IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特許-医療器具 図1
  • 特許-医療器具 図2
  • 特許-医療器具 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】医療器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
A61B18/12
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019149832
(22)【出願日】2019-08-19
(65)【公開番号】P2020039867
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-03-11
(31)【優先権主張番号】18191442.5
(32)【優先日】2018-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】マルクス・パエシュ
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィト・レーザー
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー・バントロック
(72)【発明者】
【氏名】シュテファニー・シュミット
【審査官】和田 将彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-531506(JP,A)
【文献】特開2013-116323(JP,A)
【文献】特表2013-502271(JP,A)
【文献】国際公開第2017/172744(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00 - 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療器具(10)であって、筐体(14)と、前記医療器具の機能を有効または無効にするための装置とを備え、
前記装置は、第1部分(41)および第2部分(48)を含み、
前記第2部分(48)は、前記第1部分(41)に対して動作位置に動き、その際、前記筐体(14)に対して動いて、前記医療器具(10)の少なくとも1つの機能を有効または無効にするように配置され、および設けられ、
前記第1部分(41)は、前記第2部分(48)に対して動作位置に動き、その際、前記筐体(14)に対して動いて、前記医療器具(10)の前記少なくとも1つの機能を有効または無効にするように配置され、および設けられ、
前記医療器具(10)は、前記第2部分(48)を前記第1部分(41)に対して前記動作位置に動かすための制御部(16)を有し、前記制御部(16)の制御に基づいて、前記医療器具(10)の追加機能が実行され、
前記制御部(16)は、前記制御部(16)の制御により前記機能が有効または無効になることなく、前記追加機能が実行されるように制御可能であ
前記制御部(16)は、前記第2部分(48)が前記第1部分(41)に対して前記動作位置に動くときに、前記機能が有効または無効になることなく、前記追加機能が実行される制御、および、前記追加機能が実行されたまま前記機能を有効または無効にする制御を、この順で実行する、
医療器具(10)。
【請求項2】
前記第1部分(41)は、可動的に保持される回路基板(42)に配置され、または、前記第1部分(41)は、可動的に支持される制御部材(15)に取り付けられ、および/または、前記第2部分(48)は、可動的に支持される保持部材(47)に取り付けられる、
請求項1に記載の医療器具(10)。
【請求項3】
前記第1部分(41)は、ボタンである、
請求項2に記載の医療器具(10)。
【請求項4】
前記医療器具(10)は、前記第2部分(48)が前記第1部分(41)に対して前記動作位置に動くときに、前記少なくとも1つの機能が有効または無効になることを、制御する手で気付くようユーザに伝えるように設けられる、
請求項1~3のいずれか1項に記載の医療器具(10)。
【請求項5】
前記医療器具(10)は、前記第1部分(41)を前記第2部分(48)に対して前記動作位置に動かすために前記筐体(14)から露出する部分(44)を備え、前記部分(44)を制御しても、前記医療器具(10)の前記追加機能が実行されない、
