(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ヒートパイプ及び当該ヒートパイプに対する冷媒液の注入並びに封止方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20240130BHJP
F28D 15/04 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
F28D15/02 106F
F28D15/02 106Z
F28D15/04 J
F28D15/02 106A
F28D15/02 101H
(21)【出願番号】P 2022109406
(22)【出願日】2022-07-07
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2022076986
(32)【優先日】2022-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514306364
【氏名又は名称】大沢 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100084696
【氏名又は名称】赤尾 直人
(72)【発明者】
【氏名】大沢 健治
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/139568(WO,A1)
【文献】特開2007-003102(JP,A)
【文献】特開2007-093020(JP,A)
【文献】特開2010-243077(JP,A)
【文献】特開2009-024933(JP,A)
【文献】特開2010-019495(JP,A)
【文献】特開2003-080378(JP,A)
【文献】特開2000-213881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
F28D 15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項15】
以下の工程によって、冷媒液をヒートパイプに注入し、かつ封止することによって、
下
記のヒートパイプを形成することを特徴とするヒートパイプにおける冷媒液注入及び封止方法。
記
冷媒液の流動方向を変化させる流動障害物を備え、かつ冷媒液の毛細管現象を伴う流動
を予定し、かつ平面形状を呈しているウイック、及び当該ウイックの隣接領域にて冷媒蒸
気の流動を予定している蒸気流動部を、相互に熱溶着によって各外側周囲の枠状形成領域
を介して結合している上板及び下板の何れか一方又は双方に形成されている空洞部内に形
成すると共に、上板における冷媒液の流入貫通孔及び上板又は下板における前記空洞部に
面している冷媒液流出口と上板及び下板の平面方向に沿って連通し、かつ接続する流動孔
に対し、流入貫通孔を介して加圧注入された冷媒液を充満した状態とし、更に流動孔の中
途部位に対する加圧を伴う熱溶着によって流動孔のうち流入貫通孔に連通する側を閉鎖し
、かつ冷媒液が流動孔の一部領域に封止され、その後冷媒液流出口を介して前記空洞部内
に流入することを特徴とするヒートパイプ。
1 ヒートパイプの真空チャンバー内への投入。
2 真空ポンプによる真空チャンバーに対する真空脱気の開始。
3 冷媒液の流入貫通孔に対する密閉状態を伴う加圧シリンダーによる所定量の冷媒液の加圧注入。
4 流動孔における冷媒液流出口に至る中途部位に対する熱溶着を伴う加圧バーからの加圧による流動孔のうち流入貫通孔に連通する側の閉鎖。
5 加圧シリンダー及び加圧バーのヒートパイプからの取り外し。
【請求項24】
前記工程3の加圧シリンダーにおいて、先端側におけるシリンダーが中途部位にて冷媒液流出口側に変形した上で冷媒液流出口に至る形状であることを特徴とする請求項
19記載のヒートパイプにおける冷媒液注入及び封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定しているウイック、及び当該ウイックと隣接しており、かつ冷媒蒸気が流動を予定している蒸気流動部を空洞部内に設置しているヒートパイプにおいて、冷媒液の注入並びに封止工程を改善しているヒートパイプ及び当該改善に係る前記注入並びに封止の方法を対象としている。
【背景技術】
【0002】
従来技術においては、冷媒液が流動する一層又は複数層のウイック及び隣接する空洞部を備えたヒートパイプにおいて、以下のような工程によって、冷媒液の注入及び封止に至る工程を実現している。
(1)上板の周囲壁における外側側部、即ちヒートパイプの平面方向と直交する方向の側部に対する注入口の穿設
↓
(2)注入口に対する注入パイプの挿入及び半田付による周囲壁との接合
↓
(3)注入パイプを介した冷媒液のヒートパイプ内への注入
↓
(4)真空ポンプによるヒートパイプ内の空気の脱気
↓
(5)ヒートパイプに対する加熱による不要な冷媒液の蒸発に伴う放出
↓
(6)注入パイプの切断及びアーク溶接を介した閉鎖による冷媒液の封止
【0003】
しかしながら、上記(5)の冷媒液の蒸発に伴う放出工程は、所定の時間を要すると共に、正確な放出量を実現することが困難であり、その結果、ヒートパイプ内における正確な冷媒液の量を設定することができない。
【0004】
しかも、前記(6)の閉鎖工程の結果、注入パイプの一部が残存して、上板の周囲の外側から突出した状態を維持しているが、このような突出状態は、ヒートパイプを携帯電話等の電子機器に組込む際に無意味かつ不要な支障とならざるを得ない。
【0005】
更には、近年ヒートパイプの薄型化が要請されているが、そのような薄型のヒートパイプの場合には、周囲壁における外側側部の幅が狭小であることから、前記(1)の注入口の穿設及び前記(2)の注入パイプの挿入は極めて困難とならざるを得ない。
【0006】
本願と本発明と発明者及び出願人が共通している特許文献1の場合には、冷媒液注入口を周囲壁の上側表面に設置し、かつ冷媒液流出口を周囲壁の内側端に設置した上で、冷媒液注入口と冷媒液流出口とを連通する流動パイプとして、ヒートパイプの平面方向と直交する方向、即ち冷媒液が上側から下側に落下する方向及び当該方向に対し、更に冷媒液流出口に至るような方向を採用している。
【0007】
特許文献1のように、冷媒液注入口を上板の周囲壁の上側表面に設置している場合には、ヒートパイプが超薄型であっても、冷媒液流出口を周囲壁の内側端に設置し、かつ流動パイプを周囲壁の内側に設置することは当然可能であって、従来技術の場合のような超薄型に適用することが困難という設計上の支障は生じない。
【0008】
しかも、前記(5)のような非効率的な作業及び不正確な量による冷媒液の注入という従来技術の技術的な問題点を避けることができる。
【0009】
特許文献1においては、周囲壁にて冷媒液注入口、流動パイプ、冷媒液流出口を設置した上で、冷媒液の注入及び封止を実現するために、以下の工程を採用している。
(1)ヒートパイプの真空チャンバー内への投入。
↓
(2)真空ポンプによる真空チャンバーに対する真空脱気の開始。
↓
(3)ヒートパイプの冷媒液注入口に対する加圧シリンダーによる冷媒液の加圧注入。
↓
(4)加圧シリンダーの取り外し。
↓
(5)気体の真空チャンバー内への浸入による圧力調整。
↓
(6)ヒートパイプの閉鎖部材搭載装置の設置場所への移動。
↓
(7)閉鎖部材搭載装置におけるヒートパイプの冷媒液注入口に対する閉鎖部材の搭載。
↓
(8)ヒートパイプの閉鎖部材に対する加圧装置の設置場所への移動。
↓
(9)加圧装置の作動に基づく前記冷媒液注入口に対する閉鎖部材による加圧封止。
↓
(10)加圧装置のヒートパイプからの取り外し。
【0010】
しかしながら前記の工程は、相当煩雑であり、しかも真空チャンバーは、加圧シリンダー、閉鎖部材封鎖装置、及び閉鎖部材加圧装置の各設置場所に対応して存在することを必要不可欠とすることから、膨大なスペースを不可欠とする。
【0011】
更には、注入した冷媒液のヒートパイプから噴出を防止するために、前記(5)のように、気体、具体的には、窒素ガス又は空気が真空チャンバー内に浸入しているが、その結果、当該気体は、必然的にヒートパイプ中にも浸入せざるを得ない。
【0012】
然るに、窒素ガス又は空気等のガスがヒートパイプ中に浸入した場合には、ヒートパイプ中における水等の純然たる冷媒液及び冷媒蒸気の濃度が低下することを意味しており、冷媒液の蒸発、冷媒蒸気の凝縮による熱交換における効率が低下することにならざるを得ない。
【0013】
