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  • 特許-脂肪分解促進剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】脂肪分解促進剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/105 20160101AFI20240130BHJP
   A61K 31/704 20060101ALI20240130BHJP
   A61K 36/82 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20240130BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K31/704
A61K36/82
A61P3/04
A61P3/06
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022173495
(22)【出願日】2022-10-28
【審査請求日】2023-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591119750
【氏名又は名称】岩瀬コスファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100150326
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 知久
(72)【発明者】
【氏名】竹田 竜嗣
(72)【発明者】
【氏名】中村 剛
(72)【発明者】
【氏名】夏目 莉紗子
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-185004(JP,A)
【文献】特開2011-051950(JP,A)
【文献】特開2009-057365(JP,A)
【文献】特開2009-249374(JP,A)
【文献】特開2015-166326(JP,A)
【文献】薬理と治療,2021年,vol.49, no.8,pp.1253-1260
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 33/105
A61K 31/704
A61K 36/82
A61P 3/06
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分がチャカサポニンからなる脂肪分解促進剤であって、
該チャカサポニンが、チャカサポニンI、チャカサポニンII、およびチャカサポニンIIIからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、脂肪分解促進剤。
【請求項2】
前記チャカサポニンが、前記チャカサポニンI、前記チャカサポニンII、および前記チャカサポニンIIIのすべてを含有する、請求項1に記載の脂肪分解促進剤。
【請求項3】
前記チャカサポニンIが、前記チャカサポニンIIの含有量の0.04倍から0.71倍の割合で含有されており、かつ前記チャカサポニンIIIが、該チャカサポニンIIの含有量の0.01倍から0.39倍の割合で含有されている、請求項2に記載の脂肪分解促進剤。
【請求項4】
全体質量を基準として、前記チャカサポニンIの含有量が0.11質量%から0.57質量%であり、前記チャカサポニンIIの含有量が0.51質量%から1.47質量%であり、そして前記チャカサポニンIIIの含有量が0.03質量%から0.31質量%である、請求項2に記載の脂肪分解促進剤。
【請求項5】
前記チャカサポニンIと、前記チャカサポニンIIと、前記チャカサポニンIIIとの総含有量が、全体質量を基準として1.00質量%以上6.0質量%以下である、請求項2に記載の脂肪分解促進剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪分解促進剤に関し、より詳細にはヒトの体内での中性脂肪や体脂肪を効果的に分解し得る脂肪分解促進剤に関する。
【背景技術】
【0002】
健康志向の高まりから、ヒトの体内の中性脂肪や体脂肪(以下、中性脂肪等ということがある)に対して効果的に作用し得る経口素材(例えば、食品素材および経口医薬素材)の開発に注目が集まっている。こうした経口素材は、中性脂肪や体脂肪に対して体内に取り込まない、体内に蓄積させない、または体内で分解する、の各観点から分類することができる。
【0003】
例えば、中性脂肪等の体内に取り込みを防止または低減し得る経口素材としては、例えば、体内の脂肪分解酵素(膵リパーゼ)の活性を阻害するもの、脂肪をミセルにより安定化させるもの、腸のリンパ管に働きかけて脂肪吸収を抑えるもの等のアプローチから様々な素材が提案されている。中性脂肪や体脂肪を体内に取り込みを防止または低減し得る材料としては、具体的には、難消化性デキストリン、イソマルトデキストリン、ターミナリアベリリカ抽出物などが挙げられる。
【0004】
一方、中性脂肪等の体内への蓄積を防止または低減し得る経口素材としては、例えば、肝臓内への働きかけを通じ、生体内での脂肪合成を抑制する等のアプローチからの素材が提案されている。具体的には、エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)のようなω3脂肪酸が挙げられる。
