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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】コンクリート投入機
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/04 20060101AFI20240130BHJP
   B66C 3/14 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
E04G21/04
B66C3/14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022196735
(22)【出願日】2022-12-09
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】501188339
【氏名又は名称】株式会社西原鉄工所
(74)【代理人】
【識別番号】100181571
【弁理士】
【氏名又は名称】栗本 博樹
(72)【発明者】
【氏名】西原 敬治郎
(72)【発明者】
【氏名】今林 良二
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3010817(JP,U)
【文献】特開平08-042145(JP,A)
【文献】特開2018-095453(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/00 - 21/10
B66C 3/14
B28B 13/00 - 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生コンクリート収容空間であるバケット部と、該バケット部に連設され生コンクリートを吐出する吐出部と、該吐出部からの吐出を制御するために回動するゲート体を備えたゲート部と、を備えたコンクリート投入機であって、
前記吐出部は、前記ゲート体の内面に着接する摺動接辺部と、前記バケット部と連続する上方連続部と、を備えゲート体回動の半径方向への吐出物の漏れを防ぐ摺動接辺板を備え、
前記ゲート部は、
前記ゲート体の回動の回転中心を有する固定軸と、
該固定軸の軸受けと、
前記固定軸を中心とする円弧が該固定軸方向に連続する回転面であるゲート体円弧内面部と、該ゲート体円弧内面部の下端辺であるゲート体下辺部と、を備えた前記ゲート体と、
該ゲート体と前記軸受けとを連結する連結アームと、
回動する前記ゲート体を係止し、前記ゲート体下辺部が着接することによって前記ゲートを閉鎖するゲート閉鎖体と、
を備え、
前記固定軸の中心は、前記ゲート体下辺部が前記ゲート閉鎖体に着接する線上で、前記円弧を形成する平面に直角となる鉛直面を挟んで前記ゲート体円弧内面部のある空間と対峙する空間に位置するコンクリート投入機。
【請求項2】
前記吐出部に前記ゲート体の固定軸方向への吐出物の漏れを防ぐ側面板を備え、
前記摺動接辺板が該側面板と連続する側方連続部を備え、
前記側面板は、
摺動する前記ゲート体円弧内面部に着接する側面板下辺部と、
前記バケット部と連続する側面板上方連続部と、
前記摺動接辺板と連続する側面板接辺板方連続部と、を備える請求項1のコンクリート投入機。
【請求項3】
前記ゲートの開放時と閉鎖時の間で生コンクリートの吐出量を制御できる吐出量制御機構を備えた請求項1若しくは請求項2のコンクリート投入機。
【請求項4】
前記固定軸が水平である請求項1若しくは請求項2のコンクリート投入機。
【請求項5】
一方の前記ゲート体である第1ゲート体と、他方の前記ゲート体である第2ゲート体とを備え、それぞれが相互の前記ゲート閉鎖体となり、前記第1ゲート体及び前記第2ゲート体の前記ゲート体下辺部の着接面に対して、略面対称の形状及び動作機構を備えた請求項1若しくは請求項2のコンクリート投入機。
【請求項6】
前記ゲート体の開閉するために、動力源を有するピストン型アクチュエータであるシリンダの直線運動を前記ゲート体の回動運動に変換する装置を備えた請求項1若しくは請求項2のコンクリート投入機。
【請求項7】
