(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】容器詰めノンアルコール飲料
(51)【国際特許分類】
A23L 2/00 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
A23L2/00 B
A23L2/00 T
(21)【出願番号】P 2019177422
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100211100
【氏名又は名称】福島 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森田 進
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-227834(JP,A)
【文献】特開2013-252059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶存窒素量が5mg/L以上
20mg/L未満であ
り、
発泡性であり、
アルミニウム製容器に詰められている、容器詰めノンアルコール飲料。
【請求項2】
ビールテイスト飲料である、請求項1に記載の容器詰めノンアルコール飲料。
【請求項3】
20℃におけるガス圧が0.23~0.28MPaである、請求項1
又は2に記載の容器詰めノンアルコール飲料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器詰めノンアルコール飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ノンアルコール飲料に関しては、香味の改善等の観点から、種々の技術手段が提案されている。例えば、特許文献1には、有機酸およびリン酸の合計含有量が238~415mg/Lであり、かつ、食物繊維含有量が0.5~4.0g/100mLである、未発酵のビールテイストノンアルコール飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノンアルコール飲料は、アルコール入りの飲料と比較して、凍結が起こりやすく、凍結の結果として、容器詰めノンアルコール飲料は缶胴破裂を起こす可能性があった。
【0005】
本発明は、缶胴破裂が抑制された容器詰めノンアルコール飲料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、溶存窒素量が5mg/L以上である、容器詰めノンアルコール飲料に関する。
【0007】
容器詰めノンアルコール飲料は、ビールテイスト飲料であってよい。
【0008】
本発明の一側面における容器詰めノンアルコール飲料は、アルミニウム製容器に詰められていてよい。
【0009】
容器詰めノンアルコール飲料において、溶存窒素量は、20mg/L未満であってよい。
【0010】
容器詰めノンアルコール飲料において、20℃におけるガス圧は、0.23~0.28MPaであってよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、缶胴破裂が抑制された容器詰めノンアルコール飲料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
<容器詰めノンアルコール飲料>
容器詰めノンアルコール飲料は、容器に詰められているノンアルコール飲料を意味する。すなわち、容器詰めノンアルコール飲料は、容器と該容器に詰められたノンアルコール飲料とを有するものである。
【0014】
本実施形態に係る容器詰めノンアルコール飲料は、溶存窒素量が5mg/L以上である。ノンアルコールとは、実質的にアルコールを含まないことをいう。容器詰めノンアルコール飲料のアルコール濃度は、1体積%未満であり、例えば0.5体積%以下、0.1体積%以下であってよく、0.005体積%未満であってもよい。容器詰めノンアルコール飲料は、アルコールを全く含まないものとしてもよい。なお、本明細書においてアルコールとは、特に言及しない限りエタノールを意味する。
【0015】
容器詰めノンアルコール飲料は、例えば、チューハイテイスト飲料、ビールテイスト飲料等であってよい。容器詰めノンアルコール飲料は、RTD(Ready To Drink)の形態であってもよい。RTDは、蓋を開けてそのまま飲用されるものである。
【0016】
本明細書において、チューハイテイスト飲料とは、チューハイ、又は、チューハイのような味及び香りを呈するものであって、飲用の際にチューハイを飲用したような感覚を飲用者に与える飲料をいう。チューハイテイスト飲料は、例えば、果汁、ウーロン茶等を含有していてよい。
【0017】
本明細書において、ビールテイスト飲料とは、ビールのような味及び香りを呈するものであって、飲用の際にビールを飲用したような感覚を飲用者に与える飲料を意味する。
【0018】
