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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】無人航空機システムおよび飛行制御方法
(51)【国際特許分類】
   B64C 13/20 20060101AFI20240130BHJP
   B64U 20/80 20230101ALI20240130BHJP
   G05D 1/223 20240101ALI20240130BHJP
   G05D 1/46 20240101ALI20240130BHJP
【FI】
B64C13/20 C
B64U20/80
G05D1/223
G05D1/46
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020007201
(22)【出願日】2020-01-21
(65)【公開番号】P2021113005
(43)【公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000101732
【氏名又は名称】アルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(72)【発明者】
【氏名】舘 陽介
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2017/026337(JP,A1)
【文献】特開2019-169065(JP,A)
【文献】特開2019-064349(JP,A)
【文献】特開2019-179507(JP,A)
【文献】米国特許第10032275(US,B1)
【文献】特開2020-118641(JP,A)
【文献】特許第6811483(JP,B2)
【文献】特開2020-006793(JP,A)
【文献】特開2019-195176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/20
B64C 39/02
B64U 10/00
B64U 20/80
G05D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無人航空機と当該無人航空機を遠隔操作可能な送信機とを含む無人航空機システムであって、
前記無人航空機は、
対象物の位置を検出する検出手段と、
飛行を制御する制御手段と、
前記送信機と通信する通信手段とを含み、
前記送信機は、
前記無人航空機を遠隔操作するための操作部と、
前記操作部の操作に応じた操作信号を生成する生成手段と、
前記操作信号を前記無人航空機に送信する送信手段と、
通常の飛行モードまたは自動飛行モードを選択する選択手段とを含み、
前記生成手段は、前記選択手段で選択されたモードに応じて前記操作部に割り当てられる操作信号を変更し、
前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づき無人航空機の自動飛行を制御中に、前記通信手段を介して前記送信機から受け取った前記操作信号に基づく割り込み飛行制御を可能にする操作モードを有する、無人航空機システム。
【請求項2】
前記操作モードは、前記対象物と前記無人航空機との間の距離または相対角度の一方を固定し、他方を変更可能にする、請求項1に記載の無人航空機システム。
【請求項3】
前記自動飛行は、前記無人航空機と対象物との間の距離および相対角度を維持しつつ対象物を追尾する、請求項1に記載の無人航空機システム。
【請求項4】
前記生成手段は、前記自動飛行モードが選択されているとき、前記通常の飛行モードのときに割り当てられる操作信号を前記自動飛行モード用に変更する、請求項1に記載の無人航空機システム。
【請求項5】
前記操作部は、ユーザーにより操作可能なスティックを含み、
前記生成手段は、前記スティックの操作方向に基づき前記操作信号を生成し、
前記生成手段は、前記自動飛行モードのとき、通常の飛行モードのときにスティックに割り当てられた操作信号と異なる操作信号を生成する、請求項1に記載の無人航空機システム。
【請求項6】
前記生成手段は、前記通常の飛行モードのとき、前記スティックの第1および第2の操作方向に基づき前記無人航空機を上昇および下降させる操作信号を生成し、前記自動飛行モードのとき、前記第1および第2の操作方向に基づき前記無人航空機と対象物との間の距離を離間および接近させる操作信号を生成する、請求項5に記載の無人航空機システム。
【請求項7】
前記生成手段は、前記通常の飛行モードのとき、前記スティックの第3および第4の操作方向に基づき前記無人航空機を左移動および右移動させる操作信号を生成し、前記自動飛行モードのとき、前記第3および第4の操作方向に基づき前記無人航空機と対象物との間の左側の相対角度および右側の相対角度を変化させる操作信号を生成する、請求項5または6に記載の無人航空機システム。
【請求項8】
前記第1および第2の操作方向は、前記スティックの上下方向の移動であり、前記第3および第4の操作方向は、前記スティックの左右方向の移動である、請求項6または7に記載の無人航空機システム。
【請求項9】
前記生成手段は、前記スティックを上方向または下方向に一定角度傾斜させたとき、前記無人航空機と対象物との距離を単位時間当たり一定の距離で増加または減少させる操作信号を生成する、請求項8に記載の無人航空機システム。
【請求項10】
前記生成手段は、前記スティックを左方向または右方向に一定角度傾斜させたとき、前記無人航空機と対象物との間の相対角度を単位時間当たり一定の角度で増加または減少させる操作信号を生成する、請求項8に記載の無人航空機システム。