【0005】
中性脂肪等の体内での分解を開始または増強し得る経口素材としては、例えば、脂肪に直接働きかけて脂肪自体を分解する等のアプローチからの素材が提案されている。具体的には、ポリメトキシフラボン、葛の花由来イソフラボン、ローズヒップ由来ティリロサイド、茶カテキンなどが挙げられる、
【0006】
しかし、上記のような経口素材はいずれもこれを摂取した者が十分に満足し得るほどの効果が得られていないのが実情である。特に中性脂肪等の体内での分解を開始または増強し得る経口素材の開発が所望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題の解決を課題とするものであり、その目的とするところは、経口摂取後、中性脂肪、体脂肪など脂肪の分解を効果的に促すことのできる脂肪分解促進剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、チャカサポニンを有効成分として含有する脂肪分解促進剤であって、
該チャカサポニンが、チャカサポニンI、チャカサポニンII、およびチャカサポニンIIIからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である、脂肪分解促進剤である。
【0009】
1つの実施形態では、上記チャカサポニンは、上記チャカサポニンI、上記チャカサポニンII、および上記チャカサポニンIIIのすべてを含有する。
【0010】
さらなる実施形態では、上記チャカサポニンIは、上記チャカサポニンIIの含有量の0.04倍から0.71倍の割合で含有されており、かつ上記チャカサポニンIIIは、該チャカサポニンIIの含有量の0.01倍から0.39倍の割合で含有されている。
【0011】
さらなる実施形態では、全体質量を基準として、上記チャカサポニンIの含有量は0.11質量%から0.57質量%であり、上記チャカサポニンIIの含有量は0.51質量%から1.47質量%であり、そして上記チャカサポニンIIIの含有量は0.03質量%から0.31質量%である。
【0012】
さらなる実施形態では、上記チャカサポニンIと、上記チャカサポニンIIと、上記チャカサポニンIIIとの総含有量が、全体質量を基準として1.00質量%以上6.0質量%以下である。
【0013】
1つの実施形態では、上記チャカサポニンは茶花抽出物の形態で含有されている。
【0014】
さらなる実施形態では、上記茶花抽出物は、茶(Camellia sinensis L.)の熱水抽出物である。
【0015】
本発明はまた、茶花抽出物を有効成分として含有する脂肪分解促進剤である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、経口摂取後、体内の中性脂肪等を効果的に分解することができる。これにより生体内での中性脂肪等の蓄積が抑制できる。さらに、本発明の脂肪分解促進剤は、茶花抽出物のような材料から簡便に製造することができ、かつヒトに対して安全であり、広範な年齢が摂取可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例5で得られた各試験区の脂肪蓄積抑制量の相対値を示すグラフである。
図2】実施例6で得られた各試験区の遊離グリセロール量の相対値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳述する。
【0019】
本発明の脂肪分解促進剤は有効成分としてチャカサポニンを含有する。
【0020】
チャカサポニンは、サポゲニンおよび糖から構成される配糖体(サポニン)である。本発明における、チャカサポニンの例としては、以下の式(I)で表されるチャカサポニンI:
【0021】
【化1】
【0022】
以下の式(II)で表されるチャカサポニンII:
【0023】
【化2】
【0024】
以下の式(III)で表されるチャカサポニンIII:
【0025】
【化3】
【0026】
ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
本発明においては、後述するような天然素材から容易に入手することができ、かつ各構成成分が有する脂肪分解活性の相乗的な向上が期待できるとの理由から、チャカサポニンは、上記チャカサポニンI、チャカサポニンII、およびチャカサポニンIIIのすべてを含有していることが好ましい。
【0028】
1つの実施形態では、チャカサポニンが、上記チャカサポニンI、チャカサポニンII、およびチャカサポニンIIIのすべてを含有している場合、これらの含有量の関係は、例えば本発明の脂肪分解促進剤中に含まれるチャカサポニンIIの含有量を基準にして説明することができる。
【0029】
すなわち、本発明の脂肪分解促進剤中に含まれるチャカサポニンIの含有量は、当該チャカサポニンIIの含有量の好ましくは0.04倍~0.71倍であり、より好ましくは0.14倍~0.56倍である。また、本発明の脂肪分解促進剤中に含まれるチャカサポニンIIIの含有量は、当該チャカサポニンIIの含有量の好ましくは0.01倍~0.39倍であり、より好ましくは0.04倍~0.32倍である。チャカサポニンIIの含有量に対して、チャカサポニンIおよびチャカサポニンIIIの各含有量がそれぞれ独立して上記のような範囲内にあることにより、本発明の脂肪分解促進剤は、生体内での脂肪を一層効果的に分解し、脂肪蓄積量を低下させることができる。