前記ゲートの開放時と閉鎖時の間で生コンクリートの吐出量を制御できる吐出量制御機構を備えた請求項6のコンクリート投入機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート構造物築造に際し、高所等におけるコンクリート打設に用いられるコンクリート投入機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、コンクリート投入機とは、コンクリート打設において、型枠に投入するレディーミクストコンクリート(以下、生コンクリートという。)を収容・運搬・投入する機器である。建設現場において、コンクリートミキサー車から直接投入できない場合、例えば高所における打設、コンクリートポンプ車では打設できない品質の生コンクリートの打設や配管等ができない箇所において、ホッパーやバケットとも呼ばれるコンクリート投入機が用いられる。また、コンクリート2次製品の製造工場では、同様なコンクリート投入のための機器が用いられる。
【0003】
従来、特に建設現場においては、ホッパーやバケットによるコンクリート投入には、機器の下部に設けられたゲートを開放する作業を伴い、このゲートの開閉を人力で行うなど安全上の大きな課題があった。この課題に対して、開閉に機械的動力を用い、更に遠隔操作を利用する技術が種々提案されている。
【0004】
バケット本体に設置されたシリンダのピストンロッドによって、電気エネルギーを利用してゲートを開閉でき、遠隔操作するための制御装置を備えた発明が提案されている(特開平7-157278)。
コンクリートバケットのゲートの開閉に油圧機構を用い、シリンダや必要な制御機器等を一体型のユニットとして、バッテリーを付属させたコンクリートバケットの提案がある(特開2000-302372)。更に、上記の発明に、軽量化、耐久性に改良を加えた発明が提案されている(特開2018-95453)。
これらの発明によって、コンクリート投入用ゲートの単純な開閉に関しては、人力による作業という課題は解消されたが、生コンクリートの投入について、閉鎖時と開放時の設定のみで、開放後に閉鎖し、バケットに生コンクリートを残し、投入機を移動して再投入するなどの調整やゲートの開き幅の設定や制御によるコンクリート投入量、投入速度の調整に関しては、未解決である。
【0005】
開閉ゲートの操作に関しては、開閉ゲートを可撓体にして、水平方向に押しつぶして閉塞する構造とし、シリンダのロッドの水平方向運動によって、ゲートを開閉する装置に、シリンダのストロークや開閉速度を制御しようとした発明がある(特開2001-63794)が、可撓体間へ骨材を挟み込み易く、完全な閉鎖や骨材等が分離した状態のコンクリート(以下、ノロという。)の漏れの防止に課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-157278号公報
【文献】特開2000-302372号公報
【文献】特開2018-95453号公報
【文献】特開2001-63794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、コンクリート投入機による生コンクリートの投入に関して、生コンクリートやノロの漏れを最小限にするとともに、正確な投入箇所への投入を可能にし、従来のバケット単位の生コンクリートの投入に対して、投入途中でのゲートの開閉が容易にでき、箇所ごとの投入量を調整し、単位時間当たりの投入量を調整できるコンクリート投入機を提案することである。更に投入量をきめ細かく設定するための遠隔操作に不可欠なゲート構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
生コンクリート収容空間であるバケット部と、該バケット部に連設され生コンクリートを吐出する吐出部と、該吐出部からの吐出を制御するために回動するゲート体を備えたゲート部と、を備えたコンクリート投入機であって、
前記吐出部は、前記ゲート体の内面に着接する摺動接辺部と、前記バケット部と連続する上方連続部と、を備えゲート体回動の半径方向への吐出物の漏れを防ぐ摺動接辺板を備え、
前記ゲート部は、
