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特許7428446エネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】エネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/40 20060101AFI20240130BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20240130BHJP
   A62C 3/16 20060101ALI20240130BHJP
   A62C 35/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A62C37/40
G08B17/00 C
A62C3/16 C
A62C35/02 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023082443
(22)【出願日】2023-05-18
(65)【公開番号】P2023174572
(43)【公開日】2023-12-07
【審査請求日】2023-05-18
(31)【優先権主張番号】202210581218.5
(32)【優先日】2022-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521010344
【氏名又は名称】烟台創為新能源科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Yantai Chungway New Energy Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 163 Jinshajiang Road, Economic and Technological Development Zone, Yantai City, Shandong Province, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 涛
(72)【発明者】
【氏名】譚 業超
(72)【発明者】
【氏名】劉 玉璽
(72)【発明者】
【氏名】張 立磊
(72)【発明者】
【氏名】李 明明
(72)【発明者】
【氏名】時 暁▲とん▼
【審査官】吉村 伊佐雄
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第112023302(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114306989(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111262141(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102416233(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C2/00-99/00
G08B17/00
23/00-31/00
H01M10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通常動作モード及び異常モードの2つのモードに分けられるエネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法であって、
通常動作モードにおいて、電磁弁a及び電磁弁Nを常に開き、電磁弁b、電磁弁s及び電磁弁dを常に閉じ、電池パックへの窒素の充填を開始し、電池パック内の検知器Aの酸素センサー値がa以下の場合、または、検知器の圧力センサー値がb以上の場合、電磁弁Nを閉じ、電池パックへの窒素の充填を停止し、電池パック内の検知器Aの酸素センサー値がc以上であるとともに圧力センサー値がd以下の場合、電磁弁Nを開き、電池パックへのNの充填を開始するステップ1)と、
異常モードは、設備室異常と電池室異常とに分けられ、
設備室の異常時に、検知器Dのレベル1早期警報閾値D1、レベル2早期警報閾値D2を設定し、検知器Dの検知値がレベル1早期警報閾値D1よりも大きくてレベル2早期警報閾値D2よりも小さい場合、検知器Dがレベル1早期警報に達したと判定し、音と光のアラームが点滅してブザーが鳴動し、一方、検知器Dの検知値がレベル2早期警報閾値D2よりも大きい場合、検知器Dがレベル2早期警報に達したと判定し、検知器Dが電磁弁dを開いて電磁弁aを閉じ、電磁弁b及び電磁弁sを閉じたままに維持し、ガス消火剤容器Xを起動し、設備室内へのガス消火剤のスプリンクラーによる噴射を開始し、
