(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】溝蓋支持枠
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20240130BHJP
E04F 17/08 20060101ALI20240130BHJP
E04F 15/16 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
E03F5/04 E
E04F17/08 B
E04F15/16 Z
(21)【出願番号】P 2023060031
(22)【出願日】2023-04-03
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000127639
【氏名又は名称】株式会社エービーシー商会
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 富士夫
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-113180(JP,A)
【文献】特開2018-168659(JP,A)
【文献】特開2020-172828(JP,A)
【文献】実開昭64-002827(JP,U)
【文献】実開平06-078445(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 5/00- 5/26
E03C 1/00- 1/33
E04D 13/04-13/08
E04F 15/16
E04F 17/00-17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面内に開口した排水溝の縁部に沿って設置されて前記開口に被さる溝蓋を支持する溝蓋支持枠であって、
一側に当該支持枠の上面部から下方へ凹んでいて前記溝蓋の端部が載ってその下面を支持する蓋支持部を備え、
他側に床面に敷かれたシート床材の端部を、当該支持枠の上面部に設けられたシート引き入れ部から当該支持枠の内部に進入させて固定するシート固定部を備えた構成を有することを特徴とする溝蓋支持枠。
【請求項2】
シート引き入れ部から蓋支持部に至る当該支持枠の上面部が平坦に設けられた構成を有することを特徴とする請求項1に記載の溝蓋支持枠。
【請求項3】
シート引き入れ部から蓋支持部に至る当該支持枠の上面部に防滑用の凹筋が形成されてなる請求項2に記載の溝蓋支持枠。
【請求項4】
シート固定部から排水溝へと通ずる排水路を内部に有する請求項1又は2に記載の溝蓋支持枠。
【請求項5】
コンクリートの打設により排水溝の縁部に沿って固定される下枠材と、下枠材に重ねて取り付けられる上枠材からなり、シート引き入れ部は、前記下枠材の上面に床面に敷かれたシート床材の端部が重ねられ、その上に前記上枠材が重ねられて上下の枠材でシート床材の端部を挟み込んで構成されている請求項4に記載の溝蓋支持枠。
【請求項6】
蓋支持部の下側に上下の枠材を締結具で固定する連結部が設けられた構成を有する請求項5に記載の溝蓋支持枠。
【請求項7】
下枠材は溝蓋の端部を支持する座面部と当該座面部の下側に設けられた締着具の取り付け部、上枠材は前記下枠材に重なる肩面部と当該肩面部に対して下方へ突出した仕切面部をそれぞれ備え、前記下枠材の座面部に上枠材の肩面部が重なって蓋支持部を構成し、前記上枠材の仕切面部と上枠材の締着具の取り付け部との間に締着具を通して連結部を構成する請求項6に記載の溝蓋支持枠。
【請求項8】
コンクリートの打設により排水溝の縁部に沿って固定される下枠材と、下枠材に重ねて取り付けられる上枠材からなる請求項1又は2に記載の溝蓋支持枠であって、
前記下枠材は、溝蓋の端部を支持する座面部と、この座面部から外方へ上向きに傾斜していて床面に床面に敷かれたシート床材の端部が重ね合わさるシート受け面部とを備え、
前記上枠材は、前記下枠材の座面部に重なる肩面部と、この肩面部の一側の端部から上方へ立ち上がり且つ先端を外方へ屈曲させてなる天面部とを備え、
前記下枠材の座面部上に前記上枠材の肩面部が重なって蓋支持部を構成し、
前記下枠材のシート受け面部にシート床材の端部を重ね合わせ、当該シート受け面部と前記上枠材の天面部の先端部とでシート床材を挟んでシート固定部を構成し、
前記下枠材の座面部に上枠材の肩面部を重ねた状態で両面部間に隙間が形成され、この隙間が排水溝に通じた排水路を構成する溝蓋支持枠。
【請求項9】
下枠材は座面部の下側にナット又はボルト頭が挿入保持される凹部を備えるとともに前記座面部の先端部に下側へ折れた水切り部を備え、
上枠材は肩面部の下面から下方へ突出した仕切面部を備えるとともに当該肩面部の先端部に下方へ折れた水切り部を備え、
前記上枠材は、その肩面部と仕切面部が、両枠材の長手方向に沿って間隔を開けて複数配置された介装材を挟んで下枠材の座面部と水切り部に重なるとともに、
前記仕切面部に形成された孔部の外側から通したボルトの軸部を下枠材の凹部内に保持されたナットに螺合することにより、