前記ゲート体の回動の回転中心を有する固定軸と、
該固定軸を中心とする円弧が該固定軸方向に連続する回転面であるゲート体円弧内面部と、
前記ゲート体の回動を係止し、前記ゲート体を閉鎖するゲート閉鎖体と、
該ゲート閉鎖体に着接して吐出物の吐出方向への漏れを防ぐゲート体下辺部と、
前記固定軸の軸受けと、
該軸受けと前記ゲート体を連結する連結アームと、
を備え、
前記固定軸の中心は、前記ゲート閉鎖体と前記ゲート体下辺部が着接しゲート体の回転の半径が最長となる点における該回転の回転面に直角となる鉛直面を挟んで前記ゲート体円弧内面部のある空間と対峙する空間に位置するコンクリート投入機。
【0009】
前記吐出部に前記ゲート体の固定軸方向への吐出物の漏れを防ぐ側面板を備え、
前記摺動接辺板が該側面板と連続する側方連続部を備え、
前記側面板は、
摺動する前記ゲート体円弧内面部に着接する側面板下辺部と、
前記バケット部と連続する側面板上方連続部と、
前記摺動接辺板と連続する側面板接辺板方連続部と、を備えるコンクリート投入機。
【発明の効果】
【0010】
軸回転して開閉するゲートを備えたコンクリート投入機の従来の形状、構造を図9に示す。図9(0)は、直方体の内空間のバケット本体を有するコンクリート投入機を示す正面図である。図に示すようにバケット本体に対して、下方に向けて絞り込まれた吐出部がある。正面側ゲートが本図の正面から背面方向への回動により、背面側ゲートが背面方向から正面側への回動により、2体のゲートが閉鎖し、逆の回動によって開放する構造の開閉ゲートとなっている。これらの2体のゲートは、正面側と背面側の境界の鉛直面に対して面対称になる構造であり、同期された構造によって面対称の回動になっている。
【0011】
図9(0)のコンクリート投入機について、図9(1)から(3)は、ゲート構造に着目し、開放した状態の側面図を示す。それぞれの図に表示する実線は、ゲート解放時を示すものであり、破線はゲート閉鎖時を示すものである。また、点線は図におけるゲートの裏側の躯体の構造を示すものである。本図において躯体の最下端部に下垂しているのが、ゲートの円運動に伴う運動方向への吐出物の漏れ止めであり、後述する本発明における摺動接辺板である。
図9(1)は、同形の平歯車で同期された2本の固定軸を有するゲートからなる。コンクリート投入部である下端の中央部には、両ゲート端部がゲート最下部より少し高い位置で着接した閉鎖構造になっている。図9(2)は、両ゲートの固定軸が同じであり、同一周期で反対回転を得ることができる内歯車によって、前記コンクリート投入部が、最下端で中央部になるゲート構造になっている。最下端部は水平面を形成している。図9(3-1)は、ゲート下端部内面に側面視で直線区間を設け、回動する円弧部と連続する構造になっている。図9(3)のショベル型ゲートの改良でゲート内面の円運動に対して、吐出物の漏れを防止するゲート構造にするため躯体と着接する区間を円弧形状にしたものである。このようにすることで、ゲート下端部は閉鎖時においてコンクリート投入方向に対して鋭角になり、コンクリートの荷重による力にゲート下端面の開放時の運動の方向と重なりが生じ、ゲート開放に係るトルクは小さくなっている。
【0012】
しかしながら、本発明の課題は、寧ろ、ゲート開放によるコンクリート投入の後、コンクリート投入中に閉鎖作業を行う際の負担軽減を図るもので、以下の数1及び数2によって、従来の課題と本発明の効果を説明する。
【0013】
【数1】
【0014】
数1は、流体の流動方向の変化を生じさせる障害物に作用する力を生コンクリート投入時にゲートを閉鎖する作業に伴い必要な力の大きさを示す概念図として表すもので、単位時間の運動量変化を力として、表現するものである。鉛直下向きのVで示す流れの初期速度がコンクリート投入時を表すものであり、Vがゲート閉鎖に伴う流動の変化を示すもので、数1に示すように交差角度が大きい程大きな力を必要とする。
図9(1)及び(2)に示すゲートは、ゲート開放時にゲート下面に作用する生コンクリートの荷重を受けた状態でゲートを開く必要があり大きな力を生じる。そのことのみならず、更に閉塞時には、上記数1に示すVが鉛直下向きに対して、Vは、水平方向になり、θは90度若しくはそれ以上の角度となり、極めて大きな力が必要であり、 従来型のコンクリート投入機が生コン投入後に閉鎖する作業を困難にしている。そのために、上記のゲートは、バケットの生コンクリートの運搬と運搬した生コンクリートを全て投入する作業に利用されている。