【請求項11】
前記送信機はさらに、前記通常の飛行モードのとき、無人航空機を前進、後退、左旋回、右旋回させるための別のスティックを含み、
前記生成手段は、前記自動飛行モードのとき、前記別のスティックの第1および第2の操作方向に基づき前記無人航空機を前進および後進させる操作信号を生成し、第3および第4の操作方向に基づく左旋回および右旋回の操作信号を無効にする、請求項5に記載の無人航空機システム。
【請求項12】
前記送信機はさらに、前記通常の飛行モードのとき、無人航空機を前進、後退、左旋回、右旋回させるための別のスティックを含み、
前記生成手段は、前記自動飛行モードのとき、前記別のスティックの全ての操作方向に基づく操作信号を無効にする、請求項5に記載の無人航空機システム。
【請求項13】
前記検出手段は、LiDARを含み、対象物までの距離および相対角度を検出する、請求項1に記載の無人航空機システム。
【請求項14】
無人航空機と、当該無人航空機を遠隔操作可能な送信機とを含む無人航空機システムにおける飛行制御方法であって、
前記送信機は、前記無人航空機を遠隔操作するための操作部と、前記操作部の操作に応じた操作信号を生成する生成手段と、前記操作信号を前記無人航空機に送信する送信手段と、通常の飛行モードまたは自動飛行モードを選択する選択手段とを含み、前記生成手段は、前記選択手段で選択されたモードに応じて前記操作部に割り当てられる操作信号を変更し、
前記無人航空機は、対象物との距離および相対角度の検出結果に基づく自動飛行の制御中に、前記送信機から受け取った前記操作信号に基づく割り込み飛行制御を可能にする操作モードに移行し、
前記操作モードにおいて、前記操作信号に基づき前記無人航空機と対象物との距離および相対角度の一方を固定し他方を変更可能にする、飛行制御方法。
【請求項15】
前記自動飛行は、前記無人航空機と対象物との間の距離および相対角度を維持しつつ対象物を追尾する、請求項14に記載の飛行制御方法。
【請求項16】
前記生成手段は、前記自動飛行モードが選択されているとき、前記通常の飛行モードのときに割り当てられる操作信号を前記自動飛行モード用に変更する、請求項14に記載の飛行制御方法。
【請求項17】
前記操作部は、ユーザーにより操作可能なスティックを含み、前記生成手段は、前記スティックの操作方向に基づき前記操作信号を生成し、
前記生成手段は、前記自動飛行モードのとき、通常の飛行モードのときに前記スティックに割り当てられた操作信号と異なる操作信号を生成する、請求項14に記載の飛行制御方法。
【請求項18】
前記送信機は、前記通常の飛行モードのとき、前記スティックの第1および第2の操作方向に基づき前記無人航空機を上昇および下降させる操作信号を生成し、前記自動飛行モードのとき、前記第1および第2の操作方向に基づき前記無人航空機と対象物との間の距離を離間および接近させる操作信号を生成する、請求項14に記載の飛行制御方法。
【請求項19】
前記送信機は、前記通常の飛行モードのとき、前記スティックの第3および第4の操作方向に基づき前記無人航空機を左移動および右移動させる操作信号を生成し、前記自動飛行モードのとき、前記第3および第4の操作方向に基づき前記無人航空機と対象物との間の左側の相対角度および右側の相対角度を変化させる操作信号を生成する、請求項14または18に記載の飛行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドローン等の無人航空機と当該無人航空機を遠隔操作可能な送信機とを含む無人航空機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄塔に架設された送電線の表面などの点検は、作業者が双眼鏡を使って送電線の表面を直接目視したり、ヘリコプターから目視したり、鉄塔に登った人が電線を伝って確認したり、自走機を利用するなどして行っている。このような高所の構造物の点検に空撮機能を備えたドローンを接近させ、カメラで点検箇所を撮影し、作業者が点検箇所を目視するのと変わらない映像を得ることができれば、点検に要するコストを大幅に削減することが可能となる。また、決められた飛行ルートを決められた速度で飛行して離陸地点まで自動で戻り着陸するように機体を制御する自律制御技術の開発が進められ、実用化されつつある。
【0003】
特許文献1の空撮方法では、図1に示すように、自立制御により飛行するA/Cヘリ1は、予め設定された飛行ルートに従い、出発地点である地上局2を離陸した後、鉄塔Aの上方の(a)ポイントまで飛行し、次に、鉄塔Bの上方の(b)ポイントまで高架電線Wに沿って平行に飛行し、この間、高架電線Wがカメラの撮影領域の中心に位置するように高架電線Wを追尾しながら高架電線Wの映像を連続的に記録する。また、飛行中に高架電線Wまでの距離を測定し、測定された距離に応じてカメラのズーム倍率を調整することでカメラフレーム内に十分な大きさに拡大された高精細な高架電線Wの映像を記録できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-027448号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年では、ドローンのような小型無人航空機を使った架空地線・電線の点検システムや、ある範囲の地形をくまなく連続撮影することで地形の詳細な形状を得る測量システムの開発、実用化が進められている。ドローンには、点検対象物までの距離および角度を検出する物体検出センサ(例えば、LiDAR)が搭載され、ドローンは、物体検出センサの検出結果に基づき機体と点検対象物との位置関係が一定に保たれるように自律飛行することで、点検対象物を追尾しつつ点検対象物への接触が防止される。また、ドローンには、点検対象物を撮像するカメラがジンバルを介して搭載される。ジンバルは、カメラの向きを3次元方向で微調整することができるアクチュエータであり、ジンバルは、ドローンの姿勢が変化しても常にカメラが撮影対象物の方向を向くように、物体検出センサの検出結果を利用してカメラの角度を制御する。その結果、撮像フレームの中央に点検対象物が撮像されるように撮像が制御される。