又は前記下枠材の凹部内にボルト頭が保持されたボルトの軸部を前記仕切面部に形成された孔部に通して仕切面部の外側でナットを螺合することにより、下枠材に取り付けられる構成を有する請求項8に記載の溝蓋支持枠。
【請求項10】
上枠材の仕切面部の孔部に通したボルトの当該仕切面部へのナット又はボルト頭の締着部が、下枠材の凹部内に保持されたボルト頭又はナットよりも水平上向きの位置に配置される構成を有する請求項9に記載の溝蓋支持枠。
【請求項11】
シート床材の端部が60°から10°の範囲内で下方へ折れて下枠材のシート受け面部上に重なるように設けられた請求項8に記載の溝蓋支持枠。
【請求項12】
下枠材の座面部の上面に、溝蓋の設置位置の幅決め用治具の固定具の固定位置を規定する当たり部を有する請求項8に記載の溝蓋支持枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グレーチングなどの溝蓋を排水溝上で支持する支持枠の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
レストランの厨房や給食センター、食品加工工場などの食品の調理・加工施設の床面には、床面に流れ落ちた水や油類など(以下、「水」と総称する。)を排水するための排水溝が設けられている。この排水溝は、その開口縁部に支持枠が一体に設けられ、この支持枠で鋼材を格子状に組み付けた溝蓋を支持して排水溝の開口を塞ぎ、床面の歩行や台車の走行、設備の設置に支障がないようにしている。また、このような食品の調理・加工施設の床面は、表面を衛生に保って滑りにくくするために、コンクリート床面上に防滑性を有する合成樹脂製のシート床材を敷いたシート貼りの床とすることが多い。
【0003】
従来、前記シート貼りの床でシート床材と溝蓋支持枠の取り合いは、シート床材の端部(以下、「シート端部」ともいう。)を溝蓋支持枠の外側表面に突き付けて接着したり、或いは
図10に示されるように、溝蓋100を支持する支持枠101の外側縁部に合成樹脂製の連結部材102を一体に設け、この連結部材102にシート床材103の端部を溶接したりして溝蓋支持枠102にシート端部を接合している(例えば特許文献1参照)。
【0004】
また、ベランダや陸屋根などから雨水を排水するために排水口に取りつけられるルーフドレインとして、
図11に示されるように、排水口110の周囲に設けた傾斜面110aに受皿部111を設置し、ベランダや陸屋根の床面に敷いたシート床材112の端部112aを受皿部111に重ね、且つこれを受皿部111とその上に取り付けられるストレーナー部113とで挟み込み、雨水がシート床材112を伝って排水口110へと流れ落ちるようにした構成のものが知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-16140号公報
【文献】特開2009-191495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記食品の調理・加工施設のシート貼りの床面において、シート端部を溝蓋支持枠の外側面や連結部材に隙間なくぴったりと突き付けて接着又は溶着する工事は、ある程度の熟練した技能が必要とされる。シート端部と溝蓋支持枠の接合強度は現場施工の精度に依存するところが大きい。
また、強固に接合していても常時施設内の温度変化の影響を受けるシート床材の伸縮に伴って接合部が経時的に劣化して接合部に亀裂ができることがある。何よりもシート端部と溝蓋支持枠の接合部は床面に露出しているため、人の歩行や台車の走行による荷重が直に加わり、微細な亀裂ができたり、破断したり、陥没したりするなどの損傷が生じやすい。
【0007】
前記接合部が損傷すると、そこからシート床材の下側に水が入り込み、入り込んだ水を吸ったシート床材が縮んで接合部の損傷によりできた亀裂や隙間をさらに広げたり、シート床材の下側に浸入した水が滞留してシート床材が膨れたり、さらにはコンクリート床面との間の接着剤に水が浸って接着機能を失わせ、シート床材が剥がれてしまったりすることがある。このようなシート床材と溝蓋支持枠の取り合い部の破損は、床面の排水機能を劣化させ、汚水や塵埃、残渣だまりができて害虫の発生源となりやすく、衛生的な施設環境が維持できなくなるという問題を生じさせる。
【0008】
シート床材の下側への水の浸入を防ぐ対策として、前述のルーフドレインのようにシート床材の端部の上下両面を部材で挟んで固定する態様の採用が考えられる。かかる態様であれば、シート床材と溝蓋支持枠の接合部が床面内に露出しないので、人の歩行や台車の走行による荷重が加わっても接合部が損傷することはない。
しかし、シート床材の端部が溝蓋支持枠の内部で挟まれて固定されるようにした場合、シート床材の上面を伝ってシート床材の上面に当接した部材との隙間を通って溝蓋支持枠の内部に入り込んだ水を確実に排水することはできない。また、衛生的な施設環境を維持するためには、溝蓋支持枠の内部に入り込んだ水を滞留させることなく、排水溝へ確実に排出させる手段を備えることも肝要である。
【0009】
また、シート床材の端部を溝蓋支持枠の内部で挟んで固定する態様としては、例えば溝蓋支持枠を上下に重なり合う複数の部材により構成し、上下の部材でシート端部を挟み込む態様が考えられる。