特許文献2においては、特許文献1の場合と同様に周囲壁にて冷媒液注入口(1a)、流動パイプ(注入路2c)、冷媒液流出口を設置した上で、冷媒液の注入及び封止を実現するために、以下の工程を採用している。
(1)ヒートパイプの真空チャンバー内への投入。
↓
(2)真空ポンプによる真空チャンバーに対する真空脱気の開始。
↓
(3)ヒートパイプの冷媒液注入口1aに対する加圧シリンダーによる冷媒液の加圧注入(
図5(A)、(B))。
↓
(4)加圧シリンダーの取り外し。
↓
(5)冷媒液注入口1aの周囲に対する下側先端の周囲に刃21を有するカシメピン20による押圧による閉鎖(
図6(A)、(B))。
↓
(6)冷媒液注入口1aの周囲を形成する上板に対する棒状のカシメピン30による押圧による下板との当接(
図8(A)、(B))。
↓
(7)冷媒液注入口1a及びその周辺領域に対するレーザビームによる溶接(
図9)。
【0014】
特許文献2による前記工程は、従来技術及び特許文献1の場合よりも工程数が少ない点において優れている。
【0015】
しかしながら、前記(5)の閉鎖の段階では、真空チャンバーの真空の程度は完全ではないため、冷媒液注入口1aを介してヒートパイプ中に空気が混入する危険を免れることができない。
【0016】
現に、前記工程に基づくモデル実験によって、ヒートパイプ中にガスが残存し、ヒートパイプ部の圧力が3000Paであることが確認されている。
【0017】
更には、前記(4)の加圧シリンダーの取り外し工程の段階において、ヒートパイプに注入した冷媒液が真空チャンバー内に噴き出すというアクシデントが発生する場合がある。
【0018】
前記アクシデントは、前記(4)の取り外し工程の段階では、冷媒液注入口1aが閉鎖されていないことを原因としているが、真空チャンバー内に噴き出した冷媒液を封止することは不可能又は困難である一方、このような冷媒液の噴き出しの結果、前記ヒートパイプを使用した製品の性能にばらつきが発生するという弊害も発生することにならざるを得ない。
【0019】
このように、ヒートパイプにおける冷媒液の注入及び封止につき、従来技術及び特許文献1、2のような前記各技術的問題点を改善するような技術的構成はこれまで提唱されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】特開2021-124237号公報
【文献】特開2010-243077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、小容量の真空チャンバー内にて正確な所定量による冷媒液を効率的に注入し、かつ封止し得るヒートパイプ、及び前記注入並びに前記封止に関する工程による方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記課題を解決するため、本発明の基本構成は、
(1)冷媒液の流動方向を変化させる流動障害物を備え、かつ冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定し、かつ平面形状を呈しているウイック、及び当該ウイックの隣接領域にて冷媒蒸気の流動を予定している蒸気流動部を、上板と熱溶着が行われている下板の空洞部内に形成すると共に、上板における冷媒液の流入貫通孔及び下板の当該空洞部に面している冷媒液流出口と上板及び下板の平面方向に沿って連通し、かつ接続する流動孔に対し、流入貫通孔を介して加圧注入された冷媒液を充満した状態とし、更に上板に成形した凹部から流動孔の中途部位に対する加圧を伴う熱溶着によって流動孔のうち流入貫通孔に連通する側を閉鎖し、かつ冷媒液が流動孔の一部領域に封止され、その後冷媒液流出口を介して前記空洞部内に流入することを特徴とするヒートパイプ、
(2)冷媒液の流動方向を変化させる流動障害物を備え、かつ冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定し、かつ平面形状を呈しているウイック、及び当該ウイックの隣接領域にて冷媒蒸気の流動を予定している蒸気流動部を、相互に熱溶着によって結合している上板、中板、下板のうち、下板上に配置されている中板に設定されている空洞部内に形成すると共に、上板に冷媒液の流入貫通孔を設け、中板に当該流入貫通孔と連通し、かつ中板の平面方向に沿っている冷媒液の流動孔を設置すると共に、当該流動孔と連通する上下方向貫通孔を設け、下板に当該上下方向貫通孔と連通し、かつ上側が空洞部側に開口している冷媒液流動溝を設置すると共に、上板において前記上下方向貫通孔の上側の位置に、金属塊が嵌入されている凹部を形成すると共に、当該流動孔及び当該上下方向貫通孔及び冷媒液流動溝に対し、冷媒液の流入貫通孔を介して加圧注入された冷媒液を充満した状態とし、更に凹部に対する前記金属塊を介した加圧によって上下方向貫通孔の上側を閉鎖し、かつ冷媒液が上下方向貫通孔及び冷媒液流動溝に封止され、その後冷媒液流動溝における上側の開口領域を介して前記空洞部内に流入することを特徴とするヒートパイプ、
(3)冷媒液の流動方向を変化させる流動障害物を備え、かつ冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定し、かつ平面形状を呈しているウイック、及び当該ウイックの隣接領域にて冷媒蒸気の流動を予定している蒸気流動部を、相互に熱溶着によって結合している上板、中板、下板のうち、下板上に配置されている中板に設定されている空洞部内に形成すると共に、上板及び中板を連通する冷媒液の流入貫通孔を設け、中板に当該流入貫通孔と連通し、かつ中板の平面方向に沿っている冷媒液の流動孔を設置すると共に、下板に当該流動孔と連通し、かつ上側が空洞部側に開口している冷媒液流動溝を設置すると共に、上板に前記流動孔の一部領域の上側の位置に金属塊が周囲壁を当接又は圧接した状態にて通過する接触通過孔を設け、かつ中板における当該接触通過孔の下側の位置に金属塊が嵌入されている凹部を形成すると共に、当該流動孔及び冷媒液流動溝に対し、冷媒液の流入貫通孔を介して加圧注入された冷媒液を充満した状態とし、更に凹部に対する前記金属塊を介した加圧によって当該流動孔のうち、冷媒液流動溝と連通している側を閉鎖し、かつ冷媒液が前記流動孔の一部領域及び前記冷媒液流動溝に封止され、その後冷媒液流動溝における上側の開口領域を介して前記空洞部内に流入することを特徴とするヒートパイプ、
(4)冷媒液の流動方向を変化させる流動障害物を備え、かつ冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定し、かつ平面形状を呈しているウイック、及び当該ウイックの隣接領域にて冷媒蒸気の流動を予定している蒸気流動部を、相互に熱溶着によって結合している上板、複数の中板、下板のうち、下板上に配置されている中板に設定されている空洞部内に形成すると共に、上板に冷媒液の流入貫通孔を設け、最も上側の中板に当該流入貫通孔と連通し、かつ中板の平面方向に沿っている冷媒液の流動孔を設置すると共に、複数個の中板に当該流動孔と連通する上下方向貫通孔を設け、下板に当該上下方向貫通孔と連通し、かつ上側が空洞部側に開口している冷媒液流動溝を設置すると共に、上板において前記上下方向貫通孔の上側の位置に、金属塊が嵌入されている凹部を形成すると共に、当該流動孔及び当該上下方向貫通孔及び冷媒液流動溝に対し、冷媒液の流入貫通孔を介して加圧注入された冷媒液を充満した状態とし、更に凹部に対する前記金属塊を介した加圧によって上下方向貫通孔の上側を閉鎖し、かつ冷媒液が上下方向貫通孔及び冷媒液流動溝に封止され、その後冷媒液流動溝における上側の開口領域を介して前記空洞部内に流入することを特徴とするヒートパイプ、
(5)冷媒液の流動方向を変化させる流動障害物を備え、かつ冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定し、かつ平面形状を呈しているウイック、及び当該ウイックの隣接領域にて冷媒蒸気の流動を予定している蒸気流動部を、相互に熱溶着によって結合している上板、複数の中板、下板のうち、下板上に配置されている中板に設定されている空洞部内に形成すると共に、上板及び中板を連通する冷媒液の流入貫通孔を設け、最も上側の中板に当該流入貫通孔と連通し、かつ中板の平面方向に沿っている冷媒液の流動孔を設置すると共に、複数個の中板に当該流動孔と連通する上下方向貫通孔を設け、下板に当該上下方向貫通孔と連通し、かつ上側が空洞部側に開口している冷媒液流動溝を設置すると共に、上板に前記上下方向貫通孔の上側の位置に金属塊が周囲壁を当接又は圧接した状態にて通過する接触通過孔を設け、最も上側の中板における当該接触通過孔の下側の位置に金属塊が嵌入されている凹部を形成すると共に、当該流動孔及び当該上下方向貫通孔及び冷媒液流動溝に対し、冷媒液の流入貫通孔を介して加圧注入された冷媒液を充満した状態とし、更に凹部に対する前記金属塊を介した加圧によって上下方向貫通孔の上側を閉鎖し、かつ冷媒液が上下方向貫通孔及び冷媒液流動溝に封止され、その後冷媒液流動溝における上側の開口領域を介して前記空洞部内に流入することを特徴とするヒートパイプ、
