(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ジャッキ装置
(51)【国際特許分類】
B66F 17/00 20060101AFI20240130BHJP
B66F 3/24 20060101ALI20240130BHJP
B66F 7/06 20060101ALI20240130BHJP
B66F 9/06 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B66F17/00 F
B66F3/24 F
B66F7/06 F
B66F9/06 A
(21)【出願番号】P 2022207646
(22)【出願日】2022-12-23
【審査請求日】2022-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000185916
【氏名又は名称】小野谷機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】牧野 智將
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-270375(JP,A)
【文献】特開2004-106839(JP,A)
【文献】特開2003-19917(JP,A)
【文献】特開2011-32015(JP,A)
【文献】特開2011-16618(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 17/00
B66F 3/24
B66F 7/06
B66F 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体に設けられ、複数のリンク部材を有する一対のリンク手段と、
前記複数のリンク部材に支持され、対象物を支持するための昇降体と、
作動流体によって伸長または縮退し、前記一対のリンク手段のうちの一方のリンク手段のリンク部材に連結されるピストン棒と、前記一対のリンク手段のうちの他方のリンク手段のリンク部材に連結されるシリンダケースとを有する第1シリンダと、
前記第1シリンダに前記作動流体を供給し、かつ前記第1シリンダから排出された前記作動流体を回収して、前記ピストン棒を駆動させる作動流体供給部と、
前記支持体に固定され、複数の突部を有するロック部材と、
前記第1シリンダの前記ピストン棒または前記シリンダケースに連結され、前記複数の突部のいずれか1つに係合可能なロック爪と、
前記ロック爪を前記ロック部材から離反させるロック解除手段と、を含むことを特徴とするジャッキ装置。
【請求項2】
前記ロック解除手段は、
前記ロック爪を前記ロック部材から離反する方向に変位させる第2シリンダと、
前記第2シリンダに圧縮空気を供給する空気圧源と、
前記第2シリンダに前記空気圧源からの圧縮空気を供給する、または遮断する切換え弁と、を含むことを特徴とする請求項1に記載のジャッキ装置。
【請求項3】
前記昇降体に設けられ、厚さが異なる複数のパッド部材を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のジャッキ装置。
【請求項4】
前記支持体は、対向する一対の側部を有し、
前記対向する一対の側部のうちの一方の側部に設けられる一対の前輪と、
前記対向する一対の側部のうちの他方の側部に、該他方の側部に平行な軸線まわりに角変位可能に連結され、前記第1シリンダに供給される流体の圧力を増加させる増圧部が設けられる基台と、
前記基台に設けられる一対の後輪と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のジャッキ装置。
【請求項5】
前記支持体の前記他方の側部に、前記他方の側部に平行な軸線まわりの回動可能に連結されるハンドルと、