この態様では、台車走行などによる荷重が加わっても上側の部材が下側の部材から外れないように、上側の部材にボルトやネジを通して下側の部材に強固に留め付ける必要があるが、下側の部材をボルトやネジが貫通して締着するようにすると下地内部への浸水を引き起こし、下側の部材に設けた受けナットにボルトやネジが螺合するようにすると受けナットを配置した領域に前記シート床材を伝う水が入り込んで滞留してしまう。また、上側の部材を留め付けるボルトやネジが床面内に露出していると、床面上の水がボルトやネジに付着して排水を阻害する。シート端部の上面に当接する上側の部材が排水をせき止める虞もある。衛生的な施設環境を維持するためには、排水機能が阻害されないように溝蓋支持枠を構成する必要がある。
【0010】
本発明は従来の技術が有するこのような問題点に鑑み、床面に排水溝が開口した食品の調理・加工施設のシート貼りの床面において、排水溝の開口を塞ぐ溝蓋の支持枠とシート床材との取り合いが人の歩行や台車の走行による荷重が加わっても損傷しないようにすることを課題とする。また、本発明は、床面に流れ落ちた水を前記取り合い部に滞留させることなく排水溝へと確実に排水して衛生的な施設環境を維持することができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため本発明は、溝蓋支持枠にシート床材の端部を接着や溶着により接合する従来の取り合いの仕方に代えて、溝蓋支持枠内でシート端部が挟み込まれて固定されるようにすることで、台車の走行などの荷重を受けてもシート床材と溝蓋支持枠の接合部の損傷が生じないようにした。また、本発明は、溝蓋支持枠の上面にボルトやネジなどの凹凸となる部位を配置せずに平坦に設けることで、床面に流れ落ちた水を滞留させることなく排水溝へとスムーズ且つ確実に排水させることができるようにした。さらに、本発明は、溝蓋支持枠内に設けた排水路を通って溝蓋支持枠内に入り込んだ水が確実に排水されるようにして、溝蓋支持枠内での水の滞留やそれに伴う塵埃などの付着や残留が起きないようにした。
【0012】
すなわち、本発明は、床面内に開口した排水溝の縁部に設置されて前記開口に被さる溝蓋を支持する溝蓋支持枠であって、
一側に当該支持枠の上面部から下方へ凹んでいて前記溝蓋の端部が載ってその下面を支持する蓋支持部を備え、
他側に床面に敷かれたシート床材の端部を、当該支持枠の上面部に設けられたシート引き入れ部から当該支持枠の内部に進入させて固定するシート固定部を備えた構成を有することを特徴とする。
【0013】
前記構成の溝蓋支持枠は、排水溝の開口を挟んで対向する縁部にそれぞれ設置され、排水溝の開口に被さる溝蓋の両側端部を蓋支持部にそれぞれ載せることで溝蓋を開口上に支持する。
床面に敷かれたシート床材の端部は、溝蓋支持枠の上面部に設けられたシート引き入れ部から溝蓋支持枠の内部に進入させて固定するシート固定部で、当該支持枠内に固定される。シート端部と溝蓋支持枠の接合部は当該支持枠内に位置して床面上に露出してはいないので、台車の走行などの荷重を受けても接合部に亀裂ができたり破断したりするようなことはない。従来のような接合部の損傷した部分から水がシート床材の下側に入り込むようなことはない。
【0014】
前記構成の溝蓋支持枠において、シート引き入れ部から蓋支持部に至る当該支持枠の上面部が平坦に設けられていることが好ましい。
ここでいう「上面部が平坦に設けられている」とは、当該上面部に水の流れを阻害する大きさで凹凸している部位がなく、ボルトやネジなどの締結具などの部品が突出している部位もなく、前記引き入れ部から前記蓋支持部に至る部分が略面一に形成されていることをいう。シート引き入れ部から蓋支持部に至る上面部が平坦に設けられていて水の流れを阻害する部位がないので、床面に流れ落ちてシート床材の上面を伝う水は、前記シート引き入れ部上を通り抜けて溝蓋支持枠の上面部上を滑らかに伝って排水溝へと流れ落ちる。水が溝蓋支持枠の上面部上に滞留することはない。
なお、前記溝蓋支持枠の平坦な上面部は、水の流れを阻害する大きさの凹凸でなく、前記上面部上に水の滞留が生じなければ、例えば防滑のための深さ0.3mm程度の微細な深さの溝である凹筋や微細な深さ及び高さの凹凸が形成されていてもよい。
シート引き入れ部から蓋支持部に至る溝蓋支持枠の上面部は排水溝側に向けて下り傾斜した配置であることがより好ましい。
【0015】
前記構成の溝蓋支持枠において、シート固定部から排水溝へと通ずる排水路を内部に有することが好ましい。
これによれば、シート床材の表面を伝って前記シート引き入れ部から溝蓋支持枠の内部に浸入した水を、当該支持枠内に滞留させることなく、排水路を経由して排水溝に確実に流し落とすことができる。
【0016】
前記構成の溝蓋支持枠は、複数の部材を一体に組み付けて構成することができる。例えばともにアルミ形材からなる下枠材と上枠材により溝蓋支持枠を構成し、前記下枠材をコンクリートの打設とともに排水溝の縁部に沿って固定し、この下枠材の上面に上枠材を重ねて取り付けることで、上下の枠材でシート床材の端部を挟み込んで内部にシート端部が固定されるように設けることができる。