電池室の異常時に、複合検知器Aのレベル1早期警報閾値A1、レベル2早期警報閾値A2、複合検知器Bのレベル1早期警報閾値B1、レベル2早期警報閾値B2、複合検知器Cのレベル1早期警報閾値C1、レベル2早期警報閾値C2を設定し、電池パック内の複合検知器Aの検知値が第1早期警報閾値A1以上であって第2早期警報閾値A2以下の場合、音と光のアラームが点滅してブザーが鳴動するように中央制御装置が制御し、一方、電池パック内の複合検知器Aの検知値が第2早期警報閾値A2以上であるとともに、電池クラスタ内の検知器Bの検知値が第1早期警報閾値B1以上であって第2早期警報閾値B2以下の場合、警報する検知器Aが所在する電池パックの電磁弁aを常に開き、残りの電池パックの電磁弁aを閉じ、ガス消火剤容器Xを起動し、熱暴走が発生した電池パックへのガス消火剤のスプリンクラーによる噴射を開始し、複合検知器Bの検知値が第2早期警報閾値B2以上の場合、熱暴走が発生した電池パックの所在する電池クラスタの電磁弁bを開くよう複合検知器Bが制御し、電池クラスタ内へのガス消火剤のスプリンクラーによる噴射を開始し、複合検知器Cの検知値が第1早期警報閾値C1以上であって第2早期警報閾値C2以下の場合、ガス消火剤容器Yを起動し、電池室へのガス消火剤のスプリンクラーによる噴射を開始し、複合検知器Cの検知値が第2早期警報閾値C2以上の場合、電磁弁sを開き、電池室内への外部消火水のスプリンクラーによる噴射を開始するステップ2)と、を含むことを特徴とするエネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法。
【請求項2】
ステップ2)では、前記複合検知器Aに含まれる検知要素としては、VOC、煙、CO、温度、O、圧力があり、
複合検知器AのCO、VOC、煙及び温度である4つの検知要素のいずれかがレベル1早期警報閾値A1に達するとともに、CO、VOC、煙及び温度である4つの検知要素の検知値がいずれもレベル2早期警報閾値A2よりも小さいと、検知器Aの現在の早期警報レベルがレベル1早期警報であると判定することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法。
【請求項3】
前記複合検知器AのCO、VOC、煙及び温度である4つの検知要素が同時にレベル2早期警報閾値A2に達すると、複合検知器Aの現在の早期警報レベルがレベル2早期警報であると判定することを特徴とする請求項2に記載のエネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法。
【請求項4】
ステップ2)では、前記複合検知器Bに含まれる検知要素としては、火炎、H、煙、温度があり、
複合検知器BのH、煙、温度である3つの検知要素のいずれかがレベル1早期警報閾値B1に達してレベル2早期警報閾値B2よりも小さいとともに、火炎センサー数値に変化がない場合、検知器Bの現在の早期警報レベルがレベル1早期警報であると判定することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法。
【請求項5】
前記複合検知器BのH、煙、温度である3つの検知要素が同時にレベル2早期警報閾値B2に達するとともに、火炎センサー数値がレベル2早期警報閾値B2に達した場合、複合検知器Bの現在の早期警報レベルがレベル2早期警報であると判定することを特徴とする請求項4に記載のエネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法。
【請求項6】
ステップ2)では、前記複合検知器Cの検知要素としての煙及び火炎の検知値が同時にレベル1早期警報閾値C1に達すると、複合検知器Cの現在の早期警報レベルがレベル1早期警報であると判定することを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法。
【請求項7】
前記複合検知器Cの検知要素としての煙及び火炎の検知値が同時にレベル2早期警報閾値C2に達すると、複合検知器Cの現在の早期警報レベルがレベル2早期警報であると判定することを特徴とする請求項6に記載のエネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法。
【請求項8】