【0015】
【数2】
【0016】
数2は、図9(3-1)のゲート構造に係る力学的検討を行ったものである。数2(2)に示すように、本ゲートの下端部は、生コンクリート投入方向に鋭角になるようにゲートに円弧部と直線部を連続させる加工のゲート構造であり、比較のために略同一の長さを有する円弧形のゲートを数2(1)に示している。数2は、回転運動に係る基本式であり、wの角速度の時間変化即ち角加速度dw/dtと慣性モーメントの積がトルクになり、本ケースでは慣性モーメントは回転中心からの2次モーメントであり、AとBを比較した場合、数1に記載する様にI<Iであり、結果として同じ角加速度の場合、F<Fであり、大きな力が必要になる。Bのゲートについては、図9(3-1)一点鎖線矢印に示すように直線部先端部は、水平方向の若しくは上向きの運動であり、数1に示す生コンクリートの流動に対して、極めて大きな力を要することになる。また、本検討は形状に係るものであるが、構造的にもBには、円弧部と直線部の連結部には、直線部に負荷される外力に対して、部材内部の力である応力が集中する不利がある。
【0017】
数1及び数2の検討に係る従来技術の弱点を改善できるのが、本発明のゲート体であり、ゲート体下端部において、生コンクリート流動方向に対して鋭角を確保できるとともに、回転運動によって、開閉できる構造になっている。
図9(1)、(2)及び(3-1)のゲートの底面は、円管形状の一部を有する内底面となっているが、ゲート側面板は回転腕を兼ね、ゲート側面方向の生コンクリートの漏出の防止に関しては、躯体側面板とゲート側面板によって、生コンクリートの吐出を制御している。その際、ゲート側面板内面は、常に躯体側面部と接している状態でなければ、接面に生コンクリートやノロが滲入することを防げず、付着したコンクリートが硬化しないようなメンテナンスが不可欠である。本発明の吐出部の側面板は、その点における吐出物の漏れに関しても改善された構造になっている。
また、図9(1)の例ではゲート開放の開始部が最下端になっていない。少量のコンクリート投入の際にはゲート下端部に生コンクリート残滓が生じ、ゲート内面付近の生コンクリートが円滑に流動しないなどの課題に対して、本発明のコンクリート投入機では、ゲート内面の円弧は、ゲート最下端部で鉛直方向に鋭角になるよう、回転軸の位置が最先端鉛直線を跨ぐ位置にあるため、ゲート内面は必ず下方へ向いている。また、側面板を設けたため、ゲート側面からのコンクリートの漏れもなく、コンクリートの投入量の段階的制御が極めて容易になった。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、ゲート体が2体の本発明のコンクリート投入機の概要説明図である。(実施例1)
図2図2は、本発明のコンクリート投入機の吐出部の説明図である。(実施例1)
図3図3は、ゲート体と吐出部の関係説明図である。(実施例1)
図4図4は、ゲート体閉鎖時の詳細説明図である。(実施例1)
図5図5は、ゲート体開放時の詳細説明図である。(実施例1)
図6図6は、ゲート体開閉の操作に関する説明図である。(実施例1)
図7図7は、ゲート体が1体のコンクリート投入機の説明図である。(実施例2)
図8図8は、摺動接辺板のみからなる吐出部のコンクリート投入機の説明図である。(実施例3)
図9図9は、従来のコンクリート投入機のゲート構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