(6)以下の工程によって、冷媒液をヒートパイプに注入し、かつ封止することによって、下記のヒートパイプを形成することを特徴とするヒートパイプにおける冷媒液注入及び封止方法、
記
冷媒液の流動方向を変化させる流動障害物を備え、かつ冷媒液の毛細管現象を伴う流動
を予定し、かつ平面形状を呈しているウイック、及び当該ウイックの隣接領域にて冷媒蒸
気の流動を予定している蒸気流動部を、相互に熱溶着によって各外側周囲の枠状形成領域
を介して結合している上板及び下板の何れか一方又は双方に形成されている空洞部内に形
成すると共に、上板における冷媒液の流入貫通孔及び上板又は下板における前記空洞部に
面している冷媒液流出口と上板及び下板の平面方向に沿って連通し、かつ接続する流動孔
に対し、流入貫通孔を介して加圧注入された冷媒液を充満した状態とし、更に流動孔の中
途部位に対する加圧を伴う熱溶着によって流動孔のうち流入貫通孔に連通する側を閉鎖し
、かつ冷媒液が流動孔の一部領域に封止され、その後冷媒液流出口を介して前記空洞部内
に流入することを特徴とするヒートパイプ、
1 ヒートパイプの真空チャンバー内への投入、
2 真空ポンプによる真空チャンバーに対する真空脱気の開始、
3 冷媒液の流入貫通孔に対する密閉状態を伴う加圧シリンダーによる所定量の冷媒液の加圧注入、
4 流動孔における冷媒液流出口に至る中途部位に対する熱溶着を伴う加圧バーからの加圧による流動孔のうち流入貫通孔に連通する側の閉鎖、
5 加圧シリンダー及び加圧バーのヒートパイプからの取り外し、
(7)以下の工程によって、冷媒液をヒートパイプに注入し、かつ封止することによって、前記(1)のヒートパイプを形成することを特徴とするヒートパイプにおける冷媒液注入及び封止方法、
1 ヒートパイプの真空チャンバー内への投入、
2 真空ポンプによる真空チャンバーに対する真空脱気の開始、
3 冷媒液の流入貫通孔に対する密閉状態を伴う加圧シリンダーによる所定量の冷媒液の加圧注入、
4 流動孔における冷媒液流出口に至る中途部位に対する加圧バーからの凹部における加熱を伴う加圧による流動孔のうち流入貫通孔に連通する側の閉鎖、
5 加圧シリンダー及び加圧バーのヒートパイプからの取り外し、
(8)以下の工程によって、冷媒液をヒートパイプに注入し、かつ封止することによって、前記(2)のヒートパイプを形成することを特徴とするヒートパイプにおける冷媒液注入及び封止方法、
1 ヒートパイプの真空チャンバー内への投入、
2 真空ポンプによる真空チャンバーに対する真空脱気の開始、
3 冷媒液の流入貫通孔に対する密閉状態を伴う加圧シリンダーによる所定量の冷媒液の加圧注入、
4 凹部に対する金属塊を介した加圧バーからの加圧による流動孔と接続している上下方向貫通孔の上側位置の閉鎖、
5 加圧シリンダー及び加圧バーのヒートパイプからの取り外し、
(9)以下の工程によって、冷媒液をヒートパイプに注入し、かつ封止することによって、前記(3)のヒートパイプを形成することを特徴とするヒートパイプにおける冷媒液注入及び封止方法、
1 ヒートパイプの真空チャンバー内への投入、
2 真空ポンプによる真空チャンバーに対する真空脱気の開始、
3 冷媒液の流入貫通孔に対する密閉状態を伴う加圧シリンダーによる所定量の冷媒液の加圧注入、
4 凹部に対する金属塊を介した加圧バーからの加圧による流動孔のうち、流入貫通孔と連通する側の閉鎖、
5 加圧シリンダー及び加圧バーのヒートパイプからの取り外し、
(10)以下の工程によって、冷媒液をヒートパイプに注入し、かつ封止することによって、前記(4)及び(5)記載のヒートパイプを形成することを特徴とするヒートパイプにおける冷媒液注入及び封止方法、
1 ヒートパイプの真空チャンバー内への投入、
2 真空ポンプによる真空チャンバーに対する真空脱気の開始、
3 冷媒液の流入貫通孔に対する密閉状態を伴う加圧シリンダーによる所定量の冷媒液の加圧注入、
4 凹部に対する金属塊を介した加圧バーからの加圧による上下方向貫通孔の上側位置の閉鎖、
5 加圧シリンダー及び加圧バーのヒートパイプからの取り外し、
からなる。
【発明の効果】
【0023】
基本構成(6)記載のヒートパイプは、基本構成(6)自体の冷媒液注入及び封止方法に立脚しており、基本構成(1)のヒートパイプは、基本構成(7)の冷媒液注入及び封止方法に立脚しており、基本構成(2)のヒートパイプは、基本構成(8)の冷媒液注入及び封止方法に立脚しており、基本構成(3)のヒートパイプは、基本構成(9)の冷媒液注入及び封止方法に立脚しており、基本構成(4)及び(9)のヒートパイプは、基本構成(10)の冷媒液注入及び封止方法に立脚している。
【0024】
したがって、基本構成(7)の作用効果は、基本構成(1)の作成段階における作用効果に該当し、基本構成(8)の作用効果は、基本構成(2)の作成段階における作用効果に該当し、基本構成(9)の作用効果は、基本構成(3)の作成段階における作用効果に該当し、基本構成(10)の作用効果は、基本構成(4)及び(5)の作成段階における作用効果に該当し、基本構成(6)に冷媒液注入及び封止方法の作用効果は、基本構成(
6)記載のヒートパイプの作成段階における作用効果に該当する。
【0025】
従来技術の各工程と対比した場合、基本構成(1)、(2)、(3)、(4)、(5)のヒートパイプの場合には、従来技術における前記(5)の工程のような冷媒液の蒸発に伴う放出工程を不要としている結果、封止に至る工程が極めて効率的であると共に、冷媒液の注入量を正確に設定することができる。
【0026】
しかも、従来技術における前記(6)の切断のように、残存する注入パイプの突設状態を避けることができ、ヒートパイプを他の電子機器に組込む場合における前記突設による不都合は生じ得ない。
【0027】
更には、従来技術における前記(1)のような注入口の穿設及び前記(2)のような注入パイプの挿入は不要であることから、超薄型のヒートパイプに適用することができる。
【0028】
特許文献1の各工程と対比した場合、加圧シリンダーを取り外す工程が採用されていることは、基本構成(6)、(7)、(8)、(9)、(10)と共通しているが、特許文献1の場合には、その後、前記(5)乃至(10)の合計6段階の工程を必要としているのに対し、基本構成(6)、(7)、(8)、(9)、(10)の場合には、工程4の熱溶着又は圧着を伴う閉鎖の後に、工程5の加圧シリンダー及び加圧バーのヒートパイプからの取り外しという2段階にて終了することができ、作業効率において特許文献1による構成を明らかに凌駕している。
【0029】
しかも、特許文献1のチャンバーの場合には、加圧シリンダー、閉鎖部材搭載装置、閉鎖部材加圧装置の3個の装置に対応するスペースを必要とするのに対し、基本構成(6)、(7)、(8)、(9)、(10)の場合には、熱溶着を行う加圧バーを加圧シリンダーの近傍の位置に設置することが可能であって、容量が小さい真空チャンバーを使用した上で、冷媒液の注入及び封止を実現することができる。
【0030】
その結果、容量の小さいチャンバーにおいて、効率的な真空脱気を実現することができる。
【0031】
更には、基本構成(6)、(7)、(8)、(9)、(10)においては、工程3における正確な所定量による冷媒液の加圧注入の後に、工程4の閉鎖を行うことから、特許文献1における前記(5)の工程の場合のように、真空チャンバー内に窒素ガス又は空気等のガスの噴出による圧力調整は不要であって、ヒートパイプ中に当該ガスの浸入を伴わないことから、純然たる冷媒液の注入及び封止を実現することができ、前記(5)の圧力調整を原因とする冷媒液及び冷媒蒸気の濃度の低下を原因とする熱交換における効率の低下はあり得ない。
【0032】
特許文献2の各工程と対比した場合、加圧シリンダーを取り外す工程が採用されることは、基本構成(6)、(7)、(8)、(9)、(10)と共通しているが、特許文献2の場合には、その後(5)乃至(7)という3段階の工程を必要とするのに対し、基本構成(6)、(7)、(8)、(9)、(10)の場合には、工程4の熱溶着又は圧着を伴う閉鎖の後に、工程5の加圧シリンダー及び加圧バーのヒートパイプからの取り外しという2段階にて終了することができ、作業効率において特許文献2による構成を更に凌駕している。