前記ハンドルに設けられ、前記ハンドルを前記支持体に対して起立した起立位置で係止するハンドル係止具であって、前記起立位置における係止状態を解除する操作部材を有するハンドル係止具と、を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のジャッキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラックなどの自動車および工場に設置される機械などの重量物を昇降移動するために用いられるジャッキ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術のジャッキ装置は、たとえば特許文献1に記載されている。この従来技術のジャッキ装置は、一対のリンク機構と、リンク機構を伸長および縮小するシリンダとを備える。このような構成によって、小型でありながら車両などの対象物の持上げ高さを高くし、安定して対象物を支持し、製作および組付けの容易化が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の従来技術では、対象物を上昇させた状態で、シリンダの油圧である作動流体の圧力が予期しない故障などによって低下したとき、対象物を上昇させた位置に維持する構成を備えていないので、別途タイヤやジャッキスタンドなどの装置を対象物の下に配置するなどの措置を講じる必要があった。
【0005】
本発明の目的は、シリンダの作動流体の圧力が低下する不具合が生じた場合に、対象物を上昇させた位置に維持して安定に支持することができるジャッキ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、支持体と、
前記支持体に設けられ、複数のリンク部材を有する一対のリンク手段と、
前記複数のリンク部材に支持され、対象物を支持するための昇降体と、
作動流体によって伸長または縮退し、前記一対のリンク手段のうちの一方のリンク手段のリンク部材に連結されるピストン棒と、前記一対のリンク手段のうちの他方のリンク手段のリンク部材に連結されるシリンダケースとを有する第1シリンダと、
前記第1シリンダに前記作動流体を供給し、かつ前記第1シリンダから排出された前記作動流体を回収して、前記ピストン棒を駆動させる作動流体供給部と、
前記支持体に固定され、複数の突部を有するロック部材と、
前記第1シリンダの前記ピストン棒または前記シリンダケースに連結され、前記複数の突部のいずれか1つに係合可能なロック爪と、
前記ロック爪を前記ロック部材から離反させるロック解除手段と、を含むことを特徴とするジャッキ装置である。
【0007】
また本発明は、前記ロック解除手段は、
前記ロック爪を前記ロック部材から離反する方向に変位させる第2シリンダと、
前記第2シリンダに圧縮空気を供給する空気圧源と、
前記第2シリンダに前記空気圧源からの圧縮空気を供給する、または遮断する切換え弁と、を含むことを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記昇降体に設けられ、厚さが異なる複数のパッド部材を含むことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記支持体は、対向する一対の側部を有し、
前記対向する一対の側部のうちの一方の側部に設けられる一対の前輪と、
前記対向する一対の側部のうちの他方の側部に、該他方の側部に平行な軸線まわりに角変位可能に連結され、前記第1シリンダに供給される前記作動流体の圧力を増加させる増圧部が設けられる基台と、
前記基台に設けられる一対の後輪と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、前記支持体の前記他方の側部に、前記他方の側部に平行な軸線まわりに回動可能に連結されるハンドルと、
前記ハンドルに設けられ、前記ハンドルを前記支持体に対して起立した起立位置で係止するハンドル係止具であって、前記起立位置における係止状態を解除する操作部材を有するハンドル係止具と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1シリンダによって一対のリンク手段が駆動され、対象物を昇降体によって持上げた状態において、第1シリンダに作動流体供給部から供給される作動流体の圧力が低下しても、ロック部材の複数の突部のいずれかにロック爪が係合するので、昇降体は持上げられた高さ位置に保たれ、対象物が下降することが防止される。このとき昇降体は、第1シリンダではなく、ロック部材およびロック爪によって機械的に持上げられた高さ位置に保持されるので、作動流体の圧力の低下の影響を受けることなく、対象物を持上げている高さ位置を維持することができる。このように昇降体によって持上げられた対象物を低下させずに持上げ高さ位置に持上げた状態を維持することができるジャッキ装置を提供することができる。また、ロック解除手段によってロック爪をロック部材から離反させることができるので、対象物は、持上げられた状態から、路面などの持上げ開始位置に復帰させることができる。
