(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】車両用空調制御装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/00 20060101AFI20240130BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20240130BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B60H1/00 103V
B60H1/32 626C
B60H1/32 626Z
B60R16/02 650C
(21)【出願番号】P 2018072298
(22)【出願日】2018-04-04
【審査請求日】2021-01-21
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】百瀬 堅祐
(72)【発明者】
【氏名】橋ヶ谷 英樹
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】間中 耕治
【審判官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0022279(KR,A)
【文献】特開2000-255344(JP,A)
【文献】特開2017-75779(JP,A)
【文献】特開2009-126218(JP,A)
【文献】特開2007-230385(JP,A)
【文献】特開2009-290789(JP,A)
【文献】特開2015-64137(JP,A)
【文献】特開2015-55390(JP,A)
【文献】特開2001-60095(JP,A)
【文献】特開2016-101822(JP,A)
【文献】特開2016-553(JP,A)
【文献】特開2016-20177(JP,A)
【文献】特開平10-104005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00
B60H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員に対して音声又は報知音により行われる各種報知ごとに報知の重要度が設定されており、前記報知の重要度
が高いほど空調風の風量を
低減させる
よう構成され、
前記報知の重要度は、車両衝突を回避又は車両衝突時に乗員の被害を軽減する報知ほど高く設定されていることを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項2】
乗員に対して音声又は報知音により行われる各種報知ごとに報知の重要度が設定されており、
車室内の騒音レベルと前記報知の重要度とに基づ
き空調風の風量を変化させる
よう構成され、
前記報知の重要度が高いほど前記空調風の風量を低減させることを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項3】
乗員に対して音声又は報知音により行われる各種報知ごとに報知の重要度が設定されており、
前記報知の重要度が高いほど車室内の騒音レベルが小さくなるよ
う空調風の風量を変化させる
よう構成され、
前記報知の重要度は、車両衝突を回避又は車両衝突時に乗員の被害を軽減する報知ほど高く設定されていることを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項4】
乗員に対して音声又は報知音により行われる各種報知ごとに報知の重要度が設定されており、
車室内の騒音レベルと前記報知の重要度とに基づき空調風の風量を変化させるよう構成され、
前記報知の重要度が高いほど車室内の騒音レベルが小さくなるよう前記空調風の風量を変化させることを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項5】
乗員に対して音声又は報知音により行われる各種報知ごとに報知の重要度が設定されており、
前記報知が行われる際には、前記報知の重要度と空調の重要度とに応じて
、空調風の風量を変化させる
よう構成され、
前記報知の重要度が高いほど車室内の騒音レベルが小さくなるよう前記空調風の風量を変化させることを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項6】
乗員に対して音声又は報知音により行われる各種報知ごとに報知の重要度が設定されており、
前記報知の重要度と空調の重要度とに基づき前記空調と前記報知のいずれが優先されるかを決定し、
前記空調よりも前記報知が優先されると決定した場合、車室内の騒音レベルが
小さくなるように、空調風の風量を
低減させ、
前記報知よりも前記空調が優先されると決定した場合、少なくとも現在の前記空調風の風量を維持することを特徴とする車両用空調制御装置。
【請求項7】
音声又は報知音により乗員に各種の報知を行う報知部と、
車室内の空気を導入する内気循環と車室外の空気を導入する外気導入とを切り替えて、内気又は外気のいずれかを取り入れる内外気切替部と、
前記内外気切替部によって取り入れられた内気又は外気のいずれかを前記空調風として車室内に送風する送風部と、
前記報知部により行われる報知の重要度に応じて前記送風部および前記内外気切替部を制御する制御部と、
車室内に設けられた複数の吹出口のうち、前記空調風が吹き出される吹出口を切り替える吹出口切替部と、
前記空調風として送風される空気を冷却する冷媒を圧縮する圧縮部と、
前記冷媒によって冷却された空気と内燃機関の冷却水との間で熱交換を行わせる熱交換部と、
前記熱交換部を通過する空気量を調整する空気量調整部と、を備え、
前記制御部は、前記送風部、前記吹出口切替部、前記内外気切替部、前記圧縮部及び前記空気量調整部のうち少なくともいずれかの動作状態に基づき前記空調の重要度を算出する請求項
5又は請求項
6に記載の車両用空調制御装置。
【請求項8】
前記空調風の風量変化は、送風部の送風量の低減、送風部により送風される空調風を車室内に吹き出す複数の吹出口の切り替え、または、空調モードの変更により行うことを特徴とする請求項
3から請求項5のいずれか1項に記載の車両用空調制御装置。
【請求項9】
乗員に対して音声又は報知音により行われる各種報知ごとに報知の重要度が設定されており、
