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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】回路形成方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/00 20060101AFI20240130BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20240130BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20240130BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240130BHJP
   H05K 3/28 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H05K3/00 A
H05K3/10 D
H05K3/12 630
H05K3/46 B
H05K3/28 E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018208049
(22)【出願日】2018-11-05
(65)【公開番号】P2020077661
(43)【公開日】2020-05-21
【審査請求日】2021-10-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】榊原 亮
(72)【発明者】
【氏名】竹内 佑
(72)【発明者】
【氏名】富永 亮二郎
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-103096(JP,A)
【文献】特開平05-243713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/00
H05K 3/10
H05K 3/12
H05K 3/46
H05K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース上に形成された2本以上の配線の少なくとも一部及び前記2本以上の配線の隣り合う配線間を含む前記ベースの上に、離間した状態で複数個所に塗布された硬化性樹脂を硬化させる第1樹脂硬化工程と、
前記第1樹脂硬化工程において硬化した硬化性樹脂以外の上に塗布された硬化性樹脂を硬化させる第2樹脂硬化工程と
を含み、
前記2本以上の配線のうちの隣り合う2本の配線間の距離は、前記第2樹脂硬化工程において塗布される硬化性樹脂の外寸よりも長く、
前記第1樹脂硬化工程と前記第2樹脂硬化工程とにおいて硬化した樹脂により形成される絶縁層を含む回路の回路形成方法。
【請求項2】
ベース上に形成された2本以上の配線の少なくとも一部の上に、離間した状態で複数個
所に塗布された硬化性樹脂を硬化させる第1樹脂硬化工程と、
前記第1樹脂硬化工程において硬化した硬化性樹脂以外の上に塗布された硬化性樹脂を
硬化させる第2樹脂硬化工程と
を含み、
前記2本以上の配線のうちの隣り合う2本の配線間の距離は、前記第2樹脂硬化工程に
おいて塗布される硬化性樹脂の外寸よりも長く、
前記第1樹脂硬化工程と前記第2樹脂硬化工程とにおいて硬化した樹脂により形成され
る絶縁層を含む回路の回路形成方法であって、
前記第1樹脂硬化工程及び前記第2樹脂硬化工程は、硬化性樹脂を完全に硬化させずに半硬化させる、回路形成方法。
【請求項3】
前記第1樹脂硬化工程は、
所定の距離、離間した状態で複数個所に塗布された硬化性樹脂を硬化させ、
前記所定の距離は、複数個所に塗布される硬化性樹脂の外寸よりも長い、請求項1または請求項2に記載の回路形成方法。
【請求項4】
前記回路形成方法は、
金属微粒子を含有する金属含有液を前記ベース上に塗布し、その金属含有液を焼成することで前記2本以上の配線を形成する配線形成工程を含み、
前記第1樹脂硬化工程は、