コンクリート投入機には、一般にコンクリートを収容するバケット部とコンクリートを吐出する吐出部と開閉によって吐出を制御するゲート部がある。本発明においては、上部から生コンクリートを投入し、一時的に該生コンクリートを収容する上部開放のバケット部は、従来と同じであり、釣り構造や点検用足場等に関しては、省略する。ゲート部のゲート体の開閉動作の動力源や動作媒体等に関する説明や付属設備に関しては、動力源を有するピストン型のアクチュエータであるシリンダを除いて省略する。ゲート体は固定軸周りの正逆の回転運動である回動運動で開閉する。ゲート体を2体設けるコンクリート投入機の場合、正面図に示す一方のゲート体である第1ゲート体を正面側とし、他方のゲート体である第2ゲート体(背面側ゲート体ともいう。)は、背面側に位置する。ゲート体に対する説明は、基本的に第2ゲート体との関係を説明する必要がない場合、第1ゲート体の第1を省略する。本実施例に示すのは、ゲート体1体にその中央部に1基のシリンダを配している。直接的にゲート体の開閉を担うシリンダに関しては、シリンダチューブとピストンロッドを模式的に現すのみとする。本明細書に関しては、ピストンロッドとプランジャーは、同義のものとして取り扱う。
【0020】
生コンクリートを一時的に収容し、ゲート体を回動させ、吐出を制御するコンクリート投入機において、生コンクリートやノロの漏れを防ぐことは重要である。このような吐出物の漏れに関して、半径方向の漏れとは、固定軸に対して略垂直方向であり、正面側方向若しくは背面側方向への漏れである。固定軸方向の漏れとは、側面方向への漏れであり、吐出方向の漏れとは、ゲート閉鎖時の下方への漏れをいう。
上記漏れを防止するため、部材間の密着性を高める必要がある。ゲート体と吐出部に関しては、ゲート体の回動に対して、吐出部の正面に設けられ、ゲート体円弧内面部が板厚の方向に摺動するのが摺動接辺板で、接触箇所に可撓性部材による処理がなされる場合がある。側面板については、ゲート体円弧内面部が側面板の円弧状の側面板下辺部を帯状に摺動するため、該円弧内面部に凹状の溝を設けることができる。正面側第1ゲート体と背面側第2ゲート体の間については、着接するゲート体下辺部にゴム等の可撓性部材を張付する処理ができる。本明細書において、このような付属設備に関する記載は、省略する。
【0021】
実施例1は、正面側第1ゲート体と背面側第2ゲート体の2体のゲート体を備え、2体のゲート体が同期し、回動するコンクリート投入機であり、ゲート体円弧内面部は、短手方向に円弧を形成し、長手方向に同一形状であり、円筒形状の内面を長手方向に平行な2本の線で切断した形状となっている。実施例2は、ゲート体が1体で、背面側に板状のゲート閉鎖体とゲート閉鎖体のみの役割を担う停止した状態の別のゲート体を備えたコンクリート投入機である。実施例3では、側面板を必要としないゲート体構造の例を示す。実施例3においても、正面側第1ゲート体と背面側第2ゲート体の2体のゲート体を備え、異なる固定軸を有する。実施例3では、それぞれのゲート体円弧内面部は、固定軸の中心である回転中心に対して円弧の長さが異なり、且つ回転半径が異なる。実施例1は、ゲート体円弧内面部の円弧の長さ及び回転半径は、同じである。従って、請求項1に記載する「ゲート体の回転の半径が最長となる点」に関しては、実施例1の場合では、ゲート体下辺部の何れの位置でもよいが、実施例3の場合は、中央部の回転半径が最長で且つ円弧内面部の円弧長さが最長の位置となる。
図による表示に関しては、正面図と背面図と同形状のものは、一方を省略し、右側面図及び左側面図は同形状の場合、側面図と表記する。
【実施例1】
【0022】
図1に、実施例として示すのは、2体のゲート体31で開閉するコンクリート投入機1である。ゲート体は、閉鎖した状態を示している。図1(1)は、正面図で、バケット部11の上方が解放した矩形の直方体状部12で、正面及び側面を鋼板によって形成され、それぞれは下方に向けて絞り込まれた構造になっている。絞り込まれた逆四角錐台状部13の下端部に連設されているのが吐出部2である。該吐出部の下方に取り付けられているのが、ゲート部3である。ゲート部のゲート体31は、正面図では略矩形であり、中央上方でバケット部に取り付けられたシリンダ4のピストンロッド42先端に連結されている。図1(2)は、側面図であり、2体のゲート体がゲート体下辺部33で着接して閉じられる状態を表している。ゲート体の形状に関しては、円筒の一部を長手方向に切断した形状である。ゲート体は、正面図及び側面図に示すように長手方向両端部に設けられた連結アーム37に支持され水平に設置されている。図1(2)の側面図より、連結アームが固定軸34の軸受け36と連結され、該軸受けには軸受け歯車38が設置され、正面側(第1ゲート体)及び背面側(第2ゲート体)の2体のゲート体を連結している左右それぞれの2箇所の連結アームの動きが歯車によって同期されていることが理解できる。また、該2箇所の連結アームが交差し、それぞれの固定軸は、2箇所の前記ゲート体の着接面であるゲート体下辺部鉛直面(図1(2)におけるc-cの一点鎖線)に対して、対峙する位置にある。そのため、最下端部で、ゲート体円弧内面部35は、鉛直上向きに対して鋭角に着接している。