【0006】
点検対象物の撮影時、ドローンは、構造物から一定の距離および角度を維持しながら自動航行されるが、気象状況や構造物の形状は配置等の理由により、ドローンを予め決められた距離や角度ではなく、距離や角度、撮影位置を調整したいケースがある。図2(A)は、ドローンと高架電線とを側方から見た図を示している。ドローン10に搭載されたカメラ12で高架電線Wを撮像するとき、太陽の位置に応じて影ができないようにドローン10と高架電線Wとの相対角度Sを調整したい場合や、ドローン10と高架電線Wとの距離Lを調整したい場合が生じる。図2(B)は、ドローンと構造物(ダム等)を側方から見た図を示している。ドローン10を構造物20の壁面に沿って飛行する際、構造物20との距離Lを調整したい場合がある。
【0007】
従来技術では、ドローン10が一定距離Lまたは相対角度Sを保持するためのパラメータは、数値で入力設定するものであり、ドローンの自動航行中に操作レバー等を用いて直感的にパラメータを変更することができなかった。また、ドローンの移動方向や速度を調整する際も、自動航行では予め設定した内容に基づき点検撮影を実施するため、フレキシビリティにかけるという課題があった。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決し、無人航空機の操作性を改善した無人航空機システムおよび飛行制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る無人航空機システムは、無人航空機と当該無人航空機を遠隔操作可能な送信機とを含むものであって、前記無人航空機は、対象物の位置を検出する検出手段と、飛行を制御する制御手段と、前記送信機と通信する通信手段とを含み、前記制御手段は、前記検出手段の検出結果に基づき無人航空機の自動飛行を制御中に、前記通信手段を介して前記送信機から前記無人航空機の遠隔操作に関する操作信号を受け取ったとき、前記操作信号に基づく割り込み飛行制御を可能にする操作モードを有する。
【0010】
ある実施態様では、前記操作モードは、前記対象物と前記無人航空機との間の距離または相対角度の一方を固定し、他方を変更可能にする。ある実施態様では、前記自動飛行は、前記無人航空機と対象物との間の距離および相対角度を維持しつつ対象物を追尾する。ある実施態様では、前記制御手段は、前記操作モードに移行したとき、受信した通常のモードの操作信号を前記操作モードの操作信号に切替える。ある実施態様では、前記送信機は、ユーザーにより操作可能なスティックと、前記スティックの操作方向に基づき前記操作信号を生成する生成手段と、生成された操作信号を前記無人航空機に送信する送信手段とを含み、前記生成手段は、前記操作モードのとき、通常モードのときにスティックに割り当てられた操作信号と異なる操作信号を生成する。ある実施態様では、前記生成手段は、前記通常モードのとき、前記スティックの第1および第2の操作方向に基づき前記無人航空機を上昇および下降させる操作信号を生成し、前記操作モードのとき、前記第1および第2の操作方向に基づき前記無人航空機と対象物との間の距離を離間および接近させる操作信号を生成する。ある実施態様では、前記生成手段は、前記通常モードのとき、前記スティックの第3および第4の操作方向に基づき前記無人航空機を左移動および右移動させる操作信号を生成し、前記操作モードのとき、前記第3および第4の操作方向に基づき前記無人航空機と対象物との間の左側の相対角度および右側の相対角度を変化させる操作信号を生成する。ある実施態様では、前記第1および第2の操作方向は、前記スティックの上下方向の移動であり、前記第3および第4の操作方向は、前記スティックの左右方向の移動である。ある実施態様では、前記生成手段は、前記スティックを上方向または下方向に一定角度傾斜させたとき、前記無人航空機と対象物との距離を単位時間当たり一定の距離で増加または減少させる操作信号を生成する。ある実施態様では、前記生成手段は、前記スティックを左方向または右方向に一定角度傾斜させたとき、前記無人航空機と対象物との間の相対角度を単位時間当たり一定の角度で増加または減少させる操作信号を生成する。ある実施態様では、前記送信機はさらに、前記通常モードのとき、無人航空機を前進、後退、左旋回、右旋回させるための別のスティックを含み、前記生成手段は、前記操作モードのとき、前記別のスティックの第1および第2の操作方向に基づき前記無人航空機を前進および後進させる操作信号を生成し、第3および第4の操作方向に基づく左旋回および右旋回の操作信号を無効にする。ある実施態様では、前記送信機はさらに、前記通常モードのとき、無人航空機を前進、後退、左旋回、右旋回させるための別のスティックを含み、前記生成手段は、前記操作モードのとき、前記別のスティックの全ての操作方向に基づく操作信号を無効にする。ある実施態様では、前記検出手段は、LiDARを含み、対象物までの距離および相対角度を検出する。
【0011】