【0012】
また本発明によれば、切換え弁によって第2シリンダへの空気圧源から圧縮空気が供給されると、第2シリンダによってロック爪がロック部材から離反し、ロック状態が解除される。これによって昇降体が支持体に近接および離反する方向へ移動が可能な状態となり、昇降体によって対象物を昇降移動させることができる。また、切換え弁によって第2シリンダへの圧縮空気の供給が遮断されると、ロック爪はロック部材の複数の突起のいずれか1つと係合した状態に保たれ、ロック状態が維持される。このように切換え弁によって、ロック爪のロック部材へのロック状態を解除または維持することができるので、作業者自身でロック状態の維持およびロック状態の解除を切換え弁によって切換えることができ、ジャッキ装置の操作性を向上することができる。
【0013】
また本発明によれば、昇降体の対象物に臨む面には、厚さの異なる複数のパッド部材を有するので、持上げ開始前の昇降体と対象物との間の隙間の大きさに応じて、パッド部材の厚さの異なるものを昇降体の対象物に臨む面に設けることによって、昇降体と対象物との間の隙間が大きい場合であっても、隙間の大きさに対応する厚さのパッド部材を用いることによって、昇降体と対象物との間の隙間が大きくても、大きな隙間にも対応して、対象物を昇降させることができる。
【0014】
また本発明によれば、支持体の一方の側部に前輪が設けられ、支持体の他方の側部に基台が設けられ、基台には一対の後輪が設けられるので、ジャッキ装置を対象物の下方の持上げ位置まで容易に移動させることが可能となる。また基台には、増圧部が設けられるので、作動流体を増圧することができ、重量の大きい対象物をジャッキ装置によって昇降移動させことが可能となる。
【0015】
また本発明によれば、支持体の他方の側部にハンドルが設けられ、ハンドルには起立位置において係止状態となるハンドル係止具が設けられ、ハンドル係止具によってハンドルの起立位置における係止状態を解除することによって、ハンドルを横倒しした姿勢にすることができる。これによって対象物の持上げ位置が対象物の外部から奥まった離れた場所であっても、昇降体を持上げ位置の直下まで容易に挿入することができ、ジャッキ装置の配置作業を容易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態のジャッキ装置1の内部構造を示す平面図である。
【
図2A】
図1の切断面線IIA-IIAから見た拡大断面図である。
【
図3A】昇降体2が上昇時に支持体3から離間した状態を示す断面図である。
【
図4】昇降体2を第1シリンダC1および一対のリンク手段L1,L2によって支持体3から離反させた状態の断面を示す斜視図である。
【
図5】一方のリンク手段L1側を拡大した断面図である。
【
図10】ブースタポンプ10の内部構造を示す断面図である。
【
図13A】アタッチメント71の一例を示す分解斜視図である。
【
図13B】アタッチメントの他の例であるアタッチメント71Aを示す斜視図である。
【
図13C】アタッチメントのさらに他の例であるアタッチメント71Bを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態のジャッキ装置1の内部構造を示す平面図であり、
図2Aは
図1の切断面線IIA-IIAから見た拡大断面図であり、
図2Bは、
図2Aの上方から見た平面図であり、
図3Aは、昇降体2が上昇時に支持体3から離間した状態を示す断面図であり、
図3Bは、
図3Aの上方から見た平面図である。
【0018】