前記配線形成工程において形成された前記2本以上の配線の少なくとも一部の上に硬化性樹脂が塗布され、前記塗布された前記硬化性樹脂を硬化させる請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の回路形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性樹脂により形成される絶縁層を含む回路の回路形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献には、硬化性樹脂により形成される絶縁層を含む回路に関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-027454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、硬化性樹脂により形成される絶縁層を含む回路を好適に形成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本明細書は、ベース上に形成された2本以上の配線の少なくとも一部及び前記2本以上の配線の隣り合う配線間を含む前記ベースの上に、離間した状態で複数個所に塗布された硬化性樹脂を硬化させる第1樹脂硬化工程と、前記第1樹脂硬化工程において硬化した硬化性樹脂以外の上に塗布された硬化性樹脂を硬化させる第2樹脂硬化工程とを含み、前記2本以上の配線のうちの隣り合う2本の配線間の距離は、前記第2樹脂硬化工程において塗布される硬化性樹脂の外寸よりも長く、前記第1樹脂硬化工程と前記第2樹脂硬化工程とにおいて硬化した樹脂により形成される絶縁層を含む回路の回路形成方法を開示する。また、本明細書は、ベース上に形成された2本以上の配線の少なくとも一部の上に、離間した状態で複数個所に塗布された硬化性樹脂を硬化させる第1樹脂硬化工程と、前記第1樹脂硬化工程において硬化した硬化性樹脂以外の上に塗布された硬化性樹脂を硬化させる第2樹脂硬化工程とを含み、前記2本以上の配線のうちの隣り合う2本の配線間の距離は、前記第2樹脂硬化工程において塗布される硬化性樹脂の外寸よりも長く、前記第1樹脂硬化工程と前記第2樹脂硬化工程とにおいて硬化した樹脂により形成される絶縁層を含む回路の回路形成方法であって、前記第1樹脂硬化工程及び前記第2樹脂硬化工程は、硬化性樹脂を完全に硬化させずに半硬化させる、回路形成方法を開示する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、配線の少なくとも一部の上に塗布された硬化性樹脂が硬化された後に、その硬化した硬化性樹脂以外の上に塗布された硬化性樹脂が硬化されることで、硬化された樹脂により絶縁層が形成される。このため、例えば、配線から硬化性樹脂に有機物の残滓等が拡散した場合であっても、先に塗布された硬化性樹脂に有機物の残滓が封じ込められ、絶縁層全体への有機物の残滓の拡散を防止することができる。これにより、硬化性樹脂により形成される絶縁層を含む回路を好適に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】配線形成装置を示す図である。
図2】配線形成装置の制御装置を示すブロック図である。
図3】樹脂積層体が形成された状態の回路を示す断面図である。
図4】樹脂積層体の上に配線が形成された状態の回路を示す断面図である。
図5】配線を覆う樹脂積層体が形成された状態の回路を示す断面図である。
図6】樹脂積層体及び配線の上に所定のピッチで紫外線硬化樹脂が吐出された状態の回路を示す平面図である。
図7図6のAA線における断面図である。
図8】樹脂積層体及び配線の上に所定のピッチで紫外線硬化樹脂が吐出された状態の回路を示す断面図である。
図9】硬化された紫外線硬化樹脂の間を埋めるように紫外線硬化樹脂が吐出された状態の回路を示す断面図である。
図10】1層目の樹脂層の上に紫外線硬化樹脂が吐出された状態の回路を示す断面図である。
図11】配線の全体を覆うように樹脂積層体が形成された状態の回路を示す断面図である。
図12】配線の全体を覆う樹脂積層体以外の箇所に樹脂積層体が形成された状態の回路を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0009】
図1に回路形成装置10を示す。回路形成装置10は、搬送装置20と、第1造形ユニット22と、第2造形ユニット24と、制御装置(図2参照)26とを備える。それら搬送装置20と第1造形ユニット22と第2造形ユニット24とは、回路形成装置10のベース28の上に配置されている。ベース28は、概して長方形状をなしており、以下の説明では、ベース28の長手方向をX軸方向、ベース28の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。
【0010】
搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32とを備えている。そのX軸スライド機構30は、X軸スライドレール34とX軸スライダ36とを有している。X軸スライドレール34は、X軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、X軸スライド機構30は、電磁モータ(図2参照)38を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36がX軸方向の任意の位置に移動する。また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール50とステージ52とを有している。Y軸スライドレール50は、Y軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されており、X軸方向に移動可能とされている。そして、Y軸スライドレール50の一端部が、X軸スライダ36に連結されている。そのY軸スライドレール50には、ステージ52が、Y軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、Y軸スライド機構32は、電磁モータ(図2参照)56を有しており、電磁モータ56の駆動により、ステージ52がY軸方向の任意の位置に移動する。これにより、ステージ52は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、ベース28上の任意の位置に移動する。
【0011】
ステージ52は、基台60と、保持装置62と、昇降装置(図2参照)64とを有している。基台60は、平板状に形成され、上面に基板が載置される。保持装置62は、基台60のX軸方向の両側部に設けられている。そして、基台60に載置された基板のX軸方向の両縁部が、保持装置62によって挟まれることで、基板が固定的に保持される。また、昇降装置64は、基台60の下方に配設されており、基台60を昇降させる。
【0012】
第1造形ユニット22は、ステージ52の基台60に載置された基板(図3参照)70の上に配線を造形するユニットであり、第1印刷部72と、焼成部74とを有している。第1印刷部72は、インクジェットヘッド(図2参照)76を有しており、基台60に載置された基板70の上に、金属インクを線状に吐出する。金属インクは、金属の微粒子が溶剤中に分散されたものである。なお、インクジェットヘッド76は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから導電性材料を吐出する。
【0013】
焼成部74は、レーザ照射装置(図2参照)78を有している。レーザ照射装置78は、基板70の上に吐出された金属インクにレーザを照射する装置であり、レーザが照射された金属インクは焼成し、配線が形成される。なお、金属インクの焼成とは、エネルギーを付与することによって、溶剤の気化や金属微粒子保護膜の分解等が行われ、金属微粒子が接触または融着をすることで、導電率が高くなる現象である。そして、金属インクが焼成することで、金属製の配線が形成される。
【0014】
また、第2造形ユニット24は、ステージ52の基台60に載置された基板70の上に樹脂層を造形するユニットであり、第2印刷部84と、硬化部86とを有している。第2印刷部84は、インクジェットヘッド(図2参照)88を有しており、基台60に載置された基板70の上に紫外線硬化樹脂を吐出する。なお、インクジェットヘッド88は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でもよく、樹脂を加熱して気泡を発生させノズルから吐出するサーマル方式でもよい。
【0015】
硬化部86は、平坦化装置(図2参照)90と照射装置(図2参照)92とを有している。平坦化装置90は、インクジェットヘッド88によって基板70の上に吐出された紫外線硬化樹脂の上面を平坦化するものであり、例えば、紫外線硬化樹脂の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラもしくはブレードによって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂の厚みを均一させる。また、照射装置92は、光源として水銀ランプもしくはLEDを備えており、基板70の上に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、基板70の上に吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、樹脂層が造形される。
【0016】