本発明に係る飛行制御方法は、無人航空機と、当該無人航空機を遠隔操作可能な送信機とを含む無人航空機システムにおけるものであって、前記無人航空機は、対象物との距離および相対角度の検出結果に基づく自動飛行の制御中に、前記送信機から前記無人航空機の遠隔操作に関する操作信号を受け取ったとき、前記操作信号に基づく割り込み飛行制御を可能にする操作モードに移行し、前記操作モードにおいて、前記操作信号に基づき前記無人航空機と対象物との距離および相対角度の一方を固定し他方を変更可能にする。
【0012】
ある実施態様では、前記自動飛行は、前記無人航空機と対象物との間の距離および相対角度を維持しつつ対象物を追尾する。ある実施態様では、前記操作モードに移行したとき、受信した通常のモードの操作信号を前記操作モードの操作信号に切替える。ある実施態様では、前記送信機は、ユーザーにより操作可能なスティックを含み、前記スティックの操作方向に基づき前記操作信号を生成し、生成した操作信号を前記無人航空機に送信し、前記送信機は、前記操作モードのとき、通常モードのときに前記スティックに割り当てられた操作信号と異なる操作信号を無人航空機に送信する。ある実施態様では、前記送信機は、前記通常モードのとき、前記スティックの第1および第2の操作方向に基づき前記無人航空機を上昇および下降させる操作信号を生成し、前記操作モードのとき、前記第1および第2の操作方向に基づき前記無人航空機と対象物との間の距離を離間および接近させる操作信号を生成する。ある実施態様では、前記送信機は、前記通常モードのとき、前記スティックの第3および第4の操作方向に基づき前記無人航空機を左移動および右移動させる操作信号を生成し、前記操作モードのとき、前記第3および第4の操作方向に基づき前記無人航空機と対象物との間の左側の相対角度および右側の相対角度を変化させる操作信号を生成する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、無人航空機の自動飛行の制御中に、送信機からの操作信号に基づく割込み飛行制御を可能にする操作モードを備えるようにしたので、無人航空機の遠隔操作のフレキシビリティを増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来の高架電線等を空撮する無人航空機の例を説明する図である。
図2図2(A)は、ドローンと高架電線とを側方から見た模式図であり、図2(B)は、ドローンと構造物とを側方から見た模式図である。
図3】本発明の実施例に係る無人航空機システムの構成を示すブロック図である。
図4】本発明の実施例に係る無人航空機の電気的な構成を示すブロック図である。
図5】本発明の実施例に係る無人航空機システムの飛行モードを示す図である。
図6】本発明の実施例に係る送信機の電気的な構成を示すブロック図である。
図7図7(A)は、通常の飛行モードのときにスティックの移動方向に割り当てられた操作信号を説明する図、図7(B)は、割込み操作モードのときにスティックの移動方向に割り当てられた操作信号を説明する図である。
図8図8(A)は、通常の飛行モードのときにスティックを上方向に倒したときの無人航空機の飛行を説明する図、図8(B)は、割込み操作モードのときにスティックを上方向に倒したときの無人航空機の飛行を説明する図である。
図9】本発明の実施例に係る無人航空機システムの動作を説明するフローチャートである。
図10図10(A)は、本実施例の割込み操作モード時の距離の微調整例を示し、図10(B)は、割込み操作モード時の相対角度の微調整例を示す。
図11図11(A)は、通常の飛行モードのときにスティックの移動方向に割り当てられた操作信号を説明する図、図11(B)は、第2の実施例による割込み操作モードのときにスティックの移動方向に割り当てられた操作信号を説明する図である。
図12】第2の実施例により割込み操作モードにおいて右スティックが操作されたときの無人航空機の飛行例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本発明の無人航空機システムは、例えば、ドローン、ヘリコプター、飛行船のような無人航空機と、無人航空機を遠隔操作可能な送信機とを含む。本発明の無人航空機システムは、人間が目視により点検することが難しい、鉄塔に架設された送電線、ダム等の構造物、土砂崩れなどの自然災害現場などの点検あるいは地形の測量などに用いられる。
【実施例
【0016】
図3は、本発明の実施例に係る無人航空機システムの構成を示す図である。無人航空機システム100は、無人航空機110と送信機120とを含む。以下の説明では、無人移動体としてドローンを図示する。無人航空機110は、機体本体に、点検対象物(例えば、高架電線やダム等の構造物)や測定対象物を撮影するための撮影カメラ112を搭載する。撮影カメラ112は、ジンバルのような角度調整アクチュエータを介して機体本体に取り付けられる。角度調整アクチュエータは、例えば、X軸、Y軸、Z軸の自由度3で撮影カメラ112の角度または姿勢を調整することが可能である。
【0017】
送信機120は、筐体122を含み、筐体122には、アンテナ124、操作用のスティック126A、126B、ディスプレイ128等が取り付けられる。また、筐体内部には、送信機120の動作を制御するための電子部品等が収容される。送信機120は、無線通信手段を介して無人航空機110と双方向のデータ通信が可能である。スティック126A、126Bは、無人航空機110を遠隔操作するためのレバーであり、本例では、2つのスティック126A、126Bは、それぞれ上下左右の4つの方向に傾斜することができ、スティック126A、126Bの移動方向に応じた操作信号が無人航空機110へ送信され、無人航空機110は、受信した操作信号に基づき飛行することが可能である。
【0018】