請求項1~4のいずれか1項に記載の医療器具(10)。
【請求項6】
前記部分(44)は、前記第1部分(41)または前記第2部分(48)を含む回路基板(42)の支持部である制御部材(15)の一部である、
請求項5に記載の医療器具(10)。
【請求項7】
前記制御部(16)は近位方向に動いて、前記機能を有効もしくは無効にする、および/または、前記追加機能をトリガすることができ、
前記部分(44)は遠位方向に動いて、前記機能を有効または無効にすることができる、
請求項5または6に記載の医療器具(10)。
【請求項8】
前記第2部分(48)を制御するための前記制御部(16)は、前記第2部分(48)を含む保持部材(47)に対して可動な部材の一部である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の医療器具(10)。
【請求項9】
前記医療器具(10)は、前記少なくとも1つの機能のうちの1つの機能を有効にするための追加装置(53、17)を備える、
請求項1~8のいずれか1項に記載の医療器具(10)。
【請求項10】
前記第2部分(48)を前記第1部分(41)に対して前記動作位置に動かすために設けられる前記制御部(16)は、前記医療器具(10)の前記追加機能を実行するためのツール(18)と機械弾性的に連結される、
請求項1~9のいずれか1項に記載の医療器具(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療器具に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許出願公開第2959854号明細書は、それらの間で組織を掴むことができる2つの分岐体と、掴んだ組織を切断およびシールすることができる切断電極およびシール電極とを備える外科用器具を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、医療器具の機能を有効または無効にするための改良された概念を述べることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的は、請求項1に係る医療器具で実現されている。
【0005】
本発明に係る医療器具は、筐体と、医療器具の少なくとも1つの機能を有効または無効にするための装置とを備える。装置は、制御構造またはスイッチング構造と呼ばれてもよい。その構造は、筐体に対して可動である第1部分および第2部分を有し、第2部分は、第1部分に対して動作位置に動き、その際、筐体に対して動いて、医療器具の少なくとも1つの機能を有効または無効にするように配置され、および設けられる。動作位置において、第2部分および第1部分は協働して、少なくとも1つの機能を有効または無効にする。医療器具が、組織をシールおよび/または切断するための電極を備える場合、少なくとも1つの機能は、例えば、医療器具の電極に電力、特にRF電力を加えることであってもよい。反対に、第1部分は、第2部分に対して動作位置に動き、その際、筐体に対して動いて、医療器具の少なくとも1つの機能を有効または無効にするように配置され、および設けられる。この状況においても、第1部分および第2部分は協働して、医療器具の少なくとも1つの機能を有効または無効にする。好ましくは、少なくとも1つの機能を有効または無効にするために、それぞれ他方の部分が必ずしも動く必要はなく、むしろ非動作位置に留まっていてもよい。医療器具は、好ましくは外科用器具、特に好ましくはRF外科用器具であり、それを使用してRFエネルギーを用い、例えば、1以上の機能、すなわち「切断」、「シール」、「失活」および/または「凝固」を行うことができる。
【0006】
本発明に係る医療器具を使用することで、第2部分を第1部分に対して動作位置に動かす制御部と、第1部分を動かす追加制御部とを選択的に制御することによって、特定の機能をトリガすることが可能である。制御部は、追加制御部、例えば別個の制御部材から離れていることが好ましい。制御部と、第2部分および第1部分を制御するために設けられる追加制御部とは、それぞれ筐体に配置されることが好ましい。制御部および追加制御部は、筐体と一体化されていない部材であるボタンまたはレバーであってもよいし、例えば、筐体の一部であってもよい。第2部分を第1部分に対して動作位置に動かすための制御部は、第1部分を筐体に対して動かすために動くように設けられることが好ましい。