【0023】
図2にゲート部を除く躯体構造を示す。図2(1)は、正面図で、上方からバケット部11の直方体状部12、逆四角錐台状部13に続くのが摺動接辺板21であり、該摺動接辺板の左右両端部に下垂しているのが側面板下辺部27である。摺動接辺板上部の上方連続部23で上方のバケット部と連設され、左右に側方連続部24があり、側面板25と連続している。摺動接辺部22は、水平方向に形成されている。摺動接辺部では、ゲート体内面のゲート体円弧内面部35が板厚方向に摺動し、該内面部が摺動接辺板の下端である摺動接辺部と接することによって、吐出物の正面方向への漏れを防ぐことができる。
図2(2)は、側面図で、側面板25が示されている。側面板上部の側面板上方連続部26で上方のバケット部と連設されている。左右に側面板接辺板方連続部28があり、一方側は、正面側の摺動接辺板と連続し、他方側は、背面側の摺動接辺板と連続している。側面板下辺部は、2つの円弧が下端部で連続した形状を形成している。
図2(3)は、平面図であり、バケット部の直方体及び谷折りの逆四角錐台形状の内空間を示し、吐出部が連設されている。図2(4)は、底面図であり、吐出部摺動接辺板及び側面板の板厚が表示され、バケット部の逆四角錐台形状が山折りとして示されている。
【0024】
図3に示す吐出部2及びゲート体31関係斜視図によって、ゲート体の回動時の吐出部における摺動状況を示す。図3は、図1(2)のc-cの鉛直面で切断したバケット部の一部及び吐出部と一方のゲート体を表すものである。図3(1)は、ゲート開放時の状況で、図3(2)は、ゲート閉鎖時の状況であり、ゲート体の次の動作方向を矢印で示している。
図3(1)では、摺動接辺板21の摺動接辺部22がゲート体円弧内面部35に着接し、図3(2)の状態となってゲート体円弧内面部が摺動接辺板の板厚方向に摺動していることが理解できる。側面板25に関しては、図3(1)で側面板下辺部27がゲート体内面の左右両端部付近でゲート体円弧内面部に着接し始め、図3(2)に至る状況では、側面板下辺部全体の下面に着接し、摺動していることが理解できる。この摺動は、側面板下辺方向であり、側面板下辺部は、円弧形状になって、吐出物の側面方向への漏れを防ぐことができる。吐出部については、摺動接辺板及び側面板がそれぞれの下端辺がゲート体内面との着接によって、吐出物の漏れを防ぐが、回動するゲート体のゲート体円弧内面部のそれぞれの下端辺に対する摺動方向に違いは、図3(1)、(2)に示すとおりである。
【0025】
図4及び図5にゲート部3の拡大図を示す。図4は、ゲート体31の閉鎖時を示すものであり、図5は、ゲート体の開放時を示すものである。図4(1)は、側面図であり、図4(2)は、正面図である。側面図中央の一点鎖線c-cは、位置を示す補助線として中央鉛直面を示している。正面図に関しては、図上で示す補助線である中央の一点鎖線の鉛直線に対して左右対称であるので、右側のみ表示している。
図4(1)の側面図では、シリンダ4のピストンロッド42はストロークの略最大長さで、ゲート体を押し込み、ゲート閉鎖体32である相互のゲート体によって係止し、中央鉛直面(c-c線)で鉛直上向きに対して鋭角に着接している。本例において、それぞれのゲート体が互いのゲート閉鎖体32となっており、中央鉛直面(c-c線)に対して略面対称の構造である。2体のゲート体を支える連結アーム37は、側面視で交差しているが、図4(2)の正面図に示すように、ゲート体の回動に支障無いように段差を設けて、固定軸34の軸受け36に連結されている。それぞれの軸受けは、鉛直面の反対側にある固定軸を受け、軸受け歯車38によって同期されており、中央鉛直面(c-c線)に対して面対称の動作機構になっている。