また、制御装置26は、図2に示すように、コントローラ120と、複数の駆動回路122とを備えている。複数の駆動回路122は、上記電磁モータ38,56、保持装置62、昇降装置64、インクジェットヘッド76、レーザ照射装置78、インクジェットヘッド88、平坦化装置90、照射装置92に接続されている。コントローラ120は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路122に接続されている。これにより、搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット24の作動が、コントローラ120によって制御される。
【0017】
回路形成装置10では、上述した構成によって、基板70の上に回路パターンが形成される。具体的には、ステージ52の基台60に基板70がセットされ、そのステージ52が、第2造形ユニット24の下方に移動される。そして、第2造形ユニット24において、図3に示すように、基板70の上に樹脂積層体130が形成される。樹脂積層体130は、インクジェットヘッド88からの紫外線硬化樹脂の吐出と、吐出された紫外線硬化樹脂への照射装置92による紫外線の照射とが繰り返されることにより形成される。
【0018】
詳しくは、第2造形ユニット24の第2印刷部84において、インクジェットヘッド88が、基板70の上面に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。続いて、紫外線硬化樹脂が薄膜状に吐出されると、硬化部86において、紫外線硬化樹脂の膜厚が均一となるように、紫外線硬化樹脂が平坦化装置90によって平坦化される。そして、照射装置92が、その薄膜状の紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、基板70の上に薄膜状の樹脂層132が形成される。
【0019】
続いて、インクジェットヘッド88が、その薄膜状の樹脂層132の上に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。そして、平坦化装置90によって薄膜状の紫外線硬化樹脂が平坦化され、照射装置92が、その薄膜状に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射することで、薄膜状の樹脂層132の上に薄膜状の樹脂層132が積層される。このように、薄膜状の樹脂層132の上への紫外線硬化樹脂の吐出と、紫外線の照射とが繰り返され、複数の樹脂層132が積層されることで、樹脂積層体130が形成される。
【0020】
上述した手順により樹脂積層体130が形成されると、ステージ52が第1造形ユニット22の下方に移動される。そして、第1印刷部72において、図4に示すように、インクジェットヘッド76が、樹脂積層体130の上面に金属インク134を、回路パターンに応じて線状に吐出する。次に、第1造形ユニット22の焼成部74において、レーザ照射装置78が、金属インク134にレーザを照射する。これにより、金属インク134が
焼成し、樹脂積層体130の上に配線136が形成される。
【0021】
続いて、樹脂積層体130の上に配線136が形成されると、ステージ52が第2造形ユニット24の下方に移動される。そして、第2造形ユニット24において、図5に示すように、樹脂積層体130の上に配線136を覆うように、樹脂積層体140が形成される。なお、樹脂積層体140は、樹脂積層体130と同様の手法により作成されるため、樹脂積層体140の作成方法の説明は省略する。このように、回路形成装置10では、紫外線硬化樹脂によって樹脂積層体130が形成され、金属イオンによって配線136が樹脂積層体130の上に形成される。そして、樹脂積層体130の上に配線136を覆うように、樹脂積層体140が形成されることで、基板70の上に回路パターンが形成される。
【0022】
ただし、配線136の素材である金属インク134には、界面活性剤,極性調整剤などの有機物が含まれており、その有機物の一部は、金属インク134の焼成後においても配線136の内部に残留している。このため、配線136を覆うように形成された樹脂積層体140に、図5に示すように、配線136から有機物の残滓146が拡散する虞がある。そして、樹脂積層体140に有機物の残滓146が拡散すると、紫外線硬化樹脂の硬化阻害,樹脂積層体140での絶縁阻害,樹脂積層体140へのイオンマイグレーションなどが発生する虞がある。
【0023】