前記検知器Dの検知要素としては、VOCがあることを特徴とする請求項1に記載のエネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー貯蔵発電所の防御保護の技術分野に関し、具体的には、エネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
2021年は、世界のエネルギー貯蔵が好調な一年であり、124万kWの新たな容量を増加し、2020年と比較して150%を超えて増加した。エネルギー貯蔵の急速な発展は、政府の政策によるサポートや気候変動への野心的な取り組み、グリッドの適応性の増大に対する要求と切り離すことができない。現在、リチウムイオン電池の生産は主要なエネルギー貯蔵技術の1つであるが、リチウムイオン電池自身の安全上の制限と、エネルギー貯蔵発電所の内部の大量の電池セルの長期動作による不整合性によって引き起こされる安全上の問題を無視することができない。
【0003】
従来のエネルギー貯蔵発電所や電池コンテナに対する消防システムでは、ヘプタフルオロプロパンガス消火剤を使用することが多く、システム内の温度検知器や煙検知器が異常データを検知すると、バッテリー室やコンテナ全体内にヘプタフルオロプロパンを噴射し、ヘプタフルオロプロパンガスによる酸素の隔離及び化学的な抑制機能により、火災の消火を実現している。しかしながら、この方法では、発火点または熱暴走した電池モジュールに対して噴射が行われないため、大量の消火剤を必要とし、消火効率が低下し、熱が伝達されやすく、より大規模な火災が発生しやすくなる。さらに、ガス消火剤は、長期冷却ができないため、電池の熱暴走を根本的に抑えることができず、電池の内部反応が続くと、大量の熱を蓄え続けて可燃性ガスを放出し続け、これにより、電池による火災が再発して熱暴走が拡大し、甚大な財産の被害と人命の被害を引き起こす。
【0004】
消火装置の信頼性を向上させてガス消火の欠点を解消するために、中国出願201110235922.7には、水系消火剤により電池モジュール内の熱暴走した電池の火災を消火すると同時に排煙し、消火速度が速くて煙が少ないという特徴を有し、即時に排煙排気することで電池から放出される可燃性ガスを迅速に排気することができ、可燃性ガスの蓄積による爆発の発生を抑制する発明が開示されている。この消火システムは、止水装置及び積水排水装置をさらに用いて、水流の乱れによる短絡発生の可能性を低下させる。
【0005】
しかしながら、上記の発明は以下の欠点を有する。
(1)この消火システムは高導電率の水系消火剤を用いるため、噴射時に通常状態の電池にその水系消火剤を噴射すると、漏電発生のリスクが常に存在しており、一定の安全上の問題がある。
(2)水は優れた蓄熱機能を有するが、水の沸点は100℃しかなく、電池の熱暴走時の温度よりはるかに低いため、水による電池の再着火の抑制には使用できない。
(3)この消火システムは電池モジュールの消火しかできないため、出火元が電池室またはコンテナ内の他のスペースの場合に消火ができなくなる。
【0006】
さらに、中国電力科学研究院が出願した中国出願CN202010942589.2には、エネルギー貯蔵所の電池室の内外部の建物に対して煙濃度または可燃性ガス濃度を検出するとともに、電池室内の温度を検出し、さまざまな状況に応じて、ガス消火法で電池室全体を消火するか、または、液体消火法で問題があった電池モジュールを消火剤に浸漬する処理を行うか、または、ガス消火法で電池室全体を消火すると同時に液体消火システムを起動して問題があった電池モジュールを消火剤に浸漬する処理を行うことが開示されている。
【0007】
上記の発明は、電池室内の消火を追加しているが、異なるスペース内の単一の検知要素(煙、可燃性ガス、温度)での判断のために、誤報を抑制することができない。誤報の場合でも、この発明の消火方法に従って、ガス消火剤、液体消火剤、またはガス消火剤と液体消火剤で電池室を全面的に覆うことになると、損失が大きくなる。さらに、この発明では、液体消火剤、例えば、消火水の高導電性の安全上の問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来技術の欠点を解消することを目的とし、エネルギー貯蔵発電所内の電池パック、電池クラスタ、電池室及び設備室である4タイプの保護領域に対して、それぞれ段階的な検知保護と多手段の保護を行い、エネルギー貯蔵発電所の防御保護を効果的に果たすエネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法及びシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、以下の技術的手段によって達成される。通常動作モード及び異常モードの2つのモードに分けられるエネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法は、