この場合、シート引き入れ部は、前記下枠材の上面に床面に敷かれたシート床材の端部が重ねられ、その上に前記上枠材が重ねられて上下の枠材でシート床材の端部を挟み込むように構成される。
【0017】
前記のように、溝蓋支持枠を下枠材と上枠材により構成する場合、蓋支持部の下側に上下の枠材を締結具で固定する連結部が設けられていることが好ましい。
蓋支持部の下側に上下の枠材の連結部を設け、両枠材を固定するためのボルトやナットなどの締結具を蓋支持部の下側に配置することで、溝蓋支持枠の上面部にボルトやナットが突出していない構成が得られ、シート引き入れ部から蓋支持部に至る上面部を平坦に設けることができ、当該上面部上の水の滞留を防ぐことができる。
この場合、後述するように、下枠材は溝蓋の端部を支持する座面部と当該座面部の下側に設けられた締着具の取り付け部、上枠材は前記下枠材に重なる肩面部と当該肩面部に対して下方へ突出した仕切面部をそれぞれ備え、前記下枠材の座面部に上枠材の肩面部が重なって蓋支持部を構成し、前記上枠材の仕切面部と上枠材の締着具の取り付け部との間に締着具を通して連結部を構成することができる。
【0018】
前記上下の枠材により構成される溝蓋支持枠の一例の形態としては、前記下枠材を溝蓋の端部を支持する座面部と、この座面部から外方へ上向きに傾斜して床面に連なっていて当該床面に敷かれたシート床材の端部が重ね合わさるシート受け面部とを備えた形状、前記上枠材を前記下枠材の座面部に重なる肩面部と、この肩面部の一側の端部から上方へ立ち上がり且つ先端を外方へ屈曲させてなる天面部とを備えた形状にそれぞれ形成し、前記のとおり排水溝の縁部に沿って固定された下枠材の上面に上枠材を重ねて一体に取り付けることで、前記下枠材の座面部上に上枠材の肩面部が重なって蓋支持部が構成され、前記下枠材のシート受け面部に接合したシート床材の端部が当該シート受け面部と上枠材の天面部の先端部とで挟まれてシート固定部が構成されるように設けることができる。
溝蓋支持枠内に進入したシート床材の端部を下枠材のシート受け面部と上枠材の天面部の先端部とで上下に挟む込む部分がシート引き入れ部であり、上枠材の天面部が溝蓋支持枠の上面部を構成する。前記天面部の上面は表面に水の流れを阻害する大きさの凹凸がない略面一な形状に形成することで、前記シート引き入れ部から前記溝蓋が載る蓋支持部に至る当該支持枠の上面部を平坦に設けることができる。
下枠材のシート受け面部はその座面部から上向きに傾斜した、床面と溝蓋の上面よりも下方へ凹んだ部位であるが、下枠材に上枠材を取り付けることで前記シート受け面部の上方に配置される上枠材の天面部で覆われるため、歩行や台車の走行に支障が生じることはない。シート床材の表面を伝う殆どの水は前記天面部上を伝って溝蓋内に進入し、排水溝に流れ落ちる。
前記のとおり、シート床材の端部はシート引き入れ部で下枠材のシート受け面部と上枠材の天面部の先端部で挟み込まれており、この挟み込む部分の部材間にできる僅かな隙間からシート床材の表面を伝う水のうち少量が溝蓋支持枠内に入り込むが、前記シート受け面部に接合したシート床材の端部は同面部上に接着して固定され、シート床材の端部が傾斜したシート受け面部に沿って固定されているので、当該支持枠内に入り込んだ水がシート端部の下側に回り込むことはなく、水の浸入による接着機能の低下は起きない。
また、溝蓋支持枠の内部に入り込んだ水は、後述するシート固定部から排水溝へと通ずる排水路を通じて当該支持枠の外部に排出される。
【0019】
さらに、前記下枠材の座面部に上枠材の肩面部を重ねた状態で両面部間に隙間が形成されるように設けることで、この隙間が前記シート固定部から排水溝へと通じた排水路を構成し、溝蓋支持枠内に浸入した水を、前記排水路を通して排水溝へと流し落とすことができる。
前記排水路を構成する隙間は、例えば、前記下枠材の座面部と上枠材の肩面部を、両枠材の長手方向に沿って間隔を開けて複数配置された介装材を挟んで重ねることで、前記座面部と肩面部との間の隙間が排水路を構成し、シート床材の表面を伝って溝蓋支持枠内に浸入した水を排水路から排水溝へと流し落とすように設けることができる。或いは、下枠材の座面部と上枠材の肩面部の一方又は両方に、それぞれの面部の幅方向(溝蓋支持枠を排水溝の縁部に設置した状態でシート床材が敷かれた床面と排水溝とを結ぶ方向)に沿って伸びた、一つ以上の屈曲した凹溝や厚みを部分的に薄肉とした凹筋を設けて、両面部を上下に重ねたときに両面部の間に水の通り道となる隙間ができるようにしてもよい。
【0020】
上下の枠材により構成される溝蓋支持枠の前記形態にあっては、蓋支持部の下側に上下の枠材の連結部が設けられていることが好ましい。
例えば、上下の枠材の連結部は、前記下枠材をその座面部の下側にナットが挿入保持される凹部を備えるとともに前記座面部の先端部に下側へ折れた水切り部を備えた形状、前記上枠材をその肩面部の下面から下方へ突出した仕切面部を備えるとともに当該肩面部の先端部に下方へ折れた水切り部を備えた形状にそれぞれ形成し、下枠材の上面に上枠材を重ねたときに、上枠材の肩面部と仕切面部が、両枠材の長手方向に沿って間隔を開けて複数配置された介装材を挟んで下枠材の座面部と水切り部に重なり、前記仕切面部に形成された孔部の外側から通したボルトの軸部を下枠材の凹部内に保持されたナットに螺合することにより、上枠材が下枠材に取り付けられるように構成することができる。