なお、配線136は、樹脂積層体130、つまり、硬化した後の紫外線硬化樹脂の上において形成されるため、配線136に含まれる有機物の残滓146は、樹脂積層体130に拡散しない。一方、樹脂積層体140の形成時において、配線136を覆うように、紫外線硬化樹脂が吐出され、その後に、紫外線の照射により紫外線硬化樹脂が硬化する。このため、配線136の上に紫外線硬化樹脂が吐出され、紫外線硬化樹脂が硬化する前に、配線136に含まれる有機物の残滓146が、その硬化する前の紫外線硬化樹脂に拡散する。
【0024】
このようなことに鑑みて、回路形成装置10では、配線136の少なくとも一部の上に紫外線硬化樹脂が吐出され、その吐出された紫外線硬化樹脂が硬化した後に、その硬化した紫外線硬化樹脂以外の上に、再度、紫外線硬化樹脂が吐出され、その吐出された紫外線硬化樹脂を硬化させることで、樹脂積層体140が形成される。以下に、図6乃至図10を用いて、樹脂積層体140の形成方法について説明する。なお、以下の説明において、樹脂積層体130の上には、図6乃至図10に示すように、2本の配線136が形成されており、それら2本の配線136は概して平行とされている。
【0025】
まず、樹脂積層体130の配線136が形成されると、ステージ52が第2造形ユニット24の下方に移動され、第2造形ユニット24において、インクジェットヘッド88が、所定のピッチで紫外線硬化樹脂を複数回、吐出する。これにより、図6に示すように、樹脂積層体130および配線136の上に、複数の紫外線硬化樹脂150が、所定のピッチで着弾する。この際の紫外線硬化樹脂150の着弾径x、つまり、着弾した紫外線硬化樹脂150の外寸が、紫外線硬化樹脂150の着弾ピッチp未満となるように、インクジェットヘッド88等の作動が制御される。これにより、樹脂積層体130および配線136の上に着弾した複数の紫外線硬化樹脂150が、互いに離間した状態となる。つまり、隣り合う2個の紫外線硬化樹脂150が接触することなく、離間している。なお、紫外線硬化樹脂150の着弾ピッチは、隣り合う2個の紫外線硬化樹脂150において、一方の紫外線硬化樹脂150の中心と他方の紫外線硬化樹脂150の中心との間の距離である。
【0026】
さらに、紫外線硬化樹脂150の着弾径xが、樹脂積層体130の上に形成された2本の配線136の間の距離a未満となるように、インクジェットヘッド88等の作動が制御
される。これにより、紫外線硬化樹脂150が2本の配線136に跨って吐出されることはない。つまり、樹脂積層体130の上面において、2本の配線136が紫外線硬化樹脂150によって接続されることはない。
【0027】
また、図7に示すように、樹脂積層体130の上に樹脂積層体140が形成された後に、その樹脂積層体140の上に配線160が形成される場合が有る。このような場合において、樹脂積層体130の上に形成された配線136と、樹脂積層体140の上に形成された配線160とが、紫外線硬化樹脂150により接続されないように、紫外線硬化樹脂150の着弾厚さtが調整される。詳しくは、図7は、図6のAA線における断面図であり、その断面図において、樹脂積層体140及び配線160の形成予定図が点線により示されている。そして、紫外線硬化樹脂150の着弾厚さtが、樹脂積層体130の上に形成される配線136と、樹脂積層体140の上に形成される配線160との上下方向における距離b未満となるように、インクジェットヘッド88等の作動が制御される。これにより、樹脂積層体130の上に形成される配線136と、樹脂積層体140の上に形成される配線160とが紫外線硬化樹脂150によって接続されることはない。
【0028】
このように、樹脂積層体130および配線136の上に、複数の紫外線硬化樹脂150が、所定のピッチで吐出されると、図8に示すように、配線136の上に吐出された紫外線硬化樹脂150に、配線136から有機物の残滓146が拡散する。ただし、配線136以外の箇所、つまり、樹脂積層体130の上に吐出された紫外線硬化樹脂150には、当然、有機物の残滓146は拡散しない。そして、所定のピッチでの紫外線硬化樹脂150の吐出が完了すると、照射装置92により紫外線が照射される。この際、紫外線硬化樹脂150に照射される紫外線の照射量は、紫外線硬化樹脂150を完全に硬化させるために必要な照射量より少なくされている。具体的には、例えば、紫外線硬化樹脂150を完全に硬化させるために必要な照射量の1割程度とされている。このため、所定ピッチで吐出された紫外線硬化樹脂150は、完全に硬化せずに、半硬化した状態となる。これにより、紫外線硬化樹脂150の内部に拡散した有機物の残滓146は、半硬化した紫外線硬化樹脂150の内部に封じ込められる。
