達成される場合がある。特定の実施形態では、ワクチン接種療法は、インビトロまたは生体外で培養された腫瘍細胞を、ある期間、例えば3~48時間など、プロアポトーシス剤を添加した培地中に置くステップと、プロアポトーシス剤の任意の痕跡を除去するため、腫瘍細胞を緩衝液で洗浄するステップと、引き続き細胞を拡散チャンバに移す(次に対象に移植する)ステップと、を含む(例えば米国特許第6,541,036号明細書を参照(その全体が参照により本明細書中に援用される))。特定の実施形態では、拡散チャンバは、退縮が本発明の医薬組成物によって誘導される同じタイプの腫瘍に由来する腫瘍細胞を有する。他の実施形態では、拡散チャンバ内に置かれた腫瘍細胞は、退縮が誘導される腫瘍と異なるタイプである。
【0070】
特定の実施形態では、拡散チャンバは、本発明の医薬組成物を対象に全身投与する前に対象に移植される。他の実施形態では、拡散チャンバは、医薬組成物を全身投与した後に対象に移植される。さらに他の実施形態では、対象に移植された拡散チャンバはまた、医薬組成物を有する。一部の態様では、医薬組成物および自家腫瘍細胞(上記のようにインビトロまたは生体外で処理されたもの)を有する拡散チャンバは、対象に移植される。他の態様では、医薬組成物および対象由来の腫瘍細胞(上記のようにインビトロまたは生体外で処理されたもの)を有する拡散チャンバは、対象に移植される。特定の実施形態では、拡散チャンバを対象に移植することにより、対象におけるM2細胞の数が、医薬組成物が単独で投与される対象と比べてさらに低減される。
【0071】
一部の実施形態では、チャンバは対象の腹部に移植される。特定の実施形態では、拡散チャンバは、治療的に有効な期間、対象の腹直筋鞘に外科的に移植される。
一部の態様では、医薬組成物は、ワクチン接種療法の実施後、対象に投与される。特定の態様では、医薬組成物は、医薬組成物の投与から、少なくとも約1時間後、少なくとも約2時間後、少なくとも約3時間後、少なくとも約6時間後、少なくとも約12時間後、少なくとも約24時間後、少なくとも約48時間後、少なくとも約72時間後、少なくとも約4日後、少なくとも約5日後、少なくとも約6日後、少なくとも約7日後、少なくとも約8日後、少なくとも約9日後、少なくとも約10日後、少なくとも約11日後、少なくとも約12日後、少なくとも約13日後、少なくとも約14日後、少なくとも約3週間後、少なくとも約4週間後、少なくとも約5週間後、または少なくとも約6週間後、対象に投与される。特定の実施形態では、ワクチン接種療法は、ワクチン接種療法の実施から少なくとも約48時間後、対象に施される。
【0072】
特定の態様では、ワクチン接種療法は、医薬組成物の投与後、対象に施される。特定の実施形態では、ワクチン接種療法は、医薬組成物の投与から、少なくとも約1時間後、少なくとも約2時間後、少なくとも約3時間後、少なくとも約6時間後、少なくとも約12時間後、少なくとも約24時間後、少なくとも約48時間後、少なくとも約72時間後、少なくとも約4日後、少なくとも約5日後、少なくとも約6日後、少なくとも約7日後、少なくとも約8日後、少なくとも約9日後、少なくとも約10日後、少なくとも約11日後、少なくとも約12日後、少なくとも約13日後、少なくとも約14日後、少なくとも約3週間後、少なくとも約4週間後、少なくとも約5週間後、または少なくとも約6週間後、対象に施される。特定の実施形態では、ワクチン接種療法は、医薬組成物の投与から少なくとも約48時間後、対象に施される。
【0073】
一部の実施形態では、免疫応答を増強するための方法は、ワクチン接種療法に引き続き、第2の医薬組成物を投与するステップを含む。特定の実施形態では、第2の医薬組成物は、ワクチン接種療法の実施から、少なくとも約1時間後、少なくとも約2時間後、少なくとも約3時間後、少なくとも約6時間後、少なくとも約12時間後、少なくとも約24時間後、少なくとも約48時間後、少なくとも約72時間後、少なくとも約4日後、少なくとも約5日後、少なくとも約6日後、少なくとも約7日後、少なくとも約8日後、少なくとも約9日後、少なくとも約10日後、少なくとも約11日後、少なくとも約12日後、少なくとも約13日後、少なくとも約14日後、少なくとも約3週間後、少なくとも約4週間後、少なくとも約5週間後、または少なくとも約6週間後、対象に投与される。
【0074】
他の実施形態では、ワクチン接種療法は、第2の医薬組成物の投与後、対象に施される。特定の実施形態では、ワクチン接種療法は、第2の医薬組成物の投与から、少なくとも約1時間後、少なくとも約2時間後、少なくとも約3時間後、少なくとも約6時間後、少なくとも約12時間後、少なくとも約24時間後、少なくとも約48時間後、少なくとも約72時間後、少なくとも約4日後、少なくとも約5日後、少なくとも約6日後、少なくとも約7日後、少なくとも約8日後、少なくとも約9日後、少なくとも約10日後、少なくとも約11日後、少なくとも約12日後、少なくとも約13日後、少なくとも約14日後、少なくとも約3週間後、少なくとも約4週間後、少なくとも約5週間後、または少なくとも約6週間後、対象に施される。
【0075】
特定の実施形態では、医薬組成物および第2の医薬組成物は同じである。他の実施形態では、医薬組成物および第2の医薬組成物は異なる。
典型的には、腫瘍細胞は移植前に照射される、例えば細胞は、約1Gy、約2Gy、約4Gy、約5Gy、約6Gy、約10Gy、もしくは最大15Gyの量のγ線照射で治療されてもよい。特定の実施形態では、細胞は、少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、または少なくとも5回照射されてもよい。
【0076】
特定の実施形態では、M2細胞内でのIGF-1Rの発現を標的化することにより対象におけるがんを予防するかまたは遅延させるための方法であって、対象に有効量の医薬組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。一部の実施形態では、対象は動物である。他の実施形態では、対象はヒトである。特定の態様では、ヒトは、がんのリスクを増加させる1つ以上の発癌物質に継続的に曝露されるという理由で、がんに罹りやすい。特定の態様では、これらの発癌物質として、限定はされないが、タバコ煙、タバコ、およびアスベストが挙げられる。他の態様では、ヒトは遺伝的にがんに罹りやすい。
【0077】
特定の実施形態では、M2細胞内でのIGF-1Rの発現を標的化することにより、対象における、限定はされないが、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、2型糖尿病におけるインスリン抵抗性、および乾癬を含む疾患を治療するか、予防するか、または遅延させるための方法であって、対象に有効量の医薬組成物を投与するステップを含む、方法が提供される。
【0078】
(実施例)
実施例1:多形神経膠芽腫標本におけるIGF-1Rについての免疫組織化学