【0021】
これによれば、排水溝の縁部に沿って固定された下枠材の上面に上枠材を重ねれば、上枠材の肩面部が下枠材の座面部に重なり、肩面部から下方へ突出した仕切面部は前記座面部の下側に設けられた締結具であるナットが挿入保持される凹部の側方に配置され、この仕切面部に設けた孔部に同じく締結具であるボルトの軸部を通し、前記凹部内に保持されたナットに螺合することで、上枠材は下枠材の上面の重ね合わせた位置に固定されて溝蓋支持枠が構成される。
前記上枠材の肩面部と仕切面部は介装材を挟んで下枠材の座面部と水切り部に重なって両部材間の隙間が排水路を構成し、溝蓋支持枠内に浸入した水を排水路から排水溝へと排出させることができる。
【0022】
上下の枠材の固定は、下枠材の凹部内に挿入保持されてナットに上枠材を挿通させたボルトを螺合することにより行われ、ボルトを下枠材に貫通させたり下地にネジ入れたりしないので、溝蓋支持枠内に浸入した水が下字内部に入り込むことはない。
前記上枠材を下枠材に留め付けるボルトの締着位置は、床面に露出した溝蓋支持枠の上面ではなく、溝蓋が載る蓋支持部よりも下側の仕切面部であるため、床面に流れ落ちた水を排水溝に流し落とす際に前記ボルトが排水の邪魔になることはない。水の付着や滞留も生じない。
また、仕切面部に締着したボルトはそのボルト頭が排水溝に臨むが、その上方には肩面部の先端に設けられた水切り部が配置されるため、溝蓋を伝う水は前記水切り部を伝って排水溝へと流れ落ち、前記ボルト頭には流れ落ちない。
さらに、下枠材の上面に上枠材を重ねたときに、上枠材の肩面部と仕切面部が介装材を挟んで下枠材の座面部と水切り部に重なり、下枠材の座面部の下側に設けられたナットを挿入保持する凹部は、前記座面部先端の水切り部に重なった仕切面部で塞がれる(
図2参照)。よって、溝蓋から流れ落ちた水が前記凹部に入り込んで滞留するようなことはない。また、溝蓋支持枠内に浸入した水は座面部先端の水切り部を伝って排水溝へと流れ落ち、前記凹部内に入り込むことはない。
【0023】
この場合に、上枠材の仕切面部の孔部に通したボルトの締着部が、下枠材の凹部内に保持されたナットよりも水平上向きの位置に配置されるように構成してあることが好ましい。
前述のとおり溝蓋支持枠は、シート床材の端部を下枠材のシート受け面部上に進入させて重ね、その上から上枠材を下枠材に取り付け、シート受け面部に重ねたシート端部に上枠材の天面部先端を当接させて、この天面部先端とシート受け面部でシート端部の上下両面を挟み込んで固定する。挟み込む力が強ければ、溝蓋支持枠に対するシート端部の接合強度が大きくなり、溝蓋支持枠から剥がれたり分離したりしにくくなる。上下の枠材間に留め付ける前記ボルトを、両枠材に対して水平向きに留め付けるのではなく、前記仕切面部に締着されるボルト頭の方が、前記凹部内でボルト軸部が螺合するナットよりも上側となるように、つまりボルト軸部がボルト頭から下向きに傾斜した配置となるようにボルトに角度を付けて傾けて締着させることで、上枠材に対してその天面部が下枠材の上面側に倒れる(回転する方向への)力が発現され、天面部先端がシート受け面部に重ねたシート端部を押し込む力が増して、シート受け面部との間でシート端部を挟み込む強度が大きくなり、シート端部をシート受け面部上に確実に固定することができる。
前記ボルトの傾きは、傾斜角度が大きいほど前記天面部がシート端部を抑え込む力が増すが、大きすぎると前記天面部先端が床面に対して凹んで不陸を生じさせたり天面部が逆勾配の配置となったりすること、施工がしにくくなることなどを考慮して適宜な角度に設定することが好ましい。角度は上下の枠材の成形寸法に応じて設定され、例えば水平面に対するボルトの傾斜角度(θ)が5°となるように設定することができる(
図4参照)。
【0024】
なお、前記下枠材の凹部にナットに代えてボルト頭を挿入保持させ、下枠材の上面に下枠材を重ねたときに、上枠材の肩面部と仕切面部が介装材を挟んで下枠材の座面部と水切り部に重なり、前記下枠材の凹部内にボルト頭が保持されたボルトの軸部を前記仕切面部に形成された孔部に通し、仕切面部の外側に突出してボルト軸部にナットを螺合して締着させることにより、上枠材が下枠材に取り付けられるように構成してもよい(
図9参照)。
【0025】
前記構成の溝蓋支持枠において、シート床材のシート端部が水平面に対して60°から10°、好ましくは40°から25°の範囲内の角度で下方へ折れて下枠材のシート受け面部上に重なるように設けることが好ましい。
すなわち、前記施設の床に敷かれるシート床材は2~3mm程度の厚さの硬く形成されたシートであり、シート端部を折り曲げて下枠材の傾斜したシート受け面部に重ねてしっかりと接着固定させるのには、シート端部の折り曲げ角度、つまりシート受け面部の傾斜角度が適切に設定されている必要がある。折り曲げ角度が大きければ、下枠材の見付幅を小さく納めることができるが、シート端部を折り曲げた際の反発力が大きくなり、シート受け面部に接着する際に跳ね上がったり浮いたりして接着できない事態を生じさせ、一方、折り曲げ角度が小さければシート端部の接着は容易に行えるが、前記見付幅が大きくなって溝蓋支持枠が取り付けられた排水溝周辺の見た目が悪くなり、また、見付幅が大きいと歩行の滑りを生じさせる原因ともなる。