前記報知の重要度は、車両衝突を回避又は車両衝突時に乗員の被害を軽減する報知ほど高く設定されており、
前記報知の重要度
が高いほど空調風の風量を
低減させる処理をコンピュータに実行させるための車両用空調制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、乗員の音声が入力されているときに、複数の吹出口のうちの音声の認識を阻害する吹出口を選択的に決定する吹出口決定手段と、音声が入力されているときに、車両用空調機が動作している場合には、吹出口決定手段によって決定された吹出口から吹き出される風量を所定量以下に制限する吹出口風量制御手段とを備えた車両用空調機の吹出制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両には、各種情報を乗員に音で報知する報知装置が搭載されたものがある。こうした報知装置を備えた車両にあっては、空調装置の作動時に吹出口から吹き出される空調風の吹出音等が、空調騒音として乗員による報知音の聞き取りの妨げとなるおそれがある。
【0005】
このような場合、例えば報知音が乗員に聞こえるように空調装置の作動時は空調装置の非作動時と比べて報知音の音量を大きくすることが考えられる。しかしながら、報知音の音量を大きくすると、車室内に大音量の報知音が鳴り響くこととなり乗員にとっての快適性が損なわれてしまう。
【0006】
また、報知装置による報知時は、特許文献1に記載の吹出制御装置のように、吹出口から吹き出される空調風の風量を、固定値である所定量に一律に制限することも考えられる。しかしながら、報知装置による報知時に空調風の風量を固定値である所定量に一律に制限すると、空調性能が低下し、車室内の快適性が損なわれてしまう。
【0007】
本発明は、上述のような事情に鑑みてなされたもので、車室内の快適性を損なうことなく、空調騒音によって音声又は報知音が聞こえづらくなることを防止できる車両用空調制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するため、乗員に対して音声又は報知音により行われる各種報知ごとに報知の重要度が設定されており、前記報知の重要度が高いほど空調風の風量を低減させるよう構成され、前記報知の重要度は、車両衝突を回避又は車両衝突時に乗員の被害を軽減する報知ほど高く設定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、車室内の快適性を損なうことなく、空調騒音によって音声又は報知音が聞こえづらくなることを防止できる車両用空調制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施例に係る車両用空調制御装置が適用される車両の構成図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施例に係る車両用空調制御装置が適用される車両の車室内に設けられた各種吹出口を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第1の実施例に係るA/C制御コントローラにより実行される空調設定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施例における騒音レベル算出マップを示す図である。
【
図5】
図5は、報知内容と報知レベルとの関係を示す図である。
【
図6】
図6は、報知レベルと許容騒音レベルとの関係を示す図である。
【
図7】
図7は、空調モード及びブロワファンの送風量の設定例を説明する図である。
【
図8】
図8は、本発明の第2の実施例における空調設定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、各種条件と空調の重要度との関係を示す図である。
【
図10】
図10は、報知レベルと報知の重要度との関係を示す図である。
【
図11】
図11は、報知の重要度と空調の重要度と空調の設定変更の内容との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る車両用空調制御装置は、音声又は報知音により乗員に各種の報知を行う報知部を備えた車両に用いられる車両用空調制御装置であって、車室内の空気を導入する内気循環と車室外の空気を導入する外気導入とを切り替えて、内気又は外気のいずれかを取り入れる内外気切替部と、内外気切替部によって取り入れられた内気又は外気のいずれかを空調風として車室内に送風する送風部と、報知部により行われる報知の重要度に応じて空調風の風量を変化させるよう送風部を制御する制御部と、を備え、各種の報知のうち、車両衝突を回避又は車両衝突時に乗員の被害を軽減する報知ほど前記報知の重要度が高く設定されていることを特徴とする。これにより、本発明の一実施の形態に係る車両用空調制御装置は、車室内の快適性を損なうことなく、空調騒音によって音声又は報知音が聞こえづらくなることを防止できる。
【0012】
以下、本発明の一実施例に係る車両用空調制御装置について説明する。
【実施例1】
【0013】
図1に示すように、本発明の第1の実施例に係る車両用空調制御装置が適用される車両1は、空調ユニット7と、A/C制御コントローラ8と、報知機能コントローラ50と、を含んで構成されている。車両1としては、例えば電気自動車、ハイブリッド車両、ガソリン車又はディーゼル車等の各種車両を適用可能である。
【0014】
空調ユニット7は、車室内の空調を行うものであり、A/C制御コントローラ8による空調制御に基づく空調動作を実行するようになっている。ここで、空調動作とは、空調ユニット7における例えば後述するブロワファン20の駆動や導入口切換ドア11の位置の切替、吹出口の切替等の動作をいう。
【0015】
空調ユニット7には、車室内に吹き出される空気の導入口として、空調ユニット7内を車室外に連通する外気導入口10aと、空調ユニット7内を車室内に連通する内気導入口10bとが形成されている。
【0016】
外気導入口10aは、車室外の空気を空調ユニット7内に導入する導入口である。内気導入口10bは、車室内の空気を空調ユニット7内に導入する導入口、すなわち車室内で循環する空気を導入させるための導入口である。
【0017】