元の倍率は200×(パネルA、B、C、D)、400×(パネルE)である。多形神経膠芽腫におけるIGF-1Rの発現との関連を評価するため、18の継続的な神経膠芽腫症例を抗IGF-1Rα(サンタクルーズ・バイオテクノロジー(Santa Cruz Biotechnology))、サンタクルーズ、カリフォルニア州)で染色した。IGF-1Rαについての免疫組織化学的分析を、通常のホルマリン固定パラフィン包埋切片に対して実施した(
図5)。ターゲットリトリーバル(Target Retrieval)溶液(#1699、ダコ・コーポレーション(Dako Corporation)、カーピンテリア、カリフォルニア州)で強化された切片の蒸気熱で誘導したエピトープの回収に引き続き、自動化免疫染色(Dako autostainer、モデル#LV-1、ダコ・コーポレーション(Dako Corporation))またはIGF-1Rα(サンタクルーズ・バイオテクノロジー(Santa Cruz Biotechnology)、サンタクルーズ、カリフォルニア州)を、1:500の希釈率で実施した。検出は、ウサギ二次抗体MACH3ラビットHRP(MACH3 Rabbit HRP)キット、バイオケア・メディカル(Biocare Medical))およびAB溶液(色素原溶液中の3,3’-ジアミノベンジジン、ダコ・コーポレーション(Dako Corporation))を用いて行った。すべての腫瘍がIGF-1Rの免疫反応性を示した。
【0079】
実施例2:ノーベル(NOBEL)の原薬、製剤および安定性
上記の通り、ノーベル(NOBEL)は、ホスホロチオエート骨格を有する18-merオリゴデオキシヌクレオチドであり、開始メチオニンコドンから下流の6つのヌクレオチドで始まる、インスリン様成長因子1型受容体に特異的なアンチセンス(IGF-1R
AS ODN)に相当する。遊離酸における分子量は5708.71ダルトンである。ナトリウム塩における分子量は6082.40ダルトンである。5’末端でのIGF-1R遺伝子の相補配列として誘導されたノーベル(NOBEL)の配列は、5’-TCCTCCGGAGCCAGACTT-3’である。
【0080】
ノーベル(NOBEL)は、フロースルー技術を用いての閉じた化学的カラム反応器を備えたシンセサイザー内で、十分に確立された方法論を用いる固相有機合成によって作製される。固体支持体上の各合成サイクルシークエンスは複数のステップからなり、それらは完全長オリゴヌクレオチドが確立されるまで順次実施される。凍結乾燥粉末である原薬は、スクリューキャップを有するHDPE容器内にパッケージされ、次に-80℃で貯蔵するため、5mLのマイラー(Mylar)パウチ内部で真空ヒートシールされる。
【0081】
製剤は、100mg/mLの溶液が得られるまで生理食塩水に溶解された新しい原薬からなる。得られた溶液は、0.22μmの膜フィルターを通して滅菌濾過する。-80℃での貯蔵前、1mLのアリコートをUSPタイプ1(USP Type 1)ガラスバイアル内に満たし、適切なゴム栓とアルミニウムキャップで密封する。この製剤は、滅菌した通常の生理食塩水中で再構成されるとき、2つの独立製剤において9年(最終試験日)にわたり安定であることが判明している(
図6)。
【0082】
実施例3:マウスにおける毒性の前臨床的評価
この試験の目的は、試験物質ノーベル(NOBEL)の、マウスに静脈内注射を介して単回用量として投与するときの毒性を評価することであり、可逆性、持続性、または効果出現の遅れを評価するため、投与後の約48時間(3日目、中間屠殺)または約14日間(15日目、最終屠殺)、動物を観察した。この試験は、優良試験所基準に従い、食品医薬品局によって確立された基準を遵守して実施した。下表に示すように、雄および雌Crl:CD1(ICR)マウスを数群に割り当て、諸用量を投与した。動物に、溶媒/希釈剤[注射用の0.9%塩化ナトリウム、USP(滅菌生理食塩水)]またはノーベル(NOBEL)(滅菌生理食塩水中、100mg/mLとして提供)を100μLの容量で静脈内注射を介して尾静脈に1回投与した(表2を参照)。
【0083】
【表2】
毒性の評価は、死亡率、臨床的観察、体重、摂食量、ならびに臨床および解剖病理学に基づいた。すべての動物が、投与期間の3日目または15日目のその予定された剖検まで生存した。摂食量における試験物質に関連した臨床的観察または変化は全く生じなかった。体重に対する統計学的に有意な効果は全く認められなかった。しかし、0.04mg/マウスを与えた雄において、わずかな体重減少(対照の93.8%)が投与期間の15日目までに生じた。この傾向は、これらの雄において投与期間の早くも8日目に認められたが、身体状態または水分補給状態における臨床的変化が全く生じなかったことから、試験物質に関連しても有害でないと考えられた。0.01mg/マウスを与えた雄かまたは雌においては、試験物質に関連した体重効果は全く認められなかった。
【0084】
ノーベル(NOBEL)の投与は、臨床病理学的試験結果に対する効果を有しなかった。中間屠殺動物の中で、0.01mg/マウスを与えた雌における肺重量、0.01もしくは0.04mg/マウスを与えた雄における精巣重量、および0.04mg/マウスを与えた雄における胸腺重量はより高かった。最終屠殺動物の中で、0.01もしくは0.04mg/マウスを与えた雄における脳重量および0.04mg/マウスを与えた雌における肺重量はより高かった。これらの臓器重量変化の中で相関性のある顕微鏡観察結果を有するものは全くなかった。試験物質の依存性は未知であった。ともかく重量差の中で有害と考えられるものは全くなかった。肉眼または顕微鏡観察結果の中で試験物質に関連すると考えられるものは全くなかった。
【0085】
結論として、雄および雌マウスへの単回静脈内ボーラス注射として、0、0.01、または0.04mg/マウスの用量レベルで投与するノーベル(NOBEL)は、十分な耐容性があり、任意の臨床的観察、摂食量における変化、臨床病理学的変化、または肉眼的もしくは顕微鏡的変化と関連しなかった。体重における試験物質に関連した小さい変化ならびに試験物質との関係が定かでない脳および肺重量における増加は有害と考えられなかった。したがって、有害と全く認められない効果レベルは、0.04mg/マウスであると考えられる。
【0086】
実施例4:M2(CD163+)マクロファージの選択的ノックダウン
ノーベル(NOBEL)は、ヒトとマウスの双方においてCD163+細胞を選択的にノックダウンする。悪性神経膠腫、ならびに限定はされないが、星状細胞腫、乳がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、乳頭状腎細胞がんタイプII、肺がん、膵がん、胆嚢がん、直腸がん、古典的ホジキンリンパ腫、卵巣がん、および結腸直腸がんを含む種々の他のがんを有する患者に由来する血清は、単球を、低マイクロモル濃度でノーベル(NOBEL)を吸収するCD163+表現型に分化させ、この表現型のノックダウンをもたらすことになる。
【0087】
C57B/6マウスモデルでは、側腹への腫瘍接種から20日後の腹腔内へのアンチセンス投与が、少なくとも14日間、腫瘍誘導性のCD163細胞のノックダウンをもたらした(
図7参照)。GL261細胞は、C57BL/6およびTbet-/-マウスの側腹に移植し、次に約20日後、動物はPBSまたは4mgのノーベル(NOBEL)単独のいずれかの全身性の腹腔内注射を受けた(