【0030】
あるいは、1つの実施形態では、チャカサポニンが、上記チャカサポニンI、チャカサポニンII、およびチャカサポニンIIIのすべてを含有している場合、チャカサポニンIの含有量は、本発明の脂肪分解素促進剤の全体質量を基準として、好ましくは0.11質量%~0.57質量%であり、より好ましくは0.18質量%~0.51質量%である。一方、チャカサポニンIIの含有量は、本発明の脂肪分解促進剤の全体質量を基準として、好ましくは0.51質量%~1.47質量%であり、より好ましくは0.68質量%~1.29質量%である。さらに、チャカサポニンIIIの含有量は、本発明の脂肪分解促進剤の全体質量を基準として、好ましくは0.03質量%~0.31質量%であり、より好ましくは0.07質量%~0.28質量%である。サポニンとして上記範囲内のチャカサポニンI、チャカサポニンII、およびチャカサポニンIIIを含有していることにより、本発明の脂肪分解促進剤は、生体内での脂肪を一層効果的に分解し、それにより脂肪蓄積量を低下させることができる。
【0031】
あるいは、本発明の脂肪分解促進剤がチャカサポニンとしてチャカサポニンIと、チャカサポニンIIと、チャカサポニンIIIとを含有する場合、当該チャカサポニンの総含有量の下限値は、生体内の中性脂肪の分解促進に特に効果的に作用し得るという理由から、本発明の脂肪分解素促進剤の全体質量を基準として、好ましくは1.00質量%以上であり、より好ましくは1.13質量%以上である。また、チャカサポニンIと、チャカサポニンIIと、チャカサポニンIIIとを含有するチャカサポニンの総含有量の上限値は、摂取する生体への安全性の確保および/または過剰摂取を防止する観点から、本発明の脂肪分解促進剤の全体質量を基準として、好ましくは6.0質量%以下であり、より好ましくは3.6質量%以下である。
【0032】
本発明の脂肪分解促進剤はまた、上記チャカサポニンが茶花抽出物の形態で含有されていてもよい。
【0033】
茶花はチャ(Camellia sinensis L.)の花蕾部から得られたものである。チャ(Camellia sinensis L.)はツバキ科に属する多年生の常緑樹であり、中華人民共和国の福建省、雲南省、四川省からミャンマーの北部にかけての地域を原産地とするものである。茶花には、機能性成分として上記チャカサポニンI、チャカサポニンII、およびチャカサポニンIIIのようなチャカサポニン類に加え、フローラテアサポニン類などのサポニンを含むことが知られており、例えば乾燥体(乾燥花)の形態で市販されている。
【0034】
本発明においては、例えば、このような茶花の乾燥体を水またはエタノール、あるいはそれらの組み合わせでなる溶媒中で抽出することにより、上記チャカサポニン(例えば、チャカサポニンI、チャカサポニンII、およびチャカサポニンIII)を含む茶花抽出物を得ることができる。茶花の抽出に採用される温度は、好ましくは90℃~98℃、より好ましくは93℃~96℃である。本発明においては、チャカサポニンI、チャカサポニンII、およびチャカサポニンIIIを豊富かつ効果的な割合で含有するように抽出できるとの理由から、茶花抽出物は、茶(Camellia sinensis L.)の熱水抽出物であることが好ましい。
【0035】
本発明においては、茶花抽出物を当業者に公知の方法により、チャカサポニンI、チャカサポニンII、およびチャカサポニンIIIにここに分離かつ精製したものをチャカサポニンとして使用することができるが、生産効率の高める点で言えば、茶花抽出物(例えば、チャカサポニンI、チャカサポニンII、およびチャカサポニンIIIに加えて、他の成分も含有し得る抽出物)をそのまま脂肪分解促進剤として使用してもよい。
【0036】
本発明の脂肪分解促進剤はまた、上記チャカサポニン以外に脂肪分解促進効果を有する他の有効成分を含有していてもよい。脂肪分解促進効果を有する他の有効成分の例としては、茶カテキン、ローズヒップ由来ティリロサイド、酢酸、葛の花由来イソフラボン、エノキタケ由来脂肪酸(例えばリノール酸、α-リノレン酸)、フォルスコリン、赤パプリカ由来キサントフィル、ポリメトキシフラボン、クロロゲン酸、リンゴ由来プロシアニジン、ヒドロキシクエン酸、甘草由来グラブリジン、アラニン、アルギニン、フェニルアラニン、プシコース、中鎖脂肪酸(例えば、オクタン酸、デカン酸)、およびHMBカルシウム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。このような脂肪分解促進効果を有する他の有効成分の含有量は特に限定されず、上記サポニンが奏する効果を阻害しない範囲において適切な量が当業者によって選択され得る。
【0037】
本発明の脂肪分解促進剤はまた、上記チャカサポニン以外に、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、および界面活性剤、ならびにそれらの組み合わせを含有していてもよい。
【0038】
賦形剤としては、例えば、マルトデキストリン、乳糖、トレハロース、L-システイン、トレハロース、マルチトール、ソルビトール、およびコーンスターチならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0039】
滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、およびタルク、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0040】
結合剤としては、例えば、結晶セルロース、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、ショ糖、α化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、プルラン、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、およびポリエチレングリコール、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0041】
崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、部分α化デンプン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、およびカルボキシメチルセルロースカリウム、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0042】
界面活性剤としてはレシチンが挙げられる。
【0043】
本発明の脂肪分解促進剤におけるこれらの成分の含有量は特に限定されず、上記チャカサポニンが奏する効果を阻害しない範囲において適切な量が当業者によって選択され得る。
【0044】
本発明の脂肪分解促進剤はまたさらに、当該分野において公知の他の添加剤を含有することもできる。そのような他の添加剤としては、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、着香剤、防腐剤、および香料、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。本発明における、他の添加剤の含有量は特に限定されず、上記チャカサポニンが奏する効果を阻害しない範囲において適切な量が当業者によって選択され得る。
【0045】
本発明の脂肪分解促進剤は、チャカサポニンと上記各種成分とを組み合わせ、例えば粉末剤、顆粒剤、散剤、丸剤、または素錠の剤形に加工され得る。あるいは、ハードカプセルまたはソフトカプセルに収容したカプセル剤の剤形に加工されてもよい。
【0046】
本発明の脂肪分解促進剤の用量は、有効成分であるチャカサポニンの合計量(例えば、チャカサポニンIと、チャカサポニンIIと、チャカサポニンIIIとの合計量)として、例えば、1日当たり1.00mg~6.00mg、好ましくは1.13mg~3.60mgである。生体(例えばヒト)が一日当たり上記範囲内の用量で本発明の脂肪分解促進剤を摂取することにより、当該生体内の脂肪分解を安全かつ効率的に行うことができる。
【0047】
本発明の脂肪分解促進剤は、例えば、ヒト、愛玩動物、家畜、家禽、養殖魚などの生体が経口摂取することにより各生体の体内に送達される。
【実施例
【0048】
次に、実施例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0049】
(実施例1:茶花抽出物の作製)
中華人民共和国福建省産のチャ(Camellia sinensis L.)の乾燥花(1500kg)を粉砕した後、95℃の熱水で2時間抽出し、得られた抽出液を得た。次いで、この抽出液をスプレードライヤーで乾燥することにより、純エキス375kgを得た。この純エキスに、安定化のために賦形剤としてマルトデキストリンを添加することにより茶花抽出物750kgを得た。
【0050】
得られた茶花抽出物について、高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製SPD-20A)を用い、以下の測定条件で分析を行った。
測定条件:
(カラム)COSMCIL Code No.38020-41,サイズ 4.6×250 mm、Type 5C18-MS-II Waters(ナカライテスク株式会社製)
(検出器)紫外吸光光度計(測定波長:230nm)
(カラム温度)40℃付近の一定温度
(移動相)メタノール/0.01mol/Lリン酸塩緩衝液(pH2.3)の65:35混合液
(流量)1.0mL/分
(分析時間)60分
【0051】
分析の結果、上記で得られた茶花抽出物には、当該抽出物の全体質量を基準としてチャカサポニンIが0.34質量%、チャカサポニンIIが0.99質量%、チャカサポニンIIIが0.17質量%(サポニン全体としては1.50質量%)含有されていたことを確認した。すなわち、得られた茶花抽出物に含まれるチャカサポニンIの含有量は、当該チャカサポニンIIの含有量(0.99質量%)の0.35倍であり、チャカサポニンIIIの含有量は、当該チャカサポニンIIの含有量の0.18倍であった。
【0052】
(実施例2~4:チャサポニンI、IIおよびIIIの精製)
実施例1で得られた茶花抽出物3.0gをイオン交換水に添加して20mg/mLの濃度に調製した。その後、容量比30/70/1で混合された水とメタノールと酢酸との混合溶液150mLを添加して、10分間超音波処理を行い、その後PVDFフィルタ(0.2μm)を用いて不要物をろ過することにより原料溶液を得た。
【0053】