シリンダチューブ41は、バケット部に取り付けられた2箇所のブラケット43に挟み込まれ軸支されている。ピストンロッド先端部とゲート体との結合に関してもヒンジ結合である。このような構造によって、シリンダの直線運動をゲート体の回動運動に変換している。
【0026】
図5は、ゲート部開放時のゲート体31及び吐出部2を示している。シリンダ4のピストンロッド42がシリンダチューブ41外で最短となって、ゲート体を引き上げた状態を示しており、ゲート体下辺部33は、側面板下辺部27の上部に及んでおり、図5(2)に示すように左右の側面板間が解放された状態になっている。
図4において、ゲート体下辺部33の最下端部で鉛直上向き(c-c線の上向き方向)に対して鋭角に前記ゲート体を閉鎖するゲート閉鎖体を備え、側面視で、該ゲート閉鎖体と前記ゲート体下辺との着接位置の鉛直面(側面図上ではc-c線)を挟んで対峙する空間に位置する固定軸を有する本発明のゲート体に関して、固定軸と鉛直面との交差角度の数値的評価を数3において行う。
【0027】
【数3】
【0028】
数3において、ゲート体の回転半径であるrに対して、一点鎖線で表示する鉛直面から回転中心の距離aに対して、a/rは、ゲート体円弧内面部の下端における鉛直面との交角θの程度を示すパラメータである。a/r=0とは、ゲート2体の場合、前記「0014」の図9(2)の状態である。a/rが大きいほど、交角θは小さくなる。数1の検討のみであると、交角は小さいほど閉鎖時の抵抗は小さいが、シリンダからゲート体下辺部へ加わる力の方向(前記交差角度方向)と閉鎖時のゲート閉鎖体とゲート体下辺部の密着に必要な力の方向(鉛直面に対して直角方向)が異なることのデメリットがある。また、2体のゲート体によって開閉するゲート構造の場合、2体のゲート体を支持する連結アーム部同士の接触を回避する立体的な交差構造の困難性が高くなる。コンクリート投入機の投入量や調整機能等に応じた適切な固定軸位置を求める必要がある。
【0029】
図6に、2体のゲート体によるゲートの開放の程度を示す。図に示す左右のゲート体下辺部33の最下点の位置を示す一点鎖線の間からコンクリートは吐出し、投入され、その間隔の大小が単位時間当たりの投入量に直結する。図6(1)が閉鎖した状態であり、図6(3)が全開状態であり、図6(2)が中間段階の一例を示すものである。それぞれのゲート体の状態を制御するのは、図に示すピストンロッド42のシリンダチューブ外の長さであり、動力源に係るシリンダの作動によって制御することができる。特に、(1)、(2)、(3)の間で更に何段階かにでき、それによって何段かに分けて開放し、コンクリートを投入した後に閉鎖するなどの操作が容易にできるコンクリート投入機が本発明によって提案されたゲート構造である。
【実施例2】
【0030】
図7は、ゲート体31が1体の実施例を示す。図7(1)及び(2)は右側面図で、右側が正面方向である。図7(1)は、正面側ゲート体は、開放した状態で、ゲート閉鎖体32は、背面側にバケット部の逆四角錐台状部から連続した構造で鋼板の単一平面で形成されている。図7(1)の破線は、ゲート閉鎖体の鋼板の厚みを表すものであり、側面板25に連続している。側面板は、前記ゲート閉鎖体と着接する部分以外は、図1と同様であり、上部は側面板上方連続部26であり、正面側に側面板接辺板方連続部28があり、下端は、円弧形状の側面板下辺部27がある。図に示されていないが、側面板は、正面側左右に配置され、該側面板間からコンクリートが吐出されるのは、前記と同様である。従って、側面板下辺部には、図に示すようにゲート体円弧内面部が摺動する。ゲート閉鎖体がゲート体を係止させる位置でゲート体円弧内面部は鉛直面上方に対して、鋭角に交差されている。図7(2)について、ゲート閉鎖体は背面に設置されたゲート体が最下部で、不動状態になっているケースである。背面側の連結アーム部は、軸受け歯車38は軸受け36から外された状態になっている。
【実施例3】
【0031】