図8)。1型および2型免疫の均衡における効果をM2細胞のノックダウンと区別するため、抗腫瘍1型免疫を開始してGL261腫瘍を拒絶することのできないTbet-/-マウスが含められた。いずれの場合でも、触知可能な腫瘍の検出直前での単回用量のノーベル(NOBEL)単独の投与が、かなりの期間、腫瘍の形成を遅延させた。腫瘍を成長させないC57マウスの80%およびTbetノックアウトマウスの50%で、長期生存もまた促された(
図8)。ノーベル(NOBEL)とGL261細胞との混合が、インタクトな免疫系の不在下で腫瘍成長に対する効果をほとんど有することなく(モリン・ブルリュー(Morin-Brureau)ら著、キャンサー・イムノロジー・イムノセラピー(Cancer Immunol.Immunother.)、第64巻:p.447-457(2015年))、Tbetマウスへの移植時でのノーベル(NOBEL)とGL261細胞との混合もまた、腫瘍成長に干渉することがない。ここでの重要な結論は、腫瘍免疫の誘導時でのGL261に対するIGF-R1 AS ODNの効果が、しばらく後の腫瘍成長に対して作用する場合と区別される点である。抗原としての腫瘍と免疫刺激剤としてのノーベル(NOBEL)との同時投与を必要とする場合がある一方で、抗原に対する応答と独立して全身効果を有する場合がある。M2細胞やおそらくは腫瘍成長の促進に関与する他の細胞のノックダウンは、レシピエント動物が治療的な1型応答を開始させることができないときであっても腫瘍成長を阻止するのに十分であることは明白である。データは、腫瘍微小環境からのM2細胞の減少によって、腫瘍細胞が繁栄できなくなることを示唆する。
【0088】
実施例5:IGR-1R AS ODNの神経膠腫患者への投与
現行の試験から、本発明者は、以下の投与スケジュール:0.025g/kg、0.05g/kg、0.1g/kg、0.15g/kg、および0.2g/kgにおいて、再発性神経膠腫コホートの神経膠腫における投与に適した用量を決定した。
【0089】
上記用量の1つを受ける患者は、再発性神経膠腫を有し、かつ手術の48~72時間前に漸増するIGF-1Rの手術前静脈内ボーラス注入を受ける患者である。2回目のボーラス注入は、M2細胞集団の定量化に応じてさらに投与してもよい。この投与スケジュールは、限定はされないが、星状細胞腫、乳がん、頭頸部扁平上皮細胞がん、乳頭状腎細胞がんタイプII、肺がん、膵がん、胆嚢がん、直腸がん、古典的ホジキンリンパ腫、卵巣がん、および結腸直腸がんを含む他のがんについても有効である。
【0090】
実施例6:異なるIGF-1R AS ODN配列
異なるIGF-1Rアンチセンス配列は、ノーベル(NOBEL)配列(5’-TCCTCCGGAGCCAGACTT-3’(配列番号1))の多様式効果の一部もしくは全部において生物活性がある。18-merのノーベル(NOBEL)配列は、IGF-1R受容体の下方制御活性とTLRアゴニスト活性の双方を有し、マウスにおけるさらなる実験によると、両方の活性がインビボでの抗腫瘍免疫活性にとって必要であることが示唆される。AS ODN分子が抗腫瘍活性を有する一方、相補的なセンス配列は、やはりCpGモチーフを有するにもかかわらず、抗腫瘍活性を有しない。IGF-1Rエクソンの全オープンリーディングフレーム(4104塩基対)を調査し、IDT1220を含む10のさらなるCpGモチーフを同定した(配列番号2~11)(表3)。さらに、CpGモチーフを含まない幾つかのさらなるIGF-1Rアンチセンス配列(配列番号12~14)も同定した(表3)。
【0091】
【表3】
実施例7:ノーベル(NOBEL)によるToll様受容体9の活性化
侵入する病原体に対する免疫学的応答におけるフロントライン防御は、病原体構造と自然免疫系を活性化するToll様受容体(TLR)を含む一連の受容体との間の相互作用を含む。免疫系のこのアームは、細菌、ウイルス、真菌、および寄生虫を含む種々の病原体によって産生される一般的クラスの分子(それらのすべては侵入する病原体の生存にとって必須である)を認識する。これらの病原体に関連する分子パターン、すなわちPAMPSは、免疫エフェクター細胞、特に樹状細胞において発現される病原体関連受容体(pathogen related receptors)、すなわちPRRによって認識される。これらのPRRは、1991年にニュスライン-フォルハルト(Nusslein-Volhard)によって最初に特徴づけられたショウジョウバエ(Drosophila)において特徴づけられたtollタンパク質に対する相同性に基づいて、Toll様受容体と称される(スタイン(Stein)ら著、セル(Cell)、第65巻:p.725-35(1991))。TLRの活性化効果は、後続する適応免疫応答のタイプを指示するのに重要である。現在、公知のヒトTLRが10存在し、TLR9が特に興味深い。TLR9は、細菌およびウイルスに固有の非メチル化シトシン-グアノシン配列を含むDNAの断片に結合する。ヒトCpGジヌクレオチドは、常にメチル化され、免疫系に曝露される場合、自家ヒトDNAを免疫寛容原性にする。非メチル化CpGモチーフは、特に好ましい隣接ヌクレオチド六量体配列内で入れ子状態であるとき、強力な自然免疫応答を誘導する(
図9)。応答は、アンチセンス遺伝子翻訳を停止させる薬物濃度と比べると、1000倍低めの濃度で認められる。
【0092】
ノーベル(NOBEL)配列は、形質細胞様DCとB細胞の双方を活性化させることが見出された。PBMCを用いてのインビトロでのAS ODN取り込み実験を実施し、免疫細胞サブセットの活性化についてアッセイした。AS ODNの最高の取り込みが、エンドサイトーシス抗原提示細胞:単球、樹状細胞(DC)、およびB細胞において生じた一方、T細胞またはNK細胞において無視できる程度の取り込みが認められた。AS ODNで処理された形質細胞様樹状細胞(pDC)、およびB細胞は、T細胞活性化において重要な同時刺激分子(CD80、83、および86)の発現を増加させた。最高レベルのAS ODN取り込みを認めたにもかかわらず、CD80、83、および86の発現レベルは、単球および骨髄樹状細胞において不変であった(
図10)。
【0093】
実施例8:ノーベル(NOBEL)処理後の樹状細胞の活性化および成熟
単球由来樹状細胞のノーベル(NOBEL)での処理は、著しい用量依存性の成熟応答を呈する(
図11)。未熟DCがCD14+PBMCをrGM-CSFおよびrIL-4中で4日間培養することによって得られた。未熟DCをノーベル(NOBEL)で36時間処理した。DC成熟における正の対照としてポリI:Cを用いた。処理したDCを収集し、蛍光タンパク質とともにインキュベートし、フローサイトメータを用いて分析した。高いエンドサイトーシス能力は、成熟シグナル時に迅速かつ劇的に低下する未熟DCの特徴である。ノーベル(NOBEL)処理により、DCにおけるエンドサイトーシス能力が用量依存性様式で低下した。
【0094】
実施例9:最適なAS ODN配列