図4は、本実施例に係る無人航空機110の電気的な構成を示すブロック図である。無人航空機110は、GPS受信部200、自立航法センサ210、物体検出部220、撮影カメラ230、カメラ角度調整部240、ロータ駆動部250、記憶部260、出力部270、通信部280および制御部290を含んで構成される。但し、上記構成は一例であり、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0019】
GPS受信部200は、GPS衛星から発せられるGPS信号を受信し、無人航空機110の緯度、経度を含む絶対位置を検出する。無人航空機110は、予め用意された飛行情報に従い自動航行することが可能である。飛行情報は、例えば、図1に示すように、出発地点である地上局2、鉄塔Aの(a)ポイント、鉄塔Bの(b)ポイント、帰還地点である地上局2を飛行する飛行ルート(緯度、経度の位置情報を含む)や、飛行速度、飛行高度、対象物を追尾する場合には対象物との間の距離および相対角度などの飛行条件などを含む。無人航空機110は、GPS受信部200で検出された位置情報を利用して飛行ルートに従い飛行する。
【0020】
自立航法センサ210は、無人航空機110が自立航法するために必要なセンサ、例えば、方位センサや高度センサを含む。自立航法センサ210のセンサ出力は、飛行情報に従い自律飛行するときの制御に利用され得る。
【0021】
物体検出部220は、点検対象物までの相対的距離および角度を検出する。物体検出部220は、例えば、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)を用いて構成される。LiDARは、パルス状に発光するレーザーを360度の方位で照射し、そのレーザー照射に対する反射光を測定することで、物体までの距離および角度を検出する。物体検出部220は、例えば、点検対象物である高架電線Wまでの距離および角度を検出したり、測量対象物である検証点までの距離および角度を検出する。なお、物体検出部220は、LiDARに限定されず、これ以外にも1つまたは複数のカメラを用いて物体までの距離および角度を検出するものであってもよい。無人航空機110は、物体検出部220の検出結果に基づき、点検対象物である高架電線Wと一定の距離および角度を保つように高架電線Wを追尾し、あるいは測定対象物である検証点と一定の距離および角度を保つように検証点を追尾することができる。
【0022】
撮影カメラ230は、上記したように、機体本体の下部に角度調整アクチュエータを介して取り付けられる。撮影カメラ230は、点検対象物である高架電線やダム等の構造物、あるいは測定対象物である検証点の動画を撮像し、例えば、1秒間に24個の映像フレーム(静止画)を生成する。さらに撮影カメラ230は、ズーム機能を備え、映像フレーム内に一定の大きさの対象物が撮像されるように、その倍率が調整される。
【0023】
カメラ角度調整部240は、制御部290からの角度調整信号に応答して角度調整アクチュエータを駆動し、撮影カメラ230の角度を調整する。制御部290は、自立航法センサ210や物体検出部220の検出結果に基づき撮影カメラ230の撮像方向(撮影カメラのレンズの光軸)が鉛直方向となる角度を算出し、その算出結果に基づき角度調整信号を生成する。カメラ角度調整部240は、角度調整信号に基づき角度調整アクチュエータを駆動し、撮像カメラ230の撮影方向を調整する。例えば、カメラ角度算出部240は、撮像カメラ230の撮影方向(光軸)が鉛直方向になるように角度を算出し、高架電線Wや検証点を真上から空撮する。
【0024】
ロータ駆動部250は、制御部290からの駆動信号に基づきプロペラ等に接続されたロータを回転させる。制御部290は、GPS受信部200、自立航法センサ210および物体検出部220により検出された情報を用い、送信機120からの操作信号や飛行情報に基づき無人航空機110の飛行を制御するための駆動信号を生成する。対象物を自動追尾する場合には、対象物との距離および相対角度を一定に保つような自動制御が行われる。
【0025】
記憶部260は、無人航空機110を動作させるために必要な種々の情報を記憶する。記憶部260は、例えば、予め用意された飛行情報を記憶したり、制御部290が実行するためのプログラムやソフトウエアを記憶したり、撮影カメラ230で撮像された点検対象物や測定対象物の映像データを記憶する。
【0026】
出力部270は、記憶部260に記憶された情報を読出し、これを外部に出力する。出力部270の構成は特に限定されないが、例えば、出力部270は、記憶部260の映像データを表示する表示部を備えることができ、あるいは記憶部260から読み出した映像データ等を通信部280を介して送信機120や外部の基地局に有線または無線により出力することができる。
【0027】
通信部280は、無人航空機110と送信機120との間で無線によるデータ通信を可能にしたり、あるいは有線または無線により外部の基地局との間でデータ通信を可能にする。送信機120は、通信部280を介して無人航空機110を遠隔操作するための操作信号を送信したり、あるいは無人航空機110は、撮影カメラ230で撮影したリアルタイムの映像データや記憶部260から読み出した映像データ等を送信機120や基地局に送信することが可能である。
【0028】
制御部290は、無人航空機110の各部を制御する。ある実施態様では、制御部290は、ROM/RAMを含むマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、画像処理プロセッサ等を含み、記憶部260あるいはROM/RAMに格納されたプログラムやソフトウエアを実行することで無人航空機110の飛行や点検対象物の撮影を制御する。