容器詰めノンアルコール飲料の溶存窒素量は、5mg/L以上であり、6mg/L以上、7mg/L以上、8mg/L以上、9mg/L以上、10mg/L以上、11mg/L以上、12mg/L以上、又は13mg/L以上であってよく、20mg/L未満、19mg/L以下、18mg/L以下、17mg/L以下、16mg/L以下、又は15mg/L以下であってよい。容器詰めノンアルコール飲料の溶存窒素量は、例えば、5mg/L以上20mg/L未満、8~18mg/L、10~15mg/L、又は12~15mg/Lであってよい。容器詰めノンアルコール飲料の溶存窒素量を所定範囲に調整することによって、容器内の全圧が適度な範囲に調整されることとなる。これによって、容器内のノンアルコール飲料が凍結した時の膨張が抑制され、この結果として、缶胴破裂が抑制されると考えられる。但し、缶胴破裂が抑制される要因は当該要因に限定されない。
【0019】
容器詰めノンアルコール飲料の溶存窒素量は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0020】
容器詰めノンアルコール飲料は、発泡性であってもよく、非発泡性であってもよい。ここで、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm2)未満であることをいい、発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.049MPa(0.5kg/cm2)以上であることをいう。発泡性とする場合、ガス圧の上限は0.294MPa(3.0kg/cm2)程度としてもよい。
【0021】
容器詰めノンアルコール飲料のガス圧は、0.20MPa以上、0.21MPa以上、0.22MPa以上、0.23MPa以上、0.24MPa以上、又は0.25MPa以上であってよく、0.29MPa以下、0.28MPa以下、又は0.27MPa以下であってよい。容器詰めノンアルコール飲料のガス圧は、例えば、0.23~0.28MPaであってよい。容器詰めノンアルコール飲料のガス圧は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0022】
容器詰めノンアルコール飲料は、酵母等による発酵を行わずに製造される非発酵飲料であってもよいし、酵母等による発酵を経て製造される発酵飲料であってもよい。
【0023】
本実施形態に係る容器詰めノンアルコール飲料は、甘味料、高甘味度甘味料、香料、苦味料、着色料、酸味料、酸化防止剤、塩類、起泡剤(安定剤)等の添加剤を含んでいてもよい。
【0024】
容器詰めノンアルコール飲料において、ノンアルコール飲料は、缶底、缶胴及び缶蓋を備える密閉可能な缶に詰められていてよい。缶底及び缶胴は、一体となっていてよい。容器は、例えば、金属製であってよい。容器の色彩は特に制限されるものではない。金属製容器の具体例としては、アルミニウム製容器、スチール製容器が挙げられる。容器の容量は、例えば、150~500mL、200~500mL、又は250~350mLであってよい。
【0025】
本実施形態の容器詰めノンアルコールは、アルミニウム製容器に詰められていてよい。すなわち、容器詰めノンアルコール飲料は、アルミニウム製容器詰め飲料であってよい。ノンアルコール飲料が詰められたアルミニウム製容器は、凍結時の缶胴破裂が発生しやすい傾向がある。本実施形態に係る容器詰めノンアルコール飲料では、溶存窒素量が5mg/L以上であることにより、容器がアルミニウム製容器である場合でも、缶胴破裂が充分に抑制されている。
【0026】
<容器詰めノンアルコール飲料の製造方法>
本実施形態に係る容器詰めノンアルコール飲料は、溶存窒素量を5mg/L以上になるように調整することを含む方法によって、製造することができる。溶存窒素量は、上述した範囲内に調整してもよい。溶存窒素量は、例えば、ノンアルコール飲料が充填された容器を密閉する前に、空寸部を窒素ガスに置換すること、ノンアルコール飲料と窒素ガスとを接触させること、窒素ガス雰囲気下でノンアルコール飲料を攪拌させること、ノンアルコール飲料に対して液体窒素を混合すること、又はこれらの組み合わせ等によって上記範囲内に制御することができる。
【0027】
一実施形態に係る容器詰めノンアルコール飲料は、充填用の容器にノンアルコール飲料を充填する充填工程と、ノンアルコール飲料が充填された容器の空寸部の空気を窒素に置換する置換工程と、容器を密封する密閉工程とを備える方法によって製造することができる。
【0028】
充填工程では、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにてノンアルコール飲料を充填してもよい。充填用の容器として、例えば、缶底及び缶胴からなる缶を用いることができる。充填用の容器は、缶底及び缶胴が一体となっていてよい。
【0029】
充填用の容器に充填されるノンアルコール飲料は特に制限されず、常法により製造されたものであってよい。当該ノンアルコール飲料は、例えば、水(又は炭酸水)と、各種添加剤(例えば、窒素源(例えば、大豆タンパク質、エンドウタンパク質、又はこれらの分解物等)、及び酸味料(例えば、乳酸))とを原料タンクに配合する配合工程と、配合工程において各成分を混合して得た混合液をろ過するろ過工程と、を含む方法によって製造することができる。配合工程は、各成分がよく混ざるよう、撹拌機等により撹拌しながら混合してもよい。ろ過工程は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。さらに、ろ過液を殺菌する殺菌工程を含んでいてもよい。