さらなるIGF-1R AS ODN配列をスクリーニングするための指針として、標的化mRNA転写物の5’末端の配列は、ワトソン・クリック塩基対律に従ってmRNA配列に結合する最高の可能性を有する。この生物学的活性は、体温で安定な5’ヘアピンループを形成する可能性がより高いDWA配列とは異なり、体温で線状分子をより高い確率で生成する好ましい配列に起因し得る(
図13)。上述の通り、生物学的活性は、体温で分子、理想的には線状分子の5’末端から到達可能である必要がある、標的化されたmRNA配列および非メチル化CpGジヌクレオチドへの到達可能性を含むことに起因し得る。これらの指針にもかかわらず、IGF-1Rの下方制御する能力を有しないDWA配列は、DC成熟にてより優れているように思われた(
図12)。異なるIGF-1R AS ODNの生物学的活性を以下の表4にまとめる。
【0095】
【表4】
実施例10:IGF-1Rの下方制御:ノーベル(NOBEL)の生物学的特異性および生物活性のまとめ
AS ODN配列の生物学的特異性を評価するため、2つのアッセイを設計した。
【0096】
a.IGF-1R mRNAの下方制御を評価するための定量RT-PCR-このアッセイは、細胞内IGF-1R転写mRNAとAS ODNとの間のワトソン・クリック塩基対を確認するように設計した。GL261マウス細胞は、10%FBS、4MmL-グルタミン(フィッシャー(Fisher))、50μg/mLのゲンタマイシン(ギブコ(GIBCO))および0.05Mm 2-ME(シグマ(Sigma))を添加したRPMI中に存在し、エヌシーアイ-フレデリックディーティーピー(NCI-Frederick DTP)、ディーシーティーディー・チューモア・バンク・レポジトリー(DCTD Tumor Bank Repository)(フレデリック、メリーランド州)から入手した。
図14に示すように、IGF-1Rの発現は、1mgのノーベル(NOBEL) AS-ODN/ウェル(P<0.001)で治療したGL261細胞内、ならびに0.1mgのノーベル(NOBEL) AS ODN/ウェル(P<0.05)で治療した細胞内で有意に低下した。
【0097】
b.ヘキソキナーゼアイソタイプ2mRNAの下流での下方制御を評価するための定量RT-PCR-IGF-1はがん細胞内でのヘキソキナーゼRNAの発現を誘導する。AS-ODN処理によるIGF-1Rの下方制御の結果としてIGF-1により低下したIGF-1Rの活性化がヘキソキナーゼ発現における同様の低下をもたらすはずであることが予測された。
図15に示すように、これはIGF-1R mRNAにおける低下がヘキソキナーゼIIの下方制御と高度に相関した場合である。IGF-1Rのコピー数における90%の減少は、ヘキソキナーゼIIのコピー数における90%の減少に対応した。L13における75%の減少として認められる場合、インビトロでIGF-1Rの阻害が成長速度および代謝を遅らせることから、ハウスキーピング遺伝子の下方制御もまた想定された。
【0098】
実施例11:IGF-1R AS ODNの生物活性:ノーベル(NOBEL)配列の腫瘍負荷に対するワクチン能を評価するためのマウス側腹モデル
C57/BL6マウスは、ジャクソン・ラボラトリー(Jackson Laboratory)(バーハーバー、メイン州)およびタコニック・ファームズ・インコーポレーテッド(Taconic Farms,Inc.)から入手し、8~10週齢を用いた。マウスは、イソフルランを含有するチャンバ内で麻酔し、100μLのPBS中、10
6個のGL261を側腹に1mLのビーディー・ファルコン(BD Falcon)シリンジおよび21Gのビーディー(BD)針(フィッシャー(Fisher))を用いて注射した。AS ODN GL261細胞製剤を左側腹に注射する一方、2週間後、野生型GL261細胞を右側腹に注射した。マウスは、腫瘍産生について少なくとも週2回検査した。これらの試験においては、GL261細胞が類遺伝子マウスの側腹に置かれるとき、かかる動物の約50%が介入の不在下で抗腫瘍細胞免疫を発生させることが想定される程度に免疫刺激性であることが周知であることは注目すべきである。
図16に見られるように、AS-ODNで治療されるGL261細胞を伴う前処理では、WT GL261腫瘍成長が対照マウスにおける53%から13%に低下する一方、GL261 AS ODN混合物(4mgのノーベル(NOBEL)/10
6個のGL261)を伴う前処理では、WT GL261腫瘍が0%に低下した。興味深いことに、GL261とノーベル(NOBEL)をマウスの反対の側腹に注射したとき、ワクチンの有効性は失われた(
図17)。これらのデータは、AS ODNで処理されるGL261とアンチセンス分子が抗腫瘍応答に寄与するが、最も有効なワクチンが自家腫瘍細胞とIGF-1R AS ODNとの同時注射を含むことを示唆する。さらに興味深いことに、CpGモチーフ周囲のパリンドロームであるノーベル(NOBEL)センス配列は抗腫瘍免疫の刺激時に有効でなく、これはCpGモチーフの生物学的有効性がCpGモチーフ単独を超えるIGF-1R AS ODNの生物活性に関連することを示唆している。
【0099】
実施例12:ノーベル(NOBEL)は放射線増感能がある
U118細胞をノーベル(NOBEL)(4mg/10
7個の細胞)の存在下または不在下で24時間インキュベートした。細胞を収集し、照射し、クリック-イテドゥ(Click-iTedu)試薬(10μMの最終濃度)の存在下で(新たなノーベル(NOBEL)を伴う場合または伴わない場合)培養物に戻した。72時間のインキュベーション後、製造業者のプロトコルに従って培養を展開した。
図18に示すように、ノーベル(NOBEL) AS ODNは、5Gyを超える等効果のプラトーを伴う1~15Gyの放射線量の範囲全体にわたり、U118ヒト神経膠芽腫細胞の放射線感受性を引き起こした。
【0100】
実施例13:星状細胞腫の治療
WHOグレードIV星状細胞腫(神経膠芽腫)は、18か月の生存中央値を有する一様に致死性のある原発性頭蓋内悪性腫瘍である。良好な手術候補者であると判断された再発性神経膠芽腫と診断された患者12名を治療に登録した。すべての患者では、手術、テモゾロミド化学療法および原体照射療法を含む標準治療が奏功していなかった。登録患者と彼らの疾患経過のまとめを表5に含める。すべての患者を、40mg/日での皮下エノキサパリンで3か月にわたり治療した。
【0101】
【表5】
自家腫瘍細胞からなる混合剤は、手術時に除去し、次にIGF-1R AS ODNで一晩処理した後、半透性チャンバに添加し、照射した。ワクチン製品では、配列5’-TCCTCCGGAGCCAGACTT-3’を有する18-merのIGF-1R AS ODNを用い、先行配列から下流に1つのフレームシフトを設け、その免疫刺激特性に基づき、各チャンバ(C-v)に2μgの外因性アンチセンスを付加した。プロトコルはまた、PBSを含有するチャンバ(C-p)を含むように改訂した。最大で10のチャンバを腹直筋鞘に移植した。ワクチン製剤のプレーティング段階中に得られる自家腫瘍細胞上清と外植されたチャンバ内容物を、探索研究を目的として急速冷凍した。
【0102】