対象物Wは、トラックおよびバスなどの大型車両とするが、これに限らず、工場内に設置される機械、および橋桁などの土木構造物などの重量物が挙げられる。本実施形態のジャッキ装置1は、このような重量物を昇降移動するために用いることができる。
【0019】
本実施形態のジャッキ装置1は、支持体3に設けられ、複数のリンク部材30,31を有する一対のリンク手段L1,L2、複数のリンク部材30,31に支持され、対象物Wを支持するための昇降体2と、作動流体によって伸長または縮退し、一対のリンク手段L1,L2のうちの一方のリンク手段L1のリンク部材30に連結されるピストン棒C1aと、一対のリンク手段L1,L2のうちの他方のリンク手段L2のリンク部材31に連結されるシリンダケースC1bとを有する第1シリンダC1、第1シリンダC1に作動流体である作動油を供給し、かつ第1シリンダC1から排出された作動油を回収して、ピストン棒C1aを駆動させる作動流体供給部91、支持体3に固定され、複数の突部5を有するロック部材6a,6b、第1シリンダC1のピストン棒C1aまたはシリンダケースC1bに連結され、複数の突部5にいずれか1つに係合可能なロック爪7a,7b、およびロック爪7a,7bをロック部材6a,6bから離反させるロック解除手段9a,9bを含む。
【0020】
図4は、昇降体2が第1シリンダC1および一対のリンク手段L1,L2によって支持体3から離反させた状態の断面を示す斜視図であり、
図5は、一方のリンク手段L1側を拡大した断面図である。各ロック部材6a,6bは、平面視において長方形の板状体から成る基部35と、基部35に一体に形成された複数(本実施形態では2)の突部5とを有する。突部5は、基部35の上面から垂直に立上がり、ロック爪7a,7bを係止する係止面5aと、係止面5aの上端から基部35に近接する方向に傾斜し、ロック爪7a,7bの一方向とは反対の他方向への移動を案内する案内面5bとを有する。
【0021】
各ロック爪7a,7bは、ロック部材6a,6bの係止面5aに接触して係止される先端部36と、先端部36から平坦状に延び、ロック爪7a,7bの他方向への移動時にロック部材6a,6bの案内面5bに接触して案内される摺動面37と、先端部36から離反するにつれて摺動面37から角度θで離反する方向に傾斜したすくい面38と、軸孔81とを有する本体部82、および本体部82から一方向に突出するリブ83を備える。軸孔81には軸84が挿入され、軸84は支持体3の底部85にブラケット86を介して固定される。各ロック部材6a,6bおよび各ロック爪7a,7bは、支持体3の長手方向に垂直な仮想一平面に関して対称に設けられる。角度θは、たとえば45°以上60°以下であってもよい。このような構成によって、各ロック爪7a,7bは、軸84の軸線まわりに回動自在に保持される。
【0022】
各ロック解除手段9a,9bは、ピストン棒88を有する第3シリンダC3と、ピストン棒88の先端部に固定され、ロック爪7a,7bのリブ83にピン結合される連結部材89とを有する。第3シリンダC3は、支持体3の底部85にブラッケット90を介して支持体3の長手方向に平行な軸線を有するように固定される。第3シリンダC3のピストン棒88が伸長すると、ロック爪7a,7bの先端部36がロック部材6a,6bに近接する方向に角変位し、先端部36が係止面5aに係止されて、昇降体2の下降を阻止し、ロック状態にすることができる。また、第3シリンダC3のピストン棒88が縮退すると、ロック爪7a,7bのリブ83が引っ張られ、先端部36がロック部材6a,6bから離反する方向に角変位して、ロック状態を解除することができる。第3シリンダC3は、たとえば複動空気圧シリンダによって実現される。
【0023】
第1シリンダC1は、複動油圧シリンダによって構成される。第1シリンダC1には、駆動部4から作動流体である作動油が供給される。駆動部4は、減圧弁V1、ブースタポンプ10、リリース弁V2、および油タンク11が収納されるケース12を含む。
【0024】
ケース12は、金属から成る大略的に中空の直方体形状を成す箱状体によって構成される。ケース12の一方の側部12aには連結軸13が溶接して固着される、連結軸13の両端部には、後輪14a,14bが設けられるとともに、略U字状のハンドル枠29が連結軸13の軸線まわりに可動可能に連結される。ケース12の一方の側部12aに対向する他方の側部12bには、横倒しされたハンドル15およびハンドル枠29が隣接して配置される。ハンドル15は、直線状に延びる長尺の一対のロッド部材15a,15bと、各ロッド部材15a,15bに直角に連結される短尺の把持部材15cと、を有する。