【0029】
次に、紫外線硬化樹脂150が半硬化されると、インクジェットヘッド88が、図9に示すように、先に吐出されている紫外線硬化樹脂150、つまり、半硬化された紫外線硬化樹脂150以外の上に、紫外線硬化樹脂152を吐出する。つまり、インクジェットヘッド88が、半硬化された紫外線硬化樹脂150の間を埋めるように、樹脂積層体130及び配線136の上に、紫外線硬化樹脂152を吐出する。この際、配線136の上に吐出された紫外線硬化樹脂152に、配線136から有機物の残滓146が拡散する。ただし、先に吐出されている紫外線硬化樹脂150、つまり、半硬化された紫外線硬化樹脂150では、内部に有機物の残滓146が封じ込められているため、後に吐出された紫外線硬化樹脂152が半硬化された紫外線硬化樹脂150に接触しても、紫外線硬化樹脂150から紫外線硬化樹脂152に有機物の残滓146は拡散しない。なお、配線136以外の箇所に吐出された紫外線硬化樹脂152には、当然、有機物の残滓146は拡散しない。
【0030】
そして、半硬化された紫外線硬化樹脂150の間を埋めるように紫外線硬化樹脂152が吐出されると、照射装置92により紫外線が照射される。この際、紫外線硬化樹脂150に照射される紫外線の照射量は、紫外線硬化樹脂150を完全に硬化させるために必要な照射量より少なくされており、紫外線硬化樹脂152も、紫外線硬化樹脂150と同様に半硬化した状態となる。これにより、紫外線硬化樹脂152の内部に拡散した有機物の残滓146は、半硬化した紫外線硬化樹脂152の内部に封じ込められる。
【0031】
次に、紫外線硬化樹脂150及び紫外線硬化樹脂152が半硬化されると、半硬化され
た紫外線硬化樹脂150及び紫外線硬化樹脂152を完全に硬化させるために必要な量の紫外線が照射される。これにより、紫外線硬化樹脂150及び紫外線硬化樹脂152が完全に硬化し、樹脂積層体130及び配線136を覆う1層目の樹脂層156が形成される。このように、1層目の樹脂層156では、まず、所定のピッチで紫外線硬化樹脂150が吐出され、その紫外線硬化樹脂150が硬化された後に、その紫外線硬化樹脂150の間を埋めるように、紫外線硬化樹脂150が吐出され、紫外線硬化樹脂152が硬化される。つまり、1層目の樹脂層156では、吐出処理と硬化処理とが分割して行われる。
【0032】
続いて、1層目の樹脂層156が形成されると、図10に示すように、1層目の樹脂層156の全体を覆うように、その樹脂層156の上に紫外線硬化樹脂158が吐出される。この際、1層目の樹脂層156では、その樹脂層156の内部に有機物の残滓146が封じ込められているため、その樹脂層156の上に紫外線硬化樹脂158が吐出されても、樹脂層156から紫外線硬化樹脂158に、有機物の残滓146は拡散しない。
【0033】
そして、樹脂層156の全体を覆うように、その樹脂層156の上に紫外線硬化樹脂158が吐出されると、その紫外線硬化樹脂158に照射装置92によって紫外線が照射される。この際、紫外線硬化樹脂158に照射される紫外線の照射量は、紫外線硬化樹脂150を完全に硬化させるために必要な照射量とされている。これにより、紫外線硬化樹脂158が完全に硬化し、1層目の樹脂層156を覆う2層目の樹脂層156が形成される。つまり、2層目の樹脂層156では、吐出処理と硬化処理とが全域に亘って一括して行われる。そして、3層目以降の樹脂層156が、2層目の樹脂層156と同様の手法により形成され、複数の樹脂層156が積層されることで、樹脂積層体140が形成される。
【0034】
このように、樹脂積層体140では、1層目の樹脂層156において、まず、所定のピッチで紫外線硬化樹脂150が吐出された際に、配線136の上に吐出された紫外線硬化樹脂150に、配線136から有機物の残滓146が拡散するが、紫外線硬化樹脂150の半硬化により、その残滓146は、紫外線硬化樹脂150の内部に封じ込められる。そして、紫外線硬化樹脂150の間を埋めるように紫外線硬化樹脂152が吐出された際に、有機物の残滓146を内包する紫外線硬化樹脂150に、紫外線硬化樹脂152が接触しても、紫外線硬化樹脂150から紫外線硬化樹脂152に、有機物の残滓146は拡散しない。ただし、紫外線硬化樹脂152が吐出された際に、配線136の上に吐出された紫外線硬化樹脂152に、配線136から有機物の残滓146が拡散するが、紫外線硬化樹脂152の半硬化により、その残滓146は、紫外線硬化樹脂152の内部に封じ込められる。つまり、樹脂積層体140では、1層目の樹脂層156において、配線136の上に吐出された紫外線硬化樹脂のみに、有機物の残滓146が拡散している。