通常動作モードにおいて、電磁弁a及び電磁弁Nを常に開き、電磁弁b、電磁弁s及び電磁弁dを常に閉じ、電池パックへの窒素の充填を開始し、電池パック内の検知器Aの酸素センサー値がa以下の場合、または、検知器の圧力センサー値がb以上の場合、電磁弁Nを閉じ、電池パックへの窒素の充填を停止し、電池パック内の検知器Aの酸素センサー値がc以上であって圧力センサー値がd以下の場合、電磁弁Nを開き、電池パックへのNの充填を開始するステップ1)と、
異常モードは、設備室異常と電池室異常とに分けられ、
設備室の異常時に、検知器Dのレベル1早期警報閾値D1、レベル2早期警報閾値D2を設定し、検知器Dの検知値がレベル1早期警報閾値D1よりも大きくてレベル2早期警報閾値D2よりも小さい場合、検知器Dがレベル1早期警報に達したと判定し、音と光のアラームが点滅してブザーが鳴動し、一方、検知器Dの検知値がレベル2早期警報閾値D2よりも大きい場合、検知器Dがレベル2早期警報に達したと判定し、検知器Dが電磁弁dを開いて電磁弁aを閉じ、電磁弁b及び電磁弁sを閉じたままに維持し、ガス消火剤容器Xを起動し、設備室内へのガス消火剤の噴射を開始し、
電池室の異常時に、複合検知器Aのレベル1早期警報閾値A1、レベル2早期警報閾値A2、複合検知器Bのレベル1早期警報閾値B1、レベル2早期警報閾値B2、複合検知器Cのレベル1早期警報閾値C1、レベル2早期警報閾値C2を設定し、電池パック内の複合検知器Aの検知値が第1早期警報閾値A1以上であって第2早期警報閾値A2以下の場合、音と光のアラームが点滅してブザーが鳴動するように中央制御装置が制御し、一方、電池パック内の複合検知器Aの検知値が第2早期警報閾値A2以上であるとともに、電池クラスタ内の検知器Bの検知値が第1早期警報閾値B1以上であって第2早期警報閾値B2以下の場合、警報する検知器Aが所在する電池パックの電磁弁aを常に開き、残りの電池パックの電磁弁aを閉じ、ガス消火剤容器Xを起動し、熱暴走が発生した電池パックへのガス消火剤の噴射を開始し、複合検知器Bの検知値が第2早期警報閾値B2以上の場合、熱暴走が発生した電池パックの所在する電池クラスタの電磁弁bを開くよう複合検知器Bが制御し、電池クラスタ内へのガス消火剤の噴射を開始し、複合検知器Cの検知値が第1早期警報閾値C1以上であって第2早期警報閾値C2以下の場合、ガス消火剤容器Yを起動し、電池室スペース内へのガス消火剤の噴射を開始し、複合検知器Cの検知値が第2早期警報閾値C2以上の場合、電磁弁sを開き、電池室内への外部消火水の噴射を開始するステップ2)と、を含む。
【0010】
さらに、ステップ2)では、前記複合検知器Aに含まれる検知要素としては、VOC、煙、CO、温度、O、圧力があり、複合検知器AのCO、VOC、煙及び温度である4つの検知要素のいずれかがレベル1早期警報閾値A1に達するとともに、CO、VOC、煙及び温度である4つの検知要素の検知値がいずれもレベル2早期警報閾値A2よりも小さいと、検知器Aの現在の早期警報レベルがレベル1早期警報であると判定する。
【0011】
さらに、前記複合検知器AのCO、VOC、煙及び温度である4つの検知要素が同時にレベル2早期警報閾値A2に達すると、複合検知器Aの現在の早期警報レベルがレベル2早期警報であると判定する。
【0012】
さらに、ステップ2)では、前記複合検知器Bに含まれる検知要素としては、火炎、H、煙、温度があり、複合検知器BのH、煙、温度である3つの検知要素のいずれかがレベル1早期警報閾値B1に達してレベル2早期警報閾値B2よりも小さいとともに、火炎センサー数値に変化がない場合、検知器Bの現在の早期警報レベルがレベル1早期警報であると判定する。
【0013】
さらに、前記複合検知器BのH、煙、温度である3つの検知要素が同時にレベル2早期警報閾値B2に達するとともに、火炎センサー数値がレベル2早期警報閾値B2に達した場合、複合検知器Bの現在の早期警報レベルがレベル2早期警報であると判定する。
【0014】
さらに、ステップ2)では、前記複合検知器Cの検知要素としての煙及び火炎の検知値が同時にレベル1早期警報閾値C1に達すると、複合検知器Cの現在の早期警報レベルがレベル1早期警報であると判定する。