【0029】
本実施例では、無人航空機110は、図5に示すように、3つの飛行モードを有する。通常の飛行モード300は、送信機120からの操作信号に基づき無人航空機110の飛行を制御する。自動飛行モード310は、点検対象物や測定対象物を追尾するように無人航空機110の自動飛行を制御する。自動飛行モードでは、GPS受信部200で検出された絶対位置(緯度、経度、高度)や自立航法センサ210で検出された方位や高度等に基づき、予め用意された飛行ルートを無人航空機110が飛行するように制御する。さらに自動飛行モード310では、物体検出部220により検出された点検対象物や測定対象物と距離および相対角度を一定に保ちながら対象物を追尾するように無人航空機110の自動飛行が制御される。割込み操作モード320は、自動飛行モード310中に、送信機120から遠隔操作のための操作信号を受信した場合、操作信号による飛行制御の割込みを行う。この詳細は後述する。
【0030】
図6は、本実施例の送信機120の電気的な構成を示すブロック図である。送信機120は、スティック126A、126B(図3を参照)の移動方向に応じた操作入力を受け取る入力部400、アンテナ124を介して無人航空機110と無線通信によるデータ通信を可能にしたり他の電子装置と有線または無線によるデータ通信を可能にする通信部410、筐体122のディスプレイ128に種々の情報(例えば、無人航空機110から送信される点検対象物等の映像データ、飛行モードの状態など)を表示する表示部420、音声出力部430、種々のデータやソフトウエア等を記憶する記憶部440、送信機120の全体を制御する制御部450を含む。
【0031】
ある実施態様では、制御部450は、ROM/RAMを含むマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ等を含み、記憶部440あるいはROM/RAMに格納されたプログラムやソフトウエアを実行することで無人航空機110の遠隔操作等を制御する。
【0032】
制御部450は、通常の飛行モードか自動飛行モードかを選択するモード選択部452と、スティックの移動方向に割り当てられた操作信号を生成する操作信号生成部454と、操作信号を通信部410を介して無人航空機110へ送信する操作信号送信部456とを含む。モード選択部452は、通常の飛行モード300または自動飛行モード310を選択する。例えば、筐体122に設けられたスイッチをユーザーが操作することで通常の飛行モード300または自動飛行モード310が選択される。
【0033】
操作信号生成部454は、モード選択部252で選択されたモードに応じて、スティック126A、126Bの移動方向に割り当てられた操作信号を生成するが、本実施例では、通常の飛行モード300のときと割込み操作モード320のときとで、スティック126A、126Bに割り当てられる操作信号を変更する。
【0034】
図7(A)は、通常の飛行モードのときのスティックと操作信号との関係を示す図である。左右のスティック126A、126Bはそれぞれ上下左右に傾斜させることが可能である。右のスティック126Aの上下方向はそれぞれ機体の上昇および下降の操作信号に割り当てられ、左右方向はそれぞれ機体の左移動および右移動の操作信号に割り当てられる。左のスティック126Bの上下方向はそれぞれ機体の前進および後進の操作信号に割り当てられ、左右方向はそれぞれ機体の左旋回および右旋回の操作信号に割り当てられる。
【0035】
図7(B)は、割込み操作モードのときのスティックと操作信号との関係を示す図である。この場合、右スティック126Aの上下方向はそれぞれ機体と対象物との間の距離の離間および接近の操作信号に割り当てられ、左右方向はそれぞれ機体と対象物との間の左右方向の相対角度を変化させる操作信号に割り当てられる。一方、左スティック126Bの移動方向に対応する操作信号は全て無効にされる。
【0036】
操作信号送信部456は、生成された操作信号を無人航空機110へ送信し、無人航空機110の制御部290は、受信した操作信号に基づきロータ駆動部250を介して無人航空機の飛行を制御する。
【0037】
図8(A)は、通常の飛行モードのときにスティック126Aが上方向に一定角度傾斜倒されたときの無人航空機110の飛行制御を示している。この場合、無人航空機110は、GPS信号等から算出された現在位置をもとに、一定速度(例えば、0.5m/秒)で上昇するように制御される。図8(B)は、割込み操作モードのときにスティック126Aが上方向に一定角度傾斜倒されたときの無人航空機110の飛行制御を示している。この場合、LiDAR等の物体検出部220の検出結果をもとに、無人航空機110と点検対象物(高架電線W)との間の距離Lが一定速(例えば、0.5m/秒)で増加するように制御される。スティック126Aの傾斜時間に応じて相対距離Lを増加させてもよいし、スティック126Aの傾斜回数に応じて相対距離Lを増加させてもよい。例えば、スティック126Aを1回傾斜させれば相対距離Lが0.5mだけ増加し、2回傾斜させれば相対距離Lが1.0mだけ増加するようにしてもよい。
【0038】
また、図示しないが、通常の飛行モードのときにスティック126Aが右方向に一定角度傾斜倒された場合には、無人航空機110は、GPSから算出された現在位置や自立航法センサ210の検出結果をもとに、一定速度で右方向に移動するように飛行が制御される。割込み操作モードのときのスティック126Aが右方向に一定角度傾斜された場合には、無人航空機110は、物体検出部220の検出結果をもとに、無人航空機110と点検対象物との相対角度が大きくなるように(本例では、点検対象物の鉛直方向を角度ゼロとし、そこから右側の角度が一定速で大きくなるように)飛行が制御される。