試験目的は、安全性およびX線応答、例えば腫瘍相対的脳血液量(rCBV)、見かけの拡散係数(ADC)、および90分および240分での18フルオロデオキシグルコースデュアルタイム画像取得を伴うPET/CTの評価を含んだ。探索目的は、多重分析(ルミネックス(Luminex))を用いての、血清、チャンバ液および細胞培養物の中の末梢血単核球(PBMC)およびケモカイン/サイトカインの経時的評価を含んだ。
【0103】
免疫学的評価
免疫パラメータのベースライン評価のため、血漿・白血球フェレーシスを手術の1週間前に実施した。血液はまた、先に述べられたように1、手術後に得た。血清と細胞画分とを遠心分離によって分離し、細胞を赤血球溶解緩衝液で処理し、白血球は、フローサイトメトリーによって定量化するか、または血清試料と同様、DMSO中に-80℃で貯蔵した。フローサイトメトリーを、前述のように、イージーサイト8HT(EasyCyte 8HT)(ミリポア(Millipore))と、ヒトCD4、CD8、CD11b、CD14、CD16、CD20、CD45、CD56、CD80、CD83、およびCD86(すべてがビーディー・バイオサイエンシーズ(BD Biosciences)製)、およびCD163(R&D Systems)に特異的な蛍光的にコンジュゲートされたmAbとを用いて実施した。収集後の分析は、フロウジョ(FlowJo)ソフトウェア(トリースター・インコーポレーテッド(Tree Star Inc)、アシュランド、オレゴン州)を用いて実施した。可溶性サイトカイン因子を、ルミネックス(Luminex)ビーズアレイ(ミリポア(Millipore)製のヒトサイトカイン/ケモカインパネルI、II、およびIII)を用いて定量化した。治療前と手術後にT細胞の多機能性を評価するため、患者および正常対照からのPBMCを、インビトロで13-酢酸12-ミリスチン酸ホルボール(PMA)およびイオノマイシン(シグマ・アルドリッチ(Sigma Aldrich))で刺激し、培養液中に放出されたサイトカインおよびケモカインをルミネックス(Luminex)によって定量化した。腫瘍組織切片を、IGF-1R、CD163、CD14、CD206、CD204、CD3、CD4、およびCD8について免疫組織化学により評価した。可能であれば、免疫陽性細胞のアペリオ(Aperio)定量化を用いた。さもなければ、免疫染色は、熟練した神経病理学者(LEK)により、0(染色なし)~6(強い拡散染色)の順序尺度を用いて定性的に評価した。
【0104】
手術前および手術後2日間の血清中のサイトカイン/ケモカイン、外植されたチャンバの内容物、および一晩腫瘍細胞培養物(SN)由来の上清のレベルはすべて、ルミネックス(Luminex)により定量化した。ワクチンと制御チャンバの対から得られた膜は、免疫病理組織学的検査用にパラフィンで包埋した。
【0105】
安全性評価および臨床経過
記録された54の重度有害事象の中で、ただ1つのSAEは、血漿・白血球フェレーシスのために用いられる大腿ポートからの血栓を含むプロトコルに関連した。試験におけるDVTの発生率は8.3%であった。患者9名が腫瘍増殖のために死亡したが、患者3名が頭蓋内出血および敗血症(カンジダ・グラブラータ(candida glabrata)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumonia))を含む他の原因で死亡した。5回の剖検を実施した。全患者は、臨床的指示に従い、術後期間内にステロイド中止または一日量維持がなされた。全生存中央値は91.4週であり、初期手術と再発のための手術との間の間隔に高度に相関した。再発性腫瘍手術および自家細胞ワクチン接種の後、48.2週および10週の2つの有意に異なるプロトコルの生存コホートがそれぞれ、より長期の生存コホートおよび短期の生存コホートとして同定された(
図19a-c)。1つの異常値(TJ03)を除去し、我々は、登録時のプロトコルの生存とリンパ球減少症の程度との間の有意な相関を記録した(
図19d)。初期診断時とプロトコル登録時との値の比較によると、標準治療後、平均リンパ球数が有意に減少していた(65%)ことが示された(8つの利用可能なペア試料、p=.012、対応t検定)。登録時のリンパ球数とワクチン接種後の最終の利用可能なリンパ球数との間の有意差は全くなかった(データは示さず)。
【0106】
X線応答
解剖学的な腫瘍応答をスコア化した。例を
図20aおよび
図20bに示す。標準MRIでの解剖学的改善は生存と相関しなかったが、追加的なイメージング判定基準は生存と相関した。4つの内の3つのより長期の生存コホート(TJ03、TJ06、およびTJ09)は、増加する見かけの拡散係数(ADC、
図20c参照)に高度に相関するrCBVにおいて逆説的な増加を有した。これらの患者が、灌流データが疾患の進行を示唆しているにもかかわらず、腫瘍内部での細胞消失を反映するADC値を有したことから、これは逆説的であると考えられた。TJ06の症例では、CD163+マクロファージ集団における有意な持続的減少が、剖検の前に行った2回目のワクチン接種時に認められた(
図20dおよび下記参照)。これらの内の2つの症例で、炎症に合致するPET/CT判定基準が認められ、これらの知見を実証している(
図24)。サイトカインプロットの概要は、これら3名の患者における炎症促進性過程を支持した(
図20e)。
【0107】
外植されたチャンバおよび病理標本の検査
外植されたチャンバは、構造的に無傷であり、トリパンブルー排除によると生細胞を全く含有しなかった。チャンバから得た膜の組織学的分析によると、CD15+好中球およびCD163+マクロファージがC-pおよびC-vチャンバの双方から得た膜の外表面をコーティングしているが、C-v上で劇増することが示された(
図3a)。チャンバ内容物は、被包細胞および周囲環境から内向きに拡散する因子の生成物を反映し、制御C-pチャンバは後者に対して制御した。C-vにおけるC-pと比べて上昇したケモカインは、CCL21、CCL20、およびCCL19を含み、それらのいずれも血清レベルを超えて有意に上昇した。CXCL12は、C-vおよび血清においてC-pと比べて上昇した(
図25および表6)。また、C-vにおけるHSP-70およびグランザイムBの血清と比べての有意な上昇が認められた(各々、3826pg/ml対327pg/ml、p=.0015、および37pg/ml対12pg/ml、p=.01)。これらの結果は、本明細書で開示される方法が抗がん効果を増強する炎症促進性免疫応答を誘導することを示す。
【0108】
【表6】
剖検を通じた外科的介入由来のパラフィン切片は免疫組織化学分析のために利用可能であった。すべての評価可能な症例において、初期診断に対してワクチン接種時に有意に増加した腫瘍浸潤性CD163+マクロファージの数が剖検時に有意に減少したことが認められた(
図21bおよび26)。
【0109】
IGF-1Rを発現する細胞のレベルは、初期診断から再発のための手術にかけて腫瘍組織全体を通して高かったが、剖検時には双方で有意に減少した。染色がアペリオ(Aperio)による免疫陽性細胞の定量化に対してあまりに拡散的であったため、定性的尺度を用いた。ワクチン接種前レベルとワクチン接種後レベルの比較によると、IGF-1R陽性細胞の有意な減少が示された(