【0025】
一対のロッド部材15a,15bの各一端部は、ハンドル枠29の側部に円筒状の端尺材から成るブラケット16a,16bにボルト17a,17bによって連結される。一方のロッド部材15bには、昇降体2、支持体3、および駆動部4に対して後述の
図7に示されるように、ハンドル15が起立した起立位置でハンドル15を係止し、かつ起立位置におけるハンドル15の係止状態を解除するための操作部材18を有するハンドル係止具19が設けられる。
【0026】
ハンドル係止具19は、一方のロッド部材15bの把持部材15c寄りの端部に軸20によって角変位可能に連結される前述の操作部材18と、操作部材18に一端部が連結され、一方のロッド部材15bに沿ってほぼ平行に延びる第1連結部材21と、第1連結部材21に接続金具22によって接続される第2連結部材23と、ケース12の短辺側の一方の側部12aにブラケット24に保持され、第2連結部材23に連結されるストッパーピン25と、連結軸13に固定され、ストッパーピン25が嵌合可能な嵌合凹部26を有する係止板27と、ブラケット24に保持され、ストッパーピン25を係止板27に近接する方向にばね付勢する圧縮ばね28と、を備える。
【0027】
係止板27は、金属から成る円板状素材に外周部から半径方向内方に切込まれた嵌合凹部26を有する部材から成る。嵌合凹部26は、ハンドル15が昇降体2、支持体3、および駆動部4に対して起立した状態でストッパーピン25が嵌合凹部26に嵌合した状態で、操作部材18を作業者が把持することによって、操作部材18の角変位が第1連結部材21および第2連結部材23によってストッパーピン25に伝えられ、ストッパーピン25が嵌合凹部26から引抜かれて、ハンドル15の起立位置における係止状態が解除され、ハンドル15を起立位置から昇降体2、支持体3、および駆動部4にほぼ平行な横倒し位置に姿勢を変更することができる。
【0028】
一方のリンク手段L1は、
図1に示されるように、2組のリンク体L1a,L1bから成る。また、他方のリンク手段L2は、2組のリンク体L2a,L2bから成る。リンク体L1aは、2つのリンク部材30,31と、各リンク部材30,31を挿通するリンクピン32とを有する。もう一方のリンク体L1bは、前述のリンク体L1aと同様に構成され、対応する部分には同一の参照符を付し、重複を避けて説明は省略する。他方のリンク手段L2は、前述の一方のリンク手段L1と同様に構成され、対応する部分に同一の参照符を付し、重複を避けて説明は省略する。一方のリンク部材30の一端部は、支持体3にピン結合され、他方のリンク部材31の一端部は昇降体2のケース2aにピン結合される。
【0029】
図6は、ジャッキ装置1の外観を示す平面図であり、
図7は、ジャッキ装置1の側面図であり、
図8は、ジャッキ装置1の正面図である。支持体3の一方の側部12aには、一対の前輪39a,39bが設けられる。各前輪39a,39bおよび各後輪14a,14bは、たとえばキャスタによって実現される。各後輪14a,14bの間隔は、各前輪39a,39bの間隔よりも大きく設定されるので、安定性の高いジャッキ装置1を実現することができる。
【0030】
図9は、ジャッキ装置1の油圧系統図である。ジャッキ装置1は、駆動部4を備える。駆動部4は、圧縮空気圧源からの圧縮空気が入力ポート38に供給され、作業者によって操作される切換え弁である操作弁V3と、操作弁V3から圧縮空気が供給され、作動油が貯留される油タンク11と、ポンプハウジング50に作動油が流れ込み、一時的にポンプハウジング50内に作動油が流れ込み、一時的にポンプハウジング50に貯留される。ほぼ同時に、減圧弁V1を介してブースタポンプ10に作動流体である圧縮空気が供給されることによってブースタポンプ10が動作し、ポンプハウジング50内の作動油が加圧される。ブースタポンプ10によって加圧された作動油は、パスカルの定理に従って、入力された空気圧の数十倍の圧力に増圧され、第1シリンダC1へ供給される。