空調ユニット7内には、車室内に吹き出される空気の導入口を外気導入口10aと内気導入口10bとの間で切り換える導入口切換ドア11が設けられている。導入口切換ドア11は、外気導入口10aを閉じて内気導入口10bを開く位置と、内気導入口10bを閉じて外気導入口10aを開く位置との間を移動できるように、空調ユニット7内に回転自在に取り付けられている。
【0018】
導入口切換ドア11には、導入口切換ドア11を駆動するためのアクチュエータ12が設けられている。アクチュエータ12は、A/C制御コントローラ8による制御に応じて、導入口切換ドア11の位置を制御するようになっている。
【0019】
空調ユニット7は、A/C制御コントローラ8による制御に応じて導入口切換ドア11の位置が切り替えられることにより、ブロワファン20に対して外気導入口10aを介して車室外の空気を導入する外気導入モード(以下、単に「外気導入」という)と内気導入口10bを介して車室内の空気を導入する内気循環モード(以下、単に「内気循環」という)との間で吸気モードが切り替えられるようになっている。
【0020】
このように、導入口切換ドア11及びアクチュエータ12は、内気循環と外気循環とを切り替えて内気又は外気のいずれかを空調ユニット7内に取り入れるようになっている。本実施例の導入口切換ドア11及びアクチュエータ12は、本発明における内外気切替部を構成する。
【0021】
図2に示すように、本実施例の車両1の車室内には、空調ユニット7によって車室内に吹き出される空気の吹出口として、デフロスタ吹出口31、サイドデミスタ吹出口31a、センタ吹出口32a、サイド吹出口32b、及びフット吹出口33が設けられている。
【0022】
デフロスタ吹出口31は、フロントウインドガラス側でインストルメントパネル2に開口されている。サイドデミスタ吹出口31aは、インストルメントパネル2に開口され、デフロスタ吹出口31と連通している。
【0023】
センタ吹出口32aは、インストルメントパネル2の車幅方向の中央で運転席及び助手席に向けて開口されている。サイド吹出口32bは、インストルメントパネル2の車幅方向の両側で運転席及び助手席のそれぞれに向けて開口されている。車幅方向とは、車両1の幅方向を意味し、運転席と助手席とが並ぶ方向を意味する。
【0024】
本実施例においては、センタ吹出口32aとサイド吹出口32bとでベント吹出口32(
図1参照)を構成している。ベント吹出口32には、ベント吹出口32を閉鎖することができる閉鎖体を構成するルーバ15が設けられている。例えば、ルーバ15は、車両乗員が操作できる操作レバーの位置に応じて、ベント吹出口32を開放する状態と閉鎖する状態との間でベント吹出口32の開放状態を変更するようになっている。
【0025】
フット吹出口33は、運転席及び助手席に着座した乗員の足元に向けてインストルメントパネル2の下部に開口されている。上述したデフロスタ吹出口31、サイドデミスタ吹出口31a、ベント吹出口32、及びフット吹出口33は、本発明における複数の吹出口を構成する。
【0026】
図1に示すように、空調ユニット7には、デフロスタ吹出口31に連通されたデフロスタ排出口14aと、ベント吹出口32に連通されたベント排出口14bと、フット吹出口33に連通されたフット排出口14cとが形成されている。
【0027】
空調ユニット7内には、デフロスタ排出口14aを開閉する吹出口切換ドア16aと、ベント排出口14b及びフット排出口14cを開閉する吹出口切換ドア16bとが設けられている。
【0028】
吹出口切換ドア16aは、デフロスタ排出口14aを閉じる位置と、デフロスタ排出口14aを開く位置との間を移動できるように、空調ユニット7内に回転自在に取り付けられている。
【0029】
吹出口切換ドア16aには、吹出口切換ドア16aを駆動するためのアクチュエータ17aが設けられている。アクチュエータ17aは、A/C制御コントローラ8による制御に応じて、吹出口切換ドア16aの位置を制御するようになっている。
【0030】
吹出口切換ドア16bは、ベント排出口14bを閉じてフット排出口14cを開く位置と、フット排出口14cを閉じてベント排出口14bを開く位置との間を移動できるように、空調ユニット7内に回転自在に取り付けられている。
【0031】
吹出口切換ドア16bには、吹出口切換ドア16bを駆動するためのアクチュエータ17bが設けられている。アクチュエータ17bは、A/C制御コントローラ8による制御に応じて、吹出口切換ドア16bの位置を制御するようになっている。
【0032】
本実施例における吹出口切換ドア16a、吹出口切換ドア16b、アクチュエータ17a及びアクチュエータ17bは、本発明における吹出口切替部を構成する。
【0033】
空調ユニット7内には、空気の導入口から排出口に向けて、ブロワファン20と、エバポレータコア21と、エアミックスドア22と、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ23とが設けられている。
【0034】
ブロワファン20は、車室内に吹き出させる空気を送風するようになっている。ここで、以下においては、ブロワファン20によって車室内に吹き出される空気を「空調風」といい、外気導入時に車室外から導入される空気や内気循環時に車室内で導入される空気と区別することとした。しがって、ブロワファン20は、導入口切換ドア11を通じて空調ユニット7内に導入された内気又は外気のいずれかを空調風として車室内に送風するものである。
【0035】
ブロワファン20には、ブロワファン20を回転させるブロワファンモータ24が設けられている。ブロワファン20は、ブロワファンモータ24によって回転させられることにより、導入口から導入された空気を排出口に向けて送風するようになっている。ブロワファンモータ24は、A/C制御コントローラ8による印加電圧の制御に応じて、その回転力が変化し、ブロワファン20の送風量を変化させるようになっている。本実施例におけるブロワファン20及びブロワファンモータ24は、本発明における送風部を構成する。
【0036】
エバポレータコア21は、エバポレータコア21を通過する空気とエバポレータコア21内を通過する冷媒との間で熱交換を行わせることによって、エバポレータコア21を通過して空調風として車室内に送風される空気を冷却及び除湿するようになっている。エバポレータコア21には、コンプレッサ25及び図示しない室外コンデンサが設けられている。これにより、空調ユニット7は、冷房装置として機能する。