【0015】
さらに、前記複合検知器Cの検知要素としての煙及び火炎の検知値が同時にレベル2早期警報閾値C2に達すると、複合検知器Cの現在の早期警報レベルがレベル2早期警報であると判定する。
【0016】
さらに、前記検知器Dの検知要素としては、VOCがある。
【0017】
エネルギー貯蔵発電所を設備室及び電池室に分け、電池室内には、複数組の電池クラスタが設置され、各組の電池クラスタ内には、複数の電池パックが設置されるエネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御システムは、中央制御装置、不活性ガスボンベセット、ガス消火剤容器X、ガス配管M、電磁弁N、電磁弁d、検知器D、複合検知器C、複合検知器B、複合検知器A、電磁弁a、電磁弁b、ガス配管N、ガス消火剤容器Y、電磁弁s、スプリンクラー及び外部消火水接続口を含む。前記中央制御装置、電磁弁d、電磁弁N、ガス消火剤容器X、不活性ガスボンベセット及び検知器Dは、設備室内に設置される。ガス配管Mの一端は、設備室内に伸びてガス消火剤容器X、不活性ガスボンベセットにそれぞれ連結される。ガス配管Mの他端は、電池室の単一の電池クラスタ及び単一の電池パック内にそれぞれ伸びる。不活性ガスボンベセットの排出口端には、電磁弁Nが設置される。設備室内のガス噴出端には、電磁弁dが設置される。単一の電池クラスタ内に挿入されるガス配管Mには、電磁弁bが設けられる。単一の電池パック内に挿入されるガス配管Mには、電磁弁aが設けられる。単一の電池パック内には、複合検知器Aが設けられる。単一の電池クラスタ内には、複合検知器Bが設けられる。電池室の頂部には、複数の複合検出器Cが設けられる。設備室の頂部には、検知器Dが設けられる。ガス配管Nの一端は、電池室内に伸びて複数のスプリンクラーに連結される。ガス配管Nの一端は、電池室外に伸びてガス消火剤容器Y及び外部消火水接続口にそれぞれ連結される。外部消火水接続口の排水端には、電磁弁sが設置される。前記電磁弁N、電磁弁d、検知器D、複合検知器C、複合検知器B、複合検知器A、電磁弁a、電磁弁b、電磁弁sは、それぞれ中央制御装置に電気的に接続される。
【0018】
従来技術と比較して、本発明の有益な効果は以下の通りである。
具体的には、電池パックに対して窒素保護の能動防御システムと消防検知の受動消火方法を用いる。電池クラスタ、電池室及び設備室に対して、主に複合検知器によって種類の異なる特徴ガスを検知して熱暴走が発生したか否かを判断し、受動的な消防が主にガス消火剤及び外部消火水により、エネルギー貯蔵発電所の熱暴走を全面的に抑制して火災を消火する。最終的に、能動保護と受動防御を組み合わせて多領域、多種ガス総合検知センサー、多種消火媒体により、エネルギー貯蔵発電所の安全運転システムが構築される。早期警報レベルによっては、領域を分けて消火したり、異なる方法で消火したりする。各レベルの早期警報レベルは、複数種の検知要素によって総合的に判断され、誤報や警報の漏れによる不要な損失を抑制する。
【0019】
以下、図面と具体的な実施形態を合わせて本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】エネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法の構成を示すフローチャートである。
図2】エネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1及び図2に示すように、通常動作モード及び異常モードの2つのモードに分けられるエネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御方法は以下のステップを含む。
ステップ1):通常動作モードにおいて、電磁弁a9及び電磁弁N20を常に開き、電磁弁b8、電磁弁s10及び電磁弁d23を常に閉じ、電池パック15への窒素の充填を開始し、電池パック15内の検知器Aの酸素センサー値がa以下の場合、または、検知器の圧力センサー値がb以上の場合、電磁弁N20を閉じ、電池パック15への窒素の充填を停止する。電池パック15内の検知器Aの酸素センサー値がc以上であるとともに圧力センサー値がd以下の場合、電磁弁N20を開き、電池パック15へのN充填を開始する。
ステップ2):異常モードは、設備室21異常と電池室5異常とに分けられる。