図21cおよび26)。
【0110】
生存コホートを比較して、我々は、長期生存において短期生存コホートと比べて有意により低レベルのCD163+TAMを、両方の初期診断時(3.7%対51.5%、p.0075)およびワクチン接種時(26%対53.9%、p=.0402)に認めた(
図27)。TAMのレベルは、短期生存コホートにおいて循環するM2細胞と高度に相関した(
図S4b)。幾つかのCD3、CD4、またはCD8細胞が、すべての連続的な対象試料を通じて認められた(データは示さず)。
【0111】
収集した試料中のケモカイン/サイトカイン含量
C-vにおけるサイトカイン/ケモカインでの任意の有意な増加が、腫瘍微小環境(TME)または血清のいずれかにおけるそれらの存在の増加を反映し得ると仮定された。この問題へのさらなる洞察を得るため、腫瘍縮小術がこれらのサイトカインの血清レベルを低減するか否かを探索した。調査したすべての血清サイトカイン/ケモカインから2つの異常値を除外し、血清CCL21は、手術後2日目に有意に減少したが(表6)、これはTMEからのCCL21の産生を支持した。興味深いことに、T細胞のワクチン接種後レベルが、より長期生存の対象におけるCCL21とCXCL12の双方のレベルと酷似する傾向があった(
図4)。それに対して、短期生存コホートにおけるT細胞、単球またはサイトカインの間に関連するパターンが存在しないことを我々は認めた(
図28)。
【0112】
SNとC-vの双方において高いCCL2もまた、ワクチン接種後、血清中で有意に上昇し、このケモカインのTME以外の供給源が示唆された。CCL2の手術後血清レベル平均もまた、短期において長期生存コホートと比べて有意により高かった(3812pg/ml対1978pg/ml,p<.0078)。
【0113】
初期ワクチン接種および再ワクチン接種の後、より長期生存の対象は、T細胞、単球、および炎症促進性ケモカイン/サイトカインの循環レベルの間で協調的変化を呈した。T細胞とマクロファージとの間および循環するCD14+CD16-マクロファージのCD163+サブセットとケモカインCCL2との間に逆相関が認められた。特定のサイトカインを示す表7を参照のこと。4名中3名の対象において、CD163+細胞およびCCR2+細胞の循環レベルもまた直接相関した(R2=.68,p=.043)。ワクチン接種後期間におけるより長期生存のコホートでは、有意により高いCD4/CD8比が明白であった。
【0114】
【表7】
インビトロでのT細胞活性化
-7日目および14日目に得られたPBMC試料をPMA/イオノマイシンで非特異的に刺激し、ケモカイン/サイトカインレベルについて上清を評価した。リンパ球減少性が著しい1つの異常値(TJ03)を除外後、14日目、2つの生存コホートにおける有意差を古典的Th-1およびTh-2応答に関連する6つの推定上のサイトカインについて認めた(
図5および表8)。
【0115】
【表8】
実施例14:M2細胞でのIGF-1Rの過剰発現に極性化された単球
IL-4およびIL-13による基準のM2分化によりM2極性化に誘導される未熟な未分化ヒト単球が、M1極性化に誘導されるマクロファージと比べてIGF-1Rを過剰発現させる。さらに、IGF-1R AS ODNによる治療は、極性化されたM2細胞の出現および既存のM2細胞の生存を選択的に遮断する(
図29)。これらの観察は、免疫系についての新たな情報を表し、種々のがんを有する患者における予後不良に関連したM2細胞の標的化された除去を含む治療的介入を支持する。
図29aは、IGF-1R AS ODNの取り込みの大多数が単球および好中球の場合に生じることを示す。M1およびM2に分化されたマクロファージにおいてIGF-1R AS ODNの同様の取り込みが生じるが、IGF-1R AS ODNの濃度増加により、M2 CD163+細胞の選択的除去が標的化され、IGF-1Rのみが上方制御される(
図29b)。CD163+細胞のアポトーシス細胞死の速度は、IGF-1R AS ODNの濃度と直接的に関係する(
図29c)。
【0116】
実施例15:がん患者血清中の正常な単球のインキュベーションによるM2への単球の極性化
異なるタイプのがんを有する患者について、彼らの血清がCD163+分化の能力があるか否かを観察するための分析を実施した。
図30に示すように、頭頸部扁平上皮細胞がん(N=2)、非小細胞肺がん(N=2)、および前立腺がん(N=5)に由来する血清と同時インキュベートした未分化単球からCD163+マクロファージ分化が認められた。すべての症例で、IGF-1R AS ODNによる治療により、この細胞集団がノックダウンされた。これにより、種々のがんを有する患者の血清中に存在する因子が、単球の、CD163および/または種々の他の表現型マーカ、例えばCD204およびCD206を差次的に発現するM2単球への分化を誘導するという確証が得られる。
【0117】
実施例16:異なるがんを有する患者由来の血清を用いる治療によってM2 CD163+表現型へ極性化される単球はCD163とPDL-1の双方の上方制御を示す
図31は、異なるがんを有する患者由来の血清を用いる治療によってM2 CD163+表現型へ極性化される単球がCD163とPDL-1の双方の上方制御を示し、いずれの症例でも、AS ODNを用いる治療により、CD163とPDL-1の双方がこの細胞集団を選択的に標的化することによってノックダウンされることを示す。
図31Aは、PBS対照に対するPDL-1を発現するCD163+マクロファージのIGF-1R AS ODN(ノーベル(NOBEL)、250μg)治療における手段の比較を示す。
図31Bは、マッチドペア分析により、PDL-1の有意な減少として反映されるこの細胞集団の高度に有意な減少が示されることを示す。PDL-1を過剰発現する細胞集団の除去により、阻害の供給源から細胞傷害性T細胞が放出され、それによりこれらのがん患者における1型免疫が回復される。
【0118】
実施例17:正常な個体と星状細胞腫患者との間での循環CD163+単球における差異
正常な個体と星状細胞腫患者との間での循環CD163+単球における差異について試験した。正常な個体は、その循環中での約6%のCD14+単球とともに中間レベルのCD163を示した(
図33A)。がん患者において、単球の数が増加しかつ単球はより高レベルのCD163を有するという2つの変化が認められる(
図33A)。他の細胞(赤ボックス)はCD163を全く有しない。正常な個体は感染などに起因して広範囲の単球を有し得る(
図33B、CD11b+CD14が陽性の細胞)が、これらは悪性星状細胞腫を有する患者において上昇する。
図33Cにおけるヒストグラムは、患者の単球が不定にもそのCD14単球上に対照細胞(赤色ヒストグラム)よりも高レベルのCD163を有することを示す。
【0119】
実施例18:腫瘍浸潤性M2単球および野生型イソクエン酸デヒドロゲナーゼ(IDH1)の状態は未分化星状細胞腫患者におけるMRIによるガドリニウム増強および予後不良に関連する。
【0120】