【0037】
コンプレッサ25は、冷媒通路25aを介してエバポレータコア21と接続されており、エバポレータコア21を通過する空気を冷却する冷媒を圧縮するものである。コンプレッサ25によって圧縮された冷媒は、冷媒通路25aを通じてエバポレータコア21に供給される。本実施例におけるコンプレッサ25は、本発明における圧縮部を構成する。
【0038】
エアミックスドア22は、PTCヒータ23を通過する空気の流量、すなわち空気量を調整するようになっている。具体的には、エアミックスドア22は、エバポレータコア21を通過した空気がPTCヒータ23を通過する位置と、エバポレータコア21を通過した空気がPTCヒータ23を通過しない位置との間を移動できるように、空調ユニット7内に回転自在に取り付けられている。
【0039】
エアミックスドア22には、エアミックスドア22を駆動するためのアクチュエータ27が設けられている。アクチュエータ27は、A/C制御コントローラ8による制御に応じて、エアミックスドア22の位置を制御するようになっている。本実施例におけるエアミックスドア22及びアクチュエータ27は、本発明における空気量調整部を構成する。
【0040】
PTCヒータ23は、冷媒によって冷却された空気と図示しない内燃機関であるエンジンの冷却水との間で熱交換を行わせることにより車室内に吹き出させる空気を暖める熱源として機能する。本実施例におけるPTCヒータ23は、本発明における熱交換部を構成する。
【0041】
空調ユニット7は、ブロワファン20が回転させられ、車室内に吹き出させる空気がPTCヒータ23を通過するようにエアミックスドア22の位置が制御されることにより、暖房装置として機能する。なお、車両1が例えばハイブリッド車両等の電気自動車以外の車両で構成されている場合には、PTCヒータ23に加えてヒータコアを熱源として設けてもよい。この場合、PTCヒータ23は、補助ヒータとして用いることができる。
【0042】
A/C制御コントローラ8は、CPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)と、フラッシュメモリと、入力ポートと、出力ポートとを備えたコンピュータユニットによって構成されている。
【0043】
A/C制御コントローラ8のROMには、各種定数や各種マップ等とともに、当該コンピュータユニットをA/C制御コントローラ8として機能させるためのプログラムが記憶されている。すなわち、A/C制御コントローラ8において、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することにより、当該コンピュータユニットは、A/C制御コントローラ8として機能する。
【0044】
A/C制御コントローラ8の入力ポートには、エバポレータ温度センサ21aを含む各種センサ類と、A/C操作パネル40と、報知機能コントローラ50を含む各種コントローラとが接続されている。エバポレータ温度センサ21aは、エバポレータコア21の温度を検出するものである。
【0045】
A/C操作パネル40には、空調ユニット7のオン/オフが切り換えられる空調スイッチと、外気導入と内気循環との間で吸気モードが選択される空気導入モード選択スイッチと、デフロスタ吹出口31、ベント吹出口32及びフット吹出口33から吹き出される空調風の流量の比率の組合せからなる空調モードが選択される空調モード選択スイッチと、これら吹出口から吹き出される空調風の流量(以下、単に「吹出し量」ともいう)が設定される風量調節スイッチと、設定温度が設定される温度設定スイッチとを含む各種スイッチが設けられている。
【0046】
空調モード選択スイッチは、例えばデフロスタモード、ベントモード、フットモード、バイレベルモード及びデフフットモードのなかから1つの空調モードを選択できるようになっている。
【0047】
デフロスタモードは、デフロスタ吹出口31から空調風を吹き出させるモードである。ベントモードは、ベント吹出口32、すなわちセンタ吹出口32a及びサイド吹出口32bから空調風を吹き出させるモードである。フットモードは、フット吹出口33から空調風を吹き出させるモードである。
【0048】
バイレベルモードは、ベント吹出口32及びフット吹出口33から空調風を吹き出させるモードである。デフフットモードは、デフロスタ吹出口31及びフット吹出口33から空調風を吹き出させるモードである。
【0049】
報知機能コントローラ50には、例えばブザー等も含めたホーンやスピーカ等の音声出力装置51が接続されている。本実施例において、報知機能コントローラ50及び音声出力装置51は報知装置5を構成する。
【0050】
報知装置5は、音声又は報知音により乗員に各種の報知を行うようになっている。具体的には、報知機能コントローラ50が、各種報知に応じた音声又は報知音が音声出力装置51から出力されるよう、音声出力装置51を制御する。本実施例における報知装置5は、本発明における報知部を構成する。
【0051】
上述した各種の報知としては、例えば衝突予防安全警告に関する報知、エンジン異常警告の報知、シートベルトリマインダの報知、カーナビゲーション装置の道案内の音声ガイダンス等、種々の報知がある。これら各種の報知は、それぞれ重要度が異なり、各種報知のなかで衝突予防安全警告に関する報知が最も報知の重要度が高く設定されている。「報知の重要度」とは、その報知の内容がどの程度安全性に影響があるのか、緊急性を要するのかを示す指標である。したがって、報知の重要度は、安全性に関わる報知や緊急性を要する報知ほど高くなる一方、安全性にそれほど影響がなかったり、緊急性を要しないような報知ほど低くなる。
【0052】
A/C制御コントローラ8の出力ポートには、アクチュエータ12、アクチュエータ17a、アクチュエータ17b、アクチュエータ27、PTCヒータ23、ブロワファンモータ24及びコンプレッサ25等の各種制御対象類が接続されている。
【0053】
A/C制御コントローラ8は、各種センサ類、各種コントローラ及び各種スイッチから得られる情報に基づいて、各種制御対象類を制御するようになっている。例えば、A/C制御コントローラ8は、A/C操作パネル40の空調スイッチによって空調ユニット7がオン状態にあるときに、図示しない内気温度センサによって検出された内気温度と、A/C操作パネル40の温度設定スイッチによって設定された温度とが等しくなるように、アクチュエータ27及びPTCヒータ23を適宜制御するようになっている。