第1部分を第2部分に対して動作位置に動かすための追加制御部は、第1部分を筐体に対して動かすために設けられることが好ましい。例えば、制御部または追加制御部で機能を選択的にトリガするのに、1つのボタンしか必要ではない。例示的な実施形態を参照すると、一方では、例えば制御部によって、押圧するための部材を、同じ機能をトリガするためのボタンに押し付けることができ、他方では、追加制御部によって、そのボタンを、ボタンを押圧するための部材に対して動かすことができる。2つのボタンを使用する解決策と比べて、本発明に係る解決策は、必要とするスペースがより少ない。さらに、電気的接触が簡単になる。特に、配線が簡単になり得る。そうでなければ必要となる、例えば追加ボタン用の追加ケーブルは、それが存在する限り、可動部分、例えば機械的なハンドル部品を損なうリスクを意味し、また、追加ケーブルを安全に取り付けるための開発費の増加を招くであろう。2つのボタンを使用する解決策と比べると、本発明による解決策では、低い製造コストを実現するために、押しボタン、基板、ケーブル、固定部材などの追加部品および追加アセンブリステップのコストを節約することが可能である。
【0007】
本発明に係る医療器具は、以下に記載する1以上の特徴を用いて、または以下に記載する1以上の実施形態に従って、有利に開発することができる。
【0008】
医療器具は、第1部分または第2部分が設けられる回路基板を備えてもよく、その場合、回路基板は医療器具内で可動的に保持される。特に、回路基板は、医療器具の筐体内で、特にハンドル筐体内で可動的に保持され得る。特に、回路基板は、回転可能および/または傾動可能および/またはヒンジ式に保持または支持されてもよい。
【0009】
第1部分または第2部分は、片面プリント回路基板である回路基板上に配置することができる。電線は別として、回路基板の他方の面は、例えば押しボタンなどの部品がなくてもよい。その回路基板は、両面プリント回路板と比べて低い製造コストで製造することができる。回路基板は、第1部分または第2部分である押しボタンを片面のみに少なくとも含んでもよい。
【0010】
他の実施形態を参照すると、回路基板の両面に部品が備えられてもよいが、その場合、これらの実施形態では、回路基板の片面だけに押しボタンが備えられる。このボタンは、第1部分であることが好ましい。
【0011】
第2部分は、可動的に支持される1つの制御部、例えば制御部材に取り付けることができる。代替として、またはさらに、第1部分は、可動的に支持される追加制御部、例えば追加制御部材に取り付けることができる。したがって、第1部分の別個の可動支持部および/または第2部分の別個の可動支持部を省略してもよい。
【0012】
医療器具の実施形態を参照すると、医療器具は、第2部分を制御するための、特に第2部分を第1部分に対して動作位置に動かすための制御部を備え、その場合、制御部の制御に基づいて、医療器具の追加機能が実行される。医療器具の追加機能は、例えば、組織に対する機械的作用、例えば、2つの分岐体間で組織を掴むことであってもよい。制御部は、追加機能を実行するための医療器具のツールに機械的にしっかりと連結されてもよい。
【0013】
制御部は、制御部の制御、特に制御部の動きにより機能が有効または無効になることなく、追加機能が実行されるように制御可能であることが好ましい。医療器具は、ユーザが制御部を動かすことができるように設けられてもよく、その場合、動きの最初の部分により追加機能が実行され、動きのさらに次の部分のみにより機能が有効または無効になる。
【0014】
医療器具は、制御部が動き続ける場合、少なくとも1つの機能が有効または無効になることを触覚的な手応えによってユーザに伝えるように設けられることが好ましい。手応えは、ユーザによって、例えば、聴覚的もしくは視覚的、または手で知覚され得る。ユーザが器具を制御するために用いる手で手応えを感じ得ることが好ましい。
【0015】
医療器具は、第1部分を制御するための、特に第1部分を第2部分に対して動作位置に動かすための追加制御部を備えることが好ましい。追加制御部を制御しても、医療器具の追加機能が実行されないことが特に好ましい。
【0016】
追加制御部が、第1部分の支持部、または第1部分を含む回路基板の支持部である部材の一部である場合、特に簡単に設けることができる。部材または支持部はそれぞれ、可動状態を維持し、特に可動的に支持され、例えば回転可能に支持されることが好ましい。