腫瘍浸潤性M2単球、野生型IDH1状態、および未分化星状細胞腫患者におけるMRIによるガドリニウム増強は、予後不良に関連したより侵襲性の腫瘍を明確にする。IDHR1の突然変異R132H(A)およびCD163(B)を意図して、ホルマリン固定されたパラフィン包埋組織を染色した。FLAIR(CおよびD、左パネル)およびガドリニウム増強されたT1荷重軸方向MRI(CおよびD、右パネル)における代表的画像では、非増強でのAIII(IDH1 R132H突然変異体グレードIII)(C)腫瘍および増強でのAIII-G(多形神経膠芽腫の特徴を有するIDH1野生型グレードIII)(D)腫瘍について示される。患者は、これら3つの上記パラメータ(A~D)、具体的にはより侵襲性のGBMに類似するAIIIおよびAIII-G(E、F、およびG)に基づいて数群に分割した。無作為に選択した増強MRIおよび非増強MRIでのAA患者38名におけるIDH1突然変異の存在(R132H+)または不在(R132H-)についての結果をパネルEに示す(ここでn.d.は何も検出されないことを表す)。切除された腫瘍標本におけるCD163+細胞含有物は、自動化された細胞数計測システムを用いて数え上げた上で、パネルFにて増強によって分別されたAA標本について提示する。箱髭図が75、50、および25パーセンタイルを示す一方、最大および最小データ値は上髭および下髭によって表す。群間の差の統計学的有意性は、マン・ホイットニー検定(***,p<0.001)によって評価した。彼らの腫瘍の侵襲性に基づいて分別された患者のカプラン・マイヤー生存曲線をパネルGに提示する。群間の統計学的に有意な生存差(**)は、ログランク(p=0.0019)およびウィルコクソン検定(p=0.0088)によって判定した。結果によると、IDH R132H突然変異体グレードIII星状細胞腫がガドリニウムで増強されることはまれであり、想定通り、腫瘍組織内でのCD163+M2細胞の蓄積が血管完全性の損失に関連することが示される。
【0121】
実施例19:循環単球の数がAIIIおよびAIII-G患者において上昇し、M2マーカCD163を上昇レベルで発現する。
無作為に選択したWHOグレードIII星状細胞腫患者18名および正常ドナー24名から得たPBMCをCD11b、CD14、およびCD163に特異的な抗体で染色し、フローサイトメトリーによって評価した。フォワードスキャッター(FSC)およびサイドスキャッター(SSC)の特性を、ライブゲートを確立するために用い、単球をCD11bおよびCD14を発現する生細胞として規定した(
図35A)。ライブゲートにおける代表的な等高線図ならびに正常およびAAドナーから得たPBMCにおけるCD11bおよびCD14陽性の分析を
図35Aに示し、ここで軸はログスケールで示し、数はゲートされた細胞の頻度を示す。
図35Bは、フローサイトメトリーによって測定された、AIIIを有する患者12名、AIII-Gを有する患者6名、および正常な個体24名から得たPBMCにおけるCD11b
+CD14
+単球の頻度を示す概要チャートである。正常な個体とAA患者サブセットとの間の細胞百分率における差の統計学的有意性をスチューデントt検定によって評価した(
**,p<0.01)。CD11b+CD14+のゲートされた単球のCD163染色における中央値蛍光強度(MFI)が、
図35CにおいてAIII、AIII-G、および正常血液標本の代表的なヒストグラムプロットから重ねてある。軸はログスケールとして示す。異なるドナー群から得たPBMC試料中のゲートされた単球サブセットのCD163染色におけるMFIを
図35Dに示す。統計学的有意性は、分散分析により、続いてチューキーポストテストにより評価した(
**,p<0.05)。CD11b
+CD14
+単球が試験患者全員の循環中に同様に上昇したレベルで存在する一方、GBM(多形神経膠芽腫;AIII-G)により酷似するAIII腫瘍を有する患者の循環から得た細胞は、悪性度が低めのAIII腫瘍を有する患者および正常対象からの場合よりも高レベルのCD163を進行性に発現する(
図35、CおよびD)。想定通り、循環単球における増加に起因して、グレードIII星状細胞腫患者の血液中でのCD3
+およびCD20
+リンパ球の頻度は正常な個体と比べて減少する。
【0122】
実施例20:星状細胞腫エキソソーム上の共通抗原に結合する、AIIIおよびAIII-G患者血清中に存在する抗体はアイソタイプ特性が異なる。
3つの星状細胞腫患者の原発性腫瘍細胞株から単離したエキソソームを96ウェルプレート上にコーティングし、初期手術前に収集した患者血清(13AIII、8AIII-G)および正常対照血清(4)とともにインキュベートした。結合抗体を蛍光結合全IgG(
図36A)またはIgGアイソタイプに特異的な二次抗体(
図36B)で検出し、抗体結合の程度をMFIとして測定した。データは、実施例18に記載の箱髭図で個別対象からの値として示す。
図36Aにおけるアスターリスクおよびバーは、分散分析、続いてダネット検定(p<0.05)による判定としての正常な対照値と有意に異なる値を示す。
図36Bでは、分散分析およびチューキーポストテストにより正常対照値およびAIII患者値と統計学的に有意に異なるAIII-G患者から得た値の群が
**(p=0.004)によって認められる。
図36Aに示すように、これらのエキソソームと反応するIgG抗体もまた、グレードIII星状細胞腫患者の大部分に由来する血清中に彼らの予後カテゴリーと無関係に存在する。しかし、アイソタイプに特異的な抗体を検出に用いるとき、我々は、Th2関連IgG2アイソタイプのエキソソーム結合抗体がAIII-Gにおいてより長寿命のAIII患者の場合と比べて有意に上昇することを認めた(
図36B)。IgG1のレベルが後者の患者においてやや上昇する傾向があった一方、IgG4のレベルはAIII-G患者においてやや上昇したものの、これらの差異のいずれも有意でなかった。
【0123】
実施例21:Th1およびTh2免疫に一般に関連する可溶性因子はAIIIおよびAIII-G患者の血清中で各々上昇する
ガドリニウム増強MRIに基づいてAIII(n=17)およびAIII-G(n=13)サブセットに分離されたAA患者由来の血清は、可溶性因子のレベルについてルミネックス(Luminex)により評価した。個体標本における濃度は、実施例18に記載のように箱髭図で示す。2群間の差の統計学的有意性をスチューデントt検定により評価した(
****,p≦0.001;
**,p≦0.01;
*,p≦0.05)。Th2サイトカインIL-10およびCCL4の血清濃度は、GBM特性を有するAIII腫瘍を有する患者において有意に上昇した一方、IL-9およびTh1に関連したIL-12 P40、CXCL10、およびFLT3Lは残りのAIII患者において有意に上昇した(
図37)。
【0124】
実施例22:白血球表現型マーカ、サイトカインおよびケモカイン受容体ならびにそれらのリガンドをコードする遺伝子のPBMCにおける発現のレベルはAIII患者とAIII-G患者との間で異なる。
【0125】
任意抽出したAA患者17名から得られたPBMCにおける単球表現型マーカ(
図38A)、インターロイキン(
図38B)、インターロイキン受容体(
図38C)、CCケモカイン(
図38D)および受容体(