【0054】
また、A/C制御コントローラ8は、報知装置5により報知が行われる場合には、報知装置5により行われる報知の重要度に応じて空調風の風量を変化させるようブロワファンモータ24を制御する制御部81としての機能を有する。
【0055】
次に、
図3から
図6を参照して、本実施例の空調制御における空調モード及びブロワファン20の送風量を決定する処理(以下、「空調設定処理」という)について説明する。この空調設定処理は、空調制御中、すなわち空調ユニット7がオン状態にあるときに、A/C制御コントローラ8によって所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0056】
図3に示すように、A/C制御コントローラ8は、乗員の要求に基づき、空調モード及びブロワファン20の送風量を算出する(ステップS1)。具体的には、A/C制御コントローラ8は、A/C操作パネル40の空調モード選択スイッチ、風量調節スイッチ及び温度設定スイッチ等の各種スイッチや内気温度センサによって検出された内気温度等の各種センサ情報に基づき、空調モード及びブロワファン20の送風量を算出する。
【0057】
次いで、A/C制御コントローラ8は、報知装置5が作動、すなわち報知装置5により報知が行われているか否かを判定する(ステップS2)。
【0058】
A/C制御コントローラ8は、報知装置5が作動していないと判定した場合には、ステップS1において算出した空調モード及びブロワファン20の送風量を、空調制御で用いる空調モード及びブロワファン20の送風量として決定して空調設定処理を終了する。
【0059】
A/C制御コントローラ8は、報知装置5が作動していると判定した場合には、車室内の騒音の騒音レベルを算出する(ステップS3)。具体的には、A/C制御コントローラ8は、
図4に示す騒音レベル算出マップを参照して、ステップS1で算出された空調モードとブロワファン20の送風量とに基づき騒音レベルを算出する。
【0060】
騒音レベル算出マップによって算出される騒音レベルは、空調ユニット7の作動に起因した車室内の騒音(以下、「空調騒音」という)の大きさを表している。騒音レベル算出マップにおいては、ブロワファン20の送風量を同一とした場合、各空調モードのうちベントモードが最も騒音レベルが高く、フットモードが最も騒音レベルが低くなるように設定されている。
【0061】
騒音レベル算出マップは、空調モードとブロワファン20の送風量と騒音レベルとの関係を予め実験的に求めたもので、A/C制御コントローラ8のROMに記憶されている。騒音レベルは、本実施例では10段階に設定されているが、これに限定されるものではなく、何段階に設定するかは任意である。
【0062】
なお、本実施例では、空調モードとブロワファン20の送風量とから騒音レベルを算出したが、空調モードに関わらず、ブロワファン20の送風量から騒音レベルを算出してもよい。この場合、ブロワファン20の送風量と騒音レベルとの関係を予め実験的に求めたマップをA/C制御コントローラ8のROMに記憶しておく。
【0063】
さらに、ブロワファン20の送風量に関わらず、空調モードに基づき騒音レベルを算出してもよい。この場合、各空調モードごとに騒音レベルとの関係を予め実験的に求めたマップをA/C制御コントローラ8のROMに記憶しておく。
【0064】
次いで、A/C制御コントローラ8は、報知の重要度を示す指標である報知レベルを算出する(ステップS4)。報知レベルは、報知の重要度を50段階で表したもので、例えば
図5に示すように、各報知ごとに報知レベル1から報知レベル50のいずれかが割り当てられている。各報知と報知レベルとの関係は、A/C制御コントローラ8のROMに予め記憶されている。
【0065】
本実施例では、報知レベルの数値が小さいほど報知の重要度が高くなるように設定されている。本実施例では、「衝突予防安全警告」が報知レベル1で最も報知の重要度が高く、次いで「エンジン異常警告」が報知レベル2、「シートベルトリマインダー」が報知レベル3、「カーナビゲーション装置による道案内の音声ガイダンス」が報知レベル45に設定され、「上記以外」が報知レベル50で最も報知の重要度が低く設定されている。
【0066】
本実施例において、衝突予防安全警告、「エンジン異常警告」及び「シートベルトリマインダー」の各報知は、「車両衝突を回避又は車両衝突時に乗員の被害を軽減するための報知」に含まれる。「車両衝突を回避又は車両衝突時に乗員の被害を軽減するための報知」としては、前述した報知に限定されるものではない。
【0067】
なお、本実施例では、衝突予防安全警告を報知レベル1としたが、例えば車種や仕様等に応じて衝突予防安全警告以外の車両衝突を回避又は車両衝突時に乗員の被害を軽減するための報知が最も重要度が高く設定されてもよい。また、各報知レベルは、例えば車種や仕様等によって異なり本実施例で示した報知レベル順に設定されるものではない。
【0068】
このように、安全性に関わる報知や緊急性を要する報知ほど報知の重要度が高く設定されている。これに対して、「カーナビゲーション装置による道案内の音声ガイダンス」等の報知は、「車両衝突を回避又は車両衝突時に乗員の被害を軽減するための報知」と比べて、安全性への影響や緊急性が相対的に低いため、報知の重要度が相対的に低く設定されている。本実施例では、報知レベルを50段階としたが、何段階に設定するかは任意であり50段階に限定されるものではない。
【0069】
次いで、A/C制御コントローラ8は、報知装置作動時における、空調モード及びブロワファン20の送風量を決定する(ステップS5)。具体的には、A/C制御コントローラ8は、ステップS4で算出した報知レベルに応じた許容騒音レベルを算出する。許容騒音レベルとは、報知装置作動時に報知レベルに応じて車室内の空調騒音がどの程度まで許容されるかを示す指標である。
【0070】
具体的には、
図6に示すように、報知レベル1から報知レベル50を許容騒音レベル1から許容騒音レベル10のいずれかに割り当てている。例えば、報知レベル1及び報知レベル2は最も小さい許容騒音レベル1に設定され、報知レベル49及び報知レベル50は最も大きい許容騒音レベル10に設定される。このように、許容騒音レベルは、報知レベルが高いほど、つまり報知の重要度が高いほど小さくなる。報知レベルと許容騒音レベルとの関係は、A/C制御コントローラ8のROMに予め記憶されている。