【0033】
しかも既に説明したように、特許文献2の場合には、冷媒液注入口1aの周囲をカシメピン20によって圧着するという前記(5)の工程の後に、更に注入口1aを構成している上側の板をカシメピン30によって下板に当接するという前記(6)の工程に際し、空気がヒートパイプに流入することを避けることができないのに対し、基本構成(6)、(7)、(8)、(9)、(10)の場合には、加圧注入を行う工程3の後に、それぞれ熱溶着及び圧着による閉鎖という工程4が行われ、その間、冷媒液注入口は、工程3によって加圧注入が行われた加圧シリンダーと結合する状態が維持されており、外部から空気又は窒素が流動パイプ内に浸入し難い状態が継続している。
【0034】
前記結合状態の維持によって、基本構成(6)、(7)、(8)、(9)、(10)の場合には、高度の真空状態の維持を伴う冷媒液の注入を実現しており、その結果、基本構成(1)、(2)、(3)、(4)、(5)のヒートパイプにおいては、高度の真空状態が維持されている。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】基本構成(1)、(
2)、(
3)、(
4)、(
5)
の各ヒートパイプ及び基
本構成(6)記載のヒートパイプの構成を示す平面図であって、(a)は、ウイックを長手方向に沿って平行に配置する実施形態の場合を示しており、(b)は、ウイックを所定の位置から順次広幅方向を形成することによる放射状を配置している実施形態の場合を示す。但し、冷媒液の空洞部への流入については、基本構成(
2)、(
6)の場合を示し、基本構成(
2)、(
3)、(
4)、(
5)のように冷媒液流動溝の上側における空洞部への開口領域の図示は省略されているが、当該図示は、後述の
図2(
b)、(
c)、(
d)、(
e)の下側から2番目の平面図に示す通りである。尚、上側の平面図は、加熱が行われていない場合の状態を示し、下側の平面図は、加熱が行われている場合を示す。しかも、上側の図面における濃い斑点及び薄い斑点は、ヒートパイプに対する加熱が行われていない場合には、ウイックの毛細管現象によって、冷媒液がヒートパイプ内に保持される一方、蒸気流動部にも残留している状態を示しており、下側図面における濃い斑点は、ヒートパイプに対する加熱が行われた場合には、冷媒液は専らウイック内に保持され、毛細管現象によって流動する一方、蒸気流動部内を冷媒蒸気と化して流動している状態を示す。更には、個別の枠体の図示は省略されており、かつ■の表示は、流動孔において、加圧注入による熱溶着が行われている中途部位又は加圧による圧着が行われている上下方向貫通孔の連通部位を示す。しかも、(a)、(b)の各下側図面の点線の領域は、加熱源の存在を示す。
【
図2(a)】基本構成(
1)の構成を示す断面図であって、上側から順次上板の平面方向断面図、下板の平面方向断面図、上板及び下板の上下方向に沿ったA-A断面図を示す。
【
図2(b)】基本構成(
2)の構成を示す断面図であって、上側から順次上板の平面方向断面図、中板の平面方向断面図、下板の平面方向断面図、上板、中板、下板の上下方向に沿ったA-A方向断面図を示す。
【
図2(c)】基本構成(
3)の構成を示す断面図であって、上側から順次上板の平面方向断面図、中板の平面方向断面図、下板の平面方向断面図、上板、中板、下板の上下方向に沿ったA-A方向断面図を示す。
【
図2(d)】基本構成(
4)の構成を示す断面図であって、上側から順次上板の平面方向断面図、中板(複数枚:但し
図2(
d)においては2枚)の平面方向断面図、下板の平面方向断面図、上板、中板、下板の上下方向に沿ったA-A方向断面図を示す。
【
図2(e)】基本構成(
5)の構成を示す断面図であって、上側から順次上板の平面方向断面図、中板(複数枚:但し
図2(
e)においては2枚)の平面方向断面図、下板の平面方向断面図、上板、中板、下板の上下方向に沿ったA-A方向断面図を示す。
【
図2(f)】基本構成(
6)記載のヒートパイプの構成を示す断面図であって、上側から順次上板の平面方向断面図、下板の平面方向断面図、上板及び下板の上下方向に沿ったA-A断面図を示す。
【
図3】基本構成(
6)の各工程の状態を示す断面図であって、(a)は、真空脱気を開始し、かつ冷媒液を注入する前の状態を示し、(b)は、流入貫通孔に対する密閉状態を伴う所定量の冷媒液の注入が継続している状態を示し、(c)は、冷媒液を封止するために閉鎖部を圧着を伴う熱溶着によって閉鎖した状態を示し、(d)は、冷媒液の注入及び封止が完了した状態を示す。
【
図4】基本構成(
7)の各工程の状態を示す断面図であって、(a)は、真空脱気を開始し、かつ冷媒液を注入する前の状態を示し、(b)は、流入貫通孔に対する密閉状態を伴う所定量の冷媒液の注入が継続している状態を示し、(c)は、冷媒液を封止するために閉鎖部を圧着を伴う熱溶着によって閉鎖した状態を示し、(d)は、冷媒液の注入及び封止が完了した状態を示す。
【
図5】基本構成(
8)の各工程の状態を示す断面図であって、(a)は、真空脱気を開始し、かつ冷媒液を注入する前の状態を示し、(b)は、流入貫通孔に対する密閉状態を伴う所定量の冷媒液の注入が継続している状態を示し、(c)は、冷媒液を封止するために凹部を形成する上板からの圧着によって、上下方向貫通孔における流入貫通孔と連通する側を閉鎖した状態を示し、(d)は、冷媒液の注入及び封止が完了した状態を示す。
【
図6】基本構成(
9)の各工程の状態を示す断面図であって、(a)は、真空脱気を開始し、かつ冷媒液を注入する前の状態を示し、(b)は、流入貫通孔に対する密閉状態を伴う所定量の冷媒液の注入が継続している状態を示し、(c)は、冷媒液を封止するために凹部を形成する上板からの圧着によって、流動孔のうち流入貫通孔と連通する側を閉鎖した状態を示し、(d)は、冷媒液の注入及び封止が完了した状態を示す。
【
図7】基本構成(
4)のヒートパイプを作成する場合の基本構成(10)の各工程の状態を示す断面図であって、(a)は、真空脱気を開始し、かつ冷媒液を注入する前の状態を示し、(b)は、流入貫通孔に対する密閉状態を伴う所定量の冷媒液の注入が継続している状態を示し、(c)は、冷媒液を封止するために凹部を形成する上板からの圧着によって、上下方向貫通孔における流入貫通孔と連通する側を閉鎖した状態を示し、(d)は、冷媒液の注入及び封止が完了した状態を示す。
【
図8】基本構成(
5)のヒートパイプを作成する場合の基本構成(10)の各工程の状態を示す断面図であって、(a)は、真空脱気を開始し、かつ冷媒液を注入する前の状態を示し、(b)は、流入貫通孔に対する密閉状態を伴う所定量の冷媒液の注入が継続している状態を示し、(c)は、冷媒液を封止するために凹部を形成する上板からの圧着によって、上下方向貫通孔における流入貫通孔と連通する側を閉鎖した状態を示し、(d)は、冷媒液の注入及び封止が完了した状態を示す。
【
図9】基本構成(1)、(
2)、(
3)、(
4)、(
5)のヒートパイプにおいて枠体を備えたウイックの実施形態の一部領域を示す平面図であって、(a)は、冷媒液の流動方向及び当該流動方向と交差する方向の双方に沿っている枠体を示し、(b)は、冷媒液の流動方向のみに沿っている枠体を示す。
【
図10】ヒートパイプにおいて枠体を備えていることを特徴とする実施形態によるウイックの設置状態を示しており、(a)は、五層のウイックが上板及び下板との間にて熱溶着又は圧着されている場合を示し、(b)は、五層のウイックが中板の空洞部の周囲にて枠状を形成している領域に熱溶着されている場合を示し、(c)は、二層のウイックが上板及び下板とそれぞれ突設されている場合を示す。尚、(a)、(c)は、
図9(a)の場合と同様に、枠体から突起を突設し、かつ中板から離れた状態にて設置されている場合を示し、(b)は、突起を突設していないウイックが前記領域に接合している場合を示す。更には、(a)における上下方向に連続した黒色領域は、熱溶着又は圧着が行われている領域を示し、(b)の左右方向の黒色領域は、前記領域との間にて熱溶着が行われている領域を示し、(c)の上下方向の黒色領域は、上板及び下板からウイックが突設されている領域を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
基本構成(
1)は、
図1(a)、(b)及び
図2(