図8は、側面板のない摺動接辺板のみからなるゲート構造の実施例である。ゲート体円弧内面部35が板厚方向に摺動するのが摺動接辺板21であり、辺方向に摺動するのが側面板である。図8(1)、(2)は、斜視図であるが、正面側を線による矢印で表示している。
図8(1)は、円筒部14と該円筒部からロート状部15に至るバケット部を有するコンクリート投入機である。吐出部は、中心点の異なる二つの円を連結させた筒形の構造であるが、ほぼ円筒に近い形状であり、ゲート体31は、球体の一部を切り取った形状である。図8(1)は、右手方向が正面側で、本図に示されている2箇所の固定軸は、正面側ゲート体と背面側ゲート体の2体のゲート体の一方側から視認できるゲート固定軸である。固定軸の軸受けに結合する連結アーム部は、回動に支障がない交差状態であり、正面側及び背面側のゲート体が着接する最下端において、鉛直面との交差角度が鋭角になっている。それぞれのゲート体の内面は、異なった中心点を有する同じ半径の球体の中心点を通る舟形で図8(1-2)に実線で示す形状を基本とするものである。本図では、一方のゲート体の基本となる球体を点線で表示している。本ゲート体に対して、吐出部の形状は図8(1-1)に示すように摺動接辺板のみからなる。正面側の摺動接辺板と背面接辺板が連続する形状で、下端部の摺動接辺部では、前記ゲート体内面が固定軸中心に回動し、背面接辺板の板厚方向に摺動する。
【0032】
図8(2)は、図8(2-2)の点線で示す形状を切断して得られる実線の形状を基本とするゲート体31を有するコンクリート投入機である。図8(2-2)に示す点線部は、二つの同じ底のない円錐の底面部の円を着接して水平方向にしたものである。前記ゲート体は左右両端部に回転軸を有する。本構造のコンクリート投入機の斜視図を図8(2)に示すが、正面側ゲート部のみ表現し、尚且つ背面側ゲート体の固定軸の図示を省略している。この場合の吐出部に関しては、図8(2-1)に示すように底面視で菱型形状となり、上記図8(1)と同様に正面側の摺動接辺板と背面側の摺動接辺板が辺を挟んで連続する形状で、下端部の摺動接辺部では、前記ゲート体内面が固定軸中心に回動し、摺動接辺板の板厚方向に摺動する。
実施例3の図8(1)及び図8(2)の何れのゲート体についても、その固定軸の中心について、各ゲート体のゲート体下辺部が対応するゲート閉鎖体と着接する水平方向の中央部である回転半径が最も長い点における該回転面に直角で且つ鉛直な面に対して、ゲート体円弧内面部の存在する空間と対峙する空間中に固定軸の中心線は存在する。本例のように、ゲート体回動の回転半径が固定軸の左若しくは右両端部方向に漸減するゲート構造では、連結アームとゲート体との境界は不明確なものとなるが、固定軸の軸受けとの連結部、第1ゲート体と第2ゲート体を有するゲート構造における立体的な交差部は、連結アーム部である。
【符号の説明】
【0033】
1 コンクリート投入機、11 バケット部、12 直方体状部、13 逆四角錐台状部、14 円筒部、15 ロート状部
2 吐出部、21 摺動接辺板、22 摺動接辺部、23 上方連続部、24 側方連続部、25 側面板、26 側面板上方連続部、27 側面板下辺部、28 側面板接辺板方連続部
3 ゲート部、31 ゲート体(311 第1ゲート体、312 第2ゲート体)、32 ゲート閉鎖体、33 ゲート体下辺部、34 固定軸、35 ゲート体円弧内面部、36 軸受け、37 連結アーム、38 軸受け歯車
4 シリンダ、41 シリンダチューブ、42 ピストンロッド(プランジャー)、43 シリンダチューブ軸支ブラケット、44 シリンダチューブ固定軸


【要約】
【課題】従来型のゲートを回動によって開閉するコンクリート投入機では、一度に収容し、投入する生コンクリートに対して、投入量調整し、数箇所に分けて投入し、投入量の速さを制御できなかった。
【解決手段】ゲート体の固定軸の位置をゲート体の円弧内面部と鉛直面で対峙する位置に設けることによって、ゲート体下辺部が鉛直面に対して鋭角に着接するゲート体を備えたコンクリート投入機を提供する。更に、側方板を備え、ゲート体円弧内面部が側面板の下辺部を摺動するコンクリート投入機を提供する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9