2~3mm程度の厚さのシート床材のシート端部の折り曲げ角度が前記の範囲内であれば、下枠材のシート受け面部上に確実に接着することができるとともに、下枠材の見付幅を小さく納めることが可能である。厚さが2.5mmのシート床材の場合、シート端部は30°から27°の角度で折り曲げて下枠材のシート受け面部上に少なくとも20mm程度の幅で重ねて接着固定することが好ましい。
【0026】
前記構成の溝蓋支持枠において、上下の枠材間に配置する介装材は、施工のし易さから弾性を有する材料を用いて形成されたものであることが好ましい。好まし弾性材料としては、耐水性や耐候性に優れた合成樹脂材料、例えばEPDMゴムが挙げられる。弾性を有しない材料で介装材が形成されていてもよい。
【0027】
また、前記構成の溝蓋支持枠において、下枠材の座面部の上面に、溝蓋の設置位置の幅決め用治具の固定位置を規定するための当たり部を有することが好ましい。
すなわち、床面をコンクリート打設するにあたり、排水溝の枠を現場で設置する際に、排水溝に被さる溝蓋の設置位置を正確に規定する必要があるため、排水溝の左右の枠の設置幅と溝蓋が載る部分の水平レベルを規定する幅決め治具が、コンクリートが打設される躯体に取り付けられ、幅決め治具で規定された幅に沿って前記枠が設置される。本発明では、躯体に下枠材を取り付け、この下枠材に汎用の幅決め治具が取り付けられるようにし、下枠材の座面部上に当たり部を設けて幅決め治具の固定具の取り付けが簡便且つ正確に行えるようにしている。
この場合、
図5に示されるように、汎用の幅決め治具が溝蓋の支持枠の上下を挟み持つ固定具を備えたものであるときに、下枠材の座面部の上下両面に固定具が嵌り込むように、前記座面部の下側に設けるナットを挿入保持する凹部が座面部の端部から離れた位置にセットバックさせてあることが好ましい(
図6参照)。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、床面に排水溝が開口した食品の調理・加工施設のシート貼りの床面において、排水溝の開口を塞ぐ溝蓋の支持枠とシート床材との取り合いが人の歩行や台車の走行による荷重が加わっても損傷が生じにくく、床面に流れ落ちた水を前記取り合い部に滞留させることなく排水溝へと確実に排水して衛生的な施設環境を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】シート貼りの床面における排水溝の端部部分であって本発明の一実施形態の溝蓋支持枠で溝蓋を支持して排水溝の開口を塞いだ状態を示した外観図である。
【
図2】
図1の溝蓋支持枠と溝蓋の要部拡大断面図である。
【
図3】溝蓋支持枠を構成する下枠材と上枠材の端面図である。
【
図4】
図2の要部拡大図であり、溝蓋支持枠内の排水路を示した図である。
【
図5】床面のコンクリート打設前に下枠材を設置する態様を示した図である。
【
図6】下枠材に幅決め治具を取り付けてコンクリートを打設する態様を示した図である。
【
図7】下枠材にシート床材の端部を重ね合わせた状態を示す平面図である。
【
図8】溝蓋の角部に設置した溝蓋支持枠の要部外観図である。
【
図9】溝蓋支持枠の他の実施形態の要部拡大断面図である。
【
図10】従来のシート床材と溝蓋支持具の取り合いを示した断面図である。
【
図11】従来のグレーチングの設置態様を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の技術的思想は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0031】
図1は、床面に排水溝が開口した食品の調理・加工施設のシート貼りの床面における排水溝の端部部分の外観を示している。
排水溝Dは上面に合成樹脂製のシート床材FSが敷かれたコンクリート床面CF内に設けられており、この排水溝Dの縁部に沿って本発明の溝蓋支持枠1が設置され、この溝蓋支持枠1で鋼材を格子状に組み付けた溝蓋GRを支持して排水溝Dの開口を塞いで床面Fの歩行や台車の走行などに支障がないようにするとともに、床面F上に流れ落ちた水を排水溝Dに流し落とせるように設けてある。
【0032】
図2は、
図1の排水溝Dの縁部に設置された溝蓋支持枠1の断面を示している。
同図に示されるように、本形態の溝蓋支持枠1は、床面F上に開口した排水溝Dの縁部に沿って設置されて前記開口に被さる溝蓋GRを支持する支持枠であり、前記排水溝D側に溝蓋GRの端部が載って下面を支持する蓋支持部11を備え、床面F側に当該床面Fに敷かれたシート床材FSのシート端部FSeを当該支持枠の内部に進入させて固定するシート固定部12を備えるとともに、このシート固定部12から排水溝Dに通じた排水路13を内部に有することを構成上の特徴としている。
【0033】