【0039】
次に、本実施例の無人航空機システムの動作について説明する。先ず、無人航空機の飛行モードが選択される。モード選択部452は、例えば、送信機120のスイッチのユーザー操作に応じて通常の飛行モード300または自動飛行モードを選択する。通常の飛行モード300が選択された場合、ユーザーが送信機120の左右のスティック126A、126Bを操作し、スティック126A、126Bの移動方向に対応する操作信号が通信部410を介して無人航空機110に送信される。無人航空機110は、通信部280を介して操作信号を受信し、制御部290は、受信した操作信号に基づきロータ駆動部250を介して無人航空機110の飛行を制御する。
【0040】
次に、自動飛行モードが選択された場合の動作を図9のフローを参照して説明する。先ず、送信機120において自動飛行モードが選択されると(S100)、送信機120は、通信部410を介して無人航空機にモードを通知し、両者は、選択されたモードを共有する。
【0041】
無人航空機110において、自動飛行をする前に、記憶部260等に飛行ルートや飛行条件を含む飛行情報が設定される(S100)。飛行ルートは、例えば、高架電線等の対象部の点検撮影を行う場合、点検を開始するスタート地点と点検を終了する終了地点の座標を含み、飛行条件は、飛行速度、対象物との間の距離や相対角度等を含む。無人航空機110は、自動飛行中、飛行情報に従いGPS受信部200、自立航法センサ210および物体検出部220の検出結果を用いて高架電線との距離および相対角度が一定となるように対象物を追尾しつつ撮影カメラ230により対象物を撮影する。飛行情報の設定方法は任意であるが、例えば、無人航空機110と基地局のコンピュータ装置とを接続し、コンピュータ装置から飛行情報を無人航空機110の記憶部260に書込んでもよいし、送信機120から無人航空機110に飛行情報を書込むようにしてもよい。
【0042】
飛行情報が設定されると、制御部290は、飛行情報に従い無人航空機110の自動飛行を開始させ(S120)、無人航空機110がスタート地点に到達すると、制御部290は、対象物との距離および相対角度を一定に保ちながら対象物を追尾させ、同時に対象物の撮影を開始する(S130)。初期設定されたパラメータでは、無人航空機110が対象物を追尾する場合、無人航空機110が対象物の真上に一定距離で位置し、その鉛直方向から対象物を撮影するものとする。無人航空機110で撮像された映像データは、記憶部260に格納したり、あるいは通信部280を介してリアルタイムで送信機120へ送信することができる。送信機120は、映像データをリアルタイムで受信した場合、この映像データをディスプレイ120に表示させることができる。
【0043】
無人航空機110の自動飛行中に、例えば図2(A)、(B)に示したように、高架電線Wとの距離Lや相対角度Sの微調整、あるいはダムの壁面との距離Lの微調整をしたい場合が生じる。例えば、太陽の位置に応じ、無人航空機の影が映らないように無人航空機と対象物との位置関係を調整したい場合や、対象物の損傷内容に合わせて機体をさらに接近させて細部を撮影したい場合、4本1組の電線を撮影するとき、角度によっては手前の電線で奥の電線が隠れてしまう場合などである。微調整の判断するタイミングは任意であるが、例えば、無人航空機110と対象物との位置関係を目視しているとき、あるいは無人航空機110から送信機120に送信された映像データをディスプレイ128で目視しているとき、あるいは無人航空機110が過去の飛行で撮像した映像データをディスプレイ128で目視しているとき等である。
【0044】
ユーザーは、微調整が必要であると判断した場合(S140)、送信機120のスティックを操作し、無人航空機110の対象物との距離または相対角度の微調整を行う(S150)。無人航空機110の制御部290は、自動飛行モード中に送信機120から操作信号を受信すると割込み操作モードに移行し(160)、送信機120から受信した操作信号に基づき無人航空機と対象物との距離または相対角度の一方を固定し他方を変更するような距離/角度の微調整を可能にする(S170)。
【0045】
図7に示すように、送信機120のスティック126A、126Bに割り当てられた操作信号は、通常モードと割込み操作モードとでは異なる。割込み操作モードでは、左スティック126Bの操作は無効であり、つまり、左スティック126Bを操作しても操作信号は無人航空機110へ送信されない。右スティック126Aを上下方向が操作した場合、操作信号生成部454は、無人航空機110と対象物との間の距離を離間または接近させる操作信号を生成し、左右方向に操作した場合、無人航空機110と対象物との左相対角度または右相対角度を可変する。
【0046】
図10(A)は、無人航空機と対象物との距離を微調整する例を示している。ここでは、対象物として高架電線Wを例示する。距離Lは、飛行情報により初期設定された値であり、ユーザーは、送信機120のスティック126Aを上下方向に操作することで無人航空機110と高架電線Wとの距離Lを距離Laまたは距離Lbに変更することができる。割込み操作モードでは、スティック126Aの上下方向が距離の離間および接近に割り当てられ、これは、通常の飛行モードのときの上昇および下降に対応するため、ユーザーは、混乱を生じることなく直感的に距離Lの微調整を行うことができる。
【0047】