a)に示すように、冷媒液の流動方向を変化させる流動障害物を備え、かつ冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定し、かつ平面形状を呈しているウイック21、及び当該ウイック21の隣接領域にて冷媒蒸気の流動を予定している蒸気流動部22を、上板11と熱溶着が行われている下板13の空洞部内に形成すると共に、上板11における冷媒液の流入貫通孔41及び下板13の当該空洞部に面している冷媒液流出口42と上板11及び下板13の平面方向に沿って連通し、かつ接続する流動孔5に対し、流入貫通孔41を介して加圧注入された冷媒液を充満した状態とし、更に上板11に成形した凹部30から流動孔5の中途部位に対する加圧を伴う熱溶着によって流動孔5のうち流入貫通孔41に連通する側を閉鎖し、かつ冷媒液が流動孔5の一部領域に封止され、その後冷媒液流出口42を介して前記空洞部内に流入することを特徴とするヒートパイプ1である。
尚、
図2(
a)の下側のA-A断面図は、冷媒液が流動孔5に封止されており、空洞部に流入する前の状態を示す。
【0037】
基本構成(1)においては、凹部30を上板11に設置していることから、基本構成(1)の場合よりも、上板11をやや厚く設定する場合があるが、上板11及び下板13の2枚の板を採用していることから、後述する基本構成(6)記載のヒートパイプ1と同様又は当該ヒートパイプ1に準ずる程度に薄いヒートパイプ1を実現することができる。
【0038】
基本構成(
2)は、
図1(a)、(b)及び
図2(
b)に示すように、冷媒液の流動方向を変化させる流動障害物を備え、かつ冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定し、かつ平面形状を呈しているウイック21、及び当該ウイック21の隣接領域にて冷媒蒸気の流動を予定している蒸気流動部22を、相互に熱溶着によって結合している上板11、中板12、下板13のうち、下板13上に配置されている中板12に設定されている空洞部内に形成すると共に、上板11に冷媒液の流入貫通孔41を設け、中板12に当該流入貫通孔41と連通し、かつ中板12の平面方向に沿っている冷媒液の流動孔5を設置すると共に、当該流動孔5と連通する上下方向貫通孔43を設け、下板13に当該上下方向貫通孔43と連通し、かつ上側が空洞部側に開口している冷媒液流動溝51を設置すると共に、上板11において前記上下方向貫通孔43の上側の位置に、金属塊3が嵌入されている凹部30を形成すると共に、当該流動孔5及び当該上下方向貫通孔43及び冷媒液流動溝51に対し、冷媒液の流入貫通孔41を介して加圧注入された冷媒液を充満した状態とし、更に凹部30に対する前記金属塊3を介した加圧によって上下方向貫通孔43の上側を閉鎖し、かつ冷媒液が上下方向貫通孔43及び冷媒液流動溝51に封止され、その後冷媒液流動溝51における上側の開口領域を介して前記空洞部内に流入することを特徴とするヒートパイプ1である。
尚、
図2(
b)の下側のA-A断面図は、冷媒液が流動孔5に封止されており、空洞部に流入する前の状態を示す。
更には、
図2(
b)の上板11及び下板13においては、ウイック21及び蒸気流動部22を空洞部内に形成していない場合を図示しているが、基本構成(
2)においては、基本構成(1)と同様に、上板11及び下板13にウイック21及び蒸気流動部22を配置している空洞部を形成することができる。
【0039】
基本構成(2)においては、上板11、1枚の中板12、下板13という3枚の板を採用していることから、基本構成(1)の場合よりも、厚いヒートパイプ1を形成していることに帰するが、中板12の空洞領域に相当の容積を有するウイック21及び蒸気流動部22を設置することができ、基本構成(1)の場合よりも単位時間当たりの冷却効率が高く、ひいてはスピーディーな冷却を実現することができる。
尚、冷媒液流動溝51における上側の空洞部への開口領域は、基本構成(1の冷媒液流出口42と同様に、空洞部内への冷媒液の流出機能を発揮しており、かつこの点は、基本構成(3)、(4)、(5)の場合においても同様である。
【0040】
基本構成(
3)は、
図1(a)、(b)、及び
図2(
c)に示すように、冷媒液の流動方向を変化させる流動障害物を備え、かつ冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定し、かつ平面形状を呈しているウイック21、及び当該ウイック21の隣接領域にて冷媒蒸気の流動を予定している蒸気流動部22を、相互に熱溶着によって結合している上板11、中板12、下板13のうち、下板13上に配置されている中板12に設定されている空洞部内に形成すると共に、上板11及び中板12を連通する冷媒液の流入貫通孔41を設け、中板12に当該流入貫通孔41と連通し、かつ中板12の平面方向に沿っている冷媒液の流動孔5を設置すると共に、下板13に当該流動孔5と連通し、かつ上側が空洞部側に開口している冷媒液流動溝51を設置すると共に、上板11に前記流動孔5の一部領域の上側の位置に金属塊3が周囲壁を当接又は圧接した状態にて通過する接触通過孔31を設け、かつ中板12における当該接触通過孔31の下側の位置に金属塊3が嵌入されている凹部30を形成すると共に、当該流動孔5及び冷媒液流動溝51に対し、冷媒液の流入貫通孔41を介して加圧注入された冷媒液を充満した状態とし、更に凹部30に対する前記金属塊3を介した加圧によって当該流動孔5のうち、冷媒液流動溝51と連通している側を閉鎖し、かつ冷媒液が前記流動孔5の一部領域及び前記冷媒液流動溝51に封止され、その後冷媒液流動溝51における上側の開口領域を介して前記空洞部内に流入することを特徴とするヒートパイプ1である。
尚、
図2(
c)の下側のA-A断面図は、冷媒液が流動孔5に封止されており、空洞部に流入する前の状態を示す。
更には、
図2(
c)の上板11及び下板13においては、ウイック21及び蒸気流動部22を空洞部内に形成していない場合を図示しているが、基本構成(
3)においては、基本構成(1)と同様に、上板11及び下板13にウイック21及び蒸気流動部22を配置している空洞部を形成することができる。
【0041】
基本構成(3)は、基本構成(2)と同様に上板11、1枚の中板12、下板13による3枚の板を採用している点において共通しているが、基本構成(4)、(5)のように上下方向貫通孔43を設けずに、流動孔5を冷媒液流動溝51と連通している点において、基本構成(4)、(5)よりも構成がシンプルであり、しかも基本構成(4)、(5)と同様にスピーディーな冷却を実現することができる。
【0042】
基本構成(
4)は、
図1(a)、(b)及び
図2(
d)に示すように、冷媒液の流動方向を変化させる流動障害物を備え、かつ冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定し、かつ平面形状を呈しているウイック21、及び当該ウイック21の隣接領域にて冷媒蒸気の流動を予定している蒸気流動部22を、相互に熱溶着によって結合している上板11、複数の中板12、下板13のうち、下板13上に配置されている中板12に設定されている空洞部内に形成すると共に、上板11に冷媒液の流入貫通孔41を設け、最も上側の中板12に当該流入貫通孔41と連通し、かつ中板12の平面方向に沿っている冷媒液の流動孔5を設置すると共に、複数個の中板12に当該流動孔5と連通する上下方向貫通孔43を設け、下板13に当該上下方向貫通孔43と連通し、かつ上側が空洞部側に開口している冷媒液流動溝51を設置すると共に、上板11において前記上下方向貫通孔43の上側の位置に、金属塊3が嵌入されている凹部30を形成すると共に、当該流動孔5及び当該上下方向貫通孔43及び冷媒液流動溝51に対し、冷媒液の流入貫通孔41を介して加圧注入された冷媒液を充満した状態とし、更に凹部30に対する前記金属塊3を介した加圧によって上下方向貫通孔43の上側を閉鎖し、かつ冷媒液が上下方向貫通孔43及び冷媒液流動溝51に封止され、その後冷媒液流動溝51における上側の開口領域を介して前記空洞部内に流入することを特徴とするヒートパイプ1である。
尚、
図2(
d)の下側のA-A断面図は、冷媒液が流動孔5に封止されており、空洞部に流入する前の状態を示す。
更には、
図2(
d)の上板11及び下板13においては、ウイック21及び蒸気流動部22を空洞部内に形成していない場合を図示しているが、基本構成(9)においては、基本構成(1)、(
2)と同様に、上板11及び下板13にウイック21及び蒸気流動部22を配置している空洞部を形成することができる。
【0043】