詳しくは、溝蓋支持枠1は、ともにアルミ形材からなる下枠材2と上枠材3により構成され、排水溝Dの縁部に沿って固定された下枠材2の上面に上枠材3を重ねて取り付けることで、上下の枠材2,3でシート床材FSのシート端部FSeを挟み込んで、内部にシート端部FSeが固定されるように形成されている。
【0034】
さらに詳しくは、
図3に示されるように、下枠材2は、溝蓋GRの端部を支持する座面部21と、この座面部21から外方へ上向きに傾斜して床面Fに連なるシート受け面部22とを備えた形状に形成してある。受け面部22の先端部22aは水平に突出した面となっており、この面に対するシート受け面部22の傾斜角度(φ)は27°に設定してある。
また、下枠材2は、前記座面部21の下側にナットNが挿入保持される凹部23、座面部22の先端部には下側へ折れた水切り部24をそれぞれ備えるとともに、前記凹部23の背面側に躯体Sに固定された連結金具4が係合する凹所25(
図2参照)、凹部23の下側には前記水切り部24と対向して突出した枠部26をそれぞれ備えた形状に形成してある。
前記凹部23は、その内部にナットNを挿入保持したときにナットNがその軸方向が斜め上向きに保持されるように形成してある。また、座面部21の上面には、幅決め治具5の固定具51が当接して幅決め治具5の固定位置を規定する当たり部21aが設けられており、後述するように幅決め治具5は前記水切り部24と枠部26の間に挿入して固定することができるようになっている。
また、前記シート受け面部23の水平な先端23aの下側には凹溝27が設けられており、下枠材2同士を接ぎ合わせる際に、端部を突き合せた下枠材2,2の前記凹溝27,27に接続板6を架け渡し、これをビス7で留め付けて下枠材2,2同士を接続することができるようになっている。
【0035】
また、上枠材3は、前記下枠材2の座面部21に重なる肩面部31と、この肩面部31の一側の端部から上方へ立ち上がり且つ先端を外方へ屈曲させてなる天面部32とを備えた形状に形成してある。天面部32の先端部下面はその先端側から厚みを漸次大きくしたテーパ面としてある。
また、上枠材3は、前記肩面部31の下面から下方へ突出した仕切面部33を備えるとともに、当該肩面部31の先端部に下方へ折れた水切り部34を備えた形状に形成してある。前記仕切面部33は、その厚みを根元部から下方にいくほど漸次大きくした部分を有し、この部分に前記下枠材2の凹部23に挿入保持させたナットNに螺合するボルトBの軸部が貫通する孔部33aが形成してある。
また、前記天面部32の下側と水切り部34の下側にそれぞれ凹溝35,36が設けられており、上枠材3同士を接ぎ合わせる際に、端部を突き合せた上枠材3,3の前記凹溝35,35と凹溝36,36にそれぞれ接続板6を架け渡し、これをビス7で留め付けて上枠材2,2同士を接続することができるようになっている。
【0036】
図2に示されるように、排水溝Dの縁部に沿って固定された下枠材2のシート受け面部22上にシート床材FSのシート端部FSeを重ねて同面部上に接合し、その上から上枠材3を、前記下枠材2の座面部21及び水切り部2と上枠材3の肩面部31及び仕切面部33との間に両枠材の長手方向に沿って間隔開けて配置された複数のゴム材料からなる介装材8を介在させた状態で一体に取り付けて固定することにより溝蓋支持枠1が構成される。シート受け面部22上に接合させたシート端部FSeは同面部上に接着剤で固定される。
この場合、介装材8は、予め上枠材3の肩面部31と仕切面部33の表面に接着しておくことが好ましい。上枠材3に介装材8を接着しておくのに代えて、予め下枠材2の座面部21から水切り部24及び枠部26の表面沿って介装材8を接着しておいてもよい。
【0037】
下枠材2への上枠材3の取り付けは、以下のようにして行うことができる。
すなわち、下枠材2の上面に上枠材3を重ねれば、上枠材3の肩面部31が下枠材2の座面部21に介装材8を挟んで重なり、肩面部31から下方へ突出した仕切面部33は下枠材2のナットNが挿入保持される凹部23の側方に配置される。この仕切面部33に設けた孔部33aにボルトBの軸部を通し、前記凹部23内に保持されたナットNに螺合することで、上枠材3を下枠材2の上面に重ねて固定される。
下枠材2に上枠材3を一体に固定することで、下枠材2の座面部21上に上枠材3の肩面部31が介装材8を挟んで重なって蓋支持部11が構成され、また、下枠材2のシート受け面部22上に接着したシート端部FSeが当該シート受け面部22と上枠材3の天面部31の先端部とで挟まれてシート固定部12が構成される。前記のように、下枠材2の凹部23内でナットNがその軸部が斜め上を向くように保持され、また、仕切面部33のボルトBの軸部が貫通する孔部33aの周辺はテーパ面となっている。そのため、ボルトBをナットNに螺合すれば、ボルトBの軸部が上向きに傾斜して仕切面部33に締着し、これにより上枠材3の天面部32の先端側を下方へ押し付け力が生じ、前記シート受け面部22と天面部32の先端部とでシート端部FSeを強い力で挟み込むことができる。
【0038】