【0031】
ブースタポンプ10による作動油の加圧は、ブースタポンプ10に加圧空気が入力される間継続され、第1シリンダC1へ供給されるので、第1シリンダC1の推力が増加し、各リンク手段L1,L2が伸長し、昇降体2は上昇する。
【0032】
また、リリース弁V2を開放させると、第1シリンダC1の第2圧力室内の空気圧によって作動油は油タンク11へ戻され、第1シリンダC1のピストン棒C1aは縮退する。これによって各リンク手段L1,L2は縮小し、昇降体2は下降する。
【0033】
図10は、ブースタポンプ10の内部構造を示す断面図であり、
図11は、
図10の切断面線XI-XIから見た断面図である。ブースタポンプ10は、作動ピストン40、弁ピストン41、作動ピストン40が固定されるプランジャ42、作動ピストン40を一方向へばね付勢する第1圧縮ばね43、弁ピストン41が固定されるピストンロッド44、ピストンロッド44に装着される弁45、ピストンロッド44に装着される第2圧縮ばね46、弁ピストンケース47、作動ピストンケース48、作動ピストンケース48に装着されるブースタニップル49、およびブースタニップル49に接続されるポンプハウジング50を含む。
【0034】
作動ピストンケース48は、作動ピストン40、第1圧縮ばね43が収容される第1ピストン室51、および弁室56を有する。第1ピストン室51は、作動ピストン40によって第1圧力室52aと第2圧力室52bとに仕切られる。弁ピストンケース47は、第2ピストン室53を有する。第2ピストン室53は、弁ピストン41によって、第3圧力室54aと第4圧力室54bとに仕切られる。弁ピストンケース47には管継手55が接続され、管継手55には減圧弁V1によって減圧された圧縮空気が供給される。減圧された圧縮空気の圧力は、たとえば0.5MPaである。ポンプハウジング50には、油タンク11内の作動油が通過する第1油路と、増圧室58から押出された作動油が通過する第2油路とが形成される。第1油路には逆止弁V5が介在され、第2油路には逆止弁V4が介在される。
【0035】
上昇時に管継手55に圧縮空気が供給されると、供給された圧縮空気は、弁室56を経て第2圧力室52bに供給される。第2圧力室52b内の圧力は、圧縮空気によって上昇し、作動ピストン40が第1圧縮ばね43のばね力に抗して押圧されて移動し、第3圧力室54aと第1圧力室52aとが連通し、第3圧力室54aの圧力上昇によって弁ピストン41が作動し、第3圧力室54a内の圧縮空気は、排気流路57から大気に放散され、弁ピストン41は元位置に復帰する。圧縮空気の供給によって作動ピストン40が移動すると、プランジャ42の移動によって増圧室58内の作動油が加圧され、増圧室58内の作動油は逆止弁V4を経て第1シリンダC1に供給される。
【0036】
図12は、リリース弁V2の断面図である。リリース弁V2は、ピストン室60を有するハウジング61、リリースピストン62、ピストンロッド63、圧縮ばね64、管継手65,66、および逆止弁V5を含む。ピストン室60は、リリースピストン62によって、第1圧力室63aと第2圧力室63bとに仕切られる。第1圧力室63aには、管継手66から下降時の作動指令として圧縮空気が供給される。第2圧力室63bには、第1シリンダC1からの作動油が管継手67を介して導かれる。圧縮空気が管継手66を介して第1圧力室63aに供給されると、リリースピストン62は、第1圧力室63aの圧力によって圧縮ばね64のばね力に抗して押圧され、逆止弁V5を開放させる。これによって第1シリンダC1の作動油が排出され、昇降体2を下降させることができる。
【0037】
図13Aは、アタッチメント71の一例を示す分解斜視図である。本実施形態では、対象物Wと対象物Wの下に挿入したジャッキ装置1との間の隙間の影響を低減するため、アタッチメント71が用いられる。アタッチメント71は、略C字状断面を有する金属製の取付部材72と、取付部材72のボルト73によって着脱可能に取付けられ、弾性変形可能な材料である、たとえばNBRゴム製の略直方体状のパッド部材74とを有する。パッド部材74の厚さT1は、たとえば35mmである。取付部材72は、昇降体2に着脱可能に装着される。このようなアタッチメント71は、昇降体2の長手方向に間隔をあけて2つ用いられる。対象物Wと昇降体2との間にパッド部材74が介在することによって、対象物Wに昇降体2が直接接触することによる対象物Wおよび昇降体2の損傷を防ぐことができる。