基本構成(4)においては、上板11、複数枚の中板12、下板13という4枚以上の板を採用することによって、複数枚の中板12が形成する空洞領域に必要にして十分な容積のウイック21及び蒸気流動部22を設置することができ、基本構成(2)の場合よりも更に単位時間当たりの冷却効率が高く、ひいては、極めてスピーディーな冷却を実現することができる。
【0044】
基本構成(
5)は、
図1(a)、(b)及び
図2(
e)に示すように、冷媒液の流動方向を変化させる流動障害物を備え、かつ冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定し、かつ平面形状を呈しているウイック21、及び当該ウイック21の隣接領域にて冷媒蒸気の流動を予定している蒸気流動部22を、相互に熱溶着によって結合している上板11、複数の中板12、下板13のうち、下板13上に配置されている中板12に設定されている空洞部内に形成すると共に、上板11及び中板12を連通する冷媒液の流入貫通孔41を設け、最も上側の中板12に当該流入貫通孔41と連通し、かつ中板12の平面方向に沿っている冷媒液の流動孔5を設置すると共に、複数個の中板12に当該流動孔5と連通する上下方向貫通孔43を設け、下板13に当該上下方向貫通孔43と連通し、かつ上側が空洞部側に開口している冷媒液流動溝51を設置すると共に、上板11に前記上下方向貫通孔43の上側の位置に金属塊3が周囲壁を当接又は圧接した状態にて通過する接触通過孔31を設け、最も上側の中板12における当該接触通過孔31の下側の位置に金属塊3が嵌入されている凹部30を形成すると共に、当該流動孔5及び当該上下方向貫通孔43及び冷媒液流動溝51に対し、冷媒液の流入貫通孔41を介して加圧注入された冷媒液を充満した状態とし、更に凹部30に対する前記金属塊3を介した加圧によって上下方向貫通孔43の上側を閉鎖し、かつ冷媒液が上下方向貫通孔43及び冷媒液流動溝51に封止され、その後冷媒液流動溝51における上側の開口領域を介して前記空洞部内に流入することを特徴とするヒートパイプ1である。
尚、
図2(
e)の下側のA-A断面図は、冷媒液が流動孔5に封止されており、空洞部に流入する前の状態を示す。
更には、
図2(
e)の上板11及び下板13においては、ウイック21及び蒸気流動部22を空洞部内に形成していない場合を図示しているが、基本構成(
5)においては、基本構成(1)と同様に、上板11及び下板13にウイック21及び蒸気流動部22を配置している空洞部を形成することができる。
【0045】
基本構成(5)は、凹部30の形成位置が、上板11ではなく中板12である点において、基本構成(4)のヒートパイプ1と相違するが、その結果、上下方向貫通孔43の上下方向の距離が短い点において、基本構成(4)よりも構成が稍シンプルである一方、極めてスピーディーな冷却を実現する点において、基本構成(4)と共通している。
【0046】
基本構成(
6)
記載のヒートパイプは、
図1(a)、(b)及び
図2(
f)に示すように、冷媒液の流動方向を変化させる流動障害物を備え、かつ冷媒液の毛細管現象を伴う流動を予定し、かつ平面形状を呈しているウイック21、及び当該ウイック21の隣接領域にて冷媒蒸気の流動を予定している蒸気流動部22を、相互に熱溶着によって各外側周囲の枠状形成領域110及び130を介して結合している上板11及び下板13の何れか一方又は双方に形成されている空洞部内に形成すると共に、上板11における冷媒液の流入貫通孔41及び上板11又は下板13における前記空洞部に面している冷媒液流出口42と上板11及び下板13の平面方向に沿って連通し、かつ接続する流動孔5に対し、流入貫通孔41を介して加圧注入された冷媒液を充満した状態とし、更に流動孔5の中途部位に対する加圧を伴う熱溶着によって流動孔5のうち流入貫通孔41に連通する側を閉鎖し、かつ冷媒液が流動孔5の一部領域に封止され、その後冷媒液流出口42を介して前記空洞部内に流入することを特徴とするヒートパイプ1である。
尚、
図2(
f)の下側のA-A断面図は、冷媒液が流動孔5に封止されており、空洞部に流入する前の状態を示す。
【0047】
基本構成(6)記載のヒートパイプにおいては、流動孔5を上板11及び/又は下板13の平面方向に沿って設置し得ることから、薄いヒートパイプ1を実現することができる。
【0048】
基本構成(
6)は、
図3(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、以下の工程によって、冷媒液をヒートパイプ1に注入し、かつ封止することによって、
図2(f)に示
すヒートパイプ1を形成することを特徴とするヒートパイプ1における冷媒液注入及び封止方法である。
1 ヒートパイプ1の真空チャンバー7内への投入。
2 真空ポンプによる真空チャンバー7に対する真空脱気の開始(
図3(a))。
3 冷媒液の流入貫通孔41に対する密閉状態を伴う加圧シリンダー8による所定量の冷媒液の加圧注入(
図3(b))。
4 流動孔5における冷媒液流出口42に至る中途部位に対する熱溶着を伴う加圧バー9からの加圧による流動孔5のうち流入貫通孔41に連通する側の閉鎖(
図3(c))。
5 加圧シリンダー8及び加圧バー9のヒートパイプ1からの取り外し(
図3(d))。
【0049】
基本構成(
7)は、
図4(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、以下の工程によって、冷媒液をヒートパイプ1に注入し、かつ封止することによって、基本構成(3)のヒートパイプ1を形成することを特徴とするヒートパイプ1における冷媒液注入及び封止方法である。
1 ヒートパイプ1の真空チャンバー7内への投入。
2 真空ポンプによる真空チャンバー7に対する真空脱気の開始(
図4(a))。
3 冷媒液の流入貫通孔41に対する密閉状態を伴う加圧シリンダー8による所定量の冷媒液の加圧注入(
図4(b))。
4 流動孔5における冷媒液流出口42に至る中途部位に対する加圧バー9からの凹部30における加熱を伴う加圧による流動孔5のうち流入貫通孔41に連通する側の閉鎖(
図4(c))。
5 加圧シリンダー8及び加圧バー9のヒートパイプ1からの取り外し(
図4(d))。
【0050】
基本構成(
8)は、
図5(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、以下の工程によって、冷媒液をヒートパイプ1に注入し、かつ封止することによって、基本構成(
2)のヒートパイプ1を形成することを特徴とするヒートパイプ1における冷媒液注入及び封止方法である。
1 ヒートパイプ1の真空チャンバー7内への投入。
2 真空ポンプによる真空チャンバー7に対する真空脱気の開始(
図5(a))。
3 冷媒液の流入貫通孔41に対する密閉状態を伴う加圧シリンダー8による所定量の冷媒液の加圧注入(
図5(b))。
4 凹部30に対する金属塊3を介した加圧バー9からの加圧による流動孔5と接続している上下方向貫通孔43の上側位置の閉鎖(
図5(c))。
5 加圧シリンダー8及び加圧バー9のヒートパイプ1からの取り外し(
図5(d))。
【0051】
基本構成(
9)は、
図6(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、以下の工程によって、冷媒液をヒートパイプ1に注入し、かつ封止することによって、基本構成(
3)のヒートパイプ1を形成することを特徴とするヒートパイプ1における冷媒液注入及び封止方法である。
1 ヒートパイプ1の真空チャンバー7内への投入。
2 真空ポンプによる真空チャンバー7に対する真空脱気の開始(
図6(a))。
3 冷媒液の流入貫通孔41に対する密閉状態を伴う加圧シリンダー8による所定量の冷媒液の加圧注入(
図6(b))。
4 凹部30に対する金属塊3を介した加圧バー9からの加圧による流動孔5のうち、流入貫通孔41と連通する側の閉鎖(
図6(c))。
5 加圧シリンダー8及び加圧バー9のヒートパイプ1からの取り外し(
図6(d))。
尚、工程4においては、金属塊3は基本構成(
4)の接触通過孔31を当接又は圧接した状態にて通過しているが、
図6(c)に示すように、金属塊3と接触通過孔31との当接又は圧接によって、冷媒液の上側への浸潤は充分防止されている。
【0052】
基本構成(
10)は、
図7(a)、(b)、(c)、(d)及び
図8(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、以下の工程によって、冷媒液をヒートパイプ1に注入し、かつ封止することによって、基本構成(
4)及び(