【0017】
制御部が近位方向に動いて、機能を有効もしくは無効にする、および/または、追加機能をトリガすることができる場合、ならびに、追加制御部が遠位方向に動いて、機能を有効または無効にすることができる場合、医療器具は、特に制御しやすくなる。あるいは、このことは例えば、制御部が遠位方向に動いて、機能を有効もしくは無効にする、および/または、追加機能をトリガすることができる場合、ならびに、追加制御部が近位方向に動いて、機能を有効もしくは無効にすることができる場合でも可能であろう。制御部および追加制御部は、器具の異なる面、特に器具のハンドルの異なる面に配置され、ならびに/または、異なる方向の面、例えば遠位方向および近位方向に面することが好ましい。器具の遠位端は、少なくとも1つの機能を実行することができる少なくとも1つのツールを備えた動作部を含んでもよい。制御部は、器具の動作部から離れて、機能および/または追加機能を有効または無効にし得ることが好ましい。
【0018】
好ましい実施形態を参照すると、第2部分を制御するための制御部は、第2部分を保持する部材に対して可動な部材の一部である。動作中、一部が第2部分を制御するための制御部である部材は、第2部分を第1部分に対して動作位置に動かすために、特に第2部分を第1部分に対して変位させるために、第2部分を含む部材に対して変位することができる。その際、追加機能を有効にするために制御部の動きをさらに設けることが可能であり、そのためには、第2部分を制御する場合よりも、もう1つ、すなわち追加の制御動作が必要である。当然、一部が制御部である部材と、第2部分を保持する部材との間に、少なくとも1つのより可動的に保持された中間部材が存在することは可能であり、当該中間部材は、第2部分を第1部分に対して動作位置に動かすために、一部が制御部である部材によって第2部分を保持する部材に対して変位する。
【0019】
医療器具は、少なくとも1つの機能のうちの機能の1つを有効にするための追加装置を備えることが好ましい。この追加装置は、追加制御部によって制御し得ることが好ましい。例示的な実施形態を参照すると、「シール」および「切断」機能は、例えば装置によって有効にすることができ、「シール」機能のみが、追加装置によって有効にすることができる。例えば、装置は、「シール」機能および「切断」機能の両方を有効にするためのボタンを含んでもよく、追加装置は、「シール」機能のみを有効にするための追加ボタンを含んでもよい。
【0020】
第2部分を第1部分に対して動作位置に動かすための制御部は、医療器具の追加機能を実行するためのツールと弾性的に連結されることが好ましい。
【0021】
さらなる有利な実施形態および好ましい特徴は、以下の明細書および図と同様に、従属クレームから示される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る器具の例示的な実施形態の全体概略斜視図である。
図2】ツール群を備えた、図1による医療器具の遠位部分の部分拡大斜視断面図である。
図3図1による例示的な医療器具のハンドルにおける半分開かれた筐体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
特に、本発明に係る医療器具は、外科用器具10、例えば、図1図2および図3に概略的かつ例示的に示すようなものであってもよい。図1図2および図3に示す医療器具10は、「組織を掴む」、組織の「切断」および「シール」の機能を備え、シール器具と呼ばれてもよい。したがって、器具のツール群12は、組織をシール、任意選択で切断するために設けられ、その場合、組織に含まれる血管および管腔は、組織の継ぎ目で閉じられ、シールされるべきである。本発明について、シール器具10を参照して以下に記載するが、当該機能を示さず、他の機能を示す他の医療器具も、本発明によってさらに開発することが可能である。
【0024】
図1に例示的に示すような本発明に係る医療器具10は、遠位端でツール群12を支える、細長いシャフト11を有してもよい。近位端では、シャフト11は、筐体14を有するハンドル部13に連結される。器具10は、ツール群12を制御するための制御部材15、16、17(これらは作動部材とも呼ばれてもよい。)を備える。本発明に係る医療器具10は、例えば、第1制御部材15、第2制御部材16および第3制御部材17を備え、それらは、示すように(図1および図3)ハンドル部13に配置されてもよい。機能を実行するためのツール群12は、例えば図2に示すように具体化されてもよい。図示した例示的な医療器具10は、2つの分岐体18、19によって組織を掴むためのツールを備え、これによって、分岐体18、19のうちの少なくとも一方が可動的に支持される。追加ツールとして、各分岐体は、それぞれ組織をシールするための電極20および電極21、22を支持し、一方の分岐体が、組織を切断するための電極23を支持する。