図10(B)は、無人航空機と対象物との相対角度を微調整する例を示している。飛行情報の初期設定では、無人航空機110の中心軸(例えば、撮影カメラの光軸)が高架電線Wの真上となる値であるが(θ=0度)、ユーザーは、送信機120のスティック126Aを左方向に操作することで無人航空機110と高架電線Wとの相対角度をθaに変更し、スティック126Aを右方向に操作することで相対角度をθbに変更することができる。割込み操作モードでは、スティック126Aの左右方向が左右の相対角度の変更に割り当てられ、これは、通常の飛行モードのときの左移動および右移動に対応するため、ユーザーは、違和感を生じることなく直感的に相対角度の微調整を行うことができる。
なお、無人航空機110の制御部290は、無人航空機110の相対角度がθa、θbのように変更された場合には、カメラ角度調整部240により撮影カメラ230の光軸が高架電線Wに向けられるように、撮影カメラ230の姿勢も併せて調整される。
【0048】
無人航空機110の制御部290は、割込み操作モード中に送信機120から操作信号を一定期間受信しないとき、あるいは送信機120から割込み操作モードを終了する信号を受信したとき、割込み操作モードを終了し(S180)、自動飛行モードに移行し(S190)、微調整された距離および/または相対角度で対象物の撮影が行われる。
【0049】
このように本実施例によれば、自動飛行モード中に割込み操作モードを設けることで、無人航空機の遠隔操作にフレキシビリティを持たせることができる。さらに割込み操作モード時の送信機120のスティック操作を通常の飛行モードのときの操作に対応させるようにしたので、ユーザーは、混乱をきたすことなくスティックを操作することで直感的に距離および相対角度の微調整を行うことができる。
【0050】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。第1の実施例では、割込み操作モード時に送信機120の左スティック126Bの操作を無効にしたが、第2の実施例では、左スティック126Bの上下方向の前進および後進の操作を有効にする。図11(A)は、通常の飛行モード時のスティックと操作信号との関係を示し、図11(B)は、第2の実施例による割込み操作モード時のスティックと操作信号との関係を示す。第2の実施例では、操作信号生成部454は、割込み操作モードのとき、左スティック126Bが上下方向に操作されたとき、無人航空機110を前進または後進させる操作信号を生成し、左右方向に操作された場合には操作信号を生成しない。それ以外は、第1の実施例のときと同様の操作信号が生成される。
【0051】
割込み操作モード時に、左スティックを使用した調整例を図12(A)、(B)に示す。図12(A)は、対象物として高架電線Wを追尾しているとき、送信機120に左スティック126Bを左右方向に操作することで、無人航空機110と高架電線Wとの距離および相対角度を一定にしながら、無人航空機110をP方向に前進、またはQ方向に後進させることができる。図12(B)は、ダム等の構造物20の壁面を追尾しているとき、送信機120に左スティック126Bを左右方向に操作することで、無人航空機110と構造物20との距離および相対角度を一定にしながら、無人航空機110をP方向に前進、またはQ方向に後進させることができる。本実施例においても、割込み操作モードでは、左スティック126Bの上下方向が前進および後進に割り当てられ、これは、通常の飛行モードのときの前進および後進に対応するため、ユーザーは、混乱を生じることなく直感的に無人航空機の位置の微調整を行うことができる。
【0052】
次に、本発明の変形例について説明する。上記第1および第2の実施例では、送信機120が割込み操作モードのときの操作信号を切替える例(図7(B)、図11(B))を示したが、当該変形例では、無人航空機110が割込み操作モードのときの操作信号を切替える。
【0053】
無人航空機110の制御部290は、自動飛行モード中に、送信機120から操作信号(これは、通常の飛行モードのときに割り当てられた操作信号(図7(A)、図11(A)を参照)を受信すると、これに応答して割込み操作モードに移行し、さらに受信した通常の飛行モードの操作信号を割込み操作モードの操作信号(図7(B)、図11(B)を参照)に切替える。これにより、ユーザーは、通常の飛行モードのときと同様の感覚で無人航空機110の微調整を行うことができる。
【0054】
上記実施例では、高架電線や地形を撮影する例を示したが、これは一例であり、本発明は、他の高層建造物、自然災害地などの撮影にも適用することができる。さらに本実施例は、撮影カメラが角度調整アクチュエータを介して機体本体に取り付けられる例を示したが、撮影カメラそのものが電子的または光学的な撮影方向の角度調整機能を備えている場合には、角度調整アクチュエータは必ずしも必須ではない。
【0055】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は、特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の要旨の範囲において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
100:無人航空機システム 110:無人航空機
120:送信機 200:GPS受信部
210:自立航法センサ 220:物体検出部
230:撮影カメラ 240:カメラ角度調整部
250:ロータ駆動部 260:記憶部
270:出力部 280:通信部190
290:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12