【0071】
A/C制御コントローラ8は、上述のように報知レベルに応じて設定された許容騒音レベルと、ステップS3で算出した現在の騒音レベルとのうち、いずれか小さい方を目標の騒音レベルとして設定する。
【0072】
A/C制御コントローラ8は、車室内の空調騒音の騒音レベルが上述の通り設定された目標の騒音レベル以下となるよう、空調モードを切り替えたり、ブロワファン20の送風量を低減した送風量に設定したりする。
【0073】
例えば、許容騒音レベルが現在の騒音レベルよりも小さい場合には、A/C制御コントローラ8は、車室内の空調騒音の騒音レベルが許容騒音レベル以下となるよう、空調モードを切り替えたり、ブロワファン20の送風量を低減した送風量に設定したりする。現在の騒音レベルが許容騒音レベルよりも小さい場合には、A/C制御コントローラ8は、現在設定されている空調モード及びブロワファン20の送風量を維持すればよい。
【0074】
A/C制御コントローラ8は、ステップS5において算出した空調モード及びブロワファン20の送風量を、空調制御で用いる空調モード及びブロワファン20の送風量として決定して空調設定処理を終了する。
【0075】
これにより、空調ユニット7の作動中に報知装置5によって報知が行われる際には、報知の重要度が高いほど車室内の空調騒音の騒音レベルが小さくなるよう、空調風の風量が低減されたり、空調モードが切り替えられたりする。空調モードは、空調風が吹き出される吹出口が騒音レベルの小さい吹出口となるよう切り替えられる。
【0076】
次に、
図7を参照して、空調設定処理のステップS5における空調モード及びブロワファン20の送風量の設定例について説明する。
【0077】
図7に示す設定例では、空調設定処理のステップS3で算出された現在の騒音レベルが「9」で、ステップS5で算出された許容騒音レベルが「6」で、かつ空調モードがベントモードであった場合を示している。
【0078】
図7に示すように、許容騒音レベルが「6」で現在の騒音レベル9よりも小さいため、A/C制御コントローラ8は、車室内の空調騒音の騒音レベルが許容騒音レベル以下となるよう、空調モードを切り替えたり、ブロワファン20の送風量を低減した送風量に設定したりする必要がある。
【0079】
図7に示す例では、許容騒音レベルに対応する空調モードとしてバイレベルモードとデフロスタモードとが存在する。このような場合には、空調モードの切替先として、車両外部の環境と乗員の空調設定とに応じてバイレベルモード及びデフロスタモードのいずれかを選択する。
【0080】
例えば、気温の低い冬場に暖房が設定されているときには、空調モードの切替先としてデフロスタモードを選択する。
図7に示す例では、デフロスタモードにおいて許容騒音レベルに一致する送風量となるよう、ブロワファン20の送風量を設定しているため、ベントモードからデフロスタモードに切り替えられた際にはブロワファン20の送風量が増加する。これにより、空調風の風量を多くして車室内全体を早く暖機することができる。ブロワファン20の送風量を増加させない場合には、ベントモードからデフロスタモードに切り替えられた際の騒音レベルは許容騒音レベルを下回ることとなる。
【0081】
気温の高い夏場に冷房が設定されているときには、空調モードの切替先としてバイレベルモードを選択する。
図7に示す例では、ベントモードからデフロスタモードに切り替えられた際にはブロワファン20の送風量が低減する。これにより、空調風の風量は少なくなるが、バイレベルモードによって冷風を直接乗員に向けて吹き出すことができ、乗員の冷感を損なうことがない。
【0082】
このように、報知装置作動時の空調モードの切替先として2つの空調モードが存在する場合には、車両1の外部環境と乗員の空調設定とに応じて乗員にとって体感性のよい空調モードを選択することが好ましい。
【0083】
以上のように、本実施例に係る車両用空調制御装置は、空調ユニット7の作動中に報知装置5による報知が行われる際には、その報知の重要度に応じて空調風の風量を変化させることができる。
【0084】
具体的には、報知装置5によって行われる報知の重要度が高い場合には、報知の重要度が低い場合と比較して車室内の空調騒音の騒音レベルが小さくなるよう、空調風の風量を低減したり、空調モードを切り替えたりすることができる。また、報知の重要度は、安全性に関わる報知や緊急性を要する報知ほど高くなるように設定され、「車両衝突を回避又は車両衝突時に乗員の被害を軽減するための報知」が最も高く設定されている。
【0085】
このため、本実施例に係る車両用空調制御装置は、報知の重要度が高い場合には車室内の空調騒音を抑制することができ、音声又は報知音により出力される重要度の高い報知が空調騒音によって聞こえづらくなることを防止することができる。
【0086】
また、報知の重要度が高い場合には車室内の空調騒音が抑制されるので、重要度の高い報知を乗員が聞き取れるように音声又は報知音の音量を大きくする必要がない。これにより、車室内に大音量の音声又は報知音が鳴り響くことがなく、乗員にとっての快適性が損なわれることを防止することができる。
【0087】
また、本実施例に係る車両用空調制御装置は、報知の重要度が低い場合には、報知の重要度が高い場合と比較して許容騒音レベルが大きく設定されるので、空調騒音の抑制よりも空調ユニット7による空調動作が優先される。このため、報知の重要度が低い場合には、空調風の風量の低減量が小さくなるか、現状の空調風の風量に維持される。また、空調モードは、現在の空調モードに維持されることもある。この結果、報知の重要度が低い場合には、空調の快適性が損なわれることが抑制される。
【0088】
なお、本実施例に係る車両用空調制御装置においては、
図4に示す騒音レベル算出マップを参照して、ステップS1で算出された空調モードとブロワファン20の送風量とに基づき車室内の騒音の騒音レベルを算出したが、これに限らず、例えば吸気モードとして外気導入又は内気循環のいずれが設定されているかや、コンプレッサ25の動作状態に応じて騒音レベルを算出してもよい。
【0089】
また、カーナビゲーション装置等に使用されるマイクロフォンを利用して騒音レベルを算出してもよい。マイクロフォンを利用して騒音レベルを算出する場合には、空調騒音以外に、例えば路面状況等の車外環境やオーディオ設定等の車内環境も考慮した総合的な騒音レベルを算出することができる。