【0025】
組織を掴むための分岐体18、19、ならびに、掴んだ組織を切断およびシールするための電極20、21、22、23を備えたツールは、例えば、欧州特許出願公開第2959854号明細書に説明されるように構成され、動作してもよい。
【0026】
器具10に設けられた、組織を掴むためのツールの分岐体18、19のうちの少なくとも一方は、ピボット軸24を中心として回転可能であるように支持される。図2では、これは上部分岐体18である。その際、用途に応じて、ジョイントピボット軸を中心として、または別個のピボット軸を中心として回転可能であるか、別の方法で可動であるように、第1分岐体18または第2分岐体19または両方の分岐体18、19を支持することが可能であり、その結果、分岐体18、19は、互いに近づいたり、互いに遠ざかったりすることができる。
【0027】
第1分岐体18は、U字形状の断面を有するベース本体25を含む。ベース本体25は、互いに平行であり、互いに電気的に接続されることが好ましく、互いの間に溝28を画定する、2つのシール顎部26、27を含む。この溝は、分岐体18の長さの大部分にわたって延在し、切断電極支持部29を受けるように設けられることが好ましい。溝28は、シール電極20が形成される、シール顎部26、27の縁部によって画定される。図2の図に基づくと、1つの第1シール顎部27のシール電極だけが見える。シール電極20は、導電的にベース本体25に接続することができる。図2から推測できるように、2つの第1シール顎部26、27のシール電極20は、絶縁領域30によって互いに分離されている一連の離間した個々の導電面を形成することが好ましい。
【0028】
切断電極支持部29は、当該支持部の面側に配置される切断電極23を含む。その際、切断電極23は、切断電極支持部29の壁状拡張部32の溝または凹部に収められる。切断電極23の一面が露出している。
【0029】
壁状拡張部32における、その基部から切断電極23まで測定される長さは、切断電極23における第2分岐体19に面する露出面が、シール顎部26、27を越えて突出するようなものであることが好ましい。
【0030】
第2分岐体19はまた、好ましくは導電性材料のベース本体35を有する。繰り返すが、ベース本体35はU字型断面を有し、溝38が2つのシール顎部36、37間に形成される。シール電極21、22は、第2分岐体19の第2シール顎部36、38上の絶縁領域39、40間に配置され、好ましくは、当該顎同士は電気的に接続される。
【0031】
図示した例示的な実施形態における第1制御部材15は、ハンドル部13の筐体14から横に突出するボタン(親指ボタン)またはレバーであり、当該ボタンまたはレバーは親指で作動し、その場合、第1制御部材15は、近位位置から遠位方向に押され、その際、筐体14に対して動き、電極、本発明に係る図示した例示的な器具においては切断用の電極23およびシール用の電極20、21、22に電力を加え、それら電極を使用して組織を切断およびシールする。本発明に係る図示した器具10の第2制御部材16は、ハンドル部13の筐体14の下側に配置され、指で作動するレバーであり、当該レバーは、旋回ベアリング45bによって回転可能に筐体で支持される。例えば、レバー16は、対応するツールに人力を機械的に伝達するために、医療器具のツールに機械的に連結される。図示した例示的な実施形態では、レバー16は、レバー16が近位方向に動くことから、組織を掴むための分岐体18、19を閉じるように、例えば、少なくとも一方の回転可能に可動な分岐体18に機械的に連結される。以下に詳細に記載するように、第2制御部材16によって、第1制御部材15でもトリガされ得る同じ機能をさらにトリガすることが可能である。医療器具10が有し得る第3制御部材17は、図示した例示的な実施形態において第2制御部材の前に配置されたボタンまたはレバーであり、当該ボタンまたはレバーは、人指し指で制御される。第3制御部材17が人指し指で近位方向に後ろに動くと、第1制御部材15を作動させるか、第2制御部材16を作動させることによってトリガされ得る機能のうちの1つがトリガされることが好ましい。例えば、第3制御部材17を作動させることによって、シール電極20、21、22に電力を加えることで「シール」機能がトリガされ得、一方、第3制御部材17を作動させることによって切断電極23が蓄電されるように、切断電極23は第3制御部材17に連結されない。