図38E)、ならびにCXCケモカイン(
図38F)および受容体(
図38G)における遺伝子のコピー数は、高スループット定量RT-PCRによって評価し、各試料中に存在するハウスキーピング遺伝子L13aのコピー数に正規化した。正規化されたコピー数に対して実施したLDAを左側パネルに示す(各ドットは個別患者からのデータを表す)。個別のAIIIおよびAIII-G患者の分析の結果を表すドットは各々、青色および赤色に色付けする。各群に対する多変量平均は、平均の95%信頼区間を表す、同様に色付けされた丸/楕円の中心での+として示す。2つの患者コホートにおいて試験した各遺伝子における平均コピー数は各々、高発現レベル対低発現レベルに対応する赤色および緑色を用いたヒートマップとして付属する右側パネルに示し、また検出された遺伝子コピー数の範囲を関連のスケールバーにおいて示す。灰色ボックスは、検出可能な生成物を生成できなかった反応を表す。
【0126】
各マーカクラスの発現が2つの患者コホートを十分に分割し特徴づけるかを判定するため、線形判別分析(LDA)を用いた。
図38Aは、単球表現型マーカCD11b、CD14、CD15、CD68、CD163、CD204、およびCD206におけるLDAの結果を示すとともに、対応する遺伝子発現レベルをヒートマップとして表す。AIII-Gを有する患者から得たPBMC試料中でのCD15、CD163およびCD206に特異的なmRNAの発現レベルにおいて、従来のAIII腫瘍の場合と比べて中程度から高度な上昇(各々、8倍、3倍、5倍)が認められたが、後者におけるCD11bおよびCD204転写物レベルにおいて認められた上昇はわずかであった(1.9倍)。単球表現型遺伝子の発現レベルのLDA分析によると、試験した17の内の14の症例が2つの患者コホートの内の一方に正確に分別された。フローサイトメトリーデータと一致するように、CD163が最も特徴的な表現型のmRNAマーカであることが判明した。28のインターロイキン遺伝子について実施した類似のLDAによると、1型関連サイトカインIL-15およびIL-32のみがAIII試料とAIII-G試料との間で有意に異なり(各々、p=0.0111およびp=0.0152)、双方とも後者においてより低いという事実にもかかわらず、100%の患者が彼らの適切なコホートに正確に分類された(
図38B)。他の遺伝子は、発現されないかまたは有意に異ならないレベルで発現されるかのいずれかであった。PBMCにおける22のインターロイキン受容体遺伝子mRNAの痕跡の分析においても、AIII患者とAIII-G患者との間で明確に区別された(
図38C)。これら遺伝子の大部分の転写物は、差次的に発現される場合、AIII-GにおいてはAIII PBMCの場合よりも低かった。特にIL-23RおよびIL31RAは、AIII試料中で有意により高レベルで発現された(各々、p=0.0055およびp=0.0360)。この分析に対してPBMCにおいて十分なレベルで発現された21の内の15のCCL遺伝子のmRNAレベルのLDAでも、2つの患者コホートが区別された(
図38D)。発現増加における傾向は、AIII試料中のCCL3、CCL8、CCL13、CCL21、CCL23およびCCL28遺伝子において、またAIII-G試料中のCCL2、CCL11およびCCL14遺伝子において検出された。しかし、利用可能な試料の場合、統計学的有意差はCCL3 mRNAに限って得られ、それはAIIIにおいてAIII-GのPBMCと比べてより高レベルで存在した。CCR遺伝子発現データのLDAでも、患者が明確に区別された(
図38E)。大部分のCCR mRNAにおいて、AIII-G試料中でやや高めであったCCR4を除き、従来のAIII試料中で発現が高めの傾向があったが、有意に過剰発現したのはCCR1とCCR5の2つの遺伝子のみであった(各々、p=0.0206およびp=0.0003)。CXCL遺伝子発現データのLDAによると、試験した17の内の15の症例が、mRNAレベルにおける統計学的有意差がないにもかかわらず、異なる患者コホートに属するものとして正確に特徴づけられた(
図38F)。CXCL7(AIII-G患者由来のPBMCにおいて上方制御された)に限り、ほぼ有意性のある差異が検出された(p=0.0673)。CXCL2、CXCL10、およびCXCL16転写物が従来のAIIIのPBMCにおいてより高レベルで検出されたが、AIII-G試料との差異は有意でなかった。CXCケモカイン受容体の発現に基づくLDAについては同等の結果が得られ、ここでは17の内の14のAA症例が正確にサブグループ化された(
図38G)。CXCR1、CXCR3、CXCR4、CXCR6、およびCX3CR1転写物はAIII-Gにおいて過剰発現されることが見出されたが、有意レベルであるのはCXCR3およびCXCR6に限られた(各々、p=0.0111およびp=0.0206)。古典的なAIII腫瘍を有する患者由来のPBMCにおいてCXCR7のmRNAレベルのみが高めであったが、その差は分析試料の数の統計学的有意性に達しなかった。
【0127】
実施例23:AIIIおよびAIII-G患者サブセットは、PBMCにおける選択された免疫学的関連遺伝子の発現によって正確に区別され得る
最初に、AIIIおよびAIII-G患者のPBMCを最良に分別する、実施例22に記載のように得られた遺伝子発現データを同定するため、判別分析を用いた(
図39A)。次に、これらの遺伝子CCL3、CCR4、CCR5、CCR7、CXCL7、IL-15、IL-32、IL-15R、IL-21R、IL-23R、IL-31RA、およびCD163のいずれが2つの患者コホートを区別するのに最も有効であるかを判定するため、主成分分析を用いた(
図39B)。判別および主成分プロットの双方は、各個体のAIIIおよびAIII-GのPBMC標本に対する遺伝子に特異的な発現特性を用いて作成した(各々がドットの青色および赤色の色付けによって表される)。(A)における緑色破線および(B)における緑色ベクトルは各々、基準および成分空間における遺伝子転写物の方向を表す。AIII-G患者からのAIIIを最も確実に描写する遺伝子を同定するため、PBMCからの検出可能なシグナルを用いて、93すべての遺伝子のmRNAレベルに対してLDAを実施した(
図39A)。PCA分析用に表9に詳述する12の遺伝子を選択した(
図39B)。第1の主成分によって明示される全分散が37%であった一方、第2の主成分は約20%の全分散を明示した。PCAに基づき、M2マーカCD163、炎症誘発性サイトカインIL-32、ならびに1型サイトカイン受容体IL-21RおよびIL-23RのPBMCにおける発現レベルの評価は、異なるクラスのAIII腫瘍を有する患者間での明確な分別を得るのに十分である。
【0128】
【表9】
参照による援用
本明細書で参照されるすべての特許および出版物は、本明細書でそれら全体が参照により援用される。
【0129】
本明細書で考察される出版物は、あくまで本願の出願日に先立つそれらの開示を目的として提供される。本明細書中では、本開示が先行開示の理由からかかる出版物に先立つ権利が与えられないことの承認として決して解釈されるべきではない。
【配列表】