【0090】
また、本実施例に係る空調設定処理においては、報知装置作動時に、車室内の騒音の騒音レベルが許容騒音レベル以下となるよう、空調モードを切り替えたり、ブロワファン20の送風量を低減した送風量に設定したりしたが、空調モードを切り替えずにブロワファン20の送風量を低減した送風量に設定してもよいし、ブロワファン20の送風量を変更させずに空調モードを切り替えてもよい。
【0091】
また、報知の重要度がある一定以上の高い重要度である場合には、ブロワファン20を停止させてもよい。この場合、空調は停止してしまうが、報知音をより確実に乗員に伝えることができる。
【実施例2】
【0092】
次に、
図8から
図11を参照して、本発明の第2の実施例に係る車両用空調制御装置について説明する。本実施例の車両用空調制御装置は、第1の実施例とは空調設定処理の内容が一部異なるが、他の構成は第1実施例と同一である。
【0093】
図8に示す空調設定処理は、空調制御中、すなわち空調ユニット7がオン状態にあるときに、A/C制御コントローラ8によって所定の時間間隔で繰り返し実行される。
【0094】
図8に示すように、A/C制御コントローラ8は、乗員の要求に基づき、空調モード及びブロワファン20の送風量を算出する(ステップS11)。具体的には、A/C制御コントローラ8は、A/C操作パネル40の空調モード選択スイッチ、風量調節スイッチ及び温度設定スイッチ等の各種スイッチや内気温度センサによって検出された内気温度等の各種センサ情報に基づき、空調モード及びブロワファン20の送風量を算出する。
【0095】
次いで、A/C制御コントローラ8は、報知装置5が作動、すなわち報知装置5により報知が行われているか否かを判定する(ステップS12)。
【0096】
A/C制御コントローラ8は、報知装置5が作動していないと判定した場合には、ステップS11において算出した空調モード及びブロワファン20の送風量を、空調制御で用いる空調モード及びブロワファン20の送風量として決定して空調設定処理を終了する。
【0097】
A/C制御コントローラ8は、報知装置5が作動していると判定した場合には、空調モードと、エアミックスドア22及びブロワファン20の動作状態とに基づき、空調の重要度を算出する(ステップS13)。
【0098】
本実施例では、
図9に示すように、空調の重要度として「High」、「Middle」、「Low」の3つが設定されており、「High」が空調の重要度が最も高く、次いで「Middle」、「Low」の順に空調の重要度が低くなる。
図9に示す条件が2つ以上成立している場合には、空調の重要度が最も高いものが採用されるようになっている。
図9に示す条件と空調の重要度との関係は、A/C制御コントローラ8のROMに予め記憶されている。空調の重要度の設定数としては、前述したように3つに限らず、2つ又は4つ以上であってもよい。
【0099】
具体的には、A/C制御コントローラ8は、
図9に示すように、空調モードがデフロスタモード又はデフフットモードであるときには空調の重要度として「High」を算出する。デフロスタ吹出口31から空調風を吹き出すデフロスタモード又はデフフットモードのときは、運転者の視界確保のためにフロントガラスの曇りをとる必要があることから安全性に関わる空調モードであるとして空調の重要度が高くなる。
【0100】
また、A/C制御コントローラ8は、エアミックスドア22の位置が最大加熱位置又は最大冷却位置にあるとき、あるいはブロワファン20の送風量が最大送風量であるときには、乗員の快適性に関する要望が高いと考えられるため空調の重要度として「Low」よりも重要度の高い「Middle」を算出する。最大加熱位置は、PTCヒータ23を通過する空気の流量が最大となるエアミックスドア22の位置である。最大冷却位置は、PTCヒータ23を通過する空気の流量が最小となるエアミックスドア22の位置である。
【0101】
さらに、A/C制御コントローラ8は、空調モード、エアミックスドア22及びブロワファン20の動作状態が上記以外の場合には空調の重要度として「Low」を算出する。
【0102】
なお、A/C制御コントローラ8は、空調モード、エアミックスドア22、ブロワファン20の動作状態の他に、吸気モードが内気循環又は外気導入のいずれであるか、コンプレッサ25が作動中か否か等の条件を加えて空調の重要度を算出してもよい。
【0103】
また、空調モードがデフロスタモード又はデフフットモードに設定されてから、あるいはエアミックスドア22の位置が最大加熱位置又は最大冷却位置に設定されてからの任意の継続時間(例えば、5分間)に応じて空調の重要度を算出してもよい。例えば、任意の継続時間が経過するまでは
図9に示す空調の重要度が算出されるが、任意の継続時間経過後は
図9に示す空調の重要度が「High」から「Middle」に、「Middle」から「Low」に一段階低下したものが算出されるようにしてもよい。
【0104】
次いで、A/C制御コントローラ8は、車室内の騒音の騒音レベルを算出する(ステップS14)。具体的には、A/C制御コントローラ8は、
図4に示す騒音レベル算出マップを参照して、ステップS11で算出された空調モードとブロワファン20の送風量とに基づき騒音レベルを算出する。
【0105】
次いで、A/C制御コントローラ8は、報知の重要度を算出する(ステップS15)。具体的には、A/C制御コントローラ8は、報知の内容に基づき報知レベルを算出し(
図5参照)、算出した報知レベルに基づき報知の重要度として「High」、「Middle」、「Low」のいずれかを算出する。
【0106】
本実施例では、
図10に示すように、報知の重要度として「High」、「Middle」、「Low」の3つが設定されており、「High」が報知の重要度が最も高く、次いで「Middle」、「Low」の順に報知の重要度が低くなる。
【0107】
図10に示すように、報知レベルが「1から10」の場合は、報知の重要度として「High」が算出され、報知レベルが「11から40」の場合は、報知の重要度として「Middle」が算出され、報知レベルが「41から50」の場合は、報知の重要度として「Low」が算出される。
図10に示す条件と報知の重要度との関係は、A/C制御コントローラ8のROMに予め記憶されている。
【0108】