設備室21の異常時に、検知器D2のレベル1早期警報閾値D1、レベル2早期警報閾値D2を設定し、検知器D2の検知値がレベル1早期警報閾値D1よりも大きくてレベル2早期警報閾値D2よりも小さい場合、検知器D2がレベル1早期警報に達したと判定し、音と光のアラームが点滅してブザーが鳴動し、一方、検知器D2の検知値がレベル2早期警報閾値D2よりも大きい場合、検知器D2がレベル2早期警報に達したと判定し、検知器D2が電磁弁d23を開いて電磁弁a9を閉じ、電磁弁b8及び電磁弁s10を閉じた状態に維持し、ガス消火剤容器X19を起動し、設備室21内へのガス消火剤の噴射を開始する。
電池室5が異常モードの場合、複合検知器A14のレベル1早期警報閾値A1、レベル2早期警報閾値A2、複合検知器B7のレベル1早期警報閾値B1、レベル2早期警報閾値B2、複合検知器C3のレベル1早期警報閾値C1、レベル2早期警報閾値C2を設定する。電池パック15内の複合検知器A14の検知値が第1早期警報閾値A1以上であって第2早期警報閾値A2以下の場合、音と光のアラームが点滅してブザーが鳴動するように中央制御装置17が制御する。電池パック15内の複合検知器A14の検知値が第2早期警報閾値A2以上であるとともに、電池クラスタ16内の検知器Bの検知値が第1早期警報閾値B1以上であって第2早期警報閾値B2以下の場合、警報する検知器Aは、それの所在する電池パック15の電磁弁a9を常に開いて残りの電池パック15の電磁弁a9を閉じるよう制御し、ガス消火剤容器X19を起動し、熱暴走が発生した電池パック15へのガス消火剤の噴射を開始する。複合検知器B7の検知値が第2早期警報閾値B2以上の場合、熱暴走が発生した電池パック15の所在する電池クラスタ16の電磁弁b8を開くよう複合検知器B7が制御し、電池クラスタ16内へのガス消火剤の噴射を開始する。複合検知器C3の検知値が第1早期警報閾値C1以上であって第2早期警報閾値C2以下の場合、ガス消火剤容器Y12を起動し、電池室5スペース内へのガス消火剤の噴射を開始する。複合検知器C3の検知値が第2早期警報閾値C2以上の場合、電磁弁s10を開き、電池室5への外部消火水の噴射を開始する。
【0022】
エネルギー貯蔵発電所の「5段階保護」
(1)多領域:電池パック15、電池クラスタ16、電池室5、設備室21、具体的には、最小の消火ユニットである単一の電池パック15に対して、消火が可能である。単一の電池パック15の早期警報レベルによって、対応する消火措置を実施し、他の電池パック15に影響を与えることはなく、単一の電池パック15を過度に消火することもなく、不要な損失を最低限に抑える。
(2)能動保護:不活性ガス、例えば、Nを設備室21、電池クラスタ16内及び電池パック15内にそれぞれ充填して酸素濃度を低下させ、酸素を遮断し、通常動作モードにおいて、設備室21、電池クラスタ16内及び電池パック15内に対して防御性の保護を果たす。本発明では、電池室5内に全体的にNを充填することなく、ターゲットを絞って電池クラスタ16内及び電池パック15内にNを充填することで、Nの使用量を減らすと同時にNによる効果的な保護を向上させる。
(3)検知:複合検知器による複数の検知要素の検知技術により、複数の検知要素を総合的に判断し、警報の漏れや誤報を抑制する。複合検知器は、他の単一のセンサーと比較して、機能がより包括的になり、エネルギー貯蔵発電所における専用面積がより小さく、制御がより容易であり、接続がより簡単であり、例えば、複合検知器A14のVOC、煙、CO、温度は、早期警報レベルの識別に包括的かつ信頼性の高いデータを提供し、一方、O、圧力は、通常動作モードにおいて充填されるNの充填量や充填の開始、停止の参考データとしてもよい。
(4)抑制;ガス消火剤及び外部消火水
本発明の外部消火水は、消火の最終手段として用いられ、従来技術の水系消火剤の高導電性といった欠点を解消し、水系消火剤をエネルギー貯蔵発電所の冷却手段とすることができる。エネルギー貯蔵発電所への従来技術における水系消火剤の適用には、操作上の問題があり、水系消火剤による実際のエネルギー貯蔵発電所の消火では、1つの水接続口を予め保留することのみであり、作業員が火災を見つけて外部の消火水に接続する必要があり、時間の遅れが深刻である。そのため、本発明の発明者は、従来技術の欠点と組み合わせて、水系消火剤の高導電性の特性によって小さな火災でもエネルギー貯蔵発電所全体を麻痺させる可能性がある欠点と、外部消火水に接続する操作による時間の遅れが発生して即時に冷却できないおそれがあるという問題を総合的に考慮し、水系消火剤の使用の早期警告レベルを改善した。