また、前記のように、下枠材2の座面部21及び水切り部2と上枠材3の肩面部31及び仕切面部33とは、両枠材の長手方向に沿って間隔開けて配置された複数の介装材8を挟んで重なっているため、
図4に示されるように、介装材8により形成される隙間が排水路13を構成し、溝蓋支持枠1内に浸入した水を排水路13から排水溝Dへと排出させて、当該支持枠内部に水が滞留することを防ぐことができる。
さらに、下枠材2の上面に上枠材3を重ねたときに、下枠材2の座面部21の下側に設けられたナットNを挿入保持する凹部23とその下側の枠部27に至る空間は上枠材3の仕切面部33で塞がれるため、溝蓋GRから流れ落ちた水が前記凹部23に入り込んで滞留するようなことはない。
【0039】
前記構成の溝蓋支持枠1を取り付ける工事は次のようにして行うことができる。
先ず、床面Fのコンクリート打設にあたり、躯体Sに下枠材2を取り付けてこれを排水溝Dの形成位置の両側に沿って配置し、
図5に示されるように、両下枠材2,2に幅決め治具5の固定具51を固定して、幅決め治具5を両下枠材2,2に架け渡す。幅決め治具5の固定具51を下枠材2の座面部21の当たり部21aに当接させることにより、幅決め治具5の固定位置が位置決めされる。固定具51はその下部が、
図6に示されるように、下枠材2の座面部21の下側の空間部内に係合して下枠材2の座面部21を挟み持つ。
幅決め治具5で排水溝Dの左右の枠の設置幅と溝蓋GRが載る部分の水平レベルを規定したならば、その下側に排水溝Dの枠を設置し、コンクリートを打設してコンクリート床面CFを形成する(
図6参照)。
【0040】
コンクリート床面CFが形成され、排水溝Dの縁部に沿って下枠材2が固定されたならば、コンクリート床面CF上にシート床材FSを敷いて接着固定し、さらに、
図7に示されるように、シート床材FSのシート端部FSeを下方へ折り曲げて下枠材2のシート受け面部22に重ねて接着固定する。
【0041】
次いで、下枠材2の上面に、肩面部31と仕切面部33に間隔を開けて複数の介装材8が接着された上枠材3を重ね合わせ、前記のように仕切面部33の孔部33aに貫通させたボルトBの軸部を下枠材2の凹部23内に保持されたナットNに螺合してボルトBを仕切面部33の外面に締着することにより、下枠材2に上枠材3が固定されて溝蓋支持枠1が構成される
【0042】
そして、排水溝Dの開口に溝蓋GRを被せて溝蓋支持枠1で支持されることにより、排水溝D廻りの施工が完了する。
【0043】
上記のように構成された溝蓋支持枠によれば、溝蓋支持枠1内でシート端部FSeが挟み込まれて固定されるように設けられているので、台車の走行などの荷重を受けてもシート床材FSと溝蓋支持枠1の接合部の損傷が生じにくく、また、溝蓋支持枠1の上面にボルトやネジなどの凹凸となる部位が配置されておらず、上面が平坦に設けられているので、床面に流れ落ちた水を滞留させることなく排水溝Dへとスムーズ且つ確実に排水させることが可能である。さらに、溝蓋支持枠1内に入り込んだ水を、その内部に設けられた排水路13を通して排水溝Dへと確実に排水されることが可能である。
【0044】
図9は、蓋枠支持枠1の他の形態を示している。
図示した形態は、下枠材2の座面部21の下側に配された凹部23の断面形状を前述した下枠材とは若干を異ならせたものであり、上下の枠材2,3の固定が、前記凹部23内にボルトBのボルト頭を挿入保持させるとともに、ボルトBの軸部を上枠材3の仕切面部33の孔部33aに通し、仕切面部33の外側にワッシャーWを挟んで介しボルトの軸部にナットNを螺合して締結することにより行われるようにしたものである。
【0045】
以上、説明し図示した溝蓋支持枠の構成や構成部材の形態は一例であり、本発明は説明し図示した構成や形態のものに限定されず、他の適宜な構成や形態のものとすることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 溝蓋支持枠、11 蓋支持部、12 シート固定部、13 排水路、2 下枠材、21 座面部、21a 当たり部、22 シート受け面部、23 凹部、24 水切り部、25 凹所、26 枠部、27 凹溝、3 上枠材、31 肩面部、32 天面部、33 仕切面部、33a 孔部、34 水切り部、35,36 凹溝、4連結金具、5 幅決め治具、51 固定具、6 接続板、7 ビス、8 介装材、D 排水溝、GR 溝蓋、F 床面、CF コンクリート床面、FS シート床材、FSe シート端部、S 躯体
【要約】
【課題】排水溝の開口を塞ぐ溝蓋の支持枠とシート床材との取り合いを、台車の走行などの荷重が加わっても損傷が発生しにくくするとともに、この取り合い部に水を滞留させることなく確実に排水溝に排水されるようにする。
【解決手段】溝蓋支持枠にシート床材の端部を接着や溶着により接合する従来の取り合いの仕方に代えて、溝蓋支持枠内でシート端部が挟み込まれて固定されるようにする。溝蓋支持枠の上面は凹凸した部位やボルト、ネジの露出していない平坦な面に形成し、当該上面で水が滞留しないようにする。溝蓋支持枠の内部には排水路を設け、溝蓋支持枠内に入り込んだ水が排水路を通して排水することで水の滞留やそれに伴う塵埃などの付着、残留が起きないようにする。
【選択図】
図2