次いで、A/C制御コントローラ8は、報知装置作動時における、空調モード及びブロワファン20の送風量を決定する(ステップS16)。
【0109】
具体的には、A/C制御コントローラ8は、ステップS15で算出した報知レベルに応じた許容騒音レベルを算出する。許容騒音レベルの算出方法は、第1の実施例と同一である。報知レベルと許容騒音レベルとの関係は、A/C制御コントローラ8のROMに予め記憶されている。
【0110】
A/C制御コントローラ8は、
図11に示すように、ステップS13で算出した空調の重要度とステップS15で算出した報知の重要度とを比較し、空調と報知のいずれが優先されるかを決定する。
【0111】
A/C制御コントローラ8は、空調の重要度と報知の重要度とを比較した結果、報知の重要度が空調の重要度以上である場合には、上述のように報知レベルに応じて設定された許容騒音レベルと、ステップS14で算出した現在の騒音レベルとのうち、いずれか小さい方を目標の騒音レベルとして設定する。
【0112】
A/C制御コントローラ8は、車室内の空調騒音の騒音レベルが上述の通り設定された目標の騒音レベル以下となるよう、空調モードを切り替えたり、ブロワファン20の送風量を低減した送風量に設定したりする。
【0113】
例えば、許容騒音レベルが現在の騒音レベルよりも小さい場合には、A/C制御コントローラ8は、車室内の空調騒音の騒音レベルが許容騒音レベル以下となるよう、空調モードを切り替えたり、ブロワファン20の送風量を低減した送風量に設定したりする。現在の騒音レベルが許容騒音レベルよりも小さい場合には、A/C制御コントローラ8は、現在設定されている空調モード及びブロワファン20の送風量を維持すればよい。
【0114】
このように、報知の重要度が空調の重要度以上である場合には、空調よりも報知が優先される。
【0115】
A/C制御コントローラ8は、空調の重要度と報知の重要度とを比較した結果、報知の重要度が空調の重要度よりも低い場合には、現在の騒音レベルを維持可能と判断して現在設定されている空調モード及びブロワファン20の送風量を維持する。
【0116】
このように、報知の重要度が空調の重要度よりも低い場合には、報知よりも空調が優先される。
【0117】
A/C制御コントローラ8は、ステップS16において算出した空調モード及びブロワファン20の送風量を、空調制御で用いる空調モード及びブロワファン20の送風量として決定して空調設定処理を終了する。
【0118】
これにより、空調ユニット7の作動中に報知装置5によって報知が行われる際、報知の重要度が空調の重要度以上である場合には、報知の重要度が高いほど車室内の空調騒音の騒音レベルが小さくなるよう、空調風の風量が低減されたり、空調モードが切り替えられたりする。空調モードは、空調風が吹き出される吹出口が騒音レベルの小さい吹出口となるよう切り替えられる。
【0119】
空調ユニット7の作動中に報知装置5によって報知が行われる際、報知の重要度が空調の重要度よりも低い場合には、現在の空調風の風量が維持されたり、現在の空調モードが維持されたりする。
【0120】
以上のように、本実施例に係る車両用空調制御装置は、空調ユニット7の作動中に報知装置5によって報知が行われる際、空調の重要度と報知の重要度との比較結果に応じて空調風の風量を変更したり、空調モードを切り替えたりすることができる。
【0121】
具体的には、報知の重要度が空調の重要度以上である場合には、報知の重要度が低い場合と比較して車室内の空調騒音の騒音レベルが小さくなるよう、空調風の風量を低減したり、空調モードを切り替えたりすることができる。
【0122】
このため、本実施例に係る車両用空調制御装置は、報知の重要度が空調の重要度以上である場合には車室内の空調騒音を抑制することができ、音声又は報知音により出力される重要度の高い報知が空調騒音によって聞こえづらくなることを防止することができる。
【0123】
また、報知の重要度が空調の重要度以上である場合には車室内の空調騒音が抑制されるので、重要度の高い報知を乗員が聞き取れるように音声又は報知音の音量を大きくする必要がない。これにより、車室内に大音量の音声又は報知音が鳴り響くことがなく、乗員にとっての快適性が損なわれることを防止することができる。
【0124】
報知の重要度が空調の重要度よりも低い場合には、現在の空調風の風量を維持したり、現在の空調モードを維持したりすることができる。これは、空調ユニット7の作動中に報知装置5によって報知が行われる場合であっても、空調風の風量を低減させると安全性に関わるような空調動作における空調性能が低下してしまう場合には、現在の空調風の風量を維持したり、現在の空調モードを維持したりする方が望ましいからである。安全性に関わるような空調動作としては、例えばフロントガラスの曇りをとるためにデフロスタ吹出口31から空調風を吹き出すような空調動作などが含まれる。
【0125】
報知の重要度が空調の重要度よりも低い場合には、現在の空調風の風量を維持したり、現在の空調モードを維持したりすることができるので、乗員の快適性に関する要望が高いと考えられる場合には空調性能の低下を抑制することができる。これにより、乗員の快適性が損なわれることが防止される。
【0126】
本発明の実施例を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正および等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0127】
1 車両
5 報知装置(報知部)
7 空調ユニット
8 A/C制御コントローラ
11 導入口切換ドア(内外気切替部)
12 アクチュエータ(内外気切替部)
16a 吹出口切換ドア(吹出口切替部)
16b 吹出口切換ドア(吹出口切替部)
17a アクチュエータ(吹出口切替部)
17b アクチュエータ(吹出口切替部)
20 ブロワファン(送風部)
21 エバポレータコア
22 エアミックスドア(空気量調整部)
23 PTCヒータ(熱交換部)
24 ブロワファンモータ(送風部)
25 コンプレッサ(圧縮部)
27 アクチュエータ(空気量調整部)
31 デフロスタ吹出口(吹出口)
31a サイドデミスタ吹出口(吹出口)
32 ベント吹出口(吹出口)
33 フット吹出口(吹出口)
40 A/C操作パネル
50 報知機能コントローラ
51 音声出力装置
81 制御部