次いで、原料溶液120mLを以下条件の逆相クロマトグラフィーによる分離および精製を行った。
カラム:Triart PreP C18-S(10μm,12nm)
250×50mmI.D.(株式会社ワイエムシィ製)
ロード:40mL
ラン :3回
【0054】
これにより、97.83mgのチャカサポニンI(実施例2)、215.66mgのチャカサポニンII(実施例3)、および32.21mgのチャカサポニンIII(実施例4)をそれぞれ精製品として得た。
【0055】
(実施例5:3T3-L1細胞による脂肪蓄積抑制の確認試験)
マウス由来3T3-L1前駆脂肪細胞(American Type Culture Collection)の培養および分化誘導については既存の方法に従った。3T3-L1細胞を24wellプレートにて10%牛胎児血清(FBS)および抗生物質を含むDMEM培地(富士フイルム和光純薬株式会社)にて37℃にて、5%のCO条件下で増殖させ、コンフルエントに達した時点で培地を分化誘導培地(10%FBS、0.5μMデキサメタン、10μg/mlインスリン、0.5mMの3-イソブチル-1メチルキサンチン)へ交換し、2日間分化誘導を行った。脂肪細胞分化誘導培地を脂肪細胞分化培地に交換し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解した実施例1の茶花抽出物および実施例2~4チャカサポニンI~IIIをそれぞれ所定の濃度(実施例1の茶花抽出物は5ppm、50ppmおよび250ppm。実施例2~4のチャカサポニンI~IIIは5ppmおよび20ppm)にて添加し、さらに2日間培養した。
【0056】
その後、脂肪細胞分化培地を継代培地(DMEM、10%FBS、10μg/mlインスリン)に交換し、その後7日間培養した。脂肪蓄積抑制量に対する影響をオイルレッドO(富士フイルム和光純薬株式会社製)にて脂肪を染色し、セルスクレーパーにて細胞を回収した後、音波破砕によって細胞を破砕し、520nmの吸光度を測定した。また、コントロールとして、茶花抽出物およびチャカサポニンI~IIIの無添加区(PBS)を用い、上記と同様にして吸光度を測定した。結果を図1および表1に示す。
【0057】
なお、図1では、各試験区の脂肪蓄積抑制量についてコントロール(無添加)を100%とした相対値で比較した。また、表1中の検定結果は、コントールと比較した検定(Studentのt検定)の結果を表す。
【0058】
【表1】
【0059】
図1および表1から明らかなように、実施例1で得られた茶花抽出物、実施例2で得られたチャカサポニンI、実施例2で得られたチャカサポニンII、および実施例3で得られたチャカサポニンIIIはいずれも、濃度依存的に脂肪蓄積を抑制しており、いずれも脂肪分解促進剤として有効に機能し得ることがわかる。
【0060】
(実施例6:3T3-L1細胞による脂肪分解促進の確認試験)
マウス由来3T3-L1前駆脂肪細胞(American Type Culture Collection)の培養および分化誘導は既存の方法に従った。10%牛胎児血清(FBS)および抗生物質を含むDMEM培地(富士フイルム和光純薬株式会社製)にて37℃にて、5%のCO条件下で増殖させ、コンフルエントに達した時点で培地を分化誘導培地(10%FBS、0.5μMデキサメタン、10μg/mlインスリン、0.5mMの3-イソブチル-1メチルキサンチン)へ交換し、2日間分化誘導を行った。脂肪細胞分化誘導培地を脂肪細胞分化培地へ交換し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解した実施例1の茶花抽出物および実施例2~4チャカサポニンI~IIIをそれぞれ所定の濃度(実施例1の茶花抽出物は5ppm、50ppmおよび250ppm。実施例2~4のチャカサポニンI~IIIは5ppmおよび20ppm)にて添加し、さらに2日間(48時間)培養した。次いで、培養後の培地を回収し、培地中の遊離グリセロール量をF-キット(R-Biopharm社)にて測定した。結果を図2および表2に示す。
【0061】
なお、図2では、各試験区の遊離グリセロール量についてコントロール(無添加)を100%とした相対値で比較した。また、表2中の検定結果は、コントールと比較した検定(Studentのt検定)の結果を表す。
【0062】
【表2】
【0063】
図1および表1から明らかなように、実施例1で得られた茶花抽出物、実施例2で得られたチャカサポニンI、実施例2で得られたチャカサポニンII、および実施例3で得られたチャカサポニンIIIはいずれも、濃度依存的にグリセロールを放出しており、いずれも脂肪分解促進剤として有効に機能し得ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明によれば、例えば、食品分野、医薬分野等の技術分野において有用である。
【要約】
【課題】 経口摂取後、中性脂肪、体脂肪など脂肪の分解を効果的に促すことのできる脂肪分解促進剤を提供すること。
【解決手段】 本発明の脂肪分解促進剤は、チャカサポニンを有効成分として含有する。ここで、サポニンは、チャカサポニンI、チャカサポニンII、およびチャカサポニンIIIからなる群から選択される少なくとも1種の化合物である。本発明の脂肪分解促進剤は、一般食品、サプリメント、保健機能食品、医薬品などの経口組成物の材料として有用である。
【選択図】 なし
図1
図2