【0038】
図13Bは、アタッチメントの他の例であるアタッチメント71Aを示す斜視図であり、
図13Cは、アタッチメントのさらに他の例であるアタッチメント71Bを示す斜視図である。なお、
図13Aに示されるアタッチメント71と対応する部分には、同一の参照符を付す。アタッチメント71Aは、前述の取付部材72が用いられ、パッド部材74に代えてパッド部材74Aが用いられる。パッド部材74Aは、鋼鉄製であり、略V字状断面を有するパッド本体74A1と、パッド本体74A1の両側面にたとえば溶接して接合される2枚の端版74A2とを有する。パッド部材74の厚さT2は、たとえば60mmである。このようなパッド部材74Aを前述のパッド部材74に代えて取付部材72に取付けることによって、対象物Wと昇降体2との間の隙間が大きい場合であっても、ジャッキ装置1によって対象物Wを持上げることができる。
【0039】
また、対象物Wと昇降体2との間の隙間がさらに大きい場合には、前述のパッド部材74,74Aに代えてパッド部材74Bを用いることができる。パッド部材74Bは、鋼鉄製であり、略V字状断面を有するパッド本体74B1と、パッド本体74B1の両端面にたとえば溶接して接合される2枚の端版74B2とを有する。パッド部材74Bの厚さT2は、たとえば110mmである。このようなパッド部材74Bを前述のパッド部材74,74Aに代えて取付部材72に取付けることによって、対象物Wと昇降体2との間の隙間がさらに大きい場合であっても、ジャッキ装置1によって対象物Wを持上げることができる。
【0040】
本発明の他の実施形態では、油圧シリンダである前述の第1シリンダC1に代えて空気圧シリンダを流体圧シリンダとして用いるようにしてもよい。これによって、油圧源が不要となり、油圧源に比べて構成が簡易な空気圧源があればよく、利便性を向上することができる。
【0041】
本実施形態によれば、流体圧シリンダである第1シリンダC1によって一対のリンク手段L1,L2が駆動され、対象物Wを昇降体2によって持上げた状態で第1シリンダC1に供給される作動油の圧力が低下しても、ロック部材6a,6bの複数の突部5のいずれかにロック爪7a,7bが係合する。これによって昇降体2が持上げられた高さ位置に保たれ、対象物Wが下降することが防止される。このとき昇降体2は第1シリンダC1ではなく、ロック部材6a,6bおよびロック爪7a,7bによって機械的に持上げられた高さ位置に保持されるので、作動油の圧力の変化の影響を受けることなく、持上げ高さ位置を維持し、昇降体2によって持上げられた対象物Wの安定性を低下させずに持上げ高さ位置を維持することができるジャッキ装置を提供することができる。また、ロック解除手段9a,9bによってロック爪7a,7bをロック部材6a,6bから離反させることができるので、対象物Wが持上げられた状態から路面などの持上げ開始位置に復帰させることができ、対象物Wの修理などの次の作業を円滑に開始することができる。
【0042】
また、切換え弁である操作弁V3によって第2シリンダへの空気圧源から圧縮空気が供給されると、第2シリンダC2によってロック爪7a,7bがロック部材6a,6bから離反し、ロック状態が解除される。これによって昇降体2の変位が可能な状態となり、昇降体2によって対象物Wを昇降移動させることができる。また、操作弁V3によって第2シリンダC2への空気圧源からの圧縮空気が遮断されると、ロック爪7a,7bはロック部材6a,6bの複数の突部5のいずれか1つ係合した状態に保たれ、ロック状態が維持される。このように操作弁V3によって、ロック爪7a,7bのロック部材6a,6bへのロック状態を解除しまたは維持することができるので、作業者にとって、ロック状態の維持およびロック状態の解除を操作弁V3によって切換えることができ、切換え作業を簡素化することができる。
【0043】