5)のヒートパイプ1を形成することを特徴とするヒートパイプ1における冷媒液注入及び封止方法である。
1 ヒートパイプ1の真空チャンバー7内への投入。
2 真空ポンプによる真空チャンバー7に対する真空脱気の開始(
図7(a)及び
図8(a))。
3 冷媒液の流入貫通孔41に対する密閉状態を伴う加圧シリンダー8による所定量の冷媒液の加圧注入(
図7(b)及び
図8(b))。
4 凹部30に対する金属塊3を介した加圧バー9からの加圧による上下方向貫通孔43の上側位置の閉鎖(
図7(c)及び
図8(c))。
5 加圧シリンダー8及び加圧バー9のヒートパイプ1からの取り外し(
図7(d)及び
図8(d))。
尚、
図8(a)、(b)、(c)、(d)に示す工程4においては、金属塊3は基本構成(10)の接触通過孔31を当接又は近接した状態にて通過しているが、
図8(c)に示すように、金属塊3と接触通過孔31との当接又は圧接によって、冷媒液の上側への浸潤は充分防止されている。
【0053】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)、(5)におけるウイック21は、冷媒液の流動方向を変化させる流動障害物を備え、かつ冷媒液の毛細管現象を伴う流動を実現する物の総称であり、当該物については色々な形状を採用することができる。
【0054】
即ち、上板11、中板12、下板13において、ヒートパイプ1に反映している外部の熱を吸収させるために、ヒートパイプ1内における空洞部内にて採用し得る形状については、様々な構成を想定することができる。
【0055】
具体的には、上板11及び下板13内の空洞領域又は上板11、中板12、下板13の空洞領域において突設される突起、張設される二次元又は三次元のメッシュ、湾曲又は屈曲したパイプ等の何れも採用可能である。
【0056】
特に、
図9(a)に示す冷媒液の流動方向及び当該方向と交差する方向による枠体、又は
図9(b)に示すような冷媒液の流動方向に沿った枠体は、シンプルな形状として好適に採用することができる。
【0057】
基本構成(6)、(7)、(8)、(9)、(10)の工程3における所定量の冷媒液の加圧注入は、当該注入が所定期間継続することを当然の前提とする一方、前記2の真空脱気は、通常前記4の閉鎖の段階にて終了している。
【0058】
図3(a)、(b)、(c)、(d)乃至
図8(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、基本構成(
6)、(
7)、(
8)、(
9)、(
10)においては、加圧シリンダー8及び加圧バー9は、何れも支持枠6によって上下方向移動自在の状態にて支持されている。
【0059】
しかも、流入貫通孔41に対して密閉状態にて押圧している加圧シリンダー8の先端に近い箇所に開閉弁81が設置されており、
図3(a)、(b)、(c)、(d)乃至
図8(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、基本構成(
6)、(
7)、(
8)、(
9)、(
10)においては、工程2、4、5の段階では、加圧シリンダー8は閉鎖しているが、
図3(b)乃至
図8(b)に示すように、工程3の段階では、開閉弁81は開口している。
【0060】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)の従来技術及び特許文献1、同2に対する技術上のメリットについては、既に効果の項において指摘した通りである。
【0061】
図1(a)、(b)の上側図面に示すように、基本構成(
1)、(
2)、(
3)、(
4)、(
5)においては、ヒートパイプ1中に注入された冷媒液は、加熱源10が存在しない場合には、主としてウイック21の毛細管現象によってウイック21内に保持されているが、全てのウイック21に保持されている訳ではない一方、ヒートパイプ1に対する加熱源10の接触が行われ、当該加熱源10に対する冷却を行う際には、
図1(a)、(b)の下側図面に示すように、冷媒液は専らウイック21の毛細管現象によってウイック21の領域を流動し、冷媒蒸気は、蒸気流動部22を流動している。
【0062】
基本構成(
6)、(
7)、(
8)、(
9)、(
10)においては、工程4の閉鎖の結果、
図3(c)乃至
図8(c)の右側に示すような流入貫通孔41及びその近傍における冷媒液が残留し、工程5においてヒートパイプ1の取り外しが行われた場合には、
図3(d)乃至
図8(d)に示すように、残留した冷媒液は無駄となるが、このような冷媒液はさしたる量ではなく、基本構成(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)の作用効果によるメリットを低下させる要因ではない。
【0063】
基本構成(
2)、(
4)、(
5)においては、それぞれ
図2(
b)、
図2(
d)、
図2(
e)に示すように、流動孔5のうち流入貫通孔41と連通していない側においては、冷媒液は封止されるが、当該封止の後に、ウイック21及び蒸気流動部22を備えた空洞部に流入している。
【0064】
基本構成(
7)、(
8)、(
9)、(
10)において凹部30を加圧した場合には、必然的に凹部30の底部は、
図4(c)、(d)、
図5(c)、(d)、
図6(c)、(d)、
図7(c)、(d)、及び
図8(c)、(d)に示すように変形し、その結果、基本構成(
1)、(
2)、(
3)、(
4)、(
5)のヒートパイプ1は、それぞれ
図2(
a)、(
b)、(
c)、(
d)、(
e)の下側におけるA-A断面図に示すように、凹部30
に該当する底部は、下側への湾曲状態によって変形している。
【0065】
以下、基本構成(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)の具体的構成につき、実施形態に即して説明する。
【0066】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)、(5)においては、熱溶着として超音波振動による熱溶着を採用することができる。
【0067】
前記実施形態の場合には、シンプルな構成による熱溶着を実現することができる。
【0068】
基本構成(
8)、(
9)、(
10)においては、凹部30に対する加圧が、金属塊3を介して行われているが、金属塊3の形状としては、
図5(a)、(b)、(c)、(d)乃至
図8(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、球状を採用する場合が多い。
【0069】
しかしながら、金属塊3の形状は、球状に限定する必要はない。
【0070】
具体的には、半球、又は円柱をも採用することができる。
但し、どのような形状であろうと、工程4の加圧が行われた後に、基本構成(2)、(3)、(4)、(5)のヒートパイプ1中に金属塊3が残存する場合には、当該加圧によって加圧方向に即して縮小するような部材、即ち加圧方向と直交する方向に扁平形状となるような部材が好ましい。
【0071】
しかしながら、基本構成(
2)、(
3)、(
4)、(
5)のヒートパイプ1においては、金属塊3が残存することは必要不可欠ではなく、
図2(c)、(d)の下側におけるA-A断面図に示すように、金属塊3が除去されている構成を選択することができる。
但し、前記除去の構成を選択する場合には、基本構成(
6)、(
7)、(
8)、(
9)、(
10)の工程5においては、金属塊3をも取り外して除去することを必要不可欠とする。
尚、金属塊3の部材としては、熱伝導率が良好である銅を採用する場合が多い。
【0072】
上記のような金属塊3の形状に対応して、凹部30の形状については、半球状又は円筒状とする実施形態を採用することができ、当該実施形態の場合には、金属塊3とのスムーズな嵌合を実現することができる。
【0073】
金属塊3及び凹部30につき、様々な形状を採用する場合であっても、金属塊3を介した加圧を原因として、中板12及び下板13が変形することによって、金属塊3と中板12及び下板13との間に強固な界面接合が形成される。
但し、ヒートパイプ1の使用環境温度が200℃を超えるような高温使用の場合には、20気圧~40気圧という高圧の水蒸気圧が発生することから、ヒートパイプ1については、このような高温に耐え得るような素材及び構造を採用することを必要不可欠とする。
【0074】
基本構成(1)、
(2)、(3)、(4)、(5)及び基本構成(6)記載のヒートパイプ1においては、