【0032】
図3は、図1のような本発明に係る器具10の例示的な実施形態における側面図の詳細を示し(ツール群12を備えた器具10の遠位動作部は示していない)、横に開かれた筐体14を通して筐体14の内部を見ることができる。器具10は、「切断」および「シール」機能を有効にするための有効化装置を備え、有効化装置は、第1部分として、回路基板42(プリント基板)で支持されるボタン41を含む。ボタン41は、「切断」用および「シール」用の電極20、21、22、23にRF電力を加えるための(図示していない)制御部に連結されており、その結果、ボタン41の接点の適切な切替状態では、対応する電極20、21、22、23に電力が加えられる。
【0033】
回路基板42には、片面にのみ電気部品が設けられることが好ましい。特に、ボタン41は基板42の片面にのみ配置される。基板42は、第1制御部材15に取り付けられることが好ましい。第1制御部材15は、筐体14の内部に位置する保持部43と、筐体の外部に位置する制御部44(図1参照)とを有する。第1制御部材15は、可動的に保持され、特に、筐体14内で回転可能に可動である。例示的な実施形態における第1制御部材15は、筐体14に連結された旋回ベアリング45aによって筐体14内で回転可能に支持される。図示した実施形態では、基板42は、例えば、基板42の開口部(図示せず)に係合するスナップ-キャッチ部46によって、第1制御部材15に取り付けられる。その結果、回路基板42は、第1制御部材15によって筐体14内で可動的に支持される。第1制御部材15の近位方向の動きは、当接部(図示せず)によって画定されてもよい。当接部は、例えば、筐体14に取り付けられても、成形されてもよい。第1制御部材15は、当接部に対して近位方向に弾性的に付勢されてもよい。図3は、無効の非動作位置にある第1制御部材15を示す。
【0034】
基板42およびボタン41に対向して、第2部分48を有する保持部材47が配置される。第2部分48は、保持部材47の作動部48である。保持部材47は、可動であるように筐体14内に保持される。そうするために、保持部材47は、第1制御部材15が筐体14に連結されるのと同じ点で筐体14に連結される弾性部49を含む。保持部材47は、第2部分48がボタン41に対して動作位置に動くことができるように設けられ、および配置される。図示した実施形態では、第2部分48をボタン41に対して変位させて、ボタン41の電気接点を開閉し、切断電極23によって切断を、そしてシール電極20、21、22によってシールを有効にすることができる。第2部分48を第1部分41に対して変位させることは、第2制御部材16を近位方向に動かすことによって実現され、当該第2制御部材は、保持部材47に対して変位し、保持部材47は、当該保持部材が筐体の輪郭を越えて突出しているという点において、(図3に示すように)その非動作位置において筐体14から突出してもよい。保持部材47の遠位方向の動きは、筐体14に締結または成形され得る当接部50によって制限することができる。保持部材47は、その非動作位置において、当接部50に対して弾性的にあらかじめ張力がかけられた状態で保持されてもよい。
【0035】
(図示したように)第2制御部材16および保持部材47は、互いに離れている部材であることが好ましい。第2制御部材16は、特に保持部材47から距離をとって、第2制御部材16を遠位非動作位置から近位位置に制御することにより(第2制御部材16には、以下に記載するように、例えば、圧力ばねによって第2制御部材16内の当接部に対してあらかじめ張力をかけることができる)、まずは「切断」および「シール」機能が有効になることなく、可動分岐体18が閉じる動きをし、第2制御部材16の動きが継続的に進行している間のみ、保持部材47を介してボタン41を作動させることによって「切断」および「シール」機能が作動するように配置される。
【0036】