また、昇降体2の対象物Wを支持する上面には、厚さの異なる複数のパッド部材74,74A,74Bの1つが設けられるので、持上げ開始前の昇降体2と対象物Wとの間の隙間の大きさによってパッド部材の高さの異なるものを昇降体の対象物Wに臨む面に設けることによって、大きな隙間であっても、適切な高さのパッド部材を用いることによって、ジャッキ装置1を用いて対象物Wを昇降させることができる。
【0044】
また、支持体3の一方の長辺部に前輪39a,39bが設けられ、支持体3の他方の長辺部に一対の基台37が設けられ、基台37には一対の後輪が設けられるので、ジャッキ装置を容易に移動させることが可能となる。基台37には増圧部が設けられるので、空気圧によって高い油圧を得ることができ、大きな重量を有する対象物Wを小型のジャッキ装置1によって昇降移動することが可能となる。
【0045】
また、支持体3の他方の長辺部にハンドル15が設けられ、ハンドル15には起立位置において係止状態となるハンドル係止具19が設けられ、ハンドル係止具19によってハンドル15の起立位置における係止状態を解除することによって、ハンドル15を支持体3に沿って横倒しした姿勢にすることが可能となり、対象物Wのジャッキアップポイントとも呼ばれる支持位置が対象物Wの外周部から奥まった位置であっても、昇降体2を支持位置の直下まで容易に挿入することができ、ジャッキ装置1の配置作業を容易化することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、また、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、改良等が可能である。上記各実施形態をそれぞれ構成する全部または一部を、適宜、矛盾しない範囲で組み合わせ可能であることは、言うまでもない。
【符号の説明】
【0047】
1 ジャッキ装置
2 昇降体
3 支持体
4 駆動部
5 突部
6a,6b ロック部材
7a,7b ロック爪
8a,8b ばね
9a,9b ロック解除手段
10 ブースタポンプ
11 油タンク
12 ケース
12a 一方の側部
12b 他方の側部
13 連結軸
14a,14b 後輪
15 ハンドル
15a,15b ロッド部材
15a,15b 把持部材
16a,16b ブラケット
17a,17b ボルト
18 操作部材
19 ハンドル係止具
20 軸
21 第1連結部材
22 接続金具
23 第2連結部材
27 係止板
28 圧縮ばね
29 ハンドル枠
30,31 リンク部材
39a,39b 前輪
40 作動ピストン
42 プランジャ
43 第1圧縮ばね
44 ピストンロッド
45 弁
46 第2圧縮ばね
47 弁ピストンケース
48 作動ピストンケース
50 ポンプハウジング
51 第1ピストン室
52a 第1圧力室
52b 第2圧力室
53 第2ピストン室
54a 第3圧力室
54b 第4圧力室
58 増圧室
63a 第1圧力室
63b 第2圧力室
64 圧縮ばね
65,66 管継手
74,74A,74B パッド部材
87a ピストン棒
87b シリンダケース
91 作動流体供給部
C1 第1シリンダ
C1a 一端部
C2 第2シリンダ
L1,L2 リンク手段
L1a,L1b リンク体
V1 減圧弁
V2 リリース弁
V3 操作弁
V4,V5 逆止弁
W 対象物
【要約】
【課題】 ジャッキ装置を提供する。
【解決手段】 ジャッキ装置1は、支持体3と、支持体3に設けられ、複数のリンク部材30,31を有する一対のリンク手段L1,L2と、複数のリンク部材30,31に支持され、対象物Wを支持するための昇降体2と、ピストン棒C1aと、他方のリンク手段のリンク部材に連結されるシリンダケースC1bとを有する第1シリンダC1と、第1シリンダC1に作動流体を供給し、かつ第1シリンダC1から排出された作動流体を回収して、ピストン棒C1aを駆動させる作動流体供給部91と、支持体3に固定され、複数の突部5を有するロック部材6a,6bと、第1シリンダC1のピストン棒C1aまたはシリンダケースC1bに連結され、複数の突部5のいずれか1つに係合可能なロック爪7a,7bと、ロック爪7a,7bをロック部材6a,6bから離反させるロック解除手段9a,9bと、を含む。
【選択図】
図1