【0035】
さらに、樹脂積層体140では、2層目の樹脂層156において、1層目の樹脂層156の上に、その1層目の樹脂層156の全体を覆うように、紫外線硬化樹脂158が吐出されるが、1層目の樹脂層156では、その樹脂層156の硬化により内部に有機物の残滓146が封じ込められている。このため、1層目の樹脂層156の上に紫外線硬化樹脂158が吐出されても、その樹脂層156から紫外線硬化樹脂158に、有機物の残滓146は拡散しない。これにより、1層目の樹脂層156より上の樹脂層156への有機物の残滓146の拡散を防止することができる。このように、樹脂積層体140では、有機物の残滓146の拡散が、1層目の樹脂層156での配線136の上に吐出された紫外線硬化樹脂のみに抑制されており、硬化阻害,絶縁阻害などの発生が防止されている。
【0036】
また、樹脂積層体140では、紫外線硬化樹脂150及び紫外線硬化樹脂152に、紫外線が照射される際に、その紫外線の照射量は、紫外線硬化樹脂を完全に硬化させるために必要な照射量より少なくされており、紫外線硬化樹脂150及び紫外線硬化樹脂152は半硬化の状態とされている。これにより、紫外線硬化樹脂150及び紫外線硬化樹脂1
52とのなじみを良くすることができ、好適に樹脂層156を形成することができる。
【0037】
さらに言えば、1層目の樹脂層156の形成時において、所定のピッチで紫外線硬化樹脂150が吐出される際に、紫外線硬化樹脂150の着弾径xが、紫外線硬化樹脂150の着弾ピッチp未満とされている。これにより、隣り合う2個の紫外線硬化樹脂150が接触することなく、離間するため、隣り合う2個の紫外線硬化樹脂150の間での有機物の残滓146の拡散を防止することができる。
【0038】
また、紫外線硬化樹脂150の着弾径xが、樹脂積層体130の上に形成された2本の配線136の間の距離a未満とされている。さらに、紫外線硬化樹脂150の着弾厚さtが、樹脂積層体130の上に形成される配線136と、樹脂積層体140の上に形成される配線160との上下方向における距離b未満とされている。このため、2本の配線が、上下方向及び左右方向において、紫外線硬化樹脂150によって接続されることはない。つまり、配線から紫外線硬化樹脂150に有機物の残滓146が拡散し、その紫外線硬化樹脂150に有機物の残滓146が内包された場合であっても、その有機物の残滓146を内包する紫外線硬化樹脂150により、2本の配線は接続されない。これにより、有機物の残滓146を内包する紫外線硬化樹脂150にイオンマイグレーションが発生した場合であっても、2本の配線間での短絡を防止することができる。
【0039】
また、上記手法と異なる手法により、樹脂積層体140での有機物の残滓146の拡散を抑制することができる。具体的には、樹脂積層体130の配線136が形成されると、ステージ52が第2造形ユニット24の下方に移動される。そして、第2造形ユニット24において、図11に示すように、樹脂積層体130の上に、配線136の全てを覆うように、樹脂積層体170が形成される。なお、樹脂積層体170は、樹脂積層体130と同じ方法により形成される。つまり、樹脂積層体130の上に、配線136の全てを覆うように、紫外線硬化樹脂が吐出される。この際、その紫外線硬化樹脂に、配線136から有機物の残滓146が拡散する。そして、その紫外線硬化樹脂に紫外線が照射される。この際、紫外線の照射量は、紫外線硬化樹脂を完全に硬化させるために必要な照射量とされる。これにより、配線136の全てを覆うように吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、樹脂積層体170の1層目の樹脂層が形成される。そして、2層目以降の樹脂層が、1層目の樹脂層と同様の手法により形成される。これにより、複数の樹脂層が積層されることで、樹脂積層体170が形成される。この際、樹脂積層体170の1層目の樹脂層に有機物の残滓146が拡散しているが、1層目の樹脂層の硬化により、有機物の残滓146は、1層目の樹脂層の内部に封じ込められる。このため、樹脂積層体170において、2層目以降の樹脂層への有機物の残滓146の拡散が防止される。つまり、樹脂積層体170では、1層目の樹脂層156にだけに、有機物の残滓146が拡散している。
【0040】