本発明に係る器具10は、第2制御部材16を操作している間、第2制御部材16が継続的に動くと「切断」および「シール」機能が有効になることを示す、手で感じられ得る手応えをユーザに与えるように設けられてもよい。これは、第2制御部材16を保持部材47に向かう方向および近位方向のそれぞれにさらに動かすために、例えば、ユーザが第2制御部材16を保持部材47に向かう方向に動かすために第2制御部材16の特定位置で手によって著しくより大きな力を加えなければならないという効果を有する装置(図示せず)によって、実現することができる。
【0037】
第2制御部材16は、医療器具のツール、例えば本発明に係る図示した器具10の回転可能な分岐体18に剛性的ではなく機械弾性的に、特に、例えば圧力ばね51などのばね部材によって連結され、例えば分岐体18を作動させるために、ツールに力を伝達する。弾性連結部、例えばばね部材51は、少なくとも一方の回転可能な可動分岐体に人力を伝達するための伝達経路の硬さを実質的に決定するように設けられ、設計されている。ばね部材51は、第2制御部材16の動きをツールに伝達するための他の伝達部材より小さいばね定数を示し、変形が生じる前に分岐体18、19間の所望のクランプ力が実現される程度まで付勢される点において特徴付けられる。第2制御部材16の動きは、ばね部材51の近位の動きに変換され、次に、近位の動きは、ツール、例えば分岐体18の動きに変換される。所望のクランプ力に達した後のばね部材51の弾性変形は、例えば、プルおよび/またはプッシュ剛性を示すプルおよび/またはプッシュロッドによって実現することができる。これは、力の制限、すなわち、ツールへの第2制御部材16による力の伝達の制限につながる。反対に、例えば、分岐体18、19間で掴まれている組織によって、ある位置を越えるとツール、例えば分岐体18の動きが損なわれ、その結果、第2制御部材16が作動しても、分岐体18、19をさらに閉じることができない場合、保持部材47を介してボタン41を作動させることで機能を有効または無効にするための位置に制御部材16を持っていくことができる程度まで、機械弾性的な連結によりツールが制御部材16から外れる。しかしながら、弾性連結部のために、ばね部材51を弾性変形させて、「切断」および「シール」機能を有効または無効にするための位置に制御部材16を動かすことは可能である。
【0038】
本発明によれば、ユーザは、「シール」および「切断」機能を有効にするための別の選択肢を有する。これは、第1制御部材15によって、第1部分41、すなわちボタン41が第2部分48に対して、例では、保持部材47の作動部に対して変位し得るからである。その際、第1部分41は、第2部分48に対して動作位置に、すなわち、第2部分48を第1部分41に対して動作位置に動かすための第2部分48の動きの方向と反対の方向に動く。第1部分41が第1制御部材15によって第2部分48に対して変位すると、保持部材47は当接部50に当接する。図示した例示的な実施形態では、ボタン41が電気接点を接続または切断するために第1部分41と第2部分48との機械的接点が必要であり、第1部分41はまた、容量性センサまたは誘導性センサであってもよく、例えばその結果、第1部分41が電気接続を確立または終了するように、例えば、第2部分48による力を第1部分41に、または第1部分41による力を第2部分48にかけることを必ずしも必要とすることなく、第1部分41を容量的または誘導的な方法で有効または無効にするための電気接続の接続または切断をトリガするために、第2部分48が第1部分41に対して特定位置(動作位置)に動くか、第1部分41が第2部分48に対して特定位置(動作位置)に動くことしか必要ない。
【0039】
器具10は、機能のうちの1つ、例えば「シール」を有効にし得る別の有効化装置を備えることが好ましく、それらの機能は、第1制御部材15および第2制御部材16によって有効にすることができる。第1制御部材15を制御することによって有効にすることができる少なくとも1つの機能(例えば「切断」)の有効化は、追加有効化装置によって可能でないことが好ましい。追加有効化装置は、図示したように、例えば、追加ボタン53を備えた追加回路基板52を含んでもよく、その場合、追加ボタン53を押すために、第3制御部材17を追加ボタン53に対して動作位置で近位方向に動かすことによって第3制御部材17は動き得、その結果、追加ボタン53は機能をトリガする。
【0040】
本発明に係る医療器具10は、以下のように動作する。