(5)段階的な早期警報保護:多領域における各領域の特徴によって、エネルギー貯蔵発電所自身の保護要求に応じて、不要な消火に伴う損失を抑え、段階的かつ領域毎に対応する消火手段を起動する。
【0023】
ステップ2)では、前記複合検知器A14に含まれる検知要素としては、VOC、煙、CO、温度、O、圧力がある。複合検知器A14のCO、VOC、煙及び温度である4つの検知要素のいずれかがレベル1早期警報閾値A1に達するとともに、CO、VOC、煙及び温度である4つの検知要素の検知値がいずれもレベル2早期警報閾値A2よりも小さいと、検知器Aの現在の早期警報レベルがレベル1早期警報であると判定する。
【0024】
前記複合検知器A14のCO、VOC、煙及び温度である4つの検知要素が同時にレベル2早期警報閾値A2に達すると、複合検知器A14の現在の早期警報レベルがレベル2早期警報であると判定する。
【0025】
ステップ2)では、前記複合検知器B7に含まれる検知要素としては、火炎、H、煙、温度がある。複合検知器B7のH、煙、温度である3つの検知要素のいずれかがレベル1早期警報閾値B1に達してレベル2早期警報閾値B2よりも小さいとともに、火炎センサー数値に変化がない場合、検知器Bの現在の早期警報レベルがレベル1早期警報であると判定する。
【0026】
前記複合検知器B7のH、煙、温度である3つの検知要素が同時にレベル2早期警報閾値B2に達するとともに、火炎センサー数値がレベル2早期警報閾値B2に達した場合、複合検知器B7の現在の早期警報レベルがレベル2早期警報であると判定する。
【0027】
ステップ2)では、前記複合検知器C3の検知要素としての煙及び火炎の検知値が同時にレベル1早期警報閾値C1に達すると、複合検知器C3の現在の早期警報レベルがレベル1早期警報であると判定する。
【0028】
前記複合検知器C3の検知要素としての煙及び火炎の検知値が同時にレベル2早期警報閾値C2に達すると、複合検知器C3の現在の早期警報レベルがレベル2早期警報であると判定する。
【0029】
前記検知器D2の検知要素としては、VOCがある。本発明のレベル1早期警報閾値A1、レベル2早期警報閾値A2、レベル1早期警報閾値B1、レベル2早期警報閾値B2、レベル1早期警報閾値C1、レベル2早期警報閾値C2は、1つの具体的な値ではなく、検知器D2、複合検知器C3、複合検知器B7、複合検知器A14にそれぞれ含まれる検知要素に応じて設定される対応する値である。例えば、複合検知器A14では、検知要素が、VOC、煙、CO、温度、O、圧力を含むと、レベル1早期警報閾値A1は、VOCの値A13、COの値A11、煙の値A14、温度の値A15に対応する必要がある。本技術分野の従来の熱暴走基準に応じて、VOCのレベル1早期警報閾値A13、COのレベル1早期警報閾値A11、煙のレベル1早期警報閾値A14、温度のレベル1早期警報閾値A15をそれぞれ設定する。同様に、レベル2早期警報閾値A2は、VOCのレベル2早期警報閾値A23、COのレベル2早期警報閾値A21、煙のレベル2早期警報閾値A24、温度のレベル2早期警報閾値A25に対応する必要がある。VOCの検知値がレベル1早期警報閾値A13に達した場合、または、COの検知値がレベル1早期警報閾値A11に達した場合、または、煙の検知値がレベル1早期警報閾値A14に達した場合、または、温度の検知値がレベル1早期警報閾値A15に達した場合、かつ、VOCの検知値がレベル2早期警報閾値A23よりも小さく、COの検知値がレベル2早期警報閾値A21よりも小さく、煙の検知値がレベル2早期警報閾値A24よりも小さく、温度の検知値がレベル2早期警報閾値A25よりも小さい場合、検知器Aの現在の早期警報レベルがレベル1早期警報であると判定する。複合検知器B7のレベル1早期警報閾値B1は、Hのレベル1早期警報閾値B12、煙のレベル1早期警報閾値B14、温度のレベル1早期警報閾値B15、炎のレベル1早期警報閾値B16に対応する必要がある。レベル2早期警報閾値B2は、Hのレベル2早期警報閾値B22、煙のレベル2早期警報閾値B24、温度のレベル2早期警報閾値B25、炎のレベル2早期警報閾値B26に対応する必要がある。複合検知器C3のレベル1早期警報閾値C1は、煙のレベル1早期警報閾値C14、炎のレベル1早期警報閾値C16に対応する必要がある。レベル2早期警報閾値C2は、煙のレベル2早期警報閾値C24、炎のレベル2早期警報閾値C26に対応する必要がある。検知器D2のレベル1早期警報閾値D1は、VOCのレベル1早期警報閾値D13に対応し、レベル2早期警報閾値D2は、VOCのレベル2早期警報閾値D23に対応する。複合検知器B7、複合検知器C3、検知器D2の各レベルの早期警報閾値は、業界の従来技術によって決められ、具体的な判断方法は上記の複合検知器A14と同様である。