次に、配線136を覆うようにして、樹脂積層体170が形成されると、図12に示すように、樹脂積層体170以外の箇所に、樹脂積層体180が形成される。なお、樹脂積層体180の高さ寸法は、樹脂積層体170の高さ寸法と同じとされており、樹脂積層体180が樹脂積層体170と一体的に構成されることで、樹脂積層体140が形成される。つまり、樹脂積層体170と隣接した状態で、樹脂積層体170と一体的になるように、樹脂積層体180が形成されることで、樹脂積層体140が形成される。
【0041】
このため、樹脂積層体180が形成される際に吐出される紫外線硬化樹脂は、配線136が樹脂積層体170により覆われているため、配線136と接触することなく、樹脂積層体180が形成される際に吐出される紫外線硬化樹脂に、配線136から有機物の残滓146は拡散しない。また、樹脂積層体180が形成される際に吐出される紫外線硬化樹脂は、配線136を覆う樹脂積層体170に接触するが、樹脂積層体170では、1層目の樹脂層の内部に有機物の残滓146が封じ込められている。このため、樹脂積層体18
0が形成される際に吐出される紫外線硬化樹脂に、樹脂積層体170から有機物の残滓146は拡散しない。このように、樹脂積層体170と樹脂積層体180とにより構成される樹脂積層体140では、有機物の残滓146の拡散が、樹脂積層体170の1層目の樹脂層のみに抑制されており、硬化阻害,絶縁阻害などの発生が防止される。
【0042】
なお、コントローラ120は、図2に示すように、配線形成部200と第1樹脂硬化部202と第2樹脂硬化部204とを有している。配線形成部200は、樹脂積層体130の上に配線136を形成するための機能部である。第1樹脂硬化部202は、樹脂積層体130及び配線136の上に、所定のピッチで紫外線硬化樹脂150を吐出し、その紫外線硬化樹脂150を半硬化させるための機能部である。そして、第2樹脂硬化部204は、半硬化された紫外線硬化樹脂150の間を埋めるように紫外線硬化樹脂152を吐出し、その紫外線硬化樹脂152を半硬化させるための機能部である。また、第1樹脂硬化部202は、配線136の全てを覆うように樹脂積層体170を形成するための機能部である。そして、第2樹脂硬化部204は、樹脂積層体170と隣接した状態で、樹脂積層体170と一体的になるように、樹脂積層体180を形成するための機能部である。
【0043】
ちなみに、上記実施例において、樹脂積層体130は、ベースの一例である。配線136は、配線の一例である。樹脂積層体140は、絶縁層の一例である。また、配線形成部200は、配線形成工程の一例である。第1樹脂硬化部202は、第1樹脂硬化工程の一例である。第2樹脂硬化部204は、第2樹脂硬化工程の一例である。
【0044】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。例えば、上記実施例では、樹脂積層体130の上に配線136が形成されているが、基板70の上に配線136が形成されてもよい。
【0045】
また、上記実施例では、紫外線硬化樹脂150が半硬化された後に、紫外線硬化樹脂152が吐出されているが、紫外線硬化樹脂150が完全に硬化された後に、紫外線硬化樹脂152が吐出されてもよい。一方、上記実施例では、樹脂積層体170の形成時に吐出された紫外線硬化樹脂が完全に硬化された後に、樹脂積層体180が形成されているが、樹脂積層体170の形成時に吐出された紫外線硬化樹脂が半硬化された後に、樹脂積層体180が形成されてもよい。
【0046】
また、上記実施例では、樹脂積層体140の形成時において、2層目以降の樹脂層156は、1層目の樹脂層156と異なる手法により形成されているが、1層目の樹脂層156と同じ手法により形成されてもよい。つまり、2層目以降の樹脂層156においても、所定のピッチで紫外線硬化樹脂150が吐出され、その紫外線硬化樹脂150が硬化された後に、紫外線硬化樹脂150以外の箇所に紫外線硬化樹脂152が吐出され、その紫外線硬化樹脂152が硬化されてもよい。
【0047】
また、上記実施例では、硬化性樹脂として、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化樹脂が採用されているが、加熱により硬化する樹脂,時間の経過により硬化する樹脂など、種々の硬化性樹脂を採用することができる。
【符号の説明】
【0048】
130:樹脂積層体(ベース) 136:配線 140:樹脂積層体(絶縁層)
200:配線形成部 202:第1樹脂硬化部 204:第2樹脂硬化部
図1
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図12