【0041】
組織、特に中空の血管または中空の血管を含む組織をシールおよび切断するために、当該組織は分岐体18、19間で掴まれる。第2制御部材16を適切に有効にすることによって、可動分岐体18は、生体組織が分岐体18、19間で掴まれるように他方の分岐体19の方に動く。そうするために、ユーザは、第2制御部材16であるレバー16を、自分自身の方に、すなわち、近位方向に引く。器具10は、ユーザが器具10を保持する手で感じ得る手応え、すなわち、レバー16を引き続き後ろに引くことで、「シール」および「切断」機能が有効になる手応えをユーザに与え得る。組織をシールするには、生体組織を加熱して、掴んだ組織を融合させるべく、第1分岐体18の電極20と第2分岐体19の電極21、22との間で電流が生体組織に流れるように、分岐体18、19間に電圧、好ましくは高周波AC電圧を加えることが効果的となる。それと同時に、切断電極23が有効になる。切断電極23にも、分岐体18、19のうちの一方、好ましくは第2分岐体19、すなわちシール電極21、22において基準電位を有する電圧、例えばRF電圧が供給される。切断電極23の表面の電流密度は、生体組織を滑らかに切断するのに十分に高い。
【0042】
ユーザが第1制御部材15を押す点において、ユーザは、第2制御部材16を示すレバー16を近位方向に引くことなく、切断用およびシール用の電極23、20、21、22にRF電力を供給することも可能である。したがって、組織の切断および/または凝固も、例えば、大血管を切断するための開いた分岐体18、19で行うことができるであろう。また、分岐体18、19が部分的に閉じられ、第2制御部材16がある位置にあって、その結果、保持部材48と第2制御部材16との距離のために、保持部材47が、作動するようにはボタン41にまだ押し付けられていない場合、第1制御部材15によって切断用およびシール用の電極23、20、21、22にRF電力を供給することも可能である。
【0043】
さらに、分岐体18、19が開いている、または部分的に閉じている状態では、ユーザは、第3制御部材17によってシールを有効にすることができ、第3制御部材17は、有効になると追加ボタン53に作用する。
【0044】
本発明によれば、医療器具10であって、当該医療器具の機能を有効または無効にするための装置を備える医療器具10を開示している。装置は、第1部分41および第2部分48を含み、その場合、第2部分48は、第1部分41に対して動作位置に動いて、医療器具10の少なくとも1つの機能を有効または無効にするように配置され、および設けられ、第1部分41は、第2部分48に対して動作位置に動いて、医療器具10の少なくとも1つの機能を有効または無効にするように配置され、および設けられる。医療器具10は、第2部分48を動作位置に動かすために、制御部を提供する第2制御部材16を備えることが好ましく、第1部分41を動作位置に動かすために、追加制御部を提供する第1制御部材15を備えることが好ましい。機能を有効にするために、第1制御部材15は、機能を有効にするための第2制御部材16が動き得る方向と反対の方向に動き得ることが好ましい。この結果、例えば、制御部材15を後方から前方に、すなわち遠位方向に動かすことによって、そして、別の制御部材16を前方から後方に反対方向に、すなわち近位方向に動かすことによって機能を有効にすることができる。したがって、第1部分または第2部分を反対方向に作動させるための一方の作動部材15、16による力のデフレクションは必ずしも必要ではない。
【符号の説明】
【0045】
10 器具
11 シャフト
12 ツール群
13 ハンドル部
14 筐体
15 第1制御部材
16 第2制御部材
17 第3制御部材
18 第1分岐体
19 第2分岐体
20、21、22 シール電極
23 切断電極
24 ピボット軸
25 ベース本体
26 シール顎部
27 シール顎部
28 溝
29 切断電極支持部
30 絶縁領域
32 拡張部
35 ベース本体
36 シール顎部
37 シール顎部
38 溝
39 絶縁領域
40 絶縁領域
41 第1部分/押しボタン
42 基板/回路基板
43 保持部
44 制御部
45a 旋回ベアリング
45b 旋回ベアリング
46 スナップ-キャッチ部
47 保持部材
48 第2部分/作動部
49 弾性部
50 当接部
51 圧力ばね
52 追加回路基板
53 追加押しボタン
図1
図2
図3