図1(a)に示すように、複数個のウイック21を、冷媒液の流動方向である長手方向に沿って平行に配置することを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0075】
このような実施形態は、
図1(a)の下側図面に示すように、加熱源10が長手方向を有する棒状又は長方形の場合、当該長手方向を前記長手方向と直交する方向に配置することによって、効率的な冷却を行うことができる(尚、
図1(a)の下側図面は、棒状の場合を示す。)。
【0076】
前記各ヒートパイプ1においては、
図1(b)に示すように、複数個のウイック21を、所定の位置から冷媒液の流動方向にて順次広幅状態を形成することによって、放射状に配置していることを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0077】
上記実施形態の場合は、
図1(b)の下側図面に示すように、例えば、円形又は正多角形のように長手方向を有していない加熱源10の場合に、ヒートパイプ1の中央位置に当該加熱源10を配置することによって効率的な冷却を実現することができる(尚、
図1(b)の下側図面は、円形の場合を示す。)。
【0078】
図1(a)に示すように、ウイック21を長手方向に沿って平行状態に配置する実施形態と、
図1(b)に示すように、ウイック21を前記のような放射状に配置する実施形態を対比した場合、後者の方が熱抵抗が少なく、ひいては、効率的な冷却に有利であることを、以下の通り明らかにする。
【0079】
図1(a)に示すように、長手方向に沿って平行に配置された各ウイック21の長さをLとし、厚みをtとし、幅をwとし、熱抵抗比率をρとした場合には、それぞれ平行状態にあるウイック21の熱抵抗Rについては、
R≒(ρL)/(Wt) ・・・(1)
が成立する。
【0080】
これに対し、
図1(b)に示すように、円形のヒートパイプ1であって、中心位置からの距離が内壁に至る距離をr
1とし、半径r
2を有する円盤状の加熱源10の中心位置をヒートパイプ1の中心位置に配置し、かつウイック21の放射角度をθとした場合に、中心位置からの距離がrである場合の円弧の長さは約θrであることから、円形の加熱源10から内側端に至るまでのウイック21の熱抵抗R’については、
【数1】
・・・(2)
が成立する。
【0081】
通常の設計では、前記(1)式の(L/W)については、約10に設定することができ、前記(2)式のr
1/r
2についても、約10と設定することができ、θについては、
図1(b)に示すように、θ≒π/4と設定することができる。
【0082】
【数2】
であることから、平行状態の熱抵抗値Rより放射状の熱抵抗値R’の方が熱抵抗値が小さく、その結果、加熱源10の熱がウイック21の低い熱抵抗によって冷媒液を伝導し、かつ加熱源10の熱エネルギーを冷媒液の蒸発エネルギーとして効率的に吸収できることを意味している。
【0083】
このような帰結は、正に前記(2)式のR’の方が、前記(1)式のRの場合よりも熱交換効率が高いことを示している。
尚、
図1(b)においては、蒸気流動部22についても放射状にする実施形態を採用しているが、ウイック21を放射状とする一方、蒸気流動部22については、
図1(a)と同様に、直線状とする実施形態も採用することができる。
但し、
図1(b)のように、蒸気流動部22もまた放射状とする実施形態の方が、外気からの冷却による熱交換が大きいことから、上記のような放射状の実施形態よりも熱交換効率が高い状況にある。
【0084】
基本構成(1)、(2)、(3)、(4)、(5)及び基本構成(6)記載の各ヒートパイプ1においては、
図9(a)、(b)に示すような枠体を有するウイック21を採用した上で、
図10(a)に示すように、一層又は複数層のウイック21が、上板11及び下板13との間にて熱溶着又は圧着されていることを特徴とする実施形態を採用することができ、しかも超音波振動による熱溶着を採用することもできる。
尚、
図10(a)は、五層のウイック21の場合を示す。
【0085】
このようなウイック21を、上板11及び下板13の間にて熱溶着又は圧着を伴う実施形態の場合には、一層だけでなく、10層程度までのウイック21を形成することが可能となり、大量の熱交換を行うヒートパイプ1を実現することができる。
【0086】
基本構成(
2)、(
3)、(
4)、(
5)のヒートパイプ1においては、
図10(b)に示すように、一層又は複数層のウイック21が、中板12の空洞部の周囲にて枠状を形成している領域120に熱溶着されていることを特徴とする実施形態を採用することができる。
尚、
図10(b)もまた、五層のウイック21の場合を示す。
【0087】
図10(b)の実施形態の場合においても、10層程度までのウイック21を形成することが可能である。
【0088】
複数個のウイック21の間にスペースを形成するために、通常
図7(a)並びに
図8(a)及び
図10(a)並びに後述する
図10(c)に示すように、ウイック21に備えられている枠体には突起210を突設する実施形態を採用する場合が多い。
【0089】
しかしながら、
図10(b)に示す実施形態の場合には、中板12の空洞部の周囲にて枠状を形成している領域120との熱溶着に際し、ウイック21を相互間に所定の間隔を設けた状態とすることによって、前記スペースを確保することができる。
【0090】
基本構成(1)
及び基本構成(6)記載のヒートパイプ1においては、
図10(c)に示すように、二層のウイック21が、上板11及び下板13からそれぞれ複数個の突起210を介して突設されていることを特徴とする実施形態を採用することができる。
【0091】
このような実施形態の場合には、
図10(a)、(b)に示す実施形態に比し、極めて薄型であってコンパクトなヒートパイプ1を実現することができる。
【0092】
以下、実施例に即して説明する。
【実施例】
【0093】
実施例は、基本構成(
6)、(
7)、(
8)、(
9)、(
10)の方法において、例えば
図3(a)、(b)、(c)、(d)及び
図4(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、工程3の加圧シリンダー8において、先端側におけるシリンダー8
が中途部位
に
て冷媒液流出口42側に変形した上で流入貫通孔41に至る形状であることを特徴としている。
【0094】
通常、加圧シリンダー8及び加圧バー9は、支持枠6によって支持されているが、このような支持の設計上、加圧シリンダー8と加圧バー9とは水平方向に沿って所定のスペースを伴う距離を必要とする。
【0095】
然るに、加圧シリンダー8が鉛直方向に即した直線状の場合には、必然的に流入貫通孔41と冷媒液流出口42との間には所定の距離を必要不可欠とする。
【0096】
このような場合、前記のような加圧シリンダー8の形状によって、流入貫通孔41と冷媒液流出口42との距離を短縮することができる。
尚、
図3(a)、(b)、(c)、(d)及び
図4(a)、(b)、(c)、(d)においては、加圧シリンダー8の下側が直角に屈曲した形状の場合を示すが、前記形状については、例えば湾曲形状の場合をも選択することができる。
【0097】
実施例において流入貫通孔41と冷媒液流出口42との距離が小さくなることは、
図3(a)、(b)、(c)、(d)及び
図4(a)、(b)、(c)、(d)と
図5(a)、(b)、(c)、(d)乃至
図8(a)、(b)、(c)、(d)との対比によっても明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
このように、基本構成(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)に基づく本発明は、効率的に正確な所定量による冷媒液の注入及びその後の封止の実現、コンパクトであって、容量の少ない真空チャンバーの採用、更には効率的な熱交換を実現し得る点において画期的であって、利用範囲は広範である。
【符号の説明】
【0099】
1 ヒートパイプ
11 上板
110 上板における枠状形成領域
12 中板
120 中板における枠状形成領域
13 下板
130 下板における枠状形成領域
21 ウイック
210 枠体を備えたウイックにおける突起
22 蒸気流動部
3 金属塊
30 凹部
31 接触通過孔
41 流入貫通孔
42 冷媒液流出口
43 上下方向貫通孔
5 流動孔
51 冷媒液流動溝
6 支持枠
7 真空チャンバー
8 加圧シリンダー
81 開閉弁
9 加圧バー
10 加熱源