【0030】
【0031】
【0032】
前記複合検知器A14のCO、VOC、煙及び温度である4つの検知要素は、同時にレベル2早期警報閾値A2に達すると、複合検知器A14の現在の早期警報レベルがレベル2早期警報であると判定する。
【0033】
エネルギー貯蔵発電所の窒素保護と多領域の段階毎の検知、防御システムは、エネルギー貯蔵発電所としてエネルギー貯蔵コンテナ1の形態を採用し、設備室21及び電池室5に分けられる。電池室5内には、複数組の電池クラスタ16が設置され、各組の電池クラスタ16内には、複数の電池パック15が設置され、中央制御装置17、不活性ガスボンベセット、ガス消火剤容器X19、ガス配管M22、電磁弁N20、電磁弁d23、検知器D2、複合検知器C3、複合検知器B7、複合検知器A14、電磁弁a9、電磁弁b8、ガス配管N6、ガス消火剤容器Y12、電磁弁s10、スプリンクラー4及び外部消火水接続口11を含む。前記中央制御装置17、電磁弁d23、電磁弁N20、ガス消火剤容器X19、不活性ガスボンベセット及び検知器D2は、設備室21内に設置される。ガス配管M22の一端は、設備室21内に伸びてガス消火剤容器X19、不活性ガスボンベセットにそれぞれ連結される。ガス配管M22の他端は、電池室5の単一の電池クラスタ16及び単一の電池パック15内にそれぞれ伸びる。不活性ガスボンベセットの排出口端には、電磁弁N20が設置され、設備室21内のガス噴出端には、電磁弁d23が設置される。単一の電池クラスタ16内に挿入されるガス配管M22には、電磁弁b8が設けられる。単一の電池パック15内に挿入されるガス配管M22には、電磁弁a9が設けられる。単一の電池パック15内には、複合検知器A14が設けられる。単一の電池クラスタ16内には、複合検知器B7が設けられる。電池室5の頂部には、複数の複合検出器C3が設けられる。設備室21の頂部には、検知器D2が設けられる。ガス配管N6の一端は、電池室5内に伸びて複数のスプリンクラー4に連結される。ガス配管N6の一端は、電池室5外に伸びてガス消火剤容器Y12及び外部消火水接続口11にそれぞれ連結される。外部消火水接続口11の排水端には、電磁弁s10が設置される。前記電磁弁N20、電磁弁d23、検知器D2、複合検知器C3、複合検知器B7、複合検知器A14、電磁弁a9、電磁弁b8、電磁弁s10は、それぞれ中央制御装置17に電気的に接続される。
【0034】
本明細書において、「上」、「中」、「外」、「内」等の方位または位置関係を示す用語は、本発明の説明を容易にするためのものに過ぎず、表される部材または部品が必ず特定の方位を有し、特定の方位で構成および操作されることを示唆するわけではないため、本発明を制限するものではない。
【0035】
本発明は、当該技術分野における当業者にとって、上記例示的実施例の詳細に限定されることなく、本発明の趣旨または基本的な特徴を逸脱しない範囲で、他の具体的態様で達成されることは言うまでもない。従って、実施例は、いずれかの点において、決して限定的ではなく例示的ものであって、本発明の範囲が上記の説明ではなく添付の請求項により限定され、そのため、請求項における同等要素の意味および範囲におけるすべての変化が本発明に含まれている。請求項におけるいずれの図面符号も、係る請求項を限定しない。
【0036】
なお、本明細書は、実施形態に従って解釈を行ったが、各実施形態は、それぞれ独立した技術的解決策を1つしか含んでいないわけではなく、また、明細書は、このような記載が、詳しい説明のために過ぎず、当該技術分野における当業者は、該明細書を1つの全体として理解すべきであり、各実施例における技術的態様を適切に組み合わせることによって、当業者が理解できる他の実施形態を形成することもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 エネルギー貯蔵コンテナ
2 検知器
3 複合検知器C
4 スプリンクラー
5 電池室
6 ガス配管
7 複合検知器
8 電磁弁b
9 電磁弁a
10 電磁弁s
11 外部消火水接続口
12 ガス消火剤容器Y
13 逆止弁
14 複合検知器
15 電池パック
16 電池クラスタ
17 中央制御装置
18 窒素ボンベセット
19 ガス消火剤容器X
20 電磁弁N
21 設備室
22 ガス配管M
23 電磁弁d
図1
図2