【0030】
置換工程において、空寸部の空気が窒素と置換されることで、ノンアルコール飲料と窒素とが接触する。これにより、ノンアルコール飲料における溶存窒素量を調整することができる。
【0031】
密閉工程では、例えば、ノンアルコール飲料が充填された容器に缶蓋を取り付けることによって密閉してよい。
【0032】
容器詰めノンアルコール飲料の製造工程のいずれかの段階で、殺菌行うことを含んでいてもよい。殺菌は、所定の温度及び所定の時間の加熱により行うことができる。殺菌を行わない無殺菌充填を行うことも可能である。発泡性の飲料とする場合は、例えば、充填工程前にカーボネーションを行ってもよい。
【0033】
<缶胴破裂の抑制方法>
本発明の一実施形態として、容器詰めノンアルコール飲料の缶胴破裂を抑制する方法であって、容器詰めノンアルコール飲料の溶存窒素量を5mg/L以上になるように調整することを含む方法が提供される。
【0034】
本発明の他の実施形態として、容器詰めノンアルコール飲料の缶胴破裂を抑制する方法であって、ノンアルコール飲料が充填された容器の空寸部の空気を窒素に置換する置換工程と、容器を密封する密閉工程とを含む方法が提供される。置換工程及び密閉工程における好ましい態様は、例えば、上述したとおりである。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0036】
[試験例1:容器詰めノンアルコール飲料の製造]
市販のビールテイストノンアルコール飲料を試験用のノンアルコール飲料として用いた。試験用のノンアルコール飲料を充填するための容器には、缶底及び缶胴が一体となったアルミニウム製容器(容量:約350mL)を用いた。
【0037】
まず、試験用のノンアルコール飲料350mLを、上記アルミニウム製容器に充填した。次いで、ノンアルコール飲料が充填されたアルミニウム製容器の空寸部の空気を窒素ガスで置換した。窒素ガスで置換した後、容器にアルミニウム製の缶蓋を取り付けて、容器を密閉した。これにより、試験品の容器詰めノンアルコール飲料を得た。以上の操作を実施したことにより、合計5サンプルの試験品の容器詰めノンアルコール飲料を得た。
【0038】
窒素ガスで置換する代わりに、炭酸ガスで置換したこと以外は、試験品と同様にして、対照品の容器詰めノンアルコール飲料を得た。以上の操作を実施したことにより、合計5サンプルの対照品1~5の容器詰めノンアルコール飲料を得た。
【0039】
[溶存窒素量]
容器詰めノンアルコール飲料の溶存窒素量の測定には、複合型の二酸化炭素/酸素計(CboxQC、アントンパール社製)を用いた。具体的には次に示す方法により測定した。CboxQCによって、溶存非炭酸ガス量及び溶存酸素量を測定し、溶存非炭酸ガス量から溶存酸素量を差し引くことで、溶存窒素量を算出した。
【0040】
試験品及び対照品の容器詰めノンアルコール飲料の溶存窒素量の測定結果を表1に示す。同一サンプルについてCboxQCによる溶存窒素量の測定は、3回実施した。表1に示す結果はいずれも2回目と3回目の測定結果の平均値である。
【表1】
【0041】
[20℃におけるガス圧]
20℃におけるガス圧は、改訂BCOJビール分析法(公益財団法人日本醸造協会発行、ビール酒造組合国際技術委員会〔分析委員会〕編集、2013年増補改訂)の「8.21ガス圧」に記載されている方法により測定した。
【0042】
[缶胴破裂発生率の評価]
上述した方法により製造された試験品及び対照品の容器詰めノンアルコール飲料を用いて、缶胴破裂発生率を評価した。
【0043】
まず、試験品を-8℃又は-10℃の条件で、24時間保持した。試験品のうち、缶胴に亀裂が入ることによって、容器が破裂した本数を調べた。-8℃において測定した試験品の総数(100本)に対する、缶胴破裂が発生した本数の割合を、-8℃における缶胴破裂発生率として求めた。-10℃において測定した試験品の総数(100本)に対する、缶胴破裂が発生した本数の割合を、-10℃における缶胴破裂発生率として求めた。缶胴破裂発生率の測定に用いた試験品のうち、半数は横置きにした状態、もう半数は縦置きにした状態で、各温度に保持した。試験品と同様にして、対照品の缶胴破裂発生率を評価した。結果を表2に示す。表2に示す平均値は、-8℃における缶胴破裂発生率及び-10℃における缶胴破裂発生率の平均値である。
【0044】
【0045】
表2に示すとおり、容器詰めノンアルコール飲料における溶存窒素量が所定値以上であると、缶胴破裂が抑制されることが示された。
【0046】
[試験例2:容器詰めノンアルコール飲料の官能評価]
上述した方法により、容器詰めされた直後の試験品及び対照品の容器詰めノンアルコール飲料について、官能評価を実施した。官能評価は、3点識別法(トライアングルテスト)により実施した。具体的には、試験品(A)及び対照品(B)の2種類の試料を(A、A、B)又は(A、B、B)のいずれかの組み合わせで提示し、3点のなかから異なって感じられるサンプルを選択させた。
【0047】
試験品及び対照品を識別できたパネルは9名のパネルのうち、0名であった。したがって、試験品と対照品は香味上差が無く、試験品のノンアルコール飲料は、